(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135658
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046451
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畑 智弘
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353GG01
5E353JJ22
5E353JJ32
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353KK02
5E353KK03
5E353QQ05
(57)【要約】
【課題】ヘッド移動装置からの装着ヘッドの取り外しを容易にする。
【解決手段】部品装着機11は、装着ヘッド51と、ヘッド移動装置13と、ヘッド着脱機構61と、操作手段71と、を備える。装着ヘッド51は、電子部品2を基板1に装着する。ヘッド移動装置13は、装着ヘッド51を直交する2方向に移動させる。ヘッド着脱機構61は、ヘッド移動装置13の固定部41に対して装着ヘッド51を着脱するためのものである。操作手段71は、複数の操作部72を含む。複数の操作部72は、固定部41と装着ヘッド51との着脱時に、少なくとも固定部41の左右両側からヘッド着脱機構61を操作可能である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板に装着する装着ヘッドと、
前記装着ヘッドを直交する2方向に移動させるヘッド移動装置と、
前記ヘッド移動装置の固定部に対して前記装着ヘッドを着脱するためのヘッド着脱機構と、
前記固定部と前記装着ヘッドとの着脱時に少なくとも前記固定部の左右両側から前記ヘッド着脱機構を操作可能な複数の操作部を含む操作手段と、
を備えた、部品装着機。
【請求項2】
前記ヘッド着脱機構は、前記装着ヘッドに設けられた被係止部と、前記固定部に設けられ前記被係止部に係脱可能に係止する係止部と、を含み、
前記操作手段は、操作されることで前記係止部を作動させて前記被係止部に対する前記係止部の係止を解除する、請求項1に記載の部品装着機。
【請求項3】
前記ヘッド着脱機構は、
前記係止部を先端側に有する係止部材と、
前記係止部材の基端側を押圧して前記係止部材を先端側に突出させるカム体と、
前記カム体と前記操作手段とを駆動連結する連結部材と、を含み、
前記操作手段は、操作されることで前記カム体を作動させて前記係止部材を基端側に退避させる、請求項2に記載の部品装着機。
【請求項4】
前記連結部材は、第1端及び第2端を有する支軸であり、
前記カム体は、前記支軸の前記第1端側に設けられ、
前記操作手段は、前記支軸の前記第2端側に設けられるとともに、操作されることで前記カム体を回動させて前記係止部材を基端側に退避させる、請求項3に記載の部品装着機。
【請求項5】
前記操作手段は、レバー部を有するクランプレバーである、請求項4に記載の部品装着機。
【請求項6】
前記操作手段は、前記支軸に対して固定される支軸固定部と、前記支軸固定部に設けられ互いに反対方向に延びる2つのレバー部と、を有するクランプレバーである、請求項4に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に電子部品を装着する部品装着機がよく知られている。一般的に部品装着機は、装着ヘッドとヘッド移動装置とを備えている。装着ヘッドは、部品供給位置にある電子部品を吸着して基板上まで移動させ、そこで電子部品を開放する。ヘッド移動装置は、固定部に装着された装着ヘッドをXY方向に移動させる。装着ヘッドは用途に応じて交換可能であり、必要に応じてヘッド着脱機構を用いて装着ヘッドを固定部に対して着脱する。この種の装置としては、例えば特許文献1に開示されたものが従来知られている。特許文献1の装置は、操作ヘッドの着脱時に操作する操作レバーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の部品装着機では、操作レバーが固定部の一方の側面のみに設けられていた。そのため、装着ヘッドが停止した位置によっては、固定部の他方の側面から操作レバーを操作しなければならず、手を奥まで回す必要があり、操作しづらいという問題があった。このため、従来技術の場合、ヘッド移動装置から装着ヘッドを容易に取り外すことができなかった。
【0005】
