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特開2024-135730硬化物層を基板から剥離する剥離方法、パターン化された硬化物層を備える基板の製造方法、及び剥離液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135730
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】硬化物層を基板から剥離する剥離方法、パターン化された硬化物層を備える基板の製造方法、及び剥離液
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/30 502D
H01L21/30 572B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046565
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】平野 勲
(72)【発明者】
【氏名】青山 洋平
【テーマコード(参考)】
2H196
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196LA02
2H196LA03
5F146AA31
5F146MA02
5F157AA34
5F157AA91
5F157BC12
5F157BC54
5F157BE42
5F157BE59
5F157BE60
5F157BE63
5F157BF12
5F157BF49
5F157BF52
5F157BF53
5F157BF59
5F157BF62
5F157BF63
5F157BF72
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】金属へのダメージを抑制しつつ、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる硬化物層を基板から剥離可能な、硬化膜の剥離方法と、前述の方法により硬化物層が剥離された基板上にインプリント法によってパターン化された硬化物層を備える基板の製造方法と、前述の方法において好ましく使用され得る剥離液とを提供すること。
【解決手段】基板上に形成された、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる硬化物層を酸含有洗浄液と接触させた後に、基板上の硬化物層を、無機塩基化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)を含む剥離液と接触させることにより、基板上に形成された硬化物層を剥離する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された硬化物層を、前記基板から剥離する剥離方法であって、
前記剥離方法が、
前記硬化物層を、酸含有洗浄液と接触させることと、
前記硬化物層を、剥離液と接触させることにより、前記基板から剥離させることと、を含み、
前記硬化物層は、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなり、
前記剥離液が、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含み、
前記無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む、剥離方法。
【請求項2】
前記酸含有洗浄液が、有機スルホン酸化合物を含有する、請求項1に記載の剥離方法。
【請求項3】
前記基板が、その表面にアルミニウム含有層を備え、前記硬化物層が、前記アルミニウム含有層上に形成されている、請求項1又は2に記載の剥離方法。
【請求項4】
前記水溶性アルカノールアミン(B)が、トリアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、及びN-アルキルモノアルカノールアミンから選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の剥離方法。
【請求項5】
60℃以上100℃以下の温度において、10分以上60分以下、前記硬化物層と、前記剥離液とを接触させる、請求項1又は2に記載の剥離方法。
【請求項6】
前記硬化物層が、
前記基板上に、前記感光性組成物の塗布膜を形成することと、
前記塗布膜に、モールドを圧接させ、前記塗布膜に前記モールドの形状を転写することと、
前記モールドが圧接した状態で、前記塗布膜を露光して硬化させることにより、パターン化された硬化物層を形成することと、
前記モールドを、前記硬化物層から離すことと、
を含む方法により形成された硬化物層である、請求項1又は2に記載の剥離方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の方法により前記硬化物層が剥離された基板上に、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなり、パターン化された硬化物層をインプリント法によって形成することを含む、パターン化された硬化物層を備える基板の製造方法。
【請求項8】
無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含み、
前記無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む、剥離液。
【請求項9】
前記水溶性アルカノールアミン(B)が、トリアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、及びN-アルキルモノアルカノールアミンから選択される1種以上である、請求項8に記載の剥離液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された硬化物層を基板から剥離する剥離方法と、前述の方法により硬化物層が剥離された基板上にパターン化された硬化物層を形成する基板の製造方法と、剥離液と、に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の基板を加工して、種々の素子を製造する際、基板上にレジスト膜に代表する有機膜が形成されることが多い。しかし、基板上に形成された有機膜に欠陥が発生することがしばしばある。この場合、基板を再利用する目的で、有機膜が基板から剥離される。典型的には、有機膜は、有機膜を剥離液に接触させることにより基板から剥離される。このような剥離液としては、例えば、ノボラック樹脂を含むポジ型レジスト組成物がベークされた有機膜の剥離に用いられる剥離液が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/061064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、種々の素子を製造する際に、基板上に、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる有機膜が形成されることも多い。このため、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる有機膜を基板上から良好に剥離できる剥離液が求められている。
