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特開2024-135760放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135760
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20240927BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20240927BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20240927BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20240927BHJP
   G21F 9/08 20060101ALI20240927BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G21F9/06 Z
G21F9/00 Z
G21F9/12 501J
G21F9/10 A
G21F9/08 511Z
G21F9/30 101
G21F9/12 501B
G21F9/12 512B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046613
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤口 覚
(72)【発明者】
【氏名】石田 一成
(57)【要約】
【課題】放射性廃棄物の発生量を減少させることが可能な放射性廃液の処理方法を提供する。
【解決手段】放射性廃液の処理方法は、放射性廃液の放射性核種の濃度を測定する濃度測定工程と、放射性廃液に吸着材を接触させ、放射性廃液の放射性核種を吸着材に吸着させる放射性核種の除去工程とを含む。また、放射性廃液の処理方法は、吸着材を含む放射性廃液から水分を除去し、放射性廃液中の吸着材の濃度を高くする濃縮工程を含む。さらに、放射性廃液の処理方法は、濃縮工程後の放射性廃液に凝集剤を供給して凝集沈殿を行う凝集工程と、凝集沈殿後の放射性廃液を脱水する脱水工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃液の放射性核種の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記放射性廃液に吸着材を接触させ、前記放射性廃液の前記放射性核種を前記吸着材に吸着させる前記放射性核種の除去工程と、
前記吸着材を含む前記放射性廃液から水分を除去し、前記放射性廃液中の前記吸着材の濃度を高くする濃縮工程と、
前記濃縮工程後の前記放射性廃液に凝集剤を供給して凝集沈殿を行う凝集工程と、
前記凝集沈殿後の前記放射性廃液を脱水する脱水工程と、を含む
放射性廃液の処理方法。
【請求項2】
前記放射性廃液に接触させる前記吸着材の量を、前記濃度測定工程で測定した前記放射性核種の濃度、および、前記吸着材の濃度と吸着性能との関係から決定する
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項3】
前記吸着材として、陽イオン交換樹脂、Fe酸化物、チタン酸化合物、チタン酸塩化合物、フェロシアン化合物、キレート樹脂、活性炭、オキシン添着活性炭、ゼオライト、シリカ粒子、および、アルミナ粒子から選ばれる1種以上を用いる
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項4】
前記濃縮工程での前記吸着材の濃度を、前記凝集剤を供給したときの前記吸着材の濃度と放射性廃棄物の含水率との関係から決定する
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項5】
前記濃縮工程での前記吸着材の濃度を、前記吸着材の濃度と放射性廃棄物の含水率との関係が平衡となる前記吸着材の濃度以上とする
請求項4に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項6】
前記濃縮工程および前記脱水工程として、クロスフロー方式によるフィルタ処理、プレスフィルタ方式によるフィルタ処理、および、加熱方式による蒸発処理から選ばれる1種以上を用いる
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項7】
前記凝集剤として、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第二鉄、および、塩化第二鉄の少なくともいずれかを含む無機凝集剤、並びに、天然高分子系、および、合成高分子系の少なくともいずれかを含む有機凝集剤から選ばれる1種以上を用いる
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項8】
前記放射性核種として、金属元素、および、非金属元素から選ばれる1種以上の元素を除去し、
前記金属元素が、α核種、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および、希土類から選ばれる1種以上であり、
前記非金属元素が、アンチモン、テルル、ヨウ素などのハロゲン、炭素、および、ホウ素から選ばれる1種以上である
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項9】
前記α核種が、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、ネプツニウム、および、ウランから選ばれる1種以上を含み、
前記遷移金属が、ルテニウム、テクネチウム、および、ニオブから選ばれる1種以上を含み、
前記アルカリ金属が、セシウムを含み、
前記アルカリ土類金属が、ストロンチウムを含み、
前記希土類がセリウムを含む
請求項8に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項10】
前記除去工程において、前記除去工程に用いる前記吸着材の量を、前記凝集剤を供給するときの前記吸着材の濃度と放射性廃棄物の含水率との関係が平衡となる前記吸着材の濃度から決定し、前記放射性廃液に前記吸着材を接触させる処理を複数回行う
