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特開2024-135756印刷装置、印刷装置の制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135756
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷装置の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/365 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B41J2/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046608
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】植松 健二
【テーマコード(参考)】
2C066
【Fターム(参考)】
2C066AA03
2C066AA14
2C066BD01
2C066BD07
2C066BD12
2C066CA05
2C066CA10
2C066CA13
2C066CA17
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドの劣化による印字品位の低下を回避する。
【解決手段】印刷装置1は、被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドであるサーマルヘッド10と、サーマルヘッド10の温度を検出する検出部であるサーミスタ13と、サーマルヘッド10の推定温度とサーミスタ13により検出された温度との比較に基づいて推定されるサーマルヘッド10の劣化状態に応じて、サーマルヘッド10への通電を制御する制御部5と、を備える。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの温度を検出する検出部と、
前記印刷ヘッドの推定温度と前記検出部により検出された前記温度との比較に基づいて推定される前記印刷ヘッドの劣化状態に応じて、前記印刷ヘッドへの通電を制御する制御部と、を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記制御部は、
前記劣化状態が許容範囲内の場合、前記印刷ヘッドへの通電を制御し、
前記劣化状態が許容範囲外の場合、前記印刷ヘッドの劣化を報知する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記劣化状態が悪化するほど、前記印刷ヘッドへの印加電圧と通電時間の少なくとも一方を調整する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、実験を行うことで予め作成された情報であって、印刷条件に応じて前記印刷ヘッドに生じる温度変化についての情報に基づいて、前記推定温度を算出する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記推定温度と前記検出部により検出された前記温度との温度差を前記劣化状態として算出する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、ある印刷処理で推定された前記劣化状態に応じて、次回の印刷処理における前記印刷ヘッドへの通電を制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
印刷装置の制御方法であって、
被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドの温度を検出するステップと、
前記印刷ヘッドの推定温度と検出された前記温度との比較に基づいて推定される前記印刷ヘッドの劣化状態に応じて、前記印刷ヘッドへの通電を制御するステップと、を含む
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドの温度を検出し、
前記印刷ヘッドの推定温度と検出された前記温度との比較に基づいて推定される前記印刷ヘッドの劣化状態に応じて、前記印刷ヘッドへの通電を制御する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、印刷装置、印刷装置の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サーマルヘッドが有する発熱素子への通電を制御することで被印刷媒体に印刷を行う印刷装置が知られている。このような印刷装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1には、サーマルヘッドの温度が上限温度より高くなると実行中の印刷を中断する印刷装置が記載されている。