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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135731
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用ハーネス配索構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240927BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240927BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60R16/02 623B
H02G3/22
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046566
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】岸田 航
【テーマコード(参考)】
5G363
【Fターム(参考)】
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA16
5G363DC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車体構成部材に沿ってハーネスを効率よく配索できるようにする。
【解決手段】車両用ハーネス配索構造は、車両室の壁部にハーネス1が挿通される貫通孔11aが形成され、クランプ20は、壁部の車両内側に取り付けるための取付部23と、壁部に取り付けられた状態で外側に突出するガイド部25とを有し、取付部23と貫通孔11aは、互いに間隔を空けて配置され、本体部21は、取付部23から貫通孔11aに向かって延び、ハーネス1は、貫通孔11aから内側に向かって延び、ガイド部25に沿うように配索されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内側に配置されるハーネスを、クランプを用いて、車両室を構成する壁部に沿って配索する車両用ハーネス配索構造であって、
前記壁部には、前記ハーネスが挿通される貫通孔が形成され、
前記クランプは、本体部と、前記壁部の車両内側に取り付けるための取付部と、前記壁部に取り付けられた状態で車両外側に突出するガイド部と、を有し、
前記取付部と前記貫通孔は、互いに間隔を空けて配置され、前記本体部は、前記取付部から前記貫通孔に向かって延びており、
前記ハーネスは、前記貫通孔から車両内側に向かって延び、前記ガイド部に沿うように配索されていることを特徴とする、車両用ハーネス配索構造。
【請求項2】
前記クランプは、前記壁部に対面する位置に、前記クランプの長手方向に沿って延び且つ前記側壁に向かって突出する凸部を有し、
車両内側から外側に向かう方向に、前記凸部の少なくとも一部と前記ガイド部とが重なって配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両用ハーネス配索構造。
【請求項3】
前記取付部は、回転可能な状態で、前記側壁に取り付けられ、前記凸部は、前記側壁に当接可能であることを特徴とする、請求項2に記載の車両用ハーネス配索構造。
【請求項4】
前記凸部は、前記本体部の短手方向の一方端に配置され、前記本体部の長手方向に沿って延びており、
前記凸部は、前記凸部の車両外側端から前記本体部の短手方向の他方端に向かって傾斜する傾斜部が設けられており、
前記ハーネスと前記傾斜部を固定具により固定可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ハーネス配索構造。
【請求項5】
前記クランプは、前記貫通孔に係合可能な係合部と、前記係合部と前記本体部を繋ぐ湾曲部と、を有し、
前記ガイド部は、前記係合部及び前記湾曲部に設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車両用ハーネス配索構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハーネス配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、複数のハーネスが配索されている。例えば、車両側部に配置されるハーネスは、サイドボディアウタパネルの内側において、インナパネルの外側から車両内側に向かって配索されるものがある。インナパメルの内側面に沿ってハーネスが配索される場合、インナパネルにフック等の固定具を介して、インナパネルに取り付けられる。
【0003】
