IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-テープ貼付装置 図1
  • 特開-テープ貼付装置 図2
  • 特開-テープ貼付装置 図3
  • 特開-テープ貼付装置 図4
  • 特開-テープ貼付装置 図5
  • 特開-テープ貼付装置 図6
  • 特開-テープ貼付装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135745
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】テープ貼付装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046592
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK25
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】動作速度や精度に悪影響が出ないように軽量化することができるテープ貼付装置を提供する。
【解決手段】被貼付面95aに貼り付けるためのテープAを搬送するテープ搬送部9と、テープ搬送部9から搬送されるテープAを押圧しながら被貼付面95aに貼り付ける貼付ヘッド10と、テープ搬送部9から貼付ヘッド10へ搬送されるテープAの下面に処理剤Sを塗布する処理剤塗布部7と、テープ搬送部9から貼付ヘッド10へ搬送されるテープAに刃20aを押し当ててテープAを切断するテープ切断部20と、を備え、処理剤塗布部7は、テープAへの処理剤Sの塗布を安定させるためにテープAを下方から支持するテープ支持部71を有し、テープ切断部20は、刃20aとテープ支持部71とでテープAをはさんで切断する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付面に貼り付けるためのテープを搬送するテープ搬送部と、
前記テープ搬送部から搬送されるテープを押圧しながら前記被貼付面に貼り付ける貼付ヘッドと、
前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープの下面に処理剤を塗布する処理剤塗布部と、
前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープに刃を押し当ててテープを切断するテープ切断部と、
を備え、
前記処理剤塗布部は、テープへの前記処理剤の塗布を安定させるためにテープを下方から支持するテープ支持部を有し、
前記テープ切断部は、前記刃と前記テープ支持部とでテープをはさんで切断することを特徴とする、テープ貼付装置。
【請求項2】
前記テープ支持部は、前記処理剤塗布部の前記処理剤を吐出する吐出口よりもテープの搬送方向の上流側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記処理剤は接着剤であることを特徴とする、請求項1に記載のテープ貼付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束を含むテープを被貼付面に貼り付けることによって繊維強化プラスチック(FRP)成形品などを製造するテープ貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維などの繊維束をワークの被貼付面に貼り付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品が製造できることが知られている。
【0003】
FRP成形品の製法には、ATL(Auto Tape Layup)法、AFP(Auto Fiber Placement)法など種々の称呼があるが、これらの製法は厳密に区別されているものではない。本明細書においては、繊維束を押圧しながら被貼付面に貼り付けていく製法を総称してATL法と記し、その装置を繊維束貼付装置と記すこととする。
【0004】