特許文献1に記載の印刷装置によれば、サーマルヘッドの温度が上限温度よりも高い状態で印刷が行われることがないため、所望の印刷品質が得られない状態で印刷が継続して行われることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-25512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷品位の低下は、印刷ヘッドの温度が上限温度を超えた場合に限らず、例えば、抵抗値の変動を伴う印刷ヘッドの劣化によっても生じうる。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、印刷ヘッドの劣化による印字品位の低下を回避する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る印刷装置は、被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの温度を検出する検出部と、前記印刷ヘッドの推定温度と前記検出部により検出された前記温度との比較に基づいて推定される前記印刷ヘッドの劣化状態に応じて、前記印刷ヘッドへの通電を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る制御方法は、印刷装置の制御方法であって、被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドの温度を検出するステップと、前記印刷ヘッドの推定温度と検出された前記温度との比較に基づいて推定される前記印刷ヘッドの劣化状態に応じて、前記印刷ヘッドへの通電を制御するステップと、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、被印刷媒体に印刷を行う印刷ヘッドの温度を検出し、前記印刷ヘッドの推定温度と検出された前記温度との比較に基づいて推定される前記印刷ヘッドの劣化状態に応じて、前記印刷ヘッドへの通電を制御する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、印刷ヘッドの劣化による印字品位の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る印刷装置の斜視図である。
図2】一実施形態に係る印刷装置に収納されるテープカセットの斜視図である。
図3】一実施形態に係る印刷装置のカセット収納部の斜視図である。
図4】一実施形態に係る印刷装置の断面図である。
図5】一実施形態に係る印刷装置の制御ブロック図である。
図6】一実施形態に係る印刷装置が行う制御処理を説明する図である。
図7】一実施形態に係る印刷装置が行う制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8】サーマルヘッド温度を推定するためのテーブルの構成例を示す図である。
図9】一実施形態に係る印刷装置が行う制御処理の別の例を示すフローチャートである。
図10】一実施形態に係る印刷装置が行う制御処理の更に別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下では、被印刷媒体であるテープに文字、画像等を印刷し、印刷されたテープ(ラベル)をカットして装置の外部に排出することが可能な印刷装置を例にして、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
本明細書において、テープとは、プラスチック、紙、その他の任意の材料からなる細長く薄い帯状の被印刷媒体である。テープは、典型的には粘着層を有し、貼り付け可能である。ただし、テープは、粘着層を有しなくてもよい。また、ラベルとは、テープを被印刷媒体として利用して、テープ上に何らかの情報を印刷したもののことである。
【0014】
以降で説明する実施形態に係る印刷装置はテープに印刷を行うラベルプリンタであるが、印刷装置が印刷を行う被印刷媒体はテープに限らず、印刷装置はラベルプリンタに限らない。また、以降で説明する実施形態に係る印刷装置はサーマルヘッドを備える印刷装置、即ち、サーマルプリンタであるが、印刷装置が有する印刷ヘッドはサーマルヘッドに限らず、印刷装置はサーマルプリンタにも限らない。印刷装置は、例えば、任意の印刷方式(例えば、熱転写方式、感熱方式)のサーマルプリンタ印刷装置であってもよい。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置1の斜視図である。印刷装置1は、被印刷媒体に印刷を行うサーマルヘッドを備える印刷装置であり、例えば、被印刷媒体Mに印刷を行うラベルプリンタである。以降では、インクリボンを使用する熱転写方式のラベルプリンタを例にして説明するが、上述したように、印刷装置1の印刷方式は特に限定されない。例えば、感熱紙を使用する感熱方式であってもよい。
【0016】
被印刷媒体Mは、例えば、接着層を有する基材と、接着層を覆うように剥離可能に基材に貼付された剥離紙と、を有するテープである。被印刷媒体Mは、剥離紙(離型紙)なしのテープであってもよい。
【0017】
印刷装置1は、図1に示すように、装置筐体2と、入力部3と、表示部4と、開閉蓋18と、カセット収納部19を備える。装置筐体2の上面には、入力部3、表示部4、及び開閉蓋18が配置されている。また、図示しないが、装置筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられている。