インナパネルにハーネスが取り付けられる構造として、例えば、特許文献1に開示される構造が知られている。この例では、サイドシルからセンターピラーの下部に向かって配索されたハーネスが、センターピラーの下部の形状に沿って湾曲され、センターピラーの上部に向かって配索されている。ここで、センターピラーを構成するインナパネルに、フックを介してハーネスが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-117729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配索されたハーネスの周辺には、部品等が配置されていないことが望ましい。ところが、車両の仕様によっては、ハーネスの周辺に電子部品や機構部品が配置される場合がある。また、センターピラーにハーネスを配索する場合、ハーネスを、所望の配置とするため、あるいは、意図通りに配索するために、ハーネスを配索する作業中に、ハーネスを繰り返し引っ張る場合がある。
【0006】
例えば、上記例の構造でハーネスの周辺に部品が配置されるような場合には、フックで支持されたハーネスを、最適な位置(意図する位置)に移動させようとするとき、インナパネルに取り付けられる部品に接触する可能性がある。そのため、例えばハーネスの配索時において、ハーネスが周辺部品に接触することを抑制しようとする場合、上記例の構造には改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、インナパネル等の車体構成部材に沿ってハーネスを効率よく配索することが可能な車両用ハーネス構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用ハーネス配索構造は、車両内側に配置されるハーネスを、クランプを用いて配索する。当該車両用ハーネス固定構造において、車両室を構成する壁部には、前記ハーネスが挿通される通過孔が形成され、前記クランプは、本体部と、前記壁部の車両内側に取り付けるための取付部と、前記壁部に固定された状態で車両外側に突出しているガイド部と、を有し、前記取付部と前記挿通孔は、互いに間隔を空けて配置され、前記本体部は、前記取付部から前記挿通孔に向かって延びており、前記ハーネスは、前記挿通孔から車両内側に向かって延び、前記ガイド部に沿うように配索されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体構成部材に沿ってハーネスを効率よく配索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両用ハーネス配索構造の一実施形態を車両室内側から見た側面図である。
図2図1のピラーインナパネルの貫通孔の周辺を拡大して示す斜視図である。
図3図1のA-A矢視断面を示す斜視図である。
図4図2の貫通孔の周辺をさらに拡大して示す斜視図である。
図5図2のクランプ及びピラーインナパネルを車両室外側から見た斜視図で、アッパパネルの図示を省略して示している。
図6図2のリアドアハーネスの一部及びクランプを示す斜視図である。
図7図6のクランプを単体で示す側面図である。
図8図7のX部を拡大して示す斜視図である。
図9図6のクランプの斜視図である。
図10図9のクランプを矢視Y方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用ハーネス配索構造の一実施形態について、図面(図1図10)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示し、矢印Outは、車両外側または車幅方向外側を示している。
【0012】
本実施形態の車両用ハーネス配索構造は、車両内側に配置されるハーネスを、クランプ20を用いて車両室を構成する壁部に沿って配索するための構造であり、壁部には、ハーネスが挿通される貫通孔11aが形成されている。クランプ20は、本体部21と、壁部の車両内側に取り付けるための取付部23と、壁部に取り付けられた状態で車両外側に突出するガイド部25と、を有し、取付部23と貫通孔11aは、互いに間隔を空けて配置され、本体部21は、取付部23から貫通孔11aに向かって延びており、ハーネスは、貫通孔11aから車両内側に向かって延び、ガイド部25に沿うように配索されている。以下、本実施形態の配索構造について、説明する。
【0013】
本実施形態の配索構造は、図1及び図2に示すように、リアドアハーネス1を配索するためのクランプ20を有し、リアドアハーネス1は、車両室を構成する側壁に設けられた貫通孔11aに貫通して配置されている。リアドアハーネス1は、例えば、リアサイドドア(図示せず)を駆動するための電気信号を伝達する電気配線等を含む。
【0014】
本実施形態では、車両室を構成する側壁は、センターピラー10の車両内側の壁部とし、貫通孔11aは、センターピラー10を構成するピラーインナパネル11に形成される貫通孔11aとしている。リアドアハーネス1は、センターピラー10に沿って配索されている。
【0015】
