(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135736
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】構造体およびその設計方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/10 20060101AFI20240927BHJP
B29C 70/20 20060101ALI20240927BHJP
B29C 70/34 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C70/10
B29C70/20
B29C70/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046575
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】高見 泰浩
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA11
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG03
4F205AG24
4F205HA14
4F205HA19
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HC02
4F205HF05
4F205HL15
4F205HM13
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】UDシートを積層し融着させた補強材が相手部材に締結された構造体であって、締結部材の数を増やしても相手部材への補強材の締結強度を高めることができないときに、相手部材への補強材の締結強度を高めることができる構造体を提供すること。
【解決手段】外力を受けて応力を発生する応力部材と、締結部材により前記応力部材に締結された補強材と、を有し、前記補強材は、一方向に配向した複数の強化繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂が融着されてなる積層体であって、前記積層体は、外力を受けたときに前記応力部材の前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層と、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層と、を有する、構造体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を受けて応力を発生する応力部材と、
締結部材により前記応力部材に締結された補強材と、を有し、
前記補強材は、一方向に配向した複数の強化繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂が融着されてなる積層体であって、
前記積層体は、外力を受けたときに前記応力部材の前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層と、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層と、を有する、
構造体。
【請求項2】
前記応力部材は、外力を受けたときに、エネルギー量が最も大きい第1応力が発生し、かつ前記締結部材の位置にエネルギー量が前記第1応力よりも小さい第2応力が発生し、
前記積層体は、前記第2応力の方向に対して±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層と、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層と、を有する、
請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記応力部材は、外力を受けたときに、前記締結部材の位置に前記第1応力とは異なる方向への前記第2応力が発生する、
請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記締結強化層は、前記補強材の最外層として配置された、
請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記応力吸収層は、+60°±15°に前記強化繊維が配向した層と、-60°±15°に前記強化繊維が配向した層とが積層方向に連続して配置された、
請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
柱状の構造体であり、
前記締結部材は、前記柱状の側面に配置された、
請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
頂面部、側面部およびフランジ部を有する断面ハット状の構造体であり、
前記締結部材は、前記側面部または前記フランジ部に配置された、
請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
柱状の構造体であり、
前記締結部材は、前記柱状の長軸方向の端部に配置された、
請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
自動車のピラーである、
