(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135683
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/48 20060101AFI20240927BHJP
F16F 9/20 20060101ALI20240927BHJP
B61G 11/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16F9/48
F16F9/20
B61G11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046489
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
(72)【発明者】
【氏名】西見 裕介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕一郎
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA55
3J069CC10
3J069EE52
(57)【要約】
【課題】衝撃初期から粘性緩衝器の抵抗が負荷され、弾性体緩衝器の圧縮力で中立位置への復元が可能である緩衝器を提供する。
【解決手段】長手方向に延在し、長手方向に沿って、凸部を有する中央部と、中央部の両端に配置された一対の棒状部と、を備えるピストンと、長手方向に延在し、中空であり、内部に流体を介して前記ピストンの中央部が配置され、長手方向の両端からピストンの一対の棒状部が突出するシリンダと、シリンダを固定し、連結器に固定される緩衝器枠と、一対の棒状部の両端に接続する一対の伴板と、緩衝器枠またはシリンダと一対の伴板の間に弾性部材が配置された一対の弾性緩衝器と、を備える、緩衝器を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在し、前記長手方向に沿って、凸部を有する中央部と、前記中央部の両端に配置された一対の棒状部と、を備えるピストンと、
前記長手方向に延在し、中空であり、内部に流体を介して前記ピストンの前記中央部が配置され、前記長手方向の両端から前記ピストンの前記一対の棒状部が突出するシリンダと、
前記シリンダを固定し、連結器に固定される緩衝器枠と、
前記一対の棒状部の両端に接続する一対の伴板と、
前記緩衝器枠または前記シリンダと前記一対の伴板の間に弾性部材が配置された一対の弾性緩衝器と、を備える、緩衝器。
【請求項2】
前記ピストンの前記中央部の前記長手方向に垂直な断面は円形であり、
前記シリンダの前記長手方向に垂直な前記内部の断面は円形であり、
前記シリンダの前記内部の前記長手方向の中央部の径は、前記シリンダの前記内部の前記長手方向の端部の径よりも大きく、
前記シリンダの前記内部の前記長手方向の前記端部の径は、前記ピストンの前記中央部の径よりも大きい、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記一対の伴板を伴板守に固定する際、前記一対の伴板の間隔を狭める弾性材料が、前記伴板と前記ピストンの間に挿入されている、請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記シリンダの内径の変化によって、前記弾性部材により生じる力と前記流体により生じる力の大小関係を適切に保ち、中立位置に復元する、請求項2に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記流体は、非圧縮性シリコン流体である、請求項1から4のいずれか1項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
連結した車両に乗っている人の乗り心地を改善するため車両用連結器が開発されている。特許文献1では、車両に連結される枠体と、枠体と一体に形成されるシリンダ部材と、車両の伴板守に係止する一対の伴板と、伴板に当接し、シリンダ部材の内部に配置されたピストンを備えるダブル型緩衝器が開示されている。また、ダブル型緩衝器は、シリンダ部材とピストンに加えて伴板とシリンダ部材との間に挟装される弾性体によって、緩衝される。ダブル型緩衝器は、一方の車両からの小さな衝撃力が作用する場合には、弾性体の圧縮変形のみによって緩衝作用が発揮される。また、ダブル型緩衝器は、大きな衝撃力が作用する場合には、弾性体による緩衝作用とシリンダ部材とピストンの間の流動体が絞り流路を流動することによる緩衝作用との両者によってエネルギが吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のダブル型緩衝器は、伴板とピストンの間に空間を設けているため、衝撃初期から粘性緩衝器の抵抗を負荷できない。また、特許文献1に記載のダブル型緩衝器は、粘性緩衝器の抵抗が大きいため、弾性体のみでは復元が困難である。
【0005】
そこで本開示の目的は、衝撃初期から粘性緩衝器の抵抗が負荷され、弾性体緩衝器の圧縮力で中立位置への復元が可能である緩衝器を提供することである。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、緩衝器は、伴板とピストンの間に間隙がなく、シリンダに対するピストンの大きさを適切に設定することによって、粘性緩衝器と弾性体緩衝器のバランスをとることができる。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、衝撃初期から粘性緩衝器の抵抗が負荷され、弾性体緩衝器の圧縮力で中立位置への復元が可能である緩衝器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施の形態にかかる緩衝器の
図1のI-I断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる緩衝器の右側面図である。
【
図4】実施の形態にかかる緩衝器の
図1のIV-IV断面図である。
【
図5】実施の形態にかかる緩衝器の
図4のV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
(実施の形態にかかる緩衝器の説明)
図1から
図5を参照しながら、実施の形態にかかる緩衝器を説明する。
