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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135664
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240927BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046461
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】片岡 全寛
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503BB01
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】複数の電池セルパックの何れかが交換されたときの作業者の作業時間を短縮する。
【解決手段】電池システム1は、複数の電池セル11、および、複数の電池セル11に接続されたセルコントローラ12を有し、予め定められた取付位置に取り付けられた複数の電池セルパック10と、複数の電池セルパック10に接続されたメインコントローラ30とを備える。メインコントローラ30は、電池セルパック10毎に、固有のID情報101と、電池制御情報102と、複数の電池セルパック10が取り付けられる取付位置に対して予め割り当てられた位置情報103とを紐付けて記録する管理部32と、ID情報101と電池制御情報102とを取得する第1取得部34と、複数の電池セルパック10が取り付けられたときに、ID情報101と位置情報103を取得する第2取得部36と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、複数の前記電池セルに接続されたセルコントローラとを有し、予め定められた取付位置に取り付けられた複数の電池セルパックと、
複数の前記電池セルパックの前記セルコントローラに接続されたメインコントローラと、
を備え、
前記メインコントローラは、
前記電池セルパック毎に、固有のID情報と、電池制御情報と、複数の前記電池セルパックが取り付けられる前記取付位置に対して予め割り当てられた位置情報とを紐付けて記録する管理部と、
前記ID情報と前記電池制御情報とを取得する第1取得部と、
複数の前記電池セルパックが取り付けられたときに、前記ID情報と、前記位置情報とを取得する第2取得部と、
を備えた、電池システム。
【請求項2】
前記メインコントローラは、複数の前記電池セルパックのSOC差が、予め定められた基準差よりも大きいときに、故障していると診断する故障診断部を備え、
前記第1取得部は、複数の前記電池セルパックのうちの何れかが交換されたとき、使用前の前記電池セルパックの前記電池制御情報が記憶されたサーバに接続された外部ツールを介して、交換された前記電池セルパックの前記電池制御情報を取得する、請求項1に記載された電池システム。
【請求項3】
前記電池制御情報は、前記電池セルパックのSOC、SOH、または内部抵抗である、請求項1に記載された電池システム。
【請求項4】
前記電池セルパックの前記セルコントローラは、複数の前記電池セルのセル電圧を計測する電圧計測ICを有し、
前記第1取得部は、前記電圧計測ICによって計測された前記セル電圧を取得し、前記セル電圧に基づいて前記SOCまたは前記SOHを算出することで、前記電池制御情報を取得する、請求項3に記載された電池システム。
【請求項5】
前記ID情報は、前記電圧計測ICに予め付された識別子である、請求項4に記載された電池システム。
【請求項6】
前記メインコントローラは、
第1メインコントローラと、
前記第1メインコントローラと通信可能に接続された第2メインコントローラと、
を有し、
複数の前記電池セルパックは、
前記第1メインコントローラに接続される第1電池セルパックと、
前記第2メインコントローラに接続される第2電池セルパックと、
を有する、請求項1に記載された電池システム。
【請求項7】
前記メインコントローラは、マイクロコントローラによって構成され、
前記セルコントローラは、マイクロコントローラによって構成されていない、請求項1から6までの何れか1つに記載された電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、直列に接続された複数の機能モジュールと、複数の機能モジュールに接続されたメインコントローラとを備えた電源装置が開示されている。機能モジュールは、電池セルを積層した電池ブロックと、電池ブロックの状態を検出するための電池状態検出部と、メモリ部と、メインコントローラなどと通信を行うための通信インターフェースとを備えている。
【0003】
