(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135702
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240927BHJP
G01N 27/41 20060101ALI20240927BHJP
G01N 27/419 20060101ALI20240927BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325H
G01N27/419 327H
G01N27/416 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046514
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】牧 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 康太
(72)【発明者】
【氏名】矢板 航平
(72)【発明者】
【氏名】清家 雄也
(72)【発明者】
【氏名】白石 悟
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BH01
2G004BH02
2G004BJ03
(57)【要約】
【課題】外部からの衝撃によって把持部材の把持位置が移動して把持力が低下する可能性を抑制する。
【解決手段】本発明の一側面に係るガスセンサにおいて、筒状体の開口端とは反対側にチューブがはみ出すように、係る筒状体の外周面のうち前記チューブで覆われた部分を把持する把持部材は、前記筒状体に形成された1つ以上の加締め部のうち、前記開口端に最も近い加締め部の、前記チューブによって覆われた外周面を、把持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
前記センサ素子が内部に配置され、開口端が形成された筒状体と、
前記センサ素子と電気的に導通し、前記筒状体の内部から前記開口端を通過して外方に延びるリード線と、
前記開口端を含む前記筒状体の端部の外周面と、前記リード線のうち前記開口端から外方に延びる部分と、を覆うチューブと、
前記開口端とは反対側に前記チューブがはみ出すように、前記筒状体の外周面のうち前記チューブで覆われた部分を把持する把持部材と、
を備え、
前記筒状体の前記開口端が形成されている側には、
それぞれ、前記筒状体の軸方向に沿って前記筒状体の径が連続的に変化する、2つの傾斜部分と、
前記軸方向において前記2つの傾斜部分の間に配置され、前記軸方向に沿って前記筒状体の径が一定である底部分と、
を含む加締め部が、1つ以上形成されており、
前記把持部材は、前記1つ以上の加締め部のうち、前記軸方向において前記開口端に最も近い加締め部の、前記チューブによって覆われた外周面を、把持し、
前記把持部材により把持される前記加締め部の含む前記2つの傾斜部分のそれぞれにおいて、
(A)前記傾斜部分と、前記底部分を前記傾斜部分の側に延長した面との間の角度、
または、
(B)前記傾斜部分と前記底部分との接点における前記傾斜部分の接線に平行な面と、前記底部分を前記傾斜部分の側に延長した面との間の角度
は、30°以上、かつ、90°未満である、
ガスセンサ。
【請求項2】
前記把持部材の前記軸方向の長さは、前記把持部材により把持される前記加締め部の前記軸方向の長さ以下である、
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記筒状体の、前記加締め部が形成されていない部分の径は、前記把持部材により把持される前記加締め部の、前記底部分における前記筒状体の径よりも、0.5mm以上大きい、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記開口端における、前記筒状体の外周面には、R面取りが施されている、
請求項1または2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNOxなどの特定ガスの濃度を検出するガスセンサが知られている。例えば、下掲の特許文献1には、センサ素子が内部に配置され開口端が形成された筒状体と、前記センサ素子と電気的に導通し、前記筒状体の内部から前記開口端を通過して外方に延びるリード線と、前記開口端を含む前記筒状体の端部の外周面と、前記リード線のうち前記開口端から外方に延びる部分と、を覆うチューブと、前記開口端とは反対側に前記チューブがはみ出すように、前記筒状体の外周面のうち前記チューブで覆われた部分を把持する把持部材と、を備えたガスセンサが開示されている。特許文献1に開示のガスセンサにおいて、前記筒状体の前記開口端側には、縮径状に加締められた加締め部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明者らは、特許文献1に開示されるような従来のガスセンサについて、以下の問題を見出した。すなわち、本件発明者らは、外部からの衝撃によって前記把持部材の把持位置が前記ガスセンサの軸方向に移動した場合、前記把持部材の把持力が低下し得るという問題を見出した。
【0005】
図5は、従来のガスセンサCSの要部を模式的に示す拡大断面図である。具体的には、
図5は、従来のガスセンサCSの、前記開口端側(以下、「後端側」とも称する)の詳細を示す。
図5において、紙面左右方向が、従来のガスセンサCSの軸方向(長手方向)であり、紙面左側が先端側、紙面右側が後端側である。
図5に例示するように、従来のガスセンサCSは、軸を有し、長手方向(軸方向)に沿って延びるように構成されており、長手方向のそれぞれの端として先端および後端を有している。長手方向の一方の端が先端、他方の端が後端である。
図5の例では、従来のガスセンサCSは、従来のガスセンサCSの先端が左方向を向き、従来のガスセンサCSの後端が右方向を向くように配置されている。
【0006】
図5に例示するように、従来のガスセンサCSにおいて、筒状体40の後端側には、縮径状に加締められた加締め部431が形成されている。
図5に示す例では、筒状体40の後端側に、2つの加締め部431が形成されており、具体的には、加締め部431(1)および加締め部431(2)が形成されている。以下の説明において、加締め部431(1)および加締め部431(2)のそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「加締め部431」と記載することがある。また、複数の加締め部431のそれぞれを区別する場合には、部材番号「431」の後に「(1)」、「(2)」、「(3)」、・・・、「(n)」、「(n+1)」を付して、それぞれを区別する。「n」は「1」以上の整数とする。
【0007】
係る構成を備える従来のガスセンサCSにおいて、把持部材10は、
図5に例示するように、チューブ70によって覆われた筒状体40の外周面であって、山部439の外周面を把持していることがある。山部439は、筒状体40の後端側の、加締め部431が形成されている部分以外の部分であり、加締め部431が形成されていない部分と捉えることもできる。
図5に示す例では、山部439は、軸方向において加締め部431(1)と加締め部431(2)との間の部分である。
【0008】
本件発明者らは、従来のガスセンサCSにおいて、把持部材10が、筒状体40の山部439の外周面を把持している場合、以下の問題が発生し得ることを見出した。すなわち、外部からの衝撃によって把持部材10の把持位置が軸方向に移動した場合、特に、
図5に例示するように、把持位置が、山部439の外周面から、加締め部431の外周面へと移動した場合、把持部材10の把持力が低下し得るという問題を見出した。
【0009】
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、外部からの衝撃によって把持部材の把持位置が移動して把持力が低下する可能性を抑制したガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0011】
第1の観点に係るガスセンサは、センサ素子と、前記センサ素子が内部に配置され、開口端が形成された筒状体と、前記センサ素子と電気的に導通し、前記筒状体の内部から前記開口端を通過して外方に延びるリード線と、前記開口端を含む前記筒状体の端部の外周面と、前記リード線のうち前記開口端から外方に延びる部分と、を覆うチューブと、前記開口端とは反対側に前記チューブがはみ出すように、前記筒状体の外周面のうち前記チューブで覆われた部分を把持する把持部材と、を備え、前記筒状体の前記開口端が形成されている側には、それぞれ、前記筒状体の軸方向に沿って前記筒状体の径が連続的に変化する、2つの傾斜部分と、前記軸方向において前記2つの傾斜部分の間に配置され、前記軸方向に沿って前記筒状体の径が一定である底部分と、を含む加締め部が、1つ以上形成されており、前記把持部材は、前記1つ以上の加締め部のうち、前記軸方向において前記開口端に最も近い加締め部の、前記チューブによって覆われた外周面を、把持し、前記把持部材により把持される前記加締め部の含む前記2つの傾斜部分のそれぞれにおいて、(A)前記傾斜部分と、前記底部分を前記傾斜部分の側に延長した面との間の角度、または、(B)前記傾斜部分と前記底部分との接点における前記傾斜部分の接線に平行な面と、前記底部分を前記傾斜部分の側に延長した面との間の角度は、30°以上、かつ、90°未満である。
【0012】
当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記把持部材は、前記1つ以上の加締め部のうち、前記軸方向において前記開口端に最も近い加締め部(以下、「後端側加締め部」とも称する)の、前記チューブによって覆われた外周面を、把持する。つまり、前記把持部材は、「前記チューブによって覆われた、前記筒状体の、前記加締め部が形成されていない部分」を把持する従来のガスセンサの把持部材とは異なり、前記チューブによって覆われた、前記後端側加締め部の外周面を把持する。本件発明者らは、実験を行ない、前記後端側加締め部の、前記チューブによって覆われた外周面を把持する前記把持部材は、従来のガスセンサの把持部材に比べて、衝撃が与えられても移動しにくいことを確認した。したがって、前記ガスセンサは、外部からの衝撃によって前記把持部材の位置(把持位置)が移動して、前記把持部材の把持力が低下する可能性を抑制できるとの効果を奏する。
また、前記ガスセンサにおいて、前記後端側加締め部の前記傾斜部分と前記底部分との間の角度は、以下の条件を満たす。すなわち、前記(A)の角度、または、前記(B)の角度は、30°以上、かつ、90°未満である。
【0013】
本件発明者らはさらに実験を行ない、前記後端側加締め部の前記傾斜部分の角度について、望ましい範囲を特定した。その結果、前記傾斜部分をテーパー状とする場合、つまり、前記ガスセンサの長手方向の軸(前記筒状体の軸)に平行で、かつ、前記軸に接する断面において直線となるように、前記傾斜部分を形成する場合、前記傾斜部分の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、前記傾斜部分と、前記底部分を前記傾斜部分の側に延長した面との間の角度(以下、「角度α」とも称する)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、前記傾斜部分は、前記筒状体の軸方向に沿って前記筒状体の径が連続的に変化する部分であるから、角度αは90°未満である。
【0014】
また、本件発明者らは、前記傾斜部分をR状とする場合、つまり、前記軸に平行でかつ前記軸に接する断面において曲線となるように、前記傾斜部分を形成する場合、前記傾斜部分の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、前記傾斜部分と前記底部分との接点における前記傾斜部分の接線に平行な面と、前記底部分を前記傾斜部分の側に延長した面との間の角度(以下、「角度β」とも称する)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、角度αと同様に、角度βも90°未満である。
【0015】
本件発明者らは、前記傾斜部分をテーパー状とする場合、角度αを、30°以上、かつ、90°未満とすることで、前記傾斜部分により前記把持部材の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。また、本件発明者らは、前記傾斜部分をR状とする場合、角度βを、30°以上、かつ、90°未満とすることで、前記傾斜部分により前記把持部材の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。角度αおよび角度βを30°未満とした場合、前記後端側加締め部の前記傾斜部分によって前記把持部材の位置(把持位置)を確実に固定することができず、外部からの衝撃によって前記把持部材の把持位置が移動しやすく(ズレやすく)なり、把持力が低下する。
【0016】
