(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135780
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】線量推定装置及び作業計画更新システム並びに線量推定方法及び作業計画更新方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20240927BHJP
G01T 1/02 20060101ALI20240927BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20240927BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01T1/167 B
G01T1/02 A
G01T1/16 A
G01T1/167 G
G21C17/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046643
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075DA08
2G075EA01
2G075FA05
2G075FA18
2G075FB07
2G075GA18
2G075GA19
2G188AA07
2G188AA08
2G188AA19
2G188BB04
2G188BB09
2G188BB15
2G188BB17
2G188CC01
2G188CC13
2G188CC20
2G188CC28
2G188CC29
2G188DD44
2G188EE25
2G188EE29
2G188JJ05
(57)【要約】
【課題】作業の安全性を担保しながら、従来に比べて放射性物質取扱作業をより合理的に実施する。
【解決手段】第一エリア113において時刻t
0で測定した第一測定線量率と予め記録された第一エリア113の線量分布とから第一放射能濃度を求める工程と、時刻t
1において作業対象物112が第一エリア113とは異なる第二エリア114に到達したときの第二エリア114で測定した第二測定線量率から第二放射能濃度を求める工程と、第一放射能濃度を第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する工程と、時刻t
2において第一エリア113で測定した第三測定線量率と予め記録された第一エリア113の線量分布と更新係数とに基づき第三放射能濃度を求める工程と、第一放射能濃度、第二放射能濃度、及び第三放射能濃度のそれぞれから、監視位置での線量率を推定する監視線量推定工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一エリアで作業対象物を取り扱う遠隔作業装置と、
前記遠隔作業装置の周囲の線量率を計測する遠隔作業用線量計と、
前記第一エリアの線量分布を記録する線量分布データベースと、
前記遠隔作業用線量計により計測された第一エリア線量率と前記線量分布データベースに記録された前記線量分布とから第一放射能濃度を演算する第一放射能濃度推定装置と、
前記第一エリアとは異なる第二エリアで運搬される前記作業対象物を受け取る受取装置と、
前記受取装置の周囲の線量率を計測する受取装置用線量計と、
前記受取装置用線量計により計測された第二エリア線量率から第二放射能濃度を演算する第二放射能濃度推定装置と、
前記第一放射能濃度を前記第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する更新係数演算装置と、
前記第一エリア線量率、前記線量分布データベースに記録された前記線量分布、及び前記更新係数演算装置で算出した前記更新係数から前記作業対象物の運搬に伴う前記第一エリアでの第三放射能濃度を算出する第三放射能濃度推定装置と、
前記第一放射能濃度、前記第二放射能濃度、及び前記第三放射能濃度のそれぞれから、監視位置での線量率を推定する監視線量推定装置と、を備える
線量推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の線量推定装置において、
前記線量分布データベースは、2つ以上の形状プロファイル、2つ以上の材料プロファイル、2つ以上の放射能濃度プロファイルのいずれか、もしくはいずれかを組み合わせて算出された線量分布プロファイルを更に記録している
線量推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の線量推定装置において、
前記遠隔作業装置、前記遠隔作業用線量計のうち少なくともいずれかが複数で構成され、複数の前記遠隔作業装置及び/又は前記遠隔作業用線量計を組み合わせて前記第一エリア線量率を計測する
線量推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の線量推定装置において、
前記第一エリアから前記第二エリアに前記作業対象物が運搬される運搬経路における運搬時間を算出する運搬時間算出装置を更に備え、
前記監視線量推定装置は、前記運搬時間も利用して前記監視位置での線量率を推定する
線量推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の線量推定装置において、
前記遠隔作業用線量計及び前記受取装置用線量計のうちいずれか一方以上は放射線エネルギー分析機能を備え、
前記線量分布データベースは、放射線エネルギー情報を備える
線量推定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の線量推定装置と、
前記線量推定装置において推定された前記監視位置での線量率に基づいて前記作業対象物を取り扱う作業計画を更新する作業計画更新装置と、を備える
作業計画更新システム。
【請求項7】
作業対象物を取り扱う第一エリアにおいて時刻t0で測定した第一測定線量率と予め記録された前記第一エリアの線量分布とから第一放射能濃度を求める工程と、
