(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013571
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ナットキャップおよびナット緩み止め具
(51)【国際特許分類】
F16B 39/10 20060101AFI20240125BHJP
F16B 37/14 20060101ALI20240125BHJP
B60B 3/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16B39/10 A
F16B37/14 C
F16B39/10 L
B60B3/16 E
B60B3/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115751
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】522021804
【氏名又は名称】株式会社タイヤーサービスセンター
(71)【出願人】
【識別番号】522021815
【氏名又は名称】株式会社エイワ電機
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美島 勝美
(72)【発明者】
【氏名】中村 ▲吉▼▲徳▼
(57)【要約】
【課題】衝撃や振動等が断続的に継続する状況下でナットが緩み、ひいては脱落するのを確実に防止できるようにする。
【解決手段】本発明は、回転ハブ1から突出するボルト2にねじ込んで回転体3を回転ハブ1に装着する複数のナット6それぞれの外周に被嵌されるナットキャップ20である。各ナット6の側周面に形成された係合溝10は、ナット回転方向に沿って延びる。締結下においては、回転体3の回転中心に対して円周方向に沿って等間隔に並んだ各ナット6の係合溝10に、結束バンド11が半径方向外側から嵌まってループ状に絞められる。ナットキャップ20には、各ナット6の係合溝10に嵌まった結束バンド11を通り抜けさせる開口部22が少なくとも二箇所形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ハブから突出するボルトにねじ込んで回転体を回転ハブに装着する複数のナットそれぞれの外周に被嵌されるナットキャップであって、
前記各ナットの側周面に形成された係合溝は、ナット回転方向に沿って延びており、締結下においては、前記回転体の回転中心に対して円周方向に沿って等間隔に並んだ前記各ナットの前記係合溝に、結束バンドが半径方向外側から嵌まってループ状に絞められており、
前記各ナットの前記係合溝に嵌まった前記結束バンドを通り抜けさせる開口部が少なくとも二箇所形成されている、
ナットキャップ。
【請求項2】
前記回転体に対峙する側に切り欠き溝状に形成されている、
請求項1に記載したナットキャップ。
【請求項3】
回転ハブから突出するボルトにねじ込んで回転体を回転ハブに装着する複数のナットであって、その側周面にナット回転方向に沿って延びる係合溝が形成されたナットと、
締結下において、前記回転体の回転中心に対して円周方向に沿って等間隔に並んだ前記各ナットの前記係合溝に、半径方向外側から嵌まってループ状に絞められる結束バンドと、
請求項1または2に記載したナットキャップと
を備えている、
ナット緩み止め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットキャップおよびナット緩み止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホイールナットが走行中の衝撃や振動等で緩むのを防止するために、ホイールナットの外周側に一つずつ圧入される複数の装着部と、これら装着部を互いに連結する連結部とを備え、複数の装着部と連結部とを樹脂等の軟質材にて一体成形してなる回り止め具が開示されている。
【0003】
特許文献1の回り止め具によれば、連結しようとするホイールナット同士に角度の位相差がある場合でも、連結部の可撓性によって位相差を吸収し装着部をホイールナットに圧入することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、軟質材製の連結部が可撓性を有するということは、言い換えると連結部による装着部の拘束力が弱くて、装着部が回転したり変位したりするのを許容してしまうことを意味するため、ホイールナットの緩みひいては脱落を確実に防止するのは困難であるという問題があった。
