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特開2024-135747導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135747
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/207 20060101AFI20240927BHJP
   H01P 7/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01P1/207 Z
H01P7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046595
(22)【出願日】2023-03-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健一
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006LA11
5J006MA01
5J006NE11
5J006NE13
(57)【要約】
【課題】フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能な導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法を提供する。
【解決手段】導波管フィルタ10は、導波路25となるべき溝がそれぞれ形成される第1導波管部21a、及び第2導波管部21bを備え、第1導波管部21aと第2導波管部21bを対向配置した状態で上記溝による導波路25が形成されるとともに、第1導波管部21aと第2導波管部21bの間の隙間Gに応じて導波路25の通過帯域が変化する導波管部20と、所望の通過帯域が設定されるように導波管部20の隙間Gを可変する隙間調整機構33と、を有して構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直方体形状を有し、それぞれ長手方向の一側面(22a、22b)に長手方向の一端(23)から他端(24)にかけて導波路(25)となるべき溝(25a、25b)が形成される第1の導波管部(21a)、及び第2の導波管部(21b)を備え、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部を前記一側面同士が向かい合うように対向配置した状態で前記溝による前記導波路が形成されるとともに、前記第1の導波管部の前記一側面と、前記第2の導波管部の前記一側面との間の隙間に応じて前記導波路の通過帯域が変化する導波管部(20)と、
所望の通過帯域が設定されるように前記導波管部における前記隙間を可変する隙間調整機構(33)と、を有することを特徴とする導波管フィルタ。
【請求項2】
前記第1の導波管部、及び前記第2の導波管部は、前記導波路を形成する前記溝に沿って、所定のスタブ長(l2)とスタブ高さ(h2)を有し、かつ、前記溝の長手方向に所定のキャビティ長(l3)の間隔ごとに連続に形成される複数のスタブ溝(26)をさらに有し、それぞれの前記スタブ溝の前記スタブ長及び前記スタブ高さ、前記キャビティ長に応じて前記導波路の通過帯域が変化することを特徴とする請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項3】
前記スタブ長が長いほど中心周波数の低い通過帯域を設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の導波管フィルタ。
【請求項4】
前記第1の導波管部、及び前記第2の導波管部は、前記導波路の前記長手方向の両端近傍で外側に向かうにしたがって導波管高さ及び導波管幅が徐々に変化するテーパー形状を有することを特徴とする請求項2記載の導波管フィルタ。
【請求項5】
前記隙間調整機構は、
前記第1の導波管部を載置する第1のステージ部材(42a)と、
前記第2の導波管部を、前記第1の導波管部に対して対向配置された状態に載置する第2のステージ部材(42b)と、
前記第1のステージ部材及び前記第2のステージ部材を、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部との前記隙間が変化するように、対称面に対して対称に移動可能に駆動する駆動手段(40a、40b)
を有することを特徴とする請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項6】
前記導波管部は、所定の周波数範囲の被測定信号を前記導波路に入力し、互いにオーバーラップする複数の周波数帯のうちの、前記隙間に対応する通過帯域に合致するいずれか1つの前記帯域の周波数成分を出力することを特徴とする請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項7】
所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113)を有する周波数変換部(100)と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ(1)において、
前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載の導波管フィルタ(10)を設けるとともに、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定される前記隙間となるように前記隙間調整機構を駆動制御する隙間可変制御手段(151)を有し、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分を、前記導波管フィルタを通して測定することを特徴とするスペクトラムアナライザ。
【請求項8】
前記導波管フィルタを複数備え、それぞれの前記導波管フィルタの前記導波管部において、互いにオーバーラップするそれぞれ帯域のうちの前記隙間に対応して設定される前記通過帯域の周波数成分を出力することを特徴とする請求項7に記載のスペクトラムアナライザ。
【請求項9】
所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111D)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113D)を有する周波数変換部(100D)と、前記中間周波数帯の信号をADC(125)でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部(153D)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ(2)において、
前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載の導波管フィルタ(10)を設けるとともに、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定される前記隙間となるように前記隙間調整機構を駆動制御する隙間可変制御手段(151D)を有し、
前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分の信号を、前記導波管フィルタを通して解析することを特徴とするシグナルアナライザ。
【請求項10】
信号発生部(130)から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器(112E)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111E)に与え、所定の周波数範囲の信号に変換する周波数変換部(100E)を有し、被測定対象(DUT)を試験するための試験対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記周波数変換部による周波数変換後の信号を前記被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置(3)において、
前記周波数変換部の後段に、前記周波数変換後の信号が入力される前記請求項1に記載の導波管フィルタ(10E)を設けるとともに、
前記試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定される前記隙間となるように前記隙間調整機構を駆動制御する隙間可変制御手段(151E)を有し、
前記試験対象周波数のうちの前記導波管フィルタを通過する一周波数帯に対応する周波数成分の前記試験用信号を送出することを特徴とする信号発生装置。
【請求項11】
請求項1に記載の導波管フィルタ(10)を用いるスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置における導波管フィルタの制御方法であって、
解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、
設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、前記導波管フィルタにおける選択されるべき前記通過帯域が設定されるように前記第1の導波管部と前記第2の導波管部間の前記隙間を可変制御するステップ(S3、S13)と、
可変制御された前記隙間を有する前記導波管部の前記導波路を通過する前記解析対象周波数、または試験対象周波数に対応する周波数成分を抽出するステップ(S4、S14)と、
を含むことを特徴とする導波管フィルタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのスタブ型導波管の隙間の大きさを可変とすることで通過帯域の調整が可能な導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号から所望の通過帯域の信号成分を抽出するためのフィルタとしては、信号成分を導入、通過させる導波路が形成された導波管を用いた導波管フィルタがある。
【0003】
