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特開2024-135762疎水化処理装置、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135762
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】疎水化処理装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L21/30 563
H01L21/30 564C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046618
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷野 寛仁
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146HA02
5F146JA04
(57)【要約】
【課題】疎水化処理において基板外周部の疎水化を抑制すること。
【解決手段】実施形態の疎水化処理装置は、処理対象の基板を載置可能な載置台と、載置台と対向する蓋体と、蓋体に設けられ、載置台に載置された基板に対し疎水化ガスを吐出する第1の供給口と、蓋体に設けられ、基板の外周部に対し不活性ガスを吐出する第2の供給口と、蓋体を基板の径方向に移動させることにより、基板に対する第2の供給口の位置を調整可能な第1の調整機構と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の基板を載置可能な載置台と、
前記載置台と対向する蓋体と、
前記蓋体に設けられ、前記載置台に載置された前記基板に対し疎水化ガスを吐出する第1の供給口と、
前記蓋体に設けられ、前記基板の外周部に対し不活性ガスを吐出する第2の供給口と、
前記蓋体を前記基板の径方向に移動させることにより、前記基板に対する前記第2の供給口の位置を調整可能な第1の調整機構と、
を備える
疎水化処理装置。
【請求項2】
前記蓋体は、
前記基板の前記外周部より内側の領域と対向する第1の蓋体と、
前記第2の供給口を有し、前記第1の蓋体の外側に接続される第2の蓋体と、
を有する、
請求項1に記載の疎水化処理装置。
【請求項3】
前記第2の蓋体は、
前記第1の蓋体の外側に接続されるとともに前記第1の蓋体に沿って延びる平面部と、前記平面部の外側の端部から下方に屈曲して延びる側面部と、を有する子蓋体を有し、
前記第2の供給口は、前記側面部の、前記基板と対向する端部に設けられ、
前記子蓋体のそれぞれが、前記基板の径方向に移動することにより、前記基板に対する前記第2の供給口の位置を調整する、
請求項2に記載の疎水化処理装置。
【請求項4】
前記子蓋体は、
前記平面部の上面に、前記基板の径方向に向かって凹部と凸部とが交互に並ぶ駆動部を有し、
前記第1の調整機構は、
前記基板の周方向に延びる回転軸に接続されるとともに前記回転軸を中心に前記基板の径方向に沿って回動可能な歯車を有し、
前記駆動部の前記凹部及び前記凸部と、前記歯車と、が噛み合うことにより、前記子蓋体が前記基板の径方向に移動する、
請求項3に記載の疎水化処理装置。
【請求項5】
前記第2の蓋体は、
前記第2の蓋体の外側から前記基板に向かって延びる整流板と、
前記第2の蓋体に設けられ、前記整流板を支持するとともに、前記基板に対して前記整流板を相対的に移動させることにより前記基板の前記外周部に対する前記不活性ガスの吐出位置を調整可能な第2の調整機構と、
を備える、
請求項2に記載の疎水化処理装置。
【請求項6】
塗布液の吐出対象の基板を載置台に載置し、
蓋体に設けられた第2の供給口を前記基板の径方向に移動させることにより、前記基板に対する前記第2の供給口の位置を調整し、
前記載置台に前記蓋体を対向させ、
前記第2の供給口から前記基板の外周部に対して不活性ガスを吐出し、
前記蓋体に設けられた第1の供給口から前記基板に対して疎水化ガスを吐出し、
前記不活性ガスによって前記疎水化ガスから前記基板を遮蔽しつつ、前記基板を前記疎水化ガスにより処理し、
前記基板に前記塗布液を塗布する、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、疎水化処理装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスにおいて、レジストパターンの倒れを防止するため、基板全面に疎水化処理を行うことがある。しかしながら、基板の疎水性が高くなると、基板の中心付近に吐出されたレジストが基板の外周部まで広がりにくくなることがある。そのため、基板の外周部で塗布異常が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7178177号公報
