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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135741
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アンテナカバー
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20240927BHJP
   H01Q 1/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046581
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日置 貴之
(72)【発明者】
【氏名】宮原 大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋徳
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA05
5J046AA13
5J046AA15
5J046CA03
(57)【要約】
【課題】阻害物の付着を確実に抑制するアンテナカバーを提供する。
【解決手段】当該アンテナカバーは、電波を送信するアンテナを覆うために前記電波を透過可能に形成されたカバー本体と、前記カバー本体に沿って配置され、通電により前記カバー本体を加熱する面状発熱体と、を備え、前記面状発熱体は、第1主電極および第1櫛歯状電極を備える、第1櫛型電極と、第2主電極および第2櫛歯状電極を備える、第2櫛型電極と、前記第1櫛歯状電極および前記第2櫛歯状電極の間に配置された、複数のライン状のPTC抵抗体と、を有し、前記複数のライン状のPTC抵抗体は、間隔をあけて配置されており、前記PTC抵抗体は、導電性粒子と、バインダー樹脂と、特定のワックスと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信するアンテナを覆うために前記電波を透過可能に形成されたカバー本体と、
前記カバー本体に沿って配置され、通電により前記カバー本体を加熱する面状発熱体と、
を備え、
前記面状発熱体は、
第1主電極および第1櫛歯状電極を備える、第1櫛型電極と、
第2主電極および第2櫛歯状電極を備える、第2櫛型電極と、
前記第1櫛歯状電極および前記第2櫛歯状電極の間に配置された、複数のライン状のPTC抵抗体と、
を有し、
前記複数のライン状のPTC抵抗体は、間隔をあけて配置されており、
前記PTC抵抗体は、導電性粒子と、バインダー樹脂と、ワックスと、を含み、
前記ワックスは、天然由来ワックスおよび/または、示差走査熱量計を用いて昇温速度10℃/分で、25℃から150℃まで昇温して得られるDSC曲線において、観察される融解ピークの数が1または2であるポリオレフィン系ワックスを含む、
アンテナカバー。
【請求項2】
前記導電性粒子は、熱膨張係数が、20×10-6/℃以下である、
請求項1に記載のアンテナカバー。
【請求項3】
前記導電性粒子は、平均粒子径が30μm以下である、
請求項1に記載のアンテナカバー。
【請求項4】
前記導電性粒子は、比表面積が5m/g以下である、
請求項1に記載のアンテナカバー。
【請求項5】
前記ワックスが、前記ポリオレフィン系ワックスを含み、
前記DSC曲線における少なくとも1つの融解ピーク高さの絶対値が5W以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアンテナカバー。
【請求項6】
前記ワックスが天然由来ワックスを含み、
前記天然由来ワックスは、ロウエステル成分を10質量%以上含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアンテナカバー。
【請求項7】
前記天然由来ワックスのヨウ素価が80以下である、
請求項6に記載のアンテナカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波を送受信するレーダ装置が実用化されている。レーダ装置は、例えば、車両に搭載され、アンテナから電波を送受信することにより車両の周囲に存在する障害物を検出する。ここで、アンテナをカバーするレドームなどのアンテナカバーに雪や雨などの阻害物が付着すると、電波が減衰するなど、電波の伝搬が阻害され減衰するおそれがある。
【0003】
そこで、アンテナカバーに阻害物が付着することを抑制する技術として、例えば、特許文献1には、降雪時における電気的性能の劣化を防ぎ、定期的なメンテナンスを不要とするアンテナ装置が提案されている。このアンテナ装置は、内部にヒータを配置してレドーム表面の温度を上昇させることで、レドームに付着した雪を溶かして除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6804966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアンテナ装置は、レドームの温度を速やかに上昇させることができず、雪や雨等の阻害物の付着を確実に抑制することが困難であった。
