(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135647
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】風量調整装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/14 20060101AFI20240927BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F24F13/14 B
B60H1/34 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046435
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀典
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA03
3L081AB02
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で通気路を閉じた状態での風漏れを低減できる風量調整装置を提供する。
【解決手段】風量調整装置1は、通気路5を内部に区画するケース体3と、通気路5を開閉する遮蔽体10と、を備える。遮蔽体10は、通気路5を閉じた状態で通気路5の上流側からの風を上流側へと循環させるように整流する整流部25を内部に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気路を内部に区画するケース体と、
前記通気路を開閉する遮蔽体と、を備え、
前記遮蔽体は、前記通気路を閉じた状態で前記通気路の上流側からの風を上流側へと循環させるように整流する整流部を内部に有する
ことを特徴とする風量調整装置。
【請求項2】
遮蔽体は、
通気路を閉じた状態で前記通気路の上流側に臨む上流側バルブと、
この上流側バルブとの間に空間部が形成されるように配置され、前記通気路を閉じた状態で前記通気路の下流側に臨む下流側バルブと、を有し、
前記上流側バルブは、穴部を備え、
前記下流側バルブは、前記上流側バルブに対向する側が、前記通気路を閉じた状態で前記ケース体に近接する端部が前記上流側バルブ側に屈曲された湾曲形状となっている
ことを特徴とする請求項1記載の風量調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気路を開閉する遮蔽体を備える風量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車などの車両に用いられる空調装置の下流端に、ダクト状の通気路を開閉する遮蔽体を備える風量調整装置を備えるものがある。遮蔽体は、例えば平面状の2枚のバルブ間に軟質材からなるシール材を挟んで形成され、通気路に回動可能に配置されている。そして、通気路を閉じる際には、回動によりシール材を通気路の壁に圧接して弾性変形させることで気密性を高めている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-196618号公報 (第5-9頁、
図1-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の風量調整装置では、例えばシール材と通気路の壁との隙間が大きいとシール材が壁により圧縮されず、隙間が小さすぎるとシール材が壁に当たって弾性変形した際に皴となって風漏れが生じることから、シール材と通気路の壁との隙間を一定範囲に保つ必要があり、品質を保つための調整に手間が掛かる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素な構成で通気路を閉じた状態での風漏れを低減できる風量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の風量調整装置は、通気路を内部に区画するケース体と、前記通気路を開閉する遮蔽体と、を備え、前記遮蔽体は、前記通気路を閉じた状態で前記通気路の上流側からの風を上流側へと循環させるように整流する整流部を内部に有するものである。
【0007】
請求項2記載の風量調整装置は、請求項1記載の風量調整装置において、遮蔽体は、通気路を閉じた状態で前記通気路の上流側に臨む上流側バルブと、この上流側バルブとの間に空間部が形成されるように配置され、前記通気路を閉じた状態で前記通気路の下流側に臨む下流側バルブと、を有し、前記上流側バルブは、穴部を備え、前記下流側バルブは、前記上流側バルブに対向する側が、前記通気路を閉じた状態で前記ケース体に近接する端部が前記上流側バルブ側に屈曲された湾曲形状となっているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の風量調整装置によれば、簡素な構成で通気路を閉じた状態での風漏れを低減できる。
【0009】
請求項2記載の風量調整装置によれば、請求項1記載の風量調整装置の効果に加えて、上流側バルブの穴部から空間部に進入した風を下流側バルブの湾曲形状に沿って整流して上流側へと還流させる整流部を容易に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態の風量調整装置を示す断面図であり、(a)は通気路を開いた状態を示し、(b)は通気路を閉じた状態を示す。
【
図2】同上風量調整装置の遮蔽体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図4において、1は風量調整装置である。風量調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し量を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風量調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風量調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風量調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風量調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0013】