そのため、前記傾斜部分について、角度α(つまり、前記(A)の角度)を、30°以上、かつ、90°未満とし、または、角度β(つまり、前記(B)の角度)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、前記ガスセンサは、以下の効果を奏する。すなわち、前記ガスセンサは、前記後端側加締め部の前記傾斜部分により、前記把持部材の把持位置を確実に固定することができるとの効果を奏する。
【0017】
第2の観点に係るガスセンサは、上記第1の観点に係るガスセンサにおいて、前記把持部材の前記軸方向の長さは、前記把持部材により把持される前記加締め部の前記軸方向の長さ以下であってもよい。当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記把持部材の前記軸方向の長さは、前記把持部材により把持される前記加締め部の前記軸方向の長さ以下である。本件発明者らは、前記把持部材の前記軸方向の長さと、前記把持部材により把持される前記加締め部(すなわち、前記後端側加締め部)の前記軸方向の長さとが満たすべき関係を検討した。実験により、本件発明者らは、前記把持部材の前記軸方向の長さを、前記後端側加締め部の前記軸方向の長さ以下とすることで、前記把持部材の把持力を向上できることを確認した。そのため、前記把持部材の前記軸方向の長さを、前記後端側加締め部の前記軸方向の長さ以下とすることで、前記ガスセンサは、前記把持部材の把持部力を向上することができるとの効果を奏する。
【0018】
第3の観点に係るガスセンサは、上記第1または第2の観点に係るガスセンサにおいて、前記筒状体の、前記加締め部が形成されていない部分の径は、前記把持部材により把持される前記加締め部の、前記底部分における前記筒状体の径よりも、0.5mm以上大きくてもよい。
【0019】
当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記筒状体の、前記加締め部が形成されていない部分の径は、前記把持部材により把持される前記加締め部の、前記底部分における前記筒状体の径よりも、0.5mm以上大きい。つまり、前記ガスセンサにおいて、前記筒状体の、前記加締め部が形成されていない部分の径は、前記後端側加締め部の前記底部分における前記筒状体の径よりも、0.5mm以上大きい。
【0020】
前記加締め部が形成されていない部分と、前記後端側加締め部の前記底部分とで、前記筒状体の径の差が小さい時、例えば、前記後端側加締め部の前記底部分が、前記加締め部が形成されていない部分に比べて、十分に深くない場合、以下の問題が発生し得る。すなわち、前記後端側加締め部によって前記把持部材の把持位置を確実に固定することができず、外部からの衝撃によって前記把持部材の把持位置が移動しやすくなり、前記把持部材の把持力が低下し得る。前記後端側加締め部の前記底部分を、前記加締め部が形成されていない部分に比べて、十分に深くすることで、前記後端側加締め部によって前記把持部材の把持位置を確実に固定し、把持位置の移動、および、把持力の低下を防ぐことができる。具体的には、前記後端側加締め部の前記底部分を、前記加締め部が形成されていない部分に比べて0.5mm以上深くすることで、前記後端側加締め部によって前記把持部材の把持位置を確実に固定し、把持位置の移動、および、把持力の低下を防ぐことができる。
【0021】
そのため、前記筒状体の、前記加締め部が形成されていない部分の径を、前記後端側加締め部の前記底部分における前記筒状体の径よりも、0.5mm以上大きくすることで、前記ガスセンサは、以下の効果を奏する。すなわち、前記ガスセンサは、前記後端側加締め部により、前記把持部材の把持位置を確実に固定し、把持位置の移動、および、前記把持部材の把持力の低下を防ぐことができるとの効果を奏する。
【0022】
第4の観点に係るガスセンサは、上記第1から上記第3の何れかの観点に係るガスセンサにおいて、前記開口端における、前記筒状体の外周面には、R面取りが施されていてもよい。当該構成では、前記ガスセンサにおいて、前記開口端における、前記筒状体の外周面には、R面取りが施されている。本件発明者らは、前記開口端における前記筒状体の外周面に、R面取りを施すことにより、前記チューブが破断する可能性を抑制できることを、実験により確認した。前記開口端における前記筒状体の外周面にR面取りを施さない場合、前記把持部材と前記筒状体との間に配置される前記チューブには、前記開口端における前記筒状体の外周面の角が接触し、係る接触位置に応力が集中して、前記チューブが破断しやすくなる。前記開口端における前記筒状体の外周面にR面取りを施すことにより、応力集中を緩和して、前記チューブが破断する可能性を抑制することができる。したがって、前記ガスセンサは、前記開口端における前記筒状体の外周面にR面取りを施すことにより、前記チューブが破断する可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、外部からの衝撃によって把持部材の把持位置が移動して把持力が低下する可能性を抑制したガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るガスセンサの主要な構成の一例を概略的に示す部分断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のガスセンサの要部を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のガスセンサが備える加締め部について、傾斜部分の角度について説明する図である。
【
図4】
図4は、
図1のガスセンサが備える筒状体について、後端の外周面にR面取りを施さない場合と施す場合とを対比して示す図である。
【
図5】
図5は、従来のガスセンサCSの要部を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0026】
本件発明者らは、
図5に例示する従来のガスセンサCSのようなガスセンサについて、把持部材10が外部からの衝撃によって位置ずれを起こす可能性があり、係る位置ずれが発生すると、把持部材10の把持力が低下し得るという問題を見出した。例えば
図5に例示するように、従来のガスセンサCSにおいて、筒状体40の後端側には、縮径状に加締められた加締め部431が形成されている。そして、従来のガスセンサCSにおいて、把持部材10は、チューブ70によって覆われた筒状体40の外周面であって、山部439(つまり、加締め部431が形成されていない部分)の外周面を把持していることがある。そのため、把持部材10が外部からの衝撃によって位置ずれを起こした場合、特に、
図5に例示するように、把持部材10の位置(把持位置)が、山部439の外周面から、加締め部431の外周面へと移動した場合、把持部材10の把持力が低下し得る。本件発明者らは、従来のガスセンサCSにおいて、上述の「把持部材10が位置ずれを起こして、把持部材10の把持力が低下し得る」との問題が発生し得ることを見出し、係る問題を解決するための方法を検討した。
【0027】
本件発明者らは、実験を行ない、把持部材を、筒状体40の後端側の一部を縮径状に加締めることで形成される加締め部に配置することにより、把持部材が外部からの衝撃によって位置ずれを起こす可能性を抑制できることを確認した。すなわち、「加締め部の、チューブによって覆われた外周面」を把持する把持部材は、「チューブによって覆われた筒状体40の外周面であって、加締め部が形成されていない部分の外周面」を把持する従来の把持部材より、位置ずれを起こしにくいことを確認した。
【0028】
そこで、本発明の一態様に係るガスセンサにおいて、把持部材は、筒状体40の後端側の一部を縮径状に加締めることで形成される加締め部の、チューブによって覆われた外周面を、把持する。係る構成を採用することにより、本発明の一態様に係るガスセンサは、外部からの衝撃によって把持部材の位置(把持位置)が移動して、把持部材の把持力が低下する可能性を、従来のガスセンサCSよりも抑制できるとの効果を奏する。
【0029】
特に、本発明の一態様に係るガスセンサにおいて加締め部は、2つの傾斜部分と、底部分と、を含む。2つの傾斜部分は、それぞれ、筒状体40の軸方向に沿って筒状体40の径が連続的に変化する部分である。底部分は、筒状体40の軸方向において上述の2つの傾斜部分の間に配置され、筒状体40の軸方向に沿って筒状体40の径が一定である部分である。2つの傾斜部分は、それぞれ、例えば、テーパー状またはR状に形成される。
【0030】
本件発明者らは、実験を行ない、加締め部の傾斜部分の角度について、望ましい範囲を特定した。その結果、傾斜部分をテーパー状とする場合、つまり、ガスセンサ(筒状体40)の長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において直線となるように、傾斜部分を形成する場合、傾斜部分の角度は、以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、傾斜部分と、底部分を傾斜部分の側に延長した面との間の角度(以下、「角度α」とも称する)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、傾斜部分は、筒状体40の軸方向に沿って筒状体40の径が連続的に変化する部分であるから、角度αは90°未満である。したがって、本件発明者らは、上述の角度αを、30°以上、90°未満とするのが望ましいことを確認した。
【0031】
また、本件発明者らは、傾斜部分をR状とする場合、つまり、ガスセンサ(筒状体40)の長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において曲線となるように、傾斜部分を形成する場合、傾斜部分の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、傾斜部分と底部分との接点における傾斜部分の接線に平行な面と、底部分を傾斜部分の側に延長した面との間の角度(以下、「角度β」とも称する)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、角度αと同様に、角度βも90°未満である。したがって、本件発明者らは、上述の角度βを、30°以上、90°未満とするのが望ましいことを確認した。
【0032】
本件発明者らは、傾斜部分をテーパー状とする場合、角度αを、30°以上、かつ、90°未満とすることで、傾斜部分により把持部材の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。また、本件発明者らは、傾斜部分をR状とする場合、角度βを、30°以上、かつ、90°未満とすることで、傾斜部分により把持部材の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。角度αおよび角度βをそれぞれ30°未満とした場合、傾斜部分によって把持部材の位置(把持位置)を確実に固定することができず、外部からの衝撃によって把持部材の把持位置が移動しやすく(ズレやすく)なり、把持力が低下する。
【0033】
そのため、傾斜部分について、角度αを、30°以上、かつ、90°未満とし、または、角度βを、30°以上、かつ、90°未満とすることで、本発明の一態様に係るガスセンサは、以下の効果を奏する。すなわち、本発明の一態様に係るガスセンサは、加締め部の傾斜部分により、把持部材の把持位置を確実に固定することができるとの効果を奏する。以下では、
図1~
図4を用いて、本発明の一側面に係るガスセンサとして、ガスセンサ1について説明する。
【0034】
[構成例]
<ガスセンサの全体概要>
図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。すなわち、
図1は、ガスセンサ1の、長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行でかつ軸に接する断面の構成を、模式的に示す。ガスセンサ1は、本発明の「ガスセンサ」の一例であり、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNO
xなどの特定ガスの濃度(特定ガス濃度)を検出可能なガスセンサである。
図1に例示するように、ガスセンサ1は、軸を有し、長手方向(軸方向)に沿って延びるように構成されており、長手方向のそれぞれの端として先端および後端を有している。長手方向の一方の端が先端、他方の端が後端である。
図1の例では、ガスセンサ1は、ガスセンサ1の先端が左方向を向き、ガスセンサ1の後端が右方向を向くように配置されている。すなわち、
図1の左右方向が、長手方向(軸方向)に相当する。本実施形態では、ガスセンサ1は、把持部材10、センサ素子20、保護カバー30、筒状体40、コネクタ50、弾性体60、チューブ70、リード線80、および、環装部品90を備える。ガスセンサ1においてセンサ素子20は、筒状体40と、保護カバー30とによって囲繞され、筒状体40と、保護カバー30とは、全体として、センサ素子20を内部に収容する収容部材(ケーシング)を構成している。センサ素子20は、筒状体40および保護カバー30と同軸に配置されており、係るセンサ素子20の中心軸の延在方向は、ガスセンサ1の軸方向と一致している。