特許文献1には、ATL法を実施する施工法が開示されている。この施工法では、図7に示すように一般的にプリプレグテープ、UDテープと呼ばれる、繊維束にあらかじめ樹脂を含浸させてテープ状に成形したもの(テープA)をATLヘッド90のフィーダー91から貼付ヘッド92へ搬送し、加熱および加圧しながらワーク95の被貼付面95aへ貼り付けるテープ貼付装置が開示されている。また、フィーダー91と貼付ヘッド92の間には、接着剤塗布手段93と加熱手段94を有しており、フィーダー91から送り出されたテープAは接着剤塗布手段93によって被貼付面95aへの貼付面(下面)に熱硬化性の接着剤Sが塗布され、また、加熱手段94によって接着剤Sが加熱されて接着剤Sの硬化反応が開始した状態で、貼付ヘッド92によって被貼付面95aに貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-151326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テープAを被貼付面95aに貼り進めていくと、被貼付面95aからテープAがはみ出さないよう、テープAを切断する必要が生じる。そのため、ATLヘッド90はテープAのテープ切断部96を有している。具体的にはフィーダー91と貼付ヘッド92の間にテープ切断部96として刃97とアンビル98とがテープAをはさむように配置されており、テープAの切断時には図示しない駆動部により刃97がアンビル98に向かって移動し、テープAをはさんで刃97をアンビル98に押し当てることによりテープAを所定の長さで切断する。
【0007】
一方、このように貼付ヘッド92とフィーダー91の間に接着剤塗布手段93、加熱手段94、テープ切断部96、というように構成機器が数多く配置されてしまう場合、ATLヘッド90全体のサイズが増大し、このATLヘッド90を動作させるためのガントリやロボットの負荷が大きくなり、動作速度や精度に悪影響が出る可能性がある。また、これらの構成機器とワーク95とが干渉する可能性が高くなり、テープAの貼り付けが可能なワーク95の形状に制限が生じるおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、動作速度や精度に悪影響が出ないように軽量化することができるテープ貼付装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のテープ貼付装置は、被貼付面に貼り付けるためのテープを搬送するテープ搬送部と、前記テープ搬送部から搬送されるテープを押圧しながら前記被貼付面に貼り付ける貼付ヘッドと、前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープの下面に処理剤を塗布する処理剤塗布部と、前記テープ搬送部から前記貼付ヘッドへ搬送されるテープに刃を押し当ててテープを切断するテープ切断部と、を備え、前記処理剤塗布部は、テープへの前記処理剤の塗布を安定させるためにテープを下方から支持するテープ支持部を有し、前記テープ切断部は、前記刃と前記テープ支持部とでテープをはさんで切断することを特徴としている。
【0010】
本発明のテープ貼付装置では、刃とテープ支持部とでテープをはさんで切断する、すなわち処理剤塗布部のテープ支持部をアンビル代わりにすることにより、テープ貼付装置を構成する部材の点数を減らすことができ、ATLヘッドだけでなくそれを移動させるガントリやロボットの軽量化を図ることができる。
【0011】
また、前記テープ支持部は、前記処理剤塗布部の前記処理剤を吐出する吐出口よりもテープの搬送方向の上流側に設けられていると良い。
【0012】
こうすることにより、テープは切断箇所に処理剤が塗布される前に切断されるため、テープの切断動作によってテープの切断箇所から処理剤が剥離することを防ぐことができる。
【0013】
また、前記処理剤は接着剤であると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明のテープ貼付装置により、動作速度や精度に悪影響が出ないように軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のテープ貼付装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態におけるATLヘッドの詳細を示す図である。
図3】本発明の一実施形態におけるATLヘッドの詳細を示す図である。
図4】本実施形態におけるテープ貼付装置において繊維束をピックアップする様子を示す斜視図である。
図5】本実施形態のATLヘッドによってワークにテープを貼り付ける過程を示す図である。
図6】本実施形態のATLヘッドによってワークにテープを貼り付ける過程を示す図である。
図7】従来のATLヘッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のテープ貼付装置を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、実施の形態に係るテープ貼付装置1の概略構成を示す斜視図である。テープ貼付装置1は、多関節ロボット2、多関節ロボット2のアーム2aの先端部分に取付けられたATLヘッド3、ATLヘッド3にテープAを供給・搬送するテープ搬送手段4、テープAを載置しておく載置台13、ワーク5を保持するワーク台6などを含んで構成されている。
