(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135700
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】動翼、及びこれを備えているガスタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20240927BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F01D5/18
F02C7/18 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046512
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】新名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】北田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】巽 直也
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】羽田 哲
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202CA05
3G202CA06
3G202CB01
3G202JJ02
3G202JJ17
3G202JJ28
(57)【要約】
【課題】耐久性を確保しつつ、冷却空気の使用量を抑えることができる。
【解決手段】動翼は、翼根、プラットフォーム及び翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、を備える。中間冷却空気通路は、冷却空気が流入可能な中間入口からプラットフォームと翼体との境まで延びている中間導入通路と、翼体内で、翼高さ方向に延び、中間導入通路から前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、3つの中間翼内通路のうちでいずれか一の中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、を有する。3つの中間翼内通路は、1つのサーペンタイン通路を構成する。後冷却空気通路は、冷却空気が流入可能な後入口からプラットフォームと翼体との境まで延びている後導入通路と、後導入通路と連通し、翼体内で、翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路とを有しているが、フィルム孔を有していない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンが備える動翼において、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、
前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、
前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、
を備え、
前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、
前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、
前記前冷却空気通路は、
前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な前入口を有し、前記前入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている前導入通路と、
前記前導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの前翼内通路と、
前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部から、前記前翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、
を有し、
前記中間冷却空気通路は、
前記翼根の表面中で前記前入口より前記前縁に対して前記後縁の側である後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な中間入口を有し、前記中間入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている中間導入通路と、
前記翼体内で、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記中間導入通路から前記前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、
前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路のうちでいずれか一の前記中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、
を有し、
3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に通路がうねっている1つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの前記中間翼内通路のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通し、
前記後冷却空気通路は、
前記翼根の表面中で前記中間入口よりも前記後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な後入口を有し、前記後入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている後導入通路と、
前記後導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路と、
前記後縁で開口し、前記後翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の後噴出孔と、
を有し、
前記後冷却空気通路は、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能なフィルム孔を有していない、
動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、3つの前記中間翼内通路のうちで最も前記前側の前記中間翼内通路である第一中間翼内通路にのみ連通し、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能である、
動翼。
【請求項3】
請求項2に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を前記正圧面に沿って外部に噴出可能な複数の正圧側フィルム孔と、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を前記負圧面に沿って外部に噴出可能な複数の負圧側フィルム孔と、を有する、
動翼。
【請求項4】
請求項3に記載の動翼において、
前記複数の正圧側フィルム孔は、前記正圧面中で、前記翼高さ方向における中間位置よりも前記ハブ側の領域のみで開口している、
動翼。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の動翼において、
前記複数の負圧側フィルム孔は、前記負圧面中で、前記翼高さ方向における全領域にわたって点在して開口している、
動翼。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の動翼を複数備えると共に、
軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、
複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、
を備え、
前記動翼は、前記翼高さ方向が、前記軸線に対する径方向になり、前記チップ側が前記軸線に対する径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前側が、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちの前記軸線上流側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている、
ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動翼、及びこれを備えているガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスで駆動するタービンと、を備える。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、このロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼列と、を備える。タービンロータは、軸線を中心とするロータ軸と、ロータ軸に取り付けられている複数の動翼列と、を有する。複数の動翼列は、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。各動翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の動翼を有する。複数の静翼列は、軸線方向に並んで、タービンケーシングの内周側に取り付けられている。複数の静翼列のそれぞれは、複数の動翼列のうちのいずれか一の動翼列の軸線上流側に配置されている。各静翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有する。