【0035】
(センサ素子)
センサ素子20は、本発明の「センサ素子」の一例であり、軸方向(
図1の左右方向)に沿って延びるように構成される。
図1に例示するセンサ素子20は、細長な平板状の(長尺板状の)素子である。センサ素子20は、先端側に不図示の検出部を有すると共に、後端側に不図示のコネクタ電極を有する。センサ素子20は、先端側が外側多孔質層によって被膜されていてもよく、係る外側多孔質層は、例えば、被測定ガス中の水分等が付着してセンサ素子20の素子本体にクラックが生じるのを抑制する保護層としての役割を果たしてもよい。
【0036】
ガスセンサ1においてセンサ素子20は、先端側がガスセンサ1の先端の方を向くように配置されている。例えば、センサ素子20の一態様においては、センサ素子20の内部に導入された被測定ガスがセンサ素子20の内部で還元ないしは分解されて酸素イオンが発生する。このようなセンサ素子20を備えるガスセンサ1においては、センサ素子20の内部を流れる酸素イオンの量が被測定ガス中における検知対象ガスである特定ガスの濃度に比例することに基づいて、当該特定ガスの濃度が求められる。
【0037】
図1に示す例においてセンサ素子20の先端側は、保護カバー30によって囲繞されており、後端側は、外筒43内に突出しており、両者の間の略中央部分は、環装部品90により、両端部間を気密に封止する態様にて主体金具41および内筒42の内部に固定されている。
【0038】
(環装部品)
環装部品90は、
図1に示す例では、複数のセラミックサポータ91a、91b、91cと、複数の圧粉体92a、92bと、メタルリング93と、を含む。セラミックサポータ91a、91b、91cは、それぞれ、セラミックス製の碍子である。より詳細には、セラミックサポータ91a、91b、91cの軸中心位置には、センサ素子20の断面形状に応じた形状の貫通孔(図示省略)が設けられており、当該貫通孔にセンサ素子20が挿通されることによって、セラミックサポータ91a、91b、91cはセンサ素子20に環装されている。なお、セラミックサポータ91aは、図面左側において主体金具41のテーパー面に係止されている。
【0039】
一方、圧粉体92a、92bは、それぞれ、タルクなどのセラミックス粉末を成型したものである。圧粉体92a、92bは、セラミックサポータ91a、91b、91cと同様に、貫通孔にセンサ素子20が挿通されることによって、センサ素子20に環装されていた2つの成型体(不図示)が、センサ素子20の周囲に環装された状態で主体金具41および内筒42の内部に配置された後、さらに圧縮されて一体となったものである。
図1に示す例では、圧粉体92aは、セラミックサポータ91a、91b間に充填されており、圧粉体92bは、セラミックサポータ91b、91c間に充填されている。
図1に例示するように、主体金具41および内筒42の内部には、セラミックサポータ91a、91b、91cと、圧粉体92a、92bと、が封入されており、これらはメタルリング93と主体金具41の内壁と内筒42の内壁とに挟まれて封止されている。圧粉体92a、92bの圧縮充填により、センサ素子20の先端側と、後端側との間の気密封止が、実現される。
【0040】
図1には、環装部品90をセラミックサポータ91a、91b、91cと、圧粉体92a、92bと、メタルリング93と、によって構成する例を示した。しかしながら、ガスセンサ1において、環装部品90をセラミックサポータ91a、91b、91cと、圧粉体92a、92bと、メタルリング93と、によって構成することは必須ではない。
図1に例示するガスセンサ1は、主体金具41および内筒42の内部においてセンサ素子20を固定すると共に、センサ素子20の先端側と後端側との間を気密封止する環装部品90を備えている。
【0041】
(筒状体)
筒状体40は、本発明の「筒状体」の一例であり、センサ素子20が内部に配置され、開口端が形成された筒状の部材である。筒状体40は、例えば金属製であり、
図1に示す例では、筒状体40の内部にはセンサ素子20およびコネクタ50が配置されている。筒状体40は、それぞれが金属製の部材である複数の筒状の部材を、同軸に配置して構成されてもよい。
図1に示す例では、筒状体40は、それぞれが金属製の部材である、筒状の主体金具41と、筒状の内筒42と、筒状の外筒43と、固定ボルト41aとを含む。
【0042】
主体金具41および内筒42は、それぞれ、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材である。内筒42は、主体金具41に溶接固定されており、例えば、軸方向において主体金具41の後端側に、溶接固定されている。主体金具41および内筒42の内部には、センサ素子20と、該センサ素子20に環装された固定用の環装部品90とが、収容される。つまり、主体金具41および内筒42は、センサ素子20の周りに環装された環装部品90の周囲に、さらに環装される。
図1に例示する主体金具41および内筒42は、軸方向(長手方向)に沿ってセンサ素子20を囲むように構成され、特に、センサ素子20の先端側および後端側のそれぞれの一部を除く範囲を囲うように構成されている。
【0043】
外筒43は、金属製の筒状(例えば、円筒状)の部材であり、
図1に例示する外筒43は、センサ素子20の後端、および、コネクタ50の周囲を覆っている。
【0044】
外筒43の先端側の端部(開口端)は、主体金具41の後端側の外周端部に溶接固定されている。また、外筒43の後端側の開口端(開口端43a)には、係る開口端を封止するように弾性体60が配置されている。外筒43の後端側には、後端側の開口端を封止するための弾性体60の一部を周囲から加締める加締め部431が、形成されている。
【0045】
図1に示す例では、外筒43の後端側に2つの加締め部431が形成されており、具体的には、加締め部431(1)と加締め部431(2)とが形成されている。本実施形態において、加締め部431(1)と加締め部431(2)とのそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「加締め部431」と記載することがある。また、複数の加締め部431のそれぞれを区別する場合には、部材番号「431」の後に「(1)」、「(2)」、「(3)」、・・・、「(n)」、「(n+1)」を付して、それぞれを区別する。「n」は「1」以上の整数とする。
【0046】
加締め部431は、本発明の「加締め部」の一例である。加締め部431において外筒43がその周方向全体にわたって縮径状に外側から加締められることにより、弾性体60に径方向外側へと向かう反力を生じさせることによって、外筒43は封止されている。
【0047】
また、弾性体60によって封止された外筒43の後端側の開口端43aからは、リード線80が、弾性体60の内部に形成された貫通孔60aを通って、外部に引き出されている。リード線80の被膜と金属線(導体)との間(言い換えれば、被膜の内側)を通って、外筒43の内部空間には外気(大気)が導入され、外筒43の内部空間は、基準ガス(大気)雰囲気となっている。センサ素子20の後端は、基準ガスで満たされた外筒43の内部空間内に配置されている。
【0048】
固定ボルト41aは、ガスセンサ1を測定位置(取り付け位置)に固定する際に用いられる環状の部材であり、主体金具41と同軸に固定されている。固定ボルト41aは、ねじ切りがされたボルト部と、係るボルト部を螺合する際に保持される保持部とを備えている。固定ボルト41aのボルト部は、ガスセンサ1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット(ナット部)に、固定ボルト41aのボルト部が螺合されることで、ガスセンサ1は、保護カバー30の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。
【0049】
これまでに説明してきた通り、
図1に例示する筒状体40は、主体金具41と、内筒42と、外筒43と、固定ボルト41aとを含み、全体として筒状(例えば、円筒状)の部材として、特に、軸方向に延びる筒状の部材として構成されている。すなわち、
図1に例示する筒状体40は、筒状の主体金具41と、主体金具41に溶接固定された円筒形の内筒42および外筒43と、主体金具41の先端側の外周に配置される固定ボルト41aとを含む、軸方向に延びる円筒状の部材である。例えば、筒状体40とガスセンサ1(センサ素子20)とは同軸であり、筒状体40は、軸方向(長手方向)のそれぞれの端として先端および後端を有しており、筒状体40の先端がガスセンサ1の先端の方を向くように配置されている。そして、筒状体40の内部には、センサ素子20と、該センサ素子20に環装された固定用の環装部品90と、コネクタ50とが収容され、後端側の開口端43aを弾性体60によって封止されている。筒状体40(外筒43)の後端側には、筒状体40の開口端43aを封止するための弾性体60を固定するための加締め部431が形成され、加締め部431は、弾性体60の一部を周囲から加締めている。
【0050】
なお、ガスセンサ1において、筒状体40が、主体金具41と、内筒42と、外筒43と、固定ボルト41aとを含むことは必須ではない。筒状体40は、固定ボルト41aを含んでいなくてもよいし、主体金具41と内筒42と外筒43とは一体的に形成された部材であってもよい。ガスセンサ1において、筒状体40は、センサ素子20が内部に配置され、開口端が形成された、筒状の部材であればよい。
【0051】
(コネクタ)
コネクタ50は、アルミナ焼結体などセラミックス製のハウジング51と、このハウジング51に保持されてセンサ素子20の電極(例えば、コネクタ電極)に接触する接触金具52とを備えている。接触金具52は、コネクタ50の外部に引き出されて、圧着端子である接続部52aでリード線80と電気的に接続されている。なお、コネクタ50は、センサ素子20の表面および裏面に複数個形成された電極に対応する数(例えば、4個や8個など)の接触金具52を備えており、このため、接続部52aは複数箇所(例えば、4箇所や8箇所など)となり、リード線80も複数本(例えば、4本や8本など)引き出されることになる。
【0052】
(リード線)
リード線80は、本発明の「リード線」の一例であり、センサ素子20と電気的に導通し、筒状体40の内部から筒状体40の開口端43aを通過して外方に延びる。
図1に示す例では、リード線80は、接触金具52を介してセンサ素子20のコネクタ電極と電気的に接続し、筒状体40の開口端43aから外方に延びている。具体的には、リード線80は、その先端側において接触金具52の後端側(すなわち、接続部52a)と電気的に接続されており、また、リード線80の後端側は、筒状体40の開口端43aから外方に延びている。そして、リード線80と筒状体40(外筒43)との隙間は弾性体60によって封止されている。
【0053】
例えば、リード線80は、弾性体60の内部に設けられた貫通孔60aに挿通されている。リード線80の先端側の端部は、接触金具52の後端側(接続部52a)に圧着固定され、また、リード線80の後端側の端部は、外部の装置(コントローラ)、電源等に接続されている。これにより、センサ素子20(特に、センサ素子20のコネクタ電極)と、外部の装置、電源等とが、接触金具52およびリード線80を通じて電気的に接続される。なお、
図1には、接触金具52とリード線80とがそれぞれ2つである例を示しているが、これはあくまで図示の簡単のためである。実際には、ガスセンサ1は、上記の電気的な接続に必要な数の接触金具52およびリード線80を備えている。
【0054】
ガスセンサ1においては、例えば、リード線80の被膜と金属線(導体)との間(言い換えれば、被膜の内側)を、外気および筒状体40内の気体が通ることで、筒状体40内に外気が導入され、また、筒状体40内の気体が外部に排出される。
【0055】
(弾性体)
弾性体60は、弾性を有する部材であり、例えばゴム製である。弾性体60は、筒状体40の開口端43a(後端側の開口端)を封止するよう配置され、リード線80が挿入される。具体的には、弾性体60の内部には、軸方向に延びる貫通孔60aが形成されており、例えば、軸方向に延びる貫通孔60aが複数形成されている。弾性体60の内部に形成された貫通孔60aには、リード線80が収容され(挿入され)、例えば、弾性体60の内部に形成された複数の貫通孔60aのそれぞれに、複数のリード線80のそれぞれが、収容されている(挿入されている)。
【0056】
弾性体60の材料は、例えば、フッ素ゴムである。フッ素ゴムは、耐性、強度などのさまざまな面で優れた特性を有し、特に耐熱性および耐油性に優れている。そのため、ガスセンサ1は、フッ素ゴムからなる弾性体60を利用することで、例えば、高温環境下でも弾性体60のシール性を確保して、ガス濃度の検出精度を維持、向上させることができるとの効果を奏する。ただし、ガスセンサ1にとって、弾性体60の材料をフッ素ゴムとすることは必須ではなく、ガスセンサ1は、弾性を有する素材を適宜、弾性体60の材料に用いてもよい。
【0057】
(保護カバー)
保護カバー30は、センサ素子20のうち、使用時に被測定ガスに直接に接触する部分である先端側の所定範囲を保護する、略円筒状の外装部材である。
