(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135722
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び合成樹脂ペレットの製造方法並びに成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240927BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20240927BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20240927BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20240927BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L79/02
C08L97/00
C08L1/00
C08J5/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046552
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安田 直生
(72)【発明者】
【氏名】堀場 幸治
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB03
4F072AD04
4F072AD11
4F072AG05
4F072AH04
4F072AH05
4F072AH23
4F072AK04
4F072AK15
4F072AL02
4F072AL16
4J002AB01X
4J002AH00X
4J002BB00W
4J002BB03W
4J002BB12W
4J002CM013
4J002FD01X
4J002FD203
(57)【要約】 (修正有)
【課題】合成樹脂と植物繊維とを含有する樹脂組成物の成形に用いる金型の腐食を抑制するとともに、金型との離型性、及び、耐熱性を向上させることができる樹脂組成物の製造方法及び合成樹脂ペレットの製造方法並びに成形体を提供する。
【解決手段】植物繊維11と、ポリオレフィン系樹脂と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20と、を溶融混錬して樹脂組成物を得る工程を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維と、ポリオレフィン系樹脂と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミンと、を溶融混錬して樹脂組成物を得る工程を含む樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記植物繊維の配合量が前記樹脂組成物に対して10wt%以上85wt%以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂の配合量が前記樹脂組成物に対して15wt%以上90wt%以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリアミンの重量平均分子量が10,000以上100,000以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリアミンの添加量が前記植物繊維に対して0.1wt%以上5.0%wt以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリアミンの重量平均分子量が10,000以上70,000以下であり、
前記ポリアミンの添加量が前記植物繊維に対して0.1wt%以上3.0%wt以下である樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記植物繊維が針葉樹由来の木粉である樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
車両用灯具のハウジングまたはブラケットに用いられる樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の製造方法で得られた樹脂組成物からなる成形体。
【請求項9】
植物繊維と、ポリオレフィン系樹脂と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミンと、を溶融混錬して樹脂ペレットを得る工程を含む樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物繊維と合成樹脂を含有する樹脂組成物及び合成樹脂ペレットの製造方法並びに成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物の強度を確保するために、ベースである合成樹脂に充填剤(フィラー)として植物繊維または炭酸カルシウム、タルクあるいはガラス繊維等の無機素材を配合する手法が採られている。特に植物繊維は、無機素材と比較して比重が軽いことから樹脂組成物の強度を改善しつつ軽量化を実現する方法として、充填剤に用いられている。
【0003】
しかしながら、植物繊維はリグニン及びヘミセルロースなどの成分からなるため、植物繊維の温度が高温(200℃程度)まで上昇すると、リグニン及びヘミセルロースが熱分解して、カルボン酸などの腐食性ガスを発生させる。そのため、植物繊維と合成樹脂とからなる樹脂組成物を高温下で射出成形すると、射出成形に用いる金型を腐食させるおそれがあった。
【0004】
例えば、特許文献1には、植物繊維と合成樹脂とからなる成形体を製造する際に、酸捕捉体として特に酸化カルシウムを添加する成形体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、合成樹脂と植物繊維とを含有する樹脂組成物は、成形に用いる金型を腐食するとともに、金型からの離型性が不十分である結果、成形体が金型から離れない離型不良が発生するという懸念があった。また、合成樹脂と植物繊維とからなる樹脂組成物には、耐熱性が不十分であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、合成樹脂と植物繊維とを含有する樹脂組成物の成形に用いる金型の腐食を抑制するとともに、金型との離型性、及び、耐熱性を向上させた樹脂組成物及び合成樹脂ペレットの製造方法並びに成形体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、
植物繊維と、ポリオレフィン系樹脂と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミンと、を溶融混錬して樹脂組成物を得る工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の樹脂組成物及び成形体の製造工程を示す図である。
【
