(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135729
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
F04B 1/0408 20200101AFI20240927BHJP
F04B 1/0421 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
F04B1/0408
F04B1/0421
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046564
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北本 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB02
3H070CC07
3H070CC12
3H070CC22
3H070DD09
3H070DD28
3H070DD72
3H070DD96
(57)【要約】
【課題】シリンダ内の残圧を効果的に抜くことが可能なシリンダ装置および流体機械を提供する。
【解決手段】シリンダ装置は、往復運動可能なピストンと、内部をピストンが往復運動することによって容積が変化する作動室を構成するシリンダと、を備え、ピストンとシリンダとの接触する部分において、ピストンの往復運動方向に延びて作動室の内外を連通させる流路を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動可能なピストンと、
内部を前記ピストンが往復運動することによって容積が変化する作動室を構成するシリンダと、
を備え、
前記ピストンと前記シリンダとの接触する部分において、前記ピストンの往復運動方向に延びて前記作動室の内外を連通させる流路を有する、
シリンダ装置。
【請求項2】
前記流路は、前記ピストンが前記往復運動において第1の位置にある場合は、前記作動質の内外を連通させ、前記ピストンが前記往復運動において前記第1の位置よりも上死点側の第2の位置にある場合は、前記作動室の内外を連通させない、
請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記流路は、前記ピストンおよび前記シリンダの何れか一方に形成された溝である
請求項1又は2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記溝は、前記一方の先端部から、前記ピストンが下死点に位置した際に前記作動室の内外を連通させることが可能な位置まで延びている、
請求項3に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記一方は、前記溝の、前記一方の前記先端部側とは反対側の端部に接続され、前記ピストンの円周方向に沿って形成される円周溝を有する、
請求項4に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
往復運動可能なピストンと、
内部を前記ピストンが往復運動することによって容積が変化する作動室を構成するシリンダと、
前記作動室と高圧ポートとの間の流体の流路を開放/閉塞する高圧バルブと、
前記作動室と低圧ポートとの間の流体の流路を開放/閉塞する低圧バルブと、
通電されることで、前記高圧バルブおよび前記低圧バルブの各流路を開放/閉塞させる電磁ソレノイドと、
前記ピストンの上死点と下死点との間の往復運動に応じて前記電磁ソレノイドの通電を制御する制御部と、
を備え、
前記ピストンと前記シリンダとの接触する部分において、前記ピストンの往復運動方向に延びて前記作動室の内外を連通させる流路を有する、
流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンダ装置および流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、クランクシャフトの軸周上に配置される複数のシリンダと、シリンダのそれぞれと共に、クランクシャフトの回転に連動して容積変化する複数の作動室のそれぞれを形成する複数のピストンとを有する流体機械が知られている。
【0003】
このような流体機械には、作動室のそれぞれと低圧ポートとの連通・閉鎖を行う複数の低圧バルブと、作動室のそれぞれと高圧ポートとの連通・閉鎖を行う複数の高圧バルブと、これらのバルブのそれぞれを駆動する複数のソレノイドと、を有するバルブ装置が設けられている。
【0004】
