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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135680
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂コンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/00 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240927BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L79/00 B
C08L61/06
C08K3/08
H01F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046482
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】512249009
【氏名又は名称】日本合成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 智
(72)【発明者】
【氏名】高島 知之
【テーマコード(参考)】
4J002
5E041
【Fターム(参考)】
4J002CC03X
4J002CM02W
4J002DA086
4J002EF058
4J002ET017
4J002EX069
4J002FD14X
4J002FD157
4J002FD168
4J002FD206
4J002FD319
4J002GQ01
4J002HA09
5E041AA11
5E041BB03
5E041CA01
5E041NN04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化物が高いガラス転移温度を有し、高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂コンパウンドを提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂コンパウンドであって、ビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含み、前記熱硬化性樹脂コンパウンドの硬化物のTMA法によるガラス転移温度が250℃以上である、前記熱硬化性樹脂コンパウンド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂コンパウンドであって、
ビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含み、
前記熱硬化性樹脂コンパウンドの硬化物のTMA法によるガラス転移温度が250℃以上である、前記熱硬化性樹脂コンパウンド。
【請求項2】
前記硬化剤がフェノール樹脂を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
【請求項3】
前記軟磁性粉が鉄を主成分とした金属粉末である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
【請求項4】
インダクタ外装封止用熱硬化性樹脂コンパウンドである、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
【請求項5】
インダクタにおけるコイルの外装材として用いられる、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂コンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインダクタなどの電子部品においては、コイルを熱硬化性樹脂にて封止することで、外部環境からの保護を行っている。しかし、熱硬化性樹脂は耐熱性に優れるものの、ガラス転移温度を超えた環境下ではガラス領域からゴム領域に相転移し、強度が大幅に低下する。そのため、インダクタの熱耐久性の面では、高いガラス転移温度を発現する材料が求められている。
【0003】
上記の問題点の解決策としては、耐熱性の高い樹脂を使用することが考えられる。当該耐熱性の高い樹脂として、市場で入手可能なビスマレイミド化合物が挙げられる。特許文献1には、ビスマレイミド化合物を溶剤に溶解させて使用することが開示されている。特許文献1には、ビスマレイミド化合物を含む樹脂混合物を150℃以上210℃以下で溶融させることにより、溶剤溶解性および溶液安定性がいずれも良好になると記載されている。
【0004】
また、インダクタなどの電子部品においては、磁性体を添加することがある。特許文献2には、高温環境下における長期耐熱性に優れた磁性体が開示されている。熱硬化性樹脂の硬化物において長期耐熱性とガラス転移温度は関係性があり、当該硬化物が磁性体を含む場合、当該硬化物が有するガラス転移温度以上の温度環境下では、磁性体の劣化が進みやすいと言われている。このような磁性体の劣化を防止する観点からも、より高いガラス転移温度を持つ材料が望まれている。
【0005】
特許文献3には、(A)ビスマレイミド化合物、(B)ベンゾオキサジン、(C)エポキシ樹脂、および(D)クマロン樹脂を含有する樹脂混合物を溶融して得られたプリント配線基板用の樹脂組成物が開示されている。特許文献3は、電子・電気部品において、高耐熱性および低誘電特性(低比誘電率、低誘電正接)を備えた、積層板、プリント配線基板、接着剤、封止剤、塗料および成形品などとして用いられる樹脂組成物を提供することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-26509号
