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特開2024-135719ステータコアの製造方法及びステータコアの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135719
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ステータコアの製造方法及びステータコアの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20240927BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B21D28/02 Z
B21D28/02 C
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046549
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中井 優花
【テーマコード(参考)】
4E048
5H615
【Fターム(参考)】
4E048BA06
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS03
(57)【要約】
【課題】カス上がりを抑制できるステータコアの製造方法及びステータコアの製造装置を提供する。
【解決手段】第1打抜工程では、第1パンチと第1ダイ孔161aを有する第1ダイ161との協働により、ワークWから中心孔片を打ち抜くことにより、中心孔を構成する第1貫通孔を形成する。第2打抜工程では、第1貫通孔が形成されたワークから複数のスロット片を打ち抜くことにより、複数のスロットをそれぞれ構成する複数の第2貫通孔を形成する。第1打抜工程は、中心孔片を第1ダイ孔161aの内面に設けられたカス上がり抑制部190に摺動させて塑性変形させることで、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片との間の摩擦力を増加させる変形処理を含んでいる。変形処理は、第1ダイ孔161aの内面であって、第1ダイ161のうちワークWにおける第2貫通孔が形成される予定部Wpを支持する支持部161cの内面においてのみ行われる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔と、前記中心孔に連通するとともに前記中心孔の周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットとを有し、ワークから打ち抜かれた複数の鉄心片を積層してなるステータコアの製造方法であって、
パンチと前記パンチが進退するダイ孔を有するダイとの協働により、前記ワークから中心孔片を打ち抜くことにより、前記中心孔を構成する第1貫通孔を形成する第1打抜工程と、
前記第1貫通孔が形成された前記ワークから複数のスロット片を打ち抜くことにより、前記複数のスロットをそれぞれ構成する複数の第2貫通孔を形成する第2打抜工程と、を備え、
前記第1打抜工程は、前記中心孔片を前記ダイ孔の内面に設けられたカス上がり抑制部に摺動させて塑性変形させることで、前記ダイ孔の内面と前記中心孔片との間の摩擦力を増加させる変形処理を含み、
前記変形処理は、前記ダイ孔の内面であって、前記ダイのうち前記ワークにおける前記第2貫通孔が形成される部分を支持する支持部の内面においてのみ行われる、
ステータコアの製造方法。
【請求項2】
前記ダイとして、前記カス上がり抑制部が、前記支持部の内面において前記ダイ孔の軸線方向に対して傾斜して延びる傾斜溝によって構成されたものを用いる、
請求項1に記載のステータコアの製造方法。
【請求項3】
前記ダイとして、前記カス上がり抑制部が、前記支持部の内面のうち前記ダイ孔の縁を構成する部分に形成された傾斜面によって構成されたものを用いる、
請求項1に記載のステータコアの製造方法。
【請求項4】
前記ダイとして、前記カス上がり抑制部が、前記ダイ孔の周方向に間隔をおいて設けられた複数の前記支持部のうち少なくとも2つの前記支持部の内面に設けられたものを用いる、
請求項1に記載のステータコアの製造方法。
【請求項5】
前記ワークとして、前記中心孔の内側に配置されるロータコアを構成するロータ鉄心片が打ち抜かれたものを用い、
前記第1打抜工程では、前記ワークのうち前記ロータ鉄心片が打ち抜かれた部分の外周部を前記中心孔片として打ち抜くことにより、前記第1貫通孔を形成する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のステータコアの製造方法。
【請求項6】
中心孔と、前記中心孔に連なるとともに前記中心孔の周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットとを有し、ワークから打ち抜かれた複数の鉄心片を積層してなるステータコアの製造装置であって、
パンチと、前記パンチが進退するダイ孔を有するダイとの協働により前記ワークから中心孔片を打ち抜くことにより、前記中心孔を構成する第1貫通孔を形成する第1打抜ステーションと、
前記第1貫通孔が形成された前記ワークから複数のスロット片を打ち抜くことにより、前記複数のスロットをそれぞれ構成する複数の第2貫通孔を形成する第2打抜ステーションと、を備え、