請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項11】
前記除去工程の回数を、前記濃度測定工程で測定した前記放射性核種の濃度、および、前記吸着材の濃度と吸着性能との関係から決定する
請求項10に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項12】
放射性廃液の放射性核種の濃度を測定する放射性核種濃度測定装置と、
前記放射性廃液に吸着材を接触させ、前記放射性廃液の前記放射性核種を前記吸着材が吸着する放射性核種除去装置と、
前記吸着材を含む前記放射性廃液から水分が除去される濃縮装置と、
前記水分が除去された前記放射性廃液に凝集剤が供給され、前記吸着材を凝集沈殿させる凝集装置と、
前記凝集沈殿後の前記放射性廃液を脱水する脱水装置と、を備える
放射性廃液の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムに係わる。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの原子炉冷却材浄化系、燃料プール冷却材浄化系等から発生するセルロース系のろ過助材、イオン交換樹脂等を含むフィルタスラッジその他の放射性有機廃棄物は、貯蔵タンクに長期間貯蔵保管されている。これらの放射性有機廃棄物は、原子力プラントの運転に伴って定常的に発生する。
放射性有機廃棄物の保管スペースを確保するためには、現在貯蔵中の放射性有機廃棄物の体積を効率的に減らす減容処理が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)となる。
特許文献1~3に記載の技術では、放射性核種を含む廃棄物の凝集沈殿や上澄み水の脱水、吸着材による核種除去と核種吸着後の吸着材(廃吸着材)やコロイドのクロスフローろ過による回収や濃縮により減容を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-178157号公報
【特許文献2】特開2014-66647号公報
【特許文献3】特開2021-120662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1~3に記載された技術を用いても、凝集沈殿や上澄み水の脱水時の放射性廃棄物の含水率が高くなる。このため、放射性廃棄物の体積が大きくなり、放射性廃棄物が多量に発生してしまう場合がある。放射性廃液の処理においては、放射性廃棄物の発生量をさらに減少させることが求められている。
【0005】
上述した問題の解決のため、本発明においては、放射性廃棄物の発生量を減少させることが可能な放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムを提供する。
【0006】
また、本発明の上記の目的およびその他の目的と本発明の新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射性廃液の処理方法は、放射性廃液の放射性核種の濃度を測定する濃度測定工程と、放射性廃液に吸着材を接触させ、放射性廃液の放射性核種を吸着材に吸着させる放射性核種の除去工程とを含む。また、放射性廃液の処理方法は、吸着材を含む放射性廃液から水分を除去し、放射性廃液中の吸着材の濃度を高くする濃縮工程を含む。さらに、放射性廃液の処理方法は、濃縮工程後の放射性廃液に凝集剤を供給して凝集沈殿を行う凝集工程と、凝集沈殿後の放射性廃液を脱水する脱水工程とを含む。
【0008】
また、本発明の放射性廃液の処理システムは、放射性廃液の放射性核種の濃度を測定する放射性核種濃度測定装置と、放射性廃液に吸着材を接触させ、放射性廃液の放射性核種を吸着材が吸着する放射性核種除去装置とを備える。また、放射性廃液の処理システムは、吸着材を含む放射性廃液から水分が除去される濃縮装置を備える。さらに、放射性廃液の処理システムは、水分が除去された放射性廃液に凝集剤が供給され、吸着材を凝集沈殿させる凝集装置と、凝集沈殿後の放射性廃液を脱水する脱水装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射性廃棄物の発生量を減少させることが可能な放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムを提供することができる。
【0010】
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
図2】放射性廃液の処理システムの構成の一例を示す図である。
図3図2に示す処理システムの放射性核種濃度測定装置から脱水装置までの詳細構成図である。
図4】吸着材濃度と除染係数との関係を示すグラフである。
図5】放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度の関係を示すグラフである。
図6】放射性廃棄物の体積に及ぼす処理工程の差異の影響を参照して説明する図である。
図7】放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムについて、文章および図面を用いて説明する。ただし、本発明に示す構造、材料、その他具体的な各種の構成等は、ここで取り上げた実施の形態や実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
上述した、放射性廃棄物の発生量を低減できる、放射性廃液の処理方法を提供する目的は、下記の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムによって達成できる。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムの第1実施形態
2.放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムの第2実施形態
【0014】
〈1.放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムの第1実施形態〉
第1実施形態の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムを、図1図5を参照して説明する。本形態の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムは、原子力プラントで発生する放射性廃棄物の処理に適用される。