そこで本明細書は、ヘッド移動装置からの装着ヘッドの取り外しを容易にするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、装着ヘッドと、ヘッド移動装置と、ヘッド着脱機構と、操作手段と、を備える部品装着機を開示する。装着ヘッドは、電子部品を基板に装着する。ヘッド移動装置は、装着ヘッドを直交する2方向に移動させる。ヘッド着脱機構は、ヘッド移動装置の固定部に対して装着ヘッドを着脱するためのものである。操作手段は、複数の操作部を含む。複数の操作部は、固定部と装着ヘッドとの着脱時に、少なくとも固定部の左右両側からヘッド着脱機構を操作可能である。従って、上述した構成によると、固定部の左右両側からヘッド着脱機構を操作することが可能となるため、ヘッド移動装置から装着ヘッドを容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例の部品装着機を示す概略側面図である。
【
図2】実施例の部品装着機を示す概略平面図である。
【
図3】実施例のヘッド着脱機構及び操作手段(ヘッド取り付け状態)を示す概略側面図である。
【
図4】実施例のヘッド着脱機構及び操作手段(ヘッド取り付け状態)を示す概略正面図である。
【
図5】実施例のヘッド着脱機構及び操作手段(ヘッド取り外し状態)を示す概略側面図である。
【
図6】ヘッド取り外し前のヘッド着脱機構及び操作手段を示す要部拡大概略正面図である。
【
図7】ヘッド取り外し前のヘッド着脱機構及び操作手段を示す要部拡大概略側面図である。
【
図8】ヘッド取り外し時のヘッド着脱機構及び操作手段を示す要部拡大概略正面図である。
【
図9】ヘッド取り外し時のヘッド着脱機構及び操作手段を示す要部拡大概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(態様1) 本明細書が開示する部品装着機では、ヘッド着脱機構は、装着ヘッドに設けられた被係止部と、固定部に設けられ被係止部に係脱可能に係止する係止部と、を含んでいてもよい。操作手段は、操作されることで係止部を作動させて被係止部に対する係止部の係止を解除してもよい。
(態様2) 上記の態様1に係る部品装着機では、ヘッド着脱機構は、係止部を先端側に有する係止部材と、係止部材の基端側を押圧して係止部材を先端側に突出させるカム体と、カム体と操作手段とを駆動連結する連結部材と、を含んでいてもよい。操作手段は、操作されることでカム体を作動させて係止部材を基端側に退避させてもよい。
(態様3) 上記の態様2に係る部品装着機では、連結部材は、第1端及び第2端を有する支軸であってもよい。カム体は、支軸の第1端側に設けられていてもよい。操作手段は、支軸の第2端側に設けられるとともに、操作されることでカム体を回動させて係止部材を基端側に退避させてもよい。
(態様4) 上記の態様3に係る部品装着機では、操作手段は、レバー部を有するクランプレバーであってもよい。
(態様5) 上記の態様3に係る部品装着機では、操作手段は、支軸に対して固定される支軸固定部と、支軸固定部に設けられ互いに反対方向に延びる2つのレバー部と、を有するクランプレバーであってもよい。
【0009】
(実施例1)
以下、本実施例の部品装着機11について図面を参照して説明する。
図1は部品装着機11を示す概略側面図であり、
図2は部品装着機11を示す概略平面図である。
図1、
図2に示すように、部品装着機11は、基板搬送装置21、部品供給装置31、ヘッド移動装置14、装着ヘッド51、制御装置38等を備えている。以下の説明において、部品装着機11の水平幅方向(
図1の紙面垂直方向、
図2の左右方向)をX軸方向とし、部品装着機11の水平奥行き方向(
図1の左右方向、
図2の上下方向)をY軸方向とし、X軸及びY軸に垂直な鉛直方向(
図1の上下方向、
図2の紙面方向)をZ軸方向とする。
【0010】
基板搬送装置21は、ベルトコンベア22などにより構成され、配線回路が形成された基板1を搬送方向(本実施例においてはX軸方向)へと順次搬送する。基板搬送装置21は、部品装着機11の機内における所定の位置に基板1を位置決めする。そして、基板搬送装置21は、部品装着機11により基板1に対する部品装着作業が実行された後に、その基板1を部品装着機11の機外に搬出する。
【0011】
部品供給装置31は、部品装着機11の前側(
図1の左側、
図2の下側)に設けられている。部品供給装置31は、複数の供給位置において複数種類の電子部品2を基板1に供給する。部品供給装置31は、複数のパーツフィーダ32を備えている。各々のパーツフィーダ32は、電子部品2を収容する収容部が所定間隔毎に形成されたテープを送り出すことにより電子部品2を供給するように構成されている。
【0012】