【0006】
この種の問題は、ホイールナット特有という訳ではなく、複数組のボルトおよびナットで回転ハブに固定される回転体(例えばプーリやローラ等)全般においても、衝撃や振動等が断続的に継続する状況下であれば起こり得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、締結下のナットが緩んで脱落するのを防止する構造を提供することを技術的課題とするものである。
【0008】
本発明は、ナットキャップとナット緩み止め具を含んでいて、典型的な構成を各請求項において特定している。これらのうち請求項1の発明は、回転ハブから突出するボルトにねじ込んで回転体を回転ハブに装着する複数のナットそれぞれの外周に被嵌されるナットキャップであって、前記各ナットの側周面に形成された係合溝は、ナット回転方向に沿って延びており、締結下においては、前記回転体の回転中心に対して円周方向に沿って等間隔に並んだ前記各ナットの前記係合溝に、結束バンドが半径方向外側から嵌まってループ状に絞められており、前記各ナットの前記係合溝に嵌まった前記結束バンドを通り抜けさせる開口部が少なくとも二箇所形成されているというものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したナットキャップにおいて、前記回転体に対峙する側に切り欠き溝状に形成されているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、ナット緩み止め具に係るものであり、回転ハブから突出するボルトにねじ込んで回転体を回転ハブに装着する複数のナットであって、その側周面にナット回転方向に沿って延びる係合溝が形成されたナットと、締結下において、前記回転体の回転中心に対して円周方向に沿って等間隔に並んだ前記各ナットの前記係合溝に、半径方向外側から嵌まってループ状に絞められる結束バンドと、請求項1または2に記載したナットキャップとを備えているというものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、締結下において、前記各ナットの係合溝と前記結束バンドの係合、前記各ナットに対する前記ナットキャップの被嵌、前記ナットキャップの開口部に対する前記結束バンドの挿通という三者の構造が相俟って、前記各ナットの緩み(外れ移動)を簡単かつ的確に阻止できる。したがって、前記各ナットが緩んで脱落するのを防止でき、ひいては前記回転体脱落に対して高い防止効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態のホイールナットの説明図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は右側面図である。
【
図3】係合溝の形成位置を変更した別例に係るホイールナットの説明図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は右側面図である。
【
図5】ナットキャップの説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は背面図、(g)は(a)のg-g視断面図、(h)は(a)のh-h視断面図である。
【
図6】(a)はナット緩み止め具の装着状態を示す説明図、(b)は部分拡大図である。
【
図7】(a)はシングルタイヤ用のホイールにナット緩み止め具を適用した場合の拡大断面図、(b)はナットキャップを破断した拡大断面図、(c)は(b)の部分拡大断面図である。
【
図8】(a)はダブルタイヤ用のホイールにナット緩み止め具を適用した場合の拡大断面図、(b)はナットキャップを破断した拡大断面図、(c)は(b)の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態では、トラックやバスといった車両において、ホイール3を車軸ハブ1に装着する場合を例示している。車両は一般的に、少なくとも4本のホイール3を備えている。ホイール3は回転体に相当し、車軸ハブ1は回転ハブに相当する。
【0014】
図1に示すように、車両に設けられた車軸ハブ1のフランジ部には、軸方向外向きに突出する複数のホイールボルト2が車軸ハブ1の軸中心に対して同心的に等間隔に並べて取り付けられている。ホイール3には、各ホイールボルト2に対応するボルト挿通穴4が回転中心に対して同心的に等間隔に並べて形成されている。