【特許文献2】特許第5575706号公報
【特許文献3】特許第4079212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの実施形態は、疎水化処理において基板外周部の疎水化を抑制可能な疎水化処理装置、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の疎水化処理装置は、処理対象の基板を載置可能な載置台と、前記載置台と対向する蓋体と、前記蓋体に設けられ、前記載置台に載置された前記基板に対し疎水化ガスを吐出する第1の供給口と、前記蓋体に設けられ、前記基板の外周部に対し不活性ガスを吐出する第2の供給口と、前記蓋体を前記基板の径方向に移動させることにより、前記基板に対する前記第2の供給口の位置を調整可能な第1の調整機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかる基板処理システムの概略の一例を示す透視上面図。
図2】実施形態の疎水化処理装置に基板を保持させた状態を示す断面図。
図3】実施形態にかかるベース蓋体の構成例を示す斜視図。
図4】実施形態にかかる蓋体の構成例を示す斜視図。
図5】実施形態にかかる可動蓋体の構成例を示す斜視図。
図6】実施形態にかかる可動蓋体の構成例を示す下面図。
図7】実施形態にかかる蓋開閉駆動機構の構成例を示す図。
図8】実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一例を示すフローチャート。
図9】実施形態の変形例にかかる蓋体の構成例を示す図。
図10】比較例の疎水化処理装置で処理された基板について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
[実施形態]
(基板処理システムの構成例)
図1は、実施形態にかかる基板処理システム1の概略の一例を示す透視上面図である。
【0009】
実施形態の基板処理システム1は、基板Wに対し、疎水化処理、感光性被膜の形成、及び露光後の感光性被膜の現像等を行うシステムである。基板処理システム1は、図示せぬ露光装置と接続されている。これにより感光性被膜の形成がなされた基板Wが露光装置へと送られ、そして、露光後の基板Wが露光装置から送出される。
【0010】
図1に示すように、基板処理システム1は、複数のポート10と、搬送室20と、疎水化処理装置30と、塗布装置40と、熱処理装置50と、現像装置60と、制御部100と、を備える。
【0011】
複数のポート10は、処理前後の複数の基板Wを収容する。ポート10は、搬送室20に接続されている。
【0012】
搬送室20は、処理前後の基板Wを搬送するための空間である。搬送室20には、搬送アーム21が設置されている。搬送アーム21は、搬送室20と、ポート10、疎水化処理装置30、塗布装置40、熱処理装置50、及び現像装置60と、の間で、順次基板Wの受け渡しを行う。搬送室20の、ポート10に対向する側には、疎水化処理装置30、塗布装置40、熱処理装置50、現像装置60のそれぞれが、搬送室20に隣接して設けられている。
【0013】
塗布装置40は、基板Wに塗布液としての薬液を塗布する装置である。塗布装置40は、図示せぬスピナを有する。スピナは、疎水化処理装置30において疎水化処理された基板Wを支持するとともに、水平面内で回転させる。スピナは、基板Wを回転させた状態で、基板Wの中心付近に薬液を吐出する。基板Wの中心付近に吐出された薬液は、基板Wの外周部へ向かって広がりながら基板Wに塗布される。薬液は、感光性被膜の成分と、その成分が溶解した溶剤と、を含む。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。
【0014】
熱処理装置50は、基板Wの加熱処理を行う装置である。熱処理装置50は、例えば塗布装置40において薬液が塗布された基板Wの加熱処理を行う。これにより、薬液中の溶剤が蒸発し、薬液中の成分が固化される。その結果、基板Wに感光性被膜が形成される。また例えば、熱処理装置50は、露光後の基板Wの加熱処理を行う。これにより、感光性被膜の露光された部分が、現像液に可溶に変化する。