先ず、センターピラー10の構造について説明する。図1図3に示すように、センターピラー10は、車両側部に配置され、車両上下方向に延びている部分である。また、センターピラー10は、車両側部に設けられたフロントドア開口部15及びリアドア開口部16の間に配置されており、サイドシル17から上方に向かって例えばルーフサイドレール(図示せず)まで延びている。センターピラー10は、サイドボディアウタパネル(図示せず)と、サイドボディアウタパネルの車両内側に配置される金属製のピラーインナパネル11と、ピラーインナパネル11の車両外側の面に接合される金属製のピラーリンフォースメント13(図3)を有している。これらの部材によって構成されるセンターピラー10が、高い剛性を有し、車体骨格の一部を構成している。
【0016】
ピラーインナパネル11は、金属製のロアパネル11Bと、金属製のアッパパネル11Aとを有し、これらが車両上下方向に配置され互いに接合されることにより、構成されている。アッパパネル11Aの下部は、ロアパネル11Bの上部に接合されている。接合部を構成するロアパネル11Bの上部は、接合部を構成するアッパパネル11Aの下部の車両内側に配置される。これにより、ロアパネル11Bの上端(エッジ)は、アッパパネル11Aの内面に対して、段差を形成している。
【0017】
図1に示すように、ピラーインナパネル11のロアパネル11Bの下部には、車両外側に凹む凹部12が設けられている。当該凹部12には、後述するリトラクタ33が収容されている。また、凹部12の車両前方側には、凹部12と間隔を空けてロアアンカ34が設けられている。また、ピラーインナパネル11の車両上下方向の中間部には、リアドアハーネス1が貫通して配置される貫通孔11aが設けられ、図5に示すように、クランプ20が着脱可能に取り付けられる取付孔11bが設けられている。
【0018】
図2及び図3に示すように、貫通孔11aは、取付孔11bの上方側に間隔を空けて配置されている。この例では、貫通孔11aは、アッパパネル11Aの下部で、接合部よりもやや上方に設けられ、取付孔11bは、ロアパネル11Bの上部で、接合部よりもやや下方に設けられている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のセンターピラー10には、シートベルト装置30及びリアドアハーネス1が取り付けられている。先ず、シートベルト装置30について説明する。本実施形態のシートベルト装置30は、運転席または助手席等のフロントシート用のシートベルト装置30であり、リトラクタ33及びウェビングベルト31を有している。
【0020】
リトラクタ33は、図1に示すように、ウェビングベルト31を巻き取るための装置であり、ウェビングベルト31が接続されている。リトラクタ33は、ピラーインナパネル11のロアパネル11Bの下部に設けられた凹部12の中に収容されている。ウェビングベルト31は、リトラクタ33から車両上方に向かって例えば車両上部に配置されるショルダアンカ(図示せず)まで延び、該ショルダアンカから車両下方に折り返され、ロアアンカ34に接続されている。ロアアンカ34とショルダアンカとの間に位置するウェビングベルト31における車両上下方向中間部には、タングプレート32が設けられている。
【0021】
ショルダアンカとリトラクタ33との間に位置するウェビングベルト31は、車両上下方向に平行移動可能である。シートベルト装置30を乗員が使用するときに、ショルダアンカとリトラクタ33との間に位置するウェビングベルト31は、上方または下方に向かって平行移動する。このとき、ウェビングベルト31は、上下方向に平行移動するとき、例えば車両前後方向や車幅方向に揺動する場合がある。
【0022】
続いて、本実施形態のクランプ20について説明する。クランプ20は、上記したように、本体部21と、取付部23と、ガイド部25と、を有し、クランプ20は、湾曲部22と、係合部24と、をさらに有している。以下、各部について説明する。
【0023】
図6図10に示すように、本体部21は、長板状の部分である。クランプ20が車両に取り付けられるときには、本体部21の主面は、車両外側を臨み、車両上下方向に延びている。すなわち、本体部21の主面は、ピラーインナパネル11に対面配置されている。この例では、本体部21は、ピラーインナパネル11の貫通孔11aと取付孔11bとの間において、車両上下方向に延びている。
【0024】
図6図10に示すように、取付部23は、本体部21の長手方向の一方の端部に設けられており、基部23aと、挿入部23bと、を有している。基部23aは、レーストラック形状を有している。クランプ20が車両に取り付けられているとき、基部23aは、本体部21の下部に位置し、車両上下方向に延びるレーストラック形状となる。基部23aの短手方向の幅は、本体部21の短手方向の幅よりも長く設定されている。クランプ20が車両に取り付けられている状態で、取付部23は、ピラーインナパネル11の貫通孔11aに対して下方に間隔を空けて配置されている。
【0025】