【0015】
車軸ハブ1にホイール3を重ね合わせて、車軸ハブ1の各ホイールボルト2をそれぞれ対応する各ボルト挿通穴4に挿通させ、例えばトルクレンチ等を用いて所定トルクでホイールボルト2にホイールナット6をねじ込むことによって、ホイール2が車軸ハブ1に装着される。
【0016】
車軸ハブ1に対するホイール3の装着構造としては、ISO(国際標準)規格に則った平面座方式と、JIS(日本標準)規格に則った球面座方式とがある。
図2~
図8に表した実施形態は、ISO規格の平面座方式であり、かつ、8組のホイールボルト2およびホイールナット6でホイール3を車軸ハブ1に装着する場合を例示している。
【0017】
なお、ISO規格の平面座方式でもJIS規格の球面座方式でも、10組のホイールボルト2およびホイールナット6でホイール3を車軸ハブ1に装着することもある。また、以下には、本発明をISO規格の平面座方式に適用した実施形態について説明するが、本発明をJIS規格の球面座方式にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0018】
図2~
図8に示す実施形態のナット緩み止め具5は、車軸ハブ1から突出するホイールボルト2にねじ込んでホイール3を車軸ハブ1に装着する複数のホイールナット6と、複数のホイールナット6に巻き付けられる結束バンド11とを備えている。各ホイールナット6(ナット本体7と言ってもよい)の外周にはナットキャップ20が被せられている。
【0019】
実施形態のホイールナット6は、ISO規格に基づく平面座方式のものであり、ねじ穴9を有する平面視多角形状(この場合は六角形状)のナット本体7と、ナット本体7の座面側に取り付けられた円形フランジ状の平面座8とを備えている。実施形態のホイールナット6は、例えば鋼、ステンレス、クロム合金またはアルミ合金といった金属製のものである。
【0020】
ホイールナット6の側周面、すなわちナット本体7の側周面には、ナット回転方向(周方向)に沿って延びる係合溝10が形成されている。
図2および
図3に示すように、ナット本体7における係合溝10の形成位置は、頂面寄りであってもよいし、平面座8寄りであってもよい。係合溝10の形状は、例えばL字状の切り欠きでもよいが、高さ方向両側に壁が存在する凹み溝になっていればより好ましい。
【0021】
実施形態では、ホイールナット6(ナット本体7)の側周面全周にわたって係合溝10が形成されている。係合溝10は、少なくともホイールナット6(ナット本体7)の側周角部7aを切り欠く程度で、側周面の中央付近では溝がなくなるような形態であってもよい(ホイールナット6(ナット本体7)の側周面に断続的に係合溝10が延びているような形態)。
【0022】
実施形態の結束バンド11は、例えば鋼、ステンレス、クロム合金またはアルミ合金といった金属製のものであり、帯状のバンド部12と、バンド部12の長手方向一端側に取り付けられた筒状のバックル部13とを備えている。結束バンド11の基本構造は、バンド部12の長さが例えば1m前後ほどと長いものの、既存のものと同様である。
【0023】
バックル部13内には係止突起(図示省略)が設けられている。当該係止突起は、バックル部13に挿通されたバンド部12の広幅面に当接して、バンド部12の長手方向他端側をバックル部13に挿通させてループを形成するのは許容するが、バンド部12の長手方向他端側をバックル部13からそのまま引き抜くのは阻止するように構成されている。
【0024】
なお、バンド部12には、長手方向他端側を長手方向一端側に重なるように引き寄せて保持するためのバンド押さえ14を取り付けてもよい。なお、実施形態の結束バンド11の構造はあくまで一例であり、異なる構造の結束バンド11を採用することももちろん可能である。結束バンド11の材質についても金属製に限らず、強度面等を担保できれば合成樹脂製にしてもよい。
【0025】
例えばトルクレンチ等を用いて所定トルクでホイールボルト2にホイールナット6をねじ込み、ホイール3を車軸ハブ1に装着した状態(かかる状態を本明細書中で「締結下」と称することがある。)において、結束バンド11をホイールナット6群に対してループ状に巻きつけた状態では、各係合溝10においてホイールナット6(ナット本体7)の側周角部7aに対応する部分の溝深さ寸法Dgは、締結下においてバンド部12をボルト軸方向から見たときの厚み寸法Tbより大きく設定されている(Dg>Tb)。
【0026】