ヘッド移動装置14は、基板1に電子部品2を装着する作業を実行するXYロボットであって、X軸方向及びY軸方向に移動可能となるように構成されている。ヘッド移動装置14は、部品装着機11の上方に配置されている。ヘッド移動装置14は、Y軸スライダ12と、X軸スライダ13と、キャリッジ16とを備えている。Y軸スライダ12は、本体枠の上段部に前後方向(Y軸方向)に沿って設けられた左右一対のY軸ガイドレールに架け渡され、Y軸モータ(図示省略)の駆動によりY軸ガイドレール15に沿って移動する。X軸スライダ13は、Y軸スライダ12の下面に左右方向(X軸方向)に沿って設けられたX軸ガイドレール(図示省略)に取り付けられ、X軸モータ(図示省略)の駆動によりX軸ガイドレールに沿って移動する。キャリッジ16は、X軸スライダ13の下側に設けられるとともに、装着ヘッド51が着脱可能に固定される固定部41をその前面側に有している。固定部41には装着ヘッド51が着脱可能に固定されている。そして、ヘッド移動装置14は、X軸スライダ13とY軸スライダ12との協働により、XY平面上の任意の位置に装着ヘッド51を移動可能に構成されている。つまりヘッド移動装置14は、装着ヘッド51を直交する2方向(X方向及びY方向)に移動させることができる。キャリッジ16は、内部にマークカメラ42を有している。マークカメラ42は、基板1に付された基準マークなどを上方から撮像する。マークカメラ42としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置が用いられる。
【0013】
装着ヘッド51は、固定部41に対して着脱可能に取り付けられる。装着ヘッド51は、ヘッド本体43と、吸着ノズル43aとを備えている。ヘッド本体43は、所定角度間隔で配置された複数のノズルホルダ43bを有している。吸着ノズル43aは、電子部品2を先端に吸着可能であって、各ノズルホルダ43bに対して交換可能に取り付けられている。また、装着ヘッド51の前面側中央部には、ヘッド着脱作業の際に用いる持ち手52が取り付けられている。
【0014】
部品カメラ36は、部品供給装置31と基板搬送装置21との間であって、装着ヘッド51の移動経路の下方に設けられている。部品カメラ36は、装着ヘッド51によって吸着された電子部品2を下方から撮像するカメラであり、例えばCCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置が用いられる。
【0015】
制御装置38は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置38は、CPUのほかに、ROM、HDD、RAM、入出力インタフェースなどを備えている。これらはバスを介して相互に通信可能に接続されている。制御装置38には、部品カメラ36、マークカメラ42からの画像信号、X軸スライダ13の位置検出信号、Y軸スライダ12の位置検出信号などが入出力インタフェースを介して入力される。一方、制御装置38からは、基板搬送装置21への制御信号、部品供給装置31への制御信号、ヘッド移動装置14への駆動信号、装着ヘッド51への駆動信号などが入出力インタフェースを介して出力される。
【0016】
次に、本実施例の部品装着機11において、装着ヘッド51をキャリッジ16に対して着脱するための構成(ヘッド着脱機構61、操作手段71)について説明する。なお、
図3は装着ヘッド51がキャリッジ16に取り付けられた状態におけるヘッド着脱機構61及び操作手段71を示す概略側面図であり、
図4は同じくその概略正面図である。
図5は装着ヘッド51がキャリッジ16から取り外された状態におけるヘッド着脱機構61及び操作手段71を示す概略側面図である。
図6はヘッド取り外し前のヘッド着脱機構61及び操作手段71を示す要部拡大概略正面図であり、
図7は同じくその要部拡大概略側面図である。
図8はヘッド取り外し時のヘッド着脱機構61及び操作手段71を示す要部拡大概略正面図であり、
図9は同じくその要部拡大概略側面図である。
【0017】
図3~
図9に示されるように、ヘッド着脱機構61は、ヘッド移動装置14の固定部41に対して装着ヘッド51を着脱するための機構である。ヘッド着脱機構61は、第1の係止部62aを有する係止部材67、第1の被係止部62b、第2の係止部63a、第2の被係止部63b、カム体65、支軸66(連結部材)などにより構成されている。
【0018】
第1の被係止部62bは、装着ヘッド51側に設けられている。具体的には、装着ヘッド51の背面側に隆起部47が突設されており、隆起部47の上面側中央部にローラ形状を有する第1の被係止部62bが設けられている。
【0019】
