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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135660
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電解研磨システム
(51)【国際特許分類】
   C25F 7/00 20060101AFI20240927BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20240927BHJP
   B66D 1/40 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C25F7/00 M
B66C13/22 L
B66D1/40 A
C25F7/00 R
C25F7/00 J
C25F7/00 S
C25F7/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046453
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000113838
【氏名又は名称】マルイ鍍金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】井田 義明
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA02
3F204CA01
3F204DD01
(57)【要約】
【課題】電解研磨処理において、同種、異種の多数の被処理物を一度に処理することができる。
【解決手段】前記天井クレーンは、環状または直線状に張り渡された天井レール上を移動する移動台車から2本のチェーンを吊下して被処理物を運搬する。前記2本のチェーンは、前記移動台車から吊下げられた天井レール方向の前後に配置される。前記吊りかごは、前記2本のチェーンに吊下げられる。前記移動台車は、移動制御手段で前後の移動が制御される。前記吊りかごには、主陽極と主負極を配設し、前記主陽極から正の枝電極が当該吊りかごに収納された被処理物に接続され、また、主負極から負の枝電極が前記被処理物の近傍の電解液中に張り出される。当該吊りかごは、同種、異種にかかわらず複数の研磨被処理物を収容でき、各研磨被処理物は当該吊りかごの中にさらに設けられた位置保持枠内に収められる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に構成された天井レール上を移動する移動台車からチェーンを垂下して被処理物を運搬する天井クレーンと、
前記移動台車から吊下された天井レール方向の前後の2本のチェーンと、
前記2本のチェーンに係止可能であるとともに、主陽極と主陰極を配設した吊りかごと、
前記移動台車の移動を制御する移動制御手段と、
前記2本のチェーンをそれぞれ制御して前記吊りかごの傾きと高さを制御するチェーン制御手段と、
を備えたことを特徴とする電解研磨システム。
【請求項2】
前記吊りかごは、複数の被処理物を収容し、前記主陽極と各被処理物を正の枝電極を介して接続し、主陰極から負の枝電極を前記各被処理物の近辺に張り出した、請求項1に記載の電解研磨システム。
【請求項3】
前記チェーン制御手段が、2本のチェーンを別個に伸縮させて吊りかごの傾きを制御する伸縮制御手段と、吊りかごの振動を制御する振動制御手段を備えた請求項1に記載の電解研磨システム。
【請求項4】
前記移動台車が、自走機能を備えたチェーンブロックと自走機能のないチェーンブロックを移動方向前後に連結した構成である請求項1に記載の電解研磨システム。
【請求項5】
前記吊りかごが、主陽極と、主負極を備えた請求項1に記載の電解研磨システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解研磨に関し、特に、電解研磨の半自動化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解研磨は、被処理物側を陽極、電解液側を陰極にして、所定の電流を流して、被処理物の表面を電気的に削る処理である。ステンレスについては、この電解研磨処理は同時に不働態膜を形成する処理でもある。電解研磨は、電気鍍金と異なって大きな電流を流す必要があることから、電極間の距離を小さくして10Vとか20Vと言った電圧で処理するようになっている。
【0003】
図9は電解研磨をする前に電極を組み立てている状態を示すものである。被処理物1の近辺で、当該被処理物1との絶縁を確保した状態で陰極の骨格70を組み立て、当該陰極の骨格70から、更に補助極71を被処理物の周囲に張り出して固定する構成としている。尚、被処理物である陽極74は、被処理物に対して直接陽極リードが接続される。
