(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135696
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】端子付電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046506
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】川田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 賢次
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB03
5E085BB11
5E085BB15
5E085DD01
5E085DD03
5E085DD04
5E085DD13
5E085HH11
5E085JJ06
5E085JJ35
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】引張強度を強くできる端子付電線を提供する。
【解決手段】電線20が接合される端子付電線1であって、電線接合部11を有する端子10と、電線接合部11に接合される電線20と、を備える。電線接合部11のうちの電線20と対向する面14には、幅方向Wの異なる位置に高さの異なる第1面14aと第2面14bとが形成される。電線20は、第1面14a、第2面14b、および第1面14aと第2面14bとの間の領域17の少なくとも一部で、電線接合部11に接合される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接合される端子付電線であって、
電線接合部を有する端子と、
前記電線接合部に接合される前記電線と、を備え、
前記電線接合部のうちの前記電線と対向する面には、幅方向の異なる位置に高さの異なる第1面と第2面とが形成され、
前記電線は、前記第1面、前記第2面、および前記第1面と前記第2面との間の領域の少なくとも一部で、前記電線接合部に接合される、
端子付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付電線であって、
前記電線接合部と前記電線とは、前記電線接合部において、前記電線接合部の幅方向の大きさと前記電線の幅方向の大きさとが一致する部分を含む、
端子付電線。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子付電線であって、
前記電線接合部は、ベース部と、前記ベース部の幅方向の端部に突設された壁部とを有し、
前記第1面は、前記ベース部の主面であり、
前記第2面は、前記壁部の先端面である、
端子付電線。
【請求項4】
請求項3に記載の端子付電線であって、
一対の前記壁部が、前記ベース部の幅方向の両端部に形成され、
前記第2面は、前記一対の壁部のそれぞれの先端面に形成されている、
端子付電線。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の端子付電線であって、
前記電線は、前記電線接合部に対して、抵抗溶接により形成される抵抗溶接部、または、超音波接合により形成される超音波接合部を介して、接合される、
端子付電線。
【請求項6】
請求項5に記載の端子付電線であって、
前記電線は、前記電線接合部に対して、前記抵抗溶接部を介して接合され、
前記電線の芯線または前記電線接合部にSnメッキが施される、
端子付電線。
【請求項7】
請求項5に記載の端子付電線であって、
前記端子は、銅または銅合金製であり、
前記電線は銅または銅合金製の芯線を含む、
端子付電線。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の端子付電線であって、
前記電線は撚り線を含む、
端子付電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子付電線に関する。
【背景技術】
【0002】
端子と電線との接合に関して、例えば特許文献1に記載の端子付電線が開示されている。特許文献1には、電線との接合部において、幅方向の端部が中間部に比して上方に位置する端子付電線が開示されている。特許文献1に開示の端子付電線は、端子金具と端子金具の内側に収納される芯線とを超音波溶着により溶着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車に使用される部品について、省スペース化のために小型化されることが求められている。例えば、端子が小型化されると、接合部分の接合幅の狭い端子に対して電線が接合されることとなる。そのときに、端子の接合部分において、十分な接合面積が確保され難い。端子と電線との接合面積が小さくなると、端子と電線との接合部分において、引張強度が弱くなってしまう。