係止部材67は、略円錐状の第1の係止部62aを先端部に有する略円柱状の部材であって、キャリッジ16の固定部41側に設けられている。具体的には、固定部41における前面側の中央部かつ上寄りの位置に、係止部材67を保持するため保持部64が設けられており、保持部64には上下方向に沿って延びる保持孔64aが形成されている。係止部材67は保持孔64aに対して下向きに挿入されることで、保持部64に保持されている。係止部材67の基端には保持孔64aよりも大径のフランジ部62cが形成されている。フランジ部62cの下面は、保持部64の上面に当接することで支持される。なお、フランジ部62cは、保持孔64aからの係止部材67の抜け止めを図るためのストッパとして機能する。そして、装着ヘッド51側に設けられた第1の被係止部62bには、固定部41側に設けられた第1の係止部62aが係脱可能に係止する。本実施例では、ローラ形状を有する第1の被係止部62bの周面と、略円錐状を有する第1の係止部62aの円錐面とが、互いに接触し合って係止する。
【0020】
第2の被係止部63bは、キャリッジ16の固定部41側に設けられている。具体的には、第2の被係止部63bは、先端部が上方を向くように形成された左右方向に長い係止片であって、固定部41における前面側の下端部に設けられている。
【0021】
第2の係止部63aは、装着ヘッド51側に設けられている。具体的には、第2の係止部63aは、先端が下を向くように形成された断面三角形状の突片であって、隆起部47の下面側の左右両端部に一対設けられている。そして、固定部41側に設けられた第2の被係止部63bには、装着ヘッド51側に設けられた一対の第2の係止部63aが係脱可能に係止する。本実施例では、第2の被係止部63bの先端部傾斜面と、第2の係止部63aの先端部傾斜面とが、互いに接触し合って係止する。
【0022】
カム体65及び連結部材としての支軸66は、キャリッジ16の固定部41側に設けられている。固定部41において保持部64の上方位置には、固定部41の前後方向に沿って延びる支軸挿通孔(図示省略)が設けられ、支軸挿通孔には支軸66が回転可能に挿通された状態で保持されている。支軸66は、前側に第1端66aを有し、後側に第2端66bを有している。支軸66の第2端66b側は保持部64の支軸挿通孔内に埋没している一方、支軸66の第1端66a側は支軸挿通孔から突出している。なお、支軸66において支軸挿通孔内に埋没している領域の外周面には、付勢手段としてのねじりバネ68が装着されている。ねじりバネ68は、支軸66を
図4,
図6,
図8の時計回り方向に回転させるための付勢力を常時与えている。
【0023】
支軸66の第1端66aには、カム体65が一体回動可能に設けられている。カム体65は、係止部材67の基端側にあるフランジ部62cの上面に対して常時当接している。カム体65は、フランジ部62cの上面を押圧することで係止部材67を先端側に突出させる。本実施例のカム体65は、長径部及び短径部を有する板カムである。従って、長径部がフランジ部62cの上面に当接するときには(
図3,
図6,
図7参照)、従動節である係止部材67が下方に押圧される。一方、短径部がフランジ部62cの上面に当接するときには(
図8,
図9参照)、従動節である係止部材67が下方に押圧されなくなる。
【0024】
操作手段71としてのクランプレバー71は、カム体65を駆動させるための金属製の部材であって、キャリッジ16側の固定部41に設けられている。クランプレバー71は、固定部41と装着ヘッド51との着脱時に、少なくとも固定部41の左右両側からヘッド着脱機構61を操作可能な構造を有している。本実施例のクランプレバー71は、
図6等に示すように、2つのレバー部72L、72R(操作部)と、先端保護部材73と、支軸固定部74と、を有している。クランプレバー71を構成する支軸固定部74はリング状に形成されており、中心部に設けられた孔には支軸66の第2端66bが挿通されて固定されている。これにより、カム体65とクランプレバー71とが支軸66を介して駆動連結されている。2つのレバー部72L、72Rは、支軸固定部74に設けられており、互いに反対方向に延びている。ゆえに、クランプレバー71は、ほぼ回転対称な形状を有するシーソー型のレバーとなっている。先端保護部材73は、操作者がレバー部72L、72Rを回動操作しやすいように、レバー部72L、72Rの先端を覆って保護している。2つのレバー部72L、72Rのうち、左側レバー部72Lは、先端が固定部41の左側面44に到るように延設されており、左側面44から突出している。従って、左側レバー部72Lは、左側面44の側から操作可能となっている。右側レバー部72Rは、先端が固定部41の右側面45に到るように延設されており、右側面45から突出している。従って、右側レバー部72Rは、右側面45の側から操作可能となっている。
【0025】
次に、本実施例の部品装着機11において、装着ヘッド51をキャリッジ16に対して着脱する手順について説明する。
図6、