図1に例示する保護カバー30は、軸方向(長手方向)に沿って、筒状体40(主体金具41)の先端側の少なくとも一部の周りを囲み、センサ素子20の先端を越えて延びるように構成されている。例えば、保護カバー30は、センサ素子20および筒状体40の先端側の一部を軸周りに囲うように構成される。保護カバー30は、軸方向のそれぞれの端として先端および後端を有しており、保護カバー30の先端がセンサ素子20の先端よりもガスセンサ1の先端側に配置されている。
【0058】
保護カバー30には、気体が通過可能な複数の貫通孔31a、31b、32a、32bが設けられている。係る貫通孔を通じて保護カバー30内に流入した被測定ガスが、センサ素子20における直接の検知対象となる。なお、保護カバー30に設けられる貫通孔の種類、配置個数、配置位置、形状などは、保護カバー30の内部への被測定ガスの流入態様を考慮して、適宜に定められてよい。
【0059】
図1に示す例では、保護カバー30は、センサ素子20の先端を覆う有底筒状の内側カバー31と、内側カバー31を覆う有底筒状の外側カバー32とを備えている。内側カバー31は、センサ素子20および筒状体40(主体金具41)の先端側の少なくとも一部の周囲を覆うように構成され、被測定ガスを流通させるための貫通孔31a、31bを備えている。外側カバー32は、内側カバー31の周囲を覆うように構成され、
図1に示す例では、有底筒状に形成され、側面に被測定ガスを流通させるための貫通孔32a,32bを備えている。
【0060】
内側カバー31によって囲まれた空間としてセンサ素子室が形成されており、センサ素子20の先端は、このセンサ素子室内に配置されている。保護カバー30に設けられた貫通孔31a、31b、32a、32bにより、センサ素子室は、保護カバー30の外側の空間と接続している。ただし、保護カバー30の構成および形状は、このような例に限定されなくてよい。保護カバー30の構成および形状は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
【0061】
保護カバー30の材料には、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS)等の金属材料が用いられてよい。保護カバー30は、金属材料を適宜成形することで、製造されてよい。なお、この保護カバー30は、ガスセンサ1の構成から省略されてもよい。
【0062】
(チューブ)
チューブ70は、本発明の「チューブ」の一例であり、開口端43aを含む筒状体40の端部の外周面と、リード線80のうち、筒状体40の開口端43aから外方に延びる部分と、を覆う。チューブ70は、絶縁性かつ可撓性を有する筒状部材であり、リード線80のうち、筒状体40の開口端43aから外方に延びる部分を覆っている。また、チューブ70は、開口端43a、加締め部431(加締め部431(1)、431(2))を含む筒状体40(外筒43)の基端側(後端側)の端部の外周面を覆っている。本実施形態では、チューブ70は、ガラス繊維からなる編組チューブの表面にシリコン材を塗布したワニスチューブとした。なお、チューブ70の材質は、これに限らず、例えばガラス繊維の代わりにポリエステルなどの樹脂繊維からなるものとしてもよい。なお、リード線80は、リード線80自身が有する被覆とチューブ70とで二重に被覆された状態になっている。
【0063】
(把持部材)
把持部材10は、本発明の「把持部材」の一例であり、軸方向において筒状体40の開口端43aとは反対側にチューブ70がはみ出すように、筒状体40の外周面のうちチューブ70で覆われた部分を把持する。すなわち、筒状体40(外筒43)の外周面のうちチューブ70で覆われた部分は、把持部材10により把持されている。把持部材10は、例えば、金属製のイヤークランプであってもよく、不図示の、リング部およびイヤー部を備えていてもよい。係るリング部およびイヤー部は、1つの板状部材を曲げて形成されていてもよく、リング部がチューブ70および筒状体40の外周面を囲んでいてもよい。把持部材10において、リング部の内周面は、チューブ70に接触していてもよい。リング部の円弧の端部は、自身の内周面に形成された溝内に収まるようになっていてもよい。これにより、把持部材10は、リング部の内周面に段差のない、いわゆるステップレスクランプとして構成されていてもよい。
【0064】
上述のとおり、把持部材10は、筒状体40の外周面のうちチューブ70で覆われた部分を把持し、つまり、筒状体40とチューブ70とを把持する。把持部材10は、筒状体40とチューブ70とを把持する把持部材であれば、クランプに限らずどのような部材を用いてもよい。例えば、クランプに代えて樹脂製の結束バンドなどを把持部材10として用いて、筒状体40とチューブ70とを把持してもよい。また、クランプ、結束バンドは筒状体40の外周面を囲むリング状の部材であるが、これに限らず、例えばC字状、V字状など、把持部材10は、リング状以外の形状の部材であってもよい。
【0065】
ガスセンサ1において把持部材10は、従来のガスセンサCSの把持部材10とは異なり、筒状体40の後端側に形成された加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。特に、ガスセンサ1における把持部材10は、筒状体40の後端側に形成された1つ以上の加締め部431のうち、筒状体40の軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。
図1に示す例では、把持部材10は、軸方向において先端側の加締め部431(1)と、後端側の加締め部431(2)とのうち、筒状体40の開口端43aに近い加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持している。
【0066】
これまでに
図1を用いて説明してきたとおり、ガスセンサ1は、ガスセンサ1は、センサ素子20と、筒状体40と、リード線80と、チューブ70と、把持部材10とを備える。筒状体40は、センサ素子20が内部に配置され、開口端43aが形成された筒状の部材である。リード線80は、センサ素子20と電気的に導通し、筒状体40の内部から筒状体40の開口端43aを通過して外方に延びる。チューブ70は、開口端43aを含む筒状体40の端部の外周面と、リード線80のうち筒状体40の開口端43aから外方に延びる部分と、を覆う。把持部材10は、筒状体40の開口端43aとは反対側にチューブ70がはみ出すように、筒状体40の外周面のうちチューブ70で覆われた部分を把持する。ガスセンサ1において、筒状体40の開口端43aが形成されている側(後端側)には、加締め部431が、1つ以上形成されており、
図1に示す例では、加締め部431(1)および加締め部431(2)が形成されている。把持部材10は、1つ以上の加締め部431のうち、筒状体40の軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。
図1に示す例では、把持部材10は、加締め部431(1)と加締め部431(2)とのうち、筒状体40の開口端43aに近い加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。
【0067】
<ガスセンサの後端側の詳細>
図2は、ガスセンサ1の要部を模式的に示す拡大断面図である。具体的には、
図2は、ガスセンサ1の後端側(筒状体40の開口端43aの側)の詳細を示す。
図2において、紙面左右方向が、ガスセンサ1(センサ素子20)の軸方向(長手方向)であり、紙面左側が先端側、紙面右側が後端側である。
【0068】
(加締め部の構成について)
ガスセンサ1において、筒状体40(外筒43)の後端側(開口端43aの側)には、筒状体40を、その周方向全体にわたって縮径状に加締めることでなる加締め部431が1以上形成される。
図2に示す例では、筒状体40の後端側に2つの加締め部431が形成されており、具体的には、加締め部431(1)と加締め部431(2)とが形成されている。加締め部431(1)は、軸方向において、加締め部431(2)よりも先端側に形成されており、つまり、加締め部431(1)および加締め部431(2)のうち、加締め部431(2)の方が、筒状体40の開口端43a(後端側の開口端)に近い。
【0069】
加締め部431は、2つの傾斜部分4311(軸方向において先端側の傾斜部分4311T、および、後端側の傾斜部分4311B)と、底部分4312とを含む。
図2に示す例では、加締め部431(1)は、傾斜部分4311T(1)と、傾斜部分4311B(1)と、底部分4312(1)とを含む。加締め部431(2)は、傾斜部分4311T(2)と、傾斜部分4311B(2)と、底部分4312(2)とを含む。
【0070】
以下の説明において、傾斜部分4311T(1)、傾斜部分4311B(1)、傾斜部分4311T(2)、および、傾斜部分4311B(2)のそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「傾斜部分4311」と記載することがある。特に、加締め部431(1)の傾斜部分4311T(1)および傾斜部分4311B(1)のそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「傾斜部分4311(1)」と記載することがある。同様に、加締め部431(2)の傾斜部分4311T(2)および傾斜部分4311B(2)のそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「傾斜部分4311(2)」と記載することがある。また、底部分4312(1)および底部分4312(2)のそれぞれを区別する必要がない場合には、単に「底部分4312」と記載することがある。
【0071】
傾斜部分4311において、筒状体40の径は、軸方向に沿って、連続的に変化し、例えば、傾斜部分4311は、テーパー状またはR状に形成される。具体的には、傾斜部分4311は、テーパー状に、つまり、ガスセンサ(筒状体40)の長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において、直線(直線状)となるように、形成されてもよい。また、傾斜部分4311は、R状に、つまり、ガスセンサ(筒状体40)の長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において、曲線(曲線状)となるように、形成されてもよい。
図2に示す例では、傾斜部分4311T(1)、傾斜部分4311B(1)、傾斜部分4311T(2)、および、傾斜部分4311B(2)は、それぞれ、テーパー状に形成されている。
【0072】
ただし、ガスセンサ1にとって、傾斜部分4311T(1)、傾斜部分4311B(1)、傾斜部分4311T(2)、および、傾斜部分4311B(2)を、それぞれ、テーパー状に形成することは必須ではない。加締め部431の2つの傾斜部分4311(つまり、軸方向において先端側の傾斜部分4311T、および、後端側の傾斜部分4311B)は、それぞれ、テーパー状またはR状に形成されていればよい。加締め部431の2つの傾斜部分4311の一方をテーパー状に、他方をR状に、形成してもよい。加締め部431の2つの傾斜部分4311を共にテーパー状に形成してもよいし、加締め部431の2つの傾斜部分4311を共にR状に形成してもよい。
【0073】
上述のとおり、筒状体40の径は、傾斜部分4311において、軸方向に沿って連続的に変化する。具体的には、軸方向において先端側の傾斜部分4311Tにおいて、筒状体40の径は、先端側が後端側よりも大きくなるように、軸方向に沿って連続的に変化する。また、軸方向において後端側の傾斜部分4311Bにおいて、筒状体40の径は、後端側が先端側よりも大きくなるように、軸方向に沿って連続的に変化する。
【0074】
底部分4312は、軸方向において2つの傾斜部分4311の間に配置され、つまり、先端側の傾斜部分4311Tと後端側の傾斜部分4311Bとの間に配置される。
図2に示す例では、加締め部431(1)の底部分4312(1)は、軸方向において、傾斜部分4311T(1)と傾斜部分4311B(1)との間に配置されている。また、加締め部431(2)の底部分4312(2)は、軸方向において、傾斜部分4311T(2)と傾斜部分4311B(2)との間に配置されている。
【0075】
底部分4312において、筒状体40の径は、軸方向に沿って一定である。
図2に示す例では、加締め部431(1)の底部分4312(1)において、筒状体40の径は、軸方向に沿って一定である。また、加締め部431(2)の底部分4312(2)において、筒状体40の径は、軸方向に沿って一定である。
【0076】
(把持部材の位置について)
ガスセンサ1において把持部材10は、筒状体40の後端側(開口端43aの側)に形成された1以上の加締め部431のうち、軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。
図2に示す例では、筒状体40の後端側に、加締め部431(1)と加締め部431(2)とが形成されており、加締め部431(1)および加締め部431(2)のうち、加締め部431(2)の方が、筒状体40の開口端43a(後端側の開口端)に近い。そのため、