【0018】
入力部3は、入力キー、十字キー、変換キー、決定キーなどの種々のキーを備える。表示部4は、例えば液晶表示パネルであり、入力部3からの入力に対応する文字等、各種設定のための選択メニュー、各種処理に関するメッセージ等を表示する。なお、表示部4にはタッチパネルユニットが設けられていてよく、その場合、表示部4を入力部3の一部として看做してもよい。
【0019】
開閉蓋18は、カセット収納部19の上部に開閉可能に配置されている。開閉蓋18は、ボタン18aが押下されることにより開く。開閉蓋18には、この開閉蓋18が閉じた状態でもカセット収納部19にテープカセット30(図2参照)が収納されているか否かを目視で確認可能とするために、窓18bが形成されている。また、装置筐体2の側面には、排出口2aが形成されている。印刷装置1内で印刷が行われた被印刷媒体Mは、排出口2aから装置外へ排出される。
【0020】
図2は、印刷装置1に収納されるテープカセット30の斜視図である。図3は、印刷装置1のカセット収納部19の斜視図である。図4は、印刷装置1の断面図である。図2に示すテープカセット30は、図3に示すカセット収納部19に着脱自在に収納される。図4には、テープカセット30がカセット収納部19に収納された状態が示されている。
【0021】
テープカセット30は、図2に示すように、サーマルヘッド被挿入部36及び係合部37が形成された、被印刷媒体MとインクリボンRを収容するカセットケース31を有する。カセットケース31には、テープコア32とインクリボン供給コア34とインクリボン巻取りコア35が設けられている。被印刷媒体Mは、カセットケース31内部のテープコア32にロール状に巻かれている。また、熱転写用のインクリボンRは、その先端がインクリボン巻取りコア35に巻きつけられた状態で、カセットケース31内部のインクリボン供給コア34にロール状に巻かれている。
【0022】
装置筐体2のカセット収納部19には、図3に示すように、テープカセット30を所定の位置に支持するための複数のカセット受け部20が設けられている。また、カセット受け部20には、テープカセット30が収容するテープ(被印刷媒体M)の幅を検出するためのテープ幅検出スイッチ24が設けられている。テープ幅検出スイッチ24は、カセットの形状に基づいて被印刷媒体Mの幅を検出する。
【0023】
カセット収納部19には、さらに、被印刷媒体Mに印刷を行う複数の発熱素子を有するサーマルヘッド10と、被印刷媒体Mを搬送するプラテンローラ21と、テープコア係合軸22と、インクリボン巻取り駆動軸23が設けられている。さらに、サーマルヘッド10には、サーミスタ13が埋め込まれている。サーミスタ13は、サーマルヘッド10の温度を測定する。
【0024】
テープカセット30がカセット収納部19に収納された状態では、図4に示すように、カセットケース31に設けられた係合部37がカセット収納部19に設けられたカセット受け部20に支持されて、サーマルヘッド10がカセットケース31に形成されたサーマルヘッド被挿入部36に挿入される。また、テープコア係合軸22には、テープカセット30のテープコア32が係合し、さらに、インクリボン巻取り駆動軸23には、インクリボン巻取りコア35が係合する。
【0025】
印刷装置1に印刷指示が入力されると、被印刷媒体Mは、プラテンローラ21の回転によりテープコア32から繰り出される。この際、インクリボン巻取り駆動軸23がプラテンローラ21に同調して回転することで、被印刷媒体MとともにインクリボンRがインクリボン供給コア34から繰り出される。これにより、被印刷媒体MとインクリボンRは重なった状態で搬送される。そして、サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過する際にインクリボンRがサーマルヘッド10によって加熱されることで、インクが被印刷媒体Mに転写され、印刷が行われる。
【0026】
サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過した使用済みのインクリボンRは、インクリボン巻取りコア35に巻き取られる。一方、サーマルヘッド10とプラテンローラ21の間を通過した印刷済みの被印刷媒体Mは、ハーフカット機構16及びフルカット機構17で切断され、排出口2aから排出される。
【0027】
図5は、印刷装置1の制御ブロック図である。印刷装置1は、上述の入力部3、表示部4、サーマルヘッド10、サーミスタ13、ハーフカット機構16、フルカット機構17、プラテンローラ21、テープ幅検出スイッチ24に加えて、制御部5、ROM(Read Only Memory)6、RAM(Random Access Memory)7、表示部駆動回路8、ヘッド駆動回路9、搬送用モータ駆動回路11、ステッピングモータ12、カッターモータ駆動回路14、及び、カッターモータ15を備える。なお、制御部5、ROM6、及びRAM7は、印刷装置1のコンピュータを構成する。
【0028】