【0006】
本開示は、雪や雨等の阻害物の付着を確実に抑制するアンテナカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るアンテナカバーは、電波を送信するアンテナを覆うために前記電波を透過可能に形成されたカバー本体と、前記カバー本体に沿って配置され、通電により前記カバー本体を加熱する面状発熱体と、を備え、前記面状発熱体は、第1主電極および第1櫛歯状電極を備える、第1櫛型電極と、第2主電極および第2櫛歯状電極を備える、第2櫛型電極と、前記第1櫛歯状電極および前記第2櫛歯状電極の間に配置された、複数のライン状のPTC抵抗体と、を有し、前記複数のライン状のPTC抵抗体は、間隔をあけて配置されており、前記PTC抵抗体は、導電性粒子と、バインダー樹脂と、ワックスと、を含み、前記ワックスは、天然由来ワックスおよび/または、示差走査熱量計を用いて昇温速度10℃/分で、25℃から150℃まで昇温して得られるDSC曲線において、観察される融解ピークの数が1または2であるポリオレフィン系ワックスを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示のアンテナカバーによれば、雪や雨等の阻害物の付着を確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施の形態に係るアンテナカバーを備えたレーダ装置の構成を示す概略断面図である。
図2図2Aは、アンテナカバーの正面図であり、図2Bは、当該アンテナカバーの平面図であり、図2Cは、図2BにおけるA-A線での断面図であり、図2Dは、当該アンテナカバーの側面図であり、図2Eは、当該アンテナカバーの底面図である。
図3図3は、図2BのB-B線での断面の拡大図である。
図4図4は、面状発熱体の底面図である。
図5図5は、カバー本体に対して面状発熱体が配置された様子を示す図である。
図6図6は、レーダ装置が車両に搭載された様子を示す図である。
図7図7は、アンテナカバーを製造する方法における一工程を示す図である。
図8図8は、アンテナカバーを製造する方法における一工程を示す図である。
図9図9Aは、アンテナカバーの加熱装置(面状発熱体)に使用するPTC抵抗体中のポリオレフィン系ワックスのDSC曲線の一例を示すグラフであり、図9Bは、DSC曲線の他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に、本開示の実施の形態に係るアンテナカバーを備えたレーダ装置の構成の概略断面図を示す。レーダ装置は、支持部1と、アンテナ基板2と、アンテナ3と、アンテナ制御部4と、アンテナカバー5とを有する。
【0012】
支持部1は、レーダ装置の各部を支持するための部材であり、アンテナカバー5と共にアンテナ基板2およびアンテナ3を収容する収容室Rを形成する。支持部1は、例えば樹脂材料などから構成される。
アンテナ基板2は、アンテナ3を支持するための部材であり、収容室Rにおいて支持部1に固定されている。アンテナ基板2は、例えば、樹脂材料などから構成される。
【0013】
アンテナ3は、アンテナ基板2に配置され、アンテナ制御部4からの制御信号に応じて所定の周波数の電波W、例えばミリ波を正面に向かって送信するための構成である。また、アンテナ3は、送信された電波Wが外部の物体に反射されて戻る反射波を受信し、その反射波の強度に応じた受信信号をアンテナ制御部4に出力する役割も果たす。
【0014】
アンテナ制御部4は、アンテナ3を制御するための構成であり、アンテナ3に電気的に接続されている。アンテナ制御部4は、所定のタイミングでアンテナ3から電波Wが送信されるように予め設定された制御信号をアンテナ3に出力する。また、アンテナ制御部4は、反射波の強度に応じた受信信号をアンテナ3から受信する。アンテナ制御部4は、送信した電波Wの周波数に対する反射波の周波数の変化などに基づいて、外部に存在する物体の位置を算出する。
【0015】
アンテナカバー5は、アンテナ3を保護するカバー本体(いわゆるレドーム)と、レーダ装置に付着した雪や雨等の阻害物を加熱によって除去するための加熱装置(面状発熱体)7とを有する。図2A図2Eに、当該アンテナカバー5の構造を示す。図2Aは、当該アンテナカバー5の正面図であり、図2Bは、平面図であり、図2Cは、図2BにおけるA-A線での断面図であり、図2Dは、側面図であり、図2Eは、底面図である。また、図3に、図2BのB-B線での断面の拡大図を示す。
【0016】
カバー本体6は、アンテナ基板2およびアンテナ3を全て覆うように配置される。カバー本体6は、アンテナ3の正面、すなわち電波Wの送信側に配置されるため、電波Wを透過可能に形成されている。このとき、カバー本体6は、電波Wの伝搬を阻害しないように、電波Wの周波数に応じた厚みで送信方向に凸状に湾曲するように形成されている。カバー本体6は、電波透過性を有する材料から構成することができ、例えば樹脂材料などから構成される。
【0017】