したがって、引張強度を強くできる端子付電線が望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、引張強度を強くできる端子付電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子付電線は、電線が接合される端子付電線であって、電線接合部を有する端子と、前記電線接合部に接合される前記電線と、を備え、前記電線接合部のうちの前記電線と対向する面には、幅方向の異なる位置に高さの異なる第1面と第2面とが形成され、前記電線は、前記第1面、前記第2面、および前記第1面と前記第2面との間の領域の少なくとも一部で、前記電線接合部に接合される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、引張強度を強くできる端子付電線が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる端子付電線を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、端子付電線を構成する端子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、端子付電線を構成する電線を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1におけるIV-IV断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、端子と電線との接合の様子を示す説明図である。
【
図6】
図6は、比較例としての端子付電線について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の端子付電線と比較例の端子付電線との引張強度を比較する説明図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態における端子付電線について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態における端子付電線について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態における端子付電線について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
【0010】
本開示の端子付電線は、次の通りである。
【0011】
(1)電線が接合される端子付電線であって、電線接合部を有する端子と、前記電線接合部に接合される前記電線と、を備え、前記電線接合部のうちの前記電線と対向する面には、幅方向の異なる位置に高さの異なる第1面と第2面とが形成され、前記電線は、前記第1面、前記第2面、および前記第1面と前記第2面との間の領域の少なくとも一部で、前記電線接合部に接合される。これにより、端子において高さ方向にも広がる接合部分ができるので、その分端子と電線との接合面積が増える。接合面積が増える分、接合の強度が増す。したがって、引張強度を強くできる。
【0012】
なお、電線接合部と電線とが接合されない部分が生じている場合、第1面の幅と、第2面の幅と、第1面と第2面との間の領域であって電線が接合された部分の幅との和である総幅が、電線接合部の平面視における幅よりも大きいことが好ましい。
【0013】
(2)(1)の端子付電線であって、前記電線接合部と前記電線とは、前記電線接合部において、前記電線接合部の幅方向の大きさと前記電線の幅方向の大きさとが一致する部分を含んでよい。これにより、電線接合部の幅方向において端子と電線との接合部分をより大きくできる。
【0014】
(3)(1)または(2)の端子付電線であって、前記電線接合部は、ベース部と、前記ベース部の幅方向の端部に突設された壁部とを有し、前記第1面は、前記ベース部の主面であり、前記第2面は、前記壁部の先端面であってもよい。これにより、壁部のない電線接合部と比較して、壁部の側面の分接合面積が増える。したがって、引張強度を強くできる。
【0015】
(4)(3)の端子付電線であって、一対の前記壁部が、前記ベース部の幅方向の両端部に形成され、前記第2面は、前記一対の壁部のそれぞれの先端面に形成されていてもよい。これにより、一対の壁部の側面の分、接合面積が増える。また、一対の壁部が第1面の両端に位置することから、電線接合部と電線との接合時に中央に形成される第1面に電線が載置されるので、電線接合部と電線との接合がしやすい。
【0016】
(5)(1)ないし(4)のいずれか一つの端子付電線であって、前記電線は、前記電線接合部に対して、抵抗溶接により形成される抵抗溶接部、または、超音波接合により形成される超音波接合部を介して、接合されてもよい。
【0017】
(6)(5)の端子付電線であって、前記電線は、前記電線接合部に対して、前記抵抗溶接部を介して接合され、前記電線の芯線または前記電線接合部にSnメッキが施されてもよい。Snメッキによって良好に抵抗溶接される。