風量調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、ダクトとも呼ばれる。ケース体3は、筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース体3は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、ケース体3は、角筒状に形成されている。ケース体3により、内部に通気路5が囲まれている。ケース体3の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0014】
ケース体3は、通気路5の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、ケース体3は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風量調整装置1は、横型の薄型に形成されている。ケース体3は、通気路5の中央部、すなわち中心軸を挟んで互いに対向する一対の端壁部6と、これら一対の端壁部6間を連結する一対の側壁部7と、を一体的に有する。一対の端壁部6は、上下方向に互いに対向し、一対の側壁部7は、左右方向に互いに対向する。一対の端壁部6,6と一対の側壁部7,7との後端部により、通気路5に空気すなわち空調風を受け入れる受入口8が囲まれ、一対の端壁部6,6と一対の側壁部7,7との前端部により、通気路5から空調風を排出する吹出口9が囲まれる。つまり、ケース体3の後端部は、通気路5に空調風を受け入れる受入口8であり、ケース体3の前端部は、通気路5から空調風を吹き出す吹出口9となっている。受入口8と吹出口9との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。受入口8から吹出口9へと空調風が通過する。受入口8及び吹出口9は、それぞれ横長となっている。なお、ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0015】
図3及び
図4に示すように、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、遮蔽体10が配置されている。遮蔽体10は、シャットバルブなどとも呼ばれ、通気路5を開閉することで通気路5を通過する風量を調整可能である。遮蔽体10は、通気路5において、吹出口9よりも上流側つまり後側にある。
【0016】
遮蔽体10は、ケース体3に回動可能に配置されている。本実施の形態では、遮蔽体10は、左右両側部がケース体3の側壁部7,7に回動可能に支持されている。遮蔽体10は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、回動により通気路5を開閉する。遮蔽体10の回動は、図示しない操作部により乗員などの使用者が手動により操作可能としてもよいし、例えばモータなどのアクチュエータを用いて電動などにより操作可能としてもよい。
【0017】
図2に示すように、遮蔽体10は、上流側バルブ12と、下流側バルブ13と、が互いに対向配置されて構成されている。また、遮蔽体10は、風量調整装置1(
図4)の要求性能などに応じて、シール材14をさらに備えていてもよい。
【0018】
上流側バルブ12は、遮蔽体10が通気路5を閉じた状態(
図1(b)に示す状態)で通気路5の上流側に臨む部分である。上流側バルブ12は、板状に形成された上流側バルブ本体部16を有する。上流側バルブ本体部16は、通気路5の断面形状に応じた形状に形成されている。本実施の形態では、上流側バルブ本体部16は、左右方向に長い四角形状に形成されている。上流側バルブ本体部16は、下流側バルブ13に対して離れる方向に凸状となるように湾曲している。図示される例では、上流側バルブ本体部16は、断面円弧状となっている。
【0019】
上流側バルブ本体部16には、上流側バルブ本体部16を厚み方向に貫通する穴部17が形成されている。本実施の形態では、穴部17は複数形成されている。例えば、穴部17は、上流側バルブ本体部16の全体に、千鳥状に配置されている。
【0020】
また、上流側バルブ本体部16の各長辺部には、端部18がそれぞれ連なっている。端部18は、遮蔽体10が通気路5を開いた状態(
図1(a)に示す状態)で通気路5の壁である端壁部6から離れ、遮蔽体10が通気路5を閉じた状態(
図1(b)に示す状態)で通気路5の壁である端壁部6に近接する部分である。端部18は、上流側バルブ本体部16に対して下流側バルブ13側に屈曲状に連なっている。
【0021】
さらに、上流側バルブ本体部16の各短辺部には、側部19がそれぞれ連なっている。側部19は、遮蔽体10がケース体3に配置された状態で側壁部7に常時近接している部分である。側部19は、上流側バルブ本体部16及び端部18の両側に対して、下流側バルブ13側に屈曲状に連なっている。
【0022】
また、下流側バルブ13は、遮蔽体10が通気路5を閉じた状態(
図1(b)に示す状態)で通気路5の下流側に臨む部分である。下流側バルブ13は、板状に形成された下流側バルブ本体部21を有する。下流側バルブ本体部21は、通気路5の断面形状に応じた形状に形成されている。本実施の形態では、下流側バルブ本体部21は、左右方向に長い四角形状に形成されている。下流側バルブ本体部21は、上流側バルブ12に対して離れる方向に凸状となるように湾曲している。図示される例では、下流側バルブ本体部21は、断面円弧状となっている。
【0023】
また、下流側バルブ本体部21は、上流側バルブ12に対して少なくとも短辺方向に大きく形成されている。そのため、下流側バルブ本体部21は、上流側バルブ12に対して短辺方向に延びている。
【0024】
また、下流側バルブ本体部21の各長辺部には、端部22がそれぞれ連なっている。端部22は、遮蔽体10が通気路5を開いた状態(
図1(a)に示す状態)で通気路5の壁である端壁部6から離れ、遮蔽体10が通気路5を閉じた状態(