図7に示すヘッド取り外し前の状態(ヘッド装着状態)では、固定部41の前面と第2の被係止部63bの先端部との間にできる凹所に、第2の係止部63aが上方から挿入された状態で配置される。このとき、第2の被係止部63bの先端部傾斜面に対し、第2の係止部63aの先端部傾斜面が接触して係止する。支軸66に装着されたねじりバネ68の付勢力により、支軸66は時計回り終端位置まで回動した状態となっている。このとき、左側レバー部72Lの先端は、最上端位置にあって左側面44からは殆ど突出していないが、操作可能な状態となっている。右側レバー部72Rの先端は、最下端位置にあって右側面45からは殆ど突出していないが、操作可能な状態となっている。この場合、カム体65の長径部がフランジ部62cの上面に対して当接し、係止部材67を下方に押圧する。その結果、第1の係止部62aを保持部64の下面側から突出させた状態が維持される。つまり、第1の被係止部62bの周面に対し、第1の係止部62aの円錐面が接触して係止した状態が維持される。それゆえ、装着ヘッド51がキャリッジ16に対して位置ズレ不能に固定されてロックされたヘッド装着状態となる。
【0026】
上記のヘッド装着状態から装着ヘッド51を取り外す場合には、
図8、
図9のように左側レバー部72Lまたは右側レバー部72Rを回動操作する。具体的には、固定部41の左側面44の側から操作する場合には、左手で左側レバー部72Lを下方に押し下げるようにする。また、固定部41の右側面45の側から操作する場合には、右手で右側レバー部72Rを上方に押し上げるようにする。これらのいずれかの操作を行うと、ねじりバネ68の付勢力に抗して支軸66及びカム体65が反時計回りに回動し、カム体65の短径部がフランジ部62cの上面に対して当接するようになる。すると、カム体65の位置がこれまでより高くなり、係止部材67が下方に押圧されなくなる結果、第1の係止部62aが保持部64内に退避した状態となる。つまり、第1の被係止部62bの周面に対し、第1の係止部62aの円錐面が接触して係止した状態が解除される。それゆえ、装着ヘッド51をキャリッジ16から取り外し可能な状態となる。その際、レバー部72L、72Rを操作していない手で装着ヘッド51の持ち手52を持ってキャリッジ16から取り外す。装着ヘッド51を取り外した後に、レバー部72L、72Rから手を離すと、クランプレバー71は元の位置に復帰する。
【0027】
ここで、従来の部品装着機では、操作レバーが固定部41の左側面44のみに設けられていた。そのため、固定部41の右側面45にいる作業者が操作レバーを操作するときには、手を奥まで(即ち左側面44まで)回す必要があり、力が入りにくかった。よって、腕が短い人や、力が強くない人や、利き手が左手ではない人などにとっては、操作レバーを操作しづらく、装着ヘッド51の取り外しを容易に行うことができなかった。また、固定部41に装着ヘッド51が取り付けられた状態では、固定部41の右側面45にいる作業者は操作レバーが装着ヘッド51によって隠れて目視できなくなり、操作レバーを手探りで探す必要があるため、作業性が悪かった。
【0028】
本実施例の構成によれば、複数の操作部72L、72Rは、固定部41と装着ヘッド51との着脱時に、少なくとも固定部41の左側面44、右側面45の両方からヘッド着脱機構61を操作することができる。即ち、左側の操作部72Lを操作することで、固定部41の左側面44からヘッド着脱機構61を操作することができる。そればかりでなく、右側の操作部72Rを操作することで、固定部41の右側面45からもヘッド着脱機構61を操作することができる。そのため、固定部41の右側面45にいる作業者にとっても、固定部の左側面44にいる作業者にとっても、ヘッド移動装置14のキャリッジ16から装着ヘッド51を容易に取り外すことができる。また、装着ヘッド51の取付時であっても、操作部72L、72Rの少なくとも一方が目視可能であるため、操作部72L、72Rを手探りで探す手間が省かれる。よって、メンテナンスに要する時間が短縮され、作業性も向上する。
【0029】
本実施例の部品装着機11における操作手段71は、レバー部72L、72Rを有するクランプレバー71である。特に本実施例のクランプレバー71は、支軸66に対して固定される支軸固定部74と、支軸固定部74に設けられ互いに反対方向に延びる2つのレバー部72L、72Rと、を有する。つまり、クランプレバー71はいわゆるシーソー型のレバーであるため、例えば一方のレバー部72Lを回動させると、他方のレバー部72Rもそれに連動して回動する。それゆえ、固定部41の一方の側面からロック状態が目視確認できなくても、他方の側面からロック状態を目視確認できるという利点がある。また、クランプレバー71は、比較的簡単な構成であるため、コスト高を招くこともない。さらに、従来装置に適用する場合であっても、1つのレバー部72Lのみを有する従来型のクランプレバー71を、本実施例のクランプレバー71に取り換えるだけでよいので、とりわけ部品点数の増加を伴わないという利点がある。
【0030】