【0015】
現像装置60は、基板Wの現像処理を行う装置である。現像装置60は、熱処理装置50において露光後の加熱処理がなされた基板Wに現像液を塗布する。そして、現像液をリンス液で洗い流す。これにより、基板Wにパターンが形成される。
【0016】
制御部100は、基板処理システム1の各部を制御する。制御部100は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成され、基板処理システム1の全体を制御する。制御部100は、ポート10、搬送室20、疎水化処理装置30、塗布装置40、熱処理装置50、及び現像装置60の各装置を制御する。
【0017】
(疎水化処理装置の構成例)
図2~7を用いて疎水化処理装置30の構成について説明する。実施形態の疎水化処理装置30は、薬液の吐出対象としての基板Wの疎水化処理を行う装置である。疎水化処理装置30の処理対象の基板Wは、主面Waに例えば下層膜等を有している。
【0018】
図2は、実施形態の疎水化処理装置30に基板Wを保持させた状態を示す断面図である。
【0019】
なお本明細書では、基板Wを載置可能な熱板323と直交する方向を上下方向とする。このとき、熱板323の載置面323aが向く方向を上方向、反対方向を下方向とする。
【0020】
図2に示すように、疎水化処理装置30は、チャンバ31と、蓋開閉駆動機構120と、蓋上下駆動機構130と、ガス供給部220と、カーテンガス供給部230と、を備える。
【0021】
チャンバ31は、基板Wを収容し、基板Wの主面Waに対し疎水化処理を行う。チャンバ31は、処理容器32と、蓋体33aと、疎水化ガス供給管34aと、パージガス供給管35aと、2本のカーテンガス供給管36aと、排気管37と、を有する。
【0022】
処理容器32は、基板Wを収容する。処理容器32は、水平に配置される底板321と、底板321の周縁部から上方に延びる周壁322と、熱板323と、複数の支持ピン324と、を有する。
【0023】
載置台としての熱板323は、その載置面323aに基板Wを載置可能である。熱板323は、底板321の上方、かつ周壁322の内側に配置される。熱板323は、上方からの視点で、略円板状である。熱板323は、図示せぬ電熱線を内蔵し、当該電熱線に給電されることにより昇温する。これにより、熱板323は、基板Wを加熱可能となる。熱板323の温度は、例えば90℃~200℃である。
【0024】
熱板323の載置面323aには、排気口323bが形成されている。排気口323bには、熱板323を上下方向に貫通する排気管37が接続されている。
【0025】
排気管37は、チャンバ31内の種々のガスを外部に排出可能である。排気管37には、図示せぬ真空ポンプが接続されている。排気管37には、空気、処理ガス(HMDSガス)、及びN2ガス等が流れ得る。
【0026】
複数の支持ピン324は、その上端部において基板Wを支持可能である。複数の支持ピン324は、熱板323を上下に貫通し、熱板323の載置面323aから上方に突出可能に構成されている。複数の支持ピン324は、ピン駆動機構324aを備える。複数の支持ピン324は、ピン駆動機構324aにより、上下方向に移動する。複数の支持ピン324が上下に移動することにより、基板Wが上下に昇降する。これにより、例えば、基板Wを熱板323上に配置可能となる。
【0027】
ピン駆動機構324aは、図示せぬモータ等を備えるアクチュエータである。ピン駆動機構324aは、制御部100からの指示にしたがって、複数の支持ピン324の上下方向の動作を制御する。
【0028】
蓋体33aは、処理容器32の上方の開口を覆うものである。蓋体33aが、処理容器32の開口を覆うことにより、蓋体33aと、熱板323に載置された基板Wと、の間に処理空間gが設けられる。言い換えると、蓋体33aは、処理空間gを隔てて、基板Wと対向する。
【0029】
蓋体33aは、第1の蓋体としてのベース蓋体331と、第2の蓋体としての可動蓋体332と、を有する。
【0030】
ベース蓋体331は、熱板323に載置された基板Wの内側領域R1と対向する位置に配置される。ベース蓋体331は、その周縁部において可動蓋体332を支持する。
【0031】
図2、及び図3を用いて、ベース蓋体331の詳細の構成について説明する。図3は、実施形態にかかるベース蓋体331の構成例を示す斜視図である。なお、説明の便宜上、図3には、疎水化ガス供給管34a等の他の構成も描かれているものとする。
【0032】