図1(b)に示す状態)で通気路5の壁である端壁部6に近接する部分である。端部22は、下流側バルブ本体部21に対して上流側バルブ12側に屈曲状に連なっている。端部22は、上流側バルブ12の端部18に対してそれぞれ外側に離れて位置する。そのため、下流側バルブ13の端部22と上流側バルブ12の端部18との間には、隙間23が形成されている。
【0025】
下流側バルブ本体部21と端部22,22とにより、下流側バルブ13は、遮蔽体10の回動方向に沿う弧状となっている。これら下流側バルブ本体部21と端部22,22とが、通気路5の上流側からの風を上流側へと循環させるように整流する整流部25を構成する。
【0026】
さらに、下流側バルブ本体部21の各短辺部には、側部26がそれぞれ連なっている。側部26は、遮蔽体10がケース体3に配置された状態で側壁部7に常時近接している部分である。側部26は、下流側バルブ本体部21及び端部22の両側に対して、上流側バルブ12側に屈曲状に連なっている。
【0027】
上流側バルブ12と下流側バルブ13との間には、空間部27が形成されている。空間部27は、穴部17及び隙間23と連通している。本実施の形態では、空間部27は、上流側バルブ本体部16と下流側バルブ本体部21との湾曲形状により、遮蔽体10の厚み方向、つまり上流側バルブ12と下流側バルブ13との対向方向に膨らんで形成されている。
【0028】
シール材14は、遮蔽体10と通気路5の壁、すなわち端壁部6及び側壁部7との隙間を閉塞する部材である。シール材14は、弾性部材または可撓部材により板状に形成されている。例えば、シール材14としては、フェルトなどが用いられる。シール材14は、上流側バルブ12と下流側バルブ13との間に挟み込まれて保持されている。本実施の形態では、シール材14は、下流側バルブ13の上流側バルブ12側の面に一体的に固着されている。
【0029】
シール材14は、通気路5の断面形状に応じた外形に形成されている。本実施の形態では、シール材14は、左右方向に長い四角形状に形成されている。シール材14は、上流側バルブ12及び下流側バルブ13に対してそれぞれ一回り大きく設定され、
図2に示すように、上流側バルブ12及び下流側バルブ13に対し、外縁部が短辺方向及び長辺方向にそれぞれフラップ状に延出されている。例えば、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、シール材14は、短辺方向において、上流側バルブ12の端部18と下流側バルブ13の端部22との隙間23から延出されている。
【0030】
その他、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、遮蔽体10の下流側に、風向を調整する任意のフィン(ルーバ)が配置されていてもよい。この場合、風量調整装置1は、吹出口9から吹き出される風の方向を調整する風向調整装置として機能する。
【0031】
そして、風量調整装置1は、受入口8を空調装置と連結して配置する。
図1(a)に示すように、遮蔽体10により通気路5を開いた状態、すなわち遮蔽体10が通気路5の通風方向に沿うように回動した状態では、空調装置からの空調風は、受入口8から通気路5を通過し、遮蔽体10の上流側バルブ12の上流側バルブ本体部16の上面及び下流側バルブ13の下流側バルブ本体部21の下面に沿って整流され、吹出口9から吹き出される。
【0032】
一方、
図1(b)に示すように、遮蔽体10により通気路5を閉じた状態、すなわち遮蔽体10が通気路5の通風方向に対し交差する方向に回動した状態では、上流側バルブ12の上流側バルブ本体部16が通気路5の上流側に面し、下流側バルブ13の下流側バルブ本体部21が通気路5の下流側に面して、端部22,22が端壁部6,6に近接する。さらに本実施の形態では、端部22,22から延出するシール材14の端部が端壁部6に圧接され、遮蔽体10と端壁部6との隙間を閉塞する。この状態では、遮蔽体10に対し通気路5の上流側から流れてきた風が、上流側バルブ12の穴部17から空間部27内に進入し、下流側バルブ13の下流側バルブ本体部21の後面側、本実施の形態ではこの後面を覆うシール材14に当たり、下流側バルブ本体部21の湾曲形状に沿って上下方向に誘導され、さらに下流側バルブ本体部21に対して後側に屈曲する端部22の屈曲に沿って整流されつつ、つまり整流部25の形状に沿って整流されつつ、隙間23から上流側へと還流される。そこで、遮蔽体10の上流側で通気路5に風の循環が生じ、遮蔽体10と端壁部6,6との隙間から遮蔽体10の下流側への風漏れが生じにくくなる。
【0033】
このように、一実施の形態によれば、遮蔽体10の内部に、通気路5を閉じた状態で通気路5の上流側からの風を上流側へと循環させるように整流する整流部25を形成したので、簡素な構成で通気路5を閉じた状態での風漏れを大幅に低減できる。
【0034】
遮蔽体を構成する上流側バルブ12に穴部17を形成し、上流側バルブ12との間に空間部27を形成する下流側バルブ13の上流側バルブ12に対向する側を、遮蔽体10が通気路5を閉じた状態でケース体3の端壁部6に近接する端部22が上流側バルブ12側に屈曲された湾曲形状としているため、上流側バルブ12の穴部17から空間部27に進入した風を下流側バルブ13の湾曲形状に沿って整流して上流側へと還流させる整流部25を容易に構成できる。
【0035】
そこで、従来例のような、風漏れを低減するためのシール材の形状の調整や遮蔽体の形状の設計変更などが不要となり、風量調整装置1の製造性も向上する。
【0036】
さらに、シール材14は、風漏れをより抑制するために補助的に作用するものであって、必須ではないため、例えばシール材14を用いない構成とする場合には、ケース体3の内壁に対してシール材14を圧接するように設定する必要がないので、操作荷重が軽くなり、操作性が良好になる。
【0037】
なお、一実施の形態において、風量調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば自動車の空調用の風量調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 風量調整装置
3 ケース体
5 通気路
10 遮蔽体
12 上流側バルブ
13 下流側バルブ
17 穴部
22 端部
27 空間部