(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135727
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】輸送用冷凍装置および輸送用コンテナ
(51)【国際特許分類】
F25D 17/06 20060101AFI20240927BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F25D17/06 312
F25D11/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046561
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 宏一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 麻菜里
(72)【発明者】
【氏名】武内 隆司
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA02
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045GA04
3L045HA01
3L045JA13
3L045LA06
3L045LA10
3L045MA02
3L045MA05
3L045MA13
3L045MA14
3L045NA03
3L045NA09
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA03
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3L045PA05
3L345AA05
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3L345JJ10
3L345JJ22
3L345JJ27
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】輸送用冷凍装置の消費電力を抑えつつ、庫内空間の温度を目標範囲に保つ。
【解決手段】制御器は、庫内空間の温度に基づいて、輸送用冷凍装置を冷却状態と休止状態に切り換える。輸送用冷凍装置の休止状態において、制御器は、第1動作と第2動作を順に行う。第1動作は、第1時間にわたって庫内ファンを停止状態とする動作である。第2動作は、庫内ファンが作動した状態で、輸送用冷凍装置を休止状態から冷却状態に切り換える条件の成否を判断する動作である。制御器は、輸送用冷凍装置の過去の運転に関する情報に基づいて、第1時間を決定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送用コンテナ(1)の庫内空間(5)の温度を調節する輸送用冷凍装置(10)であって、
圧縮機(31)及び庫内熱交換器(34)を有して冷凍サイクルを行う冷媒回路(30)と、
上記庫内空間(5)の庫内空気を上記庫内熱交換器(34)へ送る庫内ファン(42)と、
上記庫内空間(5)の温度を示す指標を計測する第1センサ(51)と、
上記圧縮機(31)及び上記庫内ファン(42)を制御する制御器(100)とを備え、
上記制御器(100)は、
上記第1センサ(51)の計測値に基づいて、上記輸送用冷凍装置(10)を、上記圧縮機(31)が作動して上記庫内熱交換器(34)が上記庫内空気を冷却する冷却状態と、上記圧縮機(31)が停止する休止状態とに切り換える温度調節動作を行うと共に、
上記輸送用冷凍装置(10)が上記休止状態であるときに、第1動作と第2動作を順に行い、
上記第1動作は、第1時間にわたって、上記庫内ファン(42)を停止状態とし、又は上記庫内ファン(42)を第1回転速度で作動させる動作であり、
上記第2動作は、上記庫内ファン(42)を上記第1動作中よりも高い回転速度で作動させ、上記輸送用冷凍装置(10)を上記休止状態から上記冷却状態に切り換える条件である冷却条件の成否を判断し、該冷却条件が成立するまで上記庫内ファン(42)を作動させ続ける動作であり、
上記制御器(100)は、上記輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である運転情報を記憶し、該運転情報に基づいて上記第1時間を決定する
輸送用冷凍装置。
【請求項2】
上記運転情報には、過去の上記休止状態における休止時間が含まれ、
上記休止時間は、上記輸送用冷凍装置(10)の上記休止状態の継続時間である
請求項1に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項3】
上記第2動作において、上記制御器(100)は、上記庫内ファン(42)の作動中に判断可能条件の成否を判断し、該判断可能条件が成立した後に上記冷却条件の成否を判断し、
上記運転情報には、過去の上記休止状態における待ち時間が更に含まれ、
上記待ち時間は、上記第2動作の開始から上記判断可能条件が成立するまでの時間である
請求項2に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項4】
上記判断可能条件は、上記第1センサ(51)の計測値の変化速度の時間的な変化割合が基準値よりも小さい、という条件である
請求項3に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項5】
上記制御器(100)は、前回の上記休止状態における上記休止時間から、前回の上記休止状態における上記待ち時間を減じて得られた時間を、今回の上記休止状態における上記第1時間にする
請求項3又は4に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項6】
上記制御器(100)は、
過去の上記休止状態における上記休止時間に基づいて、今回の休止状態における第2時間を決定し、
今回の休止状態における上記第2時間と、過去の上記休止状態における上記待ち時間とに基づいて、今回の上記休止状態における上記第1時間を決定する
請求項3に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項7】
上記制御器(100)は、今回の休止状態における上記第2時間から、前回の上記休止状態における上記待ち時間を減じて得られた時間を、今回の上記休止状態における上記第1時間にする
請求項6に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項8】
上記制御器(100)は、前回の上記休止状態における上記休止時間を、今回の休止状態における上記第2時間にする
請求項6又は7に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項9】
上記制御器(100)は、
前回の上記休止状態において上記判断可能条件が成立した時に上記冷却条件が成立しなかった場合は、前回の上記休止状態における上記休止時間を、今回の休止状態における上記第2時間にする一方、
前回の上記休止状態において上記判断可能条件が成立した時に上記冷却条件が成立した場合は、前回の上記休止状態における上記休止時間よりも短い時間を、今回の休止状態における上記第2時間にする
請求項6又は7に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項10】
外気の温度を計測する第2センサ(52)を備え、
上記制御器(100)は、前回の上記休止状態における上記休止時間を上記第2センサ(52)の計測値に基づいて補正して得られた時間を、今回の休止状態における上記第2時間にする
請求項6又は7に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項11】
上記冷却条件は、上記第1センサ(51)の計測値が目標範囲を上回る、という条件である
請求項1,2,3,4,6又は7に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項12】
上記第1センサ(51)は、上記庫内空間(5)から吸い込まれて上記庫内熱交換器(34)へ送られる上記庫内空気の温度を、上記庫内空間(5)の温度を示す指標として計測する
請求項1,2,3,4,6又は7に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項13】
上記制御器(100)は、上記第2動作において、上記庫内ファン(42)を上記冷却状態における最高の回転速度で作動させる
請求項1,2,3,4,6又は7に記載の輸送用冷凍装置。
【請求項14】
請求項1,2,3,4,6又は7に記載の輸送用冷凍装置(10)と、
上記輸送用冷凍装置(10)が取り付けられて上記庫内空間(5)を形成するコンテナ本体(2)とを備える