例えば特許文献2には、電池が搭載された車両とサーバとの間でデータが送受信される電池情報更新システムが開示されている。車両では、電池の状態を検出する電池監視手段の検出結果に基づいて、電池の劣化度合い求め、求めた劣化度合いに基づいてメモリに記憶される電池情報を更新する。電池を含む電池パックが交換されると、交換前の電池パックの電池IDと電池情報とを紐付けた電池データをサーバに送信し、かつ、交換後の電池パックの電池IDがサーバに送信される。サーバでは、既に記憶されている電池情報を、車両から送信された電池情報に更新し、交換後の電池IDに対応する電池データを車両に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2012/053426号公報
【特許文献2】特開2013-24725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された電源装置において、複数の機能モジュール(以下、電池セルパックともいう。)のうちの何れかが劣化することがあり得る。その場合、劣化した機能モジュールが新しい機能モジュールに交換される。このとき、既存の機能モジュールと、新しい機能モジュールとを直列に接続し直す必要がある。ここで、作業者は、接続し直した複数の機能モジュールの接続順をメインコントローラに記憶させるために、例えば外部ツールなどを使用してサーバから接続順に関する情報を取得するため、作業時間を要することになる。このような作業時間は、出来るだけ短い方が好ましい。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の電池セルパックを備えた電池システムにおいて、複数の電池セルパックのうちの何れかが交換された場合の作業者の作業時間を短縮することが可能な電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される電池システムは、複数の電池セルパックと、メインコントローラとを備えている。電池セルパックは、複数の電池セルと、複数の電池セルに接続されたセルコントローラとを有し、予め定められた取付位置に取り付けられている。メインコントローラは、複数の電池セルパックのセルコントローラに接続されている。メインコントローラは、管理部と、第1取得部と、第2取得部とを備えている。管理部は、電池セルパック毎に、固有のID情報と、電池制御情報と、複数の電池セルパックが取り付けられる取付位置に対して予め割り当てられた位置情報とを紐付けて記録する。第1取得部は、ID情報と電池制御情報とを取得する。第2取得部は、複数の電池セルパックが取り付けられたときに、ID情報と、位置情報とを取得する。
【0008】
上記電池システムによれば、電池システム内において、電池セルパック毎に、ID情報と、電池制御情報と、位置情報とを紐付けて管理することができる。そのため、電池システムにおいて、電池セルパックが組み替えられたとき、電池システム内で、組み替えられた電池セルパックのID情報と、電池制御情報と、位置情報とが紐付けられることで、電池セルパック毎に、電池制御情報と、取付位置とを特定することができる。このように、電池システム内において、電池セルパック毎に、ID情報と位置情報とが自動で紐付けられて管理されるため、複数の電池セルパックを組み替えたときに要する作業者の作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電池システムを示すブロック図である。
図2】電池セルパックの構成を示すブロック図である。
図3】メインコントローラのブロック図である。
図4】管理部が管理する情報の一例を示す図である。
図5】電池セルパックが交換される際の手順について示したフローチャートである。
図6】交換した後の電池セルパックを備えた電池システムを示すブロック図である。
図7】他の実施形態に係る電池システムを示すブロック図である。
図8】他の実施形態に係る電池システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される電池システムの一実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電池システム1を示すブロック図である。本実施形態では、電池システム1は、図示しない負荷に接続される。負荷は特に限定されるものではないが、例えば車両の電動モータなどの駆動装置などである。ここでは、電池システム1は、例えばハイブリッド車や電気自動車などに搭載され、車両を走行させるモータに電力を供給する電源として使用される。ただし、電池システム1は、車両用に限定されない。
【0012】