導波管フィルタの一例として、複数の空洞共振器が複数のアイリスを介して結合される誘導性アイリス結合導波管フィルタが従来から知られている(例えば、特許文献1等)。この誘導性アイリス結合導波管フィルタは、入力側と出力側に、それぞれ、誘導性の第1アイリスと第2アイリスとを配した構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-184831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被測定信号から複数の周波数帯の信号を抽出するフィルタ部に導波管フィルタを用い得るスペクトラムアナライザにあっては、今日の5Gや各種の無線通信に係る通信技術の急速な進展を背景とし、今後さらに高度な通信技術を獲得すべく、例えば、ミリ波(200GHz~300GHz等)帯等のより高い周波数帯においてスプリアス成分からの影響があるかどうかを精度よく検出できることが求められている。
【0006】
また、ミリ波帯の複数の周波数帯域について被測定対象(Device Under Test:DUT)の受信感度試験のための試験用信号を発生する信号発生装置においても、信号発生部で発生させた複数の周波数帯の試験用信号に混在する不要な電波(スプリアス成分)を抑制し、真に必要とされる試験用信号を抽出するフィルタ部に導波管フィルタを採用するものもある。このような試験信号発生装置においても、より高い周波数帯での高精度の試験に対応可能にするために、フィルタ部に採用される導波管フィルタの性能向上が求められている。
【0007】
導波管フィルタの中には、ミリ波帯の周波数範囲の所望の周波数帯の周波数成分を確実に抽出するため(測定できなくなる周波数成分が生じないようにするため)、オーバーラップしていない帯域がなくならないように通過帯域を可変できる機構を備えることが望まれている。
【0008】
しかしながら、上記従来の誘導性アイリス結合導波管フィルタは、通過帯域を可変する構造にはなっておらず、通過帯域を可変するにはフィルタの切り替えが不可欠であって、簡単かつ安価な構成で、ミリ波等のより高い周波数帯を対象とする周波数成分の測定、解析、或いは試験への対応が極めて困難であった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能な導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る導波管フィルタは、互いに直方体形状を有し、それぞれ長手方向の一側面(22a、22b)に長手方向の一端(23)から他端(24)にかけて導波路(25)となるべき溝(25a、25b)が形成される第1の導波管部(21a)、及び第2の導波管部(21b)を備え、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部を前記一側面同士が向かい合うように対向配置した状態で前記溝による前記導波路が形成されるとともに、前記第1の導波管部の前記一側面と、前記第2の導波管部の前記一側面との間の隙間に応じて前記導波路の通過帯域が変化する導波管部(20)と、所望の通過帯域が設定されるように前記導波管部における前記隙間を可変する隙間調整機構(33)と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明の請求項1に係る導波管フィルタは、第1の導波管部の一側面と、第2の導波管部の一側面との間の隙間を可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応できる。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る導波管フィルタにおいて、前記第1の導波管部、及び前記第2の導波管部は、前記導波路を形成する前記溝に沿って、所定のスタブ長(l2)とスタブ高さ(h2)を有し、かつ、前記溝の長手方向に所定のキャビティ長(l3)の間隔ごとに連続に形成される複数のスタブ溝(26)をさらに有し、それぞれの前記スタブ溝の前記スタブ長及び前記スタブ高さ、前記キャビティ長に応じて前記導波路の通過帯域が変化する構成としてもよい。
【0013】
この構成により、本発明の請求項2に係る導波管フィルタは、スタブ長、スタブ高さ、キャビティ長を適宜に選択することで、導波管部の基本となる通過帯域を変動させることができ、運用の幅が広がる。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る導波管フィルタは、前記スタブ長が長いほど中心周波数の低い通過帯域を設定可能である構成であってもよい。この構成により、本発明の請求項3に係る導波管フィルタは、スタブ長を変えることで導波管部の基本となる通過帯域を選択することができ、基本となる通過帯域の設計が容易となる。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る導波管フィルタにおいて、前記第1の導波管部、及び前記第2の導波管部は、前記導波路の前記長手方向の両端近傍で外側に向かうにしたがって導波管高さ及び導波管幅が徐々に変化するテーパー形状を有する構成であってもよい。この構成により、本発明の請求項4に係る導波管フィルタは、テーパー形状の選択によって、周辺の導波管コンポーネントとの連結が容易に行えるようになる。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る導波管フィルタにおいて、前記隙間調整機構は、前記第1の導波管部を載置する第1のステージ部材(42a)と、前記第2の導波管部を、前記第1の導波管部に対して対向配置された状態に載置する第2のステージ部材(42b)と、前記第1のステージ部材及び前記第2のステージ部材を、前記第1の導波管部と前記第2の導波管部との前記隙間が変化するように、対称面に対して対称に移動可能に駆動する駆動手段(40a、40b)を有する構成としてもよい。
【0017】
この構成により、本発明の請求項5に係る導波管フィルタは、駆動手段によって第1のステージ部材及び第2のステージ部材を対称面に対して対称に動くように駆動することで、第1の導波管部と第2の導波管部間の隙間を容易に可変できるとともに、フィルタ特性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の請求項6に係る導波管フィルタにおいて、前記導波管部は、所定の周波数範囲の被測定信号を前記導波路に入力し、互いにオーバーラップする複数の周波数帯のうちの、前記隙間に対応する通過帯域に合致するいずれか1つの前記帯域の周波数成分を出力するように構成されていてもよい。この構成により、本発明の請求項6に係る導波管フィルタは、隙間調整機構により隙間を可変することで、その隙間に応じて所定の周波数範囲内の複数の通過帯域のうちの所望の通過帯域を設定することができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の請求項7に係るスペクトラムアナライザは、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113)を有する周波数変換部(100)と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ(1)において、前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載の導波管フィルタ(10)を設けるとともに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定される前記隙間となるように前記隙間調整機構を駆動制御する隙間可変制御手段(151)を有し、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分を、前記導波管フィルタを通して測定することを特徴とする。
【0020】
この構成により、本発明の請求項7に係るスペクトラムアナライザは、第1の導波管部の一側面と、第2の導波管部の一側面との間の隙間を可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定に対応できる。
【0021】
また、本発明の請求項8に係るスペクトラムアナライザは、前記導波管フィルタを複数備え、それぞれの前記導波管フィルタの前記導波管部において、互いにオーバーラップするそれぞれ帯域のうちの前記隙間に対応して設定される前記通過帯域の周波数成分を出力する構成としてもよい。この構成により、本発明の請求項8に係るスペクトラムアナライザは、第1の導波管部、第2の導波管部間の隙間を可変することで通過帯域を容易に可変できる導波管フィルタを複数用いて、高周波数帯の広範な帯域の測定に対しても簡単かつ安価な構造で対応できる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の請求項9に係るシグナルアナライザは、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器(112)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111D)に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ(113D)を有する周波数変換部(100D)と、前記中間周波数帯の信号をADC(125)でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部(153D)とを有し、解析対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ(2)において、前記周波数変換部の前段に、前記請求項1に記載の導波管フィルタ(10)を設けるとともに、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定される前記隙間となるように前記隙間調整機構を駆動制御する隙間可変制御手段(151D)を有し、前記解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分の信号を、前記導波管フィルタを通して解析することを特徴とする。
【0023】