また、製造される素子の種類に応じて、金属基板が使用されたり、その表面に金属膜や金属配線等を備える基板が使用される場合がある。この場合、有機膜を剥離液により基板から剥離することにより、金属にダメージが生じることがある。
以上より、金属へのダメージを抑制しつつ、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる有機膜を基板から剥離可能な方法が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属へのダメージを抑制しつつ、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる硬化物層を基板から剥離可能な、硬化膜の剥離方法と、前述の方法により硬化物層が剥離された基板上にインプリント法によってパターン化された硬化物層を備える基板の製造方法と、前述の方法において好ましく使用され得る剥離液とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、基板上に形成された、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる硬化物層を酸含有洗浄液と接触させた後に、基板上の硬化物層を、無機塩基化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)を含む剥離液と接触させることにより、基板上に形成された硬化物層を剥離することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の第1の態様は、基板上に形成された硬化物層を、基板から剥離する剥離方法であって、
剥離方法が、硬化物層を、酸含有洗浄液と接触させることと、
酸含有洗浄液と接触した硬化物層を、剥離液と接触させることにより、基板から剥離させることと、を含み、
硬化物層は、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなり、
剥離液が、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含み、
無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む、剥離方法である。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる方法により硬化物層が剥離された基板上に、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなり、パターン化された硬化物層をインプリント法によって形成する、パターン化された硬化物層を備える基板の製造方法である。
【0009】
本発明の第3の態様は、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含み、
無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む、剥離液である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属へのダメージを抑制しつつ、(メタ)アクリル化合物を含む感光性組成物の硬化物からなる硬化物層を基板から剥離可能な、硬化膜の剥離方法と、前述の剥離方法により無機塩基化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含む剥離液と、酸含有洗浄液とを用いて、基板上に形成された硬化物層を剥離する剥離方法と、硬化物層が剥離された基板上にインプリント法によってパターン化された硬化物層を備える基板の製造方法と、剥離液とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪硬化物層を基板から剥離する剥離方法≫
以下、硬化物層を基板から剥離する剥離方法(以下単に「剥離方法」とも呼ぶ。)について説明する。
【0012】
剥離方法は、基板上に形成された硬化物層を、基板から剥離する剥離方法である。
硬化物層は、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなる。
上記の剥離方法は、硬化物層を、酸含有洗浄液と接触させることと、
酸含有洗浄液と接触した硬化物層を、剥離液と接触させることにより、基板から剥離させることと、を含む。
剥離液は、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含む。
無機塩基性化合物(A)は、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む。
【0013】
上記の通り、硬化物層を、剥離液と接触させる前に、硬化物層を、酸洗含有浄液と接触させる。硬化物層を酸含有洗浄液に接触させることにより、硬化物層が変性する。これにより、硬化物層を剥離液に接触させた際の硬化物層の剥離性が向上し、硬化物層の剥離を短時間で行うことができる。
【0014】
≪剥離液≫
以下、後述する硬化物層を基板から剥離する剥離方法において好適に用いられる剥離液について説明する。
【0015】
剥離液は、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含む。
無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む。
【0016】
<無機塩基性化合物(A)>
無機塩基性化合物(A)としては、20℃において、水溶液の状態でブレンステッドの定義による塩基性を示す化合物であれば特に限定されない。