【0018】
本実施形態におけるワーク5は、たとえば、熱可塑性樹脂の射出成型品からなり、その表面に炭素繊維からなるテープAが貼り付けられて補強される。ワーク5の形状、及びテープAを貼り付ける位置、貼り付ける長さは設計により予め定められている。
【0019】
また、本実施形態では、テープAは炭素繊維がばらばらになることを防ぐために樹脂が含浸された状態であり、帯状の形態を有している。本実施形態では、テープAの長手方向および短手方向の寸法は、たとえばそれぞれ500mm、25mmである。
【0020】
多関節ロボット2としては市販の汎用の産業用ロボットを用いることができる。多関節ロボット2のアーム2aの先端部分にATLヘッド3が取り付けられている。
【0021】
図2は、ATLヘッド3の詳細を示す図である。
【0022】
ATLヘッド3は、図2に示すように、接着剤塗布部7、加熱手段8、フィーダー9、および貼付ヘッド10を有している。フィーダー9から貼付ヘッド10の方へ送られるテープAのワーク5と対向する側の面(すなわち下面)に接着剤塗布部7が接着剤Sを塗布し、それを加熱手段8が加熱する。この加熱された熱硬化性接着剤Sを有するテープAを貼付ヘッド10がワーク5の被貼付面5aに押圧することにより、テープAがワーク5に貼り付けられる。
【0023】
また、フィーダー9と貼付ヘッド10の間には、テープAの上面側から刃20aを押し当ててテープAを切断するテープ切断部20が設けられている。
【0024】
接着剤塗布部7は、本説明における処理剤塗布部の一形態であり、図示しない連結プレート(連結手段とも呼ぶ)を介して貼付ヘッド10と連結されており、テープAの送り出し経路においてフィーダー9と加熱手段8の間に位置して接着剤SをテープAの下面に塗布する。
【0025】
接着剤塗布部7およびテープ切断部20の詳細を図3に示す。図3(a)は正面図であり、図3(b)は接着剤塗布部7の上面図である。
【0026】
接着剤塗布部7は、ノズル部70と、このノズル部70へ図示しない供給手段から本発明の塗液にあたる接着剤を供給するための経路である配管7aを有し、ノズル部70の先端に形成された開口である吐出口76からテープAの下面側に向かって上向きに接着剤を吐出する。また、接着剤塗布手段7は、繊維束Aの厚み寸法以上の間隔をもって吐出口76と対向することにより繊維束Aの位置を規制して搬送動作を安定させるためのバックプレート77を有している。
【0027】
ここで、本説明の上向きとは、鉛直上向きのみを指すのではなく、鉛直上向き成分を有する向き全体を指す。すなわち、斜め上向きも本説明における上向きである。
【0028】
ノズル部70は、ノズル部70の先端部を形成する第1リップ部71および第2リップ部72、ノズル部70の本体部を形成する第1のブロック部73および第2のブロック部74、そして、スペーサー75を有している。
【0029】
第1のリップ部71は繊維束Aの搬送方向において第2のリップ部72よりも上流側に位置し、フィーダー9から送り出された繊維束Aは第1リップ面71aと対向した後、第2リップ面72aに対向する。また、第1のリップ部71と第2のリップ部72はスペーサー75を挟んで配置されており、第1のリップ部71の下流側の端部と第2のリップ部72の上流側の端部とで繊維束Aの搬送方向における吐出口76の両端部が規定される。
【0030】
スペーサー75は門型の形状を有しており、上記の通りこのスペーサー75を挟むように第1のリップ部71と第2のリップ部72とが配置されることにより、繊維束Aの搬送方向と略直交する方向(繊維束Aの幅方向)に長い開口である吐出口76が形成される。繊維束Aの搬送方向における吐出口76の寸法(図3(b)における寸法l)および繊維束Aの幅方向における吐出口76の寸法(図3(b)における寸法w)は、スペーサー75の寸法によって規定される。
【0031】
第1のブロック部73は第1のリップ部71と連結されており、第2のブロック部74は第2のリップ部72と連結されている。これら第1のブロック部73と第2のブロック部74もスペーサー75を挟んで配置されており、第1のブロック部73と第2のブロック部74の間には、吐出口76と繋がるスペーサー75の厚み相当の隙間が形成される。第2のブロック部74には配管7aが接続されており、第2のブロック部74内には、第1のブロック部73に対向する面と配管7aとを繋ぐ流路が形成されている。配管7aから接着剤が供給されると、この流路を経由して、第1のブロック部73と第2のブロック部74の間の隙間に接着剤が流入する。そして、この隙間を通って接着剤は吐出口76から吐出される。
【0032】