電池システム1は、複数の電池セルパック10と、メインコントローラ30とを備えている。ここでは、メインコントローラ30に対して複数の電池セルパック10が直列に接続されている。以下の説明において、直列に接続された複数の電池セルパック10の集まりをパック列5という。パック列5の数は特に限定されず、1つであってもよいし、複数であってもよい。パック列5の数は、電池システム1から上記負荷への出力の大きさに応じて適宜設定される。また、1つのパック列5を構成する電池セルパック10の数も特に限定されず、予め定められた数である。各パック列5における電池セルパック10の数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、パック列5が2つであり、第1パック列5Aと、第2パック列5Bとを有している。1つのパック列5における電池セルパック10の数は3つである。なお、ここでは、第1パック列5Aを構成する電池セルパック10を第1電池セルパック10Aともいい、第2パック列5Bを構成する電池セルパック10を第2電池セルパック10Bともいう。
【0013】
図2は、電池セルパック10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、電池セルパック10は、複数の電池セル11と、セルコントローラ12とを備えている。電池セル11は、充放電可能なものである。複数の電池セル11は、直列に接続されている。1つの電池セルパック10における電池セル11の数は特に限定されず、予め定められた数である。各電池セルパック10における電池セル11の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、直列に接続された複数の電池セル11の両端には、プラスコネクタ13Aと、マイナスコネクタ13Bが接続されている。プラスコネクタ13Aには、直列に隣り合う一の電池セルパック10のマイナスコネクタ13Bに接続され、マイナスコネクタ13Bには、直列に隣り合う他の電池セルパック10のプラスコネクタ13Aに接続される。
【0014】
セルコントローラ12は、複数の電池セル11に接続されている。ここでは、セルコントローラ12は、いわゆるマイクロコントローラによって構成されておらず、いわゆるメモリを設けていない。セルコントローラ12は、基板によって構成されており、いわゆるレジスタを設けている。セルコントローラ12は、メインコントローラ30(図1参照)と通信可能に接続されている。セルコントローラ12には、通信インターフェース(以下、通信I/Fともいう。)14が接続されており、通信I/F14を介してメインコントローラ30に接続されている。
【0015】
図2に示すように、セルコントローラ12は、電圧計測IC16を備えている。電圧計測IC16は、複数の電池セル11の全体のセル電圧を計測するものであり、例えばセンサによって構成されている。電圧計測IC16には、固有の識別子17が予め付されている。識別子17に関する情報は、セルコントローラ12(詳しくは、レジスタ)に予め記憶されている。識別子17は、電圧計測IC16を特定するものであり、例えば数字や文字などの列によって構成されている。本実施形態では、識別子17は、電池セルパック10を特定することが可能である。
【0016】
図1に示すメインコントローラ30は、マイクロコントローラ(いわゆるマイコン)によって構成されている。メインコントローラ30は、例えばセルコントローラ12と通信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0017】
本実施形態では、メインコントローラ30は、パック列5毎に設けられている。メインコントローラ30は、第1パック列5Aの複数の第1電池セルパック10Aに接続される第1メインコントローラ30Aと、第2パック列5Bの複数の第2電池セルパック10Bに接続される第2メインコントローラ30Bとを有している。第1メインコントローラ30Aと、第2メインコントローラ30Bとは相互に通信可能に構成されている。
【0018】
本実施形態では、メインコントローラ30に接続されている複数の電池セルパック10は、予め定められた取付位置に取り付けられている。取付位置は、メインコントローラ30に対する相対的な取付位置である。ここでは、メインコントローラ30に対する取付位置P1~P6が予め定められている。各電池セルパック10は、取付位置P1~P6のうちの何れかの予め定められた取付位置に取り付けられている。
【0019】