無機塩基性化合物(A)としては、例えば、アンモニアと、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を含む塩基性無機化合物とが挙げられる。アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を含む塩基性無機化合物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウム等のケイ酸塩;メタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウム等のメタケイ酸塩;リン酸ナトリウム、及びリン酸カリウム等のリン酸塩が挙げられる。これらの中でも、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムが好ましい。
【0017】
上記の通り、無機塩基性化合物(A)は、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む。無機塩基性化合物(A)は、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムとともに、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウム以外のその他の無機塩基性化合物を1種以上含んでいてもよい。
剥離液中の無機塩基性化合物(A)の含有量は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。無機塩基性化合物(A)の含有量は、剥離液の質量に対して、0.5質量%以上12質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
メタケイ酸ナトリウムの含有量と、リン酸ナトリウムの含有量との合計は、無機塩基性化合物(A)の全質量に対し、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2.5質量%以上12質量%以下がより好ましい。
メタケイ酸ナトリウムの質量と、リン酸ナトリウムの質量との合計に対するメタケイ酸ナトリウムの質量の比率は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。メタケイ酸ナトリウムの質量と、リン酸ナトリウムの質量との合計に対するメタケイ酸ナトリウムの質量の比率は、20質量%以上90質量%以上が好ましく、30質量%以上80質量以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
【0018】
<水溶性アルカノールアミン(B)>
水溶性アルカノールアミン(B)としては、第3級アルカノールアミン、第2級アルカノールアミン、及び第1級アルカノールアミンのいずれも使用することができる。これらの水溶性アルカノールアミン(B)は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
第3級アルカノールアミンとしては、例えば、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリn-プロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及びメタノールジエタノールアミン等のトリアルカノールアミン;N-メチルジメタノールアミン、N-エチルジメタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジn-プロパノールアミン、N-エチルジn-プロパノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、及びN-エチルジイソプロパノールアミン等のN-アルキルジアルカノールアミンが挙げられる。
第2級アルカノールアミンとしては、例えば、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジn-プロパノールアミン、及びジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミン;N-メチルメタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルn-プロパノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルメタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-エチルn-プロパノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、N-n-プロピルメタノールアミン、N-n-プロピルエタノールアミン、N-n-プロピルn-プロパノールアミン、N-n-プロピルイソプロパノールアミン、N-イソプロピルメタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-イソプロピルn-プロパノールアミン、及びN-イソプロピルイソプロパノールアミン等のN-アルキルモノアルカノールアミンが挙げられる。
第1級アルカノールアミンとしては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、n-プロパノールアミン、及びイソプロパノールアミン等のモノアルカノールアミンが挙げられる。
硬化物の剥離性の観点から、トリアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、及びN-アルキルモノアルカノールアミンから選択される1種以上が水溶性アルカノールアミン(B)として使用されるのが好ましい。
【0020】
<溶剤(S)>
溶剤(S)としては、水、水溶性有機溶剤、及び水溶性有機溶剤の水溶液が挙げられる。溶剤(S)としては、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)との双方が良好に溶解することから、水、及び水溶性有機溶剤の水溶液が好ましく、水がより好ましい。
水溶性有機溶剤としては、スルホラン;ヘキサメチルリン酸トリアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、3-メチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルカノール類;エチレングリコール、プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン;β-プロピロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-ペンチロラクトン等のラクトン類;等が挙げられる。