【特許文献2】特許第7133114号
【特許文献3】特許第6946578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の組成を有する熱硬化性樹脂コンパウンドを使用することで、硬化物が高いガラス転移温度を有することがわかった。本発明では、硬化物が高いガラス転移温度を有し、高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂コンパウンドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討し、ビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を溶融混合することで得られた熱硬化性樹脂コンパウンドが、高いガラス転移温度を発現することを見出した。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0009】
[1] 熱硬化性樹脂コンパウンドであって、
ビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含み、前記熱硬化性樹脂コンパウンドの硬化物のTMA法によるガラス転移温度が250℃以上である、前記熱硬化性樹脂コンパウンド。
[2] 前記硬化剤がフェノール樹脂を含む、[1]に記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
[3] 前記軟磁性粉が鉄を主成分とした金属粉末である、[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
[4] インダクタ外装封止用熱硬化性樹脂コンパウンドである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
[5] インダクタにおけるコイルの外装材として用いられる、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂コンパウンド。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂コンパウンドは、硬化物が高いガラス転移温度を有し、高い耐熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の熱硬化性樹脂コンパウンドについて、説明する。
【0012】
本発明の熱硬化性樹脂コンパウンドは、
ビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含み、
前記熱硬化性樹脂コンパウンドの硬化物のTMA法によるガラス転移温度が250℃以上である。
【0013】
(硬化剤)
硬化剤は、特に限定されないが、耐熱性と市場での入手しやすさの観点から、フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂が特に好ましい。このようなフェノール樹脂として、一般的なフェノール樹脂に分類されるものであれば、エポキシ樹脂成形材料の硬化剤に使用されているものを採用することができる。
【0014】
軟磁性粉を除く熱硬化性樹脂コンパウンドの全体に対する硬化剤の含有量は、特に限定されないが、3~35重量%が好ましく、5~25重量%がより好ましく、10~15重量%が最も好ましい。
【0015】
(触媒)
本発明の熱硬化性樹脂コンパウンドにおいて、触媒(硬化促進剤)を配合することで樹脂コンパウンドの加熱時における反応を促進し、成形時間の短縮を図ることができる。
触媒としては、特に限定されないが、イミダゾール類、アミン類、金属塩、ジウレア類などのウレア類、リン系が挙げられる。これらのうちでも、常温下における保存安定性の観点から、ウレア類が好ましく、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素やジウレア類が特に好ましい。
【0016】
軟磁性粉を除く熱硬化性樹脂コンパウンドの全体に対する触媒の含有量は、特に限定されないが、0.1~10重量%が好ましく、0.5~5重量%がより好ましく、1~3重量%が最も好ましい。触媒の含有量が上記の数値範囲内であることにより、ガラス転移温度への影響を抑えつつ硬化を促進させることができる。
【0017】
(離型剤)
離型剤としては、特に限定されず、一般的にエポキシ樹脂組成物に使用されているものを採用できる。離型剤の代表的なものとしては、カルナバ蝋(ロウ)などのカルナバワックス;モンタン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸のエステル;上記高級脂肪酸のエステルの部分ケン化物;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウムなどの高級脂肪酸の金属塩;ジンクステアレート等の金属石鹸を配合することができ、これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。上記の離型剤のうちでも、モンタン酸エステルの部分ケン化ワックス、カルナバロウ、又はこれらの混合物を使用することが好ましい。
【0018】
軟磁性粉を除く熱硬化性樹脂コンパウンドの全体に対する離型剤の含有量は、特に限定されないが、1~15重量%が好ましく、2~10重量%がより好ましく、3~7重量%が最も好ましい。