【0015】
[放射性廃液の処理方法]
まず、図1を参照して、放射性廃液の処理方法の概要を説明する。図1は、放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
原子力プラント、例えば、運転を経験している沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器内の炉心には、燃料集合体が装荷されている。また、燃料貯蔵プールには、使用済の燃料集合体が保管されている。これらの燃料集合体の燃料棒には、被覆管が設けられている。万が一、被覆管が破損した場合、燃料棒内の核燃料物質(α核種であるウラン、プルトニウム、ネプツニウム、アメリシウムおよびキュリウム等を含む)や放射性核種が、原子炉圧力容器内の冷却水中や、燃料貯蔵プール内の冷却水中に漏洩する。そして、原子炉圧力容器内の冷却水中に漏洩した放射性核種は、原子炉冷却材浄化系の浄化装置内のイオン交換樹脂によって除去される。また、燃料貯蔵プール内の冷却水中に漏洩した放射性核種は、燃料プール冷却材浄化系の浄化装置内のイオン交換樹脂によって除去される。
【0016】
沸騰水型原子力プラントの原子炉冷却材浄化系、および、燃料プール冷却材浄化系等から発生する、セルロース系のろ過助材やイオン交換樹脂等を含むフィルタスラッジ(放射性有機廃棄物)は、高線量樹脂貯蔵タンクに長期間に亘って貯蔵される。その高線量樹脂貯蔵タンク内に貯蔵されている放射性有機廃棄物は、所定の貯蔵期間が経過した後、高線量樹脂貯蔵タンクから取り出される。
【0017】
高線量樹脂貯蔵タンクから取り出された、陽イオン交換樹脂を含む放射性有機廃棄物に対して、図1に示す第一洗浄工程(クラッド溶解工程)S1が実施される。
第一洗浄工程S1は、還元性のある有機酸の水溶液(例えば、シュウ酸水溶液)を放射性有機廃棄物に接触させる。そして、この水溶液に含まれる有機酸によって、放射性有機廃棄物に含まれる鉄酸化物などのクラッドが溶解される。クラッドに含まれているコバルト60等の放射性核種は、クラッドの溶解によって有機酸水溶液中に移行する。
【0018】
第一洗浄工程S1において使用する有機酸は、主たる構成元素が炭素、水素、酸素および窒素である。このため、第一洗浄工程S1において有機酸を用いることにより、第一洗浄工程S1で洗浄廃液として発生する有機酸水溶液を、例えば、オゾンを用いて酸化処理(後述の廃液分解工程S4)したときに、廃液中に不揮発性の残渣を生じない。有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸、および、クエン酸から選ばれる1種以上を用いることが望ましい。
【0019】
第一洗浄工程S1が施されて、クラッドが溶解された放射性有機廃棄物に対して、第二洗浄工程(放射性核種溶離工程)S2が実施される。
この第二洗浄工程S2では、有機酸塩水溶液を、クラッドが溶解された放射性有機廃棄物に接触させる。そして、水溶液に含まれる有機酸塩によって、放射性有機廃棄物に吸着されたα核種等の放射性核種が溶離される。
【0020】
第二洗浄工程S2で使用される有機酸塩は、水溶液中で解離し、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンを生じる有機酸塩であることが望ましい。すなわち、有機酸塩は、その主たる構成元素が炭素、水素、酸素および窒素であって、第二洗浄工程S2の終了後において洗浄廃液である有機酸塩水溶液を、例えば、オゾンを用いて酸化処理(廃液分解工程S4)をしたときに、廃液中に不揮発性の残渣を生じないものであることが望ましい。有機酸塩としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩を用いることが望ましい。なお、有機酸塩として、ギ酸ヒドラジンを用いてもよい。
【0021】
アンモニウム塩は、酸化処理により、窒素ガスおよび水に分解されるため、バリウム塩およびセシウム塩に比べて、放射性廃棄物の発生量を低減することができる。ギ酸、シュウ酸、酢酸またはクエン酸のアンモニウム塩、バリウム塩またはセシウム塩は、水溶液中で解離して、NH4+、Ba2+またはCsになる。NH4+、Ba2+またはCsは、水素イオンよりも陽イオン交換樹脂に吸着されやすい陽イオンである。
【0022】
第二洗浄工程S2で放射核種の溶離液から分離された放射性有機廃棄物に対し、焼却固化工程S3が実施される。核種溶離液から分離された放射性有機廃棄物は、焼却設備に移送され、焼却設備で焼却された後、焼却により生成した灰が固化容器内でセメント等の固化剤により固化される。
【0023】
第一洗浄工程S1において洗浄廃液として発生する、クラッドの溶解成分を含む有機酸水溶液(クラッド溶解液)に対して、廃液分解工程S4が実施される。また、第二洗浄工程S2において洗浄廃液として発生する、溶離されたα核種等の放射性核種を含む有機酸塩水溶液に対して、廃液分解工程S4が実施される。廃液分解工程(有機酸および有機酸塩のいずれかの分解工程)S4では、オゾンまたは過酸化水素等の酸化剤が、有機酸水溶液または有機酸塩水溶液中に曝気され、その酸化剤の酸化作用により、有機酸または有機酸塩が分解される。
【0024】
廃液分解工程S4で有機酸または有機酸塩が分解された後、放射性核種を含む残留水溶液(放射性廃液)に対し、放射性核種の濃度が測定される(放射性核種の濃度測定S5)。
ここで、放射性核種の濃度測定は、放射性廃液をサンプリングして分析装置によって測定してもよいし、サーベイメータによって測定してもよい。また、放射性核種の濃度測定は、オンラインで測定してもよい。
放射性核種の濃度測定S5で測定された放射性核種の濃度が、所定濃度以下の場合、放射性核種の除去などを行わずに、容器充填または固化S10が行われる。なお、循環して第一洗浄工程S1や第二洗浄工程S2の洗浄水として用いてもよい。放射性廃棄物の発生量を減少させるためには、循環して第一洗浄工程S1や第二洗浄工程S2で用いることが好ましい。
【0025】