前記ダイ孔の内面には、前記中心孔片との摺動により前記中心孔片を塑性変形させることで、前記ダイ孔の内面と前記中心孔片との間の摩擦力を増加させるカス上がり抑制部が設けられており、
前記カス上がり抑制部は、前記ダイ孔の内面であって、前記ダイのうち前記ワークにおける前記第2貫通孔が形成される部分を支持する支持部の内面にのみ設けられている、
ステータコアの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアの製造方法及びステータコアの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機に用いられるステータコアは、中心孔を有する環状のヨークと、ヨークから径方向の内側に延びる複数のティースとを有している。隣り合うティース同士の間には、中心孔に連通するスロットが形成されている。
【0003】
特許文献1には、パンチ及びダイを用いてワークから打ち抜かれた複数の鉄心片を積層してステータコアを製造する方法が開示されている。同方法では、まず、ワークから複数のスロット片が打ち抜かれることにより、複数のスロットを構成する複数のスロット空間が形成される。その後、ワークから中心孔片が打ち抜かれることにより、中心孔を構成する貫通孔が複数のスロット空間に連通するように形成される。その後、ワークから鉄心片が打ち抜かれた後に、複数の鉄心片が積層されることによりステータコアが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-125953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、ワークから複数のスロット片が打ち抜かれた後に、当該ワークから中心孔片が打ち抜かれる。つまり、中心孔片が打ち抜かれる際には、ワークに複数のスロット空間が既に形成されている。このため、中心孔片の外周縁のうち各スロット空間に対向する部分は、ダイの内部に対して接触しない。この場合、中心孔片の外周縁の全体がダイの内部と接触する場合と比較して、中心孔片とダイとの接触面積が小さくなるため、中心孔片がダイの内部に保持されにくくなる。これにより、パンチの上昇に伴って中心孔片がダイの内部から浮き上がる所謂カス上がりが生じるおそれがある。カス上がりの主な原因としては、例えば、中心孔片に形成されたバリがパンチに対して食い付いたり、加工油やワークの磁気力に起因して中心孔片がパンチに吸着したりすることが挙げられる。カス上がりが生じると、ステータコアの製造が円滑に行われないため、カス上がりを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのステータコアの製造方法は、中心孔と、前記中心孔に連通するとともに前記中心孔の周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットとを有し、ワークから打ち抜かれた複数の鉄心片を積層してなるステータコアの製造方法であって、パンチと前記パンチが進退するダイ孔を有するダイとの協働により、前記ワークから中心孔片を打ち抜くことにより、前記中心孔を構成する第1貫通孔を形成する第1打抜工程と、前記第1貫通孔が形成された前記ワークから複数のスロット片を打ち抜くことにより、前記複数のスロットをそれぞれ構成する複数の第2貫通孔を形成する第2打抜工程と、を備え、前記第1打抜工程は、前記中心孔片を前記ダイ孔の内面に設けられたカス上がり抑制部に摺動させて塑性変形させることで、前記ダイ孔の内面と前記中心孔片との間の摩擦力を増加させる変形処理を含み、前記変形処理は、前記ダイ孔の内面であって、前記ダイのうち前記ワークにおける前記第2貫通孔が形成される部分を支持する支持部の内面においてのみ行われる。
【0007】
同方法によれば、第1打抜工程においてワークから中心孔片が打ち抜かれた後に、第2打抜工程においてワークから複数のスロット片が打ち抜かれる。つまり、ワークから中心孔片が打ち抜かれる時点では、ワークからスロット片が打ち抜かれていない。このため、ワークから複数のスロット片が打ち抜かれた後に中心孔片が打ち抜かれる場合と比較して、ダイ孔の内面と中心孔片との接触面積が増加する。加えて、第1打抜工程では、中心孔片をカス上がり抑制部に摺動させて塑性変形させる変形処理が行われる。これにより、ダイ孔の内面と中心孔片との間に生じる摩擦力が増加する。したがって、中心孔片のカス上がりを抑制できる。
【0008】
また、ダイ孔の内面にカス上がり抑制部が設けられているため、第1貫通孔の縁のうちカス上がり抑制部に対応する部分には、中心孔片の塑性変形に応じた変形痕が生じる。こうした変形痕が鉄心片に生じた場合、ステータコアの製品精度が低下するおそれがある。
【0009】
この点、上記方法によれば、変形処理は、ダイ孔の内面であって、ダイのうちワークにおける第2貫通孔が形成される部分を支持する支持部の内面においてのみ行われる。このため、第1貫通孔の縁に形成される変形痕が、ワークに第2貫通孔が形成される際にスロット片と共に打ち抜かれる。これにより、第1貫通孔の縁に変形痕が形成されることを回避できる。したがって、ステータコアの製品精度の低下を抑制できる。
【0010】