このように構成すると、例えばホイールナット6が衝撃や振動等で緩もうとしても、結束バンド11のバンド部12が係合溝10に引っ掛かるため、ホイールナット6はボルト軸方向(ホイールボルト2の長手方向)には移動できない(緩めない)。すなわち、係合溝10とバンド部12との係合関係によって、各ホイールナット6の緩み(外れ移動)が阻止される。したがって、各ホイールナット6が緩んでホイールボルト2から脱落するのを防止でき、ひいてはホイール3脱落に対して高い防止効果を発揮できる。
【0027】
実施形態のナットキャップ20は、例えばポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ化エチレン樹脂といった合成樹脂製のものであり、ホイールナット6(ナット本体7)の側周面全周を取り囲むリング状に形成されている。ナットキャップ20の素材は、金属製であっても差し支えない。ナットキャップ20の形状は、リング状に限らず、一端開口の蓋形状になっていても構わない。
【0028】
ナットキャップ20の内周面には、周方向に連続させた凹部21aと凸部21bとの繰り返しからなる凹凸部21が形成されている。
図4および
図5(a)(c)に示すように、実施形態のナットキャップ20内周面は、凹凸部21の存在によって、平面視で二十四角の星形になっている。ナット本体7の外周にナットキャップ20を被せつけると、ナット本体7の各側周角部7aがそれぞれ対応するナットキャップ20の凹部21aに嵌まり、ホイールナット6とナットキャップ20とがお互いに相対回転不能に保持される。
【0029】
なお、ナットキャップ20内周面は、平面視で二十四角の星形であるに限らず、十二角でも十八角でも三十角でも構わない。ナットキャップ20内周面は、ナット本体7多角形状の倍数の星形であればよい。ホイールナット6の外周にナットキャップ20を圧入する構成になっていてもよい。
【0030】
図7および
図8に示すように、ナットキャップ20の幅寸法Wc(
図5(b)(d)(e)(f)参照)は、ナット本体7に形成された係合溝10の溝幅寸法Wgよりも大きく設定されている(Wc>Wg)。このため、ナット本体7の外周にナットキャップ20を被せることによって、ナット本体7の係合溝10をナットキャップ20にて覆い隠すことが可能になっている。
【0031】
ナットキャップ20には、ナット本体7の係合溝10に嵌まった結束バンド11のバンド部12を通り抜けさせる溝状又は穴状の開口部22が少なくとも二箇所形成されている。実施形態の各開口部22は、ナットキャップ20のうちホイールナット6の平面座8に対峙する側(ホイール3に対峙する側)に、長溝状に切り欠き形成されたものである。実施形態のナットキャップ20には、周方向に沿った等間隔で三箇所に、開口部22が切り欠き形成されている。
【0032】
実施形態のナットキャップ20内周面は、凹凸部21の存在によって、平面視で二十四角の星形になっている。その上、当該ナットキャップ20には、周方向に沿った等間隔で三箇所に、開口部22が切り欠き形成されている。このため、結束バンド11をホイールナット6群に対してループ状に巻きつけた状態では、各ホイールナット6におけるナット回転方向の位相状態に拘らず、結束バンドのバンド部12は、各ホイールナット6に被嵌されたナットキャップ20の隣り合う開口部22,22を通り抜けできる。すなわち、ホイールナット6群に結束バンド11を巻きつけたあとに、各ホイールナット6の外周にナットキャップ20を簡単に被せつけできる。
【0033】
なお、開口部22は、実施形態のような切り欠き溝状のものに限らず、長穴状のものであってもよい。開口部22は、ナットキャップ20に対して少なくとも二箇所形成しておけば足りる(四箇所以上でも構わない)。開口部22の開口位相θ(
図4(b)参照)の大きさは、開口部22の数にもよるため特に問わない。実施形態の場合であれば、例えば開口部22の開口位相θを例えば30°~90°程度の範囲にしておくとより好適である。
【0034】
各開口部22の幅寸法Wo(
図5(b)(d)(e)(f)参照)は、結束バンド11のバンド部12を挿通させやすくするために、バンド部12の幅寸法Wbよりも大きく設定されている(Wo>Wb)。
【0035】
図4~