請求項1~8のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項10】
外力を受けて応力を発生する応力部材と、締結部材により前記応力部材に締結された補強材と、を有する構造体であって、前記補強材は、一方向に配向した複数の強化繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂が融着されてなる積層体である構造体の、前記締結部材の位置に発生する応力の方向を解析する工程と、
前記積層体が、外力を受けたときに前記応力部材の前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層を含むか否かを判定する工程と、
前記応力吸収層を含むと判定されたときに、前記積層体に、前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、0°±15°に前記強化繊維が配向した締結強化層を設けることを決定する工程と、
を有する、構造体の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体およびその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、上記強化繊維に含浸された樹脂組成物(マトリクス樹脂)と、を含む薄膜状の繊維強化樹脂(以下、単に「Uni-Direction (UD)シート」ともいう。)が知られている。このUDシートは、金属よりも軽量であり、一方で機械的強度が高いため、複数枚を積層して互いに融着させ、補強される相手部材の表面に配置して、補強材として使用することなどが検討されている。上記相手部材の表面への配置は、締結により行われることがある(たとえば、特許文献1など)。
また、複数のUDシートを、強化繊維の配向方向を層ごとに変化させて積層し融着させることで、補強材の、複数の方向への強度を高めることができる(たとえば特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-114139号公報
【特許文献2】特開2022-103810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、UDシートを積層し融着させた補強材により補強された部材(構造体)は、それ自体が移動体などの補強部材として使用されることがある。そして、本発明者らの知見によれば、このような補強部材では、外力を受けたときに補強材のうち相手部材との締結部位が破壊されやすいことがある、という問題があった。締結部材の数を増やして、締結部位における応力を締結部材の位置ごとに分散させようとしたところ、相手部材との締結領域における補強材の破壊を抑制できるときと抑制できないときとがあり、締結強度の向上が常に図れるわけではなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、UDシートを積層し融着させた補強材が相手部材に締結された構造体であって、締結部材の数を増やしても相手部材への補強材の締結強度を高めることができないときに、相手部材への補強材の締結強度を高めることができる構造体、およびこの構造体の設計方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[9]の構造体に関する。
[1]外力を受けて応力を発生する応力部材と、
締結部材により前記応力部材に締結された補強材と、を有し、
前記補強材は、一方向に配向した複数の強化繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂が融着されてなる積層体であって、
前記積層体は、外力を受けたときに前記応力部材の前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層と、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層と、を有する、
構造体。
[2]前記応力部材は、外力を受けたときに、エネルギー量が最も大きい第1応力が発生し、かつ前記締結部材の位置にエネルギー量が前記第1応力よりも小さい第2応力が発生し、
前記積層体は、前記第2応力の方向に対して±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層と、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層と、を有する、
[1]に記載の構造体。
[3]前記応力部材は、外力を受けたときに、前記締結部材の位置に前記第1応力とは異なる方向への前記第2応力が発生する、
[2]に記載の構造体。
[4]前記締結強化層は、前記補強材の最外層として配置された、
[1]~[3]のいずれかに記載の構造体。
[5]前記応力吸収層は、+60°±15°に前記強化繊維が配向した層と、-60°±15°に前記強化繊維が配向した層とが積層方向に連続して配置された、
[1]~[4]のいずれかに記載の構造体。
[6]柱状の構造体であり、
前記締結部材は、前記柱状の側面に配置された、
[1]~[5]のいずれかに記載の構造体。
[7]頂面部、側面部およびフランジ部を有する断面ハット状の構造体であり、
前記締結部材は、前記側面部または前記フランジ部に配置された、
[1]~[6]のいずれかに記載の構造体。
[8]柱状の構造体であり、
前記締結部材は、前記柱状の長軸方向の端部に配置された、
