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特開2024-135776二色成形品および二色成形品の成形金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135776
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二色成形品および二色成形品の成形金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240927BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20240927BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/26
B29C45/37
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046639
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】天野 倫太郎
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AF01
4F202AF16
4F202AG05
4F202AG28
4F202AH17
4F202AM02
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB28
4F202CK28
4F206AF01
4F206AF16
4F206AG05
4F206AG28
4F206AH17
4F206AM02
4F206AR12
4F206AR13
4F206JA07
4F206JB28
4F206JL02
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】本願発明は、一次成形品の表面に微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品および該二色成形品の成形金型を提供する。
【解決手段】一次成形品の少なくとも一部の表面に、意匠部を有する二色成形品であり、前記意匠部は、射出成形によって成形される微細凹凸で構成され、前記意匠部は、凹部の底面に設けられた二色成形品を提供する。このような二色成形品の金型として、一次成形品の少なくとも一部の表面に、微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品の成形金型であり、一次成形金型の表面の一部には、前記微細凹凸を成形する意匠成形部が設けられており、二次成形金型は、前記意匠成形部に対応する位置にキャビテーションとは別の独立した空間を形成するように構成される成形金型を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次成形品の少なくとも一部の表面に、意匠部を有する二色成形品であり、
前記意匠部は、射出成形によって成形される微細凹凸で構成され、
前記意匠部は、凹部の底面に設けられている、
ことを特徴とする二色成形品。
【請求項2】
前記意匠部の裏面には、前記凹部に対応する膨出凸部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の二色成形品。
【請求項3】
前記凹部は、前記一次成形品の平面部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二色成形品。
【請求項4】
前記凹部は、深さ0.5mm以上である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二色成形品。
【請求項5】
一次成形品の少なくとも一部の表面に、微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品の成形金型であり、
一次成形金型の表面の一部には、前記微細凹凸を成形する意匠成形部が設けられており、
二次成形金型は、前記意匠成形部に対応する位置にキャビテーションとは別の独立した空間を形成するように構成される、
ことを特徴とする二色成形品の成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、表面に微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品および該二色成形品の成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のリフレクターやエクステンション部材には、透光部材から成るインナーレンズや導光体と、一体的に成形された二色成形品が用いられることがある(例えば特許文献1)。
【0003】