バルブ装置では、ソレノイドが低圧バルブおよび高圧バルブのそれぞれを駆動し、作動室のそれぞれにおける作動流体が吸入・吐出することで、複数のシリンダにおいてポンピングまたはモータリングが行われる。ポンピングまたはモータリングが行われる際、高圧バルブおよび低圧バルブの何れか一方を閉塞し、かつ、高圧バルブおよび低圧バルブの何れか他方を開放する制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各バルブの開閉タイミングがずれると、不具合が発生するおそれがある。例えば、モータリングにおいて、吸入工程の終わり際に、高圧バルブを閉塞してシリンダの圧力を下げ、シリンダの圧力が低圧ライン圧に到達することで、低圧バルブが開放することで、モータリングが終了する。この際に、高圧バルブを閉塞するタイミングが遅れると、シリンダの圧力が下がりきる前に、ピストンが下死点を通過してしまい、低圧バルブが開放されないまま、圧縮工程に入ることでポンピングが開始される状態に陥る。
【0007】
このような不具合を抑制するため、ピストンが下死点位置に到達した際に、クランク室に連通する孔を、シリンダまたはピストンに開け、シリンダ内の残圧を抜くための流路を設けることが考えられる。しかし、孔では、流体を十分に流せる大きさにすると、クランク室と連通する期間をできる限り短くすることが困難になる。また、クランク室と連通する期間は吸入工程と吐出工程とで対称であるため、連通期間が長い場合、吐出工程で無駄なストロークが増大する。
【0008】
本開示の目的は、シリンダ内の残圧を効果的に抜くことが可能なシリンダ装置および流体機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るシリンダ装置は、
往復運動可能なピストンと、
内部を前記ピストンが往復運動することによって容積が変化する作動室を構成するシリンダと、
を備え、
前記ピストンと前記シリンダとの接触する部分において、前記ピストンの往復運動方向に延びて前記作動室の内外を連通させる流路を有する。
【0010】
本開示に係る流体機械は、
往復運動可能なピストンと、
内部を前記ピストンが往復運動することによって容積が変化する作動室を構成するシリンダと、
前記作動室と高圧ポートとの間の流体の流路を開放/閉塞する高圧バルブと、
前記作動室と低圧ポートとの間の流体の流路を開放/閉塞する低圧バルブと、
通電されることで、前記高圧バルブおよび前記低圧バルブの各流路を開放/閉塞させる電磁ソレノイドと、
前記ピストンの上死点と下死点との間の往復運動に応じて前記電磁ソレノイドの通電を制御する制御部と、
を備え、
前記ピストンと前記シリンダとの接触する部分において、前記ピストンの往復運動方向に延びて前記作動室の内外を連通させる流路を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、シリンダ内の残圧を効果的に抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態に係るシリンダ装置を備えた流体機械を示す図である。
【
図2A】非通電状態にあるソレノイドの一例を概略的に示す説明図である。
【
図2B】通電状態にあるソレノイドの一例を概略的に示す説明図である。
【
図3】本実施の形態に係るシリンダ装置のピストンを示す図である。
【
図4A】通常のモータリング時のシリンダ内の圧力変化を示す図である。
【
図4B】高圧バルブの閉塞タイミングが起こされた際のシリンダ内の圧力変化を示す図である。
【
図5A】通常のモータリング時のトルクの変化を示す図である。
【
図5B】高圧バルブの閉塞タイミングが起こされた際のトルクの変化を示す図である。
【
図6A】シリンダ装置の作用効果について説明するための図である。
【
図6B】シリンダ装置の作用効果について説明するための図である。
【
図7】横孔を有するシリンダを備える構成を示す図である。
【
図10】変形例に係るシリンダ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係るシリンダ装置を備えた流体機械1を示す図である。
【0014】
図1に示すように、流体機械1は、機械と流体との間でエネルギー変換をする装置である。ここで、「流体」とは、流体機械1の中で動力を伝達する媒体である。ここでは、流体の一例として作動油を挙げて説明する。流体機械1は、電子制御式可変容量型ポンプモータ2、高圧バルブ3、低圧バルブ4、高圧ポート5、低圧ポート6、電磁ソレノイド7(
図3A参照)、クランクシャフト8、および、制御部10を備える。
【0015】
電子制御式可変容量型ポンプモータ2は、複数(
図1では、4個)のピストンシリンダ21を有している。複数のピストンシリンダ21は、クランクシャフト8の軸周上に所定の間隔で配置される。クランクシャフト8はカム部8Aを有している。ピストンシリンダ21は、本開示の「シリンダ装置」に対応する。
【0016】
複数のピストンシリンダ21のそれぞれは、ピストン22と、シリンダ23とを有する。ピストン22は、クランクシャフト8の回転運動に連動して並進運動(往復運動)をする。シリンダ23は、ピストン22の並進運動によって容積が変化する作動室(チャンバ)を構成する。
【0017】
高圧バルブ3は、複数のピストンシリンダ21のそれぞれに対応して配置され、作動室と高圧ポート5との間の流体の流路を開放/閉塞する。