図2において把持部材10は、加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。
図2に示す例では、把持部材10は、領域Xを把持しており、つまり、加締め部431(2)と、係る加締め部431(2)の外周面を覆うチューブ70とを把持している。上述のとおり、把持部材10により把持される加締め部431(2)の2つの傾斜部分4311(2)(先端側の傾斜部分4311T(2)および後端側の傾斜部分4311B(2))は、それぞれ、テーパー状またはR状であってもよい。2つの傾斜部分4311(2)の一方がテーパー状であり、他方がR状であってもよい。2つの傾斜部分4311(2)が共にテーパー状であってもよいし、2つの傾斜部分4311(2)が共にR状であってもよい。
【0077】
把持部材10は、筒状体40の後端側に形成された1以上の加締め部431のうち、軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431を把持することにより、以下の効果を実現する。すなわち、ガスセンサ1は、例えば、筒状体40の開口端43a(後端)の外周面をR状とすることで、「チューブ70が筒状体40の外周面の角と接触して、係る角(接触位置)に応力が集中して、チューブ70が破断しやすくなる可能性」を抑制できる。そして、このようなチューブ70の破断の防止という効果を実現するには、その前提として、把持部材10は、1以上の加締め部431のうち、最も後端側の加締め部431において、チューブ70および筒状体40を把持するのが望ましい。把持部材10が、1以上の加締め部431のうち、軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431を把持し、筒状体40の開口端43aの外周面をR状とする場合、ガスセンサ1は、効果的に、チューブ70の破断を防止することができる。ただし、ガスセンサ1にとって、チューブ70の破断を防止するために、筒状体40の開口端43aの外周面をR状とすることは必須ではない。開口端43aの外周面をR状とする例について、詳細は後述する。
【0078】
(把持部材の、軸方向の長さについて)
ガスセンサ1において、把持部材10の軸方向の長さLaは、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の、軸方向の長さLb(2)以下であってもよい。
図2に示す例では、把持部材10の軸方向の長さLaは、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)以下である。特に、
図2に示す例では、把持部材10の軸方向の長さLaは、加締め部431(2)の底部分4312(2)の軸方向の長さにほぼ等しく、底部分4312(2)の軸方向の長さよりも少しだけ長い。ただし、把持部材10の軸方向の長さLaは、加締め部431(2)の底部分4312(2)の軸方向の長さ以下であってもよい。例えば、軸方向における把持部材10の先端位置は、軸方向における底部分4312(2)の先端位置よりも、軸方向において後端側にあってもよい。同様に、軸方向における把持部材10の後端位置は、軸方向における底部分4312(2)の後端位置よりも、軸方向において先端側にあってもよい。
【0079】
図2に示す例において、軸方向における把持部材10の中心位置は、軸方向における加締め部431(2)の中心位置(例えば、底部分4312(2)の中心位置)に、一致(略一致)している。
図2に例示するように、把持部材10は、チューブ70によって覆われた、加締め部431(2)の、傾斜部分4311T(2)、底部分4312(2)、および、傾斜部分4311B(2)のそれぞれの外周面を把持していてもよい。例えば、軸方向における把持部材10の先端位置は、軸方向における傾斜部分4311T(2)の先端位置よりも、軸方向において後端側にあってもよい。同様に、軸方向における把持部材10の後端位置は、軸方向における傾斜部分4311B(2)の後端位置よりも、軸方向において先端側にあってもよい。
【0080】
これまでに説明してきたように、ガスセンサ1において、把持部材10の軸方向(筒状体40の軸方向)の長さLaは、把持部材10により把持される加締め部431(2)の軸方向の長さLb以下であってもよい。本件発明者らは、把持部材10の軸方向の長さと、把持部材10により把持される加締め部431(2)の軸方向の長さLbとが満たすべき関係を検討した。実験により、本件発明者らは、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb以下とすることで、把持部材10の把持力を向上できることを確認した。そのため、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb以下とすることで、ガスセンサ1は、把持部材10の把持部力を向上することができるとの効果を奏する。
【0081】
(加締め部における、筒状体の径について)
ガスセンサ1において、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径Φdは、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の、底部分4312(2)における筒状体40の径Φc(2)よりも、0.5mm以上大きくてもよい。
図2に示す例では、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径Φdは、加締め部431(2)の、底部分4312(2)における筒状体40の径Φc(2)よりも、0.5mm以上大きい。
【0082】
これまでに説明してきたように、ガスセンサ1において、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径Φdは、把持部材10により把持される加締め部431(2)の、底部分4312(2)における筒状体40の径Φc(2)よりも、0.5mm以上大きくてもよい。
【0083】
加締め部431が形成されていない部分と、加締め部431(2)の底部分4312(2)とで、筒状体40の径の差が小さい時、例えば、加締め部431(2)の底部分4312(2)が、加締め部431が形成されていない部分に比べて、十分に深くない場合、以下の問題が発生し得る。すなわち、加締め部431(2)によって把持部材10の把持位置を確実に固定することができず、外部からの衝撃によって把持部材10の把持位置が移動しやすくなり、把持部材10の把持力が低下し得る。加締め部431(2)の底部分4312(2)を、加締め部431が形成されていない部分に比べて、十分に深くすることで、加締め部431(2)によって把持部材10の把持位置を確実に固定し、把持位置の移動、および、把持力の低下を防ぐことができる。具体的には、加締め部431(2)の底部分4312(2)を、加締め部431が形成されていない部分に比べて0.5mm以上深くすることで、加締め部431(2)によって把持部材10の把持位置を確実に固定し、把持位置の移動、および、把持力の低下を防ぐことができる。
【0084】
そのため、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径を、加締め部431(2)の底部分4312(2)における筒状体40の径よりも、0.5mm以上大きくすることで、ガスセンサ1は、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1は、加締め部431(2)により、把持部材10の把持位置を確実に固定し、把持位置の移動、および、把持部材10の把持力の低下を防ぐことができるとの効果を奏する。
【0085】
把持部材10は、
図2に示すように、先端側の加締め部431(1)と後端側の加締め部431(2)とのうち、後端側の加締め部431(2)の外周面上に跨がるように位置している。また、チューブ70は把持部材10よりも先端側(
図2の左方向)まで存在している。すなわち、把持部材10から開口端43aとは反対側にチューブ70がはみ出している。この把持部材10のはみ出し量は、値0mm超過であれば特に限定されないが、例えば0.5~1.0mmである。また、把持部材10の内径と比べると、筒状体40の開口端43aの外径の方が大きくなっている。すなわち、筒状体40の開口端43aは、把持部材10の内径よりも外径が大きい大径部となっている。なお、弾性体60の最大径(弾性体60の、加締め部431によって加締められていない部分の、径の最大値)、チューブ70の最大径(チューブ70の、把持部材10によって把持されていない部分の、径の最大値)は、いずれも、把持部材10の内径よりも大きい。例えば、把持部材10の内径よりも、筒状体40の開口端43aの外径の方が大きく、筒状体40の開口端43aの外径よりも、弾性体60の最大径の方が大きく、弾性体60の最大径よりも、チューブ70の最大径の方が大きい。なお、弾性体60の最大径は、弾性体60のうち把持部材10よりも開口端43a側の部分で最も径が大きい部分の外径と捉えることもでき、弾性体60の、開口端43aから外側にはみ出ている部分の径(外径)と捉えることもできる。同様に、チューブ70の最大径は、チューブ70の、弾性体60の、開口端43aから外側にはみ出ている部分の外周を覆う部分の径(外径)と捉えることもできる。例えば、チューブ70の最大径は、チューブ70の厚みを2倍したものを、弾性体60の最大径に加算した値であってもよい。
【0086】
(加締め部における、傾斜部分の角度について)
図3は、把持部材10によって把持される加締め部431(2)について、その傾斜部分4311(2)(すなわち、軸方向において先端側の傾斜部分4311T(2)、および、後端側の傾斜部分4311B(2))の角度AGについて説明する図である。具体的には、
図3は、加締め部431(2)の、ガスセンサ1(筒状体40)の長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行で、かつ、軸に接する断面の構成を、模式的に示す。
図3の例では、紙面左方向がガスセンサ1の先端側であり、紙面右方向がガスセンサ1の後端側である。
【0087】
上述のとおり、加締め部431(2)の2つの傾斜部分4311(2)(先端側の傾斜部分4311T(2)および後端側の傾斜部分4311B(2))は、それぞれ、テーパー状またはR状であってもよい。
図3に示す例では、先端側の傾斜部分4311T(2)は、R状に、つまり、ガスセンサの長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において曲線(曲線状)となるように、形成されている。すなわち、先端側の傾斜部分4311T(2)において筒状体40の径は、先端側が後端側よりも大きくなるように、軸方向に沿って連続的に変化しており、
図3に示す断面において先端側の傾斜部分4311T(2)は、曲線として描かれている。また、後端側の傾斜部分4311B(2)は、テーパー状に、つまり、ガスセンサの長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において直線(直線状)となるように、形成されている。すなわち、後端側の傾斜部分4311B(2)において筒状体40の径は、後端側が先端側よりも大きくなるように、軸方向に沿って連続的に変化しており、
図3に示す断面において後端側の傾斜部分4311B(2)は、直線として描かれている。そして、加締め部431(2)の底部分4312(2)は、軸方向において、傾斜部分4311T(2)と傾斜部分4311B(2)との間に配置されている。
【0088】
角度AGα(2)は、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の、傾斜部分4311(2)と底部分4312(2)との間の角度である。特に、角度AGα(2)は、傾斜部分4311(2)をテーパー状とした場合の、傾斜部分4311(2)と底部分4312(2)との間の角度である。具体的には、角度AGα(2)は、傾斜部分4311(2)と、底部分4312(2)を傾斜部分4311(2)の側に延長した面との間の角度である。ガスセンサ1において、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の傾斜部分4311(2)をテーパー状とした場合、傾斜部分4311(2)の角度AGα(2)は、30°以上である。
図3に示す例では、加締め部431(2)の後端側の傾斜部分4311B(2)は、テーパー状に構成されている。そのため、傾斜部分4311B(2)と、底部分4312(2)を傾斜部分4311B(2)の側に延長した面との間の角度AGα(2)は、30°以上である。
【0089】