一方、放射性核種の濃度測定S5で測定された放射性核種の濃度が、所定濃度以上の場合、放射性核種の除去工程S6が行われる。放射性核種の除去工程S6では、放射性廃液に対して、放射性核種の吸着材が供給される。除去工程では、放射性廃液を吸着材と接触させることにより、放射性廃液中の放射性核種が吸着材に吸着され、放射性廃液の液相から放射性核種が除去される。吸着材としては、例えば、陽イオン交換樹脂、Fe酸化物、チタン酸化合物、チタン酸塩化合物、フェロシアン化合物、キレート樹脂、活性炭、オキシン添着活性炭、ゼオライト、シリカ粒子やアルミナ粒子等を使用することができる。
【0026】
なお、放射性核種の除去工程S6の前工程として、放射性廃液へpH調整剤を供給してpH調整を行い、放射性核種の化学形態を制御してもよい(図示せず)。pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸等)無機アルカリ(水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等)、有機酸(カルボン酸、アスコルビン酸等)、有機アルカリ(アンモニウム系等)を使用することができる。
【0027】
放射性核種除去工程S6を行った後、吸着材を含む放射性廃液において、放射性核種を吸着した吸着材の濃度を高める濃縮工程S7が行われる。濃縮工程S7は、クロスフローフィルタを用いることにより、放射性核種吸着した吸着材を、放射性核種が除去された廃液と分離する。
濃縮工程S7では、放射性廃液中に凝集沈殿していない吸着材が存在する状態であり、放射性廃液中に、放射性核種が除去された廃液に吸着材等の固形分が分散した状態であることが多い。すなわち、濃縮工程S7では、放射性廃液から、放射性核種が除去された液体の一部を分離することで、放射性廃液中で放射性核種を吸着した吸着材等の固形分の濃度を高めた、放射性廃液の濃縮液を作製する。
なお、この工程では、放射性核種を吸着した吸着材とともに放射性核種を含むスラリー等を含む固形分と、放射性核種が除去された廃液とが分離される。また、濃縮工程S7では、クロスフローフィルタ以外にも、例えば、プレスフィルタや蒸発装置等を用いて上記の固液分離や濃縮を行ってもよい。また、濃縮工程S7によって分離された、放射性核種が除去されたろ過水(廃液)は、循環して第一洗浄工程S1や第二洗浄工程S2の洗浄水として用いてもよい。
【0028】
濃縮工程S7により分離された吸着材やスラリー等の固形分を含む濃縮液は、凝集工程S8により凝集沈殿が行われる。凝集工程S8では、濃縮液に対して凝集剤を供給することにより、濃縮液中の吸着材や放射性核種を含むスラリー等を含む固形分を凝集、および、沈殿させる。凝集剤としては、例えば、無機凝集剤(硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム、硫酸第二鉄や塩化第二鉄等)、有機凝集剤(天然高分子系や合成高分子系等)等を使用することができる。
【0029】
凝集工程S8により凝集沈殿された吸着材および放射性核種を含むスラリー等の固形分を含む濃縮液(放射性廃棄物)は、脱水装置により脱水工程S9が行われる。脱水工程S9では、濃縮工程S7と同様に、例えば、クロスフローフィルタ、プレスフィルタ、および、蒸発装置等を用いて、放射性核種を除去した廃液と、吸着材および放射性核種を含むスラリー等の固形分とを分離する固液分離を行う。
【0030】
脱水工程S9を行った後の吸着材および放射性核種を含むスラリー等の固形分に対し、容器充填または固化S10が行われる。脱水された放射性廃棄物は、固化設備に移送され、固化材(例えば、セメント)が供給される。固化容器内の紛体は、固化材によって固化される。または、脱水された放射性廃棄物は、充填設備に移送され、粉体を充填した容器を密封した後、その容器が保管場所に保管される。なお、脱水工程S9により脱水した放射性核種を除去した廃液は、循環して第一洗浄工程S1や第二洗浄工程S2の洗浄水として用いてもよい。
【0031】
[放射性廃液の処理システム]
次に、上述の放射性廃液の処理方法のステップS1~S10の各工程を含む放射性廃液の処理システムの構成の一例を、図2を参照して説明する。図2に示す放射性廃液処理システム1は、放射性有機廃棄物を処理する化学洗浄部10、および化学洗浄部10から排出される洗浄廃液(放射性廃液)を処理する廃液処理部19を備えている。
【0032】
化学洗浄部10は、第一受入タンク3、化学反応槽(洗浄槽)4、洗浄液供給タンク6、有機酸槽7、および、有機酸塩槽8および移送水槽9を有する。また、化学洗浄部10の前段に、高線量樹脂貯蔵タンク2が設けられ、化学洗浄部10の図中下方に、第二受入タンク11および焼却設備(またはセメント固化設備)12が設けられている。
化学洗浄部10では、図1に示した各工程のうち、クラッドを溶解する第一洗浄工程S1、および放射性核種を放射性有機廃棄物から溶離させる第二洗浄工程S2が行われる。
【0033】
化学洗浄部10は、移送ポンプ22を設けた有機廃棄物供給管23が、高線量樹脂貯蔵タンク2および第一受入タンク3を接続する。
化学反応槽4は、移送ポンプ24が設けられた有機廃棄物移送管25によって、第一受入タンク3に接続されている。この化学反応槽4の周囲に加熱装置5が配置されている。
洗浄液供給タンク6は、移送ポンプ32が設けられた洗浄液供給管33によって、化学反応槽4に接続されている。
化学反応槽4の底部に接続され、移送ポンプ34および弁35が設けられた戻り配管36が、洗浄液供給タンク6に接続されている。
【0034】
有機酸水溶液、例えば、シュウ酸水溶液が充填された有機酸槽7に接続され、弁26が設けられた配管29は、洗浄液供給タンク6に接続されている。有機酸槽7に充填されたシュウ酸水溶液は飽和水溶液であり、そのシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度は、例えば、0.8mol/Lである。
有機酸塩水溶液、例えば、ギ酸ヒドラジン水溶液が充填された有機酸塩槽8に接続され、弁27が設けられた配管30は、弁26よりも下流で配管29に接続されている。
移送水となる水が充填された移送水槽9に接続され、弁28が設けられた配管31は、弁27よりも下流で配管30に接続されている。
【0035】
弁37が設けられ、化学反応槽4の底部に接続された配管38は、第二受入タンク11に接続されている。
第二受入タンク11に接続された配管は、焼却設備(またはセメント固化設備)12に接続されている。
【0036】