【0018】
低圧バルブ4は、複数のピストンシリンダ21のそれぞれに対応して配置され、作動室と低圧ポート6との間の流体の流路を開放/閉塞する。
【0019】
高圧ポート5は、高圧ラインを介して例えば高圧タンク(不図示)や、油圧アクチュエータ(不図示)に接続されている。
【0020】
低圧ポート6は、低圧ラインを介して例えば作動油を貯留する油タンク(不図示)に接続されている。なお、油タンクは大気圧下に置かれる。
【0021】
図2Aおよび
図2Bは、電磁ソレノイド7の一例を概略的に示す図である。
図2Aは、非通電状態にある電磁ソレノイド7の一例を概略的に示す図である。
図2Bは、通電状態にある電磁ソレノイド7の一例を概略的に示す図である。電磁ソレノイド7は、複数のピストンシリンダ21のそれぞれに対応して配置される。電磁ソレノイド7の通電に応じて、高圧バルブ3および低圧バルブ4の開閉が制御される。
【0022】
高圧バルブ3は、電磁ソレノイド7が非通電状態である場合、作動室と高圧ポート5との間の流路を閉塞し、電磁ソレノイド7が通電状態である場合、作動室と高圧ポート5との間の流路を開放する。
【0023】
低圧バルブ4は、電磁ソレノイド7が非通電状態である場合、作動室と低圧ポート6との間の流路を開放し、電磁ソレノイド7が通電状態である場合、作動室と低圧ポート6との間の流路を閉塞する。
【0024】
制御部10は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、等からなるマイクロコンピュータと入出力装置とを備えるECU(Electronic Control Unit)である。ECUの入力回路には、クランクシャフト8の回転位相を検出するための検出部(不図示)が接続されている。制御部10は、クランクシャフト8の回転位相に応じて電磁ソレノイド7への通電を制御する。
【0025】
制御部10は、各電磁ソレノイド7への通電を制御して、低圧バルブ4および高圧バルブ3の駆動を制御する。これにより、作動室のそれぞれにおける流体が吸入・吐出されることで、シャフトの回転周期上に配置される複数のシリンダのそれぞれがポンピングまたはモータリングを行うように制御され得る。また、作動室のそれぞれにおける流体が吸入・吐出されることで、ポンピングおよびモータリングのいずれも行わないようにも制御され得る。
【0026】
ここで、「ポンピング」は、作動室の膨張時に低圧ポート6から流体(作動油)を吸入し、作動室の圧縮時に高圧ポート5に流体を流出することである。作動室の膨張時には、作動室と高圧ポート5とが連通せず、作動室と低圧ポート6とが連通する。作動室の圧縮時には、作動室と低圧ポート6とが連通せず、作動室と高圧ポート5とが連通する。
【0027】
また、「モータリング」は、作動室の圧縮時に低圧ポート6に流体を吐出し、作動室の膨張時に高圧ポート5から流体を吸入することである。作動室の圧縮時には、作動室と高圧ポート5とが連通せず、作動室と低圧ポート6とが連通する。作動室の膨張時には、作動室と低圧ポート6とが連通せず、作動室と高圧ポート5とが連通する。
【0028】
次に、シリンダ装置(ピストンシリンダ21)の詳細について説明する。
【0029】
なお、本実施の形態のシリンダ装置に関する構造を説明するにあたり、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。X方向およびY方向は、例えば、シリンダ装置の水平方向を示し、Z方向はシリンダ装置の垂直方向を示す。
【0030】
ピストンシリンダ21は、上述の通り、ピストン22と、シリンダ23とを有する。ピストン22は、上述の通り、クランクシャフト8の回転運動に連動して、シリンダ23の内部を往復運動可能に構成されている。ピストン22のシリンダ23の内壁と接触する部分の一部には、溝22Aが形成されている。
【0031】
溝22Aは、ピストン22の往復運動方向(Z方向)に延びており、作動室の内外を連通させる流路である。作動室の外部は、ピストンシリンダ21等を収容するクランクケース内のクランク室であっても良い。
【0032】
具体的には、溝22Aは、ピストン22の先端部から、ピストン22が下死点に位置した際に作動室の内外を連通させることが可能な位置まで延びている。つまり、溝22Aの長さは、例えば、ピストン22が下死点に到達したタイミングでは、作動室の内外を連通させ、ピストン22が下死点以外の位置(下死点よりも上死点側の位置)であるタイミングでは、作動室の内外を連通させない長さであっても良い。
【0033】
なお、溝22Aの長さは、ピストン22が下死点から微小なクランク角度(例えば、10度)、ずれた位置に対応する長さであっても良い。
【0034】
以上のように構成された本実施の形態に係るシリンダ装置の作用効果について説明する。
【0035】
流体機械1では、制御部10の制御の下、ピストン22の上死点と下死点との間の往復運動に応じて電磁ソレノイド7の通電が制御される。
【0036】
例えば、モータリング時においては、シリンダ23における作動室内の圧力変化は、