【0004】
当該陰極の骨格70を利用して、もしくは被処理物1から直接チェーン75で被処理物1を前記陰極の骨格70、補助極71おともに天井クレーン等で吊り下げた状態で、電解液に浸漬する。
【0005】
電解液中での電解研磨が終了すると、被処理物を前記電極ごと電解液から外に出し、付着した電解液を滴下させてから更に、水洗する。その後電極を外して湯洗工程、乾燥工程へと進むことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
なし
【非特許文献】
【0007】
なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電解メッキの場合は比較的電流が小さく、多数の鍍金被処理物を共通の電極で処理できるので自動化しやすく、現実に自動化された工場が稼働している。しかしながら、電解研磨の場合は、前記したように被処理物ごとに電極を組む必要があり、図9に示すように負極の設置が大掛かりとなり、自動化ははなはだ困難となる。
【0009】
従って、多数の同種被処理物を同時に電解研磨することが出ず、ましてや異なる形状の複数被処理物を同時に電解研磨することはできなかった。
【0010】
仮に、上記電極の問題が解決した場合であっても、陰極から発生する気泡が被処理物に付着すると、その部分の研磨が十分でなかったり、色が他の部分と異なったりの状態が発生する。
【0011】
加えて、前記電解液や洗浄用の水が被処理物に残留すると、その部分が他の部分と色が異なることになり、製品としては不合格であり、全体の歩留まりを悪化させることになる。
【0012】
前記気泡の発生の問題、電解液や水分の残留の問題は、人が目でみながら処理する場合は比較的防止しやすいが、自動化して人の目が届かない場合でしかも同種、異種にかかわらず複数の被処理物が同時に処理される場合はより顕著に表れることになる。
【0013】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、電極の組み立てが容易で、同種、異種の多数の被処理物を一度に処理することができ、電解研磨中の気泡の付着がなく、しかも電解液や水洗用の水の残留がなく製品の歩留りの高い自動電解研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の天井クレーン、2本のチェーン、吊りかご、移動制御手段およびチェーン制御手段を備える。
【0015】
前記天井クレーンは、環状または直線状に張り渡された天井レール上を移動する移動台車から2本のチェーンを吊下して被処理物を運搬する。前記2本のチェーンは、前記移動台車から吊下げられた天井レール方向の前後に配置される。前記吊りかごは、前記2本のチェーンに吊下げられる。前記移動台車は、移動制御手段で前後の移動が制御される。
【0016】
前記吊りかごには、主陽極と主負極を配設し、前記主陽極から正の枝電極が当該吊りかごに収納された被処理物に接続され、また、主負極から負の枝電極が前記被処理物の近傍の電解液中に張り出される。当該吊りかごは、同種、異種にかかわらず複数の研磨被処理物を収容でき、各研磨被処理物は当該吊りかごの中にさらに設けられた位置保持枠内に収められる。
【0017】
前記チェーン制御手段は、前記2本のチェーンを、相互に関連をもたせながら別個に伸縮させて前記吊りかごの傾きを制御する伸縮制御手段と、吊りかごの振動を制御する振動制御手段を備える。
【0018】
前記移動台車は、自走機能を備えたチェーンブロックと自走機能のないチェーンブロックを移動方向前後に連結した構成である。
【発明の効果】
【0019】
前記吊りかごに主陽極と主負極が設けられているので、改めて正負の電極骨材を組む必要がなく、前記主陽極と主負極を利用して正負の枝電極を組むことで足る。電解液に被処理物が漬かった状態で、前記2本のチェーンの相対的な長さを調整することによって、吊りかごを前後に傾けることができ、前に高く後ろに低く、また後ろに高く前に低く、を繰り返すことによって、気泡の除去ができる。また、電解液(洗浄水)から被処理物を上げた状態で、吊りかごの前後の傾きを変えることのよって、電解液(洗浄水)を切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の概念図である。
図2】吊りかごを示す斜視図である。
図3】主陽極、主負極と処理被処理物との関係を示す図である。
図4】処理被処理物と枝電極との関係を示す図である。
図5】位置保持枠を示す図。