ところで、電池システム1を使用し続けると、複数の電池セルパック10は劣化し得る。このとき、複数の電池セルパック10において個体差が発生し、ある電池セルパック10のSOC(State of Charge)や、SOH(State of Health)が所定の閾値よりも低くなることがあり得る。このような場合、該当する電池セルパック10を交換する。例えば1つの電池セルパック10を交換する場合、一度、全ての電池セルパック10をメインコントローラ30から取り外し、該当する電池セルパック10を交換した後に、全ての電池セルパック10をメインコントローラ30に接続し直す。このとき、複数の電池セルパック10における取付位置が、取り外す前から変更されることがあり得る。本実施形態では、メインコントローラ30は、電池セルパック10を交換した後であっても、各電池セルパック10と取付位置とを自動で紐付けて管理する。
【0020】
図3は、メインコントローラ30のブロック図である。図3に示すように、メインコントローラ30は、管理部32と、第1取得部34と、第2取得部36と、故障診断部38と、均等化処理部39とを備えている。管理部32、第1取得部34、第2取得部36、故障診断部38、均等化処理部39は、第1メインコントローラ30Aと第2メインコントローラ30Bの何れか一方に備えられてもよいし、両方に備えられてもよい。管理部32は、電池セルパック10毎に取付位置先を管理する。図4は、管理部32が管理する情報の一例を示す図である。本実施形態では、図4に示すように、管理部32は、電池セルパック10毎に、固有のID情報101と、電池制御情報102と、位置情報103とを紐付けて記録する。ここで、固有のID情報101は、電池セルパック10毎に予め割り振られている情報であり、ID情報101から電池セルパック10を特定できる。ID情報101の種類は、電池セルパック10を特定できるものであれば特に限定されない。ここでは、ID情報101は、電池セルパック10の電圧計測IC16に付された識別子17(図2参照)である。
【0021】
電池制御情報102とは、メインコントローラ30またはセルコントローラ12が、複数の電池セルパック10の充放電などを制御する際に使用される情報のことである。電池制御情報102は、例えばSOC、SOH、または電池セルパック10の内部抵抗などである。SOHは、SOHCであってもよいし、SOHRであってもよい。ここで、SOHCとは、初期の満充電容量に対する現在の満充電容量における容量維持率のことである。SOHRとは、初期の内部抵抗値に対する現在の内部抵抗値における抵抗増加率のことである。位置情報103とは、電池セルパック10が取り付けられる取付位置に対して予め割り当てられた情報のことである。すなわち、位置情報103とは、電池セルパック10が取付位置P1~P6(図1参照)のどの取付位置に割り当てられたかに関する情報のことである。
【0022】
第1取得部34は、各電池セルパック10におけるID情報101と電池制御情報102とを取得する。ここでは、第1取得部34は、電池セルパック10毎にID情報101と電池制御情報102を紐付けて取得する。なお、ID情報101および電池制御情報102の取得先は、特に限定されない。図2に示すように、例えば電池セルパック10において、セルコントローラ12には、ID情報101として電圧計測IC16の識別子17が記憶されている。第1取得部34は、各電池セルパック10のセルコントローラ12から電圧計測IC16の識別子17を取得することで、ID情報101を取得する。また、第1取得部34は、電圧計測IC16によって計測された電池セルパック10のセル電圧をセルコントローラ12から取得し、当該取得したセル電圧に基づいて、SOCやSOHなどを算出することで電池制御情報102を取得する。
【0023】
なお、本実施形態では、図1に示すように、メインコントローラ30には、外部ツール40およびサーバ50が通信可能に接続されている。ここでは、メインコントローラ30は、外部ツール40に通信可能に接続され、外部ツール40を介してサーバ50に通信可能に接続されている。外部ツール40は、電池セルパック10のID情報101(例えば電圧計測IC16の識別子17)を取得するためのツールである。例えば電池セルパック10には、ID情報101(ここでは識別子17)が記憶された識別標識(図示せず)が付されている。この識別標識は、例えば1次元バーコードおよび2次元バーコードなどのバーコードや、ICタグなどのRFIDである。外部ツール40は、バーコードを読み込むことが可能なバーコードリーダや、RFIDを読み込むことが可能なRFIDリーダなどである。サーバ50には、ID情報101と、電池制御情報102とが紐付けて記憶されている。サーバ50に記憶された電池制御情報102は、各電池セルパック10における、いわゆる使用前(言い換えると出荷時)の電池制御情報102(SOC、SOHなど)と、交換時の電池制御情報102(SOC、SOHなど)である。ここでは、作業者は、電池制御情報102を取得した電池セルパック10の上記識別標識を外部ツール40で読み取る。このことによって、外部ツール40は、読み取った識別標識からID情報101を取得することがきでる。よって、第1取得部34は、外部ツール40からID情報101を取得することが可能である。また、第1取得部34は、外部ツール40から取得したID情報101に基づいて、ID情報101に紐付けられた電池制御情報102を、サーバ50から取得することが可能である。