一方、加熱装置7は、アンテナカバー5の底面側に配置されており、カバー本体6に沿って湾曲するように配置されている。図2Dおよび図3に示すように、加熱装置7は、第1櫛型電極8と、第2櫛型電極9と、複数のライン状のPTC抵抗体10とを含み、通電によってカバー本体6を加熱する。
【0018】
当該加熱装置7の拡大図(底面図)を図4に示す。なお、図4では、第1櫛型電極8および第2櫛型電極9の構造を判別しやすいよう、PTC抵抗体10を点線で示す。図4に示すように、第1櫛型電極8は、第1主電極8aと、当該第1主電極8aから分岐した複数の第1櫛歯状電極8bとを備える。同様に、第2櫛型電極9は、第2主電極9aと、当該第2主電極9aから分岐した複数の第2櫛歯状電極9bとを有する。第1櫛型電極8の櫛歯状電極8bおよび第2櫛型電極9の櫛歯状電極9bは、それぞれ一対一で対応し、これらは略平行に配置されている。さらに、対応する第1櫛歯状電極8bと第2櫛歯状電極9bとの間に、PTC抵抗体10がライン状に配置されている。複数のライン状のPTC抵抗体10は、電波Wを透過させるため、所定の間隔をあけて配置されている。このような構成の加熱装置7によれば、電波Wの伝搬が阻害されない。
【0019】
ここで、上記第1櫛型電極8および第2櫛型電極9はそれぞれ電気を導通可能な材料から構成されていればよい。当該第1櫛型電極8および第2櫛型電極9は、通常金属で構成され、例えばアルミニウム等から構成される。PTC抵抗体10については、後で詳しく説明する。
【0020】
上記加熱装置7は、図5および図6に示すように、レーダ装置や車両Vが備える電源11や、当該電源11に接続された電源制御部12、および検出部13と直接または間接的に接続される。
【0021】
電源11は、加熱装置7の第1櫛型電極8および第2櫛型電極9に給電するための構成であり、電源制御部12の制御に応じて給電のオンとオフを切り換えるように構成されている。
【0022】
検出部13は、カバー本体6の表面上に付着する雪や雨等の阻害物を検出するための構成である。検出部13は、例えば、外部の温度を測定する温度計や、外部の雪や雨等を直接センサで検出するための検出計などから構成することができる。
【0023】
電源制御部12は、検出部13の検出結果に基づいて電源11のオンとオフを切り換えて、加熱装置7によるカバー本体6の加熱を制御するための構成である。
【0024】
このレーダ装置は、図6に示すように、車両Vに搭載することができ、例えば、カバー本体6が車両VのフロントパネルFから外部に露出するように配置することができる。車両Vとしては、例えば、除雪車などの作業車が挙げられる。
【0025】
次に、アンテナカバー5の製造方法について説明する。
【0026】
上記アンテナカバー5の製造方法は特に制限されない。例えば、カバー本体6を形成しておき、当該カバー本体6の裏面に、第1櫛型電極8や第2櫛型電極9、PTC抵抗体を順次形成してもよい。この場合のカバー本体6の形成方法は特に制限されず、各種成形法を適用可能である。一方、第1櫛型電極8や第2櫛型電極9は、パターン状に形成されたアルミニウム箔等をカバー本体6に貼り合わせて形成できる。さらに、PTC抵抗体10は、スクリーン印刷等によって形成可能である。
【0027】
また、図7に示すように、基板21の上に第1櫛型電極8および第2櫛型電極9を作製し、この上にPTC抵抗体10をスクリーン印刷法等によって形成した後、当該基板21ごと、公知の方法で(例えば接着剤による接着や、融着等)カバー本体6に貼り合わせてもよい。このとき、基板21がカバー本体6と接するように貼り合わせてもよく、PTC抵抗体10が、カバー本体6と接するように貼り合わせてもよい。
【0028】
また、図7に示すように、基板21の表面に、第1櫛型電極8や第2櫛型電極9、PTC抵抗体10を形成した後、図8に示すように、当該基板21を金型MのキャビティC内に配置し、溶融樹脂Raを流し込んでカバー本体6を形成してもよい。このとき、第1櫛型電極8や第2櫛型電極9やPTC抵抗体10が、キャビティC内に露出するように配置してもよく、これらがキャビティCの外側に位置するよう、配置してもよい。当該方法によれば、カバー本体6と加熱装置7との間に隙間が生じず、かつ加熱装置7を所望の位置に配置できる。
【0029】
上記レーダー装置の動作について、図6に基づいて説明する。上述のレーダ装置は、アンテナカバー5のカバー本体6が車両VのフロントパネルFから外部に露出するように配置される。そして、図1に示すように、アンテナ制御部4の制御の下、アンテナ3から所定の周波数の電波Wが送信されると、その電波Wが、アンテナカバー5を介して車両Vの前方に伝搬する。車両Vの前方に伝搬した電波Wは、車両Vの前方に存在する物体で反射される。そして、この反射波が、アンテナカバー5を介して戻り、アンテナ3で受信される。
【0030】
反射波がアンテナ3で受信されると、その受信信号がアンテナ3からアンテナ制御部4に出力される。そして、アンテナ制御部4が、受信信号に基づいて反射波の周波数を算出し、送信した電波Wの周波数に対する反射波の周波数の変化などに基づいて、車両Vに対する物体の位置を算出する。