ベース蓋体331は、上方からの視点で、略円径の平板状に形成されている。図3に示すように、ベース蓋体331の周縁部331hには、径方向に窪む例えば4つの凹部331aが形成されている。4つの凹部331aは、ベース蓋体331の周方向に、略等間隔で設けられている。このような4つの凹部331aによって、ベース蓋体331の周縁部331hは4つに区切られている。周縁部331hは、後述する可動蓋体332に挿入される。
【0033】
また図2、及び図3に示すように、ベース蓋体331は、供給口331b、331cと、開口部331da、331dbと、貫通孔331ea,331eb、331fと、複数の連結孔331gと、を有する。
【0034】
図2に示すように、第1の供給口としての供給口331bは、ベース蓋体331の下面に設けられている。供給口331bには、疎水化ガス供給管34aが接続されている。
【0035】
疎水化ガス供給管34aは、供給口331bからベース蓋体331を上下に貫通して上方に延びている。疎水化ガス供給管34aは、圧力レギュレータ34bを介してガス供給部220に接続されている。ガス供給部220から供給される処理ガスである疎水化ガスとしてのHMDS(hexametyldisirazane)ガスは、疎水化ガス供給管34a、及び圧力レギュレータ34bを通り、供給口331bから処理空間gへと吐出される。
【0036】
図2に示すように、供給口331cは、ベース蓋体331の下面に設けられている。供給口331cには、パージガス供給管35aが接続されている。
【0037】
パージガス供給管35aは、供給口331cからベース蓋体331を上下に貫通して上方に延びている。パージガス供給管35aは、圧力レギュレータ35bを介してガス供給部220に接続されている。ガス供給部220から供給されるパージガスであるN2ガスは、パージガス供給管35a、及び圧力レギュレータ35bを通り、供給口331cから処理空間gへと吐出される。パージガスとしてのN2ガスの供給は、HMDSガスの供給が完了した後に行われる。これにより、処理空間gに満たされていたHMDSガスがパージガスにより置換され、HMDSガスは排気管37から外部へと排出される。
【0038】
図2、及び図3に示すように、開口部331da,331dbは、ベース蓋体331の上面に設けられている。開口部331da,331dbのそれぞれには、カーテンガス供給管36aが接続されている。
【0039】
カーテンガス供給管36aは、開口部331da,331dbのそれぞれから上方に延び、レギュレータ36bを介してカーテンガス供給部230に接続されている。カーテンガス供給部230から供給される不活性ガスとしてのN2ガスは、レギュレータ36b、カーテンガス供給管36aを通り、開口部331da,331dbへと送られる。
【0040】
図3に示すように、開口部331da,331dbのそれぞれは、ベース蓋体331の内部を通る2つの貫通孔331ea,331ebのそれぞれに接続されている。
【0041】
貫通孔331ea,331ebは、開口部331da,331dbのそれぞれから、ベース蓋体331の内部を周方向に沿って延び、そして径方向に分岐して複数の貫通孔331fに接続する。複数の貫通孔331fのそれぞれは、ベース蓋体331の側面に設けられた複数の連結孔331gのそれぞれに接続されている。
【0042】
複数の連結孔331gは、ベース蓋体331の側面に開口する略円形の孔である。複数の連結孔331gは、ベース蓋体331の側面に略等しい間隔で形成されている。複数の連結孔331gのうち、半数の連結孔331gは、貫通孔331f、及び貫通孔331eaを介して、開口部331daと連通する。また、残りの連結孔331gは、貫通孔331f、及び貫通孔331ebを介して、開口部331dbと連通する。このようにして、カーテンガス供給部230から開口部331da,331dbへと送られたN2ガスは、複数の連結孔331gへと送られる。
【0043】
なお図2、及び図3の例において、ベース蓋体331は、2つの開口部331da,331db、及び2つの貫通孔331ea,331ebを有するものと説明したが、これに限定されない。カーテンガス供給部230から供給されたN2ガスを送出可能であれば、ベース蓋体331は任意の構成を有していてよい。
【0044】
図4~6を用いて、可動蓋体332の詳細の構成について説明する。図4は、実施形態にかかる蓋体33aの構成例を示す斜視図である。
【0045】