輸送用コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、輸送用冷凍装置および輸送用コンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、輸送用コンテナに取り付けられる輸送用冷凍装置が開示されている。この冷凍装置は、庫内温度を目標範囲に保つために、冷却状態と休止状態とに切り換わる。冷却状態の輸送用冷凍装置では、冷媒回路の圧縮機が作動し、庫内空気の冷却が行われる。一方、休止状態の輸送用冷凍装置では、冷媒回路の圧縮機が停止し、庫内空気の冷却が行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
休止状態の輸送用冷凍装置において、庫内ファンを冷却状態と同等の回転速度で作動させると、庫内ファンにおいて電力が消費されるため、輸送用冷凍装置の消費電力が嵩む。一方、休止状態の輸送用冷凍装置において庫内ファンを停止させると、庫内空間の温度を正確に検知できなくなり、庫内空間の温度が目標範囲から大幅に外れるおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、休止状態の輸送用冷凍装置の消費電力を抑えつつ、庫内空間の温度を目標範囲に保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、輸送用コンテナ(1)の庫内空間(5)の温度を調節する輸送用冷凍装置(10)を対象とし、圧縮機(31)及び庫内熱交換器(34)を有して冷凍サイクルを行う冷媒回路(30)と、上記庫内空間(5)の庫内空気を上記庫内熱交換器(34)へ送る庫内ファン(42)と、上記庫内空間(5)の温度を示す指標を計測する第1センサ(51)と、上記圧縮機(31)及び上記庫内ファン(42)を制御する制御器(100)とを備えるものである。上記制御器(100)は、上記第1センサ(51)の計測値に基づいて、上記輸送用冷凍装置(10)を、上記圧縮機(31)が作動して上記庫内熱交換器(34)が上記庫内空気を冷却する冷却状態と、上記圧縮機(31)が停止する休止状態とに切り換える温度調節動作を行うと共に、上記輸送用冷凍装置(10)が上記休止状態であるときに、第1動作と第2動作を順に行う。上記第1動作は、第1時間にわたって、上記庫内ファン(42)を停止状態とし、又は上記庫内ファン(42)を第1回転速度で作動させる動作であり、上記第2動作は、上記庫内ファン(42)を上記第1動作中よりも高い回転速度で作動させ、上記輸送用冷凍装置(10)を上記休止状態から上記冷却状態に切り換える条件である冷却条件の成否を判断し、該冷却条件が成立するまで上記庫内ファン(42)を作動させ続ける動作である。上記制御器(100)は、上記輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である運転情報を記憶し、該運転情報に基づいて上記第1時間を決定する。
【0007】
第1の態様において、制御器(100)は、第1動作の継続時間である第1時間を、運転情報に基づいて決定する。運転情報は、輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である。運転情報に基づいて第1時間を決定することによって、庫内空間(5)の温度が適正な範囲から外れる前に、第1動作を終了させて第2動作を開始させることが可能となる。そのため、制御器(100)が第1動作を実行中に、庫内空間(5)の温度が適正な範囲から外れる可能性が低減され、庫内空間(5)の温度が適切な範囲に保たれる時間が長くなる。
【0008】
また、制御器(100)の第1動作において、庫内ファン(42)は、停止し、又は“制御器(100)の第2動作における回転速度”よりも低い回転速度で作動する。そのため、輸送用冷凍装置(10)が休止状態であるときの庫内ファン(42)の消費電力が抑制される。
【0009】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記運転情報には、過去の上記休止状態における休止時間が含まれ、上記休止時間は、上記輸送用冷凍装置(10)の上記休止状態の継続時間であるものである。
【0010】
第2の態様において、制御器(100)は、“輸送用冷凍装置(10)の過去の休止状態”に関する休止時間に基づいて、“輸送用冷凍装置(10)の今回の休止状態”に関する第1時間を決定する。
【0011】
本開示の第3の態様は、上記第2の態様において、上記第2動作において、上記制御器(100)は、上記庫内ファン(42)の作動中に判断可能条件の成否を判断し、該判断可能条件が成立した後に上記冷却条件の成否を判断し、上記運転情報には、過去の上記休止状態における待ち時間が更に含まれ、上記待ち時間は、上記第2動作の開始から上記判断可能条件が成立するまでの時間であるものである。
【0012】
第3の態様において、第2動作中の制御器(100)は、判断可能条件の成否を判断し、判断可能条件が成立した後に冷却条件の成否を判断する。冷却条件が成立すると、制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)を休止状態から冷却状態に切り換える。
【0013】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、上記判断可能条件は、上記第1センサ(51)の計測値の変化速度の時間的な変化割合が基準値よりも小さい、という条件であるものである。
【0014】
ここで、輸送用冷凍装置(10)の休止状態では、輸送用コンテナ(1)の外部から庫内空間(5)へ侵入する熱や、庫内ファン(42)の駆動モータの発熱等に起因して、庫内空間(5)の温度が次第に上昇する。単位時間当たりに輸送用コンテナ(1)の外部や輸送用冷凍装置(10)から庫内空間(5)へ侵入する熱量について、その経時的な変化は比較的小さい。そのため、第1センサ(51)の計測値が概ね一定の割合で上昇する場合は、第1センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の温度を概ね正確に反映している、と見なすことができる。
【0015】
そこで、第4の態様の制御器(100)は、“第1センサ(51)の計測値の変化速度の時間的な変化割合が基準値よりも小さい”という条件を、判断可能条件とする。制御器(100)は、この判断可能条件が成立した後に冷却条件の成否を判断する。そのため、輸送用冷凍装置(10)が適切なタイミングで休止状態から冷却状態に切り換わり、庫内空間(5)の温度が適切な範囲に保たれる時間が長くなる。
【0016】
本開示の第5の態様は、上記第3又は第4の態様において、上記制御器(100)は、前回の上記休止状態における上記休止時間から、前回の上記休止状態における上記待ち時間を減じて得られた時間を、今回の上記休止状態における上記第1時間にするものである。
【0017】
庫内空間(5)に収容された貨物の温度が充分に低下した状態であれば、今回の休止状態の継続時間(休止時間)は、前回の休止状態の継続時間(休止時間)と概ね同じになると予想される。そのため、今回の休止状態においても、その休止状態の開始から“(前回の休止時間TA(n-1))-(前回の待ち時間TB(n-1))”が経過するまでは、庫内空間(5)の温度が目標範囲内に入っている可能性が高い。
【0018】
そこで、第5の態様の制御器(100)は、前回の休止状態における休止時間TA(n-1)と、前回の休止状態における待ち時間TB(n-1)の差を、今回の休止状態における第1時間TC(n)にする(TC(n)=TA(n-1)-TB(n-1))。
【0019】
本開示の第6の態様は、上記第3又は第4の態様において、上記制御器(100)は、過去の上記休止状態における上記休止時間に基づいて、今回の休止状態における第2時間を決定し、今回の休止状態における上記第2時間と、過去の上記休止状態における上記待ち時間とに基づいて、今回の上記休止状態における上記第1時間を決定するものである。
【0020】
第6の態様の制御器(100)は、今回の休止状態における第2時間を、過去の休止状態における休止時間に基づいて決定する。そして、制御器(100)は、今回の休止状態における第2時間と、過去の休止状態における待ち時間とに基づいて、今回の休止状態における第1時間を決定する。従って、制御器(100)は、過去の休止状態における休止時間と、過去の休止状態における待ち時間とに基づいて、今回の休止状態における第1時間を決定する。
【0021】
本開示の第7の態様は、上記第6の態様において、上記制御器(100)は、今回の休止状態における上記第2時間から、前回の上記休止状態における上記待ち時間を減じて得られた時間を、今回の上記休止状態における上記第1時間にするものである。
【0022】
第7の態様の制御器(100)は、今回の休止状態における第2時間TD(n)と、前回の休止状態における待ち時間TB(n-1)の差を、今回の休止状態における第1時間TC(n)にする(TC(n)=TD(n)-TB(n-1))。
【0023】
本開示の第8の態様は、上記第6又は第7の態様において、上記制御器(100)は、前回の上記休止状態における上記休止時間を、今回の休止状態における上記第2時間にするものである。
【0024】
第8の態様の制御器(100)は、前回の休止状態における休止時間TA(n-1)を、今回の休止状態における第2時間TD(n)に設定する(TD(n)=TA(n-1))。