図8に示すように、ナットキャップ20の内周面には、これが被嵌されるホイールナット6(ナット本体7)の係合溝10のうち側周角部7aに対応した手前縁部分10aに引っ掛かり係合可能な内向き凸状の係止リブ23が形成されている。実施形態では、ナットキャップ20内周面のうち開口部22のない箇所に形成された凹部21aの幅方向中途部に、内向き凸状の係止リブ23が一体形成されている。係止リブ23の幅寸法Wlは、これを係合溝10に嵌まり込みやすくするために、係合溝10の溝幅寸法Wgよりも小さく設定されている(Wl<Wg)。
【0036】
ナット本体7の外周にナットキャップ20を被せつけ、ナット本体7の各側周角部7aをそれぞれ対応するナットキャップ20の凹部21aに嵌め込むと、当該凹部21aの幅方向中途部にある係止リブ23が、係合溝10のうち側周角部7aに対応した手前縁部分10aに強制係合される(落ち込んで引っ掛かる)。その結果、ナットキャップ20がナット本体7に対して外れ不能に取り付けられる(
図6(b)、
図7(b)および
図8(b)参照)。
【0037】
例えばトルクレンチ等を用いて所定トルクでホイールボルト2にホイールナット6をねじ込み、ホイール3を車軸ハブ1に装着した締結下において、各ホイールナット6は、車軸ハブ1の各ホイールボルト2やホイール3の各ボルト挿通穴4との関係から明らかなように、ホイール3の回転中心に対して円周方向に沿って等間隔に並ぶ。このような締結下において、結束バンド11のバンド部12が各ホイールナット6の係合溝10にホイール3の半径方向外側から嵌まるように、結束バンド11をループ状に絞めつける(巻きつける、
図6(a)参照)。
【0038】
それから、ナットキャップ20の隣り合う開口部22,22をバンド部12が通過するようにナットキャップ20の位相合わせをして、当該ナットキャップ20を対応するホイールナット6のナット本体7外周に被嵌し、ナット本体7の各側周角部7aをそれぞれ対応するナットキャップ20の凹部21aに嵌め込む。そうすると、当該凹部21aの幅方向中途部にある係止リブ23が、係合溝10のうち側周角部7aに対応した手前縁部分10aに落ち込んで引っ掛かり、ナットキャップ20がナット本体7に対して外れ不能に取り付けられるのである(
図6(b)、
図7(b)および
図8(b)参照)。
【0039】
なお、開口部22が穴状である場合は、ホイールナット6にナットキャップ20を取り付けてから、結束バンド11を各開口部22に挿し入れて結束バンド11をループ状に巻きつけることになる。
【0040】
上記の構成によると、各ホイールナット6が走行中の衝撃や振動等で緩もうとしても、結束バンド11のバンド部12が係合溝10に引っ掛かっているため、各ホイールナット6は、それぞれ対応するホイールボルト2から抜け不能に保持される。
【0041】
すなわち、各ホイールナット6の係合溝10と結束バンド11のバンド部12との係合関係によって、各ホイールナット6の緩み(外れ移動)が阻止される。このため、各ホイールナット6が緩んでホイールボルト2から脱落するのを防止できる。
【0042】
その上、各ホイールナット6にはナットキャップ20を被せていて、ホイールナット6に対するバンド部12の巻き付け部分はナットキャップ20で覆われるから、バンド部12の係合溝10からの脱落を確実に阻止できる。
【0043】
しかも、ホイールナット6が走行中の衝撃や振動等で緩もうとした場合、ホイールナット6とナットキャップ20とはお互いに相対回転不能なため、連れ回りしようとするが、そうすると、ナットキャップ20のいずれかの開口部22が結束バンド11のバンド部12に必ず突き当たるため、ナットキャップ20ひいてはホイールナット6の緩みが阻止される。
【0044】
つまり、係合溝10と結束バンド11の係合、ホイールナット6に対するナットキャップ20の被嵌、ナットキャップ20の開口部22に対する結束バンド11の挿通という三者の構造が相俟って、各ホイールナット6の緩み(外れ移動)を簡単かつ的確に阻止できる。したがって、実施形態を採用すると、ホイール3脱落に対して高い防止効果を発揮できるのである。
【0045】
実施形態では、ナットキャップ20のうちホイールナット6の平面座8に対峙する側(ホイール3に対峙する側)に、開口部22が切り欠き形成されているので、ホイールナット6群に対して結束バンド11をループ状に巻きつけてから、各ホイールナット6にナットキャップ20を被嵌できる。したがって、ナットキャップ20を含めてナット緩み止め具5の着脱作業性を格段に高められる。
【0046】