このような二色成形品の表面の一部が外部から視認可能であることから、例えばシボ加工による表面の粗面化や、ドットやステップなどの微細凹凸の形成により、表面の一部に文字や図形を形成することにニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-94729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、二色成形品の一次成形品の表面に、このような微細凹凸で構成される意匠部を設けようとした場合、露出して視認される表面は可動側金型(キャビティ側)で成形されるため、一次成形後に二次成形金型を型締めする際に、一次成形金型で成形された微細凹凸が二次成形金型の表面で潰され、微細凹凸が削れてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、一次成形品の少なくとも一部の表面に、微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品、および該二色成形品の成形金型を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明の第1の態様の二色成形品においては、一次成形品の少なくとも一部の表面に、意匠部を有する二色成形品であり、前記意匠部は、射出成形によって成形される微細凹凸で構成され、前記意匠部は、凹部の底面に設けられているように構成した。
【0008】
また、第2の態様の二色成形品は、第1の形態において、前記意匠部の裏面には、前記凹部に対応する膨出凸部が設けられているものとした。
【0009】
また、第3の態様の二色成形品は、第1または第2の態様において、前記意匠部は、前記一次成形品の平面部に設けられるものとした。
【0010】
また、第3の態様の二色成形品は、第1~第3の態様において、前記凹部は、深さ0.5mm以上であるものとした。
【0011】
また、本発明の第1の態様の二色製品の成形金型において、一次成形品の少なくとも一部の表面に、微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品の成形金型であり、一次成形金型の表面の一部には、前記微細凹凸を成形する意匠成形部が設けられており、二次成形金型は、前記意匠成形部に対応する位置にキャビテーションとは別の独立した空間を形成するものとした。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、一次成形品の少なくとも一部の表面に、微細凹凸で構成される意匠部を有する二色成形品、および該二色成形品の成形金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好適な実施形態に係る二色成形品であるエクステンション部材を含む車両用灯具の概略構成を示す正面図である。
図2図1のA-A線に沿った車両用灯具の断面図である。
図3】エクステンション部材の正面図である。
図4】エクステンション部材の意匠部(図2のB部)の成形金型の概略構成図であり、成形工程を説明する説明図である。
図5】エクステンション部材の意匠部(図2のB部)の成形金型の概略構成図であり、成形工程を説明する説明図である。
図6】比較品(従来構成品)と比較するための説明図である。図6(A)は、比較品のエクステンション部材910を示す。図6(B)および図6(C)は、エクステンション部材910の成形工程と金型を示す。図4(B)および図5(A)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。各図においては、厚み、幅、長さなどの比率は、実際の比率を反映したものでなく、構成を模式的に表したものである。
【0015】
(車両用灯具)
図1は、本発明の好適な実施形態に係る二色成形品であるエクステンション部材10を含む車両用灯具1の概略正面図である。図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。A-A線は、意匠部39を通過する。
【0016】
車両用灯具1は、ヘッドランプおよびターンシグナルランプからなるコンビネーションランプであり、車両の前端部に左右一対で配設される。
【0017】
車両用灯具1は、ランプハウジングとして、ランプボディ2とランプカバー4とを備える。ランプボディ2は前方が開口した箱状に形成される。ランプボディ2の開口部にランプカバー4が取付けられると、内側に灯室Sが画成される。
【0018】
画成された灯室S内には、ヘッドランプユニットを構成する第1ランプユニットLU1、ターンシグナルランプを構成する第2ランプユニットLU2、エクステンション部材10、および第2ランプユニットLU2を保持する支持部材6が収容されている。
【0019】
第1ランプユニットLU1および第2ランプユニットLU2は、車両前方に所定の配光を形成するように構成されたランプユニットである。第2ランプユニットLU2が、灯室Sの上縁部に沿って車幅方向に伸びて配置され、第1ランプユニットLU1が、第2ランプユニットLU2の下方に配置される。
【0020】
第1ランプユニットLU1は、可変配光ユニットであり、ハイビーム配光およびロービーム配光のみならず、車両の運転状況や周辺の状況に適用させた配光パターンを形成して、車両前方に照射する。第1ランプユニットLU1には、走査機構装置や、リフレクター型装置、プロジェクター型装置など、既知の構成が用いられており、その種類は問わない。