【0003】
動翼は、一般的に、翼体と、プラットフォームと、翼根と、を有する。翼体は、軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、径方向に延びている。プラットフォームは、翼体の径方向内側に端に設けられている。翼根は、プラットフォームの径方向内側に設けられている。この翼根は、動翼をロータ軸に取り付ける部分である。
【0004】
ガスタービンの動翼は、高温の燃焼ガスに晒される。このため、動翼は、一般的に、空気等で冷却される。
【0005】
例えば、以下の特許文献1に記載の動翼の翼体の内部には、前縁側の冷却通路、後縁側の冷却通路、中央部分のサーペンタイン冷却通路が設けられている。翼体の前縁部の翼面には、前縁側の冷却通路と連通する孔が形成されている。前縁側の冷却通路を流れる冷却空気は、この前縁部の孔から流出して前縁部を冷却する。翼体の後縁部の翼面には、後縁側の冷却通路と連通する孔が形成されている。この後縁側の冷却通路を流れる冷却空気は、この後縁部の孔から流出して後縁部を冷却する。翼体の中央部分の翼面には、中央部分のサーペンタイン冷却通路と連通する孔が形成されている。この中央部分のサーペンタイン冷却通路を流れる冷却空気は、この中央部分の孔から流出して翼面をフィルム冷却する。このように動翼を冷却することにより熱応力が低減され、動翼の耐久性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-257005号公報
図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温の燃焼ガスに晒されるガスタービンの動翼には、耐久性を確保しつつ、冷却空気の使用量を抑えることが求められる。
【0008】
そこで、本開示は、耐久性を確保しつつ、冷却空気の使用量を抑えることができる動翼、及びこの動翼を備えるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本開示に係る一態様の動翼は、
ガスタービンが備える動翼において、断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、を備え、前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、前記前冷却空気通路は、前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な前入口を有し、前記前入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている前導入通路と、前記前導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの前翼内通路と、前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部から、前記前翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、を有し、前記中間冷却空気通路は、前記翼根の表面中で前記前入口より前記前縁に対して前記後縁の側である後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な中間入口を有し、前記中間入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている中間導入通路と、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記中間導入通路から前記前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路のうちでいずれか一の前記中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、を有し、3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に通路がうねっている1つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの前記中間翼内通路のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通し、前記後冷却空気通路は、前記翼根の表面中で前記中間入口よりも前記後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な後入口を有し、前記後入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている後導入通路と、前記後導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路と、前記後縁で開口し、前記後翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の後噴出孔と、を有し、前記後冷却空気通路は、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能なフィルム孔を有していない。
【0010】
仮に、後翼内通路がサーペンタイン通路を構成するように蛇行して設けられている場合、後翼内通路の下流側には翼体によって加熱されて対流冷却効果が低下した冷却空気が供給されてしまう。このため、翼面の後縁側に後翼内通路と連通するフィルム孔を設ける等して冷却効率を向上させる必要がある。後翼内通路と連通するフィルム孔を設けることにより翼体を十分に冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができるが、冷却空気の使用量が多くなる。
【0011】
これに対し、本態様では、後翼内通路は蛇行することなく翼高さ方向に一直線状に延びており、後翼内通路がサーペンタイン通路を構成する場合と比較して後翼内通路の流路長さが短くなる。このため、冷却空気が後翼内通路の下流側に到達したとしても、冷却空気には翼体を冷却するのに十分な対流冷却効果が残されている。よって、後冷却空気通路にフィルム孔を設けることなく、翼体の後縁側を十分に冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができる。
【0012】
また、中間翼内通路には、フィルム孔が設けられている。このため、フィルム孔から流出する冷却空気によって翼体をフィルム冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができる。加えて、フィルム孔は、3つの中間翼内通路のいずれか1つにのみに設けられ、後冷却空気通路にはフィルム孔が設けられていないため、フィルム孔の個数を抑えることができる。翼体内部から噴出される冷却空気が減少し、冷却空気の使用量が抑えられる。なお、本態様のように、フィルム孔が3つの中間翼内通路のいずれか1つにのみに設けられる場合であっても、前翼内通路と後翼内通路を、それぞれ一直線状に延びるように1つずつ形成する構成と組み合わせることにより、翼体を冷却し、ガスタービンが駆動可能な程度に十分に耐久性を確保できることが、試験によって確認されている。
【0013】
よって、本態様では、耐久性を確保しつつ、冷却空気の使用量を抑えることができる。
【0014】
本開示に係る一態様のガスタービンは、
前記第一態様における動翼を複数備えると共に、軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、を備え、前記動翼は、前記翼高さ方向が、前記軸線に対する径方向になり、前記チップ側が前記軸線に対する径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前側が、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちの前記軸線上流側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、耐久性を確保しつつ、冷却空気の使用量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示に係る実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
【
図2】本開示に係る実施形態における動翼の斜視図である。
【
図3】本開示に係る実施形態における動翼の側面図(動翼を負圧面側から見た側面図)である。
【
図4】本開示に係る実施形態における動翼の側面図(動翼を正圧面側から見た側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の動翼、及びこの動翼を備えるガスタービンの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
「ガスタービンの実施形態」
ガスタービンの実施形態について、
図1を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器30と、燃焼ガスGにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0020】
圧縮機20は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ21と、圧縮機ロータ21を覆う圧縮機ケーシング25と、複数の静翼列26と、を有する。タービン40は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を覆うタービンケーシング45と、複数の静翼列46と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0021】