この構成により、本発明の請求項9に係るシグナルアナライザは、第1の導波管部の一側面と、第2の導波管部の一側面との間の隙間を可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の解析に対応できる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の請求項10に係る信号発生装置は、信号発生部(130)から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器(112E)から出力されるローカル信号とともにミキサ(111E)に与え、所定の周波数範囲の信号に変換する周波数変換部(100E)を有し、被測定対象(DUT)を試験するための試験対象周波数に応じて前記ローカル信号の周波数を変化させて、前記周波数変換部による周波数変換後の信号を前記被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置(3)において、前記周波数変換部の後段に、前記周波数変換後の信号が入力される前記請求項1に記載の導波管フィルタ(10E)を設けるとともに、前記試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する前記通過帯域が設定される前記隙間となるように前記隙間調整機構を駆動制御する隙間可変制御手段(151E)を有し、前記試験対象周波数のうちの前記導波管フィルタを通過する一周波数帯に対応する周波数成分の前記試験用信号を送出することを特徴とする。
【0025】
この構成により、本発明の請求項10に係る信号発生装置は、第1の導波管部の一側面と、第2の導波管部の一側面との間の隙間を可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の試験に対応できる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の請求項11に係る導波管フィルタの制御方法は、請求項1に記載の導波管フィルタ(10)を用いるスペクトラムアナライザ、またはシグナルアナライザ、若しくは信号発生装置における導波管フィルタの制御方法であって、解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、前記導波管フィルタにおける選択されるべき前記通過帯域が設定されるように前記第1の導波管部と前記第2の導波管部間の前記隙間を可変制御するステップ(S3、S13)と、可変制御された前記隙間を有する前記導波管部の前記導波路を通過する前記解析対象周波数、または試験対象周波数に対応する周波数成分を抽出するステップ(S4、S14)と、を含むことを特徴とする。
【0027】
この構成により、本発明の請求項11に係る導波管フィルタの制御方法は、第1の導波管部の一側面と、第2の導波管部の一側面との間の隙間を可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能な導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタの分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタを構成する第1導波管部及び第2導波管部の内面側の構成を示す平面図であり、(a)は第1導波管部を示し、(b)は第2導波管部を示している。
図3】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタの導波管部の外観図であり、(a)は側面から見た図、(b)、(c)、(d)は、それぞれ、第1導波管部と第2導波管部間が隙間G0のとき、隙間G1のとき、隙間G2のときの正面から見た図を示している。
図4】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタの導波管部を3つの帯域に分けて設計したときのS21のシミュレーション結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタの隙間Gの可変制御に基づくフィルタ機能の運用イメージを示す模式図であり、(a)は一実施形態に係る隙間調整部を用いる場合の例を示し、(b)は他に適用可能な変形例に係る隙間調整部の構成を示している。
図6】本発明の変形例に係る導波管フィルタの隙間Gの可変制御に基づくフィルタ機能の運用イメージを示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタを用いるスペクトラムアナライザの一般的構成を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタを用いるスペクトラムアナライザの信号測定制御動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタを用いるシグナルアナライザの一般的構成を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタを用いる信号発生装置の一般的構成を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る導波管フィルタを用いる信号発生装置における信号送出制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法の実施形態について説明する。
【0031】
(概要)
本発明に係る導波管フィルタ10(図5(a)参照)は、所定の周波数範囲として、例えば、サブテラヘルツ領域(255~315GHz)等の高周波数帯の周波数成分の信号を入力ポート27より入力し、その入力信号に含まれる不要な電波(スプリアス波)を抑制しつつ所望の帯域の周波数成分の信号のみを抽出して出力ポート28へと出力するものである。
【0032】
本発明に係る導波管フィルタ10は、それぞれが一側面に導波路25となるべき溝が形成された第1導波管部21aと第2導波管部21bとが、両方の溝によって導波路25が形成されるように対向して配置され、かつ、第1導波管部21aと第2導波管部21bの上記各溝が形成された一側面同士の間の離間距離、すなわち、隙間(隙間)Gを調整可能な構成を有している。第1導波管部21a、第2導波管部21bは、それぞれ、本発明の第1の導波管部、第2の導波管部を構成する。
【0033】
この導波管フィルタ10は、第1導波管部21aと第2導波管部21bとを対向して配置することで、例えば、一方向に長い全体として直方体形状の外観を有し、その内部に一方向(長手方向)に延びる導波路25が形成された構造を有する。
【0034】
上記構造を有する導波管フィルタ10は、第1導波管部21aと第2導波管部21bの一側面同士の間の隙間Gを調整することにより、導波路25の通過帯域がその隙間Gに応じて変化する特性を有している。
【0035】
導波管フィルタ10は、高周波信号に含まれる周波数成分の分布(スペクトラム)を測定するスペクトラムアナライザ(図7参照)、上記周波数成分の波形を解析するシグナルアナライザ(図9参照)、DUTの受信感度試験のための試験用信号を発生する信号発生装置(図10参照)のフロントエンド回路に用いることができる。
【0036】
本発明に係る導波管フィルタ10をスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置のフロントエンド回路に用いた構成によれば、隙間Gを可変制御するだけで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、DUT試験に対応可能となる。
【0037】
以下においては、本発明に係る導波管フィルタ10の一実施形態及び運用例(図1図5参照)、変形例に係る導波管フィルタ10Aの運用例(図6参照)、導波管フィルタ10(10A)を用いるスペクトラムアナライザ1の実施形態(図7図8参照)、導波管フィルタ10(10A)を用いるシグナルアナライザ2の実施形態(図9参照)、導波管フィルタ10(10A)を導波管フィルタ10Eとして用いる信号発生装置3の実施形態(図10図11参照)について順に説明していくものとする。
【0038】
(導波管フィルタ10)
図1は、本発明の一実施形態に係る導波管フィルタ10の分解斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る導波管フィルタ10の導波管部20を構成する第1導波管部21a、第2導波管部21bの内面側の構成を示す平面図であり、(a)は第1導波管部21aを示し、(b)は第2導波管部21bを示している。
【0039】
本実施形態に係る導波管フィルタ10は、図1に示すように、導波管部20と、隙間調整部30と、を有している。導波管部20は、一方向(Y方向)に長い全体として直方体形状の外観を有し、それぞれが同等の形状を有する第1導波管部21aと第2導波管部21bを組み合わせて構成されている。導波管部20は、方形導波管の標準規格、例えば、WR3、或いはWR3.4に適合する構造を有するものである。WR3、或いはWR3.4の規格に関しては、カットオフ周波数(BPFでの中心周波数)が173.5[GHz]、周波数範囲が220~325[GHz]、周波数帯が[J帯]、内径寸法が0.864×0.432[mm]という条件が規定されている。
【0040】
第1導波管部21aと第2導波管部21bは、それぞれ、図2(a)、図2(b)に示すような構造を有している。図2(a)に示すように、第1導波管部21aは、導波管部20の直方体形状の構造を長手方向(Y方向)にほぼ二分する直方体形状を有し、もう一方の第2導波管部21b側に臨む一側面22aに、長手方向の一端部23から他端部24にかけて導波路25となるべき溝部25aが形成されている。第1導波管部21aの一側面22a、及び第2導波管部21bの一側面22b(図2(b)参照)は、第1導波管部21aと第2導波管部21bを一側面22a、22b同士を向かい合わせて対向配置する構造において、隙間Gがないときには対称面(磁気壁)となり、隙間Gがあるときには両者の中心が対称面となる。
【0041】