【0031】
続いて、カバー本体6の表面に雪などの阻害物が付着した場合には、図5に示すように、検出部13が、カバー本体6への阻害物の付着を検出する。検出部13は、例えば、車両Vの外部環境の雨滴センサ等で検出したり、温度を測定して付着を予測したりすることで阻害物の付着を検出する。検出部13は、測定した温度を電源制御部12に出力する。
【0032】
電源制御部12は、検出部13で測定された温度に基づいて、カバー本体6への阻害物の付着を判定する。電源制御部12は、検出部13で測定された温度が所定値より高い場合には、阻害物が付着していないと判定し、電源11をオフ状態とする。
【0033】
一方、電源制御部12は、検出部13で測定された温度が所定値以下の場合には、阻害物が付着していると判定し、電源11をオン状態とする。電源11がオン状態となると、電源11から加熱装置7に電力が供給されて、加熱装置7がカバー本体6を加熱する。これにより、カバー本体6の温度が上昇し、カバー本体6の表面に付着した雪などの阻害物を溶かすまたは蒸発させて除去することができる。また、加熱装置7が、カバー本体6を直接的に加熱するため、少ない電力で阻害物を除去することができる。
【0034】
このように、加熱装置7が、カバー本体6を加熱して阻害物の付着を抑制するため、外部環境の変化に関わらず、電波Wを車両Vの前方にスムーズに送信することができ、車両Vの前方に存在する物体を確実に検知することができる。
【0035】
本実施の形態によれば、加熱装置7が、後述のPTC抵抗体を備えるため、短時間で安定して温度を上昇させることが可能である。また、上述のように、PTC抵抗体が、電波Wの授受を妨げないように配置されているため、レーダ装置を安定して使用可能である。
【0036】
なお、上記の実施の形態では、加熱装置7が、カバー本体6の底面側(アンテナ3側)に配置されることを説明したが、加熱装置7の位置は、カバー本体の天面側(外側)であってもよい。
【0037】
また、上記の実施の形態では、カバー本体6が、車両VのフロントパネルFから外部に露出するように配置されたが、阻害物を除去することができればよく、これに限られるものではない。例えば、カバー本体6が、フロントパネルFに当接するように配置し、カバー本体6からフロントパネルFに伝導した熱でフロントパネルFに付着した阻害物を除去することもできる。
【0038】
(PTC抵抗体について)
上述のアンテナカバー5の加熱装置7に使用するPTC抵抗体について詳しく説明する。当該PTC抵抗体は、導電性粒子およびバインダー樹脂と共に、特定のポリオレフィン系ワックスまたは天然由来ワックスを含む。当該PTC抵抗体では、温度が上昇したときに、これらのワックスが、その融点近傍で融解する。これらのワックスの融解による体積増加は、一般的な樹脂の体積増加と比較して格段に大きい。またこれらは容易に融解するため、短時間で抵抗値が大きく増大する。したがって、当該PTC抵抗体を用いた加熱装置7は、雨や雪等の阻害物の付着を確実に抑制することが可能となる。
【0039】
以下、上記PTC抵抗体が、ポリオレフィン系ワックスを含む場合(第1の態様)、および天然由来ワックスを含む場合(第2の態様)にわけて説明する。
【0040】
(1)第1の態様のPTC抵抗体
第1の態様のPTC抵抗体は、示差走査熱量計(以下、「DSC」とも称する)を用いて昇温速度10℃/分で、25℃から150℃まで昇温してDSC曲線を作成したとき、当該DSC曲線に観察される融解ピークの数が1または2であるポリオレフィン系ワックスと、バインダー樹脂と、導電性粒子と、を含む。以下、各成分について説明する。
【0041】
・ポリオレフィン系ワックス
本明細書において、ワックスとは、常温で固体または半固体状であり、加熱によって分解せずに融解する有機物をいう。また、ポリオレフィン系ワックスとは、オレフィン由来の成分を50質量%以上含むワックスをいう。本態様で使用するポリオレフィン系ワックスは、DSCにて昇温速度10℃/分で、25℃から150℃まで昇温したときのDSC曲線において、観察される融解ピークが1つまたは2つである。観察される融解ピークは、1つであることがより好ましい。本明細書において、DSC曲線における融解ピークとは、ピーク高さの絶対値が0.5mW以上である吸熱ピークをいい、高さが0.5mW未満であるノイズは含まないものとする。なお、本明細書におけるDSC曲線は、いずれもサンプル5mgを使用して取得した値である。
【0042】
本明細書において、ピーク高さは、以下のように求めた値とする。まず、DSC曲線において、下に凸となっている領域(吸熱反応している領域)の、ラインの立ち下がり位置と、ラインの立ち上がり位置とをそれぞれ確認する。これらを両方確認できる場合、これらを線でつなぎ、これをベースラインとする。なお、本明細書では、立ち上がりおよび立ち下がりが1mWを超える大きな山なりの領域に対してのみ、ベースラインを引く。例えば図9Bに示すように、1つの大きな山なりの領域(下に凸になっている領域)の中に、立ち上がりまたは立ち下がりが1mW以下の小さいピーク(B、C、およびD)が含まれる場合、大きな山なりの領域に対して1本のみベースラインを引く。また、図9Bに示すように、大きな山なりの領域(下に凸になっている領域)が、2つ以上ある場合には、それぞれに対して、ベースラインを引く(図9Bでは2本)。一方、図9Aに示すように、下に凸となっている領域の、ラインの立ち上がり位置またはラインの立ち下がり位置のいずれか一方が確認できない場合には、立ち上がり位置または立ち下がり位置が確認できる方の裾に沿って直線状にベースラインを引く。