上記の構成を有する接着剤塗布部7により、接着剤Sが所定の塗布幅で上向きに吐出される。また、吐出口76と対向する位置にて接着剤Sが塗布されたテープAが貼付ヘッド10に向かって搬送されることによってテープAの下面に接着剤Sの塗膜が形成される。この塗膜の厚みはリップ面72aとテープAの距離に規制され、図3(a)に示す寸法hが塗膜の厚さとなる。
【0033】
また、吐出口76からの接着剤の吐出速度は、ディスペンサ7bによって制御可能である。
【0034】
ここで、本実施形態では、第1のリップ部71はバックプレート77および搬送される繊維束Aに向かって第2のリップ部72よりも突き出た形状を有している。すなわち、第1リップ面71aとバックプレート77の間隔は第2リップ面72aとバックプレート77の間隔よりも狭くなっている。これにより、フィーダー9から送り出された繊維束Aは第1リップ面71aに支持されて搬送が安定した状態で吐出口76へと進入することができ、また、図3(a)に寸法hで示すように第2リップ面72aと繊維束Aの下面との間に所定の隙間を設けることができる。この隙間に吐出口76から接着剤が流し込まれ、繊維束Aの下面に接着剤Sの塗膜が形成される。このように、本実施形態における第1リップ部71は、テープAへの接着剤Sの塗布を安定させるためにテープAを下方から支持するものであり、本説明ではテープ支持部とも呼ぶ。
【0035】
なお、接着剤Sは本説明における処理剤である。接着剤Sは熱硬化性接着剤であり、たとえばエポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系などがある。この中でも、たとえばエポキシ系の熱硬化性接着剤は、所定の温度までの昇温をトリガーとして発熱反応を生じ、自己の反応熱により硬化反応が促進する特性を有する。
【0036】
テープ切断部20は、刃20aとテープAに対して刃20aを接離させる図示しない駆動機構を有しており、フィーダー9から貼付ヘッド10へ搬送されるテープAを切断する際に刃20aがテープAに接近し、この刃20aがテープAに押し当てられることによりテープAが切断される。
【0037】
ここで、刃20aがテープAに押し当たってテープAを切断するためには、テープAをはさんで刃20aと反対側に設けられてテープAを支持する物体、いわゆるアンビルが必要である。本実施形態では、接着剤塗布部7のテープ支持部(第1リップ部)71がアンビルを兼ねており、刃20aはテープ支持部71の第1リップ面71aに対向している。そして、テープ支持部71と刃20aとでテープAを挟むことで、テープAを押し切る。
【0038】
図2に戻り、加熱手段8は、図示しない連結プレートを介して貼付ヘッド10と連結されており、繊維束Aの送り出し経路において接着剤塗布部7と貼付ヘッド10の間に位置している。
【0039】
加熱手段8は、反射板やレンズ等の光学系(図示せず)を備えており、貼付ヘッド10の手前で、貼付ヘッド10による押圧貼り付け動作に先立って、繊維束Aに塗布された熱硬化性接着剤を輻射エネルギーによって非接触で加熱する。
【0040】
加熱手段8のケースには図示しない非接触の温度センサが取付けられている。この温度センサにより繊維束Aの温度を計測し、この計測値をもとに、図示しない制御部によって加熱手段8の出力が制御され、繊維束Aの温度(熱硬化性接着剤の温度)が貼り付けに最適な所定の温度に維持される。本実施形態では、加熱手段8は輻射エネルギーにより対象物を加熱するものであり、たとえば熱風方式と比較すると容易に温度を制御することができる。
【0041】
フィーダー9は、ATLヘッド3におけるテープAの搬送装置であって、本説明ではテープ搬送部とも呼ぶ。フィーダー9は、図示しない連結プレートを介して貼付ヘッド10と連結されており、1組のローラによって帯状のテープAを挟持し、このローラが回転駆動することにより貼付ヘッド10の押圧ローラ10aに向けてテープAを送り出す。
【0042】
貼付ヘッド10は、押圧ローラ10aが、ローラ支持部10bを介してベース部10cに取付けられて構成されている。押圧ローラ10aは、テープAを被貼付面5aに押し付けるもので、ローラ支持部10b内には、押圧ローラ10aに圧力を付与するエアシリンダであるシリンダ部10dが配置されている。
【0043】
図1に示すテープ搬送手段4は、予め所定長さに裁断された帯状のテープAが積載される載置台13、載置台13からテープAを1本ずつピックアップするピックアップハンド14、ピックアップハンド14を鉛直方向および水平方向に移動させるガントリ軸15、16を含んで構成されている。
【0044】