第1導波管部21aにおいて、溝部25aは、一側面22aの表面上にX方向へ適宜な幅、及びZ方向に適宜な高さh1で彫り込んで形成した断面矩形の溝である。溝部25aは、第1導波管部21aの内方中央部において均等な幅、及び高さを有している。一方で、この例の溝部25aは、第1導波管部21aの内方中央部の一端(図に向かって左端)から一端部23の手前にかけて高さが次第に高くなるテーパー形状を有するとともに、内方中央部の他端(図に向かって右端)から他端部24の手前にかけても高さが次第に高くなるテーパー形状を有している。図2においては、第1導波管部21aの上記テーパー形状を有するテーパー部25a1の長さをl1で示している。
【0042】
第1導波管部21aは、溝部25aの内方中央部の一部に、Y方向に沿って、所定の高さ(スタブ高さh2)を有しかつZ方向(短手方向)に所定の長さ(スタブ長l2)を有する分岐溝としての複数のスタブ溝26が、Y方向にキャビティ長l3に相当する所定の間隔ごとに形成されている。図2において、h1は導波管高さを示す。
【0043】
導波管構造について、電磁波の進行方向を「長さ」、導波管断面の長い方を「幅」、導波管断面の短い方を「高さ」と呼ぶものとすると、図2に示す第1導波管部21a、第2導波管部21bにおけるキャビティとスタブの呼び方が違ってくる。図2に示す第1導波管部21a、第2導波管部21bについては、キャビティに関しては進行方向がY方向であり、長さ、幅、高さは、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向となり、スタブに関しては進行方向がZ方向であり、長さ、幅、高さは、それぞれ、Z方向、X方向、Y方向となる。
【0044】
第1導波管部21aの溝部25aに形成されるスタブ溝26は、任意の数とすることができ、各スタブ溝26のスタブ長l2、スタブ高さh2、間隔(キャビティ長l3)も個々のスタブ溝26ごとに任意の値とすることも可能である。
【0045】
導波管部20を構成するもう一方の第2導波管部21bも、図2(b)に示すように、導波管部20の直方体形状の構造を長手方向にほぼ二分する直方体形状を有し、他方の第1導波管部21a側に臨む一側面22bに、長手方向(Y方向)の一端部23から他端部24にかけて導波路25となるべき溝部25bが形成されている。
【0046】
第2導波管部21bは、一側面22bにおける溝部25b、スタブ溝26の配置構造が、図2(a)に示す第1導波管部21aの一側面22aにおける溝部25a、スタブ溝26の配置構造に対して正面から見たときの各要素の配置が左右逆転している以外は、第1導波管部21aの一側面22aにおける溝部25a、スタブ溝26の配置構造と同等のものである。
【0047】
第2導波管部21bの両端にかけても、第1導波管部21aの両端(一端部23、他端部24)にかけてのテーパー部25a1に相当するテーパー部25b1(図2(b)参照)が設けられている。テーパー部25a1、テーパー部25b1は、両端のキャビティ断面の形状と開口面の断面の形状で決まり、両端に向かって高さ(Z方向)が次第に高くなる構造に限らず、両端に向かって高さが次第に低くなる構造もあり得る。同様の理由で、テーパー部25a1、テーパー部25b1は、高さのみならず、幅(X方向)についても両端にかけて徐々に変化する(広くなる、または狭くなる)ような構造となり得る。
【0048】
第1導波管部21a、第2導波管部21bは、例えば、アルミ製、銅製、或いは黄銅製のものである。銅製、或いは黄銅製のものにおいては、溝部25a、25bやスラブ溝26が形成される一側面22a、22b側全面に金メッキが施される。
【0049】
図2に示す第1導波管部21a、及び第2導波管部21bは、一端部23同士、他端部24同士が互いに向き合い、それぞれの一側面22a、22bを対称面(磁気壁)として両者を互いに対向して配置することによって、側面から見たときに図3(a)に示すような外観構造を有するものとなる。
【0050】
導波管部20においては、第1導波管部21aの溝部25aと第2導波管部21bの溝部25bとが対向して図3(a)に点線で示す導波路25を形成している。導波管部20は、例えば、導波路25の一端部23(図2参照)側が入力ポート27として機能し、導波路25の他端部(図2参照)24側が出力ポート28として機能する。導波管部20は、入力ポート27と出力ポート28によってそれぞれ他の導波管コンポーネントに連結して運用されるようになっている。導波管部20は、導波路25の両端近傍にテーパー部25a1、25b1を有しており、その長さは、導波管コンポーネントとの連結を考慮した適宜な長さに設定されている。
【0051】
第1導波管部21aと第2導波管部21bを対向配置したときの導波管部20(図3(a)参照)を正面から見たときの外観構造は、図3(b)、(c)、(d)に示すようなものとなる。図3(b)は、第1導波管部21aと第2導波管部21bとが上述した対称面(22a、22b)同士が当接しており、第1導波管部21aと第2導波管部21bとの間に隙間Gがない(隙間=G0)ときの構造を示している。図3(c)は、隙間Gが隙間G0より大きい隙間G1であるときの構造を示し、図3(d)は、隙間Gが隙間G1よりさらに大きい隙間G2であるときの構造を示している。図3(b)、(c)、(d)においては、図面(紙面)の手前側に延びる導波管部20の端部が入力ポート27を形成し、紙面の奥側へ向かって延びる導波管部20の端部が出力ポート28を形成している。図3(b)、(c)、(d)においては、入力ポート27、出力ポート28を、便宜的に、符号27(28)として表している。
【0052】
本実施形態に係る導波管フィルタ10において、導波管部20は、第1導波管部21aと第2導波管部21bとの隙間Gの大きさに応じて周波数特性(通過帯域)が変化する性質を有している。例えば、図3において、第1導波管部21aと第2導波管部21bの間に隙間Gがない(G=G0である)場合(図3(b)参照)と、隙間GがG1である場合(図3(c)参照)と、隙間GがG2である場合(図3(b)参照)とでは、導波管部20は、隙間Gが大きくなるほど、すなわち、隙間GがG0からG2へと変化するにつれて、通過帯域が低い方へ変化する周波数特性を有している。一例として、図3(b)、図3(c)、図3(d)においては、隙間G0、G1、G2に対応する通過帯域として、それぞれ、f1、f2、f3(f1>f2>f3)の周波数帯が設定されていることを前提としている。
【0053】
本実施形態に係る導波管フィルタ10の導波管部20を、上述したf1、f2、f3の3つの帯域に分けて設計したときの「S21」というSパラメータ(「挿入損失」の逆数で表す)のシミュレーション結果を図4に示している。図4に示すシミュレーション結果については、縦軸をS21、横軸を周波数としてこれら両者の関係を、第1導波管部21aと第2導波管部21bの間の隙間Gの変化に対応させて表現している。図4に示す例においては、隙間G(gap)が、0[mm]のとき、0.01[mm]のとき、及び0.05[mm]のときの3つのパターンに対応付けられたシミュレーション結果P1、P2、P3が開示されている。
【0054】
図3において、ギャップ(gap)が0のときのシミュレーション結果P1は、例えば、図3(b)の隙間G0の場合に相当する。また、ギャップが0.01のときシミュレーション結果P2、及びギャップが0.05のときのシミュレーション結果P3は、それぞれ、図3(c)の隙間G1の場合、図3(d)の隙間G2の場合に相当する。図4に示すシミュレーション結果によれば、導波管部20は、例えば、210GHz~290GHzのような高周波帯域において、f1、f2、f3等の複数の周波数帯の信号成分を選択的に通過させ得る帯域通過フィルタ(Band-Pass Filter:BPF)の機能を併有するものといえる。
【0055】
本実施形態に係る導波管フィルタ10は、上述した隙間Gの可変制御に加え、導波路25に付随して形成するスタブ溝26(図2参照)の形態(位置、深さ、形状等)によっても導波管部20のフィルタ特性を可変制御することができる構造となっている。例えば、本実施形態に係る導波管フィルタ10の導波管部20では、第1導波管部21a、第2導波管部21bに形成されるスタブ溝26のスタブ長l2が長いほどカットオフ周波数(BPFでの中心周波数)を低い帯域に設定することができ、スタブ長が短いほど中心周波数を高い帯域に設定可能である。
【0056】
本実施形態に係る導波管フィルタ10に用いる導波管部20の実現方法については、例えば、第1導波管部21a、第2導波管部21bの隙間Gが「0(零)」のときに、スタブ溝26のスタブ長、スタブ高さ等によって最も高い周波数帯を設計し、あとは隙間Gを大きくして周波数を下げられるような構造としてもよい。
【0057】
ここで再び図1に戻り、本実施形態に係る導波管フィルタ10の隙間調整部30の構成について説明する。
【0058】
図1に示す導波管フィルタ10において、導波管部20は、上述したように、Y方向を長手方向、X方向を幅方向(短手方向)、Z方向を高さ方向とする全体として直方体形状の外観を有し、第1導波管部21aと第2導波管部21bは、隙間調整部30によって、両者間の隙間Gを可変制御可能な構成を有している。
【0059】
導波管部20の隙間調整部30は、例えば、図1に示すように、第1ステージ31と、第2ステージ32と、隙間調整機構33とにより構成されている。第1ステージ31は、ベース部31aと、ステージ主要部31bと、左右両側に設けられる側壁31c、31dと、を備え、ベース部31a、ステージ主要部31b、側壁31c、31dによって囲まれる第2ステージ収容部31eを形成している。ここでステージ主要部31bは、その上面31fが導波管部20の第1導波管部21aの底面部と同等の平面形状を有している。第1導波管部21aは、その下面部により、ステージ主要部31bの上面31fに固定されている。
【0060】
第2ステージ32は、その上面32aが導波管部20の第2導波管部21bの下面部と同等の平面形状を有している。第2ステージ32は、Y方向の長さが第1ステージ31の第2ステージ収容部31eを構成する側壁31c、31dの壁間の距離よりも若干短く、第2ステージ収容部31e内にY方向への移動が規制され、X方向への移動のみ許容されるように収容されている。
【0061】
ここで第2ステージ32は、第1ステージ31の第2ステージ収容部31e内に、長手方向(Y方向)に第1ステージ31のステージ主要部31bと平行を保った状態で、かつ、短手方向(X方向)へはその前後両方向(矢印A方向)に移動可能に収容されている。第2ステージ32は、第1ステージ31とは反対側の側面32bの中央部近傍位置に、X方向に貫通し、隙間調整機構33のネジ体41と螺合するネジ穴32cが形成されている。第2ステージ32の上面32aには、第2導波管部21bがその下面部により固定されている。