【0024】
第2取得部36は、複数の電池セルパック10が取り付けられたときに、ID情報101と、位置情報103とを取得する。ここで、電池セルパック10が取り付けられたときとは、メインコントローラ30に接続されたときのことであり、取付位置P1~P6のうちの何れかに配置されたときのことをいう。第2取得部36は、電池セルパック10毎に、ID情報101と位置情報103とを紐付けて記憶する。本実施形態では、第2取得部36は、セルコントローラ12からID情報101と位置情報103とを取得する。第2取得部36は、各電池セルパック10のセルコントローラ12から電圧計測IC16の識別子17を取得することで、ID情報101を取得する。なお、第2取得部36がID情報101を取得するタイミングと、第1取得部34がID情報101および電池制御情報102を取得するタイミングは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
故障診断部38は、メインコントローラ30に接続されている電池セルパック10が故障しているか否かを診断する。ここでいう「故障」とは、電池セルパック10の劣化のことをいう。ここでは、故障診断部38は、複数の電池セルパック10のSOC差またはSOH差が、予め定められた基準差よりも大きいとき、故障していると判断する。故障診断部38は、電池セルパック10のSOHが予め定められた故障閾値よりも小さいとき、電池セルパック10が劣化しており、故障していると判断する。このように、故障診断部38によって故障(例えば劣化)していると判断された電池セルパック10は、交換されるとよい。
【0026】
均等化処理部39は、複数の電池セルパック10の電池容量を均等化する均等化処理を実行する。ここでは、均等化処理部39には、予め定められた目標値に従って複数の電池セルパック10の電池容量を均等化するための均等化回路(図示せず)が組み込まれている。均等化回路は、例えば電池セルパック10に対して抵抗を接続した閉回路を構成し、閉回路の開閉がスイッチで制御される回路構成とされ得る。電池セルパック10を抵抗に短絡させると、電池セルパック10の電力が消費され、電池容量が下がる。均等化処理では、例えば電池セルパック10の中で最も電池容量が少ない電池セルパック10の電池容量が、均等化の目標値に設定されるとよい。このような均等化処理によって、複数の電池セルパック10の電池容量が均等化される。
【0027】
次に、電池セルパック10が交換される際の手順について、図5のフローチャートに沿って説明する。ここでは、図1の複数の電池セルパック10a~10fのうちの電池セルパック10eが劣化しており、電池セルパック10eを図6の電池セルパック10xに交換する際の手順について説明する。
【0028】
まず図5のステップS101では、新しく交換される電池セルパック10xに対して充放電処理を実施する。ここでは、電池セルパック10xに交換される際の予め定められた交換SOCになるように、電池セルパック10xに対して充放電処理を実施する。
【0029】
次に、図5のステップS103では、作業者は、電池セルパック10e(図1参照)を電池セルパック10x(図6参照)に交換する。ここでは、まず図1の複数の電池セルパック10a~10fをメインコントローラ30から取り外す。その後、作業者は、電池セルパック10eを電池セルパック10xに交換する。次に、作業者は、図6に示すように、電池セルパック10a~10d、10f、10xをメインコントローラ30に接続する。ここでは、電池セルパック10a~10d、10f、10xのそれぞれを取付位置P1~P6の何れかに配置する。このとき、作業者は、電池セルパック10の接続順を気にしなくてもよく、電池セルパック10a~10d、10f、10xを、どの取付位置P1~P6に配置するかは、作業者が自由に決定することができる。ここでは、作業者は、第1メインコントローラ30Aに、電池セルパック10f、10c、10bを接続し、取付位置P1、P2、P3に、それぞれ電池セルパック10f、10c、10bを配置する。また、作業者は、第2メインコントローラ30Bに、電池セルパック10d、10x、10aを接続し、取付位置P4、P5、P6に、それぞれ電池セルパック10d、10x、10aを配置する。なお、本実施形態では、電池セルパック10を取付位置に配置したときに、メインコントローラ30には、取付位置に関する位置情報103(図4参照)が記憶される。
【0030】