制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ5aを含む。制御部5は、ROM6に記憶されているプログラムをRAM7に展開し実行することで、サーマルヘッド10を含む印刷装置1の各部を制御する。
【0029】
ROM6は、被印刷媒体Mに印刷を行う印刷制御プログラム、印刷制御プログラムの実行に必要な各種データ(例えば、フォント等)を記憶する。また、ROM6には、例えば、サーマルヘッド10の温度の推定に用いる後述するテーブル(図8参照)が格納されている。
【0030】
RAM7は、印刷する文字や記号などを記憶する入力データメモリとして機能する。また、RAM7は、入力データメモリに記憶された情報に基づいて生成される、被印刷媒体に形成すべき印刷パターンを示すデータ(以降、印刷データと記す)を記憶する印刷データメモリとしても機能する。さらに、RAM7は、表示部4に表示される表示用データを記憶する表示データメモリとしても機能する。
【0031】
表示部駆動回路8は、RAM7に記憶された表示用データに基づいて表示部4を制御する。表示部4は、表示部駆動回路8の制御下で、例えば、印刷処理の進捗状況が認識可能な態様で印刷内容を表示してもよい。
【0032】
ヘッド駆動回路9は、制御部5から供給された印刷データとストローブ信号に基づいて複数の発熱素子10aへの通電を行う。詳細には、ストローブ信号がONである期間中に、印刷データに応じて発熱素子10aへの電流の供給(通電)を制御する。より詳細には、ストローブ信号がONで、且つ、印刷データが印字ドットを示す場合には、印字ドットに対応する発熱素子10aへ電流を供給する。
【0033】
サーマルヘッド10は、被印刷媒体Mに印刷を行う印刷ヘッドである。サーマルヘッド10は、主走査方向に一列に整列した複数の発熱素子10aを有する。サーマルヘッド10は、制御部5から送出されたストローブ信号がONである期間に印刷データに応じて発熱素子10aをヘッド駆動回路9が選択的に通電することで、発熱素子10aでインクリボンRを加熱して熱転写により被印刷媒体Mに1ラインずつ印刷を行う。サーミスタ13は、サーマルヘッド10の温度を検出する検出部である。
【0034】
搬送用モータ駆動回路11は、ステッピングモータ12を駆動する。ステッピングモータ12は、プラテンローラ21を駆動する。プラテンローラ21は、ステッピングモータ12の動力によって回転し、被印刷媒体Mの長手方向(副走査方向)に被印刷媒体Mを搬送する。
【0035】
カッターモータ駆動回路14は、カッターモータ15を駆動する。ハーフカット機構16及びフルカット機構17は、カッターモータ15の動力によって動作し、被印刷媒体Mをハーフカット又はフルカットする。フルカットとは、被印刷媒体Mの基材を剥離紙とともに幅方向に沿って切断する動作のことである。ハーフカットは、基材のみを幅方向に沿って切断する動作のことであってもよく、ミシン目が入るように被印刷媒体Mを切断する動作のことであってもよい。
【0036】
図6は、印刷装置1が行う制御処理を説明する図である。以上のように構成された印刷装置1では、サーマルヘッド10の劣化に伴う印刷物(ラベル)の印刷品位の低下を回避するために、制御部5(プロセッサ5a)が図6に示す制御処理を行う。
【0037】
まず、制御部5が被印刷媒体である被印刷媒体Mに印刷を行うサーマルヘッド10の温度を検出する(ステップS1)。ここでは、サーミスタ13が検出したサーマルヘッド10の温度を取得することで、サーマルヘッド10の温度を検出する。
【0038】
その後、制御部5は、検出された温度とサーマルヘッド10の推定温度との比較に基づいてサーマルヘッド10の劣化状態を推定する(ステップS2)。さらに、制御部5は、推定した劣化状態に応じてサーマルヘッド10への通電を制御する(ステップS3)。
【0039】
このように、推定された劣化状態に応じて通電制御を行うことで、印刷装置1によれば、サーマルヘッド10の劣化に伴う印刷品位の低下を回避することができる。印刷装置1では、劣化状態の推定には、サーマルヘッド10が劣化するとサーマルヘッド10の抵抗値が変動し、その結果、サーマルヘッド10で消費される電力及びエネルギー量が変化することを利用する。より具体的には、消費電力及びエネルギー量が変化することで生じる、サーマルヘッド10の推定温度と実際の温度との違いから劣化状態を推定する。このため、印刷装置1は、サーマルヘッド10の温度を検出する検出部(サーミスタ13)を備えればよく、劣化検知のために特別な構成を設けることなく、劣化状態を推定することができる。
【0040】
制御部5が行う通電制御は、消費電力及びエネルギー量を調整してサーマルヘッド10の温度(発熱)を調整するものであればよく、具体的な方法は特に限定しない。例えば、通電時間を制御することで温度を調整してもよく、印加電圧を制御することで温度を調整してもよい。
【0041】
一般に劣化によりサーマルヘッド10の抵抗値は上昇する。制御部5は、劣化により抵抗値が上昇した場合には、設計時に想定した温度までサーマルヘッド10の温度が上昇しないため、サーマルヘッド10への印加電圧と通電時間の少なくとも一方を大きくすることが望ましい。つまり、印加電圧を上げて単位時間当たりに消費エネルギー(つまり、電力)を増やすことで被印刷媒体へ加えるライン(ドット)当たりの熱エネルギーを調整してもよく、通電時間を長くすることでライン(ドット)当たりの熱エネルギーを調整してもよい。これにより、劣化に伴って生じうるエネルギー供給不足を回避することができる。