【0062】
隙間調整機構33は、固定状態に取り付けられるモータ40と、X方向へ延び、第2ステージ32の側面32bに形成されたネジ穴32cに螺合してモータ40により回転するネジ体41と、を有して構成されている。
【0063】
隙間調整機構33は、モータ40によってネジ体41を一方向またはその逆方向に回転駆動することにより、ネジ体41にネジ穴32cにより螺合する第2ステージ32を、X方向の前方または後方(矢印A方向)に移動させることができる。第2ステージ32の移動によって、第2ステージ32の上面32aに固定されている第2導波管部21bは、第1導波管部20aに対して、両者の対称面(一側面22a、22b)の平行を保ったまま矢印A方向に移動することになる。これにより、第1導波管部20aと第2導波管部20bは、両者の平行を維持したまま相手側との間の隙間Gの大きさを適宜に可変制御可能となる。
【0064】
本実施形態に係る導波管フィルタ10は、隙間調整機構33のネジ体41をモータ40により回転駆動し、導波管部20の第1導波管部21aと第2導波管部21bとの間の隙間Gを、例えば、G0、G1、G2となるように可変制御することで、1つの導波管構造体でありながら、例えば、f1、f2、f3の各周波数帯にそれぞれに対応する3つの通過帯域を所望に応じて選択(設定)し得る導波管型BPF(図5(a)、図6参照)の機能を実現できる。
【0065】
次に、本実施形態に係る導波管フィルタ10における導波管部20のフィルタ特性(通過帯域)の可変制御を含む運用イメージについて図5を参照して説明する。図5において、(a)は一実施形態に係る隙間調整部30(図1参照)を用いる場合の例を示し、(b)は隙間調整部30に代えて適用可能な変形例に係る隙間調整部30Aの構成を示している。
【0066】
図5(a)において、導波管フィルタ10の入力ポート27には、例えば、ミリ波帯のそれぞれ周波数帯(f1、f2、f3)の周波数成分を含む信号が入力されるものとする。ここで、周波数帯f1、f2、f3は、例えば、それぞれの周波数帯の中心周波数を挟んで周波数が高い側と低い側の両方にそれぞれ均等な帯域幅を有するものである。また、入力信号の隣り合う周波数帯、例えば、f1とf2同士、f2とf3同士は互いにオーバーラップする帯域を有している。
【0067】
導波管フィルタ10は、上述した隙間Gの可変制御に応じて、入力信号から周波数帯f1、f2、f3のいずれかの周波数成分を抽出して出力ポート28へと出力するフィルタ特性可変制御機能を有している。
【0068】
本実施形態に係る導波管フィルタ10は、運用に際し、所望の周波数帯(例えば、周波数帯f1)が設定される。これにより、制御部(例えば、図7の制御部150参照)から与えられる制御信号(隙間調整制御信号)により、隙間調整機構33のモータ40が回転駆動されて、導波管部20の第1導波管部21aと第2導波管部21bとの間の隙間Gが事前に設定された所望の周波数帯f1にそれぞれ対応する値に可変調整される。
【0069】
この状態で、図5(a)に示すように、入力ポート27から入力信号が入力されると、当該導波管部20では、可変制御された隙間Gに対応する周波数帯f1の周波数成分が抽出されて出力ポート28へ出力される。
【0070】
本実施形態に係る導波管フィルタ10は、1つの周波数帯を設定し、その1つの周波数帯の周波数成分を抽出する処理の他、例えば、周波数帯f1、f2、f3を設定し、設定された周波数帯f1、f2、f3に対応する隙間G、例えば、G2、G1、G0の可変制御を順次行って、これら周波数帯f1、f2、f3の周波数成分を連続的に抽出する運用も可能であることはいうまでもない。
【0071】
(変形例に係る導波管フィルタ10A)
本実施形態に係る導波管フィルタ10は、単一での運用(図5(a)参照)のみならず、複数組み合わせて運用することもできる。一例として、2つの導波管フィルタ10を用いて構成される変形例に係る導波管フィルタ10Aにおける導波管部20のフィルタ特性の可変制御を含む運用イメージについて図6を参照して説明する。
【0072】
図6に示すように、変形例に係る導波管フィルタ10Aは、導波管フィルタ10-1、10-2(図1に示す導波管フィルタ10と同様の構造)により構成され、それぞれの入力ポート27には、例えば、ミリ波帯のそれぞれ周波数帯f1、f2、f3、f41、f5、f6の周波数成分を含む信号が入力されるものとする。入力信号中、隣り合う周波数帯同士は互いにオーバーラップする帯域を有している。
【0073】
導波管フィルタ10Aにおいて、導波管フィルタ10-1は、隙間調整機構33による隙間Gの可変制御によって、周波数帯f1、f2、f3のいずれかに対応する通過帯域を有する導波管フィルタとして機能する。一方、導波管フィルタ10-2は、隙間Gの可変制御によって、周波数帯f4、f5、f6のいずれかに対応する通過帯域を有する導波管フィルタとして機能する。導波管フィルタ10-1と導波管フィルタ10-2への入力及び出力は、Y分岐等によるか、スイッチによって切り替えるかする構成としてもよい。
【0074】
入力ポート27から入力信号が入力された導波管フィルタ10Aにおいて、導波管フィルタ10-1は、その入力信号の中から、上述した隙間Gの可変制御によって設定された通過帯域、すなわち、周波数帯f1、f2、f3のいずれか1つに対応する周波数成分を抽出して出力する。
【0075】
これに対し、導波管フィルタ10-2は、上記入力信号の中から、上述した隙間Gの可変制御によって設定された通過帯域、すなわち、周波数帯f4、f5、f6のいずれか1つに対応する周波数成分を抽出して出力する。
【0076】
上述した導波管フィルタ10-1、10-2に対する隙間Gの可変制御によって、導波管フィルタ10Aでは、入力信号の中から、隣り合う周波数帯がオーバーラップする周波数帯f1、f2、f3、f4、f5、f6の周波数成分を含む信号を抽出して出力することができる。
【0077】
本実施形態に係る導波管フィルタ10(図5(a)参照)、及び変形例に係る導波管フィルタ10A(図6参照)については、第1ステージ31を固定し、第2ステージ32を動かす構造を有する隙間調整部30を用いる例を挙げているが、導波管フィルタ10、10Aは、これに限らず、第1ステージ、及び第2ステージの両者を動かす構造を有する変形例に係る隙間調整部30Aを用いて構成されていてもよい。
【0078】
変形例に係る隙間調整部30Aの概略構成を図5(b)に示している。図5(b)に示すように、変形例に係る隙間調整部30Aは、導波管フィルタ10の第1導波管部21a、及び第2導波管部21bをそれぞれ対向配置された状態に載置する第1ステージ42a、及び第2ステージ42bと、第1ステージ42a及び第2ステージ42bを第1導波管部21aと第2導波管部21bとの隙間Gが変化するように、導波管部21の長手方向と直交する方向の前後に移動可能にネジ体41a、41bを回転駆動するモータ40a、及び40bと、を有し、第1ステージ42a、及び第2ステージ42bの一側面には、ネジ体41a、41bと螺合するネジ穴42a1、42b1がそれぞれ形成されている。
【0079】
上記構成を有する隙間調整部30Aを導波管フィルタ10、10Aに設けることで、導波管フィルタ10、10Aは、モータ40a、40bによって第1ステージ42a、第2ステージ42bを両者が近づく方向、或いは遠ざかる方向に同時に移動させる(対称面に対して対称に動かす)ことによって、第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを容易にかつ連続的に可変できる。また、第1ステージ42a、第2ステージ42bを対称面に対して対称に動かすことができる隙間調整部30Aを採用することで、導波管フィルタ10、10Aは、第1ステージ31を固定し、第2ステージ32を動かす隙間調整部30(図1図5(a)、図6参照)を使用した場合に比べて、より良好なフィルタ特性を得られるようになる。
【0080】
上述したモータ40a、40bは、本発明の駆動手段を構成する。また、第1ステージ42a、第2ステージ42bは、それぞれ、本発明の第1のステージ部材、第2のステージ部材を構成する。
【0081】
(導波管フィルタ10を用いるスペクトラムアナライザ)
次に、本実施形態に係る導波管フィルタ10のスペクトラムアナライザ1への適用例について説明する。図7は、導波管フィルタ10を用いるスペクトラムアナライザ1の一般的構成を示す図である。スペクトラムアナライザ1としては、ミリ波帯の信号解析機能を有するものを想定している。
【0082】
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、周波数変換部100、検波器120、制御部150、操作部160、表示部161を有するとともに、周波数変換部100の前段に上述した構成を有する導波管フィルタ10を備えている。
【0083】
周波数変換部100は、ミキサ111、ローカル信号発生器112、フィルタ113を具備して構成される。
【0084】
ミキサ111は、導波管フィルタ10から出力されるスプリアス波が抑制された各周波数成分の信号(RF周波数)と、ローカル信号発生器112から入力されるローカル信号とを混合することにより、被測定信号をRF周波数から中間周波数の信号(IF周波数)に変換して出力する周波数変換手段としての機能部である。
【0085】
ローカル信号発生器112は、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ミキサ111に送出するためのローカル信号を発生する。
【0086】
フィルタ113は、ミキサ111によって周波数変換されたIF信号を入力し、入力されたIF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号のみを通過させ、検波器120へと入力させるフィルタ機能部である。
【0087】
検波器120は、フィルタ113を通過して入力するぞれぞれの帯域の信号(IF)の強度を検波する処理回路である。
【0088】