次に図5のステップS105では、作業者は、図6に示すように、メインコントローラ30に外部ツール40を接続し、メインコントローラ30をセルパック交換モードに設定する。このことによって、メインコントローラ30は、外部ツール40を介してサーバ50に接続された状態になる。なお、外部ツール40を接続するタイミングは、例えばステップS101の前であってもよい。ここで、セルパック交換モードとは、電池セルパック10を交換する際に設定されるメインコントローラ30に対するモードである。メインコントローラ30をセルパック交換モードにすることで、複数の電池セルパック10に対する均等化処理が行われる。作業者がメインコントローラ30をセルパック交換モードに設定する方法は特に限定されない。例えばメインコントローラ30に配置された、モードを切り替えるボタンを押すことで、メインコントローラ30のモードを、セルパック交換モードに切り替えてもよい。
【0031】
次に図5のステップS107では、各電池セルパック10の情報を取得する。ここでは、図3の第1取得部34は、電池セルパック10a~10d、10f、10xのID情報101と電池制御情報102を取得する。本実施形態では、第1取得部34は、交換していない電池セルパック10a~10d、10fのID情報101と電池制御情報102を、メインコントローラ30から取得する。例えば第1取得部34は、ID情報101として電圧計測IC16の識別子17を取得し、かつ、電圧計測IC16によって計測されたセル電圧を取得し、セル電圧からSOCなどを算出して、電池制御情報102を取得する。また、第1取得部34は、交換後の電池セルパック10xのID情報101を、電池セルパック10xに付された識別標識を読み取った外部ツール40から取得し、取得したID情報101に基づいて、サーバ50から電池セルパック10xの電池制御情報102を取得する。
【0032】
また本実施形態では、図3の第2取得部36は、複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xが取り付けられたときに、複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xのID情報101と位置情報103とを取得する。ここでは、第2取得部36は、セルコントローラ12から、ID情報101として電圧計測IC16の識別子17を取得し、かつ、電池セルパック10が取り付けられたときの取付位置に関する情報である位置情報103を取得する。
【0033】
次に図5のステップS109では、図3の管理部32は、電池セルパック10毎に、固有のID情報101と、電池制御情報102と、位置情報103とを紐付けて記録する。ここでは、管理部32は、各電池セルパック10が、取付位置P1~P6のうちのどの取付位置に交換後に配置されたかを、ID情報101と紐付けて管理する。
【0034】
次に図5のステップS111では、図3の均等化処理部39は、交換後にメインコントローラ30に接続された複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xの電池容量を均等化する均等化処理を実行する。このことによって、交換後にメインコントローラ30に接続した複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xの電池容量を均等化することができ、複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xにおけるSOC差を小さくすることができる。仮に交換後の電池セルパック10a~10d、10f、10xに対して均等化処理が実行されないと、例えば交換された電池セルパック10xのSOCが高いために、複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xのSOC差が基準差よりも大きくなることがあり得る。この場合、複数の電池セルパック10に故障が発生していないにも関わらず、故障診断部38によって故障と判断されるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、ステップS111において均等化処理が実行されるため、複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xにおけるSOC差を小さくことができる。その結果、故障診断部38によって、複数の電池セルパック10a~10d、10f、10xが故障していると判断されない。
【0035】
