(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135663
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】コロイド結晶用組成物及び印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/10 20140101AFI20240927BHJP
C09D 11/033 20140101ALI20240927BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20240927BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
C08F 20/12 20060101ALI20240927BHJP
C08F 12/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09D11/10
C09D11/033
B41M3/00 Z
C08L101/00
C08F20/12
C08F12/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046460
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱本 禎樹
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 真澄
(72)【発明者】
【氏名】中里 睦
【テーマコード(参考)】
2H113
4J002
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA03
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4J100JA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印刷時に良好な再溶解性を有し、また版詰まりが起こりづらく、また印刷後の塗膜の発色性に優れるコロイド結晶用組成物の提供。
【解決手段】樹脂微粒子(A)及び水を含み、E型粘度計により測定したチキソトロピー指数(TI値)が1.00~2.00である、コロイド結晶用組成物。更に、1気圧における沸点が95~250℃の親水性溶剤(B)を含む、上記のコロイド結晶用組成物。更に、HLB値が3.0~15.0のノニオン系界面活性剤(C)を含む、上記のコロイド結晶用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子(A)及び水を含み、E型粘度計により測定したチキソトロピー指数(TI値)が1.00~2.00である、コロイド結晶用組成物。
【請求項2】
更に、1気圧における沸点が95~250℃の親水性溶剤(B)を含む、請求項1記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項3】
更に、HLB値が3.0~15.0のノニオン系界面活性剤(C)を含む、請求項1又は2記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項4】
前記親水性溶剤(B)が、一価の低級アルコール溶剤、グリコール系溶剤、及びグリコールエーテル系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項2記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項5】
前記親水性溶剤(B)の含有率が、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として0.5~30質量%である、請求項2記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項6】
前記ノニオン系界面活性剤(C)が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、及びシロキサン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項7】
前記ノニオン系界面活性剤(C)の含有率が、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として、0.5~5質量%である、請求項3に記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項8】
グラビア印刷用である、請求項1又は2記載のコロイド結晶用組成物。
【請求項9】
基材、及び請求項1又は2記載のコロイド結晶用組成物からなるコロイド結晶層を備える、印刷物。
【請求項10】
基材、プライマー層、及び請求項1又は2記載のコロイド結晶用組成物からなるコロイド結晶層を備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド結晶用組成物及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べたナノ周期構造を持つ人工結晶であり、ブラッグ反射で知られる特定波長の光の反射やフォトニックバンドギャップによる光閉じ込め効果、光増幅効果等、様々な興味深い光学特性を有することから、近年、活発に検討されている。中でもコロイドサイズの粒子が規則的に配列されたコロイド結晶は、比較的簡便に作製できるフォトニック結晶の一つであるが、コロイド結晶用組成物を印刷する際に、コロイド結晶用組成物の再溶解性が悪いことや、版詰まりなどの印刷不良が生じることから、大量に生産できる状況には至っていない。そのため、発色と印刷適性とを両立するコロイド結晶用組成物が求められている。
【0003】
特許文献1には、微粒子を容易に規則配列することができるとともに、得られる固定化された結晶構造が十分な機械的強度と視覚効果を発現することができる構造色フィルム形成用コーティング組成物及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は流動性が低く、印刷時に版詰まりが生じるという問題点がある。上記のように、従来のコロイド結晶用組成物は、流動性が低く、版詰まりや版かぶりなどの印刷不良が生じるという問題点があるため、印刷物を大量に生産できる状況には至っていない。
【0006】