上記課題を解決するためのステータコアの製造装置は、中心孔と、前記中心孔に連なるとともに前記中心孔の周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットとを有し、ワークから打ち抜かれた複数の鉄心片を積層してなるステータコアの製造装置であって、パンチと、前記パンチが進退するダイ孔を有するダイとの協働により前記ワークから中心孔片を打ち抜くことにより、前記中心孔を構成する第1貫通孔を形成する第1打抜ステーションと、前記第1貫通孔が形成された前記ワークから複数のスロット片を打ち抜くことにより、前記複数のスロットをそれぞれ構成する複数の第2貫通孔を形成する第2打抜ステーションと、を備え、前記ダイ孔の内面には、前記中心孔片との摺動により前記中心孔片を塑性変形させることで、前記ダイ孔の内面と前記中心孔片との間の摩擦力を増加させるカス上がり抑制部が設けられており、前記カス上がり抑制部は、前記ダイ孔の内面であって、前記ダイのうち前記ワークにおける前記第2貫通孔が形成される部分を支持する支持部の内面にのみ設けられている。
【0011】
同構成によれば、第1打抜ステーションによってワークから中心孔片が打ち抜かれた後に、第2打抜ステーションによってワークから複数のスロット片が打ち抜かれる。つまり、ワークから中心孔片が打ち抜かれる時点では、ワークからスロット片が打ち抜かれていない。このため、第2打抜ステーションによる打ち抜きの後に第1打抜ステーションによる打ち抜きが行われる場合と比較して、ダイ孔の内面と中心孔片との接触面積が増加する。加えて、ダイ孔の内面にカス上がり抑制部が設けられているため、中心孔片がカス上がり抑制部に摺動することで塑性変形する。これにより、ダイ孔の内面と中心孔片との間に生じる摩擦力が増加する。したがって、中心孔片のカス上がりを抑制できる。
【0012】
また、ダイ孔の内面にカス上がり抑制部が設けられているため、第1貫通孔の縁のうちカス上がり抑制部に対応する部分には、中心孔片の塑性変形に応じた変形痕が生じる。こうした変形痕が鉄心片に生じた場合、ステータコアの製品精度が低下するおそれがある。
【0013】
この点、上記構成によれば、カス上がり抑制部は、ダイ孔の内面であって、ダイのうちワークにおける第2貫通孔が形成される部分を支持する部分の内面にのみ設けられている。このため、第1貫通孔の縁に形成される変形痕が、ワークに第2貫通孔が形成される際にスロット片と共に打ち抜かれる。これにより、第1貫通孔の縁に変形痕が形成されることを回避できる。したがって、ステータコアの製品精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態のステータコアを備える回転電機の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、一実施形態のプレス装置の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、図2のプレス装置により加工されるワークを示す平面図である。
図4図4は、図2の第1ダイを示す平面図である。
図5図5は、図2の第1ダイを示す斜視図である。
図6図6は、突起が形成された中心孔片を示す平面図である。
図7図7は、第1変更例の第1ダイを示す断面図である。
図8図8は、第2変更例の第1ダイを示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図6を参照して、ステータコアの製造方法及びステータコアの製造装置の一実施形態について説明する。
(回転電機M)
図1に示すように、回転電機Mは、ロータ10と、ロータ10を取り囲むステータ40とを備えている。ロータ10及びステータ40は、それぞれ略円筒状をなしている。ロータ10は、ステータ40の内側において回転可能に構成されている。
【0016】
(ロータ10)
ロータ10は、ロータコア11と、樹脂材を介してロータコア11に固定された複数の磁石30とを備えている。
【0017】
ロータコア11は、挿入孔12と、複数の磁石収容孔13と、複数の冷却流路14とを有している。挿入孔12には、シャフトが挿入される。各磁石収容孔13には、樹脂材と共に磁石30が収容される。冷却流路14には、ロータ10を冷却する冷却媒体が流れる。
【0018】
ロータコア11は、複数のロータ鉄心片20が積層されることにより構成されている。ロータ鉄心片20は、電磁鋼板などのワークWから打ち抜かれる(図2参照)。
(ステータ40)
ステータ40は、ステータコア41と、ステータコア41に巻回された複数のコイル60とを備えている。
【0019】
ステータコア41は、ヨーク42と、複数のティース43と、複数のスロット44とを有している。ヨーク42は円環状をなしている。複数のティース43は、ヨーク42から径方向の内側に突出するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。スロット44は、周方向において隣り合うティース43同士の間に1つずつ形成されている。スロット44は、ステータコア41を軸線方向に貫通している。
【0020】
ステータコア41は、中心孔45を有している。中心孔45は、ステータコア41を軸線方向に貫通している。中心孔45は、平面視において略円形状をなしている。中心孔45には、各スロット44が連通している。
【0021】