圧縮機20は、タービン40に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0022】
圧縮機ロータ21とタービンロータ41とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービン10は、さらに、中間ケーシング14を備える。この中間ケーシング14は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング25とタービンケーシング45との間に配置されている。圧縮機ケーシング25と中間ケーシング14とタービンケーシング45とは、互いに接続されてガスタービンケーシング15を成す。
【0023】
圧縮機ロータ21は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸22と、このロータ軸22に取り付けられている複数の動翼列23と、を有する。複数の動翼列23は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列23は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列23の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列26のうちのいずれか一の静翼列26が配置されている。各静翼列26は、圧縮機ケーシング25の内側に設けられている。各静翼列26は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0024】
タービンロータ41は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼列43と、を有する。ロータ軸42は、軸線Arを中心として回転可能である。複数の動翼列43は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。タービンケーシング45は、これら複数の動翼及びロータ軸42の外周側を覆っている。動翼列43の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列46のうちのいずれか一の静翼列46が配置されている。各静翼列46は、タービンケーシング45の内側に設けられている。各静翼列46は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0025】
燃焼器30は、中間ケーシング14に取り付けられている。
【0026】
圧縮機20は、空気Aを圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、燃焼器30内に流入する。燃焼器30には、燃料Fが供給される。燃焼器30内では、圧縮空気中で燃料Fが燃焼して、高温高圧の燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、燃焼器30からタービンケーシング45内の環状の燃焼ガス流路49に送られる。燃焼ガスGは、燃焼ガス流路49内を軸線下流側Dadへ流れる過程で、タービンロータ41を回転させる。このタービンロータ41の回転で、ガスタービンロータ11に接続されている発電機GENのロータが回転する。この結果、発電機GENは発電する。
【0027】
以下、タービン40の初段の動翼列43を構成する動翼に関する実施形態、及びその変形例について説明する。
【0028】
「動翼の実施形態」
動翼の実施形態について、
図2から
図6を参照して説明する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態における動翼50は、翼体51と、プラットフォーム58と、翼根59と、前冷却空気通路60と、中間冷却空気通路70と、後冷却空気通路80と、を備える。
【0030】
翼体51は、断面が翼形を成し、断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向Dhに延びている。この翼体51は、翼高さ方向Dhに対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面52と、翼高さ方向Dhにおけるチップ側Dhtとハブ側Dhhとのうち、チップ側Dhtを向くチップ面55と、を有する。
図3、
図4に示すように、翼面52は、翼高さ方向Dhに延びる前縁53f及び後縁53bと、前縁53fから後縁53bにまで広がっている正圧面54p及び負圧面54nと、を有する。
図5に示すように、正圧面54pと負圧面54nとは、互いに背合わせの関係である。正圧面54pは凹曲面であり、負圧面54nは凸曲面である。径方向Dr視で、負圧面54nの前縁53fから後縁53bまでの長さは、正圧面54pの前縁53fから後縁53bまでの長さよりも長い。
【0031】
この動翼50を前述のロータ軸42に取り付けると、翼高さ方向Dhが軸線Arに対する径方向Drになり、チップ側Dhtが軸線Arに対する径方向Drにおける径方向内側Driと径方向外側Droとのうちの径方向外側Droになり、ハブ側Dhhが径方向内側Driになる。また、後縁53bに対して前縁53fの側である前側Dfが軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうちの軸線上流側Dauになり、前縁53fに対して後縁53bの側である後側Dbが軸線下流側Dadになる。さらに、正圧面54pと負圧面54nとが並んでいる方向が周方向Dcになる。また、この動翼50をロータ軸42に取り付けると、翼体51が燃焼ガス流路49中に位置することになる。
【0032】
プラットフォーム58は、翼高さ方向Dhにおけるチップ側Dhtとハブ側Dhhのうち、翼体51のハブ側Dhhの端に設けられている。このプラットフォーム58は、翼高さ方向Dhである径方向Drに垂直な方向の方向成分を含む方向に広がる四角板状の部材である。
【0033】
翼根59は、プラットフォーム58のハブ側Dhhに設けられている。この翼根59は、動翼50をロータ軸42に取り付けるための部分である。この翼根59は、プラットフォーム58から径方向内側Driに向かって延びるクリスマスツリー形状を成している。
【0034】
図6に示すように、前冷却空気通路60、中間冷却空気通路70、及び後冷却空気通路80は、いずれも、翼根59、プラットフォーム58及び翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な通路である。後冷却空気通路80は、動翼50中で、前冷却空気通路60よりも後側Dbに配置されている。中間冷却空気通路70は、前冷却空気通路60と後冷却空気通路80との間に配置されている。
【0035】
前冷却空気通路60は、前主通路61と、前チップ抜き孔65と、複数の前噴出孔66と、を有する。前主通路61は、前導入通路62と、前翼内通路64とを有する。前導入通路62は、翼根59の底面59bで開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な前入口63を有する。翼根59の底面59bとは、翼根59の表面中で、最もハブ側Dhhに位置しハブ側Dhhを向く面である。なお、前入口63は、翼根59の表面のうち、翼高さ方向Dhに対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼根59の側面59c(
図2参照)で開口していてもよい。この前導入通路62は、前入口63から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51との境まで延びている。前導入通路62の翼高さ方向Dhで前入口63と反対側の端部には、前導入通路62と連通する1つの前翼内通路64が設けられている。
【0036】
前翼内通路64は、翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びている。また、径方向Dr視で、前翼内通路64は、翼面52に沿う断面形状に形成されており、前縁53fに接近するにしたがい先細るように形成されている(
図5参照)。また、前翼内通路64の翼高さ方向Dhで前導入通路62と反対側の端部には、前チップ抜き孔65が設けられている。さらに、前翼内通路64には、翼高さ方向Dhに点在する複数の前噴出孔66が設けられている。
【0037】
前チップ抜き孔65は、前翼内通路64のチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口している。
【0038】
複数の前噴出孔66は、いずれも、翼面52中で、前縁53fを含み且つ前側Dfを向く部分である前縁周り部56で開口している前噴出口67を有する。この前縁周り部56は、翼面52中で、前縁53fから正圧面54pに沿って後側Dbに所定の距離までの範囲と、前縁53fから負圧面54nに沿って後側Dbに所定の距離までの範囲とを合わせた範囲の部分である。ここで、所定の距離とは、例えば、正圧面54p(又は負圧面54n)に沿って前縁53fから後縁53bまでの距離の例えば1/20の距離である。複数の前噴出孔66は、いずれも、前翼内通路64に連通し、この前翼内通路64から所定の方向に延びて、翼面52中の前縁周り部56で開口している。ここで、所定の方向とは、前噴出口67の位置における翼面52の接線と平行な方向の成分よりも、前噴出口67の位置における翼面52の法線と平行な方向の成分の方が多い方向である。
【0039】
複数の前噴出孔66毎の前噴出口67は、前縁周り部56におけるハブ側Dhhからチップ側Dhtにかけて形成されている。これら複数の前噴出孔66は、いずれも前翼内通路64内の冷却空気Acを、翼体51の外部に噴出可能な孔である。
【0040】