【0025】
本開示の第9の態様は、上記第6又は第7の態様において、上記制御器(100)は、前回の上記休止状態において上記判断可能条件が成立した時に上記冷却条件が成立しなかった場合は、前回の上記休止状態における上記休止時間を、今回の休止状態における上記第2時間にする一方、前回の上記休止状態において上記判断可能条件が成立した時に上記冷却条件が成立した場合は、前回の上記休止状態における上記休止時間よりも短い時間を、今回の休止状態における上記第2時間にするものである。
【0026】
第9の態様では、前回の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立するか否かによって、第2時間に設定される時間が異なる。
【0027】
前回の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかった場合、今回の休止状態における休止時間は、前回の休止状態における休止時間と同程度になると予想される。そこで、この場合、第9の態様の制御器(100)は、前回の休止状態における休止時間TA(n-1)を、今回の休止状態における第2時間TD(n)にする(TD(n)=TA(n-1))。
【0028】
一方、前回の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立した場合、今回の休止状態における休止時間は、前回の休止状態における休止時間よりも短くなると予想される。そこで、この場合、第9の態様の制御器(100)は、前回の休止状態における休止時間TA(n-1)よりも短い時間を、今回の休止状態における第2時間TD(n)にする(TD(n)<TA(n-1))。
【0029】
本開示の第10の態様は、上記第6又は第7の態様において、外気の温度を計測する第2センサ(52)を備え、上記制御器(100)は、前回の上記休止状態における上記休止時間を上記第2センサ(52)の計測値に基づいて補正して得られた時間を、今回の休止状態における上記第2時間にするものである。
【0030】
輸送用冷凍装置の休止状態の継続時間は、外気温度の影響を受ける。通常、休止状態の継続時間は、外気温度が低いほど長くなり、外気温度が高いほど短くなる。そこで、第10の態様の制御器は、前回の休止状態における休止時間TA(n-1)を第2センサ(52)の計測値(外気温度の実測値)に基づいて補正して得られた時間を、今回の休止状態における第2時間TD(n)にする。
【0031】
本開示の第11の態様は、第1~第10のいずれか一つの態様において、上記冷却条件は、上記第1センサ(51)の計測値が目標範囲を上回る、という条件であるものである。
【0032】
第11の態様の制御器(100)は、第2動作の実行中に第1センサ(51)の計測値が目標範囲を上回ると、輸送用冷凍装置(10)を休止状態から冷却状態に切り換える。
【0033】
本開示の第12の態様は、第1~第11のいずれか一つの態様において、上記第1センサ(51)は、上記庫内空間(5)から吸い込まれて上記庫内熱交換器(34)へ送られる上記庫内空気の温度を、上記庫内空間(5)の温度を示す指標として計測するものである。
【0034】
第12の態様において、第1センサ(51)は、庫内熱交換器(34)の上流において計測した庫内空気の温度を、庫内空間(5)の温度を示す指標として計測する。
【0035】
本開示の第13の態様は、第1~第12のいずれか一つの態様において、上記制御器(100)は、上記第2動作において、上記庫内ファン(42)を上記冷却状態における最高の回転速度で作動させるものである。
【0036】
第13の態様では、第2動作において、庫内ファン(42)が冷却状態における最高の回転速度で作動する。そのため、第2動作の開始から判断可能条件が成立するまでの時間(待ち時間)が短縮される。
【0037】
本開示の第14の態様は、第1~第13のいずれか一つの態様の輸送用冷凍装置(10)と、上記輸送用冷凍装置(10)が取り付けられて上記庫内空間(5)を形成するコンテナ本体(2)とを備える輸送用コンテナ(1)である。
【0038】
第14の態様の輸送用コンテナ(1)には、上記第1~第13のいずれか一つの態様の輸送用冷凍装置(10)と、コンテナ本体(2)とが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、実施形態の輸送用冷凍装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の輸送用冷凍装置と、輸送用冷凍装置が設けられた輸送用コンテナの概略の縦断面図である。
【
図3】
図3は、輸送用冷凍装置の冷媒回路の構成を示す配管系統図である。
【
図4】
図4は、輸送用冷凍装置の制御器の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、制御器の動作を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、1回目から3回目までの休止状態を含む期間における、庫内温度の経時変化と輸送用冷凍装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示す期間とは異なる期間における、庫内温度の経時変化と輸送用冷凍装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、
図6及び
図7に示す期間とは異なる期間における、庫内温度の経時変化と輸送用冷凍装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、輸送用冷凍装置の休止状態における庫内空間の温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
実施形態の輸送用冷凍装置(10)は、輸送用コンテナ(1)に設けられる。輸送用コンテナ(1)は、庫内の温度管理か可能なリーファーコンテナ(reefer container)である。
【0042】
図1及び
図2に示すように、輸送用コンテナ(1)は、コンテナ本体(2)と、輸送用冷凍装置(10)とを備える。本実施形態の輸送用コンテナ(1)は、海上輸送に用いられる。輸送用コンテナ(1)は、船舶に積み込まれる。
【0043】
-コンテナ本体-
コンテナ本体(2)は、中空の箱状に形成される。コンテナ本体(2)は、横長に形成される。コンテナ本体(2)の長手方向の一端には、開口が形成される。コンテナ本体(2)の開口は、輸送用冷凍装置(10)によって塞がれる。コンテナ本体(2)の庫内には、貨物を収納するための庫内空間(5)が形成される。
【0044】
-輸送用冷凍装置-
輸送用冷凍装置(10)は、コンテナ本体(2)の開口に取り付けられる。輸送用冷凍装置(10)は、ケーシング(11)と、冷媒回路(30)と、制御器(100)とを備える。輸送用冷凍装置(10)は、庫内空間(5)の温度を調節する。
【0045】
〈ケーシング〉
図2に示すように、ケーシング(11)は、隔壁(12)と仕切板(15)とを備える。
【0046】
隔壁(12)の内側には、庫内流路(20)が形成される。隔壁(12)の外側には、庫外室(25)が形成される。庫内流路(20)と庫外室(25)とは、隔壁(12)によって仕切られる。
【0047】
隔壁(12)は、庫外壁(13)と庫内壁(14)とを備える。庫外壁(13)は、コンテナ本体(2)の外側に位置する。庫内壁(14)は、コンテナ本体(2)の内側に位置する。
【0048】
庫外壁(13)は、コンテナ本体(2)の開口を塞いでいる。庫外壁(13)は、コンテナ本体(2)の開口の周縁部に取り付けられる。庫外壁(13)の下部は、コンテナ本体(2)の内側に向かって膨出する。庫外室(25)は、この膨出した庫外壁(13)によって形成される。
【0049】
庫内壁(14)は、庫外壁(13)と対向する。庫内壁(14)は、庫外壁(13)に沿った形状を有する。庫内壁(14)は、庫外壁(13)と間隔を置いて配置される。庫内壁(14)と庫外壁(13)との間には、断熱材(16)が設けられる。
【0050】
仕切板(15)は、庫内壁(14)よりもコンテナ本体(2)の内側に配置される。隔壁(12)と仕切板(15)との間には、庫内流路(20)が形成される。仕切板(15)の上端とコンテナ本体(2)の天板との間には、流入口(21)が形成される。仕切板(15)の下端と隔壁(12)の下端との間には、流出口(22)が形成される。庫内流路(20)は、流入口(21)から流出口(22)に亘って形成される。
【0051】
〈冷媒回路〉
図3に示すように、冷媒回路(30)は、圧縮機(31)と、庫外熱交換器(32)と、膨張弁(33)と、庫内熱交換器(34)とを配管で接続することによって形成された閉回路である。圧縮機(31)を作動させると、冷媒回路(30)を冷媒が循環し、蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0052】
図2に示すように、圧縮機(31)は、庫外室(25)の下部に配置される。圧縮機(31)は、例えば全密閉型のスクロール圧縮機である。圧縮機(31)は、回転速度が変更可能である。圧縮機(31)の回転速度が変化すると、圧縮機(31)の運転容量が変化する。