【0021】
第2ランプユニットLU2は、ターンシグナルランプユニットであり、発光体として棒状の導光体8を有する。棒状の導光体8は、支持部材6に支持されて、長手方向を車幅方向に合わせ、おおむね車両用灯具の一方の側端部から他方の側端部まで伸びて配置される。
【0022】
導光体8の側端面が光入射部であり、アンバー色光を出射するLEDなどの不図示の発光素子が、光照射方向を導光体8の側端面に向けて配置される。発光素子から出射した光は、導光体8の側端面から導光体8に入射し、導光体8内を、全反射を繰り返しながら進む。
【0023】
支持部材6は、導光体8と略同一の長さで一方向に長く形成されており、最もランプカバー4近傍に配置される部分が、内側が反射面のリフレクター部6aとなっている。リフレクター部6aは、長手方向の鉛直断面が略コの字型で開口部を前方に向けており、中央の湾曲部に導光体8が保持され、導光体8から出射した光を前方に導くように構成されている。導光体8およびリフレクター部6aは、長手方向の鉛直断面形状は、長手方向のどの位置で切断しても略同一な形状となっている。
【0024】
第2ランプユニットLU2の構成も、上記に限られず、複数の発光体を長手方向に並置するなど、他の従来周知の構成を用いてよい。
【0025】
ランプカバー4の前面部4aは、透光性を有する樹脂やガラス等で構成されており、第1ランプユニットLU1、および第2ランプユニットLU2から出射した光は、ランプカバー4の前面部4aを通過して、車両前方に所定のランプ配光として投影される。
【0026】
(エクステンション部材)
灯室S内には、ランプカバー4の前面部4aを通して外部から視認可能な意匠部39を備えたエクステンション部材10が配置されている。エクステンション部材10は、第1ランプユニットLU1および第2ランプユニットLU2の前方に配置され、ランプユニットの一部やランプユニットとランプボディ2の隙間を覆うようにして、ランプユニットの内部構造物などを外部から見えないように目隠しする。
【0027】
図3は、エクステンション部材10の正面図である。エクステンション部材10は、透光性樹脂部材からなる透光部20と、非透光樹脂部材からなる非透光部30が一体的に射出成形して成形される二色成形品である。なお、図3においては、透光部20を淡い薄墨で、非透光部は濃い薄墨で着色して示している。
【0028】
エクステンション部材10は、正面視矩形の外形を有する。エクステンション部材10の車幅方向の車両外側(本実施形態では左右方向の左側)には、所定幅をもって、側縁に沿って上下方向に延びる、側縁部32を有する。
【0029】
透光部20は、側縁部32を除いたエクステンション部材10の上縁部に沿って、車幅方向に伸びて形成されている。非透光部30は、エクステンション部材10の左縁部(側縁部32)、および透光部20の下方領域を構成する。非透光部30の中央部には、大きな矩形の開口部31が形成されている。
【0030】
開口部31および透光部20は、第1ランプユニットLU1および第2ランプユニットLU2の配置に対応する位置に形成されており、それぞれランプユニットの照射光を通過させるために設けられている。
【0031】
図2に示すように、第1ランプユニットLU1は、開口部31の後方に配置される。第1ランプユニットLU1から出射した光は、開口部31を通過し、ランプカバー4の前面部4aを通過して、車両前方に配光パターンを形成して暗闇での運転手の視界を確保する。
【0032】
幅方向に長い透光部20は、第2ランプユニットLU2、特に導光体8の前方に配置される。導光体8から出射した光、およびリフレクター部6aの内側の反射面で反射した光は、透光部20を通過し、ランプカバー4の前面部4aを通過し、車両前方に照射される。
【0033】
なお、図2では、導光体8の前方は非透光部30となっているが、これは切断線A-Aが意匠部39、すなわち側縁部32を通過しているためである。図示しない第2ランプユニットLU2の発光素子および導光体8の側端面近傍は、側縁部32の背面に配置され、外部から目隠しされる。側端面近傍を除いた導光体8の大部分の長手方向の前方には、透光部20が配置され、導光体8から出射した光は透光部20を通過して車両用灯具1の外部へと出射する。
【0034】
(意匠部)
側縁部32の上方、すなわちエクステンション部材10の左上角部(図3C部)には、僅かに凹む凹部33が形成されている。凹部33の底面34に、意匠部39が形成されている。
【0035】
意匠部39は、例えばシボ加工による表面の粗面化や、ドットやステップなどの微細凹凸により形成され、非透光部30の表面35に文字やマークとして構成される。意匠部39を構成する微細凹凸の底面34からの最大突出量は、凹部33の深さよりも小さく、意匠部39は、凹部33内に形成され、凹部33の入口高さを超えて形成されることはない。
【0036】
意匠部39を構成する微細凹凸は、突出量/凹み量が微小な表面凹凸であり、射出成形(金型成形)により成形される。非透光部30の射出成形時に、非透光部30を成形する金型により、非透光部30の一部として凹部33および意匠部39も同時に成形される。