中間冷却空気通路70は、中間主通路71と、中間チップ抜き孔75と、複数のフィルム孔76と、を有する。中間主通路71は、中間導入通路72と、中間翼内通路74とを有する。中間導入通路72は、翼根59の底面59bで前入口63より前縁53fに対して後側Dbで開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な中間入口73を有する。なお、中間入口73は、翼根59の表面のうち翼根59の側面59c(
図2参照)で開口していてもよい。この中間導入通路72は、中間入口73から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51との境まで延びている。中間導入通路72の翼高さ方向で中間入口73と反対側の端部には、中間導入通路72と連通する3つの中間翼内通路74が設けられている。
【0041】
3つの中間翼内通路74は、いずれも翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びている。3つの中間翼内通路74は、翼体51のキャンバーラインCLに沿って、中間導入通路72から前側Dfに並んでいる。ここで、3つの中間翼内通路74のうち、最も前側Dfの中間翼内通路74を第一中間翼内通路74a、この第一中間翼内通路74aに隣接する中間翼内通路74を第二中間翼内通路74b、最も後側Dbの中間翼内通路74であって第二中間翼内通路74bに隣接する中間翼内通路74を第三中間翼内通路74cとする。第三中間翼内通路74cは、中間導入通路72の翼高さ方向Dhでチップ側Dhtの端から翼高さ方向Dhに延びている。
【0042】
ここで、3つの中間翼内通路74は、翼高さ方向Dhに通路がうねっている1つのサーペンタイン通路78を構成するよう、3つの中間翼内通路74のうちで互いに隣り合う中間翼内通路74が、ハブ側Dhhの端とチップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通している。具体的に、第三中間翼内通路74cのチップ側Dhtの端と第二中間翼内通路74bのチップ側Dhtの端とが連通し、第二中間翼内通路74bのハブ側Dhhの端と第一中間翼内通路74aのハブ側Dhhの端とが連通している。
【0043】
これら3つの中間翼内通路74は、径方向Dr視で、いずれも翼面52に沿う断面形状に形成されており、前側Dfの中間翼内通路74ほど流路断面が小さくなっている。また、第一中間翼内通路74aの翼高さ方向Dhで中間導入通路72と反対側の端部には、中間チップ抜き孔75が設けられている。さらに、中間翼内通路74には、翼高さ方向Dhに点在する複数のフィルム孔76が設けられている。
【0044】
中間チップ抜き孔75は、第一中間翼内通路74aのチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口している。
【0045】
複数のフィルム孔76は、いずれも、翼面52中で、前縁周り部56を除き、且つ正圧面54pと負圧面54nのうち少なくとも一方の翼面52に設けられている。複数のフィルム孔76は、いずれも3つの中間翼内通路74のうち1つの中間翼内通路74に連通し、この中間翼内通路74から所定の方向に延びて、翼面52開口する翼面噴出口77を有する。ここで、所定の方向とは、翼面噴出口77の位置における翼面52の法線と平行な方向の成分よりも、翼面噴出口77の位置における翼面52の接線と平行な方向の成分の方が多い方向で、且つ後側Dbに向かう方向である。このため、複数のフィルム孔76は、いずれも、正圧面54pと負圧面54nとのうち少なくとも一方に沿って、3つの中間翼内通路74のうちでいずれか一の中間翼内通路74内の冷却空気Acを外部に噴出可能となっている。なお、本実施形態における複数のフィルム孔76は、3つの中間翼内通路74のうちで最も前側Dfの第一中間翼内通路74aにのみ連通し、第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを外部に噴出可能である。また、複数のフィルム孔76は、第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを正圧面54pに沿って外部に噴出可能な複数の正圧側フィルム孔76pと、第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを負圧面54nに沿って外部に噴出可能な複数の負圧側フィルム孔76nと、を有する。
【0046】
図4に示すように、複数の正圧側フィルム孔76pは、正圧面54p中で、翼高さ方向Dhにおける中間位置よりもハブ側Dhhの領域のみで開口している。すなわち、正圧側フィルム孔76pの翼面噴出口77である正圧側翼面噴出口77pは、正圧面54p中で開口している。これら複数の正圧側フィルム孔76pは、例えば、翼体51の翼高さ方向Dhで翼根59側の端から、翼体51の翼高さ方向Dhの全長の0.1%以上25%以下の範囲に設けられている。
【0047】
図3に示すように、複数の負圧側フィルム孔76nは、負圧面54n中で、翼高さ方向Dhにおける全領域にわたって点在して開口している。すなわち、負圧側フィルム孔76nの翼面噴出口77である負圧側翼面噴出口77nは、負圧面54n中で開口している。
【0048】
後冷却空気通路80は、後主通路81と、後チップ抜き孔85と、複数の後噴出孔86と、を有する。後主通路81は、後導入通路82と、後翼内通路84とを有する。後導入通路82は、翼根59の底面59b中で中間入口73よりも後側Dbの位置で開口し、ロータ軸42からの冷却空気Acが流入可能な後入口83を有する。後入口83は、翼根59の表面のうち、翼根59の側面59cで開口していてもよい。この後導入通路82は、後入口83から翼高さ方向Dhにプラットフォーム58と翼体51との境まで延びている。後導入通路82の翼高さ方向で後入口83と反対側の端部には、後導入通路82と連通する1つの後翼内通路84が設けられている。
【0049】
後翼内通路84は、翼体51内で、翼高さ方向Dhに延びている。また、径方向Dr視で、後翼内通路84は、翼面52に沿う断面形状に形成されており、後縁53bに接近するにしたがい先細るように形成されている(
図5参照)。また、後翼内通路84の翼高さ方向Dhで後導入通路82と反対側の端部には、後チップ抜き孔85が設けられている。さらに、後翼内通路84には、翼高さ方向Dhに点在する複数の後噴出孔86が設けられている。
【0050】
後チップ抜き孔85は、後翼内通路84のチップ側Dhtの端と連通し、チップ面55で開口している。
【0051】
複数の後噴出孔86は、いずれも、後翼内通路84からキャンバーラインCLに沿って後側Dbに向かって延び(
図5参照)、後縁53bで開口している後噴出口87を有する。このため、複数の後噴出孔86は、後翼内通路84内の冷却空気Acを、翼体51の外部に噴出可能となっている。
【0052】
さらに、後冷却空気通路80は、正圧面54pと負圧面54nとのうち少なくとも一方に沿って、後翼内通路84内の冷却空気Acを外部に噴出可能なフィルム孔76を有していない。すなわち、後翼内通路84内の冷却空気Acを外部に噴出可能な孔は、チップ面55に開口する後チップ抜き孔85と、後縁53bに開口する後噴出孔86のみとなっている。
【0053】
上述したように、本実施形態における翼体51には、1本の前翼内通路64と、3本の中間翼内通路74と、1本の後翼内通路84が形成されている。これらの流路内を冷却空気Acが流通することにより翼体51が冷却される。
【0054】
前翼内通路64では、冷却空気Acが翼高さ方向Dhでハブ側Dhhからチップ側Dhtに向けて一直線状に流れる。この冷却空気Acの流れによる対流冷却によって翼体51の前側Dfが冷却される。さらに前翼内通路64を流れる冷却空気Acの一部は、前翼内通路64を流通する過程で前噴出孔66から前側Dfに噴出する。この冷却空気Acの噴出流によっても翼体51の前側Dfが冷却される。前翼内通路64内の冷却空気Acは、前翼内通路64のチップ側Dhtの端に到達すると前チップ抜き孔65から翼体51の外部に排出される。
【0055】
また、3つの中間翼内通路74は、翼高さ方向Dhに蛇行するサーペンタイン通路78を形成している。このため、3つの中間翼内通路74では、冷却空気Acが、後側Dbから前側Dfに向けて、翼高さ方向Dhに蛇行しながらに流れる。この冷却空気Acの流れによる対流冷却によって翼体51の中間部分が冷却される。さらに中間翼内通路74を流れる冷却空気Acは、最も前側Dfの第一中間翼内通路74aと連通するフィルム孔76から噴出する。フィルム孔76から噴出した冷却空気Acは、翼面52に沿う冷却空気Acの膜を形成する。この冷却空気Acの膜により、燃焼ガスGから翼体51への熱伝達が遮断され、翼体51が冷却される。さらに、第一中間翼内通路74aのチップ側Dhtの端に到達すると中間チップ抜き孔75から翼体51の外部に排出される。
【0056】
また、後翼内通路84では、冷却空気Acが翼高さ方向Dhでハブ側Dhhからチップ側Dhtに向けて一直線状に流れる。この冷却空気Acの流れによる対流冷却によって翼体51の後側Dbが冷却される。さらに後翼内通路84を流れる冷却空気Acは、後翼内通路84を流通する過程で後噴出孔86から後側Dbに噴出する。この冷却空気Acの噴出流によっても翼体51の後側Dbが冷却される。後翼内通路84内の冷却空気Acは、後翼内通路84のチップ側Dhtの端に到達すると後チップ抜き孔85から翼体51の外部に排出される。
【0057】
このようにして、燃焼ガスGに晒される翼体51は、翼体51内を流れる対流冷却や、翼体51から外部へ噴出流による冷却、翼面52を覆う冷却空気Acの膜によるフィルム冷却の組み合わせによって十分に冷却される。
【0058】