【0043】
そして、DSC曲線の融解ピークの各ピークトップ(図9AではA、図9BではB、C、D、およびE)からそれぞれ、X軸に垂直な線を引き、当該垂直線とベースラインとの交点から、ピークトップまでの距離を、それぞれのピークの高さとする。
【0044】
上記の方法で求められるDSC曲線における融解ピーク高さの絶対値は、5mW以上が好ましい。融解ピーク高さの絶対値が5mW以上であると、当該融解ピーク温度において、多くのポリオレフィン系ワックスが溶融しやすくなる。なお、DSC曲線に融解ピークが2つ存在する場合には、いずれか一方の高さの絶対値が5mW以上であればよい。
【0045】
また、上記ポリオレフィン系ワックスの上記DSC曲線における融解ピークは、80℃以上150℃以下の範囲にあることが好ましく、90℃以上140℃以下の範囲にあることがより好ましく、100℃以上130℃以下の範囲にあることがさらに好ましい。これにより、80℃以上150℃以下で抵抗値上昇を示すPTC抵抗体が得られる。
【0046】
上記ポリオレフィン系ワックスの例の重量平均分子量は、1,000以上1,500,000以下が好ましく、3,000以上20,000以下がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの重量平均分子量が当該範囲であると、上記温度範囲に融解ピークを有しやすい。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算値である。
【0047】
PTC抵抗体は、上記ポリオレフィン系ワックスを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。ポリオレフィン系ワックスの例には、オレフィンの単独重合体や、2種類以上のオレフィンの共重合体、オレフィンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体等が含まれる。ポリオレフィンワックスのより具体的な例には、低密度ポリエチレンワックス、中密度ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス等のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス、エチレン-プロピレン共重合体ワックス、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体ワックス等が含まれる。また、これらを公知の方法で酸化させた酸化ポリオレフィン系ワックスであってもよい。これらの中でも、入手容易性や、PTC特性等の観点でポリエチレン系ワックスが好ましい。
【0048】
PTC抵抗体中における、ポリオレフィン系ワックスの量は、6質量%以上24質量%以下が好ましく、12質量%以上20質量%以下がより好ましい。PTC抵抗体中のポリオレフィン系ワックスの量が6質量%以上であると、PTC抵抗体のPTC倍率がさらに高まったり、PTC抵抗体が昇温し、一定温度になった後の抵抗値の上昇率がさらに高まりやすい。一方で、24質量%以下であると、相対的に導電性粒子の量が十分に多くなり、PTC特性がさらに良好になりやすい。
【0049】
・バインダー樹脂
バインダー樹脂は上記ポリオレフィン系ワックスや後述の導電性粒子を結着したり、これらと基板等とを結着したりすることが可能な樹脂であればよいが、上述のポリオレフィン系ワックスの融解による体積変化を妨げないものが好ましい。また、当該バインダー樹脂自身も昇温により膨張し、PTC抵抗体の抵抗値上昇に寄与可能なものであってもよい。PTC抵抗体は、バインダー樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0050】
当該バインダー樹脂の例には、公知の熱可塑性樹脂が含まれる。具体例には、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリシロキサン樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリレート樹脂、SEBS樹脂(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体)やその水添物、SEPS樹脂(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体)やその水添物等が含まれる。これらの中でも、容易に変形可能であり、上述のポリオレフィン系ワックスの体積変化を妨げにくいとの観点で、SEBS樹脂および水添SEPS樹脂が好ましい。