ステータコア41は、ヨーク42から径方向の外側に突出した3つの固定部46を有している。各固定部46は、ステータコア41を図示しないハウジングに固定するためのボルトが挿入される固定孔47を有している。固定孔47は、固定部46を軸線方向に貫通している。
【0022】
ステータコア41は、複数のステータ鉄心片50が積層されることにより構成されている。ステータ鉄心片50は、電磁鋼板などのワークWから打ち抜かれる(図2参照)。
ステータ鉄心片50は、第1貫通孔55と、複数の第2貫通孔54と、複数の第3貫通孔57とを有している。第1貫通孔55は、略円形状をなしている。複数の第2貫通孔54は、第1貫通孔55の外周縁に沿って互いに間隔をおいて形成されている。各第2貫通孔54は、第1貫通孔55に連通している。複数の第3貫通孔57は、第2貫通孔54の外周側において、第1貫通孔55の外周縁に沿って互いに間隔をおいて形成されている。
【0023】
中心孔45は、複数の第1貫通孔55が積層方向において連通することにより構成されている。複数のスロット44は、複数の第2貫通孔54が積層方向において連通することにより構成されている。複数の固定孔47は、複数の第3貫通孔57が積層方向において連通することにより構成されている。
【0024】
(プレス装置100)
次に、ロータコア11及びステータコア41を製造するプレス装置100について説明する。
【0025】
図2に示すように、プレス装置100は、ロータ打抜装置110とステータ打抜装置150とが直列に配置された装置である。ステータ打抜装置150は、「ステータコアの製造装置」の一例である。
【0026】
ロータ打抜装置110は、間欠的に搬送されるワークWに対して、例えば、孔抜きなどの複数の加工を行う金型装置を備えている。ロータ打抜装置110は、ワークWからロータ鉄心片20を打ち抜いて積層することによりロータコア11を製造する。
【0027】
ステータ打抜装置150は、間欠的に搬送されるワークWに対して、例えば、孔抜きなどの複数の加工を行う金型装置を備えている。ステータ打抜装置150は、ワークWからステータ鉄心片50を打ち抜いて積層することによりステータコア41を製造する。ステータ打抜装置150には、ロータ打抜装置110において加工されたワークWが搬送される。
【0028】
(ロータ打抜装置110)
ロータ打抜装置110は、下型120と、下型120に対して進退可能に構成された上型130とを備えている。下型120には、ダイ121が設けられている。上型130には、ダイ121に対応する位置にパンチ131が設けられている。
【0029】
上型130には、ワークWの打ち抜き時にワークWを押さえるストリッパプレート140が設けられている。ストリッパプレート140は、図示しない付勢部材によって下型120に向けて付勢されている。ストリッパプレート140は、パンチ131が挿入されるパンチ挿入孔140aを有している。
【0030】
ダイ121は、パンチ131が進退するダイ孔121aを有している。ダイ孔121aは、平面視において、ロータコア11の外周形状に対応した略円形状をなしている。
ロータ打抜装置110は、パンチ131とダイ121との協働により、ワークWからロータ鉄心片20を打ち抜く。ロータ鉄心片20は、ダイ孔121aの内部において保持されるとともに、次に打ち抜かれたロータ鉄心片20と結合される。所定数のロータ鉄心片20がダイ孔121aの内部において順次積層されて互いに結合されることにより、ロータコア11が製造される。
【0031】
ロータ打抜装置110は、ロータ鉄心片20の打ち抜きに先立ち、ワークWに対して挿入孔12、磁石収容孔13、及び冷却流路14を構成する種々の孔抜きなどの加工を行うように構成されている。
【0032】
(ステータ打抜装置150)
ステータ打抜装置150は、下型160と、下型160に対して進退可能に構成された上型170とを備えている。
【0033】
下型160には、ワークWの搬送方向の上流側から順に第1ダイ161、第2ダイ162、及び第3ダイ163が設けられている。上型170には、第1ダイ161、第2ダイ162、及び第3ダイ163にそれぞれ対応する位置に第1パンチ171、複数の第2パンチ172、及び第3パンチ173が設けられている。第1パンチ171及び第1ダイ161は、それぞれ「パンチ」及び「ダイ」の一例である。
【0034】
上型170には、ワークWの打ち抜き時にワークWを押さえるストリッパプレート180が設けられている。ストリッパプレート180は、図示しない付勢部材によって下型160に向けて付勢されている。ストリッパプレート180は、第1パンチ171、第2パンチ172、及び第3パンチ173がそれぞれ挿入される第1パンチ挿入孔181a、第2パンチ挿入孔182a、及び第3パンチ挿入孔183aを有している。
【0035】
第1ダイ161は、第1パンチ171が進退する第1ダイ孔161aを有している。第1ダイ孔161aは、平面視において、第1貫通孔55の形状に対応した略円形状をなしている。第1ダイ孔161aは、「ダイ孔」の一例である。
【0036】
第2ダイ162は、複数の第2パンチ172がそれぞれ進退する複数の第2ダイ孔162aを有している。図2では、便宜上、第2パンチ172及び第2ダイ孔162aが1つずつ図示されている。各第2ダイ孔162aは、平面視において、第2貫通孔54の形状に対応した略長方形状をなしている。