仮に、後翼内通路84がサーペンタイン通路を構成するように蛇行して設けられている場合、後翼内通路84の下流側には翼体によって加熱されて対流冷却効果が低下した冷却空気Acが供給されてしまう。このため、翼面52の後縁53b側に後翼内通路84と連通するフィルム孔を設ける等して冷却効率を向上させる必要がある。後翼内通路84と連通するフィルム孔を設けることにより翼体51を十分に冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができるが、冷却空気Acの使用量が多くなる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、後翼内通路84は蛇行することなく翼高さ方向Dhに一直線状に延びており、後翼内通路84がサーペンタイン通路を構成する場合と比較して後翼内通路84の流路長さが短くなる。このため、冷却空気Acが後翼内通路84の下流側に到達したとしても、冷却空気Acには翼体51を冷却するのに十分な対流冷却効果が残されている。よって、後冷却空気通路80にフィルム孔を設けることなく、翼体51の後縁53b側を十分に冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができる。
【0060】
また、後冷却空気通路80にフィルム孔76が形成されていないことにより、翼体51の後側Dbが過冷却されることが抑制される。本実施形態ように、後冷却空気通路80にフィルム孔76を設けなくとも、後翼内通路84内を流通する冷却空気Acによる対流冷却と、後噴出孔86から噴出する冷却空気Acの噴出流により、ガスタービン10が動作可能な900℃付近まで冷却することができる。
【0061】
また、中間翼内通路74には、フィルム孔76が設けられている。このため、フィルム孔76から流出する冷却空気によって翼体51をフィルム冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができる。加えて、フィルム孔76は、3つの中間翼内通路74のいずれか1つにのみに設けられ、後冷却空気通路80にはフィルム孔76が設けられていないため、フィルム孔76の個数を抑えることができる。翼体51内部から噴出される冷却空気Acが減少し、冷却空気Acの使用量が抑えられる。なお、本実施形態のように、フィルム孔76が3つの中間翼内通路74のいずれか1つにのみに設けられる場合であっても、前翼内通路64と後翼内通路84を、それぞれ一直線状に延びるように1つずつ形成する構成と組み合わせることにより、翼体51を冷却し、ガスタービン10が駆動可能な程度に十分に耐久性を確保できることが、試験によって確認されている。
【0062】
よって、本実施形態では、耐久性を確保しつつ、冷却空気Acの使用量を抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態において、複数のフィルム孔76は、3つの中間翼内通路74のうちで最も前側Dfの中間翼内通路74である第一中間翼内通路74aにのみ連通している。複数のフィルム孔76は、第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを外部に噴出可能である。
【0064】
この構成によれば、上述したようにフィルム孔76の個数を抑え、冷却空気Acの使用量を抑えることができる。さらに、フィルム孔76は第一中間翼内通路74aにのみ設けられているため、フィルム孔76から噴出された空気Aを、前縁53fから後縁53bに向かう方向に、3つの中間翼内通路74と重なる翼面52の全域にわたって流すことができる。よって、冷却空気Acの使用量を抑えつつ、翼体51をより良く冷却することができる。
【0065】
また、本実施形態において、複数のフィルム孔76は、複数の正圧側フィルム孔76pと、複数の負圧側フィルム孔76nと、を有する。複数の正圧側フィルム孔76pは、第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを正圧面54pに沿って外部に噴出可能である。複数の負圧側フィルム孔76nは、第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを負圧面54nに沿って外部に噴出可能である。
【0066】
この構成によれば、複数のフィルム孔76から噴出された冷却空気Acを正圧面54pと負圧面54nとの両方に沿って流すことができる。よって、翼面52の全域にわたって冷却空気Acの膜を形成し、フィルム冷却することができる。これにより、正圧面54pと負圧面54nの両方の翼面52を冷却することができる。
【0067】
また、本実施形態において、複数の正圧側フィルム孔76pは、正圧面54p中で、翼高さ方向Dhにおける中間位置よりもハブ側Dhhの領域のみで開口している。
【0068】
翼体51のうち翼高さ方向Dhでハブ側Dhhはプラットフォーム58に固定されるため、チップ側Dhtよりもメタル温度や熱応力を低減して耐久性を確保する必要がある。また、正圧面54pは、負圧面54nと比較して翼面52上を流れる作動流体の流速が遅いため、燃焼ガスGによって加熱されにくい傾向にある。
【0069】
本実施形態のように正圧側フィルム孔76pを翼高さ方向Dhにおけるハブ側Dhhに設けることで、耐久性の確保が必要なハブ側Dhhを集中して冷却してメタル温度や熱応力を低減し、最低限の耐久性を確保することができる。加えて、正圧側フィルム孔76pが翼高さ方向Dhにおける全領域に設けられる場合と比較して、フィルム孔76から噴出される冷却空気Acを減少させることができるため、冷却空気Acの使用量をより一層抑えることができる。
【0070】
また、本実施形態において、複数の負圧側フィルム孔76nは、負圧面54n中で、翼高さ方向Dhにおける全領域にわたって点在して開口している。
【0071】
負圧面54nは、正圧面54pと比較して翼面52上を流れる燃焼ガスGの流速が早いため、燃焼ガスGによって加熱されやすい傾向にある。このため、本実施形態のように、負圧側フィルム孔76nを翼高さ方向Dhにおける全領域に設けることで、負圧面54nを十分に冷却することができる。よって負圧面54n側のメタル温度や熱応力を、ガスタービン10の駆動を妨げない程度にまで十分に低減し、耐久性を確保することができる。
【0072】
「動翼のその他の変形例」
なお、上記実施形態では、複数のフィルム孔76が、正圧面54pと負圧面54nの両方の翼面52に設けられている場合について説明したが、これに限られない。例えば複数のフィルム孔76は、正圧面54pにのみ設けられていてもよく、負圧面54nにのみ設けられていてもよい。
【0073】
また、複数のフィルム孔76は、3つの中間翼内通路74のうち第一中間翼内通路74aではなく、第二中間翼内通路74b及び第三中間翼内通路74cのいずれか一の中間翼内通路74に設けられていてもよい。
【0074】
また、複数の正圧側フィルム孔76pは、正圧面54p中で、翼高さ方向Dhにおける全領域に設けられていてもよい。ただし、上述した実施形態のように正圧側フィルム孔76pが正圧面54p中で、翼高さ方向Dhにおける中間位置よりもハブ側Dhhの領域のみで設けられている方が、冷却空気Acの使用量を抑制できるという点で優位性がある。
【0075】
本開示は、以上で説明した実施形態及び変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0076】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における動翼50は、例えば、以下のように把握される。
【0077】
(1)第一態様における動翼50は、
ガスタービン10が備える動翼50において、断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向Dhに延びる翼体51と、前記翼高さ方向Dhにおけるチップ側Dhtとハブ側Dhhとのうち、前記翼体51の前記ハブ側Dhhの端に設けられているプラットフォーム58と、前記プラットフォーム58の前記ハブ側Dhhに設けられている翼根59と、前記翼根59、前記プラットフォーム58及び前記翼体51にかけて形成され、冷却空気Acが流通可能な前冷却空気通路60、中間冷却空気通路70、及び後冷却空気通路80と、を備え、前記翼体51は、前記翼高さ方向Dhに対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面52と、前記翼高さ方向Dhにおける前記チップ側Dhtを向くチップ面55と、を有し、前記翼面52は、前記翼高さ方向Dhに延びる前縁53f及び後縁53bと、前記前縁53fから前記後縁53bにまで広がっている正圧面54p及び負圧面54nと、を有し、前記前冷却空気通路60は、前記翼根59の表面で開口して冷却空気Acが流入可能な前入口63を有し、前記前入口63から前記プラットフォーム58と前記翼体51との境まで延びている前導入通路62と、前記前導入通路62と連通し、前記翼体51内で、前記翼高さ方向Dhに延びる1つの前翼内通路64と、前記翼面52中で、前記前縁53fを含み且つ前記後縁53bに対して前記前縁53fの側である前側Dfを向く部分である前縁周り部56から、前記前翼内通路64内の冷却空気Acを噴出可能な複数の前噴出孔66と、を有し、前記中間冷却空気通路70は、前記翼根59の表面中で前記前入口63より前記前縁53fに対して前記後縁53bの側である後側Dbの位置で開口して冷却空気Acが流入可能な中間入口73を有し、前記中間入口73から前記プラットフォーム58と前記翼体51との境まで延びている中間導入通路72と、前記翼体51内で、前記翼高さ方向Dhに延び、前記翼体51のキャンバーラインCLに沿って、前記中間導入通路72から前記前側Dfに並ぶ3つの中間翼内通路74と、前記正圧面54pと前記負圧面54nとのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路74のうちでいずれか一の前記中間翼内通路74内の冷却空気Acを外部に噴出可能な複数のフィルム孔76と、を有し、3つの前記中間翼内通路74は、前記翼高さ方向Dhに通路がうねっている1つのサーペンタイン通路78を構成するよう、3つの前記中間翼内通路74のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路74は、前記ハブ側Dhhの端と前記チップ側Dhtの端とのうち、一方の端で互いに連通し、前記後冷却空気通路80は、前記翼根59の表面中で前記中間入口73よりも前記後側Dbの位置で開口して冷却空気Acが流入可能な後入口83を有し、前記後入口83から前記プラットフォーム58と前記翼体51との境まで延びている後導入通路82と、前記後導入通路82と連通し、前記翼体51内で、前記翼高さ方向Dhに延びる1つの後翼内通路84と、前記後縁53bで開口し、前記後翼内通路84内の冷却空気Acを噴出可能な複数の後噴出孔86と、を有し、前記後冷却空気通路80は、前記正圧面54pと前記負圧面54nとのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路84内の冷却空気Acを外部に噴出可能なフィルム孔76を有していない。