【0051】
PTC抵抗体中における、バインダー樹脂の量は、6質量以上30質量%以下が好ましく、15質量%以上28質量%以下がより好ましい。PTC抵抗体中のバインダー樹脂の量が6質量%以上であると、導電性樹脂やポリオレフィン系ワックス、当該バインダー樹脂を含む組成物を印刷しやすくなったり、印刷後の定着性が良好になったりする。さらに、PTC抵抗体の強度もさらに高まりやすくなる。一方、バインダー樹脂の量が30質量%以下であると、相対的に導電性粒子の量が十分に多くなり、PTC特性がさらに良好になりやすい。
【0052】
・導電性粒子
導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に制限されないが、熱膨張係数が20×10-6/℃以下である粒子が好ましく、6.0×10-6/℃以下である粒子がより好ましい。導電性粒子の熱膨張係数は、導電性粒子の材料から特定できる。PTC抵抗体は、導電性粒子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0053】
導電性粒子の例には、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素系粒子;ニッケル粉、銅粉、銀粉、タングステン粉などの金属系粒子;等が含まれる。これらの中でも、上述のポリオレフィン系ワックスやバインダー樹脂等との親和性が高く、PTC抵抗体を製造するための組成物内で沈殿し難い、との観点で、ニッケル粉、銀粉、タングステン粉、およびグラファイトが好ましい。
【0054】
また、導電性粒子の形状は特に制限されず、例えば球状であってもよく、不定形であってもよく、チューブ状や棒状、扁平状、破砕状等であってもよい。当該導電性粒子の比表面積は5m/g以下が好ましくい。比表面積は、気体吸着法によって測定される値である。
【0055】
導電性粒子の大きさは、導電性粒子の種類等に応じて適宜選択される。例えば導電性粒子が、球状もしくはこれに近い形である場合、平均粒子径は30μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。平均粒子径が30μm以下であると、PTC抵抗体のPTC倍率がより良好になりやすい。当該平均粒子径はレーザ回折・散乱法で測定した値であり、累積粒度分布における中央値(D50)である。
【0056】
PTC抵抗体中の導電性粒子の含有量は、45質量%以上80質量%以下が好ましく、50質量%以上70質量%以下がより好ましく、55質量%以上67.5質量%以下がさらに好ましい。PTC抵抗体中の導電性粒子の量が45質量%以上であると、PTC特性がより安定しやすい。一方で、PTC抵抗体中の導電性粒子の量が80質量%以下であると、上記ポリオレフィン系ワックスやバインダー樹脂の量が増え、昇温させたときの抵抗値がより高まりやすい。
【0057】
・その他
PTC抵抗体は、上記ポリオレフィン系ワックス、上記バインダー樹脂、および上記導電性粒子以外に、本態様の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例には、酸化防止剤、難燃剤等の各種添加剤が含まれる。
【0058】
・PTC抵抗体の製造方法
本態様のPTC抵抗体は、上記ポリオレフィン系ワックスと、上記バインダー樹脂と、上記導電性粒子と、必要に応じて溶剤を含む組成物を塗布し、これを加熱し、硬化させることで製造できる。
【0059】
溶剤は、上述のポリオレフィン系ワックスやバインダー樹脂、導電性粒子等を、均一に溶解させたり分散させたりすることが可能であればその種類は特に制限されない。ただし、溶剤の沸点は100℃以上が好ましく、100~330℃がより好ましく、150~250℃がさらに好ましい。溶剤の沸点が当該範囲であると、組成物の保存安定性等が高まり、さらには組成物を塗布しやすくなる。
【0060】
当該溶剤は、ポリオレフィン系ワックスの種類やバインダー樹脂の種類等に合わせて適宜選択される。その例には、ルコール、ケトン、エステル、グリコールエステル、グリコールエーテル、エーテル、芳香族炭化水素およびこれらの混合物が含まれ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、テトラリン、トルエン、およびこれらの混合物が好ましい。
【0061】
当該溶剤の量は、所望の組成物の粘度等に合わせて適宜選択されるが、通常、組成物の組成物(インク)の総量100質量部に対して20~70質量部程度が好ましく、25~65質量部がより好ましい。溶剤の量が当該範囲であると、組成物(インク)の粘度が所望の範囲に収まりやすい。
【0062】
組成物の好ましい粘度は、PTC抵抗体の形成方法により適宜選択される。例えば組成物をスクリーン印刷により印刷し、これを硬化させてPTC抵抗体を得る場合には、組成物の粘度は100~400dPa・sが好ましい。当該粘度は、円筒型回転粘度計(リオン社製)により、25℃で測定される値である。組成物の粘度が当該範囲であると、所望の厚みに組成物を塗布でき、さらにはムラ無く膜を形成できる。
【0063】