【0021】
≪酸含有洗浄液≫
酸含有洗浄液は酸を含む。酸含有洗浄液は、室温(例えば、20℃)で液状の酸からなる液であってもよく、酸の溶液であってもよい。酸含有洗浄液に含まれる酸は、特に限定されず、有機酸であっても、無機酸であってもよい。ここで、酸含有洗浄液に含まれる酸の水溶液は、20℃において、ブレンステッドの定義における酸性を示す。
酸含有洗浄液が、酸の溶液である場合、酸含有洗浄液に含まれる溶媒は特に限定されない。酸含有洗浄液が含んでいてもよい溶媒は、酸が良好に溶解する限り、水であっても、有機溶媒であっても、有機溶媒の水溶液であってもよい。
酸含有洗浄液は、1種の酸を単独で含んでいてもよく、2種以上の酸を組み合わせて含んでいてもよい。
【0022】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、2-ニトロフェニル酢酸、2-エチルヘキサン酸、ドデカン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸等のカルボン酸化合物;アスコルビン酸、酒石酸、グルクロン酸等の糖酸化合物;メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸化合物等が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、及びホウ酸等が挙げられる。
酸洗含有浄液に含まれる酸としては、有機酸が好ましく、水溶性の有機酸がより好ましく、水溶性の有機スルホン酸化合物が特により好ましい。
【0023】
<感光性組成物>
感光性組成物は、(メタ)アクリル化合物を含む。(メタ)アクリル化合物は、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物である。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基、及びメタクリロイル基の双方を意味する。
【0024】
〔(メタ)アクリル化合物〕
(メタ)アクリル化合物は、1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノ(メタ)アクリル化合物であっても、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリル化合物であってもよい。
【0025】
モノ(メタ)アクリル化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0026】
ポリ(メタ)アクリル化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能化合物や、トリアクリルホルマール等が挙げられる。
また、2以上の(メタ)アクリロイル基が導入されたオルガノポリシロキサンもポリ(メタ)アクリル化合物として使用できる。2以上の(メタ)アクリロイル基が導入されたオルガノポリシロキサンは、2以上の(メタ)アクリロイル基が導入されたシルセスキオキサンであってもよい。
【0027】
インプリント法によってパターニングされた硬化物を形成しやすい点から、(メタ)アクリル化合物として、モノ(メタ)アクリル化合物である(メタ)アクリル酸エステル類を用いるのが好ましい。
【0028】
<光重合開始剤>
感光性組成物は、前述の(メタ)アクリル化合物を重合させるために、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0029】
光重合開始剤として具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Irgacure 907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン(Irgacure 369)、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、O-アセチル-1-[6-(ピロール-2-イルカルボニル)-9-エチル-9Hカルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。
【0030】
これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
感光性組成物における光重合開始剤の含有量は、感光性組成物に含まれる(メタ)アクリル化合物の合計100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.05質量部以上15質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。
【0032】
<溶媒>
感光性組成物は、塗布性の調整の目的等で溶媒を含んでいてもよい。溶媒の種類は特に限定されないが、典型的には有機溶媒である。
【0033】
感光性組成物に配合され得る有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0034】
感光性組成物における溶媒の含有量の範囲は、特に限定されない。例えば、感光性組成物における溶媒の含有量は、感光性組成物の質量に対して、95質量%以下でもよく、80質量%以下でもよく、50質量%以下でもよく、30質量%以下でもよく、20質量%以下でもよい。
また、感光性組成物が溶媒を含む場合、感光性組成物における溶媒の含有量は、感光性組成物の質量に対して、1質量%以上でもよく、5質量%以上でもよく、10質量%以上でもよく、20質量%以上でもよく、30質量%以上でもよい。
【0035】
<その他の成分>
感光性組成物は、以上説明した成分の他に種々の添加剤を含有してもよい。感光性組成物に配合される添加剤としては、分散剤、シランカップリング剤等の密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
界面活性剤としては、特に限定されず、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の公知の成分を用いることができる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シリコーン系界面活性剤としては、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0037】