図4に示すように、可動蓋体332は、例えば4つの可動蓋体332a~332dにより構成されている。子蓋体としての可動蓋体332a~332dのそれぞれは、ベース蓋体331の外側に接続されている。
【0046】
可動蓋体332a~332dのそれぞれは、ベース蓋体331に沿って延びる平面部332eと、平面部332eの外側の端部から屈曲して下方に延びる側面部332fとを有する。
【0047】
図5は、実施形態にかかる可動蓋体332aの構成例を示す斜視図である。図6は、実施形態にかかる可動蓋体332aの構成例を示す下面図である。即ち、図6は、図5の可動蓋体332aを、端部332m側から見た図である。
【0048】
図5、及び図6に示すように、可動蓋体332aは、凹部332gと、複数の連結孔332hと、複数の貫通孔332iと、複数の供給口332jと、駆動部332kと、を有する。
【0049】
図5に示す凹部332gは、ベース蓋体331(図3)と接続する部分である。凹部332gは、可動蓋体332aの平面部332eが、径方向の外側に向かって窪むようにして形成されたものである。このような凹部332gに、ベース蓋体331の周縁部331h(図3)が挿入されることで、ベース蓋体331と、可動蓋体332と、が接続される。また、凹部332gにおいて、ベース蓋体331と、可動蓋体332とは、上下に重なる。これにより、可動蓋体332と、ベース蓋体331とが、相対的に移動する場合でも、可動蓋体332と、ベース蓋体331との接続が維持される。また、凹部332gの、径方向の内側を向く側面には、複数の連結孔332hが形成されている。
【0050】
複数の連結孔332hは、ベース蓋体331の側面に形成された複数の連結孔331g(図3)と対応する位置に形成されている。ベース蓋体331の周縁部331hが、凹部332gに挿入されることにより、凹部332gにおいて、ベース蓋体331の連結孔331gと、可動蓋体332aの連結孔332hと、が連通可能となる。複数の連結孔332hのそれぞれは、可動蓋体332aの内部を通る複数の貫通孔332iに接続されている。
【0051】
複数の貫通孔332iのそれぞれは、連結孔332hのそれぞれから可動蓋体332aの平面部332eに沿って径方向に延び、そして側面部332fに沿って下方に屈曲する。複数の貫通孔332iのそれぞれは、側面部332fの端部332mに形成される複数の供給口332jのそれぞれと接続される。
【0052】
図6に示すように、第2の供給口としての供給口332jは、可動蓋体332aの端部332mに開口する略円形状の孔である。供給口332jは、端部332mに沿って周状に略等しい間隔で配置されている。供給口332jは、熱板323に載置された基板Wの外周部としての外側領域R2(図2)と対向する。
【0053】
以上の説明をまとめると、ベース蓋体331と、可動蓋体332と、は、可動蓋体332の凹部332gにおいて接続される。また、ベース蓋体331の、開口部331da,331dbと、可動蓋体332の端部332mに形成される供給口332jと、は、ベース蓋体331の連結孔331g、及び可動蓋体332の連結孔332h等を介して連通する。これにより、カーテンガス供給部230から供給されたN2ガスは、ベース蓋体331、及び可動蓋体332の内部を通って、供給口332jから基板Wの外側領域R2に対して吐出されることとなる。
【0054】
図5に戻り、可動蓋体332の駆動部332kは、複数の凹部と、複数の凸部と、が交互に配列した部材である。駆動部332kの凹部、及び凸部は、後述する蓋開閉駆動機構120と噛み合うように構成されている。駆動部332kは、可動蓋体332a~332dそれぞれの平面部332eの上面に、凹部、及び凸部の配列する方向が径方向に沿うように配置される。駆動部332kは、第1の調整機構としての蓋開閉駆動機構120と接続されている。
【0055】
図7は、実施形態にかかる蓋開閉駆動機構120の構成例を示す図である。図7は、蓋開閉駆動機構120の構成の一部、及び蓋体33a、及び蓋体33aに対向する基板Wの片側断面図を示している。
【0056】
図7に示すように、蓋開閉駆動機構120は、歯車121、及びモータ122を有している。歯車121は、モータ122によって基板Wの周方向に延びる図示せぬ回転軸を中心に回転可能である。歯車121は、可動蓋体332の上面に配置された駆動部332kの凹部及び凸部と噛み合うように構成されている。このような蓋開閉駆動機構120は、図示は省略するが例えば疎水化処理装置30の上面から支持されている。
【0057】