【0053】
庫外熱交換器(32)は、庫外室(25)の上部に配置される。庫外熱交換器(32)は、冷媒を庫外空気と熱交換させるフィンアンドチューブ熱交換器である。庫外熱交換器(32)の形状は、概ね矩形の筒状である。庫内熱交換器(34)は、庫内流路(20)を横断するように配置される。庫内熱交換器(34)は、冷媒を庫内空気と熱交換させるフィンアンドチューブ熱交換器である。
【0054】
〈庫外ファン〉
輸送用冷凍装置(10)は、1つの庫外ファン(41)を備える。庫外ファン(41)は、プロペラファンである。庫外ファン(41)は、庫外室(25)に配置される。また、庫外ファン(41)は、筒状に形成された庫外熱交換器(32)の内側に配置される。庫外ファン(41)は、庫外熱交換器(32)へ庫外空気を送る。
【0055】
〈庫内ファン〉
輸送用冷凍装置(10)は、2つの庫内ファン(42)を備える。庫内ファン(42)は、プロペラファンである。庫内ファン(42)は、庫内流路(20)に配置される。また、庫内ファン(42)は、庫内熱交換器(34)の上方に配置される。庫内ファン(42)は、庫内熱交換器(34)へ庫内空気を送る。庫内ファン(42)は、回転速度が2段階に変更可能である。庫内ファン(42)は、停止状態と、低い回転速度で作動する低速状態と、高い回転速度で作動する高速状態とに切り換わる。
【0056】
〈電装品箱〉
図1に示すように、輸送用冷凍装置(10)は、電装品箱(45)を有する。電装品箱(45)は、庫外室(25)の上部に配置される。電装品箱(45)の内部には、インバータ基板及び制御基板等の電気部品が収容される。また、
図1では図示を省略するが、電装品箱(45)の内部には、制御器(100)が収容される。
【0057】
〈センサ〉
図2に示すように、輸送用冷凍装置(10)は、吸込空気温度センサ(51)と、外気温度センサ(52)とを備える。
【0058】
吸込空気温度センサ(51)は、庫内流路(20)における庫内ファン(42)の上流に配置される。吸込空気温度センサ(51)は、庫内空間(5)から流入口(21)を通って庫内流路(20)へ流入した庫内空気の温度を計測する。また、吸込空気温度センサ(51)は、庫内ファン(42)及び庫内熱交換器(34)を通過する前の庫内空気の温度を計測する。吸込空気温度センサ(51)は、第1センサである。吸込空気温度センサ(51)は、庫内空間(5)から吸い込まれて庫内熱交換器(34)へ送られる庫内空気の温度を、庫内空間(5)の温度を示す指標として計測する。
【0059】
外気温度センサ(52)は、庫外室(25)における庫外熱交換器(32)の上流に配置される。外気温度センサ(52)は、庫外室(25)へ流入して庫外熱交換器(32)へ向かう庫外空気(外気)の温度を計測する。この外気温度センサ(52)は、庫外熱交換器(32)を通過する前の庫外空気の温度を計測する。外気温度センサ(52)は、外気の温度を計測する第2センサである。
【0060】
〈制御器〉
図4に示すように、制御器(100)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータ(101)と、マイクロコンピュータ(101)を動作させるためのソフトウエアを格納するメモリーデバイス(105)とを含む。メモリーデバイス(105)は、半導体メモリである。制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)の構成機器を制御する。制御器(100)には、吸込空気温度センサ(51)の計測値と、外気温度センサ(52)の計測値とが入力される。
【0061】
制御器(100)のマイクロコンピュータ(101)は、メモリーデバイス(105)に格納されたプログラムを実行することによって、庫内空間(5)の温度を目標範囲に保つための温度調節動作を行う。制御器(100)は、圧縮機(31)及び庫内ファン(42)の制御を行う。
【0062】
-輸送用冷凍装置の運転動作-
輸送用冷凍装置(10)の基本的な運転動作について説明する。輸送用冷凍装置(10)は、冷却状態と休止状態とに切り換え可能である。
【0063】
冷却状態の輸送用冷凍装置(10)では、圧縮機(31)、庫外ファン(41)、庫内ファン(42)が作動し、冷媒回路(30)において冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(30)では、庫外熱交換器(32)が凝縮器として機能し、庫内熱交換器(34)が蒸発器として機能する。庫外熱交換器(32)では、冷媒が庫外空気へ放熱し、凝縮する。庫内熱交換器(34)では、冷媒が庫内空気から吸熱し、蒸発する。庫内熱交換器(34)は、庫内空気を冷却する。
【0064】
コンテナ本体(2)の庫内空気は、庫内空間(5)から流入口(21)を通って庫内流路(20)へ流入する。庫内流路(20)を流れる庫内空気は、庫内熱交換器(34)によって冷却される。庫内熱交換器(34)によって冷却された庫内空気は、流出口(22)を通って庫内空間(5)へ供給される。
【0065】
一方、休止状態の輸送用冷凍装置(10)では、圧縮機(31)及び庫外ファン(41)が停止する。そのため、冷媒回路(30)において冷凍サイクルは行われず、庫内熱交換器(34)における庫内空気の冷却は行われない。
【0066】
-制御器の動作-
制御器(100)は、温度調節動作を行う。温度調節動作は、吸込空気温度センサ(51)の計測値に基づいて、輸送用冷凍装置(10)を冷却状態と休止状態とに相互に切り換える動作である。
【0067】
温度調節動作において、制御器(100)は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が目標範囲内に保たれるように、輸送用冷凍装置(10)を冷却状態と休止状態とに相互に切り換える。目標範囲は、設定温度Ts±α℃の範囲である。言い換えると、目標範囲は、(Ts-α)℃以上(Ts+α)℃以下の温度範囲である。
【0068】
設定温度Tsは、庫内空間(5)に収容される貨物に応じて、作業者によって設定される。本実施形態において、設定温度Tsは、貨物を凍結した状態で搬送するための温度(例えば、-18℃)に設定される。αは、所定の定数である。本実施形態において、αは、例えば「1℃」である。
【0069】
また、制御器(100)は、温度調節動作中に輸送用冷凍装置(10)が休止状態になった場合に、第1動作と第2動作を順に行う。
【0070】
制御器(100)が行う動作について、
図5のフロー図に基づいて説明する。輸送用冷凍装置(10)の運転中において、制御器(100)温度調節動作は、
図5のフロー図に示す温度調節動作を繰り返し行う。
【0071】
輸送用冷凍装置(10)に対する電力の供給が開始され、作業者が輸送用冷凍装置(10)の起動させる操作を行うと、輸送用冷凍装置(10)が冷却状態となり、庫内熱交換器(34)において庫内空気が冷却される。輸送用冷凍装置(10)が冷却状態であるときに、制御器(100)は、
図5のフロー図に示す処理を開始する。
【0072】
〈ステップST1〉
ステップST1の処理において、制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)が冷却状態であるときに、休止条件の成否を判断する。休止条件は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が目標範囲の最低値(本実施形態では、(Ts-α)℃)よりも低い、という条件である。休止条件が成立した場合、制御器(100)は、ステップST2の処理を行う。一方、休止条件が成立しない場合、制御器(100)は、ステップST1の処理を再び行う。
【0073】
〈ステップST2〉
ステップST2の処理において、制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)を冷却状態から休止状態に切り換える。具体的に、制御器(100)は、圧縮機(31)と庫外ファン(41)とを停止させる。圧縮機(31)が停止すると、冷媒回路(30)における冷凍サイクルが停止し、庫内熱交換器(34)における庫内空気の冷却が停止する。制御器(100)は、ステップST2の処理の次に、ステップST3の処理を行う。
【0074】
〈ステップST3〉
ステップST3の処理において、制御器(100)は、今回の休止状態が、輸送用冷凍装置(10)の起動後における1回目の休止状態か否かを判断する。今回の休止状態が1回目の休止状態である場合、制御器(100)は、ステップST4の処理を行う。一方、今回の休止状態が1回目の休止状態でない場合、制御器(100)は、ステップST8の処理を行う。
【0075】
〈ステップST4〉
ステップST4の処理において、制御器(100)は、庫内ファン(42)の運転を継続させる。
図6のタイミングチャートに示すように、制御器(100)は、1回目の休止状態において、庫内ファン(42)を、休止条件が成立する前から引き続いて、低速状態で作動させる。制御器(100)は、ステップST4の処理の次に、ステップST5の処理を行う。