【0018】
(7)(5)の端子付電線であって、前記端子は、銅または銅合金製であり、前記電線は銅または銅合金製の芯線を含んでもよい。これにより、異種金属接触腐食が抑制される。
【0019】
(8)(1)ないし(7)のいずれか1つの端子付電線であって、前記電線は撚り線であってもよい。これにより、単芯線の場合よりも、形状が変化しやすい。このため、電線が電線接合部の形状に沿った形状に変化しやすく、電線と電線接合部との接触面積を増やすことができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
[第1実施形態]
本開示の端子付電線の具体例を、以下の図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
以下、本開示にかかる端子付電線について説明する。
【0022】
<端子付電線1について>
以下、第1実施形態にかかる端子付電線について、構造の概略を説明する。
図1は、本開示の第1実施形態にかかる端子付電線1を示す斜視図である。
図2は、端子付電線1を構成する端子10を示す斜視図である。
図3は、端子付電線1を構成する電線20を示す斜視図である。
図4は、
図1におけるIV-IV断面を示す断面図である。なお、本実施形態において、面は、平面に限定されず、曲面も含まれる。なお、
図1においては、芯線21の先端部分について撚り線を構成する各導線を図示するが、他の図においては各導線の図示を省略して示す。
【0023】
端子付電線1は、端子10と、端子10に接合される電線20とを備える。電線20は、芯線21と、芯線21を覆う被覆部22とを備える。芯線21は、例えば、銅または銅合金を含む材料により構成される。本実施形態にかかる芯線21は、例えば、撚り線である。また、芯線21には、例えばSnメッキが施される。被覆部22は、例えば、絶縁材料により形成される。なお、本実施形態は、撚り線に対してだけではなく、単芯線に対しても適用可能である。芯線21として、所定の強度を確保したい場合には、撚り線ではなく単芯線が用いられる。ただし、撚り線は、比較的小さい圧力でも形状変化させやすい。したがって、端子10との接合の際に、撚り線の方が、端子10の接合部分の形状に沿わせやすい。
【0024】
図4に示すように、後に詳細に説明する電線接合部11において、電線接合部11の幅方向の大きさw1と電線20の幅方向の大きさw2とが一致する部分を含む。なお、電線接合部11には、芯線21が接合される。なお、本実施形態においては、大きさw1と大きさw2とが一致する構成が採用されるが、これに限定されない。大きさw1と大きさw2とが異なっていてもよい。
【0025】
<端子10について>
端子10は、電線20が接合される電線接合部11と、接続相手に電気接続される電気接触部12と、電線接合部11と電気接触部12とを連結する連結部13とを備える。電線接合部11と電気接触部12と連結部13とは、長さ方向Lに連接する。端子10は、例えば、プレス加工された一枚の板状部材により構成される。端子10は、例えば、銅または銅合金を含む材料により構成される。また端子10には、例えば、Snメッキが施される。端子10の電線接合部11は、異種金属接触腐食の抑制の観点から、芯線21と同種の材料であることが好ましい。
【0026】
電線接合部11は、電線20(芯線21)と対向する面14を有する。面14には、第1面14aと第2面14bとが形成される。第1面14aと第2面14bとは、電線接合部11の幅方向Wの異なる位置に形成される。第1面14aと第2面14bとは、高さ方向Hの高さが異なる。ここで、高さ方向Hとは、幅方向Wと長さ方向Lに垂直な方向である。高さ方向Hは、電線接合部11に対する芯線21の積層方向であってもよく、また、接合時における圧力の印加方向であってもよい。
【0027】
本実施形態において、板状部分の両端部が折り曲げ加工により、高さ方向Hに沿うように上方に折り曲げられている。電線接合部11において幅方向Wの両端部には、壁部16が形成される。壁部16は、電線接合部11の幅方向Wの両端部が折り曲げ加工されることにより形成される。すなわち、電線接合部11は、板状のベース部15と、ベース部15の両端に位置する一対の壁部16とを備える。壁部16は、ベース部15に対して直交するように曲げられている。壁部16は、ベース部15に対して鈍角又は鋭角をなしていてもよい。電線接合部11の第1面14aは、ベース部15(折り曲げ加工されない部分)の一方主面である。また、電線接合部11の第2面14bは、第1面14a(ベース部15)の幅方向Wの両端部に位置する壁部16の先端面16aである。先端面16aは、折り曲げ加工前の板状部材の側面にあたる部分である。本実施形態においては両端部に形成される各先端面16a(第2面14b)は、同じ高さである。なお、各先端面16a(第2面14b)は、異なる高さであってもよい。
【0028】