挿入部23bは、基部23aから突出している部分で、ピラーインナパネル11に設けられた取付孔11bに挿通される部分である。基部23a及び挿入部23bは、いわゆるクリップと同様の機能を有し、挿入部23bが、ピラーインナパネル11に挿通し、基部23aが取付孔11bの周縁部に当接した状態で、取付部23は、ピラーインナパネル11に着脱可能に取り付けられている。この例では、取付部23は、回転可能な状態で、ピラーインナパネル11(側壁)に取り付けられている。
【0026】
図6図10に示すように、湾曲部22は、本体部21において、取付部23とは反対側の長手方向の端部に設けられている。この例では、クランプ20が車両に取り付けられているとき、湾曲部22は、本体部21の上部から車両外側に向かって湾曲し、且つ、図5に示すように、車両前方に湾曲している。
【0027】
図6図10に示すように、係合部24は、湾曲部22からピラーインナパネル11の貫通孔11aに向かって延びている板状の部分である。クランプ20が車両に取り付けられているとき、係合部24の先端部24aは、貫通孔11aに入り込んでいる。この例では、本体部21と湾曲部22と係合部24は、滑らかに連続しており、一体的に形成されている。すなわち、本体部21と湾曲部22と係合部24は、1枚の板が湾曲して形成されている。また、係合部24の先端部24aは、クランプ20が車両に取り付けられえているとき車両下方に突出している。この先端部24aは、貫通孔11aの縁部に係合可能である。
【0028】
図6に示すように、ガイド部25は、クランプ20が車両室を構成する壁部に取り付けられた状態で、車両外側に突出している部分であり、この例のガイド部25は、係合部24の短手方向の端部に設けられ、係合部24の上面から略垂直に上方に突出し、係合部24の長手方向に沿って延びている。係合部24とガイド部25とにより構成させる面(互いに直交する面)によって、リアドアハーネス1が支持されている。
【0029】
図2図4及び図6に示すように、リアドアハーネス1は、ピラーインナパネル11の車両外側から貫通孔11aを通り車両内側に向かって配索さている。貫通孔11aを通り抜けたリアドアハーネス1は、車両内側に延び、ガイド部25に沿うように配索されている。この例では、リアドアハーネス1は、ピラーインナパネル11の車両外側から貫通孔11aを貫通して車両内側に配索されている。このとき、リアドアハーネス1は、係合部24の主面とガイド部25によって、支持されている。
【0030】
ここで、図2及び図3に示すように、係合部24の先端部24a及びガイド部25の先端部は、貫通孔11aに入り込んだ状態である。これにより、係合部24は、貫通孔11aに係合した状態が保たれている。リアドアハーネス1の配索作業中に、リアドアハーネス1が貫通孔11aの縁部に接触して損傷することを抑制することが可能となる。そのため、ガイド部25に沿って所望の位置に、リアドアハーネス1を配索しやすくなる。なお、係合部24の先端部24aは、貫通孔11aの縁部に係合可能であるため、リアドアハーネス1が内側に引っ張れても、クランプ20が内側に変形することを抑制できる。
【0031】
また、リアドアハーネス1の配索作業では、貫通孔11aを通りにリアドアハーネス1を車両下方に引っ張るような作業が行わられる。本実施形態は、湾曲部22が貫通孔11aに対して車両下方に湾曲し、取付部23は、貫通孔11aよりも下方に位置しているので、上記のようにリアドアハーネス1が引っ張られても、貫通孔11aの縁部にリアドアハーネス1が接触することをより効果的に抑制できる。
【0032】
さらに、ガイド部25は、シートベルト装置30のウェビングベルト31に近い位置に配置される。この例では、図2及び図4に示すように、ウェビングベルト31とリアドアハーネス1との間にガイド部25が配置されている。これにより、ウェビングベルト31とリアドアハーネス1とが直接的に接触することを抑制できる。特に、ウェビングベルト31が上下方向に平行移動するときに、ウェビングベルト31がリアドアハーネス1に接触することを抑制することが可能である。
【0033】
通常は、シートベルト装置30の特にウェビングベルト31の周囲には、車両用の部品が配置されないことが望ましい。しかし、車両の仕様によっては、ウェビングベルト31の周辺への部品の配置が必要となることがある。一方、リアドアハーネス1の周辺にウェビングベルト31のような可動部品はなるべく配置されないことが望ましい。しかしながら、本実施形態では、ウェビングベルト31は、貫通孔11aの一部に、車幅方向視で、重なって配置されている。このような場合でも、本実施形態のクランプ20を用いることで、シートベルト装置30のウェビングベルト31をリアドアハーネス1の周囲に配置することが可能となる。すなわち、本実施形態のクランプ20を用いることにより、リアドアハーネス1とウェビングベルト31とが互いに近い位置に配置することができるため、シートベルト装置30の配置の自由度を向上させることが可能である。
【0034】