【0037】
非透光部30の板厚は、概ね一定となっている。意匠部39が形成されている凹部33の裏面には、凹部33に対応する膨出凸部36が設けられている(図2参照)。裏面に向かって窪む凹部33の裏面に、背面側へ膨らむ膨出凸部36が設けられているため、非透光部30の凹部33における板厚も、他の非透光部30の板厚と同等となっている。
【0038】
(金型と成形工程)
上記のように構成されるエクステンション部材10の二色成形工程、主として意匠部39の成形工程および成形金型について説明する。図4および図5は、エクステンション部材10のB部(図2参照)の成形金型の概略構成図であり、成形工程を示す説明図である。
【0039】
本実施形態においては、まず一次成形品として非透光部30が成形され、その後透光部20がまとめ成形されることで、エクステンション部材10が成形される。
【0040】
図4(A)に示すように、まず固定側金型60と一次可動側金型70とが互いに向き合った状態で配置され、型締めされる。最初に一次成形品として非透光部30が成形されるため、型締めされた状態で、金型内部には、非透光部30の形状に対応した成形空間(キャビテーション)S1が画成される。
【0041】
非透光部30の裏面側が固定側金型60の固定側金型成形面61で成形され、非透光部30表面側が一次可動側金型70の一次可動側金型成形面71で成形される。固定側金型成形面61には、膨出凸部36を成形するための固定側金型凹部62が設けられている。同様に、一次可動側金型成形面71には、凹部33を成形するための一次可動側金型凸部72が設けられている。固定側金型凹部62は、一次可動側金型凸部72に対向して設けられている。
【0042】
さらに一次可動側金型凸部72の突出面には、意匠部39を構成する微細凹凸を成形するための意匠成形部73が設けられている。本実施形態においては、意匠部39はシボ加工により金型成形されるため、意匠成形部73は、一次可動側金型凸部72の意匠部39の形状に対応した所定の領域が、エッチング処理などにより粗面化されて形成される。
【0043】
次に、図4(B)に示すように、所定の融解温度に加熱された非透光性樹脂部材が、成形空間S1に射出され、成形空間S1に充填される。成形空間S1に充填された樹脂部材が冷却されて固まり、非透光部30が成形される。このとき、固定側金型凹部62で膨出凸部36が、一次可動側金型凸部72で凹部33が、意匠成形部73で意匠部39が、それぞれ成形される。
【0044】
次に、図4(C)に示すように、型開きされて、一次可動側金型70が離間される。非透光部30は、固定側金型60に貼りついた状態のままとなる。
【0045】
次に、図5(A)に示すように、二次可動側金型80が固定側金型60と型締めされる。二次成形品として透光部20がまとめ成形されるため、型締めされた状態で、金型内部には、一次成形品である非透光部30がインサートされた形態で、透光部20の形状に対応した成形空間(キャビテーション)S2が画成される。
【0046】
透光部20の裏面側が固定側金型60の固定側金型成形面61で成形され、透光部20表面側が二次可動側金型80の二次可動側金型成形面81で成形される。二次可動側金型成形面81の非透光部30との接触面は、非透光部30の表面形状に対応して形成されているが、凹部33に対応する領域では、凹部33を設けなかった場合の形状となっている。すなわち、二次可動側金型成形面81は、型締めされた状態で、凹部33へ向かって突出せず、凹部33の入口高さの平面で、凹部33の縁部にのみ接触し、凹部33の内側への入り込まない構成となっている。これにより二次可動側金型成形面81の一次可動側金型70の一次可動側金型凸部72に対応する位置は、成形空間S2とは別の独立した空間SP1が形成される。凹部33は、二次可動側金型成形面81で蓋をされて、二次可動側金型80と意匠部39は接触しない。
【0047】
本実施形態においては、側縁部22は凹部33を除いて平面となっており、二次可動側金型成形面81の側縁部22に対応する領域は、フラット面となっている。このように凹部33が平面部に形成されると、金型の構成がシンプルとなり好ましい。
【0048】
次に、図5(B)に示すように、所定の融解温度に加熱された透光性樹脂部材が、成形空間S2に射出され、成形空間S2に充填される。成形空間S2に充填された透光性樹脂部材が冷却されて固まり、透光部20が、非透光部30と一体的に成形され、エクステンション部材10が成形される。
【0049】
次に、図5(C)に示すように、型開きされ、二次可動側金型80が離間され、不図示の押出ピンで成形されたエクステンション部材10が固定側金型60から押出しされて、取外しされる。
【0050】
(作用効果)
上記のように構成される意匠部39および意匠部39を形成する金型の作用効果について説明する。
【0051】
図6は、本発明の作用効果を説明するため比較品、および比較品の金型と成形工程を示す。図6(A)は、比較品のエクステンション部材910を示す。図6(B)および図6(C)は、エクステンション部材910の成形工程と金型を示す。図6(B)は図4(B)に、図6(C)は図5(A)に、それぞれ対応する。