ピックアップハンド14は、真空吸着チャック14aを複数個備え、この真空吸着チャック14aにより載置台13上に積載されたテープAを1本ずつピックアップする。
【0045】
テープAが貼付けられるワーク5は、様々な形状(3次元形状)を有している。そのため、ATLヘッド3では、テープAに対する押圧ローラ10aの押圧状態を一定に保つため、押圧ローラ10aがワーク5の被貼付面5aの接線方向に直交する方向(法線方向)から被貼付面5aを押圧するように、ATLヘッド3の姿勢(傾き)を制御する。例えば、ワーク5に対するATLヘッド3の姿勢制御は、ワーク5の3次元設計データに基づいて実施されるようになっている。
【0046】
ここで、接着剤塗布部7、上面保持部20、加熱手段8、フィーダー9、および貼付ヘッド10が共通する連結プレートに連結されていることにより、これらの相対位置は固定され、連動する。これにより、被貼付面5aの形状に倣って貼付ヘッド10(押圧ローラ10a)が姿勢を変えながらテープAの貼り付けを行う場合であっても、フィーダー9から押圧ローラ10aへ送り出されるテープAに対して接着剤塗布部7、上面保持部20、加熱手段8の相対距離を所定値で維持することが可能であるため、接着剤塗布部7による接着剤Sの塗布および加熱手段8による接着剤Sの加熱をテープAの貼り付けと並行して行うことができる。
【0047】
次に、図4に基づいてテープ貼付装置1によるテープAの貼付動作を説明する。
【0048】
まず、テープ貼付装置1が始動すると、ガントリ軸15、16が動作し、図4に示すように、載置台13上のテープAをピックアップハンド14が1本だけピックアップする。このとき、テープAの両端(少なくとも一端)が、ピックアップハンド14の両端より長さ方向に突き出た状態で、真空チャック14aがテープAを吸着しピックアップする。
【0049】
次に、ピックアップハンド14が受渡し位置まで移動する。受渡し位置においてピックアップハンド14が保持するテープAをATLヘッド3内のフィーダー9に受け渡す。受け渡し位置は、ガントリ軸15、16によるピックアップハンド14の可動領域と、多関節ロボット2によるATLヘッド3の可動領域の共通領域内であればよく、その位置に特に制限はない。
【0050】
受渡し位置において、ATLヘッド3内のフィーダー9の上部挿入口(図示せず)に、ピックアップハンド14が保持するテープAの一端が若干挿入されるように多関節ロボット2が動作し、フィーダー9はお辞儀動作をする。
【0051】
テープAの一端が所定長さ分フィーダー9に挿入されると、真空チャック14aの吸着が解除され、テープAがATLヘッド3に受け渡される。同時にフィーダー9が作動し、テープAを所定の待機位置まで搬送する。
【0052】
次に多関節ロボット2が動作し、貼付開始位置までATLヘッド3が移動する。続けて多関節ロボット2が動作し、押圧ローラ10aが被貼付面5aに押し付けられる。
【0053】
このとき、押圧ローラ10aが被貼付面5aに接触するタイミングに合わせてフィーダー9が動作し、丁度テープAの先端が押圧ローラ10aと被貼付面5aとの間に挟まるようにテープAを搬送する。
【0054】
また、このとき、図3(a)に示すように接着剤塗布部7が動作し、フィーダー9によって押圧ローラ10aへ搬送されるテープAの下面に接着剤Sを塗布する。そして、テープAに塗布された接着剤Sを加熱手段8が加熱させる。
【0055】
そして、図1に示すように、ATLヘッド3がテープAの貼付経路に沿ってワーク5の貼付面5a上を移動及び首振り動作をしつつ、テープAを被貼付面5aに貼り付けていく。その間もフィーダー9は作動しており、テープAを搬送、供給する。また、接着剤吹付部7がテープAに接着剤Sを塗布する。
【0056】
テープAが後端まで被貼付面5aに貼り終えられると、接着剤吹付部7の動作が停止し、多関節ロボット2の動作により押圧ローラ10aによる被貼付面5aへの押圧が解除され、1本のテープAの貼り付けが完了する。
【0057】
以下、同じ動作が繰り返され、被貼付面5a上にテープAが貼り付けられていく。
【0058】
ここで、フィーダー9に供給されるテープAが一定長である場合など、テープAの長さが被貼付面5aの貼付領域の長さと一致しているとは限らず、テープAの一部が余る場合がある。この場合は、テープAの貼付が進行して図5(a)のように図示しない制御部に予め設定されている所定長さまでテープAが搬送された時点でテープ切断部20の図示しない駆動部が駆動し、図5(b)に示すようにテープAを切断する。そして、フィーダー9側に残ったテープAは搬送されずにフィーダー9に残り、貼付ヘッド10側のテープAのみが押圧ローラ10aの回転にともなって被貼付面5aへ貼り付けられてゆき、図6のように切断されたテープAの端部まで貼り付けが完了した時点で、被貼付面5aのこのラインへのテープAの貼り付けが完了し、次のラインへのテープAの貼り付けに移行する。このとき、フィーダー9側に残されたテープAは次のラインへの貼付に使用されても良く、また、廃棄されて新たなテープAが供給されて次のラインへの貼付が開始しても良い。