【0076】
〈ステップST5〉
ステップST5の処理において、制御器(100)は、冷却条件の成否を判断する。冷却条件は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が目標範囲の最高値(本実施形態では、(Ts+α)℃)よりも高い、という条件である。冷却条件が成立した場合、制御器(100)は、ステップST6の処理を行う。一方、冷却条件が成立しない場合、制御器(100)は、ステップST5の処理を再び行う。
【0077】
〈ステップST6〉
ステップST6の処理において、制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)を休止状態から冷却状態に切り換える。具体的に、制御器(100)は、圧縮機(31)と庫外ファン(41)とを作動させる。圧縮機(31)が起動すると、冷媒回路(30)において冷凍サイクルが行われ、庫内熱交換器(34)において庫内空気が冷却される。制御器(100)は、ステップST6の処理の次に、ステップST7の処理を行う。
【0078】
〈ステップST7〉
ステップST7の処理において、制御器(100)は、1回目の休止状態の継続時間を、1回目の休止状態における休止時間TA(1)として、メモリーデバイス(105)に記録する。1回目の休止状態の継続時間は、ステップST2の処理によって輸送用冷凍装置(10)が冷却状態から休止状態に切り換わった時点から、ステップST6の処理によって輸送用冷凍装置(10)が休止状態から冷却状態に切り換わった時点までの経過時間である。制御器(100)は、ステップST7の処理が終了すると、温度調節動作を一旦終了する。その後、制御器(100)は、温度調節動作を再開し、ステップST1の処理を行う。
【0079】
〈ステップST8〉
ステップST3の処理において、今回の休止状態が1回目ではないと判断された場合、制御器(100)は、ステップST8の処理を行う。つまり、制御器(100)は、今回の休止状態が2回目以降の休止状態である場合に、ステップST8の処理を行う。
【0080】
ステップST8の処理において、制御器(100)は、庫内ファン(42)を停止させ、第1動作を開始する。第1動作は、第1時間にわたって庫内ファン(42)を停止状態に保持する動作である。制御器(100)は、ステップST8の処理の次に、ステップST9の処理を行う。
【0081】
〈ステップST9〉
ステップST9の処理において、制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定する。上述したように、第1時間は、第1動作の継続時間である。
【0082】
メモリーデバイス(105)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)及び待ち時間TB(n-1)を、輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である運転情報として記憶している。制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)及び待ち時間TB(n-1)をメモリーデバイス(105)から読み出し、それらを用いた演算処理を行うことによって、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定する。制御器(100)は、ステップST9の処理の次に、ステップST10の処理を行う。
【0083】
なお、制御器(100)が今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定する処理については、後ほど説明する。また、「待ち時間」についても、後ほど説明する。
【0084】
〈ステップST10〉
ステップST10の処理において、制御器(100)は、第1動作を開始してから、ステップST9の処理によって決定した第1時間TC(n)が経過したか否かを判断する。第1動作の開始から第1時間TC(n)が経過した場合、制御器(100)は、ステップST11の処理を行う。一方、第1動作の開始から第1時間TC(n)が経過していない場合、制御器(100)は、ステップST10の処理を再び行う。
【0085】
このように、制御器(100)は、第1動作の開始から第1時間TC(n)が経過するまで、庫内ファン(42)を停止状態に保持する。制御器(100)は、ステップST8からステップST10までの処理を、第1動作として行う。
【0086】
〈ステップST11〉
ステップST11の処理において、制御器(100)は、第1動作を終了して第2動作を開始する。この処理において、制御器(100)は、庫内ファン(42)を起動して第2動作を開始する。第2動作において、制御器(100)は、庫内ファン(42)を低速状態で作動させる。制御器(100)は、ステップST11の処理の次に、ステップST12の処理を行う。
【0087】
ここで、第1動作中は、庫内ファン(42)が停止しており、庫内ファン(42)の回転速度は実質的にゼロである。一方、第2動作において、制御器(100)は、庫内ファン(42)を低速状態で作動させる。従って、第2動作中には、庫内ファン(42)が、第1動作中よりも高い回転速度で作動する。
【0088】
〈ステップST12〉
ステップST12の処理において、制御器(100)は、判断可能条件の成否を判断する。判断可能条件は、冷却条件の成否を判断できる状態であることを示す条件である。
【0089】
制御器(100)が第1動作を実行している状態では、庫内ファン(42)が停止する。庫内ファン(42)が停止した状態では、庫内空間(5)の空気が攪拌がされないため、庫内空間(5)の温度が不均一となる。そのため、第2動作を開始した制御器(100)が庫内ファン(42)を起動させてからしばらくの間は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の正確な温度を示さない状態になる。吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間の正確な温度を示さない状態では、冷却条件の成否を判断できない。
【0090】
そこで、制御器(100)は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の正確な温度に相当することを示す条件を判断可能条件とし、この判断可能条件の成否を判断する。判断可能条件については、後ほど説明する。
【0091】
判断可能条件が成立した場合、制御器(100)は、ステップST13の処理を行う。一方、判断可能条件が成立しない場合、制御器(100)は、ステップST12の処理を再び行う。
【0092】
〈ステップST13〉
ステップST3の処理において、制御器(100)は、第2動作の開始から判断可能条件が成立するまでの経過時間を、今回(n回目)の休止状態における待ち時間TB(n)として、メモリーデバイス(105)に記録する。今回(n回目)の休止状態における待ち時間TB(n)は、ステップST11の処理において制御器(100)が第2動作を開始した時点から、ステップST12の処理において判断可能条件が成立した時点までの経過時間である。制御器(100)は、ステップST13の処理の次に、ステップST14の処理を行う。
【0093】
〈ステップST14〉
ステップST14の処理において、制御器(100)は、冷却条件の成否を判断する。ステップST14の処理は、ステップST5の処理と同じである。
【0094】
冷却条件は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が目標範囲の最高値(本実施形態では、(Ts+α)℃)よりも高い、という条件である。冷却条件が成立した場合、制御器(100)は、ステップST15の処理を行う。一方、冷却条件が成立しない場合、制御器(100)は、ステップST14の処理を再び行う。
【0095】
制御器(100)は、ステップST11からステップST14までの処理を、第2動作として行う。第2動作は、庫内ファン(42)をさせた状態で冷却条件の成否を判断し、冷却条件が成立するまで庫内ファン(42)を作動させ続ける動作である。
【0096】
〈ステップST15〉
ステップST15の処理において、制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)を休止状態から冷却状態に切り換える。ステップST15の処理は、ステップST6の処理と同じである。
【0097】
具体的に、制御器(100)は、圧縮機(31)と庫外ファン(41)とを作動させる。圧縮機(31)が起動すると、冷媒回路(30)において冷凍サイクルが行われ、庫内熱交換器(34)において庫内空気が冷却される。制御器(100)は、ステップST15の処理の次に、ステップST16の処理を行う。
【0098】
〈ステップST16〉