図6】本発明の電解ラインシステムの全体平面図である。
図7】本発明の電解ラインシステムの側面図である。
図8】本発明の電解ラインシステムの運用手順を示すフロー図である。
図9】従来の電極の骨格を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の移動台車と吊りかごの関係を示す斜視図である。
【0022】
天井に以下の作業工程をカバーできる環状のレール10が配設される。当該環状レール10上に移動台車20が載せられる。
【0023】
前記、移動台車20は前記レール10上に載せられた前後のチェーンブロック20a、20bよりなり、ここで前のチェーンブロック20aは自走能力を持ち、後ろのチェーンブロック20bは自走能力を持たない。従って、後ろのチェーンブロック20bは前のチェーンブロック20aと連結され、前のチェーンブロック20aに牽引される構成となっている。当該移動台車20の移動は制御盤200(図6参照)に組み込まれた移動制御手段210で制御される(後述)。
【0024】
前記それぞれのチェーンブロック20a、20bより、フック22を先端に取り付けたチェーン21a、21bが吊下げられ、各チェーンブロック20a、20bのチェーンモータを制御することによって、各チェーン21a、21bの長さが相互に関連を持たせながら制御される。
【0025】
制御盤200には、各チェーンブロック20a、20bを制御するチェーン制御手段220も備えており、上記チェーンの制御を司ることになる(後述)。
【0026】
前記2本のチェーン21a、21bの先端のフック22には図2に示す吊りかご40が吊下げられる。
前記吊りかご40の左右の中央から正負の電極の導入電極41+、41?が立ち上げられている。正極の導入電極41+は、当該吊りかご40の左右中央に幅方向の上端縁に渡された主陽極42+に電気的に連結され、負極の導入電極41?は、前記主陽極42+の左右両脇に張り渡された2本の主負極42?に電気的に連結されている。
【0027】
前記主陽極42+、主負極、42?を持つ吊りかごは、複数の被処理物1を収容でき、また電解処理をすることができる。
【0028】
すなわち、図3に示すように前記主陽極42+には、正の枝電極43+がクランプ44a(図4参照)で固定され、各被処理物1(1a・・1d)に伸ばされてクランプ44bで接続される。また、前記主負極42?には、負の枝電極43?がクランプ44cで固定され、各被処理物1の近傍に伸ばされる。この負の枝電極43?は、各被処理物1(1a・・1d)の形状や大きさに応じた相応の数を必要とする。尚、前記被処理物1(1a・・1d)と正の枝電極43+の接続位置は下記に説明する電解処理中に随時変更され、電解むらが出ないようにする必要がある。
【0029】
例えば、図3に示す管体の被処理物1a、1bに対しては、管体の中に垂れる負の枝電極、管体の周囲に垂れる負の枝電極が必要であり、後者は管体の少なくとも径方向両側に必要であり、管体が大きい場合は、更に、前記の直角方向にも2本必要となる。
【0030】
いずれにしても、多数の同種、あるいは多種の被処理物1に対して、枝電極43+、43?を用いて、被処理物1が電解研磨できる状態を簡単に構成することができ、個々の被処理物ごとに処理していた従来の方法より遥かに処理能力を上げることができる。
【0031】
尚、負の枝電極43?は、周囲を合成樹脂の網体で包んでおくと、被処理物に近づけても、当該被処理物との絶縁を確保することができ、しかも電流の流れを阻止することはない。
【0032】
後に説明するように、吊りかご40は電解処理中に傾斜させたり振動を与えられたりするところから、当該吊りかご40に収納された被処理物1の位置を固定する必要がある。そこで、吊りかご40には、図5に示すように、被処理物1の大きさに応じた大きさの位置保持枠50が、被処理物1の数に応じて配設される。
【0033】
被処理物1は、上記位置保持枠50に入れられた状態で、吊りかご40内に配置されるのであるが、その表面は電解液と接する状態を形成しておく必要がある。すなわち、被処理物1と位置保持枠50の底が平面で接するような場合は、被処理物1と電解液が接している状態が形成されないことになる。そこで、吊りかご40の底部には点で被処理物1を持ち上げる嵩上げ板51が配置される。
【0034】
図5では、所定高さの針状体52が所定間隔で突き出している合成樹脂の板材が、前記嵩上げ板51として前記位置保持枠50の底部に置かれている。被処理物1は当該板材52の上に置かれるので、底部も電解液に接することになり、当該底部が電解処理から漏れることはない。
【0035】