図1は、実施の形態にかかる緩衝器の上面図である。
図2は、実施の形態にかかる緩衝器の
図1のI-I断面図である。
図3は、実施の形態にかかる緩衝器の右側面図である。
図4は、実施の形態にかかる緩衝器の
図1のIV-IV断面図である。
図5は、実施の形態にかかる緩衝器の
図4のV-V断面図である。
【0012】
図4に示されるように、実施の形態にかかる緩衝器100は、ピストン101と、シリンダ102と、流体103と、緩衝器枠104と、伴板105と、弾性緩衝器107と、を備える。また、緩衝器100は、弾性材料108を備えてもよい。
【0013】
図4に示されるように、ピストン101は、長手方向に延在し、長手方向に沿って、凸部を有する中央部101aと、中央部101aの両端に配置された一対の棒状部101bと、を備える。長手方向は、車両と車両の連結方向である。長手方向は、車両の進行方向とも言える。したがって、緩衝器100は、長手方向に沿って緩衝する。
【0014】
図2に示されるように、凸部を有する中央部101aは、長手方向に垂直な断面は円形である。また、凸部を有する中央部の断面は、シリンダ102の内部の断面の形状と同様の形状であれば楕円形、三角形、四角形、または多角形などをとることができる。図示しないが、一対の棒状部101bも長手方向に垂直な断面が円形であることが好ましい。しかしながら、一対の棒状部101bの断面は、楕円形、三角形、四角形、または多角形などシリンダの内部の断面の形状に関係なくあらゆる形をとることができる。
【0015】
図4に示されるように、シリンダ102は、長手方向に延在する。また、シリンダ102は、中空であり、内部に流体103を介してピストン101の中央部101aが配置される。また、シリンダ102は、長手方向の両端からピストン101の一対の棒状部101bが突出する。
【0016】
図2に示されるように、シリンダ102の長手方向に垂直な内部の断面は円形である。シリンダ102の内部の断面の形状は、ピストン101と同様の形状をしていれば、楕円形、三角形、四角形または多角形などをとることができる。流体103は、シリンダ102の内部を満たす。また、流体103は、非圧縮性シリコン流体であり粘性を有する。
【0017】
このようにすることで、シリンダ102の内部に配置されたピストン101が動くと、ピストンの中央部101aで抵抗を受けながら流体103が移動する。このため、ピストン101とシリンダ102は、流体の粘性により緩衝する粘性緩衝器を構成する。
【0018】
シリンダ102の内部の長手方向の中央部の径は、シリンダ102の内部の長手方向の端部の径よりも大きく、シリンダ102の内部の長手方向の端部の径は、ピストン101の中央部101aの径よりも大きい。ここでシリンダ102の中央部とは、長手方向にピストン101の凸部を有する中央部101aに対応する大きさを有する部分である。また、端部とはシリンダ102の中央部から、シリンダの終点にかけて一定の径を有する部分である。
【0019】
このようにすることで、シリンダ102の中央に配置されたピストン101の初動において、抵抗が小さく、ピストン101がシリンダ102の端部に近づくにつれ抵抗を大きくすることができる。そのため、この粘性緩衝器は、シリンダ102の中央に配置されたピストン101の初動において車両の乗り心地を改善できる。さらに、オリフィス等による抵抗力の調整方法と比較して部品点数を少なくすることができる。
【0020】
図2及び4に示されるように、緩衝器枠104は、金属材料から作られ、シリンダ102をねじ110で固定する。また、
図1に示されるように、緩衝器枠104は、一方、特に後方の車両の連結器109と結合される。緩衝器枠104と連結器(図示せず)はピン111で連結される。緩衝器枠104は、シリンダ102を固定できれば、緩衝器枠104の内部の突起の一方の側面にシリンダ102を固定しても、緩衝器枠104の内部の突起の内部にシリンダ102を固定してもよい。すなわち、
図2及び
図3に示されるように緩衝器枠104は、緩衝器100の外形を構成する。
【0021】
図4に示されるように、一対の伴板105は、ピストン101の一対の棒状部101bの両端に接続する。伴板105は、ピストン101を固定する。ピストン101を固定することで、緩衝の初期から粘性緩衝器を作動できる。
【0022】
また、伴板105とピストンの間には、弾性材料108が挟まって配置されるように挿入されている。この弾性材料108は、伴板105を後述する伴板守(図示せず)に固定する際、一対の伴板105の間隔を狭めるために変形する。したがって、弾性材料として、ゴムなどの弾性変形する材料、特に樹脂材料が用いられる。
【0023】
伴板守は、一対の伴板105と当接する。また、伴板守は、車両の両端に固定される。したがって、緩衝器100は、車両に結合された伴板守内で、緩衝器枠104を介して衝撃を緩衝する。
【0024】
図4及び5に示されるように、一対の弾性緩衝器107は、緩衝器枠104またはシリンダ102と一対の伴板105の間に弾性部材が配置されて構成される。弾性緩衝器107は、衝撃の初期から緩衝を発生し、ピストン101とシリンダ102の粘性緩衝器と共に衝撃を緩和する。そのため、弾性緩衝器107は、車両の前後動に対する安全装置の役割を果たす。弾性部材は、ゴムなど変形後、復元する材料であり、ばねを用いることもできる。
【0025】
弾性緩衝器107は、一方の伴板105と緩衝器枠104及び他方の伴板105とシリンダ102との間に配置されてもよい。また、緩衝器枠104の内部にシリンダ102が配置される場合、弾性緩衝器107は、一方の伴板105と緩衝器枠104及び他方の伴板105とシリンダ102との間に配置されてもよい。
【0026】
緩衝器100は、シリンダ102の内径の変化によって、弾性部材により生じる力と流体により生じる力の大小関係を適切に保ち、中立位置に復元する。一実施の形態によれば、弾性材料108によって衝撃初期から粘性緩衝器の抵抗が負荷され、弾性体緩衝器の圧縮力で中立位置への復元が可能である緩衝器を提供できる。
【0027】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
100 緩衝器、101 ピストン、102 シリンダ、103 流体、104 緩衝器枠、105 伴板、107 弾性緩衝器、108 弾性材料、109 連結器、110 ねじ、111 ピン