本発明は、印刷時に良好な再溶解性を有し、版詰まりが起こりづらく、また印刷後の塗膜が優れた発色性を有するコロイド結晶用組成物を提供するという課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂微粒子(A)及び水を含み、E型粘度計により測定したチキソトロピー指数(TI値)が1.00~2.00である、コロイド結晶用組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、1気圧における沸点が95~250℃の親水性溶剤(B)を含む、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、HLB値が3.0~15.0のノニオン系界面活性剤(C)を含む、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記親水性溶剤(B)が、一価の低級アルコール溶剤、グリコール系溶剤、及びグリコールエーテル系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記親水性溶剤(B)の含有率が、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として0.5~30質量%である、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記ノニオン系界面活性剤(C)が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、及びシロキサン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記ノニオン系界面活性剤(C)の含有率が、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として、0.5~5質量%である、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、グラビア印刷用である、上記のコロイド結晶用組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、上記のコロイド結晶用組成物からなるコロイド結晶層を備える、印刷物に関する。
【0016】
また、本発明は、基材、プライマー層、及び上記のコロイド結晶用組成物からなるコロイド結晶層を備える、積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、印刷時に良好な再溶解性を有し、版詰まりが起こりづらく、また印刷後の塗膜が優れた発色性を有するコロイド結晶用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<コロイド結晶用組成物>
本発明のコロイド結晶用組成物は、樹脂微粒子(A)及び水を含み、E型粘度計により測定したチキソトロピー指数(TI値)が1.00~2.00であることを特徴とする。 本発明の組成物は、樹脂微粒子(A)及び水を含み、TI値が上記の範囲内であることによって、高い流動性を有し、印刷時に版詰まりなどの印刷不良が起こりづらいという性質を持つ。
以下、本発明を構成する要件について詳細に説明する。
【0019】
<樹脂微粒子(A)>
樹脂微粒子(A)は、コアシェル型(コア層:内層、シェル層:外層)であってもよいし、均一構造(コア層のみ)であってもよい。樹脂微粒子(A)は、コロイド結晶用組成物中において、分散体の形態で存在し、基材に塗布され乾燥する過程において、水の揮発に伴う移流集積現象により、密充填の形態で規則的に配列して積層する。そして、空隙部分が水から空気に置換されることにより、コロイド結晶層を形成するものである。コロイド結晶層は、ブラッグ反射由来の構造色を発現する層であり、樹脂微粒子(A)の粒子径を制御することにより周期間隔を制御し、様々な色を呈することができる。
【0020】
樹脂微粒子(A)の平均粒子径は、好ましくは100~500nmの範囲である。上記の範囲であると、コロイド結晶層の発色が明瞭となり、より発色に優れたコロイド結晶塗膜を得ることができるため好ましい。なお、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができ、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とする。また、樹脂微粒子における平均粒子径の変動係数(Cv値)は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。変動係数が30%以下であることにより、粒子配列の規則性が良化し、積層体の発色性がより良好になり、また粗大粒子の量が減るため、印刷時に版かぶりが生じづらくなる。変動係数は、粒子径の均斉度を表す数値であり、下記式により算出することができる。
式: 変動係数Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
【0021】
[エチレン性不飽和単量体(a)の重合体]
樹脂微粒子(A)の種類及び製造方法は、特に制限されず、任意の単分散可能な樹脂微粒子を用いることができるが、微粒子(A)の屈折率の制御や単分散性の制御が容易であり、発色性に優れる点から、樹脂微粒子(A)は、エチレン性不飽和単量体(a)の重合体であることが好ましい。より好ましくは、アクリル樹脂又はスチレンアクリル樹脂からなる樹脂微粒子である。
【0022】
エチレン性不飽和単量体(a)の重合体である樹脂微粒子は、例えば、下記の乳化重合により製造することができる。
まず、反応槽に水性媒体と界面活性剤を仕込み、所定の温度まで昇温する。一方、滴下槽には、水、界面活性剤、及びエチレン性不飽和単量体(a)を仕込み、撹拌してエチレン性不飽和単量体(a)の乳化液を調製する。その後、窒素雰囲気下で、反応槽に調製した乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、ポリマーの粒子核が生成し、粒子は徐々に成長して、樹脂微粒子が形成される。
【0023】
上記エチレン性不飽和単量体(a)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、コハク酸β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレート、1-メチルアリル(メタ)アクリレート、2-メチルアリル(メタ)アクリレート、1-ブテニル(メタ)アクリレート、2-ブテニル(メタ)アクリレート、3-ブテニル(メタ)アクリレート、1,3-メチル-3-ブテニル(メタ)アクリレート、2-クロルアリル(メタ)アクリレート、3-クロルアリル(メタ)アクリレート、o-アリルフェニル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体;が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0024】
樹脂微粒子(A)は架橋を形成するための反応性基を有していてもよく、そのような樹脂微粒子(A)を得るために、エチレン性不飽和単量体(a)として、反応性基を有するエチレン性不飽和単量体を用いてもよい。
樹脂微粒子(A)が反応性基を有することで、コロイド結晶層内に架橋を導入することができ、グラビア印刷における絵柄部分の耐摩擦性、及び耐溶剤性が更に向上する。また、樹脂微粒子(A)が反応性基を有することで、コロイド結晶層と後述するプライマー層との間に架橋を導入することができ、基材への追従性、及び耐摩擦性がより向上する。
【0025】
コロイド結晶層の架橋は、樹脂微粒子(A)の反応性基同士を反応させる方法、多官能の架橋剤を介して樹脂微粒子(A)の反応性基同士を反応させる方法等によって導入できる。コロイド結晶層と後述するプライマー層との間の架橋は、樹脂微粒子(A)の反応性基とプライマー層の反応性基を反応させる方法、樹脂微粒子(A)の反応性基とプライマー層の反応性基を多官能の架橋剤を介して架橋させる方法等により導入することができる。
【0026】