また、本実施例の部品装着機11は、以下に記すような利点を有する。一般的にこの種の部品装着機11では、ヘッド着脱時における安全設計の観点から、X軸スライダ13のX軸モータへの通電を遮断している。そのため、ヘッド着脱時にはキャリッジ16がX軸方向に沿って手動で移動自在となっている。例えば、装着ヘッド51が右端移動位置(
図2のP2を参照)にある状態で、装着ヘッド51を取り外すために、左側レバー部72Lに操作力を加える状況を想定する。この場合、左側レバー部72Lの回動操作の開始時に、
図2の左方向へ力が加わりやすいことから、キャリッジ16がX軸方向に沿って左方向にスライドしてしまう。また、装着ヘッド51が左端移動位置(
図2のP1を参照)にある状態で、装着ヘッド51を取り外すために、右側レバー部72Rに操作力を加える状況を想定する。この場合、右側レバー部72Rの回動操作の開始時に、
図2の右方向へ力が加わりやすいことから、キャリッジ16がX軸方向に沿って右方向にスライドしてしまう。つまり、クランプレバー71に与える力が逃げてしまい、大きい力で操作しないとカム体65を回動させてロック状態を解除することができない。その点、本実施例の部品装着機11によれば、装着ヘッド51が右端移動位置P2にある状態なら右側レバー部72Rを操作し、装着ヘッド51が左端移動位置P1にある状態なら右側レバー部72Rを操作すればよい。従って、クランプレバー71に与える力が逃げにくくなる結果、より小さな力であってもロック状態を解除することが可能となり、装着ヘッド51を容易に取り外すことができる。
【0031】
以上、実施例1について説明したが具体的な態様は上記実施例1に限定されるものではない。上記の実施例1では、カム体65と操作手段71とを駆動連結する連結部材66がカム体65を回動させる支軸66であったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、連結部材66は支軸66でなくてもよく、カム体65を回動させることが可能なリンク機構などであってもよい。
【0032】
上記の実施例1では、2つのレバー部72L、72Rを有する1つのクランプレバー71を1つの連結部材66に設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、左側のレバー部72Lを有するクランプレバー71と、右側のレバー部72Rを有するクランプレバー71とを別個に備えるとともに、それら2つのクランプレバー71を1つの共通の連結部材66に設けた構成としてもよい。
【0033】
上記の実施例1では、操作手段をクランプレバー71とし、それにおける操作部を互いに反対方向に延びる2つのレバー部72L、72Rとしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、2つのレバー部72L、72Rが互いに反対方向に延びていなくてもよい。
【0034】
上記の実施例1では、操作手段71が、固定部41の左右両側からヘッド着脱機構61を操作可能な2つの操作部72を含んでいたが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、操作手段71が、上記2つの操作部72に加えて、固定部41の上側または下側からヘッド着脱機構61を操作可能な操作部72をさらに含んでいてもよい。
【0035】
上記の実施例1では、操作手段71がレバー部72を有するクランプレバー71であったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、操作手段71がレバー形状以外の操作部72を備えるものでもよい。そのような操作部72の具体例としては、ダイヤル等のような回転操作部や、プッシュボタン等のような押圧操作部などを挙げることができる。
【0036】
上記の実施例1では、部品装着機11が1つのキャリッジ16を備えており、固定部41に対して1つの装着ヘッド51が着脱可能であったが、この構成に限定されるものではない。例えば、他の実施例では、部品装着機11が独立して移動する2つのキャリッジ16を備えており、それらの各々が有する固定部41に対して装着ヘッド51が1つずつ着脱可能な構成であってもよい。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
1:電子部品
2:基板
11:部品装着機
13:ヘッド移動装置
41:固定部
44:(固定部の)左側面
45:(固定部の)左側面
51:装着ヘッド
61:ヘッド着脱機構
62b:被係止部としての第1の被係止部
62a:係止部としての第1の係止部
64:係止部材
65:カム体
66:連結部材としての支軸
66a:第1端
66b:第2端
71:操作手段としてのクランプレバー
72L、72R:操作部としてのレバー部
74:支軸固定部