【0037】
第3ダイ163は、第3パンチ173が進退する第3ダイ孔163aを有している。第3ダイ孔163aは、平面視において、ステータコア41の外周形状に対応した形状をなしている。
【0038】
ステータ打抜装置150は、第1打抜ステーションS1と、第2打抜ステーションS2と、第3打抜ステーションS3とを備えている。第1打抜ステーションS1は、第1ダイ161及び第1パンチ171を含んでいる。第2打抜ステーションS2は、第2ダイ162及び第2パンチ172を含んでいる。第3打抜ステーションS3は、第3ダイ163及び第3パンチ173を含んでいる。
【0039】
ステータ打抜装置150では、ワークWが、第1打抜ステーションS1、第2打抜ステーションS2、及び第3打抜ステーションS3の順に搬送される。なお、各打抜ステーションS1,S2,S3の間には、ワークWに対してダボ加工などの種々の加工を行う加工ステーションが設けられていてもよい。
【0040】
第1打抜ステーションS1は、第1ダイ161と第1パンチ171との協働によりワークWから中心孔片W1を打ち抜くことにより、ワークWに第1貫通孔55を形成する。
第2打抜ステーションS2は、第2ダイ162と第2パンチ172との協働によりワークWから複数のスロット片W2を打ち抜くことにより、ワークWに複数の第2貫通孔54を形成する。図2において、第2打抜ステーションS2の断面図は、第1打抜ステーションS1及び第3打抜ステーションS3の断面とは異なる断面を示している。
【0041】
図3に示すように、第2打抜ステーションS2は、図示しないダイとパンチとの協働により、ワークWから複数の固定孔片W3を打ち抜くことにより、ワークWに複数の第3貫通孔57を形成する。ワークWへの第3貫通孔57の形成は、第1打抜ステーションS1において行われてもよい。
【0042】
図2に示すように、第3打抜ステーションS3は、第3ダイ163と第3パンチ173との協働によりワークWからステータ鉄心片50を打ち抜く。ステータ鉄心片50は、第3ダイ孔163aの内部において保持されるとともに、次に打ち抜かれたステータ鉄心片50と結合される。所定数のステータ鉄心片50が第3ダイ孔163aの内部において順次積層されて互いに結合されることにより、ステータコア41が製造される。
【0043】
(カス上がり抑制部190)
図4に示すように、第1ダイ孔161aの内面には、複数のカス上がり抑制部190が、第1ダイ孔161aの周方向に互いに間隔をおいて設けられている。カス上がり抑制部190は、ワークWから中心孔片W1が打ち抜かれる際に、中心孔片W1との摺動により中心孔片W1を塑性変形させることで、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との間の摩擦力を増加させる機能を有している。
【0044】
図5に示すように、第1ダイ161は、ワークWの下面を支持する支持面161bを有している。図5にドットハッチングにて示すように、支持面161bは、複数の支持部161cを有している。複数の支持部161cは、第1ダイ孔161aの周方向に互いに間隔をおいて設けられている。支持部161cは、ワークWにおける第2貫通孔54が形成される予定の部分である予定部Wpの下面を支持する。したがって、支持部161cは、予定部Wpの直下に位置している。
【0045】
図4に示すように、カス上がり抑制部190は、第1ダイ孔161aの内面のうち、同図に二点鎖線にて示す支持部161cの内面にのみ設けられている。カス上がり抑制部190は、複数の支持部161cのうち少なくとも2つの支持部161cの内面に設けられている。本実施形態のカス上がり抑制部190は、第1ダイ孔161aの周方向に120°間隔にて設けられた3つの支持部161cの内面のそれぞれに設けられている。すなわち、カス上がり抑制部190は、第1ダイ孔161aの内面において、第1ダイ孔161aの周方向に等間隔にて設けられている。
【0046】
図5に示すように、カス上がり抑制部190は、支持部161cの内面において第1ダイ孔161aの軸線方向に対して傾斜して延びる傾斜溝191によって構成されている。傾斜溝191の長さ方向に直交する断面形状は、例えば、四角形状である。
【0047】
傾斜溝191は、第1ダイ孔161aの縁から軸線方向における第1ダイ孔161aの内側に延びている。すなわち、傾斜溝191は、第1ダイ孔161aの切れ刃に跨がって形成されている。
【0048】
(ロータコア11の製造方法)
次に、ロータコア11の製造方法について説明する。
ロータコア11の製造方法は、複数の加工工程と、ロータ外形抜き工程とを備えている。複数の加工工程では、図示しない順送金型によって、ワークWに対して挿入孔12、磁石収容孔13、及び冷却流路14を構成する種々の孔抜きなどの加工が行われる。
【0049】
図2に示すように、ロータ外形抜き工程では、まず、上型130が降下することにより、ストリッパプレート140によってワークWが下型120に対して押し付けられる。その後、上型130が更に降下することにより、パンチ131がダイ孔121aの内部に進入する。これにより、パンチ131とダイ121とによって、ワークWからロータ鉄心片20が打ち抜かれる。ロータ鉄心片20が打ち抜かれたワークWには、ロータ鉄心片20の外周形状に応じたロータ貫通孔Hrが形成される。