[1]~[7]のいずれかに記載の構造体。
[9]自動車のピラーである、
[1]~[8]のいずれかに記載の構造体。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[10]の構造体の設計方法に関する。
[10]外力を受けて応力を発生する応力部材と、締結部材により前記応力部材に締結された補強材と、を有する構造体であって、前記補強材は、一方向に配向した複数の強化繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂が融着されてなる積層体である構造体の、前記締結部材の位置に発生する応力の方向を解析する工程と、
前記積層体が、外力を受けたときに前記応力部材の前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、±60°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した応力吸収層を含むか否かを判定する工程と、
前記応力吸収層を含むと判定されたときに、前記積層体に、前記締結部材の位置に発生する応力の方向に対して、0°±15°に前記強化繊維が配向した締結強化層を設けることを決定する工程と、
を有する、構造体の設計方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、UDシートを積層し融着させた補強材が相手部材に締結された構造体であって、締結部材の数を増やしても相手部材への補強材の締結強度を高めることができないときに、相手部材への補強材の締結強度を高めることができる構造体、およびこの構造体の設計方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に関する構造体の模式的な構成を示す外観図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す柱状部材が、頂面に対して図中Z方向の反対方向に衝撃を受けたときに柱状部材に発生する応力の方向を示す模式図である。
【
図3】
図3は、補強材の層構成を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、柱状部材(応力部材)、補強材および締結部材を有する構造体の別の構成および層構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、柱状部材(応力部材)、補強材および締結部材を有する構造体の別の構成および層構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、柱状部材(応力部材)、補強材および締結部材を有する構造体の別の構成および層構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、構造体の設計方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施例における試験片およびアルミニウム板の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[構造体の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に関する構造体の模式的な構成を示す外観図である。構造体100は、柱状部材110と、柱状部材110の表面に配置された補強材120と、補強材120を柱状部材110に締結する複数の締結部材130と、を有する。
【0011】
柱状部材110は、一方向(図中Y方向)に延びた略長方形状の頂面部112と、頂面部112の両端部(図中X方向両端部)から同じ方向(図中Z方向の反対方向)に垂直に延びた側面部114と、側面部114の下端が側方(図中X方向およびその反対方向)に延びた一対のフランジ部116と、を有する。頂面部112、側面部114およびフランジ部116は、同じ厚みを有する金属性または樹脂製の板状であり、これらがそれぞれのX方向端部において接続されて、全体として、X方向に平行な断面がハット形の形状となっている。
【0012】
なお、
図1に示す柱状部材110は、頂面部112、側面部114およびフランジ部116のY方向への長さがすべて同じ長さとなっているが、これらは変化していてもよい。また、
図1に示す柱状部材110は、側面部114のZ方向への高さがY方向全体にわたって一定となっているが、これらは場所によって変化していてもよい。また、
図1に示す柱状部材は、頂面部112およびフランジ部116のX方向への幅がY方向全体にわたって一定となっているが、これらは場所によって変化していてもよい。
【0013】
補強材120は、一方向に配向して配列された複数の強化繊維と、上記強化繊維に含浸された樹脂組成物(マトリクス樹脂)と、を含む薄膜状の繊維強化樹脂(UDシート)が複数枚積層され、互いに融着されて形成されている。補強材120は、フランジ部116の頂面部112側(Z方向側)の表面に配置され、複数の締結部材130によってフランジ部116に締結されている。
【0014】
補強材120の平面形状および厚みは特に限定されず、用途に応じたいかなる形状であってもよい。なお、補強材120の厚みは1mm以上4mm以下であることが好ましい。
【0015】
締結部材130は、本実施形態では補強材120を貫通して柱状部材110に挿入したセルフピアスリベットである。ただし締結部材130の種類はこれに限定されず、他の種類のリベット、ボルトとナットや、ナットを用いないネジなどであってもよい。