【0042】
また、制御部5は、劣化により抵抗値が低下した場合には、設計時に想定した温度以上にサーマルヘッド10の温度が上がってしまうため、サーマルヘッド10への印加電圧と通電時間の少なくとも一方を小さくすることが望ましい。これにより、劣化に伴って生じうる過剰なエネルギー供給を回避することができる。
【0043】
また、印加電圧や通電時間の調整量は、抵抗値の変動幅に応じて決定することが望ましい。例えば、抵抗値が上昇した場合であれば、抵抗値の変動幅に対して一定の割合で通電時間や印加電圧を基準値(初期値)に対して大きくしてもよい。また、抵抗値の変動幅に対して1つ以上の閾値を設けて、閾値を境に通電時間や印加電圧を段階的に大きくしてもよい。いずれにしても、変動幅が大きいほど通電時間や印加電圧が大きくなるように調整されればよい。抵抗値が低下した場合であれば、抵抗値の変動幅に対して一定の割合で通電時間や印加電圧を基準値(初期値)に対して小さくしてもよい。また、抵抗値の変動幅に対して1つ以上の閾値を設けて、閾値を境に通電時間や印加電圧を段階的に小さくしてもよい。いずれにしても、変動幅が大きいほど通電時間や印加電圧が小さくなるように調整されればよい。
【0044】
以下、印刷装置1で行われる制御処理の具体例について説明する。図7は、印刷装置1が行う制御処理の一例を示すフローチャートである。図8は、サーマルヘッド温度を推定するためのテーブルの構成例を示す図である。
【0045】
印刷装置1は、まず、電源がONになり、図7に示す制御処理が制御部5によって開始されると、環境温度を検出する(ステップS101)。環境温度は、印刷装置1に設けられた温度センサによって検出してもよく、印刷装置1が外部装置と通信して環境温度を取得することで、検出してもよい。
【0046】
印刷装置1へ印刷指示が入力されると(ステップS102YES)、制御部5は、印刷前にサーマルヘッド10の温度を検出し(ステップS103)、その後、印刷を行い(ステップS104)、印刷終了後にサーマルヘッド10の温度を検出する(ステップS105)。
【0047】
ステップS103及びステップS105では、サーミスタ13がサーマルヘッド10の温度を検出し、制御部5がサーミスタ13で検出された温度を取得することでサーマルヘッド10の温度を検出する。ステップS104では、制御部5は、各種回路(ヘッド駆動回路9、搬送用モータ駆動回路11など)を制御して通電制御や搬送制御などを実行して被印刷媒体Mへ印刷を行う。このように、印刷装置1では、印刷前後のサーマルヘッド10の温度が検出される。
【0048】
さらに、制御部5は、サーマルヘッド10の温度を推定する(ステップS106)。ステップS106で行う推定処理は、印刷開始時や印刷中に行われてもよい。
【0049】
温度の推定方法は特に限定しないが、制御部5は、例えば、図8に示すような、実験等を行うことで予め作成された、様々な印刷条件下でサーマルヘッド10に生じる温度変化についての情報を用いて、サーマルヘッド10の温度を推定してもよい。
【0050】
温度の推定は、以下の(1)(2)を前提として行われ、推定される温度は、サーマルヘッド10が劣化していない状態を想定したときの温度である。
(1)検出又は取得された環境温度の情報が正しい。
(2)サーミスタ13による温度の検出結果が正しい、つまり、サーミスタ13が正常に動作している。
【0051】
なお、図8には、印刷データ(この例では、黒字率と印刷長の組み合わせ)に応じたサーマルヘッド10の温度変化を記録したテーブル(テーブル101、テーブル102、テーブル103)が環境温度毎に設けられた様子が示されている。
【0052】
制御部5は、例えば、ステップS101で検出された環境温度に基づいて選択したテーブルから印刷データに基づいて印刷終了時までに生じる温度変化の情報を取得し、ステップS103で検出したサーマルヘッド10の温度にその温度変化を加算することで、サーマルヘッド10の温度を推定してもよい。
【0053】
その後、制御部5は、ステップS105で検出した実際の温度とステップS106で推定した温度とを比較し(ステップS107)、その比較結果に基づいて、通電制御に関するパラメータを調整する(ステップS108)。
【0054】
ステップS107では、制御部5は、実際の温度と推定した温度を比較して、その温度差に基づいてサーマルヘッド10の劣化状態を推定する。より具体的には、制御部5は、推定した温度に対して実際の温度が乖離しているほどサーマルヘッド10の劣化が進行していると判断する。
【0055】
ステップ108では、制御部5は、推定したサーマルヘッド10の劣化状態に応じて、通電制御に関するパラメータを調整する。具体的には、制御部5は、例えば、劣化状態に応じた長さの時間に、通電時間のパラメータを設定する。より具体的には、制御部5は、例えば、劣化により抵抗値が上昇する場合であれば、劣化状態が進行しているほど、通電時間を長く設定すればよく、劣化により抵抗値が低下する場合であれば、劣化状態が進行しているほど、通電時間を短く設定すればよい。