ステップST16の処理において、制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態の継続時間を、今回(n回目)の休止状態における休止時間TA(n)として、メモリーデバイス(105)に記録する。今回(n回目)の休止状態の継続時間は、ステップST2の処理によって輸送用冷凍装置(10)が冷却状態から休止状態に切り換わった時点から、ステップST15の処理によって輸送用冷凍装置(10)が休止状態から冷却状態に切り換わった時点までの経過時間である。
【0099】
また、ステップST16の処理において、制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態に関する第1情報を、メモリーデバイス(105)に記録する。第1情報は、判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立したか否かを示す情報である。言い換えると、第1情報は、判断可能条件が成立した時点で冷却条件が成立したか否かを示す情報である。
【0100】
ステップST13の処理の終了後における1回目のステップST14の処理において冷却条件が成立した場合、制御器(100)は、判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立したことを示す情報を、第1情報としてメモリーデバイス(105)に記録する。一方、ステップST13の処理の終了後における1回目のステップST14の処理において冷却条件が成立しなかった場合、制御器(100)は、判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかったことを示す情報を、第1情報としてメモリーデバイス(105)に記録する。
【0101】
制御器(100)は、ステップST16の処理が終了すると、温度調節動作を一旦終了する。その後、制御器(100)は、温度調節動作を再開し、ステップST1の処理を行う。
【0102】
-第1時間を決定する処理(ステップST9)-
今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定する処理(ステップST9の処理)について説明する。
【0103】
メモリーデバイス(105)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)及び待ち時間TB(n-1)と、前回(n-1回目)の休止状態に関する第1情報とを、輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である運転情報として記憶している。制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)及び待ち時間TB(n-1)をメモリーデバイス(105)から読み出し、それらを用いた演算処理を行う。
【0104】
また、制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態に関する第1情報に対応した演算処理を行う。具体的に、前回(n-1回目)の休止状態に関する第1情報が“判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかったことを示す情報”である場合、制御器(100)は、第1演算処理を行う。一方、前回(n-1回目)の休止状態に関する第1情報が“判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立したことを示す情報”である場合、制御器(100)は、第2演算処理を行う。
【0105】
〈第1演算処理〉
図7に示す例では、前回(n-1回目)の休止状態において、時刻t1に判断可能条件が成立し、それから時間が経過した時刻t2に冷却条件が成立する。従って、今回(n回目)の休止状態に関するステップST9の処理において、制御器(100)がメモリーデバイス(105)から読み出した“前回(n-1回目)の休止状態に関する第1情報”は、“判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかったことを示す情報”である。そこで、この例において、制御器(100)は、ステップST9の処理において第1演算処理を行う。
【0106】
前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかった場合、今回(n回目)の休止状態における休止時間TA(n)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)と同程度になると予想される。そのため、今回(n回目)の休止状態においても、その休止状態の開始から“(前回の休止時間TA(n-1))-(前回の待ち時間TB(n-1))”が経過するまでは、庫内空間(5)の温度が目標範囲に入っている可能性が高い。
【0107】
そこで、第1演算処理において、制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)を、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)に設定する(TD(n)=TA(n-1))。
【0108】
次に、制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)から、前回(n-1回目)の休止状態における待ち時間TB(n-1)を減ずる演算を行い、その演算によって得られた時間を、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)に設定する。つまり、第1演算処理において、制御器(100)は、下記の数式1に示す演算を行う。
(数式1)TC(n)=TD(n)-TB(n-1)=TA(n-1)-TB(n-1)
【0109】
〈第2演算処理〉
図8の例に示すように、前回(n-1回目)の休止状態において、制御器(100)の第1動作によって庫内ファン(42)が停止している間に、庫内空間(5)の温度が大幅に上昇する場合がある。例えば、前回(n-1回目)の休止状態の途中でコンテナ本体(2)の扉が開かれて外気が庫内空間(5)へ流入すると、庫内ファン(42)の停止中に庫内空間(5)の温度が大幅に上昇する。そのため、
図8に示す例では、前回(n-1回目)の休止状態において、時刻t3に判断可能条件が成立し、それと実質的に同時に冷却条件が成立する。
【0110】
図8に示す例では、今回(n回目)の休止状態に関するステップST9の処理において、制御器(100)がメモリーデバイス(105)から読み出した“前回(n-1回目)の休止状態に関する第1情報”は、“判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立したことを示す情報”である。そこで、この例において、制御器(100)は、ステップST9の処理において第2演算処理を行う。
【0111】
前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立した場合、今回(n回目)の休止状態における休止時間TA(n)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)よりも短くなると予想される。そのため、今回(n回目)の休止状態では、その休止状態の開始から“(前回の休止時間TA(n-1))-(前回の待ち時間TB(n-1))”が経過した時点において、庫内空間(5)の温度が目標範囲を上回っている可能性がある。
【0112】
そこで、第2演算処理において、制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)よりも短い時間を、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)に設定する。具体的に、制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)に係数βを乗じる演算を行い、この演算によって得られた時間を、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)に設定する(TD(n)=TA(n-1)×β)。係数βは、1未満の定数である(β<1)。本実施形態において、係数β=0.9である。
【0113】
次に、制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)から、前回(n-1回目)の休止状態における待ち時間TB(n-1)を減ずる演算を行い、その演算によって得られた時間を、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)に設定する。つまり、第2演算処理において、制御器(100)は、下記の数式2に示す演算を行う。
(数式2)TC(n)=TD(n)-TB(n-1)=TA(n-1)×β-TB(n-1)
【0114】
〈待ち時間の初期値〉
上述したように、第1演算処理および第2演算処理では、前回(n-1回目)の休止状態における待ち時間TB(n-1)が用いられる。そのため、2回目の休止状態におけるステップST9の処理では、1回目の休止状態における待ち時間TB(1)が必要である。
【0115】