図7(a)に示すように、例えば、蓋開閉駆動機構120は、制御部100の指示にしたがってモータ122を動作させ、歯車121を方向RWの向きに回転させる。すると、ベース蓋体331に対し、可動蓋体332が、矢印の向き、即ち基板Wの径方向の外側に向かって移動する。これにより、基板Wに対する供給口332jの位置も、径方向の外側に向かって移動する。
【0058】
図7(b)に示すように、例えば、蓋開閉駆動機構120は、歯車121を方向CWの向きに回転させる。すると、ベース蓋体331に対し、可動蓋体332が、矢印の向き、即ち径方向の内側に向かって移動する。これにより、基板Wに対する供給口332jの位置も、径方向の内側に向かって移動する。
【0059】
図2に戻り、蓋上下駆動機構130は、図示せぬモータ等を備えるアクチュエータである。図2に示すように、蓋上下駆動機構130は、ベース蓋体331に接続されている。蓋上下駆動機構130は、制御部100からの指示にしたがって、ベース蓋体331の上下方向の動作を制御する。これにより、処理容器32に対して、蓋体33aが昇降可能となる。
【0060】
ガス供給部220は、制御部100の指示にしたがって、HMDSガスを供給する。HMDSガスは、疎水化ガス供給管34a、供給口331bを通って、処理空間gへ吐出される。これにより、処理空間gがHMDSの蒸気で満たされ、基板Wが疎水化される。また、制御部100は、圧力レギュレータ34bを制御することにより、処理空間gに対するHMDSガスの供給量を調整する。
【0061】
ガス供給部220はまた、処理空間gに満たされたHMDSガスをパージするためのN2ガスを供給する供給部としても機能する。ガス供給部220は、制御部100の指示にしたがって、パージガスとしてのN2ガスを供給する。N2ガスは、パージガス供給管35a、供給口331cを通って処理空間gへ吐出される。これにより、処理空間gに満たされていたHMDSガスが、排気管37から排出される。また、制御部100は、圧力レギュレータ35bを制御することにより、処理空間gに対するN2ガスの供給量を調整する。
【0062】
カーテンガス供給部230は、制御部100からの指示にしたがって、N2ガスを供給する。N2ガスは、カーテンガス供給管36a、ベース蓋体331、及び可動蓋体332の内部を通り、供給口332jから基板Wの外側領域R2に向けて吐出される。これにより、供給口332jと、基板Wの外側領域R2と、の間に、いわゆるエアカーテンが形成される。言い換えると、基板Wの外側領域R2、及び外側領域R2の上方が、N2ガスにより覆われる。
【0063】
カーテンガス供給部230は、制御部100からの指示にしたがって、ガス供給部220からHMDSガスが供給されているときに、N2ガスを供給する。これにより、処理空間gに満たされるHMDSガスから、基板Wの外側領域R2がN2ガスによって遮蔽される。結果として、外側領域R2の疎水化が抑制される。
【0064】
(半導体装置の製造方法)
図8は、実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。図8では、半導体装置の製造方法の一工程として、感光性被膜の形成対象の基板Wを処理対象として疎水化処理する例について説明する。疎水化処理装置30における基板Wの疎水化処理は、半導体装置の製造方法の一環として行われる。
【0065】
S11の処理に先立ち、基板Wは、搬送アーム21によってポート10から搬送室20へと搬送される。
【0066】
基板Wを、疎水化処理装置30に搬入する。具体的には、まず基板Wの搬入に先立ち、制御部100は、蓋上下駆動機構130を動作させ、蓋体33aを上昇させる。制御部100は、ピン駆動機構324aを動作させ、複数の支持ピン324を上方に移動させる。
【0067】
次いで、基板Wを保持した搬送アーム21が、チャンバ31に進入する。支持ピン324と、基板Wと、が接すると、搬送アーム21は、支持ピン324に基板Wを設置し、チャンバ31から退去する。支持ピン324が元の位置まで下降することにより、基板Wが熱板323上に配置され(S11)、基板Wの搬入が完了する。
【0068】
次いで、基板Wに対する可動蓋体332の供給口332jの位置を調整する。具体的には、制御部100は、蓋開閉駆動機構120を動作させ、ベース蓋体331に対し、可動蓋体332を径方向に移動させ、供給口332jの位置を調整する(S12)。なお、供給口332jの位置、その他の条件は、基板処理システム1のユーザ等によって予め組まれたレシピをロードすることにより、所望の位置、条件が選択されてよい。