廃液処理部19は、廃液分解装置13、放射性核種濃度測定装置14、放射性核種除去装置15、凝集装置16、脱水装置20、吸着材供給装置121、凝集剤供給装置122、および、濃縮装置131を有する。
廃液処理部19では、図1に示した各工程のうち、クラッドの溶解成分を含む有機酸水溶液中の有機酸を分解する廃液分解工程S4から、吸着材および放射性核種を含むスラリー等の固形分と廃液とを分離する固液分離が行われる脱水工程S9までが行われる。
【0037】
移送ポンプ34と弁35の間で戻り配管36に接続され、弁39が設けられた廃液供給管40は、廃液分解装置13に接続されている。
移送ポンプ43および弁44が設けられた配管45は、廃液分解装置13、放射性核種除去装置15に接続されている。この配管45は、上述の放射性廃液の処理方法において放射性核種を含む放射性廃液を、放射性核種除去装置15に導く放射性廃液の供給管である。そして、この配管45に、放射性核種濃度測定装置14、吸着材供給装置121が接続されている。
【0038】
配管46は、放射性核種除去装置15、濃縮装置131、凝集装置16に接続されている。凝集剤供給装置122は、凝集装置16に接続されている。
また、移送ポンプ47が設けられた配管48は、凝集装置16、脱水装置20に接続され、さらに配管49が脱水装置20、固化設備21に接続されている。
【0039】
濃縮装置131は、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式による固液分離装置を有する。この固液分離装置によって、放射性廃液をろ過し、放射性廃液から放射性核種を吸着した吸着材や放射性核種を含むスラリー等と、放射性核種が除去されたろ過水(廃液)とを分離する。なお、濃縮装置131は、固液分離装置として、加圧によるろ過を行うプレスフィルタ方式や蒸発装置を用いて濃縮する蒸発濃縮方式等で濃縮を行う装置を備えていてもよい。
【0040】
また、濃縮装置131には、化学洗浄部10の戻り配管36の移送ポンプ34と弁35の間に接続された配管55が、接続されている。そして、濃縮装置131においてろ過して吸着材および放射性核種を含むスラリーが分離されたろ過水は、配管55を通じて戻り配管36に戻る。これにより、ろ過水を循環水として循環させることができる。なお、戻り配管36と配管55との接続部よりも各配管36,55の上流側(化学反応槽4側と濃縮装置131側)には、図示しない弁を設けて、化学反応槽4からの水と配管55からのろ過水とを切り替えられるようにする。
【0041】
脱水装置20は、例えば、μmオーダー以下の孔径を有する膜を用いたクロスフローフィルタ方式による固液分離装置、加圧によるろ過を行うプレスフィルタ方式による固液分離装置、蒸発装置を用いて濃縮する蒸発濃縮方式等で濃縮を行うによる固液分離装置等を備える。
脱水装置20は、上述の濃縮装置131と同様に、脱水装置20には、化学洗浄部10の戻り配管36の移送ポンプ34と弁35の間に接続された配管56が、接続されている。そして、脱水装置20において脱水した放射性核種を除去した水は、配管56を通じて戻り配管36に戻る。これにより、循環水として循環させることができる。なお、戻り配管36と配管56との接続部よりも各配管36,56の上流側(化学反応槽4側と脱水装置20側)には、図示しない弁を設けて、化学反応槽4からの水と配管56からの水とを切り替えられるようにする。また、脱水装置20では、濃縮装置131で記載したクロスフローフィルタ方式、プレスフィルタ方式等により脱水を行ってもよい。
【0042】
なお、化学洗浄部10から廃液処理部19に放射性廃液を移送するタイミングは限定されない。例えば、戻り配管36にサンプリング弁をつけておき、サンプリング弁で採取した放射性廃液を定期的に分析することで、測定される放射性核種の濃度が所望の濃度になった際に放射性廃液を移送させてもよい。
【0043】
ここで、図2に示す廃液処理部19のうち、放射性核種濃度測定装置14から脱水装置20までの詳細構成図を図3に示す。なお、図3では、放射性核種除去装置15に対して接続された配管、付近に設けられた部品(槽、装置等)も併せて示している。
【0044】
図3に示すように、放射性核種除去装置15に接続された放射性廃液の供給管である配管45に、放射性核種濃度測定装置14が接続されている。なお、放射性核種濃度測定装置14は、廃液処理部19に連結させず、サンプリングした放射性廃液に対して放射性核種濃度測定を行い、吸着材供給装置121の吸着材供給量に判定結果を反映させてもよい。
【0045】
放射性核種除去装置15は、配管45を通して廃液分解装置13から送られる放射性廃液を収容する、廃液処理槽によって構成されている。
なお、放射性核種濃度測定装置14によって放射性廃液の放射性核種の濃度等を測定した結果、放射性核種の濃度が所定濃度以下の場合は、放射性廃液を配管54を通じて戻り配管36に戻し、循環水として循環させてもよい。
【0046】
放射性廃液の放射性核種の濃度等を測定した結果、放射性核種の濃度が所定濃度以上の場合は、放射性核種除去装置15に放射性廃液が供給される。なお、放射性核種除去装置15に供給する前に、放射性廃液のpH調整を行い、化学形態を制御してもよい。
【0047】
放射性核種除去装置15に吸着材供給装置121から吸着材が供給される。そして、放射性核種除去装置15内で放射性廃液を吸着材に接触させる。これにより、放射性核種除去装置15において、放射性核種が吸着材に吸着され、放射性廃液の液相から放射性核種が除去される。
【0048】
放射性核種除去装置15において、放射性核種が吸着材に吸着された放射性廃液は、配管46を通じて濃縮装置131に供給される。濃縮装置131において固液分離によって濃縮された吸着材等のスラリーを含む濃縮液は配管46を通じて凝集装置16に供給される。なお、ろ過水は、配管55を通じて戻り配管36に戻し、循環水として循環させてもよい。この時、戻り配管36と配管55との接続部よりも各配管36,55の上流側(化学反応槽4側と濃縮装置131側)には、図示しない弁を設けて、化学反応槽4からの水と配管55からのろ過水とを切り替えられるようにする。
【0049】
凝集装置16は、配管46を通して濃縮装置131から送られる濃縮液を収容する、濃縮液処理槽によって構成されている。凝集装置16では、濃縮液に対して凝集剤供給装置122から凝集剤が供給され、濃縮液の凝集沈殿処理が行われる。