樹脂微粒子(A)が有していてもよい反応性基としては、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、ケトン基、ヒドラジド基等が好ましく挙げられ、より好ましくはケトン基である。特に、反応性基がケトン基であり、架橋剤がヒドラジド架橋剤である場合、ケトン・ヒドラジド架橋を形成することができる。ケトン・ヒドラジド架橋は、コロイド結晶の諸物性に悪影響を及ぼさず、水の揮発により低温且つ短時間で架橋を形成できる点から好適に用いられ、加熱によりダメージを受けやすいフィルム基材を用いる場合に有効である。また、ケトン基は親水性が高いため、ケトン基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合組成に用いると、ケトン基は樹脂微粒子(A)の外側、すなわち水媒体との界面付近に導入され、ヒドラジド架橋剤と効率的に架橋を形成できると考えられる。
【0027】
樹脂微粒子(A)がケトン基を有する場合、ケトン基の好ましい含有量は、樹脂微粒子(A)の質量を基準として、0.05~0.3mmol/gの範囲である。0.05~0.3mmol/gの範囲で導入することにより、発色性に悪影響を及ぼさない範囲で、コロイド結晶層の膜強度がより向上し、耐摩擦性がより向上する。
【0028】
[ラジカル重合開始剤]
エチレン性不飽和単量体(a)の重合反応においては、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。当該ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤又は水溶性重合開始剤を使用することができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
油溶性重合開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリル等のアゾビス化合物;が挙げられる。乳化重合においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、水溶性重合開始剤としては例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドのような従来既知のものを好適に使用することができる。
【0030】
[界面活性剤]
樹脂微粒子(A)を乳化重合により製造する場合、低分子界面活性剤や高分子分散剤等の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を用いることで、樹脂微粒子の安定性や単分散性を向上させることができる。樹脂微粒子の単分散性に優れる点から、界面活性剤として好ましくは低分子界面活性剤である。
低分子界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性のものが挙げられ、より詳細には、アニオン性反応性界面活性剤、アニオン性非反応性界面活性剤、ノニオン系反応性界面活性剤、ノニオン性非反応性界面活性剤が挙げられ、好ましくはアニオン性の界面活性剤である。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
ここで反応性界面活性剤とは、上述のエチレン性不飽和単量体と重合可能なものを指す。より詳細には、エチレン性不飽和結合と重合反応し得る反応性基を有するものを意味する。ここで、反応性基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基等のアルケニル基や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。反応性界面活性剤を使用することにより、コロイド結晶の粒子配列、及び耐候性(耐湿性)に悪影響を及ぼす遊離の乳化剤成分が低減され、コロイド結晶の発色性が一層良好となるため好ましい。
【0032】
(アニオン性の界面活性剤)
アニオン性の反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH-05、KH-10、KH-20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR-10N、SR-20N、花王製ラテムルPD-104等);ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAR-10、AR-20);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、花王株式会社製ラテムルS-120、S-120A、S-180P、S-180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS-2等);ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩系若しくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル硫酸塩系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンHS-10、HS-20、HS-30、BC-10、BC-20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX-222、SDX-223、SDX-232、SDX-233、SDX-259、SE-10N、SE-20N、等);(メタ)アクリレー
ト硫酸エステル系(市販品としては、日本界面活性剤株式会社製アントックスMS-60、MS-2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS-30等);リン酸エステル系(市販品としては、第一工業製薬株式会社製H-3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP-70等);が挙げられる。
【0033】
アニオン性の非反応性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類(市販品としては、第一工業製薬製ハイテノールLA-10、LA-12、LA-16等);が挙げられる。
【0034】
(ノニオン性の界面活性剤)
ノニオン性の反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(市販品としては、株式会社ADEKA製アデカリアソープER-10(HLB12.3)、ER-20(HLB15.1)、ER-30(HLB16.4)、ER-40(HLB17.1)、花王株式会社製ラテムルPD-420(HLB12.6)、PD-430(HLB14.4)、PD-450(HLB16.2)等;ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル類(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンAN-10(HLB13.0)、AN-20(HLB18.0)等;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類(市販品としては、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN-20(HLB14.2)、RN-30(HLB16.7)等);が挙げられる。
【0035】