【0069】
次いで、供給口332jの調整が終了すると、制御部100は、蓋上下駆動機構130を動作させ、蓋体33aを下降させる(S13)。
【0070】
次いで、制御部100は、カーテンガス供給部230を制御して、供給口332jから基板Wの外側領域R2に対しN2ガスを吐出させる(S14)。
【0071】
次いで、制御部100は、ガス供給部220を制御して、ベース蓋体331の供給口331bからHMDSガスを吐出させる(S15)。これにより、基板Wが疎水化される。このとき、供給口332jと上下に重なる基板Wの外側領域R2が、N2ガスによって遮蔽されている。そのため、基板Wの外側領域R2の疎水化は抑制される。制御部100は、所定時間(例えば30秒間)経過後に、HMDSガスの供給を終了させる。
【0072】
次いで、制御部100は、ガス供給部220を制御して、HMDSガスの供給が終了した後に、供給口331cからパージガスとしてのN2ガスを吐出させる(S16)。これにより、HMDSガスが排出される。制御部100は、所定時間(例えば10秒間)経過後に、N2ガスの供給を終了させる。
【0073】
次いで、制御部100は、蓋上下駆動機構130を動作させ、蓋体33aを上昇させる(S17)。制御部100は、ピン駆動機構324aを動作させ、複数の支持ピン324を上方に移動させる。これにより、基板Wが、熱板323から持ち上げられる。
【0074】
次いで、搬送アーム21が、チャンバ31に進入する。搬送アーム21が、基板Wの下方に配置されると、ピン駆動機構324aによって、支持ピン324が元の位置まで下降する。これにより、支持ピン324から、搬送アーム21に基板Wが受け渡される。基板Wを保持した搬送アーム21が、チャンバ31から退避する。これにより基板Wの搬出が完了する(S18)。以上で、疎水化処理装置30における基板Wの疎水化処理は終了する。
【0075】
そしてこの後、搬送アーム21は、基板Wを塗布装置40へ搬送する。塗布装置40は、基板Wに塗布液としての感光性被膜の薬液を塗布する。
【0076】
搬送アーム21は、塗布装置40において感光性被膜の塗布がなされた基板Wを、熱処理装置50に搬送する。熱処理装置50は、基板Wを加熱処理する。これにより、基板Wに感光性被膜が形成される。
【0077】
搬送アーム21は、熱処理装置50において感光性被膜の形成がなされた基板Wを露光装置へ搬送し、露光後の基板Wを再度熱処理装置50に搬送する。
【0078】
搬送アーム21は、熱処理装置50において再度加熱処理がされた基板Wを現像装置60へ搬送する。これによりパターンが形成される。以上で、半導体装置の製造が終了する。
【0079】
(比較例)
ここで図10を用いて、比較例の疎水化処理装置について説明する。図10は、比較例の疎水化処理装置で処理された基板W´について説明する図である。図10は、比較例の疎水化処理装置において疎水化された基板W´に薬液PRが塗布された状態を示している。
【0080】
比較例の疎水化処理装置においては、基板W´は、その全面が疎水化される。基板W´が疎水化されると、基板W´の接触角が上昇する。そのため、感光性被膜の薬液PRの濡れ性が低下することがある。薬液の濡れ性が低下すると、基板Wの中心付近から吐出された薬液PRが、基板Wの外周部まで広がり難くなる。その結果、例えば図10に示すように、基板W´の外周部の一部が薬液PRで覆われない等の塗布異常が発生することがある。しかしながら基板W´の疎水化がなされないと、基板W´と、感光性被膜と、の密着性が低下し、パターンを形成した際に、当該パターンが倒れやすくなることがある。
【0081】
(概括)
実施形態の疎水化処理装置30は、蓋体33aを有する。蓋体33aは、基板Wに対しHMDSガスを吐出する供給口331bと、HMDSガスを吐出しているときに、基板Wの外側領域R2に対しN2ガスを吐出する供給口332jとを備える。また、実施形態の疎水化処理装置30は、基板Wに対する供給口332jの位置を調整可能な蓋開閉駆動機構120と、を備える。
【0082】
具体的には、蓋体33aは、ベース蓋体331と、供給口332jを有する可動蓋体332と、を有する。可動蓋体332は、複数の可動蓋体332a~332dから構成される。蓋開閉駆動機構120と接続された可動蓋体332a~332dのそれぞれが基板Wの径方向に移動することにより、基板Wに対する供給口332jの位置が移動する。これにより、基板Wの疎水化処理において、基板Wの外側領域R2の疎水化を抑制できる。その結果、外側領域R2における薬液の塗布異常を回避できる。