制御部150は、導波管フィルタ10を含むスペクトラムアナライザ1全体を統括的に制御する制御機能に加え、隙間可変制御部151、周波数掃引制御部152、スペクトラムデータ取得部153を有している。制御部150は、スペクトラムアナライザ1本体の制御部であってもよく、或いは、PC(パーソナル・コンピュータ)等の機器を別付けにした構成としてもよい。
【0089】
隙間可変制御部151は、導波管フィルタ10の隙間調整機構33(図1参照)のモータ40を一方向、またはその逆方向に回転駆動することにより、導波管フィルタ10の第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを、例えば、G0からG2(図3(b)、(c)、(d)参照)の範囲内で可変変調整する機能部である。隙間可変制御部151は、後述する隙間可変制御部151D、151Eとともに、本発明の隙間可変制御手段を構成する。
【0090】
周波数掃引制御部152は、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ローカル信号発生器112がミキサ111に出力するローカル信号の周波数を指定された周波数範囲内で変化させる周波数掃引制御を実行する機能部である。
【0091】
スペクトラムデータ取得部153は、検波器120で検波された解析対象周波数範囲内の所望の周波数帯の信号成分の強度を含むスペクトラムデータを取得し、表示部161に対する表示制御等を行う部分である。
【0092】
操作部160は、各種キー、スイッチ、ボタン等の入力手段を有し、被測定信号の測定等に関する各種設定を行う際にユーザにより操作される。表示部161は、例えば液晶表示器などで構成され、被測定信号の測定に関わる設定画面や測定結果などを表示する機能部である。
【0093】
図7に示すスペクトラムアナライザ1において、ミリ波帯の被測定信号(入力信号)は、導波管フィルタ10を介して周波数変換部100のミキサ111に与えられ、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とミキシングされ、そのミキシング出力からフィルタ113により所定の中間(IF)周波数帯の信号が抽出される。ローカル信号の周波数は、制御部150の周波数掃引制御部152により所望の解析対象周波数範囲に対応して掃引可変され、その所望の解析対象周波数範囲の信号成分が時間経過にともなって中間周波数帯の信号として抽出されてその信号の強度が検波器120で検出される。
【0094】
なお、ここでは説明を容易にするために、周波数変換部100の周波数変換処理(ヘテロダイン変換)を1回だけ行なう例を示しているが、ミリ波帯のような高い周波数の信号を正確に解析する場合には、周波数変換処理を複数回行なってデジタル処理が可能な中間周波数帯に変換することになる。
【0095】
制御部150において、スペクトラムデータ取得部153は、例えば、操作部160によって設定される解析対象周波数に応じて、検波器120により解析対象周波数毎に検出される信号強度をスペクトラムデータとして記憶し、当該スペクトラムデータを表示部161に表示させる。
【0096】
隙間可変制御部151は、予め設定された解析対象周波数に応じて、隙間調整機構33(図1参照)のモータ40を回転駆動し、導波管フィルタ10の第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを、上記解析対象周波数範囲内の所望の通過帯域に対応する値となるように可変制御する。
【0097】
周波数掃引制御部152は、隙間可変制御部151による隙間Gの可変制御によって導波管フィルタ10に対して設定される通過帯域に対応する周波数の掃引制御を実施する。
【0098】
図7に示すスペクトラムアナライザ1の構成において、導波管フィルタ10の入力ポート27に対する入力信号(RF Input)としての被測定信号は、例えば、255~315GHzの周波数範囲の信号(fRF)であり、出力ポート28からの出力信号(IF Output)は、例えば、23~31GHzの周波数範囲の信号(fIF)である。すなわち、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、例えば、携帯電話(5G、LTE、XG-PHS、W-CDMA、CDMA2000、GSMなど)や各種無線通信(WLAN、Bluetooth、GPS、ISDBTなど)から受信した受信信号を入力信号(RF Input)として取り込み、フロントエンド回路内の導波管フィルタ10によりスプリアス波を抑制したうえで所望の周波数成分のスペクトラム特性を測定することができるようになっている。
【0099】
次に、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の信号測定制御動作について図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0100】
この例において、スペクトラムアナライザ1は、例えば、図5(a)に示すフィルタ特性を有する1つの導波管フィルタ10を用い、被測定信号を入力ポート27から導波管フィルタ10に入力し、その被測定信号から、当該導波管フィルタ10によって、予め設定した所望の周波数帯、例えば、周波数帯f1、f2、f3のいずれか1つの周波数帯の信号を抽出して出力ポート28へと出力し、そのスペクトラム特性の測定を行うものとする。
【0101】
上記測定を行うために、ユーザは、例えば、操作部160において、スペクトラムアナライザ1の掃引周波数範囲(解析対象周波数範囲)を設定する操作を行う(ステップS1)。ここで設定するパラメータとしては、例えば、周波数帯f1、f2、f3のそれぞれの中心周波数と掃引周波数スパン、スタート周波数とストップ周波数、スタート周波数と掃引周波数スパンなどが挙げられる。
【0102】
次いで、制御部150は、ステップS1で設定された掃引周波数範囲に基づき、導波管フィルタ10に選択されるべき通過帯域(周波数帯f1、f2、f3(図5(a)参照)のいずれか)とローカル周波数(LO)の設定条件(LO設定)を算出する(ステップS2)。
【0103】
引き続き、隙間可変制御部151は、導波管フィルタ10の第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを、ステップS2で算出した通過帯域に対応する隙間G、例えば、G0、G1、G2(図3(b)、(c)、(d)参照)のいずれかとなるように調整制御する(ステップS3)。その際、隙間可変制御部151は、隙間調整機構33のモータ40に対して算出された通過帯域に対応する制御信号(隙間調整制御信号)を送出し、当該モータ40を、隙間Gが算出された通過帯域に対応する値となるまで回転駆動する。また、ステップS3においては、周波数変換部100での周波数変換のために、ステップS2で算出されたLO設定に基づきローカル周波数を設定する制御も行われる。
【0104】
ステップS3での隙間Gの調整制御、及びローカル周波数設定の終了後、制御部150は、導波管フィルタ10の導波路25を通過する調整後の隙間Gに対応する周波数成分を出力ポート28から周波数変換部100に入力して周波数変換し、検波器120に入力する(ステップS4)。
【0105】
さらに制御部150は、検波器120を制御し、周波数変換部100による周波数変換後の周波数成分(導波管フィルタ10を通過した所望の周波数帯)の信号のスペクトラム特性の測定を実行させる(ステップS5)。ここで、スペクトラムデータ取得部153は、検波器120で検波された所望の周波数帯f1、f2、f3のいずれかの信号成分の強度を含むスペクトラムデータを取得し、そのスペクトラムデータを表示部161に表示するスペクトラム表示制御を実施する。
【0106】
図8に示す一連の信号測定動作の実行中、ステップS2で選択されるべき通過帯域(周波数帯)が1つであった場合には、ステップS3での隙間Gの調整、ステップS4での周波数変換、ステップS5でのスペクトラム特性の測定の各処理を実行した後に信号測定動作を終了する。また、ステップS2で設定すべき通過帯域が複数あった場合には、それぞれの通過帯域に対応して上記ステップS3、S4、S5の各処理を繰り返し実施した後、信号測定動作を終了する。
【0107】
本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1の変形例としては、図7に示す導波管フィルタ10に代えて、複数の導波管フィルタ10を用いる構成、例えば、図6に示す変形例に係る導波管フィルタ10Aを用いる構成とすることもできる。
【0108】
導波管フィルタ10Aを用いた変形例に係るスペクトラムアナライザ1においては、被測定信号を、Y分岐等によるか、スイッチによって切り替えるかすることによって、導波管フィルタ10-1と導波管フィルタ10-2へ入力し、その被測定信号から、当該導波管フィルタ10―1、または導波管フィルタ10―2によって、予め設定した所望の周波数帯、例えば、周波数帯f1、f2、f3、または周波数帯f4、f5、f6のいずれかの周波数帯の信号を抽出してそのスペクトラム特性の測定を行うことができる。変形例に係るスペクトラムアナライザ1において、基本的な測定動作は図8に示すフローチャートに沿って実現することができる。その際、図8に示すステップS3、S4、S5の各処理を抽出する通過帯域がなくなるまで繰り返し実施することとなる。
【0109】
(導波管フィルタ10を用いるシグナルアナライザ2)
上記実施形態に係る導波管フィルタ10(図5(a)参照)、変形例1に係る導波管フィルタ10A(図6参照)は、図7に示したスペクトラムアナライザ1に限らず、例えば、シグナルアナライザ2にも適用可能である。
【0110】
図9は、導波管フィルタ10(または、導波管フィルタ10A)を用いるシグナルアナライザ2の一般的構成を示す図である。シグナルアナライザ2は、周波数変換部100D、アナログデジタル変換器(Analog to Digital Converter:ADC)125、制御部150D、操作部160、表示部161を有するとともに、周波数変換部100Dの前段に上述した構成を有する導波管フィルタ10を備えている。
【0111】
周波数変換部100Dは、ミキサ111D、ローカル信号発生器112D、フィルタ113Dを具備して構成される。