ノニオン性の非反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類(市販品としては、第一工業製薬株式会社製ノイゲンXL-50(HLB11.6)、XL-100(HLB14.7)、XL-1000(HLB19.3)、TDS-50(HLB10.5)、TDS-70(HLB12.1)、TDS-80(HLB13.3)、TDS-120(HLB14.8)、ノイゲンTDX-80(HLB13.1)、TDX-140(HLB14.4)、花王製エマルゲン106(HLB10.5)、108(HLB12.1)1108(HLB13.5)、1135S-70(HLB17.9)等;ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル類(市販品としては、ノイゲンEA-87(HLB87)、EA-127(HLB11.7)、EA-157(HLB14.3)、花王社製エマルゲンA-60(HLB12.8)、A-90(HLB14.5)、A-500(HLB18.0)等;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類(市販品としては、青木油脂工業株式会社製ブラノウンN-505(HLB10.0)、ブラノウンNK-8055(HLB10.8)等;ポリグリセリン脂肪酸エステル類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL Hexaglyn1-L(HLB14.5)、Decaglyn-1-L(HLB15.5)、Decaglyn-1-M(HLB14.0)、Decaglyn-1-LN(HLB12.0)等;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL TMGS-5V(HLB9.5)、TMGS-15V(HLB13.5)、TMGO-5(HLB9.5)、TMGO-15(HLB14.5)等;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL TL-10(HLB16.9)、TP-10EX(HLB15.6)、TS-10V(HLB14.9)、TS-30V(HLB10.5)、TO-10V(HLB15.0)、TO-106V(HLB10.0)、花王社製レオドールTW-L120(HLB16.7)、TW-L106(HLB13.3)、TW-P120(HLB15.6)、TW-S120V(HLB14.9)、TW-S-106(HLB9.5)、TW-O-106(HLB10.0)等;ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL GL-1(HLB15.5)、GS-460(HLB13.0)、GO-440V(HLB12.5)、GO-460V(HLB14.0)、花王社製レオドール430V(HLB10.5)、440V(HLB11.8)、460V(HLB13.8)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類(市販品としては、日本エマルジョン株式会社製EMALEX-810(HLB11.0)、820(HLB14.0)、830(HLB15.0)、840(HLB16.0)、花王社製エマノーン1112(HLB13.7)エマノーン3199V(HLB19.4)等;ショ糖脂肪酸エステル類(市販品としては、三菱ケミカルフーズ社製S-970(HLB9.0)、S-1170(HLB11.0)、S-1570(HLB15.0)、S-1670(HLB16.0)、P=1570(HLB15.0)、P-1670(HLB16.0)、M-1695(HLB16.0)、O-1570(HLB15.0)、L-1695(HLB16.0)、LWA-1570(HLB15.0)等;ポリオキシエチレンラノリン類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL TW-10(HLB12.0)、TW-20(HLB13.0)、BWA-5(HLB12.5)、BWA-10(HLB15.5)、BWA-20(HLB16.0)等;ポリオキシエチレン硬化ひまし油類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL HCO-20(HLB10.5)、HCO-30(HLB11.0)、HCO-40(HLB-12.5)、HCO-100(HLB16.5)等;ポリオキシエチレンステロール類(市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOL BPS-5(HLB9.5)、BPS-10(HLB12.5)、BPS-20(HLB-30)、BPSH-25(HLB14.5)等;アセチレン類(市販品としては、Evonik社製SURFYNOL 420(HLB4.0));シロキサン類(市販品としては、信越シリコーン株式会社製KF-351A(HLB12.0))が挙げられる。
【0036】
(高分子分散剤)
高分子分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、マレイン酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、ビニルピロリドン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ビニルピロリドン-スチレン共重合体、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー株式会社製ポリナスPS-1、ポリナスPS-5等)、スチレンスルホン酸-マレイン酸共重合体、ポリイタコン酸、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエステル、カルボキシビニルポリマー等の水溶性のビニル系共重合体;ポリイソシアネートとポリオールの重付加反応により得られるウレタン樹脂であり、親水基の導入により樹脂全体が水溶化された水溶性ポリウレタン樹脂;多価カルボン酸とポリオールの重縮合反応により得られるポリエステル樹脂であり、親水基の導入により樹脂全体が水溶化された水溶性ポリエステル樹脂;が挙げられる。
【0037】
樹脂微粒子(A)を乳化重合により製造する場合、乳化重合では、一段目と二段目とで単量体の組成を変えて滴下する二段重合、又は、三段以上の多段で単量体の組成を変えて滴下する多段重合を用いてもよい。例えば、下記に示す手順で樹脂微粒子を製造できる。(1)まず、反応槽に水性媒体と界面活性剤とを仕込み、昇温する。その後、窒素雰囲気下でエチレン性不飽和単量体の乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、滴下量にしたがって粒子は徐々に成長する。
【0038】
樹脂微粒子(A)の屈折率は、好ましくは1.45以上であり、より好ましくは1.45~3.00であり、さらに好ましくは1.45~2.00である。屈折率が1.45以上であると、コロイド結晶の発色性が良好になるため好ましい。
【0039】
樹脂微粒子(A)の含有率は、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは35~50質量%である。樹脂微粒子(A)の含有量がこのような範囲にあることにより、樹脂微粒子(A)が良好に規則配列し、またコロイド結晶用組成物が良好なレベリング性を有する。
【0040】
<水>
本発明のコロイド結晶用組成物は、水を含む。水は、上記樹脂微粒子を分散体として得る際に含まれていてもよく、後述する親水性溶剤(B)と混合して加えてもよく、その両方でもよい。水の含有率は、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として、好ましくは40~70質量%であり、より好ましくは50~60質量%である。水の含有量がこのような範囲にあることにより、樹脂微粒子(A)が良好に規則配列し、またコロイド結晶用組成物が適度なレベリング性を有する。
