特開 2024-135761 圧縮ばね

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024135761

(43)【公開日】2024-10-04

(54)【発明の名称】圧縮ばね

(51)【国際特許分類】

   F16F 1/02 20060101AFI20240927BHJP

【ＦＩ】

F16F1/02 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023046616

(22)【出願日】2023-03-23

(71)【出願人】

【識別番号】598151670

【氏名又は名称】中央ばね工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100166132

【弁理士】

【氏名又は名称】木船 英雄

(72)【発明者】

【氏名】井上 英博

【テーマコード（参考）】

3J059

【Ｆターム（参考）】

3J059AA03

3J059BA04

3J059BA08

3J059BC01

3J059BD01

3J059EA01

3J059EA02

(57)【要約】

【課題】従来のコイルばねに比べて限られたスペースで優れた耐荷重性能を発揮できる新規な圧縮ばねの提供。
【解決手段】金属製のばね材１０を筒状に形成してなる圧縮ばね１００であって、前記ばね材１０は、平行に位置する上下一対の平行部１１ａ、１１ｂと、当該各平行部の右端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の右斜部１２ａ、１２ｂと、前記各平行部の左端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の左斜部１３ａ、１３ｂとからなる。このような構成によれば、従来のコイルばねに比べて優れた耐荷重性能を発揮できる。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

金属製のばね材を筒状に形成してなる圧縮ばねであって、
前記ばね材は、平行に位置する上下一対の平行部と、当該各平行部の右端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の右斜部と、前記各平行部の左端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の左斜部とからなることを特徴とする圧縮ばね。

【請求項2】

略Ｍ字状をした金属製のばね材を筒状に形成してなる圧縮ばねであって、
前記ばね材は、平行に位置する上下一対の平行部と、当該各平行部の一端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の斜部とからなることを特徴とする圧縮ばね。

【請求項3】

請求項１または２に記載の圧縮ばねにおいて、
前記金属製のばね材を楕円筒状に形成したことを特徴とする圧縮ばね。

【請求項4】

請求項１または２に記載の圧縮ばねにおいて、
前記金属製のばね材はそれを構成する各部の断面形状が矩形状となっていることを特徴とする圧縮ばね。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、高荷重に耐え得る金属製の圧縮ばねに関する。

【背景技術】

【0002】

電化製品や精密機器などに用いられる小型の圧縮ばねの多くは、金属線材をコイル状に加工したコイルばねが用いられるが、以下の特許文献１乃至４などに示すようなより複雑な形態の圧縮ばねも提案されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２３－３５２６７号公報

【特許文献2】特開２０２２－１０２８８６号公報

【特許文献3】特開２０１６－７５３９０号公報

【特許文献4】特開平１０－７３１３８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、従来から多用されている金属製のコイルばねの耐荷重は、その線材の太さやサイズなどによって異なるが、例えば線幅０．３～０．５ｍｍ、コイル径２．０～５．０ｍｍ、高さ５．０ｍｍ程度の小サイズのコイルばねの耐荷重は、一般に１００～８００ｇ程度であり、それ以上例えば同サイズで１０００ｇを超えるような高荷重に耐えることは困難である。

【0005】

そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は従来のコイルばねに比べて限られたスペースで優れた耐荷重性能を発揮できる新規な圧縮ばねを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

前記課題を解決するために第１の発明は、金属製のばね材を筒状に形成してなる圧縮ばねであって、前記ばね材は、平行に位置する上下一対の平行部と、当該各平行部の右端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の右斜部と、前記各平行部の左端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の左斜部とからなることを特徴とする圧縮ばねである。このような構成によれば、従来のコイルばねに比べて優れた耐荷重性能を発揮できる。

【0007】

第２の発明は、略Ｍ字状をした金属製のばね材を筒状に形成してなる圧縮ばねであって、前記ばね材は、平行に位置する上下一対の平行部と、当該各平行部の一端部からぞれぞれ斜め方向に伸びてその先端同士が結合した一対の斜部とからなることを特徴とする圧縮ばねである。このような構成によっても、従来のコイルばねに比べて限られたスペースで優れた耐荷重性能を発揮できる。

【0008】

第３の発明は、第１または第２の発明において、前記金属製のばね材を楕円筒状に形成したことを特徴とする圧縮ばねである。このように楕円筒状にすることにより、部品の隙間のような細長い狭いスペースに対しても容易に設置することができる。