【0078】
仮に、後翼内通路84がサーペンタイン通路を構成するように蛇行して設けられている場合、後翼内通路84の下流側には翼体51によって加熱されて対流冷却効果が低下した冷却空気Acが供給されてしまう。このため、翼面52の後縁53b側に後翼内通路84と連通するフィルム孔を設ける等して冷却効率を向上させる必要がある。後翼内通路84と連通するフィルム孔を設けることにより翼体51を十分に冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができるが、冷却空気Acの使用量が多くなる。
【0079】
これに対し、本態様では、後翼内通路84は蛇行することなく翼高さ方向Dhに一直線状に延びており、後翼内通路84がサーペンタイン通路を構成する場合と比較して後翼内通路84の流路長さが短くなる。このため、冷却空気Acが後翼内通路84の下流側に到達したとしても、冷却空気Acには翼体51を冷却するのに十分な対流冷却効果が残されている。よって、後冷却空気通路80にフィルム孔を設けることなく、翼体51の後縁53b側を十分に冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができる。
【0080】
また、中間翼内通路74には、フィルム孔76が設けられている。このため、フィルム孔76から流出する冷却空気によって翼体51をフィルム冷却してメタル温度や熱応力を低減し、耐久性を確保することができる。加えて、フィルム孔76は、3つの中間翼内通路74のいずれか1つにのみに設けられ、後冷却空気通路80にはフィルム孔76が設けられていないため、フィルム孔76の個数を抑えることができる。翼体51内部から噴出される冷却空気Acが減少し、冷却空気Acの使用量が抑えられる。なお、本態様のように、フィルム孔76が3つの中間翼内通路74のいずれか1つにのみに設けられる場合であっても、前翼内通路64と後翼内通路84を、それぞれ一直線状に延びるように1つずつ形成する構成と組み合わせることにより、翼体51を冷却し、ガスタービン10が駆動可能な程度に十分に耐久性を確保できることが、試験によって確認されている。
【0081】
よって、本態様では、耐久性を確保しつつ、冷却空気Acの使用量を抑えることができる。
【0082】
本実施形態では、
(2)第二態様における動翼50は、
前記第一態様における動翼50において、前記複数のフィルム孔76は、3つの前記中間翼内通路74のうちで最も前記前側Dfの前記中間翼内通路74である第一中間翼内通路74aにのみ連通し、前記第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを外部に噴出可能である。
【0083】
本態様によれば、上述したようにフィルム孔76の個数を抑え、冷却空気Acの使用量を抑えることができる。さらに、フィルム孔76は第一中間翼内通路74aにのみ設けられているため、フィルム孔76から噴出された空気Aを、前縁53fから後縁53bに向かう方向に、3つの中間翼内通路74と重なる翼面52の全域にわたって流すことができる。よって、冷却空気Acの使用量を抑えつつ、翼体51をより良く冷却することができる。
【0084】
(3)第三態様における動翼50は、
前記第二態様の動翼50において、前記複数のフィルム孔76は、前記第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを前記正圧面54pに沿って外部に噴出可能な複数の正圧側フィルム孔76pと、前記第一中間翼内通路74a内の冷却空気Acを前記負圧面54nに沿って外部に噴出可能な複数の負圧側フィルム孔76nと、を有する。
【0085】
本態様によれば、複数のフィルム孔76から噴出された冷却空気Acを正圧面54pと負圧面54nとの両方に沿って流すことができる。これにより、正圧面54pと負圧面54nの両方の翼面52を冷却することができる。
【0086】
(4)第四態様における動翼50は、
前記第三態様の動翼50において、前記複数の正圧側フィルム孔76pは、前記正圧面54p中で、前記翼高さ方向Dhにおける中間位置よりも前記ハブ側Dhhの領域のみで開口している。
【0087】
翼体51のうち翼高さ方向Dhでハブ側Dhhはプラットフォーム58に固定されるため、チップ側Dhtよりもメタル温度や熱応力を低減して耐久性を確保する必要がある。また、正圧面54pは、負圧面54nと比較して翼面52上を流れる作動流体の流速が遅いため、燃焼ガスGによって加熱されにくい傾向にある。
【0088】
本態様のように正圧側フィルム孔76pを翼高さ方向Dhにおけるハブ側Dhhに設けることで、耐久性の確保が必要なハブ側Dhhを集中して冷却してメタル温度や熱応力を低減し、最低限の耐久性を確保することができる。加えて、正圧側フィルム孔76pが翼高さ方向Dhにおける全領域に設けられる場合と比較して、フィルム孔76から噴出される冷却空気Acを減少させることができるため、冷却空気Acの使用量をより一層抑えることができる。
【0089】
(5)第五態様における動翼50は、
前記第三態様又は前記第四態様の動翼50において、前記複数の負圧側フィルム孔76nは、前記負圧面54n中で、前記翼高さ方向Dhにおける全領域にわたって点在して開口している。
【0090】
負圧面54nは、正圧面54pと比較して翼面52上を流れる燃焼ガスGの流速が早いため、燃焼ガスGによって加熱されやすい傾向にある。このため、本態様のように、負圧側フィルム孔76nを翼高さ方向Dhにおける全領域に設けることで、負圧面54nを十分に冷却することができる。よって負圧面54n側のメタル温度や熱応力を十分に低減し、耐久性を確保することができる。
【0091】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービン10は、例えば、以下のように把握される。
(6)第六態様におけるガスタービン10は、
前記第一態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様における動翼50を複数備えると共に、軸線Arを中心として回転可能で、複数の前記動翼50が前記軸線Arに対する周方向Dcに並んで取り付けられているロータ軸42と、複数の前記動翼50及び前記ロータ軸42の外周側を覆うタービンケーシング45と、を備え、前記動翼50は、前記翼高さ方向Dhが、前記軸線Arに対する径方向Drになり、前記チップ側Dhtが前記軸線Arに対する径方向Drにおける径方向内側Driと径方向外側Droとのうちの前記径方向外側Droになり、前記前側Dfが、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうちの前記軸線上流側Dauになるよう、前記ロータ軸42に取り付けられている。
【符号の説明】
【0092】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
14:中間ケーシング
15:ガスタービンケーシング
20:圧縮機
21:圧縮機ロータ
22:ロータ軸
23:動翼列
25:圧縮機ケーシング
26:静翼列
30:燃焼器
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸
43:動翼列
45:タービンケーシング
46:静翼列
49:燃焼ガス流路
50:動翼
51:翼体
52:翼面
53f:前縁
53b:後縁
54n:負圧面
54p:正圧面
55:チップ面
56:前縁周り部
58:プラットフォーム
59:翼根
59b:底面
59c:側面
60:前冷却空気通路
61:前主通路
62:前導入通路
63:前入口
64:前翼内通路
65:前チップ抜き孔
66:前噴出孔
67:前噴出口
70:中間冷却空気通路
71:中間主通路
72:中間導入通路
73:中間入口
74:中間翼内通路
74a:第一中間翼内通路
74b:第二中間翼内通路
74c:第三中間翼内通路
75:中間チップ抜き孔
76:フィルム孔
76n:負圧側フィルム孔
76p:正圧側フィルム孔
77:翼面噴出口
77n:負圧側翼面噴出口
77p:正圧側翼面噴出口
78:サーペンタイン通路
80:後冷却空気通路
81:後主通路
82:後導入通路
83:後入口
84:後翼内通路
80:後冷却空気通路
81:後主通路
82:後導入通路
83:後入口
84:後翼内通路
85:後チップ抜き孔
86:後噴出孔
87:後噴出口
A:空気
Ac:冷却空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
CL:キャンバーライン
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dh:翼高さ方向
Dhh:ハブ側
Dht:チップ側
Df:前側
Db:後側
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンが備える動翼において、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、