【0041】
<親水性溶剤(B)>
本発明のコロイド結晶用組成物は、水以外の液状媒体として、親水性溶剤を含むことが好ましく、1気圧における沸点が95~250℃の親水性溶剤(B)を含むことがより好ましい。 上記沸点が95℃以上であると、グラビア印刷の際、コロイド結晶用組成物の急激な乾燥を防ぐと同時に基材へのレベリング性が向上する。また、コロイド結晶用組成物の乾燥を遅延させることで、コロイド結晶用組成物を印刷する際の再溶解性が増す。
上記沸点が250℃以下であることにより、残留溶剤が低減し、残留溶剤による粒子の膨潤といった発色性への悪影響が起こらなくなる。
親水性溶剤(B)の沸点は、より好ましくは100~240℃の範囲である。
【0042】
親水性溶剤(B)としては、例えば、1-プロパノール(b.p.97℃)、1-ブタノール(b.p.118℃)、2-メチル-1-プロパノール(b.p.108℃)、2-ブタノール(b.p.100℃)等の一価の低級アルコール溶剤;エチレングリコール(b.p.197.0℃)、1,3-プロパンジオール(b.p.230℃)、プロピレングリコール(b.p.188℃1,2-ブタンジオール(b.p.192℃)、1,4-ブタンジオール(b.p.230℃)、ペンチレングリコール(b.p.188℃)、1,2-ヘキサンジオール(b.p.230℃)、1,6-ヘキサンジオール(b.p.208℃)、ジエチレングリコール(b.p.245℃)等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル(b.p.124℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(b.p.194℃)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(b.p.249℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(b.p.134℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(b.p.202℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(b.p.144℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(b.p.230℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(b.p.171℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(b.p.230℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(b.p.160℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(b.p.208℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(b.p.162℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(b.p.216℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(b.p.120℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(b.p.194℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(b.p.175℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(b.p.243℃)等のグリコールエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン(b.p.202℃)、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン(b.p.175℃)、2-ピロリドン(b.p.245℃)等のラクタム系溶剤;ホルムアミド(b.p.210℃)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(b.p.215℃)、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(b.p.252℃)等のアミド系溶剤;が挙げられる。
これらの親水性溶剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0043】
上記溶剤の中でも、親水性溶剤(B)として好ましくは、一価の低級アルコール溶剤、グリコール系溶剤、及びグリコールエーテル系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。このような親水性溶剤を含有することにより、コロイド結晶用組成物のレベリング性やコロイド結晶用組成物を印刷する際の再溶解性が向上する。
【0044】
親水性溶剤(B)の含有率は、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として0.5~30質量%の範囲であることが好ましく、2~20質量%の範囲であることがより好ましい。親水性溶剤(B)の含有率が上記範囲であることにより、樹脂微粒子(A)の規則配列に影響を及ぼすことなく、コロイド結晶用組成物のレベリング性やコロイド結晶用組成物を印刷する際の再溶解性が増す。
【0045】
[ノニオン性界面活性剤(C)]
本発明のコロイド結晶用組成物は、HLB値が3.0~15.0のノニオン性界面活性剤(C)を含むことが好ましい。ノニオン性界面活性剤(C)を含むことで、コロイド結晶用組成物の流動性が向上し、それによって再溶解性が向上する。ノニオン性界面活性剤(C)のHLB値が3.0以上であることにより、水への溶解性に優れ、基材に対して優れたレベリング性を有する。また、樹脂微粒子(A)の規則配列を乱す、又は界面活性剤により樹脂微粒子(A)が膨潤する、といった悪影響も起こらない。これにより、優れた印刷適性と発色性とを発揮する。HLB値が15.0以下であることにより、コロイド結晶用組成物の表面張力が下がり適切な範囲となる。
【0046】
HLB値は、材料の親水・親油性を数値で表したものであり、前記HLB値が小さいほど親油性が高いことを示す。本明細書においてHLB値は、下記式(1)で表されるグリフィン法の計算式によって算出される。
式(1)
HLB値=20×(親水性部の式量の総和)÷(材料の分子量)
【0047】
ノニオン性界面活性剤(C)としては、上述の(ノニオン性の界面活性剤)の項で挙げた、HLB値が3.0~15.0のものを援用することができる。
ノニオン性界面活性剤(C)として好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、及びシロキサン系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。このような界面活性剤を含有することにより、コロイド結晶用組成物の再溶解性が向上する。
【0048】