図4Aに示すようなものとなる。
図4Aにおける縦軸は、作動室内の圧力を示し、横軸は、ピストンの位置を示している。横軸においては、ピストン22が上死点から下死点に到達した後、再び上死点に戻ってきたサイクルが示されている。
【0037】
モータリングにおいては、作動室の膨張時、つまり、ピストン22が上死点から下死点に向けて移動する際においては、作動室と低圧ポート6とが連通せず、作動室と高圧ポート5とが連通する。つまり、制御部10の制御の下、上死点から下死点までピストン22が移動する際において、高圧バルブ3の流路が開放状態とされ、低圧バルブ4が閉塞状態になるように電磁ソレノイド7が制御される。
【0038】
そして、制御部10の制御の下、ピストン22が下死点に到達する前に高圧バルブ3の流路を開放状態から閉塞状態になるように電磁ソレノイド7が制御される。これにより、ピストン22が下死点に近づくにつれ、作動室内の圧力が低下していき、下死点に対応する位置において、低圧バルブ4の流路を開放状態にすることが可能な程度まで作動室内の圧力が低下する。
【0039】
そうすると、制御部10の制御の下、低圧バルブ4の流路が閉塞状態から開放状態にされるように電磁ソレノイド7が制御される。その結果、作動室の圧縮時において、ピストン22が下死点から上死点に向けて移動する際において、低圧バルブ4が開放状態とされ、高圧バルブ3が閉塞状態とされる。
【0040】
この場合、ピストン22が上死点に近づき、高圧バルブ3の流路が開放状態にされるまでの間、作動室内の圧力は、低圧ライン圧で推移する。
【0041】
しかし、モータリング時において、高圧バルブ3の流路を閉塞状態にするタイミングが遅れると、不具合が発生するおそれがある。高圧バルブ3の流路を閉塞状態にするタイミングが遅れる場合とは、例えば、流体(作動油)の温度が低くて、電磁ソレノイド7のアクチュエータの移動が通常より遅れる場合が挙げられる。その他には、比較的大きな振動がバルブにかかっていた際に慣性力の影響を受けて、高圧バルブ3の流路を閉塞するタイミングに変動が生じる場合、電磁ソレノイド7を通電する際の電流の立ち上がりが遅れる場合等が挙げられる。
【0042】
高圧バルブ3の流路を閉塞状態にするタイミングが遅れた場合、
図4Bに示すように、ピストン22が下死点に近づくにつれ、作動室内の圧力が低下するが、下死点に対応する位置において、作動室内の圧力が、低圧ライン圧に下がりきる前に、ピストン22が下死点に到達する。この場合、低圧バルブ4の流路を開放するように電磁ソレノイド7が制御されても、低圧バルブ4の流路が開放状態にならない可能性がある。
【0043】
そうすると、低圧バルブ4の流路が開放されないまま、ピストン22が下死点を通過してしまい、ポンピングが開始される状態になる、ジャダリングが発生する。具体的には、ピストン22が下死点を通過した後、作動室内の圧力が上昇していき、
図4Aとは異なる圧力変化となる。
【0044】
図5Aに示すように、通常のモータリングでは、ピストン22が上死点から下死点に移動する際に、所定のトルクが発生し、ピストン22が下死点から上死点に移動する際には、トルクが発生しない。
図5Aの縦軸は、電子制御式可変容量型ポンプモータ2のトルクを示し、横軸は、ピストンの位置を示している。
【0045】
しかし、
図5Bに示すように、ジャダリングが発生した場合、ピストン22が下死点から上死点に移動する際に、ピストン22が上死点から下死点に移動する際に発生するトルクを相殺するようなトルクが発生する。また、ジャダリングにより、シリンダ23内が1周期、高圧の状態が続くことがある。
【0046】
ジャダリング中は、流体機械1において流体の交換が行われないので、何周期もジャダリングが続くと、クランクシャフト8とピストン22との間の焼き付きの原因となる。
【0047】
本実施の形態では、高圧バルブ3の流路を閉塞状態にするタイミングが遅れた場合であっても、
図6Aに示すように、ピストン22が下死点に到達した際、溝22Aにより、作動室の内外が連通する。その結果、作動室内の残圧が溝22Aを介して抜けるので(破線参照)、上記のジャダリングの発生を抑制することができる。すなわち、本実施の形態では、シリンダ23内の残圧を効果的に抜くことができる。
【0048】
なお、ピストン22が下死点を過ぎると、
図6Bに示すように、溝22Aの部分がシリンダ23の内壁によって閉塞されるので、シリンダ23から無駄に圧力が抜けることがなくなるようになっている。すなわち、溝22Aによって形成されるシリンダ23の作動室の内外を連通させるための流路は、ピストン22が往復運動における下死点近傍の第1の位置にあるとき、作動室の内外を連通させ、ピストン22が往復運動における第1の位置よりも上死点側の第2の位置にあるとき、作動室の内外を連通させない。これにより、ピストン22が下死点近傍にある場合の残圧を抜くことを実現する一方で、下死点を過ぎた状態で圧力が低下することを抑制することができる。
【0049】