上記組成物の調製方法は特に制限されず、ポリオレフィン系ワックスや樹脂バインダー、導電性粒子、および溶剤を一度に混合してもよい。一方で先に樹脂バインダーおよび溶剤を混合し、後からポリオレフィン系ワックスや導電性粒子を混合してもよい。
い。
【0064】
そして、上述の組成物の塗布方法は特に制限されず、その例には、スクリーン印刷や、ロールコーティング、ディスペンサーによる塗布が含まれる。
【0065】
また、組成物の硬化方法は、100~200℃程度に加熱する方法が挙げられる。このとき、加熱時間は、1~30分程度が好ましい。組成物を上記程度加熱すると、組成物中の溶剤が除去される。
【0066】
(2)第2の態様のPTC抵抗体
第2の態様のPTC抵抗体は、天然由来ワックスと、バインダー樹脂と、導電性粒子と、を含む。以下、各成分について説明する。
【0067】
・天然由来ワックス
本明細書において、ワックスとは、常温(25℃)で固体または半固体状であり、加熱によって分解せずに融解する有機物をいう。天然由来ワックスとは、植物由来の植物系ワックスまたは動物由来の動物系ワックスをいう。また、植物系ワックスとは、植物を原料としたワックスをいう。動物系ワックスとは、動物由来のワックスをいう。PTC抵抗体は、天然由来ワックスを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。PTC抵抗体が含む天然由来ワックスの種類は特に制限されないが、PTC抵抗体には、通常40℃以上100℃以下での抵抗値上昇が求められる。そこで、当該天然由来ワックスの融点は40℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上90℃以上がより好ましい。
【0068】
当該天然由来ワックスが含むロウエステル成分は10質量%以上が好ましい。ロウエステル成分が、10質量%以上であると、天然由来ワックスの融点が上記範囲に収まりやすい。また、融点付近での融解がより短時間で進行しやすい。
【0069】
ここで、ロウエステル成分とは、高級脂肪酸と高級一価アルコールとが、1対1で結合したエステルをいう。ロウエステル成分は、例えば炭素数が10以上50以下の高級脂肪酸と炭素数が10以上50以下の高級一価アルコールとのエステルである。ロウエステル成分を構成する炭素の総数は、20以上100以下が好ましく、30以上50以下がより好ましい。
【0070】
天然由来ワックスは、遊離の飽和脂肪酸(上記高級脂肪酸)や遊離のアルコール(上記高級一価アルコール)をさらに含んでいてもよい。遊離の飽和脂肪酸の量は、天然由来ワックスの総質量に対して20質量%以下が好ましい。一方、遊離のアルコールの量は、天然由来ワックスの総質量に対して、15質量%以下がより好ましい。
【0071】
また、上記天然由来ワックスのヨウ素価は、80以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下がさらに好ましい。ヨウ素価は、天然由来ワックスが含む成分の炭化水素鎖中の不飽和結合量を表す。天然由来ワックス中のヨウ素価、すなわち不飽和二重結合の量は少ないことが好ましい。不飽和二重結合の量が多いと、PTC抵抗体の温度が上昇しても、天然由来ワックスが融解し難くなる。つまり、ヨウ素価が80を超えると、温度上昇時に抵抗値が高まり難い。これに対し、ヨウ素価が80以下になると、PTC抵抗体の温度が上昇した際、天然由来ワックスが融解しやすく、その抵抗値が高まりやすい。
【0072】
上記天然由来ワックスの一種である、植物系ワックスの例には、キャンデリラワックス、カルナウバロウワックス、ライスワックス、木蝋ワックス、水添ホホバワックス等が含まれる。これらの中でも、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、およびライスワックスが入手容易性や、PTC倍率を高めやすいとの観点で好ましい。
【0073】
一方、天然由来ワックスの一種である、動物系ワックスの例には、蜜蝋、ラノリンワックス等が含まれる。
【0074】
PTC抵抗体中における、天然由来ワックスの量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、7質量%以上40質量%以下がより好ましい。PTC抵抗体中の天然由来ワックスの量が5質量%以上であると、PTC抵抗体の温度上昇時の抵抗値が、さらに高まりやすい。一方で、50質量%以下であると、相対的に後述の導電性粒子の量が十分に多くなり、PTC抵抗体のPTC特性がさらに良好になりやすい。
【0075】
・バインダー樹脂
バインダー樹脂は上記天然由来ワックスや後述の導電性粒子を結着したり、これらと基板等とを結着したりすることが可能な樹脂であればよいが、上述の天然由来ワックスの融解による体積変化を妨げないものが好ましい。また、当該バインダー樹脂自身も昇温により膨張し、PTC抵抗体の抵抗値上昇に寄与可能なものであってもよい。PTC抵抗体は、バインダー樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。当該バインダー樹脂は、第1の態様のPTC抵抗体のバインダー樹脂と同様である。