ノニオン系界面活性剤(C)の含有率が、コロイド結晶用組成物の総質量を基準として、0.5~5質量%の範囲であることが重要であり、0.5~1.5質量%の範囲であることがより好ましい。ノニオン系界面活性剤(C)の含有率がこのような範囲にあることにより、樹脂微粒子(A)の規則配列に影響を及ぼすことなく、コロイド結晶用組成物の再溶解性が向上する。
【0049】
本発明のコロイド結晶用組成物は、親水性溶剤(B)及びノニオン性界面活性剤(C)を共に含む場合においても、同様に本発明の優れた効果を発揮する。
【0050】
<チキソトロピー指数(TI値)>
チキソトロピー指数(TI値)とは、25℃条件下でE型粘度計にて測定した6rpmにおける粘度(mPa・s)を、60rpmにおける粘度(mPa・s)で除した値から算出できる。チキソトロピー指数は、添加剤及び適切な溶剤の選定によって調節できる。チキソトロピー性が弱くなると、ニュートニアンに近い粘性となる。本発明のコロイド結晶用組成物は、E型粘度計により測定したTI値が1.00~2.00であることが重要であり、1.00~1.60であることが好ましく、1.00~1.40であることがさらに好ましい。TI値が上記範囲であることにより、インキの流動性が良好となるため、インキの流動性低下による版かぶりや版詰まり等の印刷不良が生じづらくなる。
【0051】
コロイド結晶用組成物の粘度は、印刷適性の観点から、3.0mPa・s~200mPa・sであることが好ましい。
【0052】
<架橋剤>
本発明のコロイド結晶用組成物は、上述のとおり、コロイド結晶層内、及びコロイド結晶層と後述するプライマー層との間で架橋を形成するために、架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、特に制限されず、コロイド結晶層及び/又はプライマー層が有する反応性基に応じて適宜選択でき、例えば、活性カルボニル基と反応してケト-ヒドラジド架橋を形成するヒドラジノ基を2つ以上有するヒドラジド化合物(ポリヒドラジド);水酸基やアミノ基と反応してウレタン結合やウレア結合を形成するイソシアネート化合物;カルボキシ基やアミノ基等と反応するエポキシ化合物;が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
より詳細には、例えば、樹脂微粒子(A)及び/又はプライマー層を構成する成分がカルボキシ基を有する場合は、エポキシ架橋剤を介して架橋を形成することができる。また、例えば、樹脂微粒子(A)及び/又はプライマー層を構成する成分が水酸基を有する場合は、ポリイソシアネート架橋剤を介して架橋を形成することができる。また、例えば、樹脂微粒子(A)及び/又はプライマー層を構成する成分がケトン基を有する場合は、ヒドラジド架橋剤を介して架橋することができる。
架橋剤としては、上述のとおり、ケトン・ヒドラジド架橋を形成するために、ヒドラジド架橋剤を用いることが好ましい。ヒドラジド架橋剤としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、多官能のヒドラジド基が変性された水溶性樹脂が挙げられる。
【0053】
コロイド結晶用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよく、例えば、無彩黒色微粒子、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、防腐剤を配合することができる。
【0054】
<印刷物及び積層体>
基材上に、コロイド結晶用組成物を印刷してコロイド結晶層を形成することで、印刷物を得ることができる。また、例えば、基材上に後述するプライマー層等を形成し、当該プライマー層上にコロイド結晶層を形成することで、積層体を得ることができる。
【0055】
本発明のコロイド結晶用組成物を基材、プライマー層等に印刷するための印刷方式としては特に限定されないが、グラビア印刷、フレキソ印刷、又はインクジェット印刷が好適に挙げられる。コロイド粒子の規則配列が阻害されず、発色が良好であることから、コロイド結晶用組成物はグラビア印刷により印刷することが好ましい。
【0056】
コロイド結晶用組成物をグラビア印刷する場合、グラビア製版には、彫刻法や腐食法で作製された各種セル型状(コンベンショナル型、網グラビア型、レーザー型等)を用いることができる。転写により基材上に塗布されたコロイド結晶用組成物は、乾燥によりコロイド結晶層を形成することができる。乾燥方法は特に制限されず、例えば、加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法が挙げられる。樹脂微粒子(A)の規則配列への影響と生産性の観点から、乾燥温度は20~80℃の範囲であることが好ましい。
【0057】
印刷物におけるコロイド結晶層の厚みは、1.0~20μmの範囲であることが好ましい。上記の範囲であることにより、優れた印刷適性と発色性が十分に確保され、基材追従性、耐摩擦性、耐溶剤性により優れた印刷物が得られる。
【0058】
<基材>
基材は特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルムのような熱可塑性樹脂基材;アルミニウム箔のような金属基材;ガラス基材、コート紙等の紙基材、布基材が挙げられる。
【0059】
基材は、塗布面が平滑であってもよく、凹凸のついたものであってもよい。また基材は、透明、半透明、不透明のいずれであってもよく、コロイド結晶塗膜の発色をより明瞭にするため、あらかじめ黒色等に着色された基材を用いてもよい。また、基材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の基材を貼り合わせた積層体であってもよい。
【0060】
<プライマー層>
コロイド結晶用組成物を印刷する場合、基材に直接印刷してもよく、基材上にプライマー層を設け、プライマー層上に印刷してもよいが、基材上でのコロイド結晶層の定着性をより高めるため、プライマー層上に印刷することが好ましい。プライマー層は、例えば、基材上に予めプライマー層形成用組成物を塗布することで形成できる。上記プライマー層形成用組成物は、特に制限されず、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの樹脂を複合化させてなる複合樹脂を含むものが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
プライマー層形成用組成物は、基材やコロイド結晶層への優れた結着性、プライマー層の耐性等の観点から、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる一種以上を含むことが好ましい。
【0061】
プライマー層は、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、無彩黒色微粒子、中和用のアミンが挙げられ、界面活性剤の例としては上述の記載を援用することができる。また、プライマー層は、
プライマー同士のブロッキング(貼り付き)を抑制するためのアンチブロッキング剤として、脂肪酸アミド、及び/又はシリカ粒子を含有してもよい。
【0062】
<感熱記録体>
基材及び本発明のコロイド結晶用組成物からなるコロイド結晶層を備える印刷物、又は更にプライマー層等を有する積層体は、加熱処理によりコロイド結晶層中の粒子が溶解し、流動化して空隙部が埋まるという特徴を有する。これにより、コロイド結晶層の発色が退色し、明瞭な発色変化が生じるため、当該印刷物又は積層体は、感熱記録体として使用することができる。