【0052】
エクステンション部材910は、本発明の作用効果を説明するための比較品であり、エクステンション部材10に凹部33および膨出凸部36を設けず、非透光部30の表面に意匠部39を直接設けたものである。すなわち、図6(A)に示すように、エクステンション部材910は、透光性を有する樹脂部材からなる透光部920と、非透光樹脂部材からなる非透光部930が一体的に射出成形して成形される二色成形品であり、非透光部930の表面935の一部には、微細凹凸の形成により所定の図形を構成する意匠部939が設けられている。
【0053】
エクステンション部材910が金型成形される場合の工程を説明する。まず、非透光部930が一次成形される。図6(B)に示すように、まず固定側金型960と一次可動側金型970とが互いに向き合った状態で配置されて型締めされ、金型内部に非透光部930に対応した成形空間S901が画成される。ついで成形空間S901に、非透光樹脂を所定の融解温度に加熱された非透光性樹脂部材が射出されて充填され、冷却されて固まり、非透光部30が成形される。一次可動側金型970には、シボ加工部972が設けられており、シボ加工部972により意匠部939が成形される。
【0054】
次に、図6(C)に示すように、一次可動側金型970が取外され、代わりに二次可動側金型980が固定側金型960と型締めされる。このとき、二次可動側金型980のシボ加工部972に対応する部分の面が、非透光部930の意匠部939に接触する(図6(C)のE部参照)。このため、意匠部939として成形された微細凹凸が削れるという不具合が発生する。仮にまとめ成形でそのまま透光部920を成形しても、完成品であるエクステンション部材910の意匠部939は微細凹凸が消える、もしくは薄くなり、見栄えが悪い。
【0055】
このように、二色成形品の視認される表面に、微細凹凸で金型成形される意匠部を設ける場合、意匠部が二次成形品の表面に設けられる場合は問題ないが、意匠部が一次成形品に設けられる場合は、意匠部と二次成形品金型との接触により、意匠部の外見が損なわれるという問題が生じる。このような問題は、透光部材と非透光部材での二色成形品に限られず、非透光部材同士または透光部材同士の二色成形品でも同様であり、一次成形品の表面側、すなわち可動側金型で成形される箇所に、金型成形による微細凹凸を設ける場合に生じる。
【0056】
これに対し、本実施形態においては、非透光部30の表面35に凹部33を設け、凹部33の底面34に微細凹凸で構成される意匠部39を形成することで、上記問題を解決した。非透光部30を成形する金型においては、一次可動側金型70に一次可動側金型凸部72を設け、二次可動側金型80には一次可動側金型凸部72に対応する凸部は設けず、凹部33の内側に二次成形金型の表面が接触しないように構成した。二次可動側金型80は、意匠部39に対応する位置に、成形空間S2とは別の独立した空間SP1が形成され、意匠部39が二次可動側金型80と接触することはない。これにより、二色成形品の一次成形品の表面に、例えばシボ加工により成形される微細凹凸で、意匠部を形成できる。
【0057】
非透光部30には、凹部33に対向して膨出凸部36が設けられている。膨出凸部36を設けることにより、凹部33を設けることによる非透光部30の部分的な薄肉化を解消して、非透光部30の板厚を略一定にできる。これにより、成形空間S1の幅が略一定となり、融解した非透光性樹脂部材が流動しやすくなり、成形性が向上する。なお、膨出凸部36を設けることは、好ましいが必須ではなく、膨出凸部36を設けずとも本発明の効果は生じる。
【0058】
意匠部39を構成する微細凹凸は、シボ加工などにより成形されることから、微細凹凸の最大高さも非常に微小であり、凹部33は極浅く形成されても問題がない。凹部33が浅く形成されると、段差の違和感を生じさせず、見栄えがよい。また、意匠部39も視認されやすい。凹部33の深さは、エクステンション部材10の板厚(数mm程度)以下で、少なくとも0.5mm以上あれば十分であり、問題なく底面34に意匠部39を成形できる。このため、凹部33の深さは、好ましくは2mm~0.5mmであり、より好ましくは1mm~0.5mmである。
【0059】
本発明の構成は、エクステンション部材に限られず、透光部材や非透光部材などの構成部材に限定されず、二色成形される部品、例えば二色成形品のリフレクターやランプカバー、導光体やインナーレンズなどに、用いることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10 :エクステンション部材(二色成形品)
20 :透光部(二次成形品)
30 :非透光部(一次成形品)
33 :凹部
34 :底面
35 :表面
36 :膨出凸部
39 :意匠部
60 :固定側金型
70 :一次可動側金型(一次成形金型)
73 :意匠成形部
80 :二次可動側金型(二次成形金型)
S1、S2:成形空間(キャビテーション)
SP1 :空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6