上記のように被処理物1を設置した吊りかご40は前記移動台車20から吊下がる2本のチェーン21a、21bで吊下げられる(図1)。後に説明するように前記2本のチェーン21a、21bでは、前記制御盤200に組み込まれたチェーン制御手段220で相互に関連を持って、それぞれ単独に長さを調整でき、前記吊りかご40を傾けたり、上下に振動させたりすることができるようになっている。
【0036】
図8に示すように、上記環状のレール10の下の床側には、電解研磨に必要な電解液槽102、液切り槽103等が配設されるが、より詳しい説明は以下の<動作>の項にゆずる。
【0037】
また、上記の環状レール10には、被処理物1を収納した吊りかご40の数に応じた移動台車20が複数台載せられ、移動制御手段210で順次移動させるようになっている。
【0038】
<動作>
以上のように構成した電解研磨システムは以下のように動作する。以下前記環状レール10に対応して床側に設けられる各種の槽やスペースとともに、当該電解研磨ラインでの作業手順を説明する。
【0039】
先ず、前記環状レール10の下にある、治具セット台101上で、吊りかご40に、被処理物1が収納される。このとき、被処理物1は前記位置保持枠50内の嵩上げ板51上に載せられた状態となり、嵩上げ板51(位置保持枠50)とは、複数の針状体52の先端でのみ接することになる。尚、位置保持枠50の大きさと数は被処理物1の大きさに合わせて、以下の電解処理に取り係る前に任意に決定することができ、おおきな被処理物では1しか吊りかご40に収めることができない場合もある。
【0040】
上記の状態で、被処理物1に対して吊りかご40の正負の枝電極43+、43?が、図3に示すようにセットされ、当該吊りかご40の前後両端は、前記2本のチェーン21a、21bで吊下げられる。すなわち、上記したように、被処理物1に対して陽極の枝電極43+を接続するとともに、陰極の枝電極43?を前記被処理物1の近辺に配設する。
【0041】
このように被処理物1がセットされた吊りかご40を、前記2本のチェーンで水平に吊上げて、電解液が充填された槽(電解槽)102の上にまで移動させ、ここで吊りかご40を前後に傾斜させる(例えば吊りかごの前方に対して後方を10cm程度高く)。この状態で、電解液に被処理物を浸漬する(図8、S1)。
【0042】
すなわち、電解液は比重が大きく、広い面積で一度に電解系と被処理物が接した場合、被処理物1の形状によっては電解液に沈みこまないで浮いた状態となることがある。この状態の発生を抑えるために、上記のように吊りかご40を傾斜させて、被処理物の端部から徐々に電解液に沈めるようにする。
【0043】
被処理物1を電解液に浸漬した後、浸漬状態のまま吊りかご40を水平に戻して、電源をONにして電解研磨を開始する(図8、S2→S3。
【0044】
電解研磨が所定時間(例えば3分)継続すると(図8、S4)、被処理物1の表面に、水素の気泡が付着してその部分の研磨を妨げることがある。そこで、例えば電解研磨を上記所定時間継続した後に、電源を一旦OFFにし、被処理物1を一定高さ(例えば20cm)上昇させ、電解液の中で、前のチェーン21aを所定高さ(例えば10cm)高くして、その後水平に戻す。同様にして、後方のチェーン21bを所定高さ高くして水平に戻す。この動作を所定回数繰り返すことによって、被処理物1の表面に付着した水素の気泡は除去されることになる(図8、S5→S6→S7)。
【0045】
上記のように、表面の気泡が除去されると、被処理物1を電解液のなかで、再び元の電解位置に戻して、所定時間電解処理をする。上記電界処理→水素除去工程を何度か繰り返して、一旦、電解槽から被処理物を引き上げて、再び浸漬し、電解処理→水素処除去工程を実行する。設定された回数、浸漬→電解処理→水素除去処理を繰り返した後(図8、S8→S9)水洗処理に移行する。
【0046】
前記の電解処理の最後に電解液から被処理物を引き上げることになるが、この引き上げに際しても吊りかご40を前後に傾斜して、電解液が切れやすい状態にして引き上げる(図8、S10)。所定時間(3分程度)電解液槽上で前記傾斜した状態で保持して(S11)、更に逆方向に所定時間(例えば2分、S13)傾け、その後に平行にして、吊りかごは次の液切れ槽上に移動させられる。
【0047】
液切れ工程は液切れ槽103に吊りかご40を入れた状態で、弱い風を被処理物に所定時間当てることによって実行される。当該液切れ工程が終了すると、吊りかご40は水洗水槽104上に移動する。
【0048】
水洗は、水洗槽104に被処理物1を吊りかご40ごと浸漬する。電解処理時には、電解液の比重の関係で、吊りかごを前後傾斜させて、電解液に浸漬したが、電解液に比べて水洗水(純水)は比重が小さいので、吊りかごを傾斜させる必要はない。