加熱処理方法は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択でき、例えば、サーマルプリンターを用いて、サーマルヘッドを積層体に当てて加熱する方法;レーザー光を照射して積層体中の光熱変換材料に光を吸収させ、隣接する樹脂微粒子を加熱する方法;オーブン加熱、電子レンジ加熱、ボイル処理が挙げられる。
【0063】
中でも、レーザーによる画像形成は、基材、樹脂層、非画像形成部を傷めずに画像形成することができるため好ましい。また、基材、プライマー層を形成する樹脂、樹脂微粒子に与える悪影響が小さいことから、赤外線レーザーを使用することが好ましい。赤外線のレーザーマーカーとしては、CO2レーザーマーカー(波長10600nm)やYVO4レーザーマーカー(波長1064nm)、YAGレーザーマーカー(波長1064nm)、ファイバレーザーマーカー(波長1090nm)等が挙げられる。
【0064】
(光熱変換材料)
光熱変換材料は、積層体にレーザー光を照射した際に、レーザー光を吸収して熱に変換し近接するコロイド結晶層中の樹脂微粒子への加熱を促進する働きを担う。光熱変換材料としては、赤外に吸収領域を有する有機材料、無機材料、カーボン材料等が挙げられる。
【実施例0065】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0066】
<チキソトロピー指数(TI値)>
コロイド結晶用組成物のチキソトロピー指数(TI値)は、25℃条件下でE型粘度計にて測定した6rpmにおける粘度(mPa・s)を、60rpmにおける粘度(mPa・s)で除した値から算出した。
【0067】
<平均粒子径、Cv値>
平均粒子径は、微粒子分散体を500倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定を行った。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。また、下記式により、粒子径の均斉度を表す変動係数Cv値を算出した。
式: Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
【0068】
<樹脂微粒子(A)分散体の調製>
[製造例1]
スチレン79.0部、イソボルニルメタクリレート20.0部、アクリル酸1.0部、アクアロンAR-10(第一工業製薬株式会社製、アニオン性の反応性界面活性剤(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩類))の25%水溶液4.0部(固形分1.0部)、イオン交換水39.0部を混合、撹拌して一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水95.0部と、一段目の乳化液のうちの1.5%を加えた。反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら、乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.2部(固形分0.11部)を2時間かけて滴下しながら反応させ、コア粒子を合成した。
次に、スチレン27.6部、n-ブチルアクリレート13.2部、メタクリル酸2.2部、アクアロンAR-10の25%水溶液1.7部(固形分0.4部)、イオン交換水16.7部を混合、撹拌して、二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を調整した。一段目の滴下完了から20分後、二段目の乳化液の滴下を開始した。内温を80℃に保ちながら二段目の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液1.6部(固形分0.04部)を2時間かけて滴下しながら反応を進め、樹脂微粒子の水分散体を得た。
反応後、水を添加して固形分を45.0%に調整した。その後、25%アンモニア水(NH3(aq))を1.7部添加して樹脂微粒子を中和し、樹脂微粒子(A-1)の水分散体を得た。得られた樹脂微粒子の平均粒子径は248nm、Cv値は12.9%であった。
【0069】
[製造例2]
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水68.9部を仕込んだ。次いで、別途、メチルメタクリレート80.0部、n-ブチルメタクリレート9.0部、2-エチルヘキシルアクリレート8.0部、アクリル酸1.0部、ジアセトンアクリルアミド1.0部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1.0部、アクアロンKH-10(第一工業製薬、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系のアニオン性反応性界面活性剤)の20%水溶液5.0部、水40.4部を予め混合、撹拌して調製したエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3%を、反応容器に更に加えた。
反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を保ちながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させてから、水で固形分濃度45.0%に調整し、樹脂微粒子(A-2)の水分散体を得た。得られた樹脂微粒子の平均粒子径は201nm、Cv値は25.8%であった。
【0070】
[製造例3]
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水95.0部を仕込んだ。次いで、別途、スチレン97.0部、アクリル酸2.0部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0部、アクアロンKH-10の20%水溶液を5.0部、水39.1部を混合、撹拌して調製した一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの1.5%を、反応容器に更に加えた。
反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として、過硫酸カリウムの2.5%水溶液5.7部を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.0部を2時間かけて滴下しながら反応させ、粒子を合成した。
一段目の滴下完了から20分後、別途、メチルメタクリレート15.0部、n-ブチルアクリレート23.1部、アクリル酸0.9部、アクアロンKH-10の20%水溶液2.1部、水16.8部を混合、撹拌して調製した二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の滴下を開始した。内温を80℃に保ちながら二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液2.1部を2時間かけて滴下しながら反応を更に進め、水を加えて固形分濃度45.0%に調整し、樹脂微粒子(A-3)の水分散体を得た。得られた樹脂微粒子の平均粒子径は255nm、Cv値は26.1%であった。
【0071】
[製造例4]
<プライマー層用の樹脂の製造>