【0016】
柱状部材110は、それ自体が補強部材であり、頂面部112に対して図中Z方向の反対方向に衝撃を受けたときに、当該衝撃による荷重を引き受けて吸収し、他の部材の破壊を抑止するために用いられる。柱状部材110は、衝撃(外力)を受けたときに部材内に応力を発生して外力を緩和する。柱状部材110は、本実施形態における応力部材の一例である。
【0017】
図2は、
図1に示す柱状部材110が、頂面に対して図中Z方向の反対方向に衝撃を受けたときに柱状部材110に発生する応力の方向を示す模式図である。
図2に示すように、柱状部材110が、頂面部112に対して図中Z方向の反対方向に外力EFを受けると、柱状部材110の全体(頂面部112、側面部114およびフランジ部116)には柱状の延びている方向(図中Y方向)に第1応力F1が発生する。第1応力F1は、外力EFにより柱状部材110の内部に発生するエネルギー量が最も大きい応力である。
【0018】
一方で、柱状部材110が外力EFを受けると、頂面部112は下方向(図中Z方向の反対方向)にたわみ、一対の側面部114および一対のフランジ部116がいずれも互いから離れるように、変形する。このとき、側面部114およびフランジ部116には、上記互いから離れる方向(図中X方向およびその反対方向)への応力が発生する。そして、この応力が発生する部位に締結部材130があると、応力は締結部材130の位置に集中しやすい(このように、締結部材130の位置に発生する応力を、応力F2とする)。なお、第2応力F2の大きさは第1応力F1よりも小さい。
【0019】
図3は、補強材120の層構成を説明する模式図である。
【0020】
補強材120は、エネルギー量が最も大きい第1応力F1に対する補強効果を高めるように、第1応力F1の方向(図中Y方向)に対して所定の角度(本実施形態では±30°±15°)に強化繊維が配向するように、複数のUDシートが積層されている。そして、その結果、第2応力F2の方向(図中X方向)に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向するように、複数のUDシートが積層されて互いに融着されている。
図3に示すように、本実施形態の補強材120では、第2応力F2の方向に対して+60°に強化繊維が配向した層124と、第2応力F2の方向に対して-60°に強化繊維が配向した層126と、が複数枚積層されている。層124および層126は、補強材120の応力に対する吸収性を高めるための応力吸収層の一例である。
【0021】
ところで、第1応力F1の方向(図中Y方向およびその反対方向)に対して所定の角度に強化繊維が配向した層124および層126によっては、第2応力F2(図中X方向およびその反対方向への応力)に対する強度が高められないことがある。そして、図中X方向およびその反対方向への第2応力F2が外力EFによって発生し、締結部材130が補強材120を貫通する位置にこの応力が集中すると、締結部材130の位置において補強材120を破壊してしまうことがある。
【0022】
本発明者らの知見によると、補強材120に含まれる応力吸収層の強化繊維の配向角度が、第2応力F2の方向(図中X方向)に対して±60°±15°となるとき、締結部材130の数を増やしても締結強度を高めることができない。この理由は定かではないがおそらく、第2応力F2の方向に対して±60°±15°となる方向に強化繊維が配向していると、第2応力F2によって補強材が伸長しやすく、十分に応力を吸収しきれないためだと考えられる。
【0023】
そこで、本実施形態では、補強材120は、第2応力F2の方向(図中X方向およびその反対方向)に対して、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した層122および層128を設ける。これらの層122おおよび層128は、締結部材130の位置において発生する第2応力F2による補強材120の破壊を抑止して締結強度を高める、締結強化層の一例である。
【0024】
締結強化層の位置は限定されず、補強材120の最外層(層122および層128、あるいはこれらの一方)として配置されていてもよいし、補強材120の積層方向内部で他の層に挟まれて配置されていてもよい。締結強化層が補強材120の積層方向内部に配置されるとき、締結強化層は補強材120の積層方向中央部に配置されることが好ましい。言い換えると、締結強化層を挟んで積層方向一方側に配置された応力吸収層の数と、積層方向他方側に配置された応力吸収層の数と、は同じ数であることが好ましい。
【0025】
また、締結強化層の数も限定されず、1層であってもよいし、複数層であってもよい。本発明者らの知見によれば、締結強化層は1層でも十分に締結強度を高めることができる。そのため、締結強化層は、補強材120の最外層に上下1層ずつ、あるいは歩競争の積層方向中央部に1層、配置されることが好ましい。
【0026】
なお、応力吸収層の数も特に限定されず、補強材120に要求される応力吸収性に応じて決定することができる。応力吸収層の配置も特に限定されないが、応力吸収性の偏りを防ぐため、第2応力F2の方向に対して+60°±15°に強化繊維が配向した層124と、第2応力F2の方向に対して-60°±15°に強化繊維が配向した層126と、が積層方向に連続して配置されることが好ましい。また、補強材120を構成する層のうち、半分以上の層が±60°±15°に強化繊維が配向した応力吸収層であることが好ましく、締結強化層を除いた全ての層が±60°±15°に強化繊維が配向した応力吸収層であることがより好ましい。