【0112】
ミキサ111Dは、導波管フィルタ10から出力されるスプリアス波が抑制された各周波数成分の信号(RF周波数)と、ローカル信号発生器112Dから入力されるローカル信号とを混合することにより、被測定信号をRF周波数から中間周波数の信号(IF周波数)に変換して出力する。
【0113】
ローカル信号発生器112Dは、局部発振信号源9から入力するローカル信号(基準信号)に基づき、ミキサ111Dに送出するためのローカル信号を発生する。
【0114】
フィルタ113Dは、ミキサ111Dによって周波数変換されたIF信号を入力し、入力されたIF信号の予め設定されたある帯域の周波数成分の信号のみを通過させ、ADC125へと入力させるフィルタ機能部である。
【0115】
ADC125は、導波管フィルタ10を通過し、周波数変換部100Dで周波数変換された信号(被測定信号)をアナログ信号からデジタル信号に変換する機能部である。
【0116】
制御部150Dは、隙間可変制御部151D、周波数制御部152D、信号解析部153Dを有している。隙間可変制御部151Dは、スペクトラムアナライザ1(図7参照)の制御部150に設けられるものと同等のものである。
【0117】
周波数制御部152Dは、周波数変換部100Dでの被測定信号の周波数変換に際して指定された解析対象周波数範囲の信号を受信できるようにローカル周波数を設定する制御を行う。周波数変換部100Dを構成するローカル信号発生器112Dは、受信するRF周波数に応じてローカル周波数を可変することができる構成を有している。このため、周波数制御部152Dは、ローカル信号発生器112Dを駆動制御し、ローカル周波数を掃引制御する構成であってもよい。
【0118】
信号解析部153Dは、ADC125によりデジタル信号の変換された信号(被測定信号)の波形を解析する処理、具体的には、上記デジタル信号をスペクトラム等の波形表示を行うための波形解析データを生成する処理を実行する。
【0119】
上記構成を有するシグナルアナライザ2の信号解析処理については、図7に示すスペクトラムアナライザ1の信号測定動作(図8参照)と比較して、ステップS3までは同じ流れで推移する。その後の信号解析動作として、シグナルアナライザ2は、ステップS3での隙間Gの調整制御、及びローカル周波数設定の終了後、制御部150Dは、導波管フィルタ10の導波路25を通過する調整後の隙間Gに対応する周波数成分を出力ポート28から周波数変換部100Dに入力して周波数変換し、ADC125に入力する。ADC125では、周波数変換後の信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して信号解析部153Dに入力する。信号解析部153Dは、ADC125から入力するデジタル信号から、当該デジタル信号をスペクトラム等の波形表示を行うための波形解析データを生成する。制御部150Dは、信号解析部153Dにより生成された波形解析データを表示部161に表示する等の信号解析のための制御を行う。
【0120】
(導波管フィルタ10Eを用いる信号発生装置3)
上記実施形態に係る導波管フィルタ10(図5(a)参照)、変形例1に係る導波管フィルタ10A(図6参照)は、図7に示したスペクトラムアナライザ1、図8に示したシグナルアナライザ2の他、例えば、DUTの受信感度試験を行う信号発生装置3にも適用可能である。
【0121】
図10は、導波管フィルタ10Eとして上述した導波管フィルタ10、10Aを用いる信号発生装置3の一般的構成を示す図である。信号発生装置3としては、DUTに対するミリ波帯の信号の受信感度試験を行う試験用信号を発生する試験用信号発生装置を想定している。
【0122】
本実施形態に係る信号発生装置3は、周波数変換部100E、信号発生部130、制御部150E、操作部160、表示部161の他、周波数変換部100Eの後段に設けられる導波管フィルタ10Eを備えている。周波数変換部100Eは、ミキサ111E、ローカル信号発生器112E、フィルタ113Eにより構成され、制御部150Eは、隙間可変制御部151E、周波数制御部152E、信号発生制御部153Eを備えて構成される。
【0123】
信号発生装置3において、周波数変換部100Eは、信号発生制御部153Eの制御下で信号発生部130から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器112Eから出力されるローカル信号とともにミキサ111Eに与え、ミリ波帯の信号に変換する処理を行う。その際、周波数変換部100Eは、DUTを試験するために例えば操作部160にて設定される試験対象周波数に応じてローカル信号の周波数を周波数制御部152Eにより変化させつつ、周波数変換後の信号を後段へと送出する。
【0124】
周波数変換部100Eの後段に設けられる導波管フィルタ10Eとしては、上述した導波管フィルタ10(図5(a)参照)、変形例1に係る導波管フィルタ10A(図6参照)等が適用可能であるが、ここでは特に、導波管フィルタ10(図5(a)参照)を用いる構成を前提に説明する。
【0125】
すなわち、信号発生装置3において、導波管フィルタ10Eは、図10に示すように、入力ポート27が周波数変換部100Eの出力側に接続され、出力ポート28がRF送出部の入力側に接続されるように配置され、入力ポート27に周波数変換部100E側からRF周波数(例えば、f1、f2、f3)に変換された信号(信号発生部130から入力する試験用信号)が入力し、該入力信号が、該導波管フィルタ10を経由してRF Outputたる試験用信号として送出可能な形態で実装されている。
【0126】
DUTの試験に際しての信号発生装置の試験用信号の送信制御動作について図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0127】
DUTの試験を行うべく、ユーザは、例えば、操作部160において、周波数、すなわち、試験対象周波数を設定する操作を行う(ステップS11)。ここで設定するパラメータとしては、例えば、周波数帯f1、f2、f3のそれぞれの中心周波数や、スタート周波数とストップ周波数などが挙げられる。
【0128】
次いで、制御部150Eは、ステップS1で設定された試験対象周波数範囲に基づき、導波管フィルタ10に選択されるべき通過帯域(周波数帯f1、f2、f3(図5(a)参照)のいずれか)とLO設定を算出する(ステップS12)。
【0129】
引き続き、隙間可変制御部151は、導波管フィルタ10の第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを、ステップS12で算出した通過帯域に対応する隙間G、例えば、G0、G1、G2(図3(b)、(c)、(d)参照)のいずれかとなるように調整制御する(ステップS13)。その際、隙間可変制御部151は、隙間調整機構33のモータ40に対して算出された通過帯域に対応する制御信号(隙間調整制御信号)を送出し、当該モータ40を、隙間Gが算出された通過帯域に対応する値となるまで回転駆動する。また、ステップS13においては、周波数変換部100での周波数変換のために、ステップS12で算出されたLO設定に基づきローカル周波数を設定する制御も行われる。
【0130】
ステップS13での隙間Gの調整制御、及びローカル周波数設定の終了後、制御部150Eは、導波管フィルタ10Eの導波路25を通過する調整後の隙間Gに対応する周波数成分を出力ポート28から図示しないRF送出部に出力する(ステップS14)。
【0131】
さらに制御部150Eは、RF送出部を駆動制御し、導波管フィルタ10Eの出力ポート28から入力する周波数成分の信号を試験用信号として送出する(ステップS15)。
【0132】
上述したように、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、互いに直方体形状を有し、それぞれ長手方向の一側面22a、22bに長手方向の一端部23から他端部24にかけて導波路25となるべき溝部25a、25bが形成される第1導波管部21a、及び第2導波管部21bを備え、第1導波管部21aと第2導波管部21bを一側面22a、22b同士が向かい合うように対向配置した状態で溝部25a、25bによる導波路25が形成されるとともに、第1導波管部21aの一側面22aと、第2導波管部21bの一側面22bとの間の隙間Gに応じて導波路25の通過帯域が変化する導波管部20と、所望の通過帯域が設定されるように導波管部20における隙間Gを可変する隙間調整機構33と、を有して構成される。
【0133】
この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、第1導波管部21aの一側面22aと、第2導波管部21bの一側面22bとの間の隙間Gを可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応できる。
【0134】
また、本実施形態に係る導波管フィルタ10において、第1導波管部21a、及び第2導波管部21bは、導波路25を形成する溝部25a、25bに沿って、所定のスタブ長l2とスタブ高さh2を有し、かつ、溝部25a、25bの長手方向に所定のキャビティ長l3の間隔ごとに連続に形成される複数のスタブ溝26をさらに有し、それぞれのスタブ溝26のスタブ長l2及びスタブ高さh2、キャビティ長l3に応じて導波路25の通過帯域が変化する構成を有する。
【0135】
この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、スタブ長l2、スタブ高さh2、キャビティ長l3を適宜に選択することで、導波管部20の基本となる通過帯域を変動させることができ、運用の幅が広がる。
【0136】
また、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、スタブ長l2が長いほど中心周波数の低い通過帯域を設定可能な構成である。この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、スタブ長l2を変えることで導波管部20の基本となる通過帯域を選択することができ、基本となる通過帯域の設計が容易となる。
【0137】