図2】腐食性ガスと第1級アミンおよび/または第2級アミンとの反応過程を示す図である。
【
図3】本発明の樹脂組成物及び成形体の製造工程を示す図である。
【
図4】本発明の合成樹脂ペレットの製造工程を示す図である。
【
図5】本発明の樹脂組成物の実施例と比較例の比較結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、植物繊維が配合された合成樹脂ペレット10と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20とが、二軸混合機40にてスクリュー回転数250rpm、シリンダ温度200度で溶融混錬されて、樹脂組成物30が得られる。樹脂組成物30は、成形機41に注入され、高温下で射出成形されることで成形体31が得られる。
【0011】
植物繊維11とは、植物から採れる天然繊維のことをいい、その主成分は、植物細胞壁の構造成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンである。
図2に示すように、ヘミセルロース及びリグニンは、高温下(約200℃)で熱分解して、腐食性ガス11Aであるカルボン酸などの有機酸及びアルデヒドなど反応しやすい物質を発生させる。
【0012】
カルボン酸は、第1級アミンおよび/または第2級アミンと反応して、カルボン酸アミドとなる。そのため、カルボン酸が射出成形に用いる金型(例えば、鉄)と反応して、金型が腐食することを抑制することができる。一例として、下記にカルボン酸と第1級アミンの反応機構を示す。
【化1】
【0013】
また、アルデヒドは、第1級アミンおよび/または第2級アミンと反応して、イミンとなる。そのため、アルデヒドが射出成形に用いる金型(例えば、鉄)と反応して、金型が腐食することを抑制することができる。一例として、下記にアルデヒドと第1級アミンの反応機構を示す。
【化2】
【0014】
ヘミセルロースまたはリグニンから発生した腐食性ガス11Aは、長鎖脂肪酸の割合が多い。第1級アミンおよび/または第2級アミンと反応した長鎖脂肪酸は、射出成形時の流動より、流動方向に配向する。長鎖脂肪酸はその大部分が疎水性である炭化水素基であるため、樹脂組成物はその表層において、ワックス効果を発揮し、疎水性の金型と高い離型性を生ずる。
【0015】
樹脂組成物30は、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20を含有するため、融点が上昇する。そのため、樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0016】
本発明の樹脂組成物に用いられる植物繊維11としては、木粉、紙などの木質繊維、セルロースファイバー、セルロースナノファイバー、植物由来のバイオマス材料、植物から抽出または別途合成されたセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを用いることができる。また、木粉としては、例えば、針葉樹、広葉樹、稲わら、もみ殻、麦わら、竹、松、杉、ヒノキ、ケナフ、パルプ、サイザル麻、マニラ麻、ジュート麻、ココヤシ、トウモロコシ、葦、ヤシ、パピルス由来の木粉を用いることできる。
【0017】
植物繊維11の配合量は、樹脂組成物30の総量に対して、10重量%(wt%)~85重量%であることが好ましく、30重量%~70重量%であることがより好ましい。植物繊維の配合量が低い場合には十分な強度を確保することが困難であることから、植物繊維の配合量は、10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。また、植物繊維は配合量を高めるほど強度が増すが、その反面、樹脂組成物の流動性が低下し、十分に混錬することが困難となることから、植物繊維の配合量は、85重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。樹脂組成物を十分に混錬することが困難である場合には、第1級アミンおよび/または第2級アミンと腐食性ガス11Aとの反応が不十分となり、多くの腐食性ガス11Aが未反応の状態で残存することになる。よって、射出成形時に用いる金型の腐食の抑制が不十分となる。また、樹脂組成物の流動性の低下により十分な成形性を確保することも困難となる。
【0018】
本発明の樹脂組成物30に用いられる合成樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0019】
合成樹脂の配合量は、樹脂組成物30の総量に対して、15重量%~90重量%であることが好ましく、30重量%~70重量%であることがより好ましい。合成樹脂の配合量が低い場合には、樹脂組成物の流動性が低下し、十分に混錬することが困難となることから、合成樹脂の配合量は、15重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。樹脂組成物を十分に混錬することが困難である場合には、第1級アミンおよび/または第2級アミンと腐食性ガス11Aとの反応が不十分となり、多くの腐食性ガス11Aが未反応の状態で残存することになる。よって、射出成形時に用いる金型の腐食の抑制が不十分となる。また、合成樹脂の配合量が高い場合には十分な強度を確保することが困難であることから、合成樹脂の配合量は、90重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。また、合成樹脂は、石油等の化石燃料を原料にしていることから、合成樹脂の配合量を減らすことは環境資源の保全の観点からも有用である。
【0020】
本発明の樹脂組成物30に用いられる第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリイソプロピレンイミンなどの脂肪族アミンの他、芳香族アミンを用いることができる。なお、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミンの沸点が低い場合には、植物繊維11及び合成樹脂と溶融混錬する際に蒸発してしまうことが懸念されるため、沸点または分解温度が250℃以上の脂肪族アミンまたは芳香族アミンを用いることがより好ましい。
【0021】
第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20の配合量は、植物繊維11に対して0.05重量%~5.00重量%であることが好ましく、0.1重量%~3.0重量%であることがより好ましい。ポリアミンの配合量が0.05重量%よりも低い場合には、腐食性ガス11Aに対して第1級アミンおよび/または第2級アミンの配合量が不足するため、多くの腐食性ガス11Aが未反応の状態で残存することになる。そのため、成形時に用いる金型の腐食の抑制が不十分となる。ポリアミンの配合量が5.00重量%よりも高い場合には、植物繊維11から発生する腐食性ガス11Aに対してポリアミンの量が過剰となる。過剰となったポリアミンは、疎水性の金型との離型性を発揮する樹脂組成物の疎水性成分と反応して、樹脂組成物の金型との離型性を低下させる。