感光性組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知の酸化防止剤を用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0038】
<感光性組成物の調製方法>
感光性組成物は、前述の各成分を通常の方法で混合、撹拌して調製される。前述の各成分を、混合、撹拌する際に使用できる装置としては、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等が挙げられる。上記の各成分を均一に混合した後に、得られた混合物を、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0039】
<硬化物層形成方法>
上記感光性組成物を、基板上に適用して塗布膜を形成する工程(以下単に「塗布膜形成工程」ともいう。)、及び塗布膜を硬化する工程を有する硬化物層形成方法により、硬化物層を形成することができる。
硬化物層形成方法は、パターン形成工程をさらに含むことが好ましく、具体的には、(1)塗布膜表面にモールドを圧接して、塗布膜にパターン形成する工程をさらに含む(インプリント法)、又は(2)上記塗布膜を硬化させる工程が位置選択的な露光により行われ、位置選択的に露光された上記塗布膜に対して現像を行いパターン形成する工程をさらに含むこと(現像法)ことが好ましい。
【0040】
基板の材質は、種々の用途によって選択可能である。基板の材質としては、例えば、石英、ガラス、セラミック材料、金属、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリマー、導電性金属酸化物、及び半導体材料等が挙げられる。
金属としては、Ni、Cu、Cr、Fe、及びAlや、これらの金属の合金が挙げられる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリイミド等が挙げられる。半導体材料としては、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、及びアモルファスシリコン等が挙げられる。
また、光学フィルム、TFTアレイ基板、及びPDPの電極板等を基板として用いることができる。基板の表面は、蒸着膜、磁性膜、及び反射膜等であってもよい。
【0041】
基板の形状は、特に限定されない。典型的には、基板の形状は板状である。基板の材質が可撓性を有する場合、基板はロール状に巻かれていてもよい。
また、基板は、基板の用途に応じて、透光性の基板であっても、非透光性の基板であってもよい。
【0042】
塗布膜形成工程では、硬化物層が形成されるべき基板上に、インクジェット、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、ディスペンサー、スプレー、スクリーン印刷、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて感光性組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥(プリベーク)により溶媒を除去して塗布膜が形成される。
塗布膜の厚さは、特に制限はないが、10nm以上50μm以下が好ましく、50nm以上30μm以下がより好ましく、100nm以上10μm以下がさらに好ましく、150nm以上5μm以下が特に好ましい。
なお、基板上に盛られた液滴や、凹凸を有する基板の凹部に埋め込まれた感光性組成物や、モールドの凹部に充填された感光性組成物等についても、便宜上「塗布膜」と称する。
【0043】
上記(1)のように、インプリント法によるパターン形成を行う場合、上記塗布膜にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンを上記塗布膜に転写することができる。また、パターンを有するモールドに感光性組成物を塗布し、基板を押接してもよい。
塗布膜表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から露光し、上記塗布膜を硬化することができる。また、光透過性基材上に感光性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から露光し、感光性組成物を硬化させることもできる。
【0044】
モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。光透過性のモールド剤としては、具体的には、ガラス、石英、光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。光透過性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0045】
また、非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有する材料であればよい。非光透過型モールド材としては、基板の材料として前述した材料が挙げられる。
また、モールドの形状も特に制約されず、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0046】
上記(1)のように、インプリント法によるパターン形成を行う場合、モールド圧力を10気圧以下で行うことが好ましい。モールド圧力が10気圧以下である場合、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、10気圧以下のモールド圧力は、圧力が低いことによって装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の感光性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
下記露光の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと感光性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で露光してもよい。露光時における好ましい真空度としては、10-1Paから常圧の範囲である。
【0047】
次いで、形成された塗布膜を露光により硬化させる。