【0027】
図4は、柱状部材410(応力部材)、補強材420および締結部材430を有する構造体400の別の構成および層構成を示す模式図である。
図5は、柱状部材510(応力部材)、補強材520および締結部材530を有する構造体500の別の構成および層構成を示す模式図である。
【0028】
図4では、一方向に伸びた柱状(
図4は平面図なので、長方形形状に示されている。)の補強材420が、その短辺方向端部で、複数の締結部材430により柱状部材410に締結されている。
図5では、一方向に伸びた柱状(
図5は平面図なので、長方形形状に示されている。)の補強材520が、その長辺方向端部で、複数の締結部材530により柱状部材510に締結されている。そして、
図4および
図5のいずれも、第1応力F1の方向は図中上下方向である。ただし、第2応力F2の方向は、
図4では第1応力F1と同じく図中上下方向、
図5では第1応力F1とは異なり図中左右方向である。なお、
図4や
図5に示すように、締結部材の位置における第2応力F2の方向は、締結部材と、当該締結部材に最も近い補強材120の端部と、を結ぶ方向となることがあり得るが、これに限定されない。
【0029】
これらのときも、補強材420および補強材520が、第2応力F2の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向するように、複数のUDシートが積層されて互いに融着されている応力吸収層である層424および層426、ならびに層524および層526を有するとき、締結部材430または締結部材530の数を増やしても締結強度を高めることができない。そのため、これらの場合には、第2応力F2の方向に対して、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層である層422および層428、ならびに層522および層528を設けることで、補強材120の締結強度を高めることができる。
【0030】
なお、締結強化層は、上述した各実施形態のように、第2応力F2の方向に対して±60°±15°となる方向に強化繊維が配向している層が生じるとき、あるいは第2応力F2の方向に対して±60°±15°となる方向に強化繊維が配向している層のみが積層されているときに設ければよく、このように配向した層がないときは、締結強化層を設けなくてもよい。
【0031】
また、
図3や
図5に示すように、外力EFにより応力部材に発生する第1応力F1の方向と、外力EFにより締結部位に発生するF3の方向と、が異なるようなときは、締結部位の破壊が生じやすいため、締結強化層による締結強度の向上効果が顕著である。
【0032】
図6は、柱状部材610(応力部材)、補強材620および締結部材630を有する構造体のさらに別の構成および層構成を示す模式図である。
図6に示す構造体600は、
図6では、柱状部材610が途中で屈曲した形状である。そして、柱状部材610は、その平面視における短辺方向端部で、複数の締結部材630により柱状部材610に締結されている。
図6に示す構造体600では、複数の締結部材630が配置された位置ごとに、異なる方向への第2応力F2が発生する。
【0033】
このときも、補強材620を構成するUDシートの、強化繊維の配向方向(通常、第1応力F1の方向に応じて定められる)によっては、それぞれの締結部材630の位置のうちいずれかの位置に関して、第2応力F2の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向する応力吸収層が補強材620に含まれることがあり得る。たとえば、
図6に示す構造体600では、締結部材630aの位置における第2応力F2に関して、第2応力F2の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向する応力吸収層である、層624および層626が補強材620に含まれる。このときは、締結部材630aの位置における第2応力F2の方向に対して、0°±15°となる角度に前記強化繊維が配向した締結強化層である層622および層628を、補強材620に含ませればよい。
【0034】
それぞれの層を形成するUDシートは、いずれも一方向に配向した複数の強化繊維210と、強化繊維210に含浸されたマトリクス樹脂220と、を含む。
【0035】
強化繊維210の材料は、特に限定されない。たとえば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、および金属繊維などを、上記強化繊維として用いることができる。これらのうち、炭素繊維およびガラス繊維が好ましい。
【0036】
強化繊維210は、強化繊維210による強度の向上効果を十分に高める観点からは、平均直径が1μm以上20μm以下であることが好ましく、4μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0037】
強化繊維210の長さは、通常15mm以上である。強化繊維210の長さの下限値は、20mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。強化繊維210の長さの上限値の最大値は、たとえば50mである。
【0038】
また、強化繊維210は、サイジング剤によりサイジング処理されていてもよい。