凝集沈殿された吸着材および放射性核種を含むスラリー等の固体を含む濃縮液(放射性廃棄物)は、配管48を通じて脱水装置20に供給される。脱水装置20において脱水した放射性核種を除去した水は、配管56を通じて戻り配管36に戻る。これにより、循環水として循環させることができる。なお、戻り配管36と配管56との接続部よりも各配管36,56の上流側(化学反応槽4側と脱水装置20側)には、図示しない弁を設けて、化学反応槽4からの水と配管56からの水とを切り替えられるようにする。
【0050】
脱水装置20で脱水された放射性廃棄物は、固化設備21(または充填設備)に移送される。固化設備21では、その粉体が固化容器内に充填され、その固化容器内に固化材(例えば、セメント)が供給される。固化容器内の紛体は、固化材によって固化される(容器充填または固化工程S10)。固化された粉体が内部に存在し、密封された固化容器は、保管場所において保管される。また、充填設備を用いる場合には、容器内に粉体を充填し、粉体を充填した容器を密封した後、その容器が保管場所に保管される。
【0051】
[吸着材供給量]
ここで、放射性核種濃度測定による吸着材供給量の決定に関して、図4の吸着材濃度と除染係数(Decontamination Factor:DF)との関係を参照して説明する。なお、図4に示す例は、試験液として1000倍希釈模擬海水(pH6)、放射性核種としてアメリシウム(Am)、吸着材としてマグネタイト(Fe)を用いた結果を示すグラフである。
【0052】
図4に示すように、吸着材濃度が増加するにつれてDFが増加することを確認した。なお、DFは、放射性核種の除去前の放射性廃液中の放射性核種の濃度を、放射性核種の除去後の放射性廃液中の放射性核種の濃度で割った値である。このため、DFの値が大きいほど、放射性廃液において、吸着材による放射性核種の除去量が多いことを示しているすなわち、図4に示すグラフは、放射性廃液中の吸着材の濃度と、この吸着材濃度での吸着材の吸着性能との関係を示している。
【0053】
例えば、放射性核種濃度測定によって得られたAm濃度が400Bq/Lの放射性廃液を、告示濃度の4Bq/L以下に低減するためには、放射性廃液の核種濃度1/100にする必要がある。この場合、図4に示すグラフから、DF100となる吸着材濃度で吸着材を放射性廃液に供給することにより、放射性廃液の核種濃度を1/100にすることができる。このため、図4に示すDFと吸着材濃度とを示すグラフと、放射性核種濃度測定によって得られた放射性廃液の放射性核種濃度、および、告示濃度とから、放射性核種の除去工程において要求される吸着材濃度、および、吸着材の供給量が決定される。
【0054】
[濃縮工程による放射性廃棄物量の低減]
次に、放射性核種を吸着した後の吸着材(以降、吸着前の吸着材と区別するために、放射性核種を吸着後の吸着材を廃吸着材と称する)を凝集沈殿する際に、凝集沈殿により発生する放射性廃棄物量を低減する方法について説明する。
【0055】
(廃吸着材濃度と含水率の平衡点)
図5は、凝集沈殿処理の際に発生する、放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度との関係を示すグラフである。なお、図5に示す例は、廃吸着材としてFe、凝集沈殿剤(凝集剤)として硫酸アルミニウム(Al(SO:1000ppm)を用いた結果を示すグラフである。また、廃吸着材濃度は凝集剤を供給する際の放射性廃液での吸着材濃度であり、放射性廃棄物の含水率は脱水工程後の放射性廃棄物に含まれる水分濃度である。
【0056】
図5に示すように、廃吸着材濃度が10g/Lまでは、廃吸着材濃度の増加につれて凝集沈殿後に発生する放射性廃棄物の含水率が低下する。一方、廃吸着材濃度が10g/L以上では、凝集沈殿後に発生する放射性廃棄物の含水率がほぼ変化しないことが確認された。すなわち、図5に示すように、廃吸着材濃度と含水率との関係では、廃吸着材濃度が一定の値を超えると、廃吸着材濃度の増減に係わらず含水率がほぼ一定の値になり、廃吸着材濃度に対して放射性廃棄物の含水率が平衡な状態となる。この廃吸着材濃度に対して放射性廃棄物の含水率が平衡となる廃吸着材濃度、および、放射性廃棄物の含水率を、含水率の平衡点と規定する。
【0057】
なお、放射性廃棄物の含水率が低下すると、放射性廃棄物に占める水分量が小さくなるため、放射性廃棄物全体では体積が小さくなり、放射性廃棄物量は低減される(図6で後述)。上記の結果から、放射性廃棄物の含水率が下がる範囲においては、廃吸着材濃度が高い条件で凝集沈殿を行うことにより、放射性廃棄物の含水率を低下、すなわち放射性廃棄物量を低減できる。
【0058】
(濃縮工程による放射性廃棄物の低減)
次に、上述の図1に示す放射性廃液の処理方法、および、図2に示す放射性廃液の処理システムによる放射性廃棄物低減の効果について、図6に示す放射性廃棄物の体積に及ぼす処理工程の差異の影響を参照して説明する。なお、図6に示す例は、吸着材としてFe、凝集沈殿剤としてAl(SOを用いた結果(図4および図5を活用)である。
【0059】
まず、従来の放射性廃液の処理方法での放射性廃棄物の体積の変化について説明する。従来の放射性廃液の処理方法では、放射性核種の濃度測定工程(S5)、吸着材の供給(除去工程S6)、凝集剤の供給(凝集工程S8)、および、脱水工程(S9)を行い、濃縮工程(S7)を行っていない場合を例示している。
【0060】
上記処理による放射性廃棄物の体積の変化を図6(a)に示す。
従来の放射性廃液の処理方法では、放射性廃液の放射性核種の濃度測定(S5)を行い、吸着材濃度とDFの関係(図4)から放射性核種を告示濃度以下に低減するのに必要な吸着材濃度を求める。図4から、例えば、放射性廃液の処理に必要案吸着材濃度が1g/Lと求められた場合、凝集沈殿時の放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度の関係(図5)から、放射性廃液の含水率は80wt%(95vоl%)となる。
この結果、図6(a)に示すように、脱水処理前(未処理)の放射性廃液では廃吸着材1gに対して汚染水1000mLであるのに対し、脱水後の放射性廃棄物では廃吸着材1gに対して汚染水20mLとなる。このため、未処理の放射性廃棄物の体積に対し、脱水後の放射性廃棄物の体積は約1/50となる。
【0061】