前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、
前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、
を備え、
前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、
前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、
前記前冷却空気通路は、
前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な前入口を有し、前記前入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている前導入通路と、
前記前導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの前翼内通路と、
前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部から、前記前翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、
を有し、
前記中間冷却空気通路は、
前記翼根の表面中で前記前入口より前記前縁に対して前記後縁の側である後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な中間入口を有し、前記中間入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている中間導入通路と、
前記翼体内で、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記中間導入通路から前記前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、
前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路のうちでいずれか一の前記中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、
を有し、
3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に通路がうねっている1つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの前記中間翼内通路のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通するとともに、それぞれ前記翼体内で前記翼高さ方向にのみ延びており、
前記後冷却空気通路は、
前記翼根の表面中で前記中間入口よりも前記後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な後入口を有し、前記後入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている後導入通路と、
前記後導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路と、
前記後縁で開口し、前記後翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の後噴出孔と、
を有し、
前記後冷却空気通路は、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能なフィルム孔を有していない、
動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、3つの前記中間翼内通路のうちで最も前記前側の前記中間翼内通路である第一中間翼内通路にのみ連通し、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能である、
動翼。
【請求項3】
請求項2に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を前記正圧面に沿って外部に噴出可能な複数の正圧側フィルム孔と、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を前記負圧面に沿って外部に噴出可能な複数の負圧側フィルム孔と、を有する、
動翼。
【請求項4】
請求項3に記載の動翼において、
前記複数の正圧側フィルム孔は、前記正圧面中で、前記翼高さ方向における中間位置よりも前記ハブ側の領域のみで開口している、
動翼。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の動翼において、
前記複数の負圧側フィルム孔は、前記負圧面中で、前記翼高さ方向における全領域にわたって点在して開口している、
動翼。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の動翼を複数備えると共に、
軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、
複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、
を備え、
前記動翼は、前記翼高さ方向が、前記軸線に対する径方向になり、前記チップ側が前記軸線に対する径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前側が、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちの前記軸線上流側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている、
ガスタービン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記目的を達成するための本開示に係る一態様の動翼は、
ガスタービンが備える動翼において、断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、を備え、前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、前記前冷却空気通路は、前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な前入口を有し、前記前入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている前導入通路と、前記前導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの前翼内通路と、前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部から、前記前翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、を有し、前記中間冷却空気通路は、前記翼根の表面中で前記前入口より前記前縁に対して前記後縁の側である後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な中間入口を有し、前記中間入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている中間導入通路と、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記中間導入通路から前記前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路のうちでいずれか一の前記中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、を有し、3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に通路がうねっている1つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの前記中間翼内通路のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通するとともに、それぞれ前記翼体内で前記翼高さ方向にのみ延びており、前記後冷却空気通路は、前記翼根の表面中で前記中間入口よりも前記後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な後入口を有し、前記後入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている後導入通路と、前記後導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路と、前記後縁で開口し、前記後翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の後噴出孔と、を有し、前記後冷却空気通路は、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能なフィルム孔を有していない。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンが備える動翼において、
断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、
前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、
前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、
を備え、
前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、