スチレン30.7部、n-ブチルアクリレート64.2部、メタクリル酸5.0部、アクアロンAR-10の25%水溶液部5.6部(固形分1.4部)、イオン交換水40.4部を予め混合、撹拌して、エチレン性不飽和単量体の乳化液を調製した。撹拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水68.9部と乳化液のうちの3%とを加え、内温を80℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に保ちながら、乳化液の残りと過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させてスチレンアクリル樹脂の水分散体を得た。反応完了後、25%のアンモニア水3.9部添加して中和し、イオン交換水で水分散の固形分を45.0%に調整することで、スチレンアクリル樹脂の水分散体を得た。
【0072】
<プライマー層形成用組成物の調製>
[製造例5]
製造例4のスチレンアクリル樹脂の水分散体100.0部に、界面活性剤としてエマルゲン1108(花王株式会社製、エーテル系ノニオン性界面活性剤)1.0部を添加して攪拌し、プライマー層形成用組成物を調製した
【0073】
表1に記載の略称は以下を表す。
シリカ:KE-P30(シリカ球状微粒子粉体)(日本触媒株式会社製)の水分散体 固形分濃度35wt.%(溶媒:水) 粒径0.3μm
エマルゲン1108:花王株式会社製 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤
ノイゲンXL-1000:第一工業製薬株式会社製 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤
エマルゲン1135S-70:花王株式会社製 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤
Hexaglyn1-L:日光ケミカルズ社製 ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤
Decaglyn 1-L:日光ケミカルズ社製 ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤
SURFYNOL420:Evonik社製 アセチレン系界面活性剤
KF-351A:信越シリコーン株式会社製 シロキサン系界面活性剤
ノイゲンEA-87:第一工業製薬株式会社製 ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤
SNシックナー612:サンノプコ株式会社製 増粘剤
【0074】
[実施例1]
二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ製FOR、厚み20μm)のコロナ処理面に、製造例5で調製したプライマー層形成用組成物を乾燥後の厚みが2μmになるようにバーコーターで塗工した後、オーブンで80℃・3分間乾燥させてプライマー層を形成した。更に簡易グラビア塗工機(日商グラビア社製GRAVO-PROOF MINI)に東洋FPP製グラビアシリンダー(彫刻方式:ヘリオ、セル形状:コンプレスト、線数:70線/cm)をセットし、製造例1の樹脂微粒子(A-1)の水分散体を、プライマー層を有するフィルム基材のプライマー層上に印刷し、オーブンで50℃・3分間乾燥して、絵柄が印刷された積層体を得た。コロイド結晶層の厚みは5μmであった。
【0075】
[実施例2~3]
表1に示す材料に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、コロイド結晶用組成物からなるコロイド結晶層を備える積層体を作製した。
【0076】
[実施例4]
製造例1の樹脂微粒子(A-1)の水分散体95部に、エタノール5.0部を添加して撹拌し、コロイド結晶用組成物を調製した。その後、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ製FOR、厚み20μm)のコロナ処理面に、製造例5で調製したプライマー層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが2μmになるようにバーコーターで塗工した後、オーブンで80℃・3分間乾燥させてプライマー層を形成した。更に簡易グラビア塗工機(日商グラビア社製GRAVO-PROOF MINI)に東洋FPP製グラビアシリンダー(彫刻方式:ヘリオ、セル形状:コンプレスト、線数:70線/cm)をセットし、上記コロイド結晶用組成物を、プライマー層を有するフィルム基材のプライマー層上に印刷し、オーブンで50℃・3分間乾燥して、絵柄が印刷された積層体を得た。コロイド結晶層の厚みは5μmであった。
【0077】
[実施例5~28、比較例1~9]
表1に示す配合組成に変更した以外は、実施例4と同様の方法により、コロイド結晶用組成物をそれぞれ調製した。その後、当該コロイド結晶用組成物を用いて、実施例4と同様の方法により、コロイド結晶層を有する積層体をそれぞれ作製した。
【0078】
得られたコロイド結晶用組成物及びコロイド結晶層を有する積層体について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0079】
[版詰まり]
上記実施例及び比較例で得られた積層体について、印刷物の網点パーセント100%の印刷部から3%の印刷部までを、以下の評価基準で評価した。
○:網点パーセント100%の印刷部から3%の印刷部まで階調再現性があり、かつ網点
サイズに変化がない(良好)
△:網点パーセント100%の印刷部から10%の印刷部まで階調再現性があり、かつ網
点サイズに少し変化がある(使用可)
×:網点パーセント70%の印刷部以下の階調再現性がなく、かつ網点サイズに変化があ
る(使用不可)
【0080】
[再溶解性]
実施例1に記載の方法で、実施例1~28及び比較例1~9のコロイド結晶用組成物をOPPフィルムに印刷後、版を30分間停止し版上でインキを乾燥させた。その後、版を1分間空転後、OPPフィルムに印刷し、画像の再現性からインキの再溶解性を評価した。
○ :10秒以内で画像が回復した。(良好)
△ :10秒を超え20秒未満で画像が回復した。(使用可)
× :画像の再現に20秒以上を要した。(使用不可)
【0081】
[発色性(△R)]
上記実施例及び比較例で得られた積層体の絵柄部分について、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V-770D、積分球ユニットISN-923)を用いて、波長250~850nmの範囲で反射スペクトルを測定した。各波長における反射率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS-99-010)をリファレンスとして用いて測定した相対反射率である。得られた反射スペクトルについて、コロイド結晶に由来する反射率の最大値とコロイド結晶によらないベースラインの反射率の差分(△R)を算出した。△Rが大きいほど発色性に優れる。発色性は、以下の基準で評価した。
○:△Rが10%以上(良好)
△:△Rが5%以上10%未満(使用可)
×:△Rが5%未満(使用不可)
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
以上から、所定のTI値を有する本発明のコロイド結晶用組成物は、発色性が良好であり、また、再溶解性や版詰まりの度合いも、使用可能な水準であった。一方で、比較例の組成物はいずれもグラビア印刷適性に劣り、印刷中に版詰まりが生じた。