【0083】
実施形態の蓋開閉駆動機構120は、基板Wの周方向に延びる回転軸に接続される歯車121を有する。可動蓋体332は、歯車121と噛み合う駆動部332kを有する。蓋開閉駆動機構120は、制御部100に指示にしたがって歯車121を径方向に沿って回転させる。これにより、ベース蓋体331に対し、可動蓋体332が基板Wの径方向に沿って移動可能となる。
【0084】
[変形例]
以下、図9を参照して上述の実施形態の変形例について詳細に説明する。変形例の疎水化処理装置においては、可動蓋体332が、整流板333、及び整流板駆動機構334を備える点が、上述の実施形態と異なる。
【0085】
なお、以下において、上述の実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0086】
図9は、実施形態の変形例にかかる蓋体33bの構成例を示す図である。図9(a)は、蓋体33bの上面図である。図9(b)は、可動蓋体332、及び可動蓋体332に対向する基板Wの片側断面図である。
【0087】
図9に示すように、4つの可動蓋体332a~332dのそれぞれは、整流板333、と、整流板駆動機構334と、を有する。
【0088】
整流板333は、例えば金属等で形成される板状部材である。図9(a)に示すように、整流板333は、上からの視点で、可動蓋体332a~332dそれぞれの外側に沿うように配置されている。また図9(b)に示すように、横からの視点で、整流板333は、可動蓋体332a~332dそれぞれの外側から、基板Wに向かって延びている。
【0089】
図9(b)に示すように、第2の調整機構としての整流板駆動機構334は、モータ334aを備えるアクチュエータである。整流板駆動機構334は、可動蓋体332a~332dそれぞれの側面部332fに配置されている。整流板駆動機構334は、支持部334bにより整流板333を支持する。
【0090】
整流板駆動機構334は、制御部100の指示にしたがって、モータ334aを動作させ、整流板333を、基板Wの外側領域R2に対して相対的に移動させる。供給口332jと、基板Wの外側領域R2と、の間に整流板333が挿入されると、供給口332jから吐出されるN2ガスの流れが、基板Wの径方向の内側に向く。これにより、N2ガスは基板Wの外側領域R2のやや内側寄りの領域に吐出されることとなる。
【0091】
制御部100は、整流板駆動機構334を制御し、基板Wに対する整流板333の位置を調整する。これにより、供給口332jから吐出されるN2ガスの流れが変更され、基板Wに対するN2ガスの吐出位置が調整される。なお、制御部100は、整流板駆動機構334、及び蓋開閉駆動機構120の双方を制御して、N2ガスの吐出位置を調整してもよい。
【0092】
なお、整流板333、及び整流板駆動機構334の配置位置は上述の例に限定されない。例えば、1つの供給口332jに対して1つの整流板333及び整流板駆動機構334が対応して設けられていてもよい。
【0093】
[その他の変形例]
上述の実施形態、及び変形例では、蓋体33aの内部に形成された貫通孔331e,331f、貫通孔331ea,331eb等を通ってN2ガスが供給口332jに運ばれていると説明した。しかしながら、これらの貫通孔に替えて、蓋体33aの内部に配管が内蔵されていてもよい。蓋体33aの内部を延びる配管を介して、N2ガスが供給口332jに運ばれてもよい。
【0094】
本発明の実施形態、及び変形例を説明したが、これらの実施形態、及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態、及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1…基板処理システム、10…ポート、20…搬送室、30…疎水化処理装置、31…チャンバ、32…処理容器、323…熱板、33a,33b…蓋体、40…塗布装置、50…熱処理装置、60…現像装置、100…制御部、120…蓋開閉駆動機構、130…蓋上下駆動機構、220…ガス供給部、230…カーテンガス供給部、331…ベース蓋体331b…供給口、332j…供給口、332、332a、332b、332c、332d…可動蓋体、332k…駆動部、334…整流板駆動機構、R1…内側領域、R2…外側領域、W…基板、Wa…主面。
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10