【0050】
ダイ孔121aの内部では、複数のロータ鉄心片20が積層されるとともに互いに結合される。ダイ孔121aの内部において所定数のロータ鉄心片20が積層されることにより、ロータコア11が製造される。
【0051】
(ステータコア41の製造方法)
次に、ステータコア41の製造方法について説明する。
ステータコア41の製造方法は、第1打抜工程と、第2打抜工程と、第3打抜工程とを備えている。ステータコア41の製造方法は、ワークWに対して、孔抜きやダボ形成などを行う種々の加工工程を備えていてもよい。
【0052】
第1打抜工程に先立ち、図示しない送り装置によって、ワークWにおけるロータ貫通孔Hrが形成された部分が第1打抜ステーションS1に搬送される。
第1打抜工程では、まず、上型170が降下することにより、ストリッパプレート180によってワークWが下型160に対して押し付けられる。その後、上型170が更に降下することにより、第1パンチ171が第1ダイ孔161aの内部に進入する。これにより、第1パンチ171と第1ダイ161とによって、ワークWから中心孔片W1が打ち抜かれる。中心孔片W1が打ち抜かれたワークWには、第1貫通孔55が形成される。
【0053】
第1打抜工程では、ワークWからロータ貫通孔Hrの外周部が中心孔片W1として打ち抜かれることにより、第1貫通孔55が形成される。中心孔片W1は、ロータ貫通孔Hrの外周部がロータ貫通孔Hrと同軸上に打ち抜かれた部分である。したがって、中心孔片W1は、環状をなしている。
【0054】
第1打抜工程は、中心孔片W1をカス上がり抑制部190に摺動させて塑性変形させることで、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との間の摩擦力を増加させる変形処理を含んでいる。変形処理は、第1ダイ孔161aの内面のうち、支持部161cの内面においてのみ行われる。より詳しくは、変形処理は、複数の支持部161cの内面のうち、カス上がり抑制部190が設けられた支持部161cの内面においてのみ行われる。
【0055】
図6に示すように、第1ダイ孔161aの内面のうち傾斜溝191が形成された部分では、第1パンチ171の外面と第1ダイ孔161aの内面との間のクリアランスが、その他の部分よりも大きくなる。このため、中心孔片W1の打ち抜き初期では、中心孔片W1のうち傾斜溝191に対向する部分に、傾斜溝191の内部に突出する突起Pが形成される。この状態で、中心孔片W1が第1パンチ171によって軸線方向において第1ダイ孔161aの内部に押し込まれることで、突起Pは、傾斜溝191の壁面において潰されながら傾斜溝191を乗り超える。これにより、突起Pは、第1ダイ孔161aの内面における傾斜溝191が形成されていない部分に到達する。このとき、突起Pは、第1ダイ孔161aの内面に対して強く押し付けられているため、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との間の摩擦力が増加する。その結果、中心孔片W1が第1ダイ孔161aの内部に保持される。
【0056】
図示は省略するが、中心孔片W1に突起Pが形成されることに伴って、ワークWにおける第1貫通孔55の縁のうち突起Pに対応する部分には、突起Pに応じた変形痕が生じる。
【0057】
図2に示すように、次に、第2打抜工程に先立ち、上型170の上昇に伴ってワークWからストリッパプレート180及び第1パンチ171が離間すると、ワークWにおける第1貫通孔55が形成された部分が第2打抜ステーションS2に搬送される。
【0058】
第2打抜工程では、まず、上型170が降下することにより、ストリッパプレート180によってワークWが下型160に対して押し付けられる。その後、上型170が更に降下することにより、第2パンチ172が第2ダイ孔162aの内部に進入する。これにより、第2パンチ172と第2ダイ162とによって、ワークWから複数のスロット片W2が打ち抜かれる。複数のスロット片W2が打ち抜かれたワークWには、第1貫通孔55に連通する複数の第2貫通孔54が形成される。
【0059】
更に、第2打抜工程では、図示しないパンチ及びダイによって、複数の固定孔片W3が打ち抜かれることにより、ワークWに複数の第3貫通孔57が形成される。
次に、第3打抜工程に先立ち、上型170の上昇に伴ってワークWからストリッパプレート180及び第2パンチ172が離間すると、ワークWにおける第1貫通孔55が形成された部分が第3打抜ステーションS3に搬送される。
【0060】
第3打抜工程では、まず、上型170が降下することにより、ストリッパプレート180によってワークWが下型160に対して押し付けられる。その後、上型170が更に降下することにより、第3パンチ173が第3ダイ孔163aの内部に進入する。これにより、第3パンチ173と第3ダイ163とによって、ワークWからステータ鉄心片50が打ち抜かれる。ステータ鉄心片50が打ち抜かれたワークWには、ステータ鉄心片50の外周形状に応じたステータ貫通孔Hsが形成される。
【0061】
第3ダイ孔163aの内部では、複数のステータ鉄心片50が積層されるとともに互いに結合される。第3ダイ孔163aの内部において所定数のステータ鉄心片50が積層されることにより、ステータコア41が製造される。