【0049】
純水の充填された水洗槽104に吊りかご40ごと浸漬された被処理物1は、この時点で、前側を高く後ろ側を低く→水平→前側を低く後ろ側を高くを繰り返して電解液を十分に洗い去る。また、更に、吹き付け槽を設けてエアーブローをおこなうこと、あるいはシャワー槽105内で、純水を浴びさせて電解液の除去を徹底することも可能である。
【0050】
前記シャワー工程が終わると、治具バラシ工程に移行する。
【0051】
すなわち、吊りかご40は、バラシ台106上に移行され、当該バラシ台106の上で治具バラシがなされ、被処理物1と吊りかごの電極を切り離して、被処理物を吊りかごから取り出し、水洗かごにいれる。
【0052】
上記のように水洗かごにいれられた被処理物1は、当該水洗かごごと前記天井クレーンに吊下げられ、二次シャワー槽107上に垂下される。ここで、2回目のシャワーを浴びさせ、次いで湯洗槽108に浸漬されて、湯洗される。
【0053】
湯洗が完了すると、水洗かごごと引き上げられて、乾燥工程に移行する。
【0054】
乾燥工程は乾燥室109に水洗かごを垂下した状態で、熱風をブロアーで吹きかけることによって実行する。
【0055】
乾燥工程が終了すると、移動台車20は荷出し仕上げ台110上に移動し、客先に配送する状態に梱包する。
【0056】
上記では特定の移動台車20が、治具セット工程から仕上げ工程に至るまでの処理について説明したが、本発明は、複数の移動台車20が同時に天井レール10に載せられ、当該複数台の移動台車20について順番に、前記治具セット工程から仕上げ工程前の処理をすることができる。
【0057】
まず、レール10上には、各槽あるいは台101~110に対応して接触センサー(図外)が備えられている。
【0058】
この状態で、最初の吊りかご40について、治具セット台101で、治具(電極)のセットが終了すると、コントローラ200の移動指示手段210から当該最初の吊りかご40に対応する移動台車20に移動指示がだされる(人為的にスタートボタンが押される)。当該最初の移動台車20が移動して、当該吊りかご40が電解液槽102上に移動すると、ここで前記接触センサーを作動させる。
【0059】
上記接触センサーが作動すると、コントローラ200は当該最初の吊りかご20に対して前記電解研磨のシーケンスを作動させる。このとき、後続の吊りかご40の準備ができていても、現在進行している処理が終了しないかぎり、当該後続の吊りかご40の移動台車20は前進しない。
【0060】
前記最初の吊りかご40の電解工程が終了すると、コントローラ200の移動指示手段210が移動台車20に対して移動指示をする。移動台車20が移動して電解液槽102の上の接触センサーをOFFにし、次の液切り槽102に対応する接触センサーをONにする。これによって、最初の吊りかご40に対して液切り工程が実行されることになる。
【0061】
一方、前記電解液槽102上の接触センサーがOFFになると、その旨がコントローラ200に伝えられ、コントローラ200は次の吊りかご40の準備ができているかを確認して、準備ができているときは、移動手段210が作動して、当該2番目の吊りかご40を電解液槽101上のまで移動させる。これによって、2番目の吊りかご40が電解液槽40に対応する接触センサーをONにすると、当該2番目の電解かかご40に対する電解処理が進行することになる。
【0062】
以上のようにして複数の吊りかご40にセットされた被処理物1が順次電解研磨されることになる。
【0063】
以上説明したように主陽極と主陰極を持った吊りかごを用いることによって、まず、電極を組むことを容易にし、さらに、吊りかごを必要に応じて傾斜させる機構を組み込むことによって、電解研磨の質を維持できる構成として、従来全く不可能であった、電解兼の自動化を達成した。
【符号の説明】
【0064】
1(1a・・1d) 被処理物
10 レール
20(20a、20b) 移動台車(チェーンブロック)
22 フック
21a、21b チェーン
40 吊りかご
41+、41? 導入電極
42+、42? 主陽極、主負極
43+、43? 正の枝電極、負の枝電極
44a、44b 44c クランプ
50 位置保持枠
51 嵩上げ板
52 針状体
101 治具セット台
102 電解槽
103 液切れ槽
104 水洗槽
105 シャワー槽
106 バラシ台
107 二次シャワー槽
108 湯洗槽
109 乾燥室
110 仕上げ台
200 コントローラ
210 移動制御手段
220 チェーン制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9