角度AGβ(2)は、角度AGα(2)と同様に、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の、傾斜部分4311(2)と底部分4312(2)との間の角度である。特に、角度AGβ(2)は、傾斜部分4311(2)をR状とした場合の、傾斜部分4311(2)と底部分4312(2)との間の角度である。具体的には、角度AGβ(2)は、傾斜部分4311(2)と底部分4312(2)との接点における傾斜部分4311(2)の接線に平行な面と、底部分4312(2)を傾斜部分4311(2)の側に延長した面との間の角度である。ガスセンサ1において、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の傾斜部分4311(2)をR状とした場合、傾斜部分4311(2)の角度AGβ(2)は、30°以上である。
図3に示す例では、加締め部431(2)の先端側の傾斜部分4311T(2)は、R状に構成されている。そのため、傾斜部分4311T(2)と底部分4312(2)との接点における傾斜部分4311T(2)の接線に平行な面と、底部分4312(2)を傾斜部分4311T(2)の側に延長した面との間の角度AGβ(2)は、30°以上である。
【0090】
これまでに説明してきたとおり、把持部材10により把持される加締め部431(
図2に示す例では、加締め部431(2))の含む2つの傾斜部分4311(
図2に示す例では、先端側の傾斜部分4311T(2)および後端側の傾斜部分4311B(2))のそれぞれは、以下の条件(A)または条件(B)を満たす。条件(A)は、「傾斜部分4311と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(α)は、30°以上、かつ、90°未満である」である。条件(B)は、「傾斜部分4311と底部分4312との接点における傾斜部分4311の接線に平行な面と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(β)は、30°以上、かつ、90°未満である」である。例えば、傾斜部分4311をテーパー状とした場合、傾斜部分4311は、条件(A)を満たす。例えば、傾斜部分4311をR状とした場合、傾斜部分4311は、条件(B)を満たす。
【0091】
ガスセンサ1において、把持部材10は、1つ以上の加締め部431のうち、筒状体40の軸方向において開口端43aに最も近い加締め部431(以下、「後端側加締め部」とも称する)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。「後端側加締め部」は、例えば、
図2に例示する加締め部431(2)である。ガスセンサ1の把持部材10は、「チューブ70によって覆われた、筒状体40の、加締め部が形成されていない部分」を把持する従来のガスセンサCSの把持部材10とは異なり、チューブ70によって覆われた、後端側加締め部の外周面を把持する。本件発明者らは、実験を行ない、後端側加締め部の、チューブ70によって覆われた外周面を把持する把持部材10は、従来のガスセンサCSの把持部材10に比べて、衝撃が与えられても移動しにくいことを確認した。したがって、ガスセンサ1は、外部からの衝撃によって把持部材10の位置(把持位置)が移動して、把持部材10の把持力が低下する可能性を抑制できるとの効果を奏する。
【0092】
また、ガスセンサ1において、後端側加締め部の傾斜部分4311と底部分4312との間の角度AG(角度AG(α)、AG(β))は、上述の条件(A)または条件(B)を満たす。例えば、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の、2つの傾斜部分4311(2)(傾斜部分4311T(2)および傾斜部分4311B(2))の少なくとも一方をテーパー状とした場合、係るテーパー状の傾斜部分4311(2)は、条件(A)を満たす。例えば、把持部材10によって把持される加締め部431(2)の、2つの傾斜部分4311(2)(傾斜部分4311T(2)および傾斜部分4311B(2))の少なくとも一方をR状とした場合、係るR状の傾斜部分4311(2)は、条件(B)を満たす。
【0093】
本件発明者らは実験を行ない、把持部材10により把持される後端側加締め部の傾斜部分4311の角度について、望ましい範囲を特定した。その結果、傾斜部分4311をテーパー状とする場合、つまり、ガスセンサ1の長手方向の軸(筒状体40の軸)に平行で、かつ、軸に接する断面において直線となるように、傾斜部分4311を形成する場合、傾斜部分4311の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、傾斜部分4311と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(α)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、傾斜部分4311は、筒状体40の軸方向に沿って筒状体40の径が連続的に変化する部分であるから、角度AG(α)は、90°未満である。
【0094】
また、本件発明者らは、傾斜部分4311をR状とする場合、つまり、軸に平行でかつ軸に接する断面において曲線となるように、傾斜部分4311を形成する場合、傾斜部分4311の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、傾斜部分4311と底部分4312との接点における傾斜部分4311の接線に平行な面と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(β)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、角度AG(α)と同様に、角度AG(β)も90°未満である。
【0095】
本件発明者らは、傾斜部分4311をテーパー状とする場合、角度AG(α)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、傾斜部分4311により把持部材10の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。また、本件発明者らは、傾斜部分4311をR状とする場合、角度AG(β)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、傾斜部分4311により把持部材10の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。角度AG(α)および角度AG(β)を30°未満とした場合、後端側加締め部の傾斜部分4311によって把持部材10の位置(把持位置)を確実に固定することができず、外部からの衝撃によって把持部材10の把持位置が移動しやすく(ズレやすく)なり、把持力が低下する。
【0096】
そのため、傾斜部分4311について、角度AG(α)を、30°以上、かつ、90°未満とし、または、角度AG(β)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、ガスセンサ1は、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1は、後端側加締め部の傾斜部分4311により、把持部材10の把持位置を確実に固定することができるとの効果を奏する。
【0097】
これまでに説明してきたとおり、把持部材10によって把持される加締め部431(
図1~
図3に示す例では、加締め部431(2))が含む2つの傾斜部分4311(
図2に示す例では、先端側の傾斜部分4311T(2)および後端側の傾斜部分4311B(2))のそれぞれは、上述の条件(A)または条件(B)を満たす。例えば、先端側の傾斜部分4311T(2)および後端側の傾斜部分4311B(2)の少なくとも一方をテーパー状とした場合、テーパー状の傾斜部分4311T(2)および傾斜部分4311B(2)の少なくとも一方は、条件(A)を満たす。例えば、傾斜部分4311T(2)および傾斜部分4311B(2)の少なくとも一方をR状とした場合、R状の傾斜部分4311T(2)および傾斜部分4311B(2)の少なくとも一方は、条件(B)を満たす。把持部材10によって把持される加締め部431の2つの傾斜部分4311が、それぞれ、条件(A)または条件(B)を満たすことで、係る加締め部431は、把持部材10の位置(把持位置)が移動するのを防ぎ、把持部材10の把持力が低下するのを抑制する。また、把持部材10の把持部力を維持、向上させるには、把持部材10の軸方向(筒状体40の軸方向)の長さLaは、把持部材10により把持される加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)以下であるのが望ましい。さらに、把持部材10の把持部力を維持、向上させるには、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径Φdは、加締め部431(2)の、底部分4312(2)における筒状体40の径Φc(2)よりも、0.5mm以上大きいのが望ましい。
【0098】
これに対して、筒状体40の開口端43aが形成されている側に形成される1つ以上の加締め部431のうち、把持部材10によって把持されない加締め部431については、上述の構成を備えていなくてもよい。例えば、加締め部431(1)が含む2つの傾斜部分4311(
図2に示す例では、先端側の傾斜部分4311T(1)および後端側の傾斜部分4311B(1))のそれぞれは、上述の条件(A)および条件(B)の何れをも満たさなくてもよい。また、把持部材10の軸方向(筒状体40の軸方向)の長さLaは、把持部材10により把持されない加締め部431(1)の軸方向の長さLb(1)よりも大きくてもよい。さらに、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径Φdと、加締め部431(1)の、底部分4312(1)における筒状体40の径Φc(1)との差は、0.5mm未満であってもよい。把持部材10によって把持されない加締め部431(
図1~
図3に示す例では、加締め部431(1))は、従来から一般的な加締め部と同様の構成をそなえてもよい。また、把持部材10によって把持されない加締め部431は、把持部材10によって把持される加締め部431(
図1~
図3に示す例では、加締め部431(2))と同様の構成を備えてもよい。
【0099】
(筒状体の後端外周面について)
図4は、ガスセンサ1の備える筒状体40について、後端(開口端43a)の外周面にR面取りを施さない場合と施す場合とを対比して示す図である。具体的には、
図4の(A)は、「R面取りが施されていない、筒状体40の後端外周面」の、ガスセンサ1(筒状体40)の長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行で、かつ、軸に接する断面の構成を、模式的に示す。また、
図4の(B)は、「R面取りが施された、筒状体40の後端外周面」の、ガスセンサ1(筒状体40)の長手方向の軸(軸線、図の左右方向に沿う線)に平行で、かつ、軸に接する断面の構成を、模式的に示す。
図4の(A)および
図4の(B)の例では、それぞれ、紙面左方向がガスセンサ1の先端側であり、紙面右方向がガスセンサ1の後端側である。
図4の(A)および
図4の(B)は、それぞれ、ガスセンサ1(筒状体40)の長手方向の軸に対して、
図2における紙面下側の、筒状体40の後端外周面に、R面取りを施さない場合と施す場合とを示している。
【0100】
図4の(A)に例示するように、筒状体40の後端(開口端43a)の外周面にR面取りを施さない場合、チューブ70には、筒状体40の外周面の後端における角が接触し、係る角(接触位置)に応力が集中して、チューブ70が破断しやすくなる。
図4の(A)に示す例では、加締め部431(2)の傾斜部分4311B(2)はテーパー状に形成されており、傾斜部分4311B(2)の後端側の端部(後端部)は、角状となっている。そして、チューブ70は、角状となった傾斜部分4311B(2)の後端部に接触している。そのため、例えば、チューブ70を軸方向(
図4における右方向)に引っ張るようにチューブ70に張力を加えた場合、チューブ70が、傾斜部分4311B(2)の後端部との接触位置から破断しやすい。
【0101】
図4の(B)に例示するように、筒状体40の後端(開口端43a)の外周面にR面取りを施す場合、つまり、開口端43aにおける、筒状体40の外周面に、R面取りを施す場合、
図4の(A)に示した構成に比べて、応力集中を緩和することができる。そのため、筒状体40の後端の外周面にR面取りを施すことにより、チューブ70が破断する可能性を抑制することができる。例えば、
図4の(B)に示す例では、加締め部431(2)の後端側の傾斜部分4311B(2)は、R状に形成されている。具体的には、
図4の(B)において、加締め部431(2)の傾斜部分4311B(2)は、R状に、つまり、ガスセンサの長手方向の軸に平行で、かつ、係る軸に接する断面において曲線(曲線状)となるように、形成されている。そのため、
図4の(B)に示す例では、傾斜部分4311B(2)の後端側の端部(後端部)は、
図4の(A)とは異なり、滑らかな曲線状となっている。したがって、例えば、チューブ70を軸方向(
図4における右方向)に引っ張るようにチューブ70に張力を加えたとしても、チューブ70が、傾斜部分4311B(2)の後端部との接触位置から破断する可能性は低い。