【0062】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)第1打抜工程では、ワークWから中心孔片W1が打ち抜かれることにより、第1貫通孔55が形成される。第2打抜工程では、第1貫通孔55が形成されたワークWから複数のスロット片W2が打ち抜かれることにより、複数の第2貫通孔54が形成される。第1打抜工程は、中心孔片W1を第1ダイ孔161aの内面に設けられたカス上がり抑制部190に摺動させて塑性変形させることで、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との間の摩擦力を増加させる変形処理を含んでいる。変形処理は、支持部161cの内面においてのみ行われる。
【0063】
上記方法によれば、第1打抜工程においてワークWから中心孔片W1が打ち抜かれた後に、第2打抜工程においてワークWから複数のスロット片W2が打ち抜かれる。つまり、ワークWから中心孔片W1が打ち抜かれる時点では、ワークWからスロット片W2が打ち抜かれていない。このため、ワークWから複数のスロット片W2が打ち抜かれた後に中心孔片W1が打ち抜かれる場合と比較して、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との接触面積が増加する。加えて、第1打抜工程では、中心孔片W1をカス上がり抑制部190に摺動させて塑性変形させる変形処理が行われる。これにより、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との間に生じる摩擦力が増加する。したがって、中心孔片W1のカス上がりを抑制できる。
【0064】
また、第1ダイ孔161aの内面にカス上がり抑制部190が設けられているため、第1貫通孔55の縁のうちカス上がり抑制部190に対応する部分には、中心孔片W1の塑性変形に応じた変形痕が生じる。こうした変形痕がステータ鉄心片50に生じた場合、ステータコア41の製品精度が低下するおそれがある。
【0065】
この点、上記方法によれば、変形処理は、第1ダイ孔161aの内面であって、第1ダイ161のうちワークWにおける第2貫通孔54が形成される部分を支持する支持部161cの内面においてのみ行われる。このため、第1貫通孔55の縁に形成される変形痕が、ワークWに第2貫通孔54が形成される際にスロット片W2と共に打ち抜かれる。これにより、第1貫通孔55の縁に変形痕が形成されることを回避できる。したがって、ステータコア41の製品精度の低下を抑制できる。
【0066】
(2)第1打抜工程では、第1ダイ161として、カス上がり抑制部190が傾斜溝191によって構成されたものが用いられる。
上記方法によれば、中心孔片W1のうち傾斜溝191に対向する部分に突起Pが形成される。中心孔片W1が第1ダイ孔161aの内部に押し込まれることで、突起Pは、傾斜溝191の壁面において潰された後、第1ダイ孔161aの内面に対して強く押し付けられる。これにより、突起Pが第1ダイ孔161aの内部に保持されるため、中心孔片W1のカス上がりを抑制できる。したがって、簡易な方法により中心孔片W1のカス上がりを抑制することができる。
【0067】
(3)第1打抜工程では、第1ダイ161として、カス上がり抑制部190が、複数の支持部161cのうち少なくとも2つの支持部161cの内面に設けられたものが用いられる。
【0068】
上記方法によれば、少なくとも2つのカス上がり抑制部190が、第1ダイ孔161aの内面に間隔をおいて設けられている。このため、中心孔片W1における少なくとも2箇所において、変形処理による塑性変形が生じる。これにより、第1ダイ孔161aの内面と中心孔片W1との間に生じる摩擦力が増加する。したがって、中心孔片W1のカス上がりを抑制できる。
【0069】
(4)第1打抜工程では、ワークWのうちロータ鉄心片20が打ち抜かれた部分の外周部が中心孔片W1として打ち抜かれることにより、第1貫通孔55が形成される。
上記方法によれば、ワークWにおけるロータ鉄心片20が打ち抜かれた部分の外周部が中心孔片W1として打ち抜かれる。これにより、1つのワークWにおいてロータ鉄心片20の外周側の部分からステータ鉄心片50を打ち抜くことができる。したがって、ステータコア41を製造する上で、ワークWのうちスクラップとなる部分を有効活用することができる。
【0070】
(5)ステータ打抜装置150は、ワークWに第1貫通孔55を形成する第1打抜ステーションS1と、ワークWに複数の第2貫通孔54を形成する第2打抜ステーションS2とを備えている。第1打抜ステーションS1における第1ダイ孔161aの内面には、カス上がり抑制部190が設けられている。カス上がり抑制部190は、支持部161cの内面にのみ設けられている。
【0071】
上記構成によれば、上述した作用及び効果(1)に準じた作用及び効果を奏することができる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
・第1打抜工程では、ロータ貫通孔Hrが形成されていないワークWから中心孔片W1が打ち抜かれることにより、第1貫通孔55が形成されてもよい。この場合、中心孔片W1は、円形状をなしている。
【0073】