実施形態では、ホイールナット6とナットキャップ20の組み合わせによって結束バンド11のバンド部12を局所局所(複数箇所)で挟持しているから、もし仮に結束バンド11が破断したり損傷したりしても、ホイールナット6とナットキャップ20の複数組で結束バンド11を逃がすことなく保持して、破断等による結束バンド11の脱落を確実に防止できる。
【0047】
また、ナットキャップ20の内周面に内向き突設された係止リブ23がホイールナット6(ナット本体7)の係合溝10のうち側周角部7aに対応した手前縁部分10aに強制係合されるから、ナットキャップ20がホイールナット6から脱落するおそれも極めて少ないのである。
【0048】
結束バンド11は、バンド部12の長手方向他端側をホイールナット6が緩む方向に引っ張って絞め付けるのが望ましい。実施形態(ISO規格)の場合、車両における左右どちらのホイール3に対しても、ホイールナット6の締め付け方向は右ねじになっているので、
図6(a)に示すように、バンド部12の長手方向他端側を反時計方向に引っ張るように絞め付けるのがよい。
【0049】
そうすると、ブレーキをかけた際は、バンド部12の長手方向他端側にはバックル部13に挿通する方向に負荷がかかる。すなわち、結束バンド11をより絞め付ける方向に負荷がかかるので、結束バンド11の脱落を抑制できる。
【0050】
一方、JIS規格の球面座方式を採用した場合、車両の左ホイール3に対して、ホイールナット6の締め付け方向は左ねじになっており、右ホイール3に対しては右ねじになっている。したがって、左ホイール3に対しては、バンド部12の長手方向他端側を時計方向に引っ張るように絞め付け、右ホイール3に対しては、
図6(a)に示すように、バンド部12の長手方向他端側を反時計方向に引っ張るように絞め付けるのがよい。
【0051】
そうすれば、ブレーキをかけるに際しては、左右どちら側のホイール3においても、バンド部12の長手方向他端側にはバックル部13に挿通する方向に負荷がかかる。すなわち、結束バンド11をより絞め付ける方向に負荷がかかるので、結束バンド11の脱落を抑制できる。
【0052】
図7(a)(b)および
図8(a)(b)に示すように、実施形態のナット緩み止め具5は、シングルタイヤ用のホイール3に対して採用することもできるし、ダブルタイヤ用のホイール3,3に対して採用することもできる。ISO規格の平面座方式では、ダブルタイヤ用のホイール3,3の場合、各ホイールボルト2の長さが長くなる。
【0053】
なお、係合溝10を構成する三面のうち少なくとも一面に、例えばバフかけやブラスト等の面粗し処理を施したり、バンド部12のループ状態での内面側および当該内面を挟んで両側の端面のうち少なくとも一面に、面粗し処理を施したりおくと、各ホイールナット6の係合溝10と結束バンド11のバンド部12との係合状態では摩擦力が高まるので、各ホイールナット6の緩み阻止により効果的である。もちろん、係合溝10とバンド部12の両方を面粗ししてもよいし、いずれか一方だけでも差し支えない。
【0054】
また、前述の面粗し処理に代えて、バンド押さえ14を例えばシリコンチューブ等の合成樹脂製にして、バンド部12の略全長を覆う(バンド押さえ14内にバンド部12を挿通させる)ように構成してもよい。この場合、バックル部13とバンド部12の長手方向他端側とは、バンド押さえ14の長手方向各端部から突出して露出することになる。
【0055】
このように構成すると、各ホイールナット6の係合溝10とバンド押さえ14との係合によって摩擦力が高まり、各ホイールナット6の緩み阻止を効果的に実現できる。結束バンドの絞め付けの際は、バンド押さえ14内にバンド部12を挿通させているので、摩擦抵抗が少なくスムーズに締め付けできる。
【0056】
なお、本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0057】
本発明の実施形態では、トラックやバスといった車両において、ホイール3を車軸ハブ1に装着する場合を例示しているが、これに限らず、例えば乗用車、各種作業車両のホイールや、複数組のボルトおよびナットで回転ハブに固定される回転体(例えばプーリやローラ等)全般に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車軸ハブ(回転ハブ)
2 ホイールボルト
3 ホイール(回転体)
5 ナット緩み止め具
6 ホイールナット
7 ナット本体
7a 側周角部
10 係合溝
10a 手前縁部分
11 結束バンド
12 バンド部
20 ナットキャップ
21 凹凸部
21a 凹部
21b 凸部
22 開口部
23 係止リブ