【0022】
第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20の重量平均分子量(Mw)は、300~100,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、10,000~70,000であることがさらに好ましい。ポリアミンの重量平均分子量が300よりも小さい場合には、植物繊維11及び合成樹脂との溶融混錬する際の熱でポリアミンが揮発してしまう。そのため、樹脂組成物の表面のワックス効果が発現せず、離型性が低下する。また、重量平均分子量が小さい場合には、ポリアミンの毒性が強いため、取り扱いに注意が必要になる。そのため、製造時の作業性が低下する。ポリアミンの重量平均分子量が100,000よりも大きい場合には、樹脂組成物の粘性が高くなることで十分に混錬することが困難となる。そのため、第1級アミンおよび/または第2級アミンと腐食性ガスとの反応が不十分となり、多くの腐食性ガスが未反応の状態で残存することになる。よって、射出成形時に用いる金型の腐食の抑制が不十分となる。また、ポリアミンの重量平均分子量が100,000よりも大きい場合には、単位質量あたりの第3級アミンの割合が大きくなり、腐食性ガス11Aと反応する第1級アミンおよび/または第2級アミンの割合が小さくなる。そのため、射出成形時に用いる金型の腐食の抑制が不十分となる。
【0023】
以下、変形例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの変形例に限定されるものではない。
[変形例1]
本実施形態の樹脂組成物の製造方法の変形例1について説明する。
図3に示すように、本実施形態の樹脂組成物の製造方法の変形例1では、植物繊維11と、合成樹脂12と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20とが、二軸混合機40にてスクリュー回転数250rpm、シリンダ温度200度で溶融混錬されて、樹脂組成物30が得られる。樹脂組成物30は、成形機41に注入され、高温下で射出成形されることで成形体31が得られる。
【0024】
[変形例2]
本実施形態の樹脂組成物の製造方法の変形例2について説明する。
図4に示すように、本実施形態の樹脂組成物の製造方法の変形例2では、植物繊維が配合された合成樹脂ペレット10と、第1級アミン及び第2級アミンのうち少なくとも1つを有するポリアミン20とが、二軸混合機40にてスクリュー回転数250rpm、シリンダ温度200度で溶融混錬されて、樹脂組成物として、植物繊維及びポリアミンが配合された合成樹脂ペレット32が得られる。
【0025】
本発明の樹脂組成物から作製された成形体の用途としては、特に限定されないが、自動車の外装品及び内装品、什器、文具等の日用品などに用いることができる。なお、本発明の樹脂組成物から作製された成形体は、耐熱性に優れているため、車両用灯具のハウジングまたはブラケットなど、光源などの熱源の近傍で用いられることに特に有用である。
【実施例0026】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量300のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.99対54.98対0.027で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.05重量%である。
【0028】
〔実施例2〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.99対54.98対0.027で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.05重量%である。
【0029】
〔実施例3〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量70,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.99対54.98対0.027で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.05重量%である。
【0030】
〔実施例4〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量100,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.99対54.98対0.027で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.05重量%である。
【0031】
〔実施例5〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.98対54.97対0.055で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.10重量%である。
【0032】
〔実施例6〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.27対54.11対1.623で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、3.00重量%である。
【0033】
〔実施例7〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比43.80対53.53対2.676で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、5.00重量%である。
【0034】
〔実施例8〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として針葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.98対54.97対0.055で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.10重量%である。
【0035】
〔実施例9〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として針葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリエチレンイミン(PEI)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリエチレンイミンとを重量比44.27対54.11対1.623で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、3.00重量%である。
【0036】