【0039】
上記サイジング剤は特に限定されないが、変性ポリオレフィンが好ましく、得には、カルボン酸金属塩を含む変性ポリオレフィンであることがより好ましい。上記変性ポリオレフィンは、たとえば、未変性ポリオレフィンの重合体鎖に、カルボン酸基、カルボン酸無水物基またはカルボン酸エステル基をグラフト導入し、かつ上記官能基と金属カチオンとの間で塩を形成させたものである。
【0040】
上記未変性ポリオレフィンは、エチレンに由来する構成単位の含有量が50モル%以上であるエチレン系重合体、またはプロピレンに由来する構成単位の含有量が50モル%以上であるプロピレン系重合体であることが好ましい。上記エチレン系重合体の例には、エチレン単独重合体、およびエチレンと炭素原子数3以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。上記プロピレン系重合体の例には、プロピレン単独重合体、およびプロピレンとエチレンまたは炭素原子数4以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。上記未変性ポリオレフィンは、ホモポリプロピレン、ホモポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、またはエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体であることが好ましい。これら未変性ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィンを構成するα-オレフィンは、化石燃料に由来するものであってもよく、バイオマス原料に由来するものであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0041】
また、強化繊維210は、集束されて繊維束となっているものを開繊して用いてもよい。このとき収束された炭素繊維束あたりの単糸数は、100本以上100,000本以下であることが好ましく、1,000本以上50,000本以下であることがより好ましい。
【0042】
それぞれの繊維強化樹脂の全質量に対する、強化繊維210の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
それぞれの繊維強化樹脂の全体積に対する、強化繊維210の含有量は、10体積%以上70体積%以下であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、20体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
マトリクス樹脂220の材料は、特に限定されない、マトリクス樹脂220は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。また、マトリクス樹脂220は、結晶性樹脂であってもよいし、非結晶性樹脂であってもよい。これら熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、化石燃料に由来するものであってもよく、バイオマス原料に由来するものであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0045】
上記熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびポリ4-メチル-1-ペンテンなどを含むポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ならびにフッ素樹脂などが含まれる。
【0046】
上記熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびジアリルテレフタレート樹脂などが含まれる。
【0047】
これらのうち、補強材120の成形性をより高める観点からは、熱可塑性樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂のうち、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂が好ましく、より低温での成形を可能にして生産効率をより高める観点からは、ポリオレフィン樹脂がより好ましい。
【0048】
マトリクス樹脂220は、添加剤を含む樹脂組成物であってもよい。上記添加剤の例には、公知の充填材(無機充填材、有機充填材)、顔料、染料、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、および軟化剤などが含まれる。たとえば、レーザーの照射によってUDシートを融着させて補強材120を形成するときは、マトリクス樹脂220は、照射する波長のレーザーを吸収する色素を含有する樹脂組成物であることが好ましい。上記色素は、300nm以上3000nm以下のいずれかの波長の光を吸収する色素であればよく、カーボンブラックであることが好ましい。
【0049】
また、マトリクス樹脂220は、上記以外の樹脂や、上記強化繊維よりも短い長さの短繊維などの他の成分を含んでいてもよい。
【0050】
それぞれの繊維強化樹脂の全質量に対する、マトリクス樹脂220の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、25質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以上65質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