【0019】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらのカップリング剤は単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。上記のカップリング剤のうちでも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0020】
軟磁性粉を除く熱硬化性樹脂コンパウンドの全体に対するカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、0.1~10重量%が好ましく、0.5~5重量%がより好ましく、1~3重量%が最も好ましい。カップリング剤の含有量が上記の数値範囲内であることにより、ガラス転移温度への影響を抑えつつ樹脂成分と軟磁性粉との密着性を向上させることができる。
【0021】
(軟磁性粉)
軟磁性粉は、熱硬化性樹脂コンパウンドに磁性を付与する成分であり、フィラーとしても機能する。
軟磁性粉は、特に限定されないが、鉄を主成分とした金属粉末とすることができる。軟磁性粉には、その他成分としてC、Si、Cr、Fe、Cu、B、Nb、As、O等の元素が含まれていても良い。
軟磁性粉の粒径は、特に限定されないが、メディアン径で1~100μmとすることができる。最密充填化によるコンパウンドへの充填率向上のために、粒径の異なる複数の軟磁性粉を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
軟磁性粉を除く熱硬化性樹脂コンパウンドの成分100重量部に対して、好ましくは100~5000重量部、より好ましくは1000~3000重量部の範囲で、軟磁性粉を配合することができる。
熱硬化性樹脂コンパウンド全体に対する軟磁性粉の含有量は、特に限定されないが、60~99重量%が好ましく、75~97重量%がより好ましく、90~95重量%が最も好ましい。磁気特性の向上の観点からは軟磁性粉の含有量はなるべく高い方が好ましいが、成形時の流動性も併せて考慮することが望ましい。軟磁性粉の含有量が上記の数値範囲内であることにより、磁気特性と成形時の流動性とのバランスが取りやすく、90~95重量%である場合に特に当該バランスが取りやすい。
【0023】
(その他成分)
熱硬化性樹脂コンパウンドは、その他成分として、例えば、着色剤、応力緩和剤等を単独又は複数組み合わせて含むこともできる。
【0024】
(溶融粘度)
熱硬化性樹脂コンパウンドの溶融粘度は、特に限定されないが、300Pa・s以下が好ましく、200Pa・s以下がより好ましく、150Pa・s以下が最も好ましい。熱硬化性樹脂コンパウンドの溶融粘度は、5Pa・s以上、10Pa・s以上、又は15Pa・s以上とすることもできる。熱硬化性樹脂コンパウンドの溶融粘度の上記数値範囲は任意に組み合わせることができる。
熱硬化性樹脂コンパウンドの溶融粘度が300Pa・s以下であると金型中を流動しやすくなり、金型内の未充填不良率が減らすことができる。
熱硬化性樹脂コンパウンドの溶融粘度は、後述の[実施例]の<熱硬化性樹脂コンパウンドの評価>に記載の条件、手順及び方法に沿って測定することができる。
【0025】
(ガラス転移温度)
熱硬化性樹脂コンパウンドの硬化物のTMA法によるガラス転移温度は、250℃以上であり、260℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、280℃以上が最も好ましい。熱硬化性樹脂コンパウンドの硬化物のTMA法によるガラス転移温度は、500℃以下、400℃以下、又は300℃以下とすることもできる。熱硬化性樹脂コンパウンドのTMA法によるガラス転移温度の上記数値範囲は任意に組み合わせることができる。
熱硬化性樹脂コンパウンドのTMA法によるガラス転移温度が250℃以上であることにより、硬化物が高い耐熱性を有する。
熱硬化性樹脂コンパウンドのTMA法によるガラス転移温度は、後述の[実施例]の<熱硬化性樹脂コンパウンドの評価>に記載の条件、手順及び方法に沿って測定することができる。熱硬化性樹脂コンパウンドのTMA法によるガラス転移温度は、後述の[実施例]の<熱硬化性樹脂コンパウンドの評価>に記載の「追加硬化後の成形物」に関するガラス転移温度とすることができる。
【0026】
(熱硬化性樹脂コンパウンドの製造方法)
ビスマレイミド組成物に対して、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を更に加えて混合撹拌し、顆粒状などの所定の形状に成形することにより、熱硬化性樹脂コンパウンドを製造することができる。各成分の混合に使用するミキサーなどの装置、混合条件などは特に限定されず、従来の熱硬化性樹脂コンパウンドの製造と同様の装置、条件を使用することができる。
【0027】
(用途)
熱硬化性樹脂コンパウンドは、インダクタ外装封止用熱硬化性樹脂コンパウンドとすることが好ましく、インダクタにおけるコイルの外装材として用いられることが特に好ましい。
インダクタ等に内包されるコイルの外装封止では、生産性の面から、無溶剤型の熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形、トランスファー成形により成形する方法がこれまで好適に用いられている。本発明の熱硬化性樹脂コンパウンドは、従来の熱硬化性樹脂組成物と同様に、圧縮成形、トランスファー成形にて使用でき、軟磁性粉を含有したインダクタ分野などの磁気関連の部材に適合し、かつ高いガラス転移温度を持つ熱硬化性樹脂コンパウンドとして好適である。
【実施例0028】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0029】
本発明の実施に使用した市販品を下記に示す。