前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、
前記前冷却空気通路は、
前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な前入口を有し、前記前入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている前導入通路と、
前記前導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの前翼内通路と、
前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部から、前記前翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、
を有し、
前記中間冷却空気通路は、
前記翼根の表面中で前記前入口より前記前縁に対して前記後縁の側である後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な中間入口を有し、前記中間入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている中間導入通路と、
前記翼体内で、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記中間導入通路から前記前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、
前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路のうちでいずれか一の前記中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、
を有し、
3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に通路がうねっている1つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの前記中間翼内通路のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通するとともに、それぞれ前記翼体内で前記翼高さ方向にのみ延びており、
前記中間導入通路は、1つのみ設けられ、前記翼高さ方向に延びて3つの前記中間翼内通路のうち最も前記後側の前記中間翼内通路に連通し、
前記中間導入通路及び3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に沿う1つの方向にのみ冷却空気を流通させる1本の流路をなし、
3つの前記中間翼内通路の流路断面は、前記前側の前記中間翼内通路ほど小さく、
前記後冷却空気通路は、
前記翼根の表面中で前記中間入口よりも前記後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な後入口を有し、前記後入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている後導入通路と、
前記後導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路と、
前記後縁で開口し、前記後翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の後噴出孔と、
を有し、
前記後冷却空気通路は、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能なフィルム孔を有していない、
動翼。
【請求項2】
請求項1に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、3つの前記中間翼内通路のうちで最も前記前側の前記中間翼内通路である第一中間翼内通路にのみ連通し、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能である、
動翼。
【請求項3】
請求項2に記載の動翼において、
前記複数のフィルム孔は、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を前記正圧面に沿って外部に噴出可能な複数の正圧側フィルム孔と、前記第一中間翼内通路内の冷却空気を前記負圧面に沿って外部に噴出可能な複数の負圧側フィルム孔と、を有する、
動翼。
【請求項4】
請求項3に記載の動翼において、
前記複数の正圧側フィルム孔は、前記正圧面中で、前記翼高さ方向における中間位置よりも前記ハブ側の領域のみで開口している、
動翼。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の動翼において、
前記複数の負圧側フィルム孔は、前記負圧面中で、前記翼高さ方向における全領域にわたって点在して開口している、
動翼。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の動翼を複数備えると共に、
軸線を中心として回転可能で、複数の前記動翼が前記軸線に対する周方向に並んで取り付けられているロータ軸と、
複数の前記動翼及び前記ロータ軸の外周側を覆うタービンケーシングと、
を備え、
前記動翼は、前記翼高さ方向が、前記軸線に対する径方向になり、前記チップ側が前記軸線に対する径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前側が、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちの前記軸線上流側になるよう、前記ロータ軸に取り付けられている、
ガスタービン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記目的を達成するための本開示に係る一態様の動翼は、
ガスタービンが備える動翼において、断面が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を含む翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼高さ方向におけるチップ側とハブ側とのうち、前記翼体の前記ハブ側の端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記ハブ側に設けられている翼根と、前記翼根、前記プラットフォーム及び前記翼体にかけて形成され、冷却空気が流通可能な前冷却空気通路、中間冷却空気通路、及び後冷却空気通路と、を備え、前記翼体は、前記翼高さ方向に対して垂直な方向成分を有する方向を向く翼面と、前記翼高さ方向における前記チップ側を向くチップ面と、を有し、前記翼面は、前記翼高さ方向に延びる前縁及び後縁と、前記前縁から前記後縁にまで広がっている正圧面及び負圧面と、を有し、前記前冷却空気通路は、前記翼根の表面で開口して冷却空気が流入可能な前入口を有し、前記前入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている前導入通路と、前記前導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの前翼内通路と、前記翼面中で、前記前縁を含み且つ前記後縁に対して前記前縁の側である前側を向く部分である前縁周り部から、前記前翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の前噴出孔と、を有し、前記中間冷却空気通路は、前記翼根の表面中で前記前入口より前記前縁に対して前記後縁の側である後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な中間入口を有し、前記中間入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている中間導入通路と、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延び、前記翼体のキャンバーラインに沿って、前記中間導入通路から前記前側に並ぶ3つの中間翼内通路と、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って、3つの前記中間翼内通路のうちでいずれか一の前記中間翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能な複数のフィルム孔と、を有し、3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に通路がうねっている1つのサーペンタイン通路を構成するよう、3つの前記中間翼内通路のうちで互いに隣り合う前記中間翼内通路は、前記ハブ側の端と前記チップ側の端とのうち、一方の端で互いに連通するとともに、それぞれ前記翼体内で前記翼高さ方向にのみ延びており、前記中間導入通路は、1つのみ設けられ、前記翼高さ方向に延びて3つの前記中間翼内通路のうち最も前記後側の前記中間翼内通路に連通し、前記中間導入通路及び3つの前記中間翼内通路は、前記翼高さ方向に沿う1つの方向にのみ冷却空気を流通させる1本の流路をなし、3つの前記中間翼内通路の流路断面は、前記前側の前記中間翼内通路ほど小さく、前記後冷却空気通路は、前記翼根の表面中で前記中間入口よりも前記後側の位置で開口して冷却空気が流入可能な後入口を有し、前記後入口から前記プラットフォームと前記翼体との境まで延びている後導入通路と、前記後導入通路と連通し、前記翼体内で、前記翼高さ方向に延びる1つの後翼内通路と、前記後縁で開口し、前記後翼内通路内の冷却空気を噴出可能な複数の後噴出孔と、を有し、前記後冷却空気通路は、前記正圧面と前記負圧面とのうち少なくとも一方に沿って前記後翼内通路内の冷却空気を外部に噴出可能なフィルム孔を有していない。