【0056】
印刷装置1が図7に示す制御処理を行うことで、制御部5は、印刷によって生じたサーマルヘッド10の温度変化に基づいてサーマルヘッド10の劣化状態を推定し、推定した劣化状態に応じて通電制御のパラメータを調整する。これにより、次回の印刷におけるサーマルヘッド10への通電が制御される。即ち、制御部5は、ある印刷処理で推定された劣化状態に応じて、次回の印刷処理におけるサーマルヘッド10への通電を制御する。
【0057】
従って、印刷装置1によれば、図7に示す制御処理を行うことで、印刷単位でパラメータの調整が行われるため、印刷中に印字品位が変化することを防止しながら、サーマルヘッド10の劣化に伴う印刷品位の低下を回避することができる。
【0058】
図9は、印刷装置1が行う制御処理の別の例を示すフローチャートである。図9に示す制御処理のステップS201からステップS207の処理は、図7に示す制御処理のステップS101からステップS107の処理と同様である。
【0059】
図9に示す制御処理では、制御部5は、ステップS207の比較結果に基づいて推定される劣化状態が許容範囲内か否かを判定する(ステップS208)。ここでは、制御部5は、例えば、比較により得られる温度差が所定範囲内か否かによって、劣化状態が許容範囲内か否かを判定してもよい。なお、許容範囲とは、例えば、サーマルヘッド10の劣化による印刷品位の低下を通電制御で補償可能な範囲のことである。
【0060】
その後、制御部5は、サーマルヘッド10の劣化状態が許容範囲内の場合には、その劣化状態に応じて、通電制御に関するパラメータを調整する(ステップS209)。これにより、次回の印刷におけるサーマルヘッド10への通電が制御される。一方で、制御部5は、サーマルヘッド10の劣化状態が許容範囲外の場合には、サーマルヘッド10の劣化を報知する(ステップS210)。
【0061】
印刷装置1が図9に示す制御処理を行うことで、制御部5は、通電制御により印字品位の低下を抑制可能であれば、通電パラメータを調整して次回の印刷におけるサーマルヘッド10への通電を制御する。また、通電制御により印字品位の低下を抑制できない場合には、サーマルヘッド10の劣化を利用者に報知して、サーマルヘッド10の交換や修正などの作業を促す。
【0062】
印刷装置1によれば、図9に示す制御処理を行うことで、通電制御により印刷品位の低下を回避しつつ、通電制御により調整できないサーマルヘッド10の劣化を利用者が把握することができる。従って、印刷品位の低い印刷物が作成されることをより確実に防止することができる。
【0063】
図10は、印刷装置1が行う制御処理の更に別の例を示すフローチャートである。図10に示す制御処理は、制御部5が印刷開始後、所定ライン毎にサーマルヘッドの温度を検出する点(ステップS303)が、図9に示す制御処理とは異なっている。
【0064】
印刷装置1が図10に示す制御処理を行うことで、制御部5は、印刷開始時と終了時の温度差だけではなく、印刷中の温度変化の推移についての情報まで得ることができる。従って、推定される温度と実際の温度との違いが、サーマルヘッド10の劣化により継続的に発生するものであるか、それとも、例えば印刷データに起因して生じる一時的なものであるかを切り分けることが可能となる。
【0065】
従って、印刷装置1によれば、図10に示す印刷制御を行うことで、サーマルヘッド10の劣化を精度よく特定して、サーマルヘッド10の劣化に伴う印刷品位の低下を回避することができる。
【0066】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。即ち、印刷装置、印刷装置の制御方法、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0067】
上述した実施形態では、制御部5が推定するサーマルヘッド10の劣化として主に経年劣化を想定して説明したが、サーマルヘッド10に生じる劣化は経年劣化によらず、様々な原因によって生じる。制御部5が推定する劣化は、そのような経年劣化の劣化を含んでもよく、例えば、外部からの衝撃などが原因で故障した場合のサーマルヘッド10の劣化であってもよい。制御部5は、断線によってサーマルヘッド10が発熱しない場合などもサーマルヘッド10の劣化として推定してもよい。
【0068】
上述した実施形態では、サーマルヘッド10の温度を推定するために使用するテーブルを環境温度毎に設ける例を示したが、環境温度以外の条件を考慮してテーブルを設けてもよい。例えば、さらに、テープ幅や被印刷媒体の材質ごとにテーブルを設けてもよい。
【0069】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷装置
5 制御部
5a プロセッサ
9 ヘッド駆動回路
10 サーマルヘッド
10a 発熱素子
13 サーミスタ
101、102、103 テーブル
M 被印刷媒体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10