・第1ダイ孔161aの内面には、1つのカス上がり抑制部190が設けられていてもよいし、複数のカス上がり抑制部190が設けられていてもよい。複数のカス上がり抑制部190は、第1ダイ孔161aの周方向に不等間隔にて設けられていてもよい。
【0074】
・傾斜溝191の長さ方向に直交する断面形状は、四角形状に限定されず、他に例えば、半円状であってもよい。
図7に示すように、カス上がり抑制部190は、支持部161cの内面のうち第1ダイ孔161aの縁を構成する部分に形成された傾斜面192によって構成されていてもよい。こうした構成によれば、中心孔片W1のうち、傾斜面192に接触する部分において、中心孔片W1に生じるダレがその他の部分よりも大きくなりやすい。このため、中心孔片W1のダレが第1ダイ孔161aの内面に対して強く押し付けられることで、中心孔片W1が第1ダイ孔161aの内面に保持されやすくなる。したがって、簡易な方法により中心孔片W1のカス上がりを抑制できる。
【0075】
図8に示すように、第1ダイ孔161aの縁には、形状が互いに異なる傾斜面192と傾斜面193とが、第1ダイ孔161aの周方向に隣り合って形成されていてもよい。傾斜面192は、上述した変更例と同一のものである。傾斜面193は、第1ダイ161のうち周方向において支持部161cに隣接する部分の内面に形成されている。傾斜面193の上縁から下縁までの距離は、傾斜面192の上縁から下縁までの距離よりも小さい。傾斜面192の支持面161bに対する傾斜角度と、傾斜面193の支持面161bに対する傾斜角度とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。こうした構成によれば、中心孔片W1のうち、傾斜面192及び傾斜面193のそれぞれに接触する部分において、中心孔片W1にダレが生じやすくなる。このため、中心孔片W1が第1ダイ孔161aの内面に保持されやすくなる。また、傾斜面193の上縁から下縁までの距離は、傾斜面192の上縁から下縁までの距離よりも小さいため、中心孔片W1のうち、傾斜面193に接触することにより生じるダレを、傾斜面192に接触することにより生じるダレよりも小さくできる。その結果、ステータ鉄心片50に形成された第1貫通孔55の縁において、中心孔片W1のダレに対応した変形痕を小さくできる。したがって、ステータコア41の製品精度の低下を抑制しつつ、中心孔片W1のカス上がりを抑制できる。
【0076】
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]中心孔と、前記中心孔に連通するとともに前記中心孔の周方向に間隔をおいて形成された複数のスロットとを有し、ワークから打ち抜かれた複数の鉄心片を積層してなるステータコアの製造方法であって、パンチと前記パンチが進退するダイ孔を有するダイとの協働により、前記ワークから中心孔片を打ち抜くことにより、前記中心孔を構成する第1貫通孔を形成する第1打抜工程と、前記第1貫通孔が形成された前記ワークから複数のスロット片を打ち抜くことにより、前記複数のスロットをそれぞれ構成する複数の第2貫通孔を形成する第2打抜工程と、を備え、前記第1打抜工程は、前記中心孔片を前記ダイ孔の内面に設けられたカス上がり抑制部に摺動させて塑性変形させることで、前記ダイ孔の内面と前記中心孔片との間の摩擦力を増加させる変形処理を含み、前記変形処理は、前記ダイ孔の内面であって、前記ダイのうち前記ワークにおける前記第2貫通孔が形成される部分を支持する支持部の内面においてのみ行われる、ステータコアの製造方法。
【0077】
[付記2]前記ダイとして、前記カス上がり抑制部が、前記支持部の内面において前記ダイ孔の軸線方向に対して傾斜して延びる傾斜溝によって構成されたものを用いる、[付記1]に記載のステータコアの製造方法。
【0078】
[付記3]前記ダイとして、前記カス上がり抑制部が、前記支持部の内面のうち前記ダイ孔の開口縁を構成する部分に形成された傾斜面によって構成されたものを用いる、[付記1]に記載のステータコアの製造方法。
【0079】
[付記4]前記ダイとして、前記カス上がり抑制部が、前記ダイ孔の周方向に間隔をおいて設けられた複数の前記支持部のうち少なくとも2つの前記支持部の内面に設けられたものを用いる、[付記1]~[付記3]のいずれか1つに記載のステータコアの製造方法。
【0080】
[付記5]前記鉄心片をステータ鉄心片とするとき、前記第1打抜工程では、前記ワークのうちロータ鉄心片が打ち抜かれた部分の外周部を前記中心孔片として打ち抜くことにより、前記第1貫通孔を形成する、[付記1]~[付記4]のいずれか1つに記載のステータコアの製造方法。
【符号の説明】
【0081】
S1…第1打抜ステーション
S2…第2打抜ステーション
W…ワーク
W1…中心孔片
W2…スロット片
Wp…予定部
10…ロータ
11…ロータコア
20…ロータ鉄心片
40…ステータ
41…ステータコア
44…スロット
45…中心孔
50…ステータ鉄心片
54…第2貫通孔
55…第1貫通孔
150…ステータ打抜装置
161…第1ダイ
161a…第1ダイ孔
161b…支持面
161c…支持部
171…第1パンチ
190…カス上がり抑制部
191…傾斜溝
192…傾斜面
193…傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8