また、従来の放射性廃液の処理方法において、放射性廃棄物の含水率を低下させるため、放射性廃棄物の含水率が平衡点となる濃度の吸着材を放射性廃液に供給した場合の放射性廃棄物の体積の変化を図6(b)に示す。
この場合は、放射性廃液の放射性核種の濃度測定(S5)を行い、凝集沈殿時の放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度の関係(図5)から放射性廃棄物の含水率が平衡点となる吸着材濃度を求める。図4から、例えば、含水率が平衡点となる吸着材濃度が10g/Lと求められた場合、凝集沈殿時の放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度の関係(図5)から、放射性廃液の含水率は40wt%(70vоl%)となる。
【0062】
この結果、図6(b)に示すように、脱水処理前(未処理)の放射性廃液では廃吸着材10gに対して汚染水1000mLであるのに対し、脱水後の放射性廃棄物では廃吸着材10gに対して汚染水20mLとなる。このため、脱水処理前(未処理)放射性廃棄物の体積に対し、脱水後の放射性廃棄物の体積は約1/35となる。
この方法では、放射性廃液の含水率が図6(a)に比べて低くなるものの吸着材の量が多くなるため、放射性廃棄物の量も多くなる。このため、図6(a)に示す例では、放射性廃棄物中の廃吸着材と汚染水との比率が、廃吸着材1gに対して汚染水20mLであるの対し、図6(a)に示す例では、廃吸着材10gに対して汚染水20mLとなっている。このように、含水率が平衡点となる吸着材濃度を用いた場合には、廃吸着材濃度の増加により、放射性廃棄物がさらに増加する。また、供給する吸着材の吸着容量に対して、少量しか放射性核種を吸着しないため、非効率的な吸着材の使用方法となる。
【0063】
次に、本形態による放射性廃液の処理方法、および、処理システムによる放射性廃棄物の体積の変化を図6(c)に示す。
本形態の放射性廃液の処理方法では、放射性廃液の放射性核種の濃度測定(S5)を行い、吸着材濃度とDFの関係(図4)から放射性核種を告示濃度以下に低減するのに必要な吸着材濃度を求める。図4から、例えば、放射性廃液の処理に必要案吸着材濃度が1g/Lと求められた場合、この濃度となるように放射性廃液に吸着材を供給する(除去工程S6)。
【0064】
そして、除去工程(S6)後の放射性廃液に対して、濃縮工程(S7)を行う。濃縮工程(S7)では、凝集沈殿時の放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度の関係(図5)から、放射性廃棄物の含水率が平衡点となる吸着材濃度以上に吸着材等の固形分の濃度を濃縮する。このため、本例の濃縮工程(S7)では、放射性廃液に対して、廃吸着材濃度が10g/Lになるようろ過水を除去し、吸着材等の固形分の濃度を濃縮(10倍濃縮)する。図6(b)に示すように、この処理によって放射性廃棄物中の廃吸着材と汚染水との比率は、未処理の放射性廃液では廃吸着材1gに対して汚染水1000mLであるのに対し、濃縮液では廃吸着材1gに対して汚染水100mLまで濃縮される。
【0065】
その後、濃縮液に対して凝集沈殿工程(S8)および脱水工程(S9)を行う。この脱水工程(S9)では、含水率が平衡点となる吸着材濃度以上まで固形分の濃度が濃縮されている。このため、上記図6(b)と同様に、凝集沈殿時の放射性廃棄物の含水率と廃吸着材濃度の関係(図5)から、脱水工程(S9)によって放射性廃棄物の含水率を40wt%(70vоl%)とすることができる。
この結果、図6(c)に示すように、脱水処理前の濃縮液では廃吸着材1gに対して汚染水100mLであるのに対し、脱水後の放射性廃棄物では廃吸着材1gに対して汚染水2mLとなる。
このため、未処理の放射性廃棄物の体積に対し、濃縮および脱水後の放射性廃棄物の体積は約1/330となる。
【0066】
以上のことから、本形態の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムによれば、脱水工程後の放射性廃棄物を減少させることができる。特に、吸着材を用いた放射性廃液の除去工程後、凝集剤を供する前に放射性廃液の固形分濃度を高める濃縮工程を行うことにより、吸着材の供給量を増やすことなく濃縮液の廃吸着材濃度を高めることができる。このため、放射性廃液(濃縮液)において、図5に示す放射性廃棄物の含水率の平衡点以上に廃吸着材濃度を高めることができ、脱水工程後の放射性廃棄物の含水率を低減することができる。この結果、放射性廃棄物の発生量を低減することができる。
【0067】
従って、本形態の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムは、必要最小限の吸着材を用いた放射性核種除去による告示濃度の達成と、含水率低減による放射性廃棄物の発生量抑制を両立することができる。そして、長半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる。
なお、濃縮工程において平衡点以上に濃縮液の廃吸着材濃度を高めても、脱水工程後の廃吸着材等の固形分の含水率はほぼ変化しない(平衡)なため、放射性廃棄物の量はほぼ減少しない。このため、濃縮工程においては、含水率の平衡点まで濃縮液の廃吸着材濃度を高めればよい。
【0068】
また、本形態の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムは、放射性廃液に含まれるα核種以外の放射性核種を除去対象としてもよい。放射性核種としては、例えばルテニウム、テクネチウム、ニオブなどの遷移金属、セシウムなどのアルカリ金属、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、セリウムなどの希土類といった金属元素、アンチモン、テルル、ヨウ素などのハロゲン、炭素、ホウ素といった非金属元素のうちの一つあるいはそれ以上の複数元素が挙げられる。
【0069】
〈2.放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムの第2実施形態〉