面14は、さらに、ベース部15上の第1面14aと先端面16a(第2面14b)との間の領域17(壁部16の立ち上がり面16b)を含む。領域17(立ち上がり面16b)には、少なくとも一部で芯線21が接合される。本実施形態においては、ベース部15の第1面14aと芯線21との間と、2つの先端面16a(第2面14b)と芯線21との間と、領域17(立ち上がり面16b)と芯線21との間に、抵抗溶接部23が形成される。本実施形態においては、面14と芯線21との間で隙間が形成されることなく、面14と芯線21とが連続して接合される。第1面14aと2つの先端面16aと2つの領域17と、芯線21との総接合幅は、第1面14aの幅と2つの先端面16aの幅と2つの領域17の立上がり長さとの総和である。ただし、端子10の面14と芯線21との間に隙間が形成されてもよい。隙間は、例えば、第1面14aと立ち上がり面16bとの間のコーナー部分に形成される可能性がある。隙間が形成される場合においても、第1面14aと2つの先端面16aと2つの領域17と、芯線21との総接合幅は、電線接合部11の幅よりも大きいことが好ましい。なお、第1面14aと2つの先端面16aと2つの領域17と、芯線21との総接合幅は、第1面14aの幅と2つの先端面16aの幅と2つの領域17の立上がり長さとの総和から、隙間に応じた長さを減算した長さである。
【0029】
電気接触部12および連結部13は、板状である。電気接触部12には、電線20の接続相手と端子10とを固定する固定部材が貫通する貫通孔12a(
図1および
図2参照)が形成される。固定部材は、例えばネジやボルトである。なお、本実施形態においては、電線20の接続相手と端子10との固定構造としてネジやボルトのような固定部材が例示されるが、これに限定されない。電線20の接続相手と端子10との固定構造として、接着や溶着など他の固定構造又は嵌合構造が採用されてもよい。
【0030】
<端子10と電線20との接合>
図5は、端子10と電線20との接合の様子を示す説明図である。
【0031】
本実施形態においては、電線20の芯線21は、電線接合部11に対して、抵抗溶接部23を介して接合される。抵抗溶接部23は、抵抗溶接により芯線21と電線接合部11との接合部分に形成される。なお、本実施形態においては、芯線21が電線接合部11に対して抵抗溶接部23を介して接合される構成が採用されるが、これに限定されない。抵抗溶接部23に代えて、圧着により形成される圧着部、超音波接合により形成される超音波接合部、半田により形成される半田付け部などを介して、芯線21が電線接合部11に接合されてもよい。
【0032】
図5に示すように、抵抗溶接機30は、下部電極31と、上部電極32と、側部ガイド部材33とを備える。下部電極31は陰極電極であり、上部電極32は陽極電極であってもよい。側部ガイド部材33は、例えば絶縁性を有するセラミック材料によって構成される。側部ガイド部材33は、壁部16の外側側面を両側から支持する。側部ガイド部材33の支持面は壁部16の上方まで延設される。これにより、抵抗溶接の際、電線接合部11の外側にはみ出ようとする芯線21を、側部ガイド部材33の支持面によってはみ出ないように規制することができる。両側の側部ガイド部材33を利用して抵抗溶接を行うことで、電線接合部11の幅方向の大きさw1と電線20の幅方向の大きさw2とが一致する部分を含む構成とすることができる。
【0033】
上部電極32は、高さ方向Hに移動可能である。溶接時には、上部電極32は、下部電極31に近接する方向に移動する。
【0034】
端子10と電線20との抵抗溶接が行われるときには、まず、端子10が下部電極31に載置される。このとき、端子10は、側部ガイド部材33に挟持されるように配置される。次に、端子10の電線接合部11の上に、電線20(芯線21)が載置される。このようにして、電線接合部11と芯線21とが下部電極31と上部電極32との間に配置される。そして、上部電極32が下部電極31に近接する方向に移動し、下部電極31と上部電極32とが電線接合部11と芯線21とを加圧する。この加圧とともに下部電極31と上部電極32とに通電し、電線接合部11と芯線21とを加熱する。加圧によって芯線21が電線接合部11に押付けられ、芯線21が電線接合部11の先端面の形状に沿って変形する。これにより、芯線21が第1面14aと、2つの第2面14bとに押付けられると共に、立ち上がり面16bにも押付けられ、押付けられた部分で電線接合部11に溶接される。
【0035】
この際、電線接合部11の外側にはみ出ようとする芯線21が電線接合部11の外側にはみ出ないように規制されるので、芯線21の両側面が電線接合部11の両側面に一致する。
【0036】
その後、上部電極32が下部電極31から離れる方向へ移動し、上部電極32が初期の位置に戻る。そして、電線20が端子10に接合されてできた端子付電線1が抵抗溶接機から取り出される。なお、上述の順序は適宜変更可能である。
【0037】
<従来技術との比較>
図6は、比較例としての端子付電線101について
図4に対応する断面を示す断面図である。