[構造体の設計方法、補強材の製造方法、構造体の製造方法]
図7は、上述の構造体の設計方法を示すフローチャートである。
【0052】
まず、応力部材に対して補強材をどのように配置するかを決定し、補強材をどの位置で締結するかを決定する(工程S710)。具体的には、用途に応じて形状が決まっている応力部材に対して、所期の強度向上効果を得るための補強材の配置位置を決定する。このとき、強度向上効果に応じて補強材に含まれる各層における強化繊維の配向方向も決定する。また、このとき、締結方法なども決定する。
【0053】
次に、構造体が外力EFを受けたときに、応力部材に発生する応力を解析する(工程S720)。解析は、公知のソフトウェアにより行うことができる。このとき、応力部材に発生する応力のうち、エネルギー量が最も大きい応力を第1応力F1とし、締結部材の位置に発生する、第1応力F1よりも小さい応力を、第2応力F2とする。そして、第1応力F1および第2応力F2の方向を特定する。なお、構造体が用途により異なる方向から外力EFを受けるときは、最も大きい応力が応力部材に生じる方向からの外力をもとに、第1応力F1および第2応力F2を決定すればよい。
【0054】
次に、補強材に含まれる各層における強化繊維の配向方向と、第2応力F2との角度差を計算する。そして、補強材が、第2応力F2の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向する応力吸収層を含むかどうかを判定する(工程S730)。
図6に示したように、複数の締結部材の位置ごとに第2応力F2の方向が異なるときは、第2応力F2の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向する応力吸収層があるとなる締結部材の位置が1つでもあるときは、補強材が上記応力吸収層を含むと判定する。
【0055】
前工程で、補強材が、第2応力の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向する応力吸収層を含むと判定されたときは、補強材が、第2応力の方向に対して±0°±10°の方向に強化繊維が配向する締結強化層を含むものとするように、補強材の層構成を決定する(工程S740)。補強材が、第2応力の方向に対して±60°±15°の方向に強化繊維が配向する応力吸収層を含まないと判定されたときは、補強材が、上記締結強化層を含むものとしてもよいし、上記締結強化層を含まないものとしてもよい。
【0056】
このようにして、締結部材の位置における第2応力F2の方向と、強化繊維の配向方向と、の関係に応じて、補強材に締結強化層を含ませるように、構造体を設計することができる。
【0057】
構造体が設計されたら、当該構造体に含まれる補強材を製造する。具体的には、強化繊維の配向方向が、設計された構造体における補強材の層構成に応じた方向になるように、複数枚のUDシートを積層する。そして、UDシートがマトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を含むときには、積層されたUDシートを加熱および加圧してこれらを融着させればよい。また、UDシートがマトリクス樹脂として熱硬化性樹脂を含むときには、積層されたUDシートを熱などにより硬化させてこれらを融着させればよい。
【0058】
このようにして製造された補強材を、構造体の設計に応じた位置で、応力部材に締結することで、上述の構造体を製造することができる。
【0059】
なお、上記説明は本実施形態の例示的な実施形態であり、本発明が上記した実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0060】
たとえば、
図1に例示した構造では、断面ハット状の柱状部材のフランジ部で補強材を締結していたが、側面部などで締結してもよい。
【0061】
また、応力部材の形状も特に限定されず、断面ハット状以外の柱状でもよいし、その他の形状でもよい。
【0062】
上述した構造体は、自動車のAピラー、Bピラー、CピラーおよびDピラーや、自動車および住設のフロア材、建築材の制振ブレース、バッテリーのエンクロージャーなどに使用することができる。
【実施例0063】
[実験1]
実験1では、補強材を構成する各層における強化繊維の配向角度と、締結部材の数による締結強度と、の関係を調べた。
【0064】
1-1.積層体の作成
UDシートとして、一方向に配列した炭素繊維にポリプロピレンを含浸させたUDシート(三井化学株式会社製、TAFNEX(登録商標)、繊維体積分率(VF):50%、厚差、0.16mm)を用意した。このUDシートを、縦215mm×横215mmに切断して、単層のUDシートを得た。このとき、縦方向に対する繊維の配向方向が異なる複数種の単層のUDシートを作製した。
【0065】
ポリエステル製の離型フィルム(底面フィルム)の上に、上記の単層のUDシートを、各層における炭素繊維の配向方向を表1に示す方向として12枚積層し、さらにその上にポリエステル製の離型フィルム(上面フィルム)を配置した。なお、表1に示す炭素繊維の配向方向は、縦方向を0°としたときの方向である。
【0066】