露光に用いられる光源は特に限定されず、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、LED等が挙げられる。このような光源を用い、塗布膜にArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、軟X線、g線、i線、h線、j線、k線等の放射線ないし電磁波を照射して塗布膜を露光し得る。塗布膜に対する露光は、ネガ型のマスクを介して位置選択的に行われてもよい。露光量は感光性組成物の組成によっても異なるが、例えば10mJ/cm以上2,000mJ/cm以下が好ましく、100mJ/cm以上1,500mJ/cm以下がより好ましく、200mJ/cm以上1,200mJ/cm以下がさらに好ましい。露光照度は感光性組成物の組成によっても異なるが、1mW/cm以上50mW/cm以下の範囲であることが好ましい。
【0048】
上記(2)の現像法のように、上記塗布膜を硬化させる工程が位置選択的な露光により行われ、位置選択的に露光された上記塗布膜に対して現像して、パターン化された硬化物層を得ることができる。
【0049】
現像工程では、露光された塗布膜を現像液で現像することにより、所望する形状にパターン化された硬化物が形成される。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法、パドル法、ダイナミックディスペンス法等を用いることができる。
有機溶剤を含む現像液の具体例としては、PE(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等のアルコール系溶剤ないしグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
アルカリ現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0050】
そして、必要に応じ、露光後の硬化物、又は現像後のパターン化された硬化物にポストベークを施してさらに加熱硬化を進めてもよい。ポストベークの温度は150℃以上270℃以下が好ましい。
【0051】
<剥離方法>
基板上に形成された硬化物層を、前述した剥離液と接触させることにより、基板からの硬化物層の剥離を行う。硬化物層と剥離液とを接触させる方法は特に限定されない。硬化物層と剥離液とを接触させる方法としては、例えば、硬化物層の表面に剥離液を塗る方法や、硬化物層の表面に剥離液を流す方法や、硬化物層の表面に剥離液を噴霧する方法や、硬化物層を備える基板を剥離液に浸漬する方法が挙げられる。これらの方法の中では、硬化物層を基板から良好に剥離させやすい点から、硬化物層を備える基板を剥離液に浸漬する方法が好ましい。
【0052】
硬化物層を備える基板を剥離液に接触させる際の剥離液の温度は特に限定されないが、60℃以上100℃以下が好ましく、70℃以上90℃以下がより好ましい。接触時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、10分以上50分以下がより好ましく、20分以上40分以下が特に好ましい。
剥離液に基板を接触させた後、硬化物層が剥離された基板を純水や有機溶剤により洗浄を行い、その後、基板を乾燥させる。これにより、硬化物層が剥離された基板を得ることができる。
【0053】
なお、前述した通り、硬化物層を備える基板を、剥離液に接触させる前に、硬化物層を前述した酸含有洗浄液に接触させる。硬化物層を酸含有洗浄液に接触させることにより、硬化物層を備える基板を剥離液に接触させた際に、基板からの硬化物層の剥離性が良好である。硬化物層を酸含有洗浄液に接触させる際の酸含有洗浄液の温度は特に限定されない。酸含有洗浄液の温度は、60℃以上100℃以下が好ましく、70℃以上90℃以下がより好ましい。接触時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、1分以上30分以下がより好ましく、5分以上15分以下が特に好ましい。
硬化物層を備える基板を酸含有洗浄液に接触させた後、必要に応じて、基板を水や有機溶剤により洗浄し、その後、剥離液による基板からの硬化物層の剥離を行うことができる。
【0054】
上記の通り、本発明者らにより、以下の(1)~(8)が提供される。
(1)基板上に形成された硬化物層を、基板から剥離する剥離方法であって、
剥離方法が、
硬化物層を、酸含有洗浄液と接触させることと、
硬化物層を、剥離液と接触させることにより、基板から剥離させることと、を含み、
硬化物層は、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなり、
剥離液が、無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含み、
無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む、剥離方法。
(2)酸含有洗浄液が、有機スルホン酸化合物を含有する、(1)に記載の剥離方法。
(3)基板が、その表面にアルミニウム含有層を備え、硬化物層が、アルミニウム含有層上に形成されている、(1)又は(2)に記載の剥離方法。
(4)水溶性アルカノールアミン(B)が、トリアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、及びN-アルキルモノアルカノールアミンから選択される1種以上である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の剥離方法。
(5)60℃以上100℃以下の温度において、10分以上60分以下、硬化物層と、剥離液とを接触させる、(1)~(4)のいずれか1つに記載の剥離方法。
(6)硬化物層が、
基板上に、感光性組成物の塗布膜を形成することと、
塗布膜に、モールドを圧接させ、塗布膜にモールドの形状を転写することと、
モールドが圧接した状態で、塗布膜を露光して硬化させることにより、パターン化された硬化物層を形成することと、
モールドを、硬化物層から離すことと、
を含む方法により形成された硬化物層である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の剥離方法。
(7)(1)~(6)のいずれか1つに記載の方法により硬化物層が剥離された基板上に、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物の硬化物からなり、パターン化された硬化物層をインプリント法によって形成することを含む、パターン化された硬化物層を備える基板の製造方法。
(8)無機塩基性化合物(A)と、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含み、
無機塩基性化合物(A)が、メタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムを含む、剥離液。