〔実施例10〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として針葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリアリルアミン(PAA)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリアリルアミンとを重量比44.98対54.97対0.055で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、0.10重量%である。
【0037】
〔実施例11〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として針葉樹由来の木粉を、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリアリルアミン(PAA)を使用した。ポリプロピレンと、木粉と、ポリアリルアミンとを重量比44.27対54.11対1.623で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。つまり、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量は、3.00重量%である。
【0038】
〔比較例1〕
合成樹脂としてポリプロピレン(PP)を、植物繊維として広葉樹由来の木粉を使用した。ポリプロピレンと木粉を45対55で溶融混錬し、木粉配合ポリプロピレンのペレットが作製された。
【0039】
(離型性の評価)
実施例1~11及び比較例1の木粉配合ポリプロピレンのペレットを射出成形することで試験片を作製した。射出成形における突き出し工程後の試験片と金型との接触面積を目視で確認することで、A~Eの5段階で離型性を評価した。評価は、試験片の表面の100%が金型と離間している場合にAとし、試験片の表面の70%以上100%未満が金型と離間している場合にはBとし、試験片の表面の50%以上70%未満が金型と離間している場合にはCとし、試験片の表面の20%以上50%未満が金型と離間している場合にはDとし、試験片の表面の20%未満が金型と離間している場合にはEとした。
図5には、実施例1~11及び比較例の離型性の評価結果がまとめて示されている。
【0040】
(腐食性の評価)
実施例1~11及び比較例1の木粉配合ポリプロピレンのペレットを射出成形することで100個の試験片を作製した。試験片を1個作製する毎に金型の表面の状態を確認し、金型の表面が汚染するまでに要した試験片の作製数でA~Eの5段階で腐食性を評価した。ここで金型の表面が汚染するとは、金型の表面に錆が確認された場合をいう。評価は、試験片を100個作製した時点で金型表面の汚染が確認されなかった場合にはAとし、試験片を31から99個作製した時点で金型表面の汚染が確認された場合にはBとし、試験片を11から30個作製した時点で金型表面の汚染が確認された場合にはCとし、試験片を2から10個作製した時点で金型表面の汚染が確認された場合にはDとし、試験片を1個作製した時点で金型表面の汚染が確認された場合にはEとした。
図5には、実施例1~11及び比較例の腐食性の評価結果がまとめて示されている。
【0041】
(耐熱性の評価)
実施例1~11及び比較例1の木粉配合ポリプロピレンのペレットの荷重たわみ温度の測定をISO-75に準拠して、荷重0.45MPa、昇温速度2℃/minで行った。測定は各3回ずつ行い、その平均でA~Eの5段階で耐熱性を評価した。荷重たわみ温度が140℃以上の場合にはAとし、荷重たわみ温度が130℃以上140℃未満の場合にはBとし、荷重たわみ温度が125℃以上130℃未満の場合にはCとし、荷重たわみ温度が120℃以上125℃未満の場合にはDとし、荷重たわみ温度が120℃未満の場合にはEとした。
図5には、実施例1~11及び比較例の耐熱性の評価結果がまとめて示されている。
【0042】
図5から明らかのように、ポリエチレンイミンまたはポリアクリルアミンが添加された木粉配合ポリプロピレンのペレットである実施例1~11によれば、射出成形時における金型との離型性を確保するとともに、射出成形時の金型の腐食の抑制、及び、優れた耐熱性を付与することができることが明らかである。
【0043】
特に、実施例2~11の結果から、ポリエチレンイミンの重量平均分子量が10,000以上である場合には、射出成形における突き出し後に試験片の表面の100%が金型と離間しているため、より優れた離型性を確保することができることが明らかである。また、試験片を30個以上作製するまで金型表面に汚染が確認されなかったため、より優れた腐食性を確保できることが明らかであり、荷重たわみ温度が130℃以上であるため、より優れた耐熱性を確保できることが明らかである。
【0044】
実施例5~11の結果から、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量が0.10%以上である場合には、射出成形により、試験片を100個作製した時点で金型表面の汚染が確認されなかったため、より優れた腐食性を確保することができることが明らかである。
【0045】
実施例5~6、実施例8~10の結果から、ポリエチレンイミンまたはポリアクリルアミンの重量平均分子量が10,000以上70,000以下であり、かつ、ポリエチレンイミンまたはポリアクリルアミンの木粉に対する添加量が0.05%以上3.00%以下である場合には、試験片の荷重たわみ温度が140℃以上となるため、さらに優れた耐熱性を確保することができることが明らかである。
【0046】
実施例8~11の結果から、針葉樹由来の木粉を使用した場合であっても、ポリエチレンイミンの木粉に対する添加量が0.10%以上3.00%以下である場合には、広葉樹由来の木粉を使用した場合と同様の効果を奏することが明らかである。
【0047】
実施例10~11の結果から、ポリアミンとして重量平均分子量10,000のポリアリルアミンを使用した場合であっても、ポリアリルアミンの木粉に対する添加量が0.10%以上3.00%以下である場合に、ポリアミンとしてポリエチレンイミンを使用した場合と同様の効果を奏することが明らかである。
【0048】
これに対して、ポリプロピレンと広葉樹由来の木粉からなる木粉配合ポリプロピレンのペレットである比較例1によれば、射出成形における突き出し工程後の試験片の表面の80%以上が金型と接触しており、射出成形時における金型との十分な離型性を確保されていない。また、1個の試験片の作製で金型の表面に汚染が確認されたことから、射出成形時の金型の腐食が抑制されておらず、さらに、試験片の荷重たわみ温度が120℃未満であることから、十分な耐熱性を付与することができていないことが明らかである。
【0049】
以上、本発明の樹脂組成物及び合成樹脂ペレットの製造方法並びに成形体によれば、合成樹脂と植物繊維とを含有する樹脂組成物の成形に用いる金型の腐食を抑制するとともに、金型との離型性、及び、耐熱性を向上させることができる。