しかし、制御器(100)は、1回目の休止状態において行う動作(
図5のステップST4からステップST7までの動作)において、判断可能条件の成否を判断しない。従って、1回目の休止状態における待ち時間TB(1)は、実際には存在しない。
【0116】
そこで、メモリーデバイス(105)は、1回目の休止状態における待ち時間TB(1)として、予め定められた時間を記憶する。本実施形態において、1回目の休止状態における待ち時間TB(1)は、庫内空間の容積Vを、庫内ファン(42)が低速状態で作動しているときに流出口(22)から吹き出される空気の流量Fで除した値(V/F)に設定される。本実施形態の待ち時間TB(1)は、例えば「2分」である。
【0117】
-判断可能条件-
判断可能条件は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の正確な温度に相当することを示す条件である。ここでは、判断可能条件について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、制御器(100)が第2動作を行っているときの吸込空気温度センサ(51)の計測値の経時変化を示す。
【0118】
輸送用冷凍装置(10)が休止状態である間は、庫内熱交換器(34)において庫内空気が冷却されないため、庫内空間(5)の温度が次第に上昇する。そのため、制御器(100)が第2動作を開始して庫内ファン(42)が起動すると、制御器(100)が第1動作を実行している間に温度上昇した庫内空気が庫内流路(20)へ流入し、吸込空気温度センサ(51)の計測値が比較的急激に上昇する。
【0119】
制御器(100)が第2動作を実行している間には、吸込空気温度センサ(51)の計測値の時間的な上昇割合(変化速度)が次第に小さくなる。一方、制御器(100)が第2動作を実行している間は、庫内ファン(42)が作動するため、庫内ファン(42)の駆動モータが発熱する。そのため、制御器(100)が第2動作を開始してからある程度の時間が経過し、庫内空間(5)の空気が充分に攪拌された状態になると、吸込空気温度センサ(51)の計測値の変化速度が概ね一定となる。
図9に示す例では、時刻t以降において、吸込空気温度センサ(51)の計測値の変化速度が概ね一定となっている。
【0120】
このように、吸込空気温度センサ(51)の計測値の変化速度が概ね一定となった状態では、庫内空間(5)の空気が充分に攪拌された状態になっており、吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の温度と実質的に一致すると見なすことができる。吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の温度と実質的に一致していれば、吸込空気温度センサ(51)の計測値に基づいて冷却条件の成否を判断できる。
【0121】
そこで、本実施形態の制御器(100)は、“吸込空気温度センサ(51)の計測値の変化速度の時間的な変化割合が基準値(例えば、0.05)よりも小さい”という条件を、“冷却条件の成否を判断できる状態であることを示す判断可能条件”としている。
【0122】
-実施形態の特徴(1)-
本実施形態の制御器(100)の制御器(100)は、輸送用冷凍装置(10)が休止状態であるときに、第1動作と第2動作を順に行う。第1動作において、制御器(100)は、第1時間に亘って、庫内ファン(42)を停止状態に保持する。そのため、輸送用冷凍装置(10)の休止状態において庫内ファン(42)が作動し続ける場合に比べて、休止状態の輸送用冷凍装置(10)の消費電力を削減できる。
【0123】
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)は、第1動作の次に第2動作を行う。第2動作において、制御器(100)は、庫内ファン(42)を作動させた状態で冷却条件の成否を判断し、冷却条件が成立するまで庫内ファン(42)を作動させ続ける。第2動作中は、庫内ファン(42)が作動するため、吸込空気温度センサ(51)の計測値と、庫内空間(5)の温度との相関性が高くなる。そのため、輸送用冷凍装置(10)を適切なタイミングで休止状態から冷却状態に切り換えることができ、庫内空間(5)の温度を目標範囲に保つことができる。
【0124】
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)は、第1動作の継続時間である第1時間を、運転情報に基づいて決定する。運転情報は、輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である。この運転情報に基づいて第1時間を決定するため、庫内空間(5)の温度が目標範囲から外れる前に、制御器(100)が第1動作を終了して第2動作を開始する。そのため、制御器(100)が第1動作を実行中に、庫内空間(5)の温度が目標範囲から外れる可能性が低減される。
【0125】
-実施形態の特徴(2)-
本実施形態の制御器(100)は、“輸送用冷凍装置(10)の過去の休止状態”における休止時間および待ち時間を、運転情報として記憶する。そして、この制御器(100)は、“輸送用冷凍装置(10)の過去の休止状態”に関する休止時間および待ち時間に基づいて、“輸送用冷凍装置(10)の今回の休止状態”に関する第1時間を決定する。
【0126】
具体的に、本実施形態の制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定する処理において、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)及び待ち時間TB(n-1)を、運転情報として用いる。
【0127】
庫内空間(5)に収容された貨物の温度が充分に低下した状態であれば、今回の休止状態の継続時間(休止時間TA(n))は、前回の休止状態の継続時間(休止時間TA(n-1))と概ね同じになると予想される。そのため、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)及び待ち時間TB(n-1)を用いて今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定することによって、庫内空間(5)の温度が目標範囲から外れる前に制御器(100)に第2動作を開始させることができる可能性が高くなる。従って、本実施形態によれば、制御器(100)が第1動作において庫内ファン(42)を停止状態に保持した場合であっても、庫内空間(5)の温度を目標範囲内に保つことができる。
【0128】
-実施形態の特徴(3)-
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)から、前回(n-1回目)の休止状態における待ち時間TB(n-1)を減ずる演算を行い、その演算によって得られた時間を、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)に設定する(TC(n)=TD(n)-TB(n-1))。
【0129】
前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかった場合、本実施形態の制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)を、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)に設定する(TD(n)=TA(n-1))。
【0130】
上述したように、前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかった場合は、今回(n回目)の休止状態においても、休止状態の開始から“(前回の休止時間TA(n-1))-(前回の待ち時間TB(n-1))”が経過するまでは、庫内空間(5)の温度が目標範囲内に入っている可能性が高い。従って、この場合には、制御器(100)が前回の休止時間TA(n-1)を今回の第2時間TD(n)に設定することによって、庫内空間(5)の温度を目標範囲に保つことができる。
【0131】
一方、前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立した場合、制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)よりも短い時間を、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)に設定する(TD(n)<TA(n-1))。
【0132】
上述したように、前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立した場合、今回(n回目)の休止状態では、その休止状態の開始から“(前回の休止時間TA(n-1))-(前回の待ち時間TB(n-1))”が経過した時点において、庫内空間(5)の温度が目標範囲を上回っている可能性がある。従って、この場合には、制御器(100)が前回の休止時間TA(n-1)よりも短い時間を今回の第2時間TD(n)に設定することによって、庫内空間(5)の温度を目標範囲に保つことができる。