以上、本実施形態では、図1に示すように、電池システム1は、複数の電池セルパック10と、メインコントローラ30とを備えている。図2に示すように、電池セルパック10は、複数の電池セル11と、複数の電池セル11に接続されたセルコントローラ12とを有し、予め定められた取付位置に取り付けられている。図1に示すように、メインコントローラ30は、複数の電池セルパック10のセルコントローラ12に接続されている。図3に示すように、メインコントローラ30は、管理部32と、第1取得部34と、第2取得部36とを備えている。管理部32は、電池セルパック10毎に、図4に示す固有のID情報101と、電池制御情報102と、複数の電池セルパック10が取り付けられる取付位置に対して予め割り当てられた位置情報103とを紐付けて記録する。第1取得部34は、ID情報101と電池制御情報102とを取得する。第2取得部36は、複数の電池セルパック10が取り付けられたときに、ID情報101と、位置情報103とを取得する。このことによって、電池システム1内において、電池セルパック10毎に、ID情報101と、電池制御情報102と、位置情報103とを紐付けて管理することができる。そのため、電池システム1において、電池セルパック10が組み替えられたとき、電池システム1内で、組み替えられた電池セルパック10のID情報101と、電池制御情報102と、位置情報103とが紐付けられることで、電池セルパック10毎に、電池制御情報102と、取付位置とを特定することができる。このように、電池システム内において、電池セルパック10毎に、ID情報101と位置情報103とが自動で紐付けられて管理されるため、複数の電池セルパック10を組み替えたときに要する作業者の作業時間を短縮することができる。
【0036】
本実施形態では、メインコントローラ30は、複数の電池セルパック10のSOC差が、予め定められた基準差よりも大きいときに、故障していると診断する故障診断部38(図3参照)を備えている。第1取得部34は、複数の電池セルパック10のうちの何れかが交換されたとき、使用前の電池セルパック10の電池制御情報102が記憶されたサーバ50(図1参照)に接続された外部ツール40(図1参照)を介して、交換された電池セルパック10(図6では、電池セルパック10x)の電池制御情報102を取得する。ここでは、外部ツール40によって、電池セルパック10xに付された識別標識を読み取ることでID情報101を取得し、このID情報101に基づいて、サーバ50から電池セルパック10xの電池制御情報102を取得する。このように、交換された電池セルパック10の電池制御情報102を、外部ツール40を介してサーバ50から取得することで、複数の電池セルパック10のSOC差を小さくすることができるため、故障診断部38によって故障であると誤って判断されることを防ぐことができる。
【0037】
本実施形態では、電池制御情報102は、電池セルパック10のSOC、SOH、または内部抵抗である。電池制御情報102として、SOC、SOH(特にSOHC、SOHR)、内部抵抗を取得することで、電池セルパック10の安全性を考慮した充放電許可電流・電力を算出することができる。そして、この充放電許可電流・電力を使用して充放電処理を行うことで、安全性を確保することができる。
【0038】
本実施形態では、図2に示すように、電池セルパック10のセルコントローラ12は、複数の電池セル11のセル電圧を計測する電圧計測IC16を有している。第1取得部34は、電圧計測IC16によって計測されたセル電圧を取得し、当該セル電圧に基づいてSOCまたはSOHを算出することで、電池制御情報102を取得する。このことによって、セルコントローラ12側で電池制御情報102におけるSOCなどを算出しなくてもよいため、セルコントローラ12を簡単な構成で実現することができる。
【0039】
本実施形態では、ID情報101は、電圧計測IC16に予め付された識別子17である。このことによって、新たなID情報101を電池セルパック10に付すことなく、電圧計測IC16に予め付された識別子17を使用して、ID情報101を管理することができる。
【0040】
本実施形態では、図1に示すように、メインコントローラ30は、第1メインコントローラ30Aと、第1メインコントローラ30Aと通信可能に接続された第2メインコントローラ30Bと、を有している。複数の電池セルパック10は、第1メインコントローラ30Aに接続される第1電池セルパック10Aと、第2メインコントローラ30Bに接続される第2電池セルパック10Bとを有している。このように、ここではメインコントローラ30は、複数のメインコントローラの組み合わせによって実現されている。そのため、メインコントローラ30を構成する数を増減させることで、電池システム1の全体の電池容量を容易に増減させることができる。
【0041】
本実施形態では、メインコントローラ30は、マイクロコントローラによって構成されている。セルコントローラ12は、マイクロコントローラによって構成されていない。このことによって、マイクロコントローラで構成されたメインコントローラ30が複雑な処理を実行することで、セルコントローラ12を簡単な構成で実現させることができる。