次に、第2実施形態の放射性廃液の処理方法、および、放射性廃液の処理システムを、図7を参照して説明する。なお、第2実施形態の放射性廃液の処理方法は、上述の第1実施形態の放射性廃液の処理方法と、一部の工程が重複する。また、第2実施形態の放射性廃液の処理システムは、上述の第1実施形態と同様の図2、および、図3に示す放射性廃液の処理システムと同様の構成を適用することができる。このため、以下の説明では、上述の第1実施形態と同様の処理、および、同様の構成については説明を省略する。
【0070】
第2実施形態の放射性廃液の処理方法は、放射性核種の濃度測定と吸着材供給の運用が第1実施形態と異なる。第2実施形態の放射性廃液の処理方法を、図7を参照して説明する。図7は、第2実施形態の放射性廃液の処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0071】
まず、上述の図1に示すフローチャートに従って、放射性核種の濃度測定S5の処理までを行う。そして、放射性核種の濃度測定S5の処理の結果、放射性核種の濃度が、所定濃度以上の場合、図7に示す吸着剤の供給工程S61が行われる。吸着剤の供給工程S61では、放射性廃液に対して、図5に示す平衡点となる廃吸着剤濃度以上となるように、予め放射性核種除去装置15に吸着材が供給される。例えば、上述の図6に示す例と同様の条件では、図5に示す放射性廃棄物の含水率が平衡となる廃吸着剤濃度である、10g/Lの吸着材を放射性核種除去装置15に供給しておく。
【0072】
その後、放射性廃液の放射性核種濃度測定S62を行う。この工程は、放射性核種の濃度測定S5で代用してもよい。また、放射性核種濃度測定S62と吸着剤の供給工程S61との実行順序は問わない。そして、測定した放射性核種濃度から、この放射性廃液を放射性核種除去装置15に供給した場合に、放射性核種除去装置15内の吸着材によって放射性廃液の放射性核種濃度が、告示濃度を達成できるかどうかの判定工程S63を行われる。
【0073】
告示濃度を達成できる場合(S63のYES)、放射性核種除去装置15への放射性廃液を供給する工程S64が行われる。放射性廃液を供給する工程S64では、放射性核種除去装置15内で吸着材に放射性廃液を接触させ、放射性核種を吸着材に吸着させる。この放射性廃液を供給する工程S64は、上述の図1に示すフローチャートの除去工程S6に該当する。
【0074】
次に、所定時間経過後に、吸着材を含む放射性廃液において、放射性核種を吸着した吸着材の濃度を高める濃縮工程S7を行う。濃縮工程S7は、上述の図1に示すフローチャートと同様に行う。そして、濃縮工程S7の後、濃縮液を放射性核種除去装置15に供給することで、放射性核種除去装置15への吸着剤の供給工程S61が行われる。放射性核種除去装置15に濃縮液を供給することで、濃縮液に含まれる吸着性能に余裕のある吸着材を再利用する。なお、濃縮装置において脱水した放射性核種を除去した水(ろ過水)は、第1実施形態と同様に循環水として循環させることができる。また、濃縮工程S7の後に濃縮液を放射性核種除去装置15へ供給する場合にも、供給工程S61と放射性核種濃度測定S62と吸着剤の供給工程S61との実行順序は問わず、供給工程S61と放射性核種濃度測定S62とのいずれの工程を先に行ってもよい。
【0075】
上述の吸着材の供給工程61から放射性廃液の供給工程S64まで、および、濃縮工程S7を繰り返し(複数回バッチ)行う。そして、告示濃度を達成できるかどうかの判定工程S63において告示濃度を達成できない場合(S63のNO)、再利用していた濃縮液に対し、上述の第1実施形態と同様に、凝集工程S8、および、脱水工程S9が行われる。具体的には、濃縮工程S7で発生した濃縮液を放射性核種除去装置15に供給する供給工程S61を行った後、この放射性核種除去装置15に新たな放射性廃液の供給が行われずに、放射性核種除去装置15から凝集装置16に濃縮液が供給される。そして、凝集装置16、および、脱水装置20において、濃縮液に対して凝集工程S8および脱水工程S9が行われる。凝集工程S8および脱水工程S9の後は、上述の図1に示すフローチャートと同様に容器充填または固化工程S10が行われる。
【0076】
上述の図7に示すフローチャートによる放射性廃液の複数回バッチ処理では、放射性核種除去装置15に供給された吸着材濃度での吸着材の吸着性能が、次に供給される放射性廃液に対しては告示濃度を達成できない状態となる回数まで繰り返し行う。このように複数回のバッチ処理を行う場合、放射性廃液の供給工程S64(除去工程S6)を行う回数は、濃度測定工程S62で測定した放射性廃液中の放射性核種の濃度と、吸着材濃度と吸着性能との関係から決定される。
例えば、上述の吸着材濃度10g/Lの吸着材が供給された放射性核種除去装置15に対し、告示濃度の達成に吸着材濃度1g/Lが必要となる放射性核種濃度の放射性廃液を供給する場合は、10回のバッチ処理(工程S61~S64,S7)が可能となる。そして、11バッチ目の前に、新たに未使用の吸着材を放射性核種除去装置15に供給(S61)し、放射性廃液の放射性核種濃度測定など告示濃度を達成できる場合の処理工程(工程S61~S64および濃縮工程S7)を繰り返す。
【0077】
本実施形態の放射性廃液の処理方法によれば、吸着材の供給を都度行う必要なく、必要最小限の吸着材を用いた放射性核種の除去による告示濃度達成と、含水率低減による放射性廃棄物の発生量抑制を両立することができる。そして、長半減期のα核種を含む放射性廃棄物の発生量を低減できる。
【0078】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可
【符号の説明】
【0079】
1 放射性廃液処理システム、2 高線量樹脂貯蔵タンク、3 第一受入タンク、4 化学反応槽、5 加熱装置、6 洗浄液供給タンク、7 有機酸槽、8 有機酸塩槽、9 移送水槽、10 化学洗浄部、11 第二受入タンク、12 焼却設備、13 廃液分解装置、14 放射性核種濃度測定装置、15 放射性核種除去装置、16 凝集装置、19 廃液処理部、20 脱水装置、21 固化設備、22,24,32,34,43,47 移送ポンプ、23 有機廃棄物供給管、25 有機廃棄物移送管、26,27,28,35,37,39,44 弁、29,30,31,36,38,45,46,48,49,54,55,56 配管、33 洗浄液供給管、40 廃液供給管、121 吸着材供給装置、122 凝集剤供給装置、131 濃縮装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7