【0009】

第４の発明は、第１または第２の発明において、前記金属製のばね材はそれを構成する各部の断面形状が矩形状となっていることを特徴とする圧縮ばねである。このように構成することにより、優れた耐荷重性能を発揮できる。

【発明の効果】

【0010】

本発明の圧縮ばねは、特殊な構造のばね材を筒状に加工したものであることから、従来のコイルばねに比べて限られたスペースで優れた耐荷重性能を発揮できる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明に係る圧縮ばね１００の実施の形態（実施例１）を示す斜視図である。

【図2】ばね材１０の展開図である。

【図3】（Ａ）は本発明に係る圧縮ばね１００の実施の形態を示す側面（正面）図、（Ｂ）はその平面（底面）図である。

【図4】本発明に係る圧縮ばね１００の伸縮状態を示す概念図である。

【図5】本発明に係る圧縮ばね１００の他の実施の形態（実施例２）を示す斜視図である。

【図6】ばね材２０の展開図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

（実施例１）
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図１は本発明に係る圧縮ばね１００の実施の一形態を示した斜視図であり、図２はその展開図、図３（Ａ）はその側面（正面）図、図３（Ａ）はその平面（底面）図である。図示するようにこの圧縮ばね１００は、金属製（ステンレス鋼、ばね鋼）のばね材１０を楕円筒状に形成してなるものであり、主にその円筒の軸方向の荷重（圧縮軸力）に対して高い弾性を発揮するようになっている。

【0013】

このばね材１０は、図２に示すように平行に位置する上下一対の平行部１１ａ、１１ｂと、これら各平行部１１ａ、１１ｂの図中右端部からそれぞれ左斜め下および左斜め上方向に伸びてその先端同士が結合した一対の右斜部１２ａ、１２ｂと、同じくこの平行部１１ａ、１１ｂの図中左端部からそれぞれ右斜め下および右斜め上方向に伸びてその先端同士が結合した一対の左斜部１３ａ、１３ｂとから構成されている。

【0014】

なお、このばね材１０の大きさは特に限定するものではないが、ワイヤーハーネスのコネクター部品などとして用いられる場合は、例えば板厚約０．５ｍｍ、横約１０ｍｍ×縦約５ｍｍ程度の大きさとなる。そして、鋼板をプレス金型によって打ち抜く方法の他、ワイヤー放電加工やレーザー切断加工などの公知の金属加工方法を用いることによって図示するような形状に加工することができる。従って、ばね材１０の各部（平行部１１ａ、１１ｂ、右斜部１２ａ、１２ｂ、左斜部１３ａ、１３ｂ）の断面形状はいずれも矩形状となっている。

【0015】

そして、図中上側の平行部１１ａと、その両端から伸びる右斜部１２ａと左斜部１３ａとの間には略三角形の第１隙間Ｓ１が形成されていると共に、右斜部１２ａ、１２ｂと、左斜部１３ａ、１３ｂとの間には略菱形の第２隙間Ｓ２が形成されている。さらに、図中下側の平行部１１ａと、その両端から伸びる右斜部１２ｂと左斜部１３ｂとの間には略三角形の第３隙間Ｓ３が形成されている。

【0016】

また、図中上側の平行部１１ａの右端と、左斜部１３ａ、１３ｂの結合端との間には三角形状の切欠きＣ１が形成されていると共に、図中下側の平行部１１ｂの右端と、左斜部１３ａ、１３ｂの結合端との間にも三角形状の切欠きＣ２が形成されている。さらに、図中上側の平行部１１ａの左端と、右斜部１２ａ、１２ｂの結合端との間には三角形状の切欠きＣ３が形成されていると共に、図中下側の平行部１１ｂの左端と、右斜部１２ａ、１２ｂの結合端との間にも三角形状の切欠きＣ４が形成されている。

【0017】

そして、このような形状をしたばね材１０を、その中央部を固定した状態でその両側を同じ方向に湾曲するように折り曲げ、さらに、その先端同士、すなわち各平行部１１ａ、１１ｂの両端同士および左斜部１３ａ、１３ｂの結合端と右斜部１２ａ、１２ｂの結合端同士が突き合わさるように折り曲げることで図１および図３に示すような楕円筒状に加工する。なお、この曲げ加工方法としては特に限定されるものではないが、プレス金型による単発での曲げ加工の他に、打ち抜きから曲げまでを一連で加工する順送金型による曲げ加工方法を用いることができる。