【0133】
-実施形態の特徴(4)-
輸送用冷凍装置(10)の休止状態では、輸送用コンテナ(1)の外部から庫内空間(5)へ侵入する熱や、庫内ファン(42)の駆動モータの発熱等に起因して、庫内空間(5)の温度が次第に上昇する。単位時間当たりに輸送用コンテナ(1)の外部や輸送用冷凍装置(10)から庫内空間(5)へ侵入する熱量について、その経時的な変化は比較的小さい。そのため、吸込空気温度センサ(51)の計測値が概ね一定の割合で上昇する場合は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が庫内空間(5)の温度と実質的に一致している、と見なすことができる。
【0134】
そこで、本実施形態の制御器(100)は、“吸込空気温度センサ(51)の計測値の変化速度の時間的な変化割合が基準値よりも小さい”という条件を、判断可能条件とする。制御器(100)は、この判断可能条件が成立した後に冷却条件の成否を判断する。そのため、輸送用冷凍装置(10)を適切なタイミングで休止状態から冷却状態に切り換えることができ、庫内空間(5)の温度を目標範囲に保つことができる。
【0135】
-実施形態の変形例-
本実施形態の輸送用冷凍装置(10)には、以下に示すような変形例を適用できる。
【0136】
〈第1変形例〉
本実施形態の制御器(100)は、第1動作において、庫内ファン(42)を、低速状態の回転速度よりも更に低い第1回転速度で作動させるように構成されていてもよい。第1回転速度は、輸送用冷凍装置(10)が冷却状態であるときの“庫内ファン(42)の最低の回転速度”よりも低い回転速度である。
【0137】
低速状態の回転速度は、輸送用冷凍装置(10)が冷却状態であるときの庫内ファン(42)の最低の回転速度である。従って、本変形例によれば、制御器(100)の第1動作中における庫内ファン(42)の消費電力を、休止状態においても冷却状態と同じ回転速度で庫内ファン(42)を作動させ続けた場合に比べて、削減することができる。
【0138】
〈第2変形例〉
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)は、第1演算処理と第2演算処理のうちの第1演算処理だけを行うように構成されていてもよい。
【0139】
例えば、輸送の開始から終了までの間にコンテナ本体(2)の扉が開かれる可能性が全く無い用途に輸送用コンテナ(1)が用いられる場合は、制御器(100)が第1演算処理だけを行うように構成されていても、庫内空間(5)の温度を目標範囲に保つことができる。
【0140】
また、本変形例の制御器(100)は、下記のように構成されていてもよい。前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立しなかった場合、本変形例の制御器(100)は、第1演算処理を行うことによって、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を決定する。一方、前回(n-1回目)の休止状態において判断可能条件が成立した時に冷却条件が成立した場合、本変形例の制御器(100)は、今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)を、予めメモリーデバイス(105)に記録された初期値に設定する。
【0141】
〈第3変形例〉
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)は、下記のような第1演算処理を行うように構成されていてもよい。
【0142】
本変形例の第1演算処理において、制御器(100)は、前回(n-1回目)の休止状態における休止時間TA(n-1)を、外気温度センサ(52)の計測値を用いて補正し、補正した休止時間TA(n-1)を、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)に設定する。具体的に、本変形例の制御器(100)は、第1演算処理において、下記の数式3に示す演算を、第1演算処理として行う。
(数式3)TD(n)=TA(n-1)×(ΔTh(n)/ΔTh(n-1))
【0143】
ΔTh(n)は、今回(n回目)の休止状態の開始時点における外気温度センサ(52)の計測値To(n)と吸込空気温度センサ(51)の計測値Ti(n)の差である(ΔTh(n)=To(n)-Ti(n))。ΔTh(n-1)は、前回(n-1回目)の休止状態の開始時点における外気温度センサ(52)の計測値To(n-1)と吸込空気温度センサ(51)の計測値Ti(n-1)の差である(ΔTh(n-1)=To(n-1)-Ti(n-1))。
【0144】
本変形例の制御器(100)において、メモリーデバイス(105)は、前回(n-1回目)の休止状態の開始時点における外気温度センサ(52)の計測値To(n-1)と吸込空気温度センサ(51)の計測値Ti(n-1)とを、輸送用冷凍装置(10)の過去の運転に関する情報である運転情報として記憶する。
【0145】
〈第4変形例〉
本実施形態の制御器(100)は、第2動作において、庫内ファン(42)を高速状態で作動させるように構成されていてもよい。制御器(100)が第2動作において庫内ファン(42)を高い回転速度で作動させると、判断可能条件が成立するまでに要する時間である「待ち時間」が短くなる。
【0146】
本変形例の制御器(100)は、冷却条件が成立して輸送用冷凍装置(10)を休止状態から冷却状態に切り換える際に、庫内ファン(42)を高速状態から低速状態に切り換える。
【0147】
〈第5変形例〉
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)は、毎回の休止状態において判断可能条件の成否を判断するのではなく、複数回の休止状態のうちの一回において判断可能条件の成否を判断するように構成されていてもよい。
【0148】
例えば、三回の冷却状態のうちの一回において制御器(100)が判断可能条件の成否を判断する場合、制御器(100)は、n回目の休止状態において判断可能条件の成否を判断する一方、n+1回目とn+2回目の休止状態においては、第2動作の開始から“n回目の休止状態における待ち時間TB(n)”が経過すると冷却条件の成否を判断する。
【0149】
〈第6変形例〉
本実施形態の制御器(100)において、制御器(100)が行う第1演算処理と第2演算処理は、単なる一例である。制御器(100)は、例えば、今回(n回目)の休止状態における第2時間TD(n)から、前回(n-1回目)の休止状態における待ち時間TB(n-1)を減じて得られた時間(TD(n)-TB(n-1))を補正し、補正した時間を今回(n回目)の休止状態における第1時間TC(n)に設定するように構成されていてもよい。この補正の一例としては、所定の補正係数を乗ずる演算や、所定の定数を加算し又は減算する演算などが挙げられる。
【0150】
〈第7変形例〉
本実施形態の制御器(100)において、庫内空間(5)の温度に関する目標範囲は、(Ts-α)℃よりも高く、(Ts+α)℃よりも低い温度範囲であってもよい。本変形例において、休止条件は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が目標範囲の最低値(本実施形態では、(Ts-α)℃)以下である、という条件である。また、本変形例において、冷却条件は、吸込空気温度センサ(51)の計測値が目標範囲の最高値(本実施形態では、(Ts+α)℃)以上である、という条件である。
【0151】
〈第8変形例〉
本実施形態の輸送用冷凍装置(10)では、流出口(22)から吹き出される空気の温度を計測する吹出空気温度センサを設け、吹出空気温度センサの計測値を、庫内空間(5)の温度を示す指標として用いてもよい。本変形例では、吹出空気温度センサが、庫内空間(5)の温度を示す指標を計測する第1センサとなる。
【0152】
〈第9変形例〉
本実施形態の制御器(100)において、庫内空間(5)の設定温度Tsは、貨物を凍結しない状態で搬送するための温度(例えば、5℃)に設定されていてもよい。
【0153】
〈第10変形例〉
本実施形態の輸送用コンテナ(1)は、トラックや鉄道などで輸送される陸上輸送用のものであってもよい。また、陸上輸送に用いられる輸送用コンテナ(1)は、トラックやトレーラーの車台に対して着脱可能であってもよいし、車台と一体に構成されたものであってもよい。
【0154】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書および特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上説明したように、本開示は、輸送用冷凍装置および輸送用コンテナについて有用である。
【符号の説明】
【0156】
1 輸送用コンテナ
2 コンテナ本体
5 庫内空間
10 輸送用冷凍装置
30 冷媒回路
31 圧縮機
34 庫内熱交換器
51 吹出空気温度センサ(第1センサ)
52 外気温度センサ(第2センサ)
100 制御器