【0102】
以上に説明してきたとおり、ガスセンサ1において、開口端43aにおける、筒状体40の外周面には、R面取りが施されていてもよい。すなわち、筒状体40の、開口端43aにおける外周面は、R状であってもよく、つまり、筒状体40の軸(長手方向の軸)に平行で、かつ、係る軸に接する断面において、曲線(曲線状)となるように、形成されていてもよい。例えば、筒状体40の厚みは、筒状体40の軸に沿って開口端43a側ほど小さくなるように、連続的に減少してもよく、筒状体40の後端外周面は、断面において、角のない、曲線状となっていてもよい。本件発明者らは、開口端43aにおける筒状体40の外周面に、R面取りを施すことにより、チューブ70が破断する可能性を抑制できることを、実験により確認した。開口端43aにおける筒状体40の外周面にR面取りを施さない場合、把持部材10と筒状体40との間に配置されるチューブ70には、開口端43aにおける筒状体40の外周面の角が接触し、係る接触位置に応力が集中して、チューブ70が破断しやすくなる。開口端43aにおける筒状体40の外周面にR面取りを施すことにより、応力集中を緩和して、チューブ70が破断する可能性を抑制することができる。したがって、ガスセンサ1は、開口端43aにおける筒状体40の外周面にR面取りを施すことにより、チューブ70が破断する可能性を抑制することができるとの効果を奏する。
【0103】
[特徴]
これまでに説明してきたとおり、本発明の一態様に係るガスセンサ1は、センサ素子20と、筒状体40と、リード線80と、チューブ70と、把持部材10とを備える。筒状体40は、センサ素子20が内部に配置され、開口端43aが形成された筒状の部材である。リード線80は、センサ素子20と電気的に導通し、筒状体40の内部から開口端43aを通過して外方に延びる。チューブ70は、開口端43aを含む筒状体40の端部の外周面と、リード線80のうち、筒状体40の開口端43aから外方に延びる部分と、を覆う。把持部材10は、筒状体40の開口端43aとは反対側にチューブ70がはみ出すように、筒状体40の外周面のうち、チューブ70で覆われた部分を把持する。ガスセンサ1において、筒状体40の開口端43aが形成されている側には、加締め部431が、1つ以上形成されている。1つ以上の加締め部431は、それぞれ、2つの傾斜部分4311と、底部分4312とを含む。加締め部431の2つの傾斜部分4311は、それぞれ、筒状体40の軸方向に沿って筒状体40の径が連続的に変化する部分である。2つの傾斜部分4311は、それぞれ、例えば、テーパー状に、または、R状に、形成される。加締め部431の底部分4312は、筒状体40の軸方向において2つの傾斜部分4311の間に配置され、係る軸方向に沿って筒状体40の径が一定である部分である。
【0104】
ガスセンサ1において、把持部材10は、1つ以上の加締め部431のうち、筒状体40の軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。例えば、
図2に示す例で把持部材10は、軸方向において先端側の加締め部431(1)と、後端側の加締め部431(2)とのうち、開口端43aに近い加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。
【0105】
把持部材10により把持される加締め部431(
図2に示す例では、加締め部431(2))の含む2つの傾斜部分4311(
図2に示す例では、先端側の傾斜部分4311T(2)および後端側の傾斜部分4311B(2))のそれぞれは、以下の条件(A)または条件(B)を満たす。条件(A)は、「傾斜部分4311と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(α)は、30°以上、かつ、90°未満である」である。条件(B)は、「傾斜部分4311と底部分4312との接点における傾斜部分4311の接線に平行な面と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(β)は、30°以上、かつ、90°未満である」である。例えば、傾斜部分4311をテーパー状とした場合、傾斜部分4311は、条件(A)を満たす。例えば、傾斜部分4311をR状とした場合、傾斜部分4311は、条件(B)を満たす。
【0106】
当該構成では、ガスセンサ1において、把持部材10は、1つ以上の加締め部431のうち、筒状体40の軸方向において開口端43aに最も近い加締め部431(以下、「後端側加締め部」とも称する)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持する。「後端側加締め部」は、例えば、
図2に例示する加締め部431(2)である。ガスセンサ1の把持部材10は、「チューブ70によって覆われた、筒状体40の、加締め部が形成されていない部分」を把持する従来のガスセンサCSの把持部材10とは異なり、チューブ70によって覆われた、後端側加締め部の外周面を把持する。本件発明者らは、実験を行ない、後端側加締め部の、チューブ70によって覆われた外周面を把持する把持部材10は、従来のガスセンサCSの把持部材10に比べて、衝撃が与えられても移動しにくいことを確認した。したがって、ガスセンサ1は、外部からの衝撃によって把持部材10の位置(把持位置)が移動して、把持部材10の把持力が低下する可能性を抑制できるとの効果を奏する。
【0107】
また、ガスセンサ1において、後端側加締め部の傾斜部分4311と底部分4312との間の角度AG(角度AG(α)、AG(β))は、上述の条件(A)または条件(B)を満たす。
【0108】
本件発明者らはさらに実験を行ない、後端側加締め部の傾斜部分4311の角度について、望ましい範囲を特定した。その結果、傾斜部分4311をテーパー状とする場合、つまり、ガスセンサ1の長手方向の軸(筒状体40の軸)に平行で、かつ、軸に接する断面において直線となるように、傾斜部分4311を形成する場合、傾斜部分4311の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、傾斜部分4311と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(α)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、傾斜部分4311は、筒状体40の軸方向に沿って筒状体40の径が連続的に変化する部分であるから、角度AG(α)は、90°未満である。
【0109】
また、本件発明者らは、傾斜部分4311をR状とする場合、つまり、軸に平行でかつ軸に接する断面において曲線となるように、傾斜部分4311を形成する場合、傾斜部分4311の角度は以下の範囲とするのが望ましいことを確認した。すなわち、本件発明者らは、傾斜部分4311と底部分4312との接点における傾斜部分4311の接線に平行な面と、底部分4312を傾斜部分4311の側に延長した面との間の角度AG(β)を30°以上とするのが望ましいことを確認した。また、角度AG(α)と同様に、角度AG(β)も90°未満である。
【0110】
本件発明者らは、傾斜部分4311をテーパー状とする場合、角度AG(α)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、傾斜部分4311により把持部材10の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。また、本件発明者らは、傾斜部分4311をR状とする場合、角度AG(β)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、傾斜部分4311により把持部材10の把持位置を確実に固定することができることを、実験により確認した。角度AG(α)および角度AG(β)を30°未満とした場合、後端側加締め部の傾斜部分4311によって把持部材10の位置(把持位置)を確実に固定することができず、外部からの衝撃によって把持部材10の把持位置が移動しやすく(ズレやすく)なり、把持力が低下する。
【0111】
そのため、傾斜部分4311について、角度AG(α)を、30°以上、かつ、90°未満とし、または、角度AG(β)を、30°以上、かつ、90°未満とすることで、ガスセンサ1は、以下の効果を奏する。すなわち、ガスセンサ1は、後端側加締め部の傾斜部分4311により、把持部材10の把持位置を確実に固定することができるとの効果を奏する。
【0112】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述までの実施形態の説明は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態には、種々の改良および変形が行われてよい。上記実施形態の各構成要素に関して、適宜、構成要素の省略、置換および追加が行われてもよい。また、上記実施形態の各構成要素の形状および寸法は、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0113】
(加締め部の個数について)
これまで、筒状体40に形成される加締め部431が「2つ」である例を説明してきた。しかしながら、本発明に係るガスセンサにおいて、筒状体40に形成される加締め部431の個数は、「1つ」であってもよいし、3つ以上であってもよい。本発明に係るガスセンサにおいて、筒状体40に形成される加締め部431の個数は、ガスセンサの軸方向(長手方向)における長さ等に応じて適宜決められてもよい。
【0114】
例えば、筒状体40に形成される加締め部431の個数を「1つ」とする場合、把持部材10は、係る「1つ」の加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持すればよい。筒状体40に形成される加締め部431の個数を「3つ」以上とする場合、把持部材10は、係る「3つ」以上の加締め部431のうち、ガスセンサ1の軸方向において開口端43aに最も近い加締め部431の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持すればよい。
【0115】
(加締め部における、傾斜部分の構成について)
本発明に係るガスセンサにおいて、加締め部431の2つの傾斜部分4311は、それぞれ、テーパー状またはR状であればよい。先端側の傾斜部分4311Tと、後端側の傾斜部分4311Bとのうち、一方がテーパー状であり、他方がR状であってもよい。また、先端側の傾斜部分4311Tと、後端側の傾斜部分4311Bとが、共にテーパー状であってもよいし、両者が共にR状であってもよい。
【0116】
(ガスセンサの構成について)
これまで、本発明の一態様に係るガスセンサとして、把持部材10、センサ素子20、保護カバー30、筒状体40、コネクタ50、弾性体60、チューブ70、リード線80、および、環装部品90を備えるガスセンサ1について説明してきた。しかしながら、本発明の一態様に係るガスセンサは、(1)センサ素子、(2)センサ素子が内部に配置され、開口端が形成された筒状体、(3)センサ素子と電気的に導通し、筒状体の内部から筒状体の開口端を通過して外方に延びるリード線、(4)開口端を含む筒状体の端部の外周面と、リード線のうち筒状体の開口端から外方に延びる部分と、を覆うチューブ、および、(5)筒状体の開口端とは反対側にチューブがはみ出すように、筒状体の外周面のうちチューブで覆われた部分を把持する把持部材、を備えていればよい。本発明の一態様に係るガスセンサにとって、例えば、保護カバー30、コネクタ50、弾性体60、および、環装部品90を備えることは必須ではない。
【0117】
(把持部材の位置(把持位置)について)
これまで、把持部材10が、筒状体40の後端側に形成された1以上の加締め部431のうち、軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431を把持する例を説明してきた。しかしながら、把持部材10は、1以上の加締め部431のうち、「軸方向において筒状体40の開口端43aに最も近い加締め部431」以外の加締め部431を把持してもよい。
図2に示す例では、把持部材10は、先端側の加締め部431(1)と後端側の加締め部431(2)とのうち、加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持している。しかしながら、把持部材10は、加締め部431(1)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持してもよい。その場合、加締め部431(1)は、これまでに加締め部431(2)について説明してきた構成を備えることが望ましい。ただし、把持部材10が、1以上の加締め部431のうち、最も後端側の加締め部431を把持する場合、ガスセンサ1は、筒状体40の開口端43aの外周面をR状とすることで、効果的に、チューブ70の破断を防止することができる。
【0118】
[実施例]