【0018】

その後、このように加工したばね材１０に対して所定の熱処理を施すことでばねとしての機能や耐久性を発揮することができる。この熱処理方法も特に限定されるものではないが、例えばステンレス素材の場合は、温度３００～４００℃、時間５～２０分程度の低温焼鈍（低温焼き鈍し：テンパー処理）を行うことで加工による歪みを除去すると共に、弾性や耐へたり性を向上することができる。

【0019】

以下の表１は、本発明（実施例１、実施例２）に係る圧縮ばね１００と、従来のコイルばねのたわみ量（ｍｍ）と荷重（ｇ）との関係を比較したものである。なお、本発明（実施例１、実施例２）に係る圧縮ばねのサイズは、いずれも図３に示すように線径（線幅）０．５ｍｍ、短直径２．０ｍｍ、長直径５．０ｍｍ、自由長さ（Ｌ）５．５ｍｍのものを用いた。一方、比較対象となるコイルばねは、これとほぼ同サイズ、すなわち線径０．５ｍｍ、短直径３．２ｍｍ、長直径４．８ｍｍ、自由長さ１２．０ｍｍ、ばね定数１．８６Ｎ／ｍｍのものを用いた。

【表1】

表１に示すように、従来のコイルばねは低荷重でも大きくたわんだのに対し、本発明に係る実施例１はコイルばねに比較して同程度のたわみ量になるには約２～５倍程度の荷重を要し、優れた耐荷重性能を発揮した。なお、本発明に係る実施例１に対してさらに荷重を増やしたところ、２６００ｇを超えるとへたりが生じたが最大で約２８００ｇもの優れた耐荷重性を発揮した。

【0020】

これは図４に示すように軸方向の荷重に対してばね材１０の隙間Ｓ１～Ｓ３および切欠きＣ１～Ｃ４の大きさ（幅）がそれぞれ軸方向に変化することによってばねとして弾性を発揮すると共に、大きな荷重に対して優れた耐へたり性能を発揮するものと考える。

【0021】

このように本発明の圧縮ばね１００とは異なる構造のばね材１０から構成したため、従来のコイルばねに比べて限られたスペースで優れた耐荷重性能を発揮することができる。なお、本実施の形態では、ばね材１０を楕円筒状に加工した例で説明したが、これはコネクターのような狭いスペースに適用する場合に適したものであるが、これ以外の形状、例えば真円形や多角形、８の字状などであってもよい。

【0022】

（実施例２）
次に、図５および図６は本発明に係る圧縮ばね１００の実施の形態を示したものである。図示するように本実施の形態では、略Ｍ字状をした金属製のばね材２０を楕円筒状に形成してなるものである。すなわち、このばね材２０は、図２に示すように、平行に位置する上下一対の平行部２１ａ、２１ｂと、これら各平行部２１ａ、２１ｂの右端部からそれぞれ斜め下および斜め上方向に伸びてその先端同士が結合した一対の斜部２２ａ、２２ｂとから構成されている。いわば、図２に示したばね材１０から左斜部１３ａ、１３ｂを省略したシンプルな構成となっている。

【0023】

そして、このような構成をしたばね材２０を前記実施の形態と同様な製法によって楕円筒状に形成することによって前記実施の形態の圧縮ばね１００と同様に、従来のコイルばねに比べて優れた耐荷重性能を発揮することができる。また、表１に示すように本実施の形態（実施例２）は、実施例１に比べてそのばね材２０の構造がシンプルとなっていることから、その耐荷重性能は前記実施の形態よりは低い値を示すものの、製法や加工が容易となり、また軽量化も達成できるという特有の効果を発揮することが可能となる。

【符号の説明】

【0024】

１０、２０…ばね材
１１ａ、１１ｂ、２１ａ、２１ｂ…平行部
１２ａ、１２ｂ…右斜部
１３ａ、１３ｂ…左斜部
２２ａ、２２ｂ…斜部
１００…圧縮ばね
Ｃ１、Ｃ２、Ｃ３、Ｃ４…切欠き
Ｓ１…第１隙間
Ｓ２…第２隙間
Ｓ３…第３隙間

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】