(9)水溶性アルカノールアミン(B)が、トリアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、及びN-アルキルモノアルカノールアミンから選択される1種以上である、(8)に記載の剥離液。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0056】
<インプリント用感光性樹脂組成物の調製>
イソボルニルアクリレート(ライトアクリレートIB-XA(共栄社化学株式会社製))80質量部と、メタクリレート変性シルセスキオキサン(MAC-SQLP-35(東亞合成株式会社製))20質量部と、2-メチル-1-メチル〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Irgacure907(BASF社製))10質量部と、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン―1-オン(Irgacure907(BASF社製))2質量部と、を混合してインプリント用感光性組成物を得た。
【0057】
<ナノインプリントパターンが形成された基板の作製>
アルミニウム蒸着ガラス基板(日本電子硝子株式会社製)上に、インクジェットヘッド(KM-512MHX(コニカミノルタ株式会社製))を用いて上記のインプリント用感光性組成物を塗布して感光性層を形成した。具体的には、ノズル1つあたり14pLの液滴量で、パターンの中間距離(ピッチ)が300μmの正方配列となるように吐出タイミングを制御して、上記の調製したインプリント用感光性組成物を吐出することにより、アルミニウム蒸着層上の全面に感光性組成物を塗布して感光性層を形成した。
ナノインプリント転写装置(ST200(東芝機械株式会社製))を用いて、50nmラインアンドスエースパターンの鋳型モールドを、真空化、0.5MPaの押圧力で4秒間感光性層に押し付けて、感光性層を変形させた。変形した感光性層に対して、波長365nmのUV光を、露光長1,000mJ/cmで露光して、感光性層を硬化させた。その後、鋳型モールドを剥離して、ラインアンドスペースパターンにパターニングされた硬化物層を形成した。
【0058】
<無機アルカリ剥離液の調製>
メタケイ酸ナトリウム2.5質量部と、リン酸ナトリウム1.0質量部と、水96.5質量部とを混合し、無機アルカリ剥離液を調製した。
【0059】
<剥離液の調製>
(実施例1)
前述の無機アルカリ剥離液100質量部に対して、N-メチルエタノールアミン2.5質量部を添加し、剥離液1を調製した。
【0060】
(実施例2)
前述の無機アルカリ剥離液100質量部に対して、N-メチルエタノールアミン1.25質量部を添加し、剥離液2を調製した。
【0061】
<酸含有洗浄液>
表1に記載の酸含有洗浄液として、以下に示す有機酸を用いた。以下の有機酸は、いずれも室温で液体である。
MSA:メタンスルホン酸
TFMSA:トリフルオロメタンスルホン酸
BSA:ブタンスルホン酸
【0062】
<パターニングされた硬化物層の基板からの剥離>
実施例3では、前述のパターン化された硬化物層を備える基板を、前述の酸含有洗浄液MSAに80℃5分浸漬した(酸洗浄工程)後、水洗した。次いで、水洗された基板を、剥離液1に80℃15分浸漬した(剥離工程)。浸漬後、超純水で基板を洗浄した。洗浄された基板に窒素ガスを吹き付けて、基板を乾燥させた。これにより、パターニングされた硬化物層が剥離された基板を得た。
実施例4~8、及び比較例1~9では、酸洗浄工程、及び剥離工程の条件を、表1に記載の条件に変更することの他は、実施例3と同様にしてパターニングされた硬化物層を備える基板に対する硬化膜の剥離を行った。
なお、比較例1~5では、酸洗浄工程を行わなかった。比較例6~9では、剥離工程を行わなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
<評価>
実施例3~8、及び比較例1~9において所定の処理が施された基板を用いて、以下の方法に従って、除去性と、Alダメージ性とを評価した。また、実施例3~8、及び比較例1~9で得られた基板上に再度パターニングされた硬化物層を形成し、基板の再インプリント性を評価した。これらの評価結果を表2に記す。
【0065】
[除去性]
得られた基板を、走査型電子顕微鏡(S-4700(株式会社日立ハイテク製))により観察し、パターニングされた硬化物層の除去性を、以下の基準に従い評価した。
○:パターニングされた硬化物層が、完全に除去された。
×:パターニングされた硬化物層の残渣が観察された。
【0066】
[Alダメージ]
得られた基板を、蛍光X線(XRF)測定(ZSX Primus(株式会社リガク))により得られた測定密度から、Al膜厚を測定した。得られた基板のAl膜厚Tを、剥離処理に供される前のアルミニウム蒸着ガラス基板のAl膜厚Tと比較して、以下の基準に従い評価した。
Al膜厚変動量(nm)=T-T
○:Al膜厚変動量の絶対値が5nm未満
×:Al膜厚変動量の絶対値が5nm以上
【0067】
[再インプリント性]
実施例3~8、及び比較例1~9で得られた基板を用いて、前述のナノインプリントパターンが形成された基板の作製と同様の方法で、基板上に再度パターニングされた硬化物層を形成した。パターニングされた硬化物層を走査型電子顕微鏡(S-4700(株式会社日立ハイテク製))により観察し、再インプリント性を以下の基準に従い評価した。
〇:パターンが基板全面に形成されていた。
×:パターンが基板表面の一部において、又は全面において形成されていなかった。
【0068】
【表2】
【0069】
表2によれば、(メタ)アクリル化合物を含有する感光性組成物を用いて基板上に形成された硬化物層を、酸含有洗浄液と接触させ、その後、無機塩基性化合物(A)としてのメタケイ酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムと、水溶性アルカノールアミン(B)と、溶剤(S)とを含む剥離液と接触させた実施例3~8では、アルミニウム膜へのダメージを抑制しつつ硬化物層を良好に除去し、優れた再インプリント性を有する基板が得られたことが分かる。
他方、酸含有洗浄液による酸洗浄工程を行わなかった比較例1~5、及び剥離工程を行わなかった比較例6~9では、硬化物層の良好な除去、及びアルミニウム膜へのダメージの抑制の少なくとも一方を達成できなかった。また、比較例1~9で得られた基板は、いずれも再インプリント性に劣っていた。