【0042】
上記実施形態では、図1に示すように、メインコントローラ30は、パック列5毎に設けられており、第1メインコントローラ30Aと、第2メインコントローラ30Bとを有している。しかしながら、図7に示すように、メインコントローラ30の数は1つであってもよい。この場合、メインコントローラ30は、第1パック列5Aの複数の第1電池セルパック10Aに直列で接続され、かつ、第2パック列5Bの複数の第2電池セルパック10Bに直列に接続されてもよい。
【0043】
また、図8に示すように、メインコントローラ30は、第1メインコントローラ30Aと、第2メインコントローラ30Bの他に、統合メインコントローラ30Cを有していてもよい。この場合、統合メインコントローラ30Cは、第1メインコントローラ30Aおよび第2メインコントローラ30Bと通信可能に接続されていてもよい。そして、統合メインコントローラ30Cが、図3に示す管理部32、第1取得部34、第2取得部36、故障診断部38、均等化処理部39を備えていてもよい。
【0044】
以上、ここで開示される発明について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される発明の実施形態は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされ得る。
【0045】
以上の通り、本明細書には、以下の各項に記載の開示が含まれている。
項1:
複数の電池セルと、複数の前記電池セルに接続されたセルコントローラとを有し、予め定められた取付位置に取り付けられた複数の電池セルパックと、
複数の前記電池セルパックの前記セルコントローラに接続されたメインコントローラと、
を備え、
前記メインコントローラは、
前記電池セルパック毎に、固有のID情報と、電池制御情報と、複数の前記電池セルパックが取り付けられる前記取付位置に対して予め割り当てられた位置情報とを紐付けて記録する管理部と、
前記ID情報と前記電池制御情報とを取得する第1取得部と、
複数の前記電池セルパックが取り付けられたときに、前記ID情報と、前記位置情報とを取得する第2取得部と、
を備えた、電池システム。
【0046】
項2:
前記メインコントローラは、複数の前記電池セルパックのSOC差が、予め定められた基準差よりも大きいときに、故障していると診断する故障診断部を備え、
前記第1取得部は、複数の前記電池セルパックのうちの何れかが交換されたとき、使用前の前記電池セルパックの前記電池制御情報が記憶されたサーバに接続された外部ツールを介して、交換された前記電池セルパックの前記電池制御情報を取得する、項1に記載された電池システム。
【0047】
項3:
前記電池制御情報は、前記電池セルパックのSOC、SOH、または内部抵抗である、項1または2に記載された電池システム。
【0048】
項4:
前記電池セルパックの前記セルコントローラは、複数の前記電池セルのセル電圧を計測する電圧計測ICを有し、
前記第1取得部は、前記電圧計測ICによって計測された前記セル電圧を取得し、前記セル電圧に基づいて前記SOCまたは前記SOHを算出することで、前記電池制御情報を取得する、項3に記載された電池システム。
【0049】
項5:
前記ID情報は、前記電圧計測ICに予め付された識別子である、項4に記載された電池システム。
【0050】
項6:
前記メインコントローラは、
第1メインコントローラと、
前記第1メインコントローラと通信可能に接続された第2メインコントローラと、
を有し、
複数の前記電池セルパックは、
前記第1メインコントローラに接続される第1電池セルパックと、
前記第2メインコントローラに接続される第2電池セルパックと、
を有する、項1から5までの何れか1つに記載された電池システム。
【0051】
項7:
前記メインコントローラは、マイクロコントローラによって構成され、
前記セルコントローラは、マイクロコントローラによって構成されていない、項1から6までの何れか1つに記載された電池システム。
【符号の説明】
【0052】
1 電池システム
10 電池セルパック
10A 第1電池セルパック
10B 第2電池セルパック
11 電池セル
12 セルコントローラ
16 電圧計測IC
17 識別子
30 メインコントローラ
30A 第1メインコントローラ
30B 第2メインコントローラ
32 管理部
34 第1取得部
36 第2取得部
38 故障診断部
40 外部ツール
50 サーバ
101 ID情報
102 電池制御情報
103 位置情報
P1~P6 取付位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8