図7は、本実施形態の端子付電線1と比較例の端子付電線101との引張強度を比較する説明図である。
【0038】
端子付電線101における端子110の電線接合部111は本実施形態における立ち上がり面16bに対応する面を有しない。つまり、電線接合部111は、本実施形態における壁部16を備えず、電線20に対向する面114が面一となっている。
【0039】
本実施形態における端子10および比較例における端子110の板厚を1.5mm、幅方向の大きさw1(
図4および
図6参照)を17.5mm、電線接合部11、111の長さを9.0mm、とし、端子10、110に対する電線20の引張強度を本実施形態の端子付電線1と比較例の端子付電線101とで比較して説明する。なお、端子10の面14から先端面16aまでの高さh(
図4参照)を3mmとしている。また、芯線21の断面積を70mm
2としている。
【0040】
図7に示すように、端子付電線101の引張強度が12109[N]であるのに対し、端子付電線1の引張強度は13386[N]である。つまり、本実施形態の端子付電線1は、比較例の端子付電線101に対して、10%程度(13386[N]/12109[N]×100≒110[%])強度が上昇する。これは、本実施形態の端子付電線1において、第1面14aと先端面16a(第2面14b)との間の領域17(壁部16の立ち上がり面16b)の分、接合面積が増えることが理由であると考えられる。
【0041】
<第1実施形態の効果>
以上のように構成された端子付電線1によると、電線20が接合される端子付電線1であって、電線接合部11を有する端子10と、電線接合部11に接合される電線20と、を備え、電線接合部11のうちの電線20と対向する面14には、幅方向Wの異なる位置に高さの異なる第1面14aと第2面14bとが形成され、電線20は、第1面14a、第2面14b、および第1面14aと第2面14bとの間の領域17の少なくとも一部で、電線接合部11に接合される。これにより、端子10において高さ方向Hにも接合部分ができるので、その分端子10と電線20との接合面積が増える。接合面積が増える分、接合の強度が増す。したがって、本実施形態の端子付電線1によれば、引張強度を強くできる。
【0042】
また、電線接合部11において、電線接合部11の幅方向Wの大きさw1と前記電線の幅方向の大きさw2とが一致する。これにより、電線接合部11の幅方向において端子10と電線20との接合部分を最大限確保できる。
【0043】
また、電線接合部11の第1面14aは、ベース部15の主面であり、電線接合部11の第2面14bは、第1面14aの幅方向Wの両端部に形成される壁部16の先端面16aである。これにより、壁部16が形成されない場合に比べて、壁部16の立ち上がり面16bの分、接合面積が増える。また、壁部16が第1面14aの両端に位置することから、電線接合部11と電線20との接合時に中央に形成される第1面14aに電線20が載置されるので、電線接合部11と電線20との接合がしやすい。
【0044】
また、電線20は、電線接合部11に対して、抵抗溶接により形成される抵抗溶接部23を介して、接合される。また、電線20の芯線21および電線接合部11にSnメッキが施される。これにより、Snメッキによる金属間化合物の影響によって、電線接合部11と芯線21とが容易に抵抗溶接されることが期待される。
【0045】
また、端子10が銅又は銅合金製であり、電線20の芯線21が、銅または銅合金製であれば、端子10と電線20とが同一種の金属となる。したがって、二種の金属が接触することにより生じる異種金属接触腐食が抑制される。
【0046】
また、電線20の芯線21は撚り線であれば、単芯線の場合よりも、形状が変化しやすい。このため、電線20が電線接合部11の形状に沿った形状に変化しやすく、電線20と電線接合部11との接触面積を増やすことができる。
【0047】
なお、特許文献1に開示のように、端子金具の芯線との接合部分において、幅方向の両端が底面よりも高く形成される場合もあるが、電線が両端よりも外側にはみ出さないようにすることが目的であった。したがって、本実施形態の端子付電線1のように、幅方向Wの両端に形成される壁部16を用いて芯線21との接合部分を拡大するという発想はなかったものと思われる。
【0048】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態における端子付電線201について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【0049】
第2実施形態における端子付電線201は、第1実施形態における端子10に代えて端子210を備える。端子210は片側端部が折り曲げ加工により、高さ方向Hにおいて上方に折り曲げられている。これにより、電線接合部211におい幅方向Wの片側端部に、壁部216が形成される。第2実施形態において、壁部216以外の構成(つまり、幅方向一方側で壁部が省略されていること以外の構成)は上記第1実施形態の電線接合部11と同様の構成である。電線接合部211において、電線20に対向する面214は、折り曲げ加工される壁部216の先端面である第2面214bと、壁部216の他の部分(ベース部215の主面である第1面214a)とを備える。