上記例では、クランプ20は、貫通孔11aから車両内側に突出し、車両下方に湾曲し、取付孔11bまで延び、取付孔11bに固定されている。すなわち、係合部24は貫通孔11aに係合しているが、固定されていない。そのため、クランプ20の係合部24の先端部24a及びガイド部25の先端部は、貫通孔11aの縁部に沿って多少の移動は可能となる。そのため、リアドアハーネス1がずれ動く場合でも、リアドアハーネス1の動きに追従することも可能である。以上より、本実施形態によれば、ピラーインナパネル11等の車体構成部材に沿ってハーネスを効率よく配索することができる。
【0035】
さらに、本実施形態のクランプ20について詳細に説明する。図7図10に示すように、クランプ20は、ピラーインナパネル11(壁部)に対面する位置に、クランプ20の長手方向に沿って延び且つ車両室の側壁に向かって突出する凸部26を有している。また、クランプ20が車両に取り付けられている状態で、車両内側から外側に向かう方向に、凸部26の少なくとも一部とガイド部25とが重なって配置されている(図8図9の破線領域D)。
【0036】
本実施形態の凸部26は、クランプ20の本体部21の主面に設けられ、本体部21の長手方向に沿って延びている。図6に示すように、凸部26は本体部21の主面から車両外側に突出している。この例では、凸部26の長手方向は、本体部21の長手方向に対応している。クランプ20が車両に取り付けられているとき、凸部26は車両上下方向に延びている。凸部26の長手方向の一端(上端)は、湾曲部22に配置されている。また、凸部26の長手方向の他端(下端)は、取付部23の付近に配置されている。凸部26の長手方向における一端(上端)は、湾曲部22に位置するガイド部25に重なって配置されている。この例では、図8及び図9において破線で示す領域Dが重なる位置となる。
【0037】
本実施形態の凸部26は、リブとして機能し、クランプ20の強度を確保することが可能である。また、凸部26の一部を、ガイド部25に重なる位置に設けていることにより、リアドアハーネス1が動くことにより発生するガイド部25への荷重に対して、ガイド部25は一定の剛性を確保できる。そのため、クランプ20の変形が抑制できるため、クランプ20はリアドアハーネス1を安定して支持することが可能となる。
【0038】
また、凸部26を設けることにより、リアドアハーネス1を配策するときに、リアドアハーネス1が、例えば車両内側に引っ張られる場合に、または、車両外側に引っ張られる場合に、クランプ20が変形することを抑制できる。クランプ20の変形が抑制されることにより、リアドアハーネス1は所望の位置に配置しやすくなる。例えば、本実施形態のように、ウェビングベルト31が上下に平行移動した場合においても、リアドアハーネス1を、ウェビングベルト31への接触を抑制できるように配索するが可能となる。その結果、リアドアハーネス1が接触することによりウェビングベルト31に不具合が発生することを抑制できる。なお、凸部26を、本体部21、湾曲部22及び係合部24に設けてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、図5に示すように、取付部23は、回転可能な状態で、ピラーインナパネル11のロアパネル11B(側壁)の取付孔11bに取り付けられ、図2及び図3に示すように、凸部26は、ピラーインナパネル11に当接可能である。この例では、凸部26は、ピラーインナパネル11のアッパパネル11Aに当接可能である。また、凸部26の長手方向端部には、車両外側に突出している突起部27が設けられている。また、図7図10に示すように、突起部27は、クランプ20が車両に取り付けられているときに、凸部26の下端(長手方向の他端)に配置される。本実施形態では、凸部26におけるピラーインナパネル11に当接可能な部分は、突起部27である。なお、突起部27の上方に位置する凸部26が、ピラーインナパネル11のアッパパネル11Aに当接してもよい。
【0040】
例えば、取付部23がロアパネル11Bの取付孔11bを中心としてロアパネル11Bに対して回転するとき、アッパパネル11Aの内面に当接している突起部27は、段差を形成するロアパネル11Bの上端に引っ掛かることができる。例えば、取付部23を中心にクランプ20が回転するとき、先ず、突起部27が段差に係合する。突起部27と段差との係合でクランプ20の回転が止まらないときは、クランプ20の係合部24が貫通孔11aの縁部に係合する。これにより、クランプ20の回転は、停止される。このように、クランプ20は、所定の回転角度の範囲で、取付部23を中心として回転することができる。
【0041】
リアドアハーネス1の配索時に、リアドアハーネス1の移動に伴いクランプ20に荷重が作用しても、クランプ20は、所定の範囲の回転角度で回転できるため、リアドアハーネス1の動きに追従することが可能となる。その結果、リアドアハーネス1の配索作業を容易に行うことが可能となる。
【0042】