本発明の効果を検証するため、以下の比較例1および実施例1~4に係るガスセンサを作製した。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【表1】
【0119】
【0120】
表1は、比較例1および実施例1のそれぞれに係るガスセンサについて、把持部材10に衝撃を与える(例えば、ガスセンサの軸方向(長手方向)に沿って、把持部材10に衝撃を与える)実験1を行ない、係る実験1の結果を整理して示す表である。
【0121】
比較例1は、
図5に例示するような従来のガスセンサCSである。実施例1は、
図1~
図4を用いて説明してきたガスセンサ1である。比較例1と実施例1とは、把持部材10の配置位置を除いて、同様の構成を備える。
【0122】
比較例1において把持部材10は、
図5の山部439に配置されている。すなわち、比較例1において把持部材10は、チューブ70によって覆われた筒状体40の外周面であって、チューブ70によって覆われた山部439の外周面を把持している。前述のとおり、山部439は、筒状体40の後端側の、加締め部431が形成されている部分以外の部分であり、加締め部431が形成されていない部分と捉えることもできる。例えば、比較例1において把持部材10は、加締め部431(1)と加締め部431(2)との間の山部439の外周面を把持している。
【0123】
比較例1においては、把持部材10は山部439に配置されているため、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)で除した値(La/Lb(2))は「-」とした。同様に、比較例1において、角度AGα(2)および角度AGβ(2)は、それぞれ、「-」とした。角度AGα(2)は、加締め部431(2)の傾斜部分4311(2)をテーパー状とした場合に、係るテーパー状の傾斜部分4311(2)と、底部分4312(2)を傾斜部分4311(2)の側に延長した面との間の角度である。例えば、加締め部431(2)の、軸方向において先端側の傾斜部分4311T(2)をテーパー状とした場合、傾斜部分4311T(2)と、底部分4312(2)を傾斜部分4311T(2)の側に延長した面との間の角度が、角度AGα(2)である。角度AGβ(2)は、加締め部431(2)の傾斜部分4311(2)をR状とした場合に、係るR状の傾斜部分4311(2)と底部分4312(2)との接点における、傾斜部分4311(2)の接線の角度である。より正確には、角度AGβ(2)は、上述の接点における傾斜部分4311(2)の接線に平行な面と、底部分4312(2)を傾斜部分4311(2)の側に延長した面との間の角度である。例えば、加締め部431(2)の、軸方向において後端側の傾斜部分4311B(2)をR状とした場合、傾斜部分4311B(2)と底部分4312(2)との接点における、傾斜部分4311B(2)の接線の角度が、角度AGβ(2)である。
【0124】
Φdは、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径であり、
図5に示す例では、山部439における筒状体40の径である。Φcは、筒状体40の、加締め部431における径である。Φc(2)は、加締め部431(1)と加締め部431(2)とのうち、ガスセンサの軸方向において開口端43aに最も近い加締め部431(2)の底部分4312(2)における、筒状体40の径である。比較例1においてΦdとΦc(2)との差(Φd-Φc(2))は「0.8」である。
【0125】
比較例1において、筒状体40の後端の外周面には、R面取りが施されており、つまり、R面取りが「有り」となっている。
【0126】
実施例1において把持部材10は、加締め部431に配置されており、特に、加締め部431(1)と加締め部431(2)とのうち、ガスセンサの軸方向において開口端43aに最も近い加締め部431(2)に配置されている。すなわち、実施例1において把持部材10は、加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持している。つまり、実施例1において把持部材10は、加締め部431(1)と加締め部431(2)とのうち、最も後端側の加締め部431(2)の、チューブ70によって覆われた外周面を、把持している。
【0127】
実施例1において、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)で除した値(La/Lb(2))は、「0.88」である。また、実施例1において、角度AGα(2)は「35°」、角度AGβ(2)は「55°」である。以下の説明においては、角度の単位「°」は省略する。例えば、
図3に例示するように、実施例1において、加締め部431(2)の、軸方向において先端側の傾斜部分4311T(2)は、R状に、つまり、軸に平行でかつ軸に接する断面において曲線となるように、形成されている。そして、傾斜部分4311T(2)と底部分4312(2)との接点における、傾斜部分4311T(2)の接線に平行な面と、底部分4312(2)を傾斜部分4311T(2)の側に延長した面との間の角度AGβ(2)は「55」である。また、実施例1において、加締め部431(2)の、軸方向において後端側の傾斜部分4311B(2)は、テーパー状に、つまり、軸に平行でかつ軸に接する断面において直線となるように、形成されている。そして、傾斜部分4311B(2)と、底部分4312(2)を傾斜部分4311B(2)の側に延長した面との間の角度AGα(2)は「35」である。
【0128】
実施例1において、筒状体40の、加締め部431が形成されていない部分の径Φdと、加締め部431(2)の底部分4312(2)における、筒状体40の径Φc(2)との差(Φd-Φc(2))は「0.8」である。
【0129】
実施例1において、筒状体40の後端の外周面には、R面取りが施されており、つまり、R面取りが「有り」となっている。
【0130】
係る比較例1および実施例1のそれぞれの把持部材10に錘を落下させ(例えば、把持部材10にガスセンサの軸方向の衝撃が加わるように錘を落下させ)、把持部材10がズレていないか(移動していないか)を確認した。把持部材10が移動していない場合には、錘の落下高さを徐々に上げていき、把持部材10が移動するまで、錘の落下高さを上げた。そして、把持部材10が移動した(ズレた)ときの落下高さ(限界落下高さ)を、比較例1と実施例1とで比較した。表1中の「評価1」は、比較例1において把持部材10が移動したときの落下高さ(限界落下高さ)を「1」として、実施例1の限界落下高さが、比較例1の限界落下高さの何倍であったかを示している。
【0131】
係る実験1において、実施例1は、比較例1に比べて、外部からの衝撃が加えられても、把持部材10が移動しにくいことを確認できた。具体的には、実施例1は、把持部材10に外部からの衝撃が加えられても、比較例1の「1.27」倍、把持部材10が移動しにくいことを確認できた。
【0132】
表2は、実施例1~実施例4のそれぞれに係るガスセンサについて、チューブ70を引っ張る実験2を行ない、係る実験2の結果を整理して示す表である。
【0133】
実施例1~実施例4のそれぞれに係るガスセンサは、
図1~
図4を用いて説明してきたガスセンサ1と同様の部材を備える。特に、把持部材10が、加締め部431(1)と加締め部431(2)とのうち、ガスセンサの軸方向において開口端43aに最も近い加締め部431(2)に配置されている点において、実施例1~実施例4は共通している。ただし、実施例1~実施例4は、以下の3点において異なる。
【0134】
第1に、実施例1、実施例3、および、実施例4のそれぞれにおいて、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)で除した値(La/Lb(2))は、「0.88」である。つまり、実施例1、実施例3、および、実施例4のそれぞれにおいて、把持部材10の軸方向の長さLaは、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)以下である。これに対して、実施例2において、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)で除した値(La/Lb(2))は「2.06」である。つまり、実施例2において、把持部材10の軸方向の長さLaは、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)よりも長い。
【0135】
第2に、実施例1、実施例2、および、実施例4のそれぞれにおいて、角度AGα(2)は「35」であり、つまり、角度AGα(2)は「30」以上である。これに対して、実施例3において、角度AGα(2)は「20」であり、つまり、角度AGα(2)は「30」未満である。
【0136】
第3に、実施例1において、筒状体40の後端の外周面には、R面取りが施されており、つまり、R面取りが「有り」となっている。これに対して、実施例2、実施例3、および、実施例4のそれぞれにおいて、筒状体40の後端の外周面には、R面取りが施されておらず、つまり、R面取りが「無し」となっている。
【0137】
係る実施例1~実施例4のそれぞれについて、チューブ70の破断、または、把持部材10の移動(位置ずれ)が発生するまで、チューブ70を引っ張る実験2を行なった。具体的には、実施例ごとに、各実施例に係る複数のガスセンサについて、上述の実験2を行なった。
【0138】
実験2の結果、実施例に係る複数のガスセンサの全てが、「把持部材10の移動」ではなく、「チューブ70の破断」を発生させた実施例については、表2中の「評価2」を「〇(良好)」とした。実験2の結果、実施例に係る複数のガスセンサの一部が、「チューブ70の破断」ではなく、「把持部材10の移動」を発生させた実施例については、表2中の「評価2」を「×(不良)」とした。「把持部材10の移動」ではなく、「チューブ70の破断」が発生したガスセンサは、把持部材10によってチューブ70(および、筒状体40)を十分な把持力で把持できていることを示している。
【0139】
さらに、表2中の「評価2」が「〇」である実施例1、実施例2、および、実施例4について、「チューブ70の破断」が発生した時の引っ張り荷重の大きさを評価した(評価3)。具体的には、実施例1において、「チューブ70の破断」が発生した時の引っ張り荷重の大きさ(限界荷重)を「1」とした。そして、実施例2および実施例4のそれぞれについて、限界荷重が、実施例1の限界荷重の何倍であったかを求めた。
【0140】
実施例1と実施例3とは、角度AGα(2)が「30」以上であるか、それとも、「30」未満であるかを除いて、同様の構成を備える。そして、実施例1の評価2は「〇」であり、つまり、実施例1において、「把持部材10の移動」は発生しなかった。これに対して、実施例3の評価2は「×」であり、つまり、実施例3においては、「把持部材10の移動」が発生した。そのため、角度AGα(2)を30未満とした場合、加締め部431(2)の傾斜部分4311(2)によって把持部材10の位置を確実に固定することができず、把持部材10の位置が移動しやすくなり、把持部材10の把持力が低下することが確認された。つまり、角度AGα(2)を30以上とすることで、加締め部431(2)の傾斜部分4311(2)によって把持部材10の位置を確実に固定することができ、把持部材10の位置ずれ、把持力の低下を回避することができることを確認した。
【0141】
実施例1と実施例2とは、把持部材10の軸方向の長さLaが、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)以下か、それとも、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)よりも長いかを除いて、同様の構成を備える。そして、評価3において、実施例1の限界荷重を「1」とした場合、実施例2の限界荷重は「0.34」であり、実施例2は、実施例1に比べて、限界荷重が著しく低下しており、つまり、把持部材10の把持力が低下している。そのため、把持部材10の軸方向の長さLaを、加締め部431(2)の軸方向の長さLb(2)以下とすることで、把持部材10の把持力を向上できることを確認した。
【0142】
実施例1と実施例4とは、筒状体40の後端の外周面にR面取りが施されているか、それとも、R面取りが施されていないかを除いて、同様の構成を備える。そして、評価3において、実施例1の限界荷重を「1」とした場合、実施例4の限界荷重は「0.61」である。つまり、実施例4は、実施例1と比較して、「チューブ70の破断」が発生しやすくなることが確認された。筒状体40の後端の外周面にR面取りを施さない場合、把持部材10と筒状体40との間に配置されるチューブ70には、筒状体40の外周面の後端における角が接触し、係る接触位置に応力が集中して、チューブ70が破断しやすくなる。そのため、筒状体40の後端の外周面にR面取りを施すことにより、チューブ70が破断する可能性を抑制することができることを確認した。
【符号の説明】
【0143】
1…ガスセンサ、20…センサ素子、40…筒状体、43a…開口端、
431…加締め部、4311…傾斜部分、4312…底部分、80…リード線、
70…チューブ、10…把持部材、AG…角度