【0076】
本態様のPTC抵抗体中における、バインダー樹脂の量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。PTC抵抗体中のバインダー樹脂の量が5質量%以上であると、導電性樹脂や天然由来ワックス、当該バインダー樹脂を含む組成物を印刷しやすくなったり、印刷後の定着性が良好になったりする。さらに、PTC抵抗体の強度もさらに高まりやすくなる。一方、バインダー樹脂の量が50質量%以下であると、相対的に導電性粒子の量が十分に多くなり、PTC特性がさらに良好になりやすい。
【0077】
・導電性粒子
導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、上述の第1の態様のPTC抵抗体の導電性粒子と同様である。
【0078】
本態様のPTC抵抗体中の導電性粒子の含有量は、45質量%以上80質量%以下が好ましく50質量%以上70質量%以下がより好ましい。PTC抵抗体中の導電性粒子の量が45質量%以上であると、PTC特性がより安定しやすい。一方で、PTC抵抗体中の導電性粒子の量が80質量%以下であると、上記天然由来ワックスやバインダー樹脂の量が増え、昇温させたときの抵抗値がより高まりやすい。
【0079】
・その他
PTC抵抗体は、上記天然由来ワックス、上記バインダー樹脂、および上記導電性粒子以外に、本態様の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例には、酸化防止剤、難燃剤等の各種添加剤が含まれる。
【0080】
・PTC抵抗体の製造方法
本態様のPTC抵抗体は、上記天然由来ワックスと、上記バインダー樹脂と、上記導電性粒子と、必要に応じて溶剤を含む組成物を塗布し、これを加熱し、硬化させることで製造できる。
【0081】
溶剤は、上述の天然由来ワックスやバインダー樹脂、導電性粒子等を、均一に溶解させたり分散させたりすることが可能であればその種類は特に制限されない。ただし、溶剤の沸点は100℃以上が好ましく、100~330℃がより好ましく、150~250℃がさらに好ましい。溶剤の沸点が当該範囲であると、組成物の保存安定性等が高まり、さらには組成物を塗布しやすくなる。
【0082】
当該溶剤は、天然由来ワックスの種類やバインダー樹脂の種類等に合わせて適宜選択される。その例には、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエステル、グリコールエーテル、エーテル、芳香族炭化水素およびこれらの混合物が含まれ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、テトラリン、トルエン、およびこれらの混合物が好ましい。
【0083】
当該溶剤の量は、所望の組成物(インク)の粘度等に合わせて適宜選択されるが、通常、組成物(インク)の総量100質量部に対して40~90質量部程度が好ましく、40~85質量部がより好ましい。溶剤の量が当該範囲であると、組成物の粘度が所望の範囲に収まりやすい。
【0084】
組成物の好ましい粘度は、PTC抵抗体の形成方法により適宜選択される。例えば組成物をスクリーン印刷により印刷し、これを硬化させてPTC抵抗体を得る場合には、組成物の粘度は100~400dPa・sが好ましい。当該粘度は、円筒型回転粘度計(リオン社製)により、25℃で測定される値である。組成物の粘度が当該範囲であると、所望の厚みに組成物を塗布でき、さらにはムラ無く膜を形成できる。
【0085】
上記組成物の調製方法は特に制限されず、天然由来ワックスや樹脂バインダー、導電性粒子、および溶剤を一度に混合してもよい。一方で先に樹脂バインダーおよび溶剤を混合し、後から天然由来ワックスや導電性粒子を混合してもよい。
い。
【0086】
そして、上述の組成物の塗布方法は特に制限されず、その例には、スクリーン印刷や、ロールコーティング、ディスペンサーによる塗布が含まれる。
【0087】
また、組成物の硬化方法は、100~200℃程度に加熱する方法が挙げられる。このとき、加熱時間は、1~30分程度が好ましい。組成物を上記程度加熱すると、組成物中の溶剤が除去される。
【0088】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示に係るアンテナカバーは、電波を送信するアンテナを覆うカバーに利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 支持部
2 アンテナ基板
3 アンテナ
4 アンテナ制御部
5 アンテナカバー
6 カバー本体
7 加熱装置(面状発熱体)
8 第1櫛型電極
8a、9a 主電極
8b,9b 櫛歯状電極
9 第2櫛型電極
10 PTC抵抗体
11 電源
12 電源制御部
13 検出部
21 基板
C キャビティ
F フロントパネル
M 金型
R 収容室
Ra 溶融樹脂
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9