また、本実施形態に係る導波管フィルタ10において、第1導波管部21a、及び第2導波管部21bは、導波路25の長手方向の両端近傍で外側に向かうにしたがって導波管高さ及び導波管幅が徐々に変化するテーパー部25a1、25b1を有する構成である。この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、テーパー部25a1、25b1のテーパー形状の選択によって、周辺の導波管コンポーネントとの連結が容易に行えるようになる。
【0138】
また、本実施形態に係る導波管フィルタ10において、隙間調整機構33は、第1導波管部21aを載置する第1ステージ42aと、第2導波管部21bを、第1導波管部21aに対して対向配置された状態に載置する第2ステージ42bと、第1ステージ42a及び第2ステージ42bを、第1導波管部21aと第21波管部21bとの隙間Gが変化するように、対称面に対して対称に移動可能に駆動するモータ40a、40bを有する構成である。
【0139】
この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、モータ40a、40bによって第1ステージ42a及び第2ステージ42bを、対称面に対して対称に動くように駆動することで、第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを容易に可変できるとともに、フィルタ特性を向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態に係る導波管フィルタ10において、導波管部20は、所定の周波数範囲の被測定信号を導波路25に入力し、互いにオーバーラップする複数の周波数帯f1、f2、f3のうちの、隙間Gに対応する通過帯域に合致するいずれか1つの帯域の周波数成分を出力するように構成されている。この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタ10は、隙間Gを可変することで、その隙間Gに応じて所定の周波数範囲内の複数の通過帯域のうちの所望の通過帯域を設定することができる。
【0141】
また、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とともにミキサ111に与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ113を有する周波数変換部100と、前記中間周波数帯の信号を検波する検波器(120)とを有し、解析対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、被測定信号のスペクトラム特性を求めるスペクトラムアナライザ1において、周波数変換部100の前段に、上述した構成を有する導波管フィルタ10、10Aを設けるとともに、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域が設定される隙間Gとなるように隙間調整機構33を駆動制御する隙間可変制御部151を有し、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分を、導波管フィルタ10、10Aを通して測定する構成を有している。
【0142】
この構成により、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、第1導波管部21aの一側面22aと、第2導波管部21bの一側面22bとの間の隙間Gを可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定に対応できる。
【0143】
また、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、複数の導波管フィルタ10-1、10-2を備え、それぞれの導波管フィルタ10-1、10-2の導波管部20において、互いにオーバーラップするそれぞれ帯域のうちの隙間Gに対応して設定される通過帯域の周波数成分を出力する構成を有する。この構成により、本実施形態に係るスペクトラムアナライザ1は、第1導波管部21a、第2導波管部21b間の隙間Gを可変することで通過帯域を容易に可変できる複数の導波管フィルタ10-1、10-2を用いて、高周波数帯の広範な帯域の測定、解析、試験に対しても簡単かつ安価な構造で対応できる。
【0144】
また、本実施形態に係るシグナルアナライザ2は、所定の周波数範囲の被測定信号を、ローカル信号発生器112から出力されるローカル信号とともにミキサ111Dに与え、そのミキシング出力から所定の中間周波数帯の信号を抽出するフィルタ113Dを有する周波数変換部100Dと、中間周波数帯の信号をADC125でデジタル信号に変換した後に当該信号の波形を解析する信号解析部153Dとを有し、解析対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、被測定信号の波形を解析するシグナルアナライザ2において、周波数変換部100Dの前段に、上述した構成を有する導波管フィルタ10、10Aを設けるとともに、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域が設定される隙間Gとなるように隙間調整機構33を駆動制御する隙間可変制御部151Dを有し、解析対象周波数のうちの一周波数帯に対応する周波数成分の信号を、導波管フィルタ10、10Aを通して解析することを特徴とする。
【0145】
この構成により、本実施形態に係るシグナルアナライザ2は、第1導波管部21aの一側面22aと、第2導波管部21bの一側面22bとの間の隙間Gを可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の解析に対応できる。
【0146】
また、本実施形態に係る信号発生装置3は、信号発生部130から出力される中間周波数帯の試験用信号を、ローカル信号発生器112Eから出力されるローカル信号とともにミキサ111Eに与え、所定の周波数範囲の信号に変換する周波数変換部100Eを有し、DUTを試験するための試験対象周波数に応じてローカル信号の周波数を変化させて、周波数変換部100Eによる周波数変換後の信号を被測定対象の試験用信号として送出する信号発生装置3において、周波数変換部100Eの後段に、周波数変換後の信号が入力される上述した構成を有する導波管フィルタ10E(導波管フィルタ10、10A)を設けるとともに、試験対象周波数のうちの一周波数帯に対応する通過帯域が設定される隙間Gとなるように隙間調整機構33を駆動制御する隙間可変制御部151Eを有し、試験対象周波数のうちの導波管フィルタ10Eを通過する一周波数帯に対応する周波数成分の試験用信号を送出する構成を有している。
【0147】
この構成により、本実施形態に係る信号発生装置3は、第1導波管部21aの一側面22aと、第2導波管部21bの一側面22bとの間の隙間Gを可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の試験に対応できる。
【0148】
また、本実施形態に係る導波管フィルタの制御方法は、上述した構成を有する導波管フィルタ10、10Aを用いるスペクトラムアナライザ1、またはシグナルアナライザ2、若しくは信号発生装置3における導波管フィルタの制御方法であって、解析対象周波数、または試験対象周波数を設定する設定ステップ(S1、S11)と、設定された前記解析対象周波数、または試験対象周波数に基づき、導波管フィルタ10、10Aにおける選択されるべき通過帯域が設定されるように第1導波管部21aと第2導波管部21b間の隙間Gを可変制御するステップ(S3、S13)と、可変制御された隙間Gを有する導波管部20の導波路25を通過する解析対象周波数、または試験対象周波数に対応する周波数成分を抽出するステップ(S4、S14)と、を含んで構成されている。
【0149】
この構成により、本実施形態に係る導波管フィルタの制御方法は、第1導波管部21aの一側面22aと、第2導波管部21bの一側面22bとの間の隙間Gを可変することで、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易にかつ連続的に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
以上のように、本発明は、フィルタを切り替えることなく通過帯域を容易に可変でき、簡単かつ安価な構造で、高周波信号の高精度の測定、解析、試験に対応可能であるという効果を奏し、導波管フィルタ、これを用いるスペクトラムアナライザ、シグナルアナライザ、信号発生装置、及び導波管フィルタの制御方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0151】
1 スペクトラムアナライザ
2 シグナルアナライザ
3 信号発生装置
9 局部発振信号源
10、10-1、10-2、10A、10E 導波管フィルタ
20 導波管部
21a 第1導波管部(第1の導波管部)
21b 第2導波管部(第2の導波管部)
22a、22b 一側面
23 一端部(一端)
24 他端部(他端)
25 導波路
30、30A 隙間調整部
31 第1ステージ
31b 第1ステージのステージ主要部
32 第2ステージ
33 隙間調整機構
40 モータ
40a、40b モータ(駆動手段)
42a 第1ステージ(第1のステージ部材)
42b 第2ステージ(第2のステージ部材)
100、100D、100E 周波数変換部
111、111D、111E ミキサ
112、112D、112E ローカル信号発生器
113、113D、113E フィルタ
120 検波器
125 アナログデジタル変換器(ADC)
130 信号発生部
150、150D、150E 制御部
151、151D、151E 隙間可変制御部(隙間可変制御手段)
152 周波数掃引制御部
152D、152E 周波数制御部
153 スペクトラムデータ取得部
153D 信号解析部
153E 信号発生制御部
160 操作部
161 表示部
h1 溝高さ
h2 スタブ高さ
h3 導波路高さ
l2 スタブ長
l3 キャビティ長
図1
図2
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