縦240mm、横240mm、厚み2mmのステンレス鋼製平板、縦240mm、横240mm、厚み0.1mmのアルミニウム合金製フィルム、縦外寸240mm、横外寸240mm、厚み1.5mmt、縦内寸220mm、横内寸220mmのステンレス鋼製額縁、縦240mm、横240mm、厚み0.1mmのポリエステル製フィルムの順序で材料を重ね、上記のUDシートの積層体を額縁の枠内に収め、さらにいずれも上記と同じサイズのポリエステル離型フィルム、アルミニウム合金製フィルム、ステンレス鋼製平板を重ねた。これを、油圧プレス装置(株式会社東洋精機製作所製、ミニテストプレス)に配置し、加圧時の温度を180℃として1MPaの圧力を加えながら2分間保持し、さらに、5MPaの圧力を加えながら3分間保持した後、圧力を開放した。その後、すぐに15℃の冷却水が循環した冷却用油圧プレス装置(東洋精機製、ミニテストプレス)に成形構造体を配置し、5MPaの圧力を加えながら3分間保持した後、圧力を開放した。その後、冷却用油圧プレス装置から成形体を取り出し、ステンレス鋼製平板、ポリエステル製フィルム、アルミニウム合金製フィルム、およびステンレス鋼製額縁を除去し、補強材1-1~1-5を得た。
【0067】
【0068】
1-2.構造体の作製
ウォータージェット切断加工により、縦方向100mm、横方向25mmの試験片を各補強材から採取し、試験片とした。
【0069】
セルフピアッシングリベット接合装置(ポップリベット・ファスナー株式会社製、Emhart SPR)のCフレームに取り付けられた接合用ダイの上に、試験片と、縦方向100mm、横方向25mm、厚み2.0mmtのアルミニウム板(JIS H4000:2014 5052-O)とを
図8に示すように配置した。
【0070】
その後、セルフピアッシングリベットエレメント(ポップリベット・ファスナー株式会社製、SPR550S1C0-4Y1)をセルフピアッシングリベット接合装置に取り付けられたツールで試験片側から圧入し、セルフピアッシングリベット接合継手を作製し、試験片がアルミニウム板に締結された構造体を得た。このとき、セルフピアッシングリベットエレメントの平面部と積層板の表面の深さ方向の差異が-0.3mmから0.3mmの範囲に収まるようにセルフピアッシングリベットの圧入量を制御した。
【0071】
その後、構造体のうち、セルフピアッシングリベット接合継手の両端部から長さ50mm、幅25mmの部分をエメリー紙#320でブラスティングし、アセトンで脱脂した。それぞれの構成材料と同じ材種の長さ50mm、幅25mmのタブを用意して、エメリー紙#320でブラスティングし、アセトンで脱脂した。試験片およびアルミニウム板の、締結部位とは反対側の端部をブラスティングおよび脱脂して、この部位にプライマー(東亜合成株式会社製)を塗布し、十分に乾かし、その後、シアノアクリレート接着剤(東亜株式会社製)を塗布して、それぞれに同じ材料のタブを乗せ、構造体とタブとを接着した。
【0072】
セルフピアッシングリベットを形成する位置を、
図9A~
図9Dのように変更して、それぞれ構造体を得た。なお、
図9Bおよび
図9Dの構成では、試験片とアルミニウム板との接触部分の長さ方向の幅を2倍にし、
図9Cおよび
図9Dの構成では、試験片およびアルミニウム板の横方向の幅を2倍にした。
【0073】
1-3.評価
上記の構造体を引張試験に供し、継手の荷重と変位の関係を測定した。引張試験には、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、AG-X 100kN)を用いた。精密万能試験機のクロスヘッドおよび試験機ベースに取り付けられた引張試験用グリップにタブを固定し、クロスヘッドに引張方向の強制変位を課した。上記の構造体をグリップに固定したときのグリップ間距離は、
図9Aおよび
図9Cの構造体では75mmであり、
図9Bおよび
図9Dの構造体では100mmである。変位速度は10mm毎分であり、試験温度は23℃とした。そして、締結部位が破壊されたときの荷重を、最大耐久荷重とした。得られた結果を
図10に示す。
図10は、横軸に補強材の種類、縦軸に最大耐久荷重を示す。
【0074】
図10に示すように、締結部位における応力(本試験では、0°方向に応力が発生している)に対する締結強度(最大耐久強度)は、締結部材の数を多くすると向上する傾向が見られたが、締結部位における応力に対して±60°±15°となる方向に強化繊維が配向している層がある場合には、締結部材の数を多くしても締結強度は向上しなかった。
【0075】
[実験2]
実験2では、補強材1-5に対して、締結部位における応力に対して±0°±10°となる方向に強化繊維が配向している層を追加したときに、最大耐久強度が向上するか否かを調べた。
【0076】
補強材1-5の層構成に対して、第1層および第12層の外側に、炭素繊維の配向方向を0°とした層をそれぞれ1層ずつ追加した以外は補強材1-5の作製と同様にして、補強材2-1を作製した。
【0077】
補強材1-5の層構成に対して、第6層と第7層との間に、炭素繊維の配向方向を0°とした層を1層追加した以外は補強材1-5の作製と同様にして、補強材2-2を作製した。
【0078】
補強材2-1および補強剤2-2について、実験1と同様に構造体を作製し、最大耐久荷重を測定した。得られた結果を
図11に示す。
図11は、横軸に締結部材(セルフピアッシングリベット接合継手)の位置(
図9参照)、縦軸に最大耐久荷重を示す。
【0079】
図10に示すように、補強材1-5について、締結部位における応力に対して±0°±10°となる方向に強化繊維が配向している締結強化層があると、締結強度が向上した。