【0059】
このとき、本発明では接着剤塗布部7(処理剤塗布部)のテープ支持部71がテープAの切断時のアンビルを兼ねており、テープ切断部20は、刃20aとテープ支持部71とでテープAをはさんで切断する。
【0060】
このように処理剤塗布部のテープ支持部がアンビルを兼ねることにより、従来のように処理剤塗布部とテープ切断部のアンビルとが別個に設けられる場合と比較してATLヘッド3全体のサイズを縮小化、軽量化することができる。そのため、このATLヘッド3を動作させるためのガントリやロボットの負荷を小さくすることができ、動作速度や精度への影響を軽減できる。
【0061】
また、ATLヘッド3の縮小化によりATLヘッド3の構成機器とワーク5とが干渉する可能性を小さくすることができ、テープAの貼り付けが可能なワーク5の形状の制限を少なくすることができる。
【0062】
また、図2などに示すようにATLヘッド3の構成部品が一方向に偏在する場合、慣性モーメントによって貼付ヘッド10の押圧姿勢が安定しない可能性があるが、偏在する部品の重量を軽減することにより、このように押圧姿勢が安定しなくなる可能性も軽減することができる。
【0063】
また、本実施形態では処理剤塗布部である接着剤塗布部7におけるテープ支持部71は、吐出口76よりもテープAの搬送方向の上流側に設けられていることにより、テープAの切断時に切断箇所には接着剤Sは塗布されておらず、切断されてから接着剤Sが塗布されるため、テープAの切断動作によってテープAの切断箇所から接着剤Sが剥離することを防ぐことができる。
【0064】
以上のテープ貼付装置により、動作速度や精度に悪影響が出ないように軽量化することが可能である。
【0065】
ここで、テープ貼付装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では処理剤は接着剤としているが、それに限らずたとえばプライマー(下地剤)などでも良い。
【0066】
また、テープ切断部20およびテープ支持部が設けられるのは吐出口76の上流側に限られず、下流側であっても構わない。
【0067】
また、上記の説明では、貼付ヘッド10のワークとの当接部分は押圧ローラ10aであるが、これに限らずたとえば押圧シューなどでも良い。
【0068】
また、上記の説明ではテープ搬送手段4にガントリ構造体を採用しているが、別の実施の形態では、ガントリ構造体に代えて多関節ロボットを採用してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態においては、ATLヘッド3の駆動装置として多関節ロボット2を採用しているが、別の実施の形態では、多関節ロボットに代えてガントリ構造体を採用しても差し支えない。
【0070】
ガントリ構造体を採用した場合には、ATLヘッド3のXYZ軸方向への運動制御を安定して行うことができる。また、ATLヘッド3の剛性を高めることができ、ATLヘッド3による押圧力を高めることができ、さらには、テープ貼付装置1のフットプリント(換言すると、装置全体の動作範囲を含めた占有体積)を小さくすることができるという利点も得ることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 テープ貼付装置
2 多関節ロボット
2a アーム
3 ATLヘッド
4 繊維束搬送手段
5 ワーク
5a 被貼付面
6 ワーク台
7 接着剤塗布部(処理剤塗布部)
8 加熱手段
9 フィーダー(テープ搬送部)
10 貼付ヘッド
10a 押圧ローラ
10b ローラ支持部
10c ベース部
10d シリンダ部
13 載置台
14 ピックアップハンド
14a 真空吸着チャック
15 ガントリ軸
16 ガントリ軸
20 テープ切断部
20a 刃
21 上面保持コンベア
70 ノズル部
71 第1リップ部(テープ支持部)
71a 第1リップ面
72 第2リップ部
72a 第2リップ面
73 第1のブロック部
74 第2のブロック部
75 スペーサー
76 吐出口
77 バックプレート
90 ATLヘッド
91 フィーダー
92 貼付ヘッド
93 接着剤塗布手段
94 加熱手段
95 ワーク
95a 被貼付面
96 テープ切断部
97 刃
98 アンビル
A 繊維束(テープ)
S 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7