【0050】
<第2実施形態の効果>
本実施形態においては、ベース部215の第1面214aと芯線21との間と、先端面216a(第2面214b)と芯線21との間と、領域217(立ち上がり面216b)と芯線21との間に、抵抗溶接部223が形成される。本第2実施形態によっても、上述の比較例(
図6参照)と比較すると、片側の壁部16に対応する領域217(立ち上がり面216b)と芯線21との接合部分の分接合面積が大きくなる。したがって、第2実施形態の端子付電線201によっても、引張強度を強くできる。
【0051】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態における端子付電線301について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【0052】
第3実施形態における端子付電線301は、第1実施形態における端子10に代えて端子310を備える。両端の壁部16に挟まれて位置するベース部3152つの山部318を含む。山部318の間の主面が第1面14aであり、山部の頂上部分が当該第1面14aと高さの異なるもう一つの第2面318aである。第1面14aと第2面318aの間の領域318bは、山部318の立ち上がり面である。
【0053】
第3実施形態においては、電線20は、第1面14a、第2面14b,318a、および第1面14aと第2面14b,318aとの間の領域17,318bで接合される。第3実施形態においては、第1実施形態の接合部分に加えて、山部318の立ち上がり部分である領域318bも接合部分に含まれる。このため、第3実施形態の端子付電線301は、第1実施形態の端子付電線1よりも領域318bと芯線21との接合部分の分、接合面積が大きくなる。したがって、第3実施形態の端子付電線301によっても、引張強度を強くできる。
【0054】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態における端子付電線401について
図4に対応する断面を示す断面図である。
【0055】
第4実施形態における端子付電線401は、第1実施形態における端子10に代えて端子410を備える。面414の中央に第1面414aが形成され、両端に第1面414aと高さの異なる第2面414bが形成される。第2面414bは、第1面414aよりも高くなっている。第1面414aと第2面414bとの間の領域419は、第2面414bへの立ち上がり面である。
【0056】
本実施形態においては、電線20は、第1面414aと第2面414bと領域419とが芯線21とで接合される。第1ないし第3実施形態における立ち上がり面は、急こう配となっているが、第4実施形態の立ち上がり面419は、第1ないし第3実施形態における立ち上がり面はよりもなだらかに形成される。このため、芯線21が立ち上がり面に沿った形状に形成されやすい。つまり、芯線21と領域419との間で当接する領域が広くなる。また、接合時に、芯線21をなだらかな立ち上がり面に対して押付けやすい。
【0057】
また、第4実施形態の端子付電線401においては、領域419が傾斜していることから、比較例のような平坦な面14と比べて、芯線21との接合面積が大きくなる。したがって、第4実施形態の端子付電線401によっても、引張強度を強くできる。
【0058】
[変形例]
上述の実施形態においては、端子10,210,310,410と芯線21とが抵抗溶接部23により接合されているが、これに限定されない。圧着、超音波接合、半田付けなど他の接合方法により接合されてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態及び各変形例において説明された各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせられることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,101,201,301,401 端子付電線
10,110,210,310,410 端子
11,111,211 電線接合部
12 電気接触部
12a 貫通孔
13 連結部
14,114,214 面
14a,214a,414a 第1面
14b,214b,318a,414b 第2面
15,215,415 ベース部
16,216 壁部
16a,216a 先端面
16b,216b 立ち上がり面
17,217,318b,419 領域
20 電線
21 芯線
22 被覆部
23,223 抵抗溶接部
30 抵抗溶接機
31 下部電極
32 上部電極
33 側部ガイド部材
318 山部
H 高さ方向
L 方向
W 幅方向
h 高さ