<ビスマレイミド組成物>
・ビスマレイミド系樹脂:HR-3070(株式会社プリンテック製)
<エポキシ樹脂>
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:jER-1001(三菱ケミカル株式会社製)
・トリフェニルメタン型エポキシ樹脂:TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製)
・4官能型エポキシ樹脂(軟化点:89℃):HP-4700(DIC株式会社製)
【0030】
<硬化剤>
・フェノールノボラック樹脂:H-1(UBE株式会社製)
<触媒>
・ジウレア系触媒:U-CAT 3512T(サンアプロ株式会社製)
<離型剤>
・モンタン酸エステルの部分ケン化ワックス:リコワックス(登録商標)OP(クラリアントジャパン株式会社製)
・カルナバロウ:カルナバ特選No.1(株式会社加藤洋行製)
<カップリング剤>
・3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:KBM-403(信越化学工業株式会社製)
<軟磁性粉>
・アモルファス磁性粉(粗粉):KUAMET6B2 -53μm(エプソンアトミックス株式会社製)
・アモルファス磁性粉(微粉):AW2-08 PF-8F(エプソンアトミックス株式会社製)
【0031】
<実施例1並びに比較例1~3の熱硬化性樹脂コンパウンドの調製>
後述の表1に示す各成分の重量部となるようにして、ビスマレイミド組成物(実施例1)、又は表1に示す各エポキシ樹脂(比較例1~3)、並びに上述の触媒、離型剤、カップリング剤、及び軟磁性粉(充填材)の各成分を、ヘンシェルミキサーに投入し均一に分散させて分散物を得た。得られた分散物において、各成分は溶融することなく、各成分が物理的に分散された状態であった。
上記のようにして得られた分散物を、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を用いて温度120℃、回転数130rpmの条件にて1分間混合し、混練物を得た。得られた混練物(高温の粘土状)を、バットに採取し、常温まで冷却したのちに衝撃式粉砕機(株式会社ダルトン製)にて顆粒状に粉砕し、実施例1並びに比較例1~3の各熱硬化性樹脂コンパウンドを得た。
【0032】
そして、実施例1並びに比較例1~3について、熱硬化性樹脂コンパウンドの合計量に対する軟磁性粉(フィラーに相当)の含有量(重量%)を算出した。結果を表1に示す。
また、実施例1並びに比較例1~3について、熱硬化性樹脂コンパウンドの軟磁性粉以外の成分の合計量に対する、各成分の含有量(重量%)を算出した。結果を表2に示す。
【0033】
<熱硬化性樹脂コンパウンドの評価>
実施例1並びに比較例1~3の各熱硬化性樹脂コンパウンドに関して、下記の1.及び2.の評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
1.溶融粘度
各熱硬化性樹脂コンパウンドに関して、フローテスター(CFT-500EX、株式会社島津製作所製)を使用して、温度180℃、試験荷重50kgf、ダイ穴径1mm×深さ1mm、予熱20秒の条件において、溶融粘度(Pa・s)を測定した。
熱硬化性樹脂コンパウンドの溶融粘度が低いと金型中を流動しやすくなり、金型内の未充填不良率が減るため、熱硬化性樹脂コンパウンドとして好ましい。
【0035】
2.ガラス転移温度
<成形物の作成>
各熱硬化性樹脂コンパウンド7gを採取し、圧縮成形機を用いて、温度180℃、ゲージ圧60kg/cmにて4分保持し、四角柱状の硬化物(高さ:80mm、底面(断面):10mm×4mm)を得た。当該硬化物を「追加硬化前の成形物」とする。
また、上記と同様にして得た四角柱状の硬化物に対して、更に熱風式乾燥機にて250℃、3時間の追加硬化を行い、成形物を得た。当該成形物を「追加硬化後の成形物」とする。
<耐熱性の評価>
上記追加硬化前の成形物及び追加硬化後の成形物を任意の大きさに切り出し、アドバンス理工株式会社製DL-9600を使用して、TMA方式でガラス転移温度を測定した。成形物のガラス転移温度が高いと耐熱性に優れるため好ましい。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
実施例1は、ビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含む熱硬化性樹脂コンパウンドに関する。一方、比較例1~3は、エポキシ樹脂、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含むものの、ビスマレイミド組成物を含まない熱硬化性樹脂コンパウンドに関する。
【0039】
表1に示すように、追加硬化後の成形物に関して、実施例1の成形物では、比較例1~3のエポキシ樹脂をベースとした成形物と比較して、ガラス転移温度が高く、高い耐熱性を有することがわかった。
また、実施例1の熱硬化性樹脂コンパウンドは、比較例1~3の熱硬化性樹脂コンパウンドと比べても、樹脂の流動性(溶融粘度)も大きな変化はなく、実用レベルの特性であることがわかった。
【0040】
以上から、本発明のビスマレイミド組成物、硬化剤、触媒、離型剤、カップリング剤及び軟磁性粉を含む熱硬化性樹脂コンパウンドは、硬化物が高いガラス転移温度を有し、高い耐熱性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂コンパウンドは、電子・電気部品において、インダクタ等の電子部品外装部の封止成形用コンパウンドとして圧縮成形・トランスファー成形による成形に用いることができる。