また、シリンダ23内の残圧を抜く構成としては、例えば、
図7に示すように、シリンダ23の側壁に横孔24を開ける構成が考えられる。しかし、横孔24では、十分に残圧が抜ける程度の径にすると、作動室の内外が連通する期間をできる限り短くすることが困難になる。また、作動室の内外が連通する期間は、吸入工程と吐出工程とで対称であるので、連通期間が長いと吐出工程で無駄なストロークを増大させるおそれがある。
【0050】
それに対し、本実施の形態では、ピストン22が下死点に到達したタイミングで溝22Aを介して作動室の内外が連通するので、作動室の内外が連通する期間を短くすることができ、また、ピストン22のストロークを増大させることを抑制することができる。すなわち、本実施の形態では、シリンダ23内の残圧を効果的に抜くことができる。
【0051】
なお、上記実施の形態では、1つの溝22Aのみが設けられていたが、本開示はこれに限定されず、
図8に示すように、複数の溝22Aが設けられていても良い。
図8には、2つの溝22Aが設けられている例が示されているが、溝の数はこれに限定されない。例えば、各溝の断面積の合計値(任意に設定可能)に応じて、溝の数が決定されても良い。
【0052】
また、複数の溝22Aが均等に配置されていても良いし、均等に配置されていなくても良い。
【0053】
また、上記実施の形態では、Z方向に延びる溝のみが設けられていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図9に示すように、ピストン22の円周方向に沿って形成される円周溝22Bが設けられていても良い。
【0054】
円周溝22Bは、溝22Aの、ピストンの先端部側とは反対側の端部に接続される位置に形成されている。つまり、円周溝22Bは、ピストン22が下死点に位置した際に、溝22Aを介して、作動室の内外を連通させる位置に設けられている。
【0055】
これによれば、ピストン22が下死点に位置した際に、円周溝22Bの部分の全体が、シリンダ23から露出した状態になるので、溝22Aおよび円周溝22Bで構成する、残圧を抜くための流路の断面積を比較的大きくすることができる。その結果、溝22Aを介して作動室内の残圧を抜きやすくすることができる。また、マージンを見て溝22Aを長くする必要もなくなるので、ピストン22のストロークを短くすることができる。
【0056】
また、上記実施の形態では、ピストン22側に溝22Aが形成されていたが、本開示はこれに限定されず、
図10に示すように、シリンダ23側に溝23Aが形成されていても良い。
【0057】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示のシリンダ装置は、シリンダ内の残圧を効果的に抜くことが可能なシリンダ装置および流体機械として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 流体機械
2 電子制御式可変容量型ポンプモータ
3 高圧バルブ
4 低圧バルブ
5 高圧ポート
6 低圧ポート
7 電磁ソレノイド
8 クランクシャフト
8A カム部
10 制御部
21 ピストンシリンダ
22 ピストン
22A 溝
22B 円周溝
23 シリンダ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動可能なピストンと、
内部を前記ピストンが往復運動することによって容積が変化する作動室を構成するシリンダと、
前記作動室と高圧ポートとの間の流体の流路を開放/閉塞する高圧バルブと、
前記作動室と低圧ポートとの間の流体の流路を開放/閉塞する低圧バルブと、
通電されることで、前記高圧バルブおよび前記低圧バルブの各流路を開放/閉塞させる電磁ソレノイドと、
前記ピストンの上死点と下死点との間の往復運動に応じて前記電磁ソレノイドの通電を制御する制御部と、
を備え、
前記ピストンと前記シリンダとの接触する部分において、前記ピストンの往復運動方向に延びて前記作動室の内外を連通させる流路を有する、
流体機械。
【請求項2】
前記流路は、前記ピストンが前記往復運動において第1の位置にある場合は、前記作動室の内外を連通させ、前記ピストンが前記往復運動において前記第1の位置よりも上死点側の第2の位置にある場合は、前記作動室の内外を連通させない、
請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記流路は、前記ピストンおよび前記シリンダの何れか一方に形成された溝である
請求項1又は2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記溝は、前記一方の先端部から、前記ピストンが下死点に位置した際に前記作動室の内外を連通させることが可能な位置まで延びている、
請求項3に記載の流体機械。
【請求項5】
前記一方は、前記溝の、前記一方の前記先端部側とは反対側の端部に接続され、前記ピストンの円周方向に沿って形成される円周溝を有する、
請求項4に記載の流体機械。