一方で、図5に示すように、回転可能に取り付けられるクランプ20は、突起部27を有する凸部26を設けることにより、回転を所定位置で止めることができる。その結果、リアドアハーネス1がウェビングベルト31に接触することを抑制することが可能となる。すなわち、突起部27等により、所定の回転角度を超える回転角度で回転することを抑制できるため、リアドアハーネス1と周囲の部材との接触を抑制することが可能となる。
【0043】
本実施形態の凸部26は、図7図10に示すように、本体部21の短手方向の一方端に配置され、本体部21の長手方向に沿って延び、凸部26には、凸部26の車両外側端から本体部21の短手方向の他方端に向かって傾斜する傾斜部26aが設けられている。ここで、傾斜部26aは、クランプ20が車両に取り付けられているとき、車両上下方向視で、略三角形のリブとして設けられている。当該三角形の一つの頂点は、凸部26の頂点に対応している。
【0044】
本実施形態では、図6及び図10示すように、4つの傾斜部26aは、凸部26の長手方向に互いに間隔を空けて配置されている。また、図4に示すように、リアドアハーネス1と傾斜部26aを固定用テープ29(固定具)により固定可能に構成されている。傾斜部26aを設けることにより、固定用テープ29で、リアドアハーネス1を巻きやすくなる。
【0045】
固定用テープ29は、リアドアハーネス1が本体部21の裏面(車両内側の面)に沿って配置された状態で、本体部21とリアドアハーネス1が固定用テープ29によって巻かれている。これにより、リアドアハーネス1は、本体部21に固定されている。このとき、凸部26の下端に突起部27が設けられていることより、固定用テープ29が本体部21の長手方向にずれ動くことを抑制することができる。この例では、凸部26の下端に突起部27が設けられているので、固定用テープ29が突起部27よりも下方にずれ動いた場合でも、固定用テープ29は、突起部27によって支持されるので、リアドアハーネス1及び固定用テープ29が、突起部27よりも車両下方にずれ動くことを抑制できる。
【0046】
また、4つの傾斜部26aが、互いに間隔を空けて配置されるため、4つの傾斜部26aのそれぞれは、固定用テープ29の接着面となる。そのため、固定用テープ29が下方にずれ動くことをより効果的に抑制することが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、傾斜部26aは、略三角形状の壁部により構成されているがこれに限らない。また、本実施形態では、傾斜部26aは、凸部26の頂部から、本体部21の主面の短手方向の他方端に向かって直線的に形成される傾斜面であるがこれに限らない。例えば、曲面としてもよい。この場合、曲率半径の中心を、凸部26の根本付近に配置するとよい。
【0048】
傾斜部26aが形成されることにより、リアドアハーネス1及び傾斜部26aを固定用テープ29によって巻いて固定するとき、固定用テープ29の接触面積を増やすことが可能となる。その結果、リアドアハーネス1を安定して固定することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、貫通孔11aを通り抜けるリアドアハーネス1は、貫通孔11aから係合部24に沿って車両内側に延び、湾曲部22に沿って湾曲する。そのため、湾曲部22には、応力が集中しやすくなり、湾曲部22は、変形しやすい部位となる。これに対して、本実施形態では、係合部24及び湾曲部22にガイド部25が設けられているため、湾曲部22及びその周辺の剛性が向上し、クランプ20の変形を抑制することが可能となる。
【0050】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0051】
本実施形態では、センターピラー10の内側にリアドアハーネス1を配索する例について説明しているが、これに限らない。例えば、クォータインナパネルの外側及び内側に配索されるハーネスに適用することも可能である。また、バックドアのインナパネルとアウタパネルとの間に配索されるハーネスに適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 リアドアハーネス(ハーネス)
10 センターピラー
11 ピラーインナパネル
11A アッパパネル
11B ロアパネル
11a 貫通孔
11b 取付孔
12 凹部
15 フロントドア開口部
16 リアドア開口部
17 サイドシル
20 クランプ
21 本体部
22 湾曲部
23 取付部
23a 基部
23b 挿入部
24 係合部
24a 係合部の先端部
25 ガイド部
26 凸部
26a 傾斜部
27 突起部
29 固定用テープ(固定具)
30 シートベルト装置
31 ウェビングベルト
32 タングプレート
33 リトラクタ
34 ロアアンカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10