前記時刻t0より後の時刻t1において前記作業対象物が前記第一エリアとは異なる第二エリアに到達したときの前記第二エリアで測定した第二測定線量率から第二放射能濃度を求める工程と、
前記第一放射能濃度を前記第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する工程と、
前記時刻t0より後の時刻t2において前記第一エリアで測定した第三測定線量率と予め記録された前記第一エリアの線量分布と前記更新係数とに基づき第三放射能濃度を求める工程と、
前記第一放射能濃度、前記第二放射能濃度、及び前記第三放射能濃度のそれぞれから、監視位置での線量率を推定する監視線量推定工程と、を有する
線量推定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の線量推定方法において、
連続的にもしくは所定期間ごとに前記更新係数を算出して、前記監視位置での線量率を推定する
線量推定方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の線量推定方法の各工程と、
推定された前記監視位置での線量率と遵守すべき線量率の上限値とに基づいて、前記作業対象物を取り扱う作業計画を更新する工程と、
前記更新された新作業計画を作業者に提示し、前記新作業計画に基づいて前記作業対象物に対する作業を実行する工程と、とを有する
作業計画更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を安全に取り扱うに際し、作業安全上遵守すべき線量上限値を守りながら放射性物質取扱作業を合理的に実施するために好適な線量推定装置及び作業計画更新システム並びに線量推定方法及び作業計画更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放射線モニタリング装置は、空間線量率を測定するエリア放射線モニタと、あらかじめ求めた空間線量率とダスト放射能濃度の相関式に基づいて、エリア放射線モニタが測定した空間線量率から当該エリア放射線モニタ近傍のダスト放射線濃度を算出する信号処理装置とを備える、ことが記載されている。
【0003】
特許文献2には、局所中性子増倍特性測定装置は、主に熱中性子を検出する第1の中性子検出器とその周囲に設けられた第1の減速部材とを有する第1の中性子検出体系と、主に熱中性子を検出する第2の中性子検出器とその周囲に設けられた第2の減速部材と第2の減速部材と燃料デブリ間に設けられ平板状の中性子吸収部材とを有する第2の中性子検出体系と、第1の中性子検出器からの出力および第2の中性子検出器からの出力を入力として受け入れて対象部分の反応度を算出する演算部とを有する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-48132号公報
【特許文献2】特開2016-80666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射性物質を取り扱う施設として、原子力発電プラントや核燃料加工・製造施設、廃棄物処理施設、加速器施設、医療施設、製薬施設、放射性物質等管理区域を有する施設などがある。
【0006】
このような放射性物質を取り扱う施設においては、放射性物質の安全管理が要求される。例えば原子力発電プラントでは、核物質を含む放射性物質は燃料集合体として通常水中に保管されており、その取扱い時には十分な安全管理のもと取扱作業が実施される。
【0007】
放射性廃棄物の取扱いや廃棄を実施する施設では、作業対象物の形状が一定でないものもあり、それぞれの作業対象物の放射能濃度のばらつきもあることから、その取扱いの前に十分な裕度を持った推定値を設定している。
【0008】
このような放射性物質を含む作業対象物を取り扱う際には、放射性物質の飛散を防止する措置や飛散量を緩和する措置が実行され、飛散物質の系外放出が防止される。このように放射性物質を取り扱う際には、十分に安全を確保しながら必要な作業が実施される。
【0009】
このような条件下で安全を担保しながら作業を合理的に実施するには、作業現場での線量を監視し、作業安全上遵守すべき線量上限値を管理しながら、合理的に作業を実施可能な作業処理プロセスの作成と実行可能な作業装置とが必要となる。
【0010】
放射性物質を安全に取り扱う作業の作業計画を策定する際に、作業における線量上限値を遵守するために十分な裕度を持った設定値で事前評価し作業を計画している。しかしながら、作業中の線量実測値を用いた設定値の更新や予測、それに伴う作業計画の更新が為されていなかった。そのため、設定値に対して線量実測値が低く、作業量を変更しても十分な安全を担保できる場合においては作業対象物を取り扱う作業量も限定的になっており、また作業対象物の放射能濃度のばらつきの影響を作業計画に加味することができなかった。
【0011】
特許文献1では、放射線モニタで測定した空間線量率を信号処理装置に送信し、そこでダスト放射能濃度を所定の相関式で算出することが述べられている。しかしながら、この手法では、作業中の線量実測値を用いた設定値の更新や推定、予測、それに伴う作業計画の更新を実現するための装置構成や作業プロセスの言及が全くないことから、十分な裕度を持った設定値で計画した作業を更新することは困難である。
【0012】
また、特許文献2では、1つ以上の高線量率物品の線量率を計測するそれぞれの局所線量率計測装置と、これら局所線量率計測装置で得られた線量率を用いて線量率監視点における線量率を推定する線量率分布装置と、許容線量率を超過しないように作業計画を更新する。しかしながら、局所線量率計測装置は高線量率物品もしくはこの物品の近傍に配置される局所放射線検出器を用いることから、作業対象物がある決まったエリアに配置され、そこでの線量率の変化を監視し続けることで更新や予測、それに伴う作業計画の更新を実施することは装置構成上、困難である。
【0013】
本発明の目的は、作業の安全性を担保しながら、従来に比べて放射性物質取扱作業をより合理的に実施することが可能な線量推定装置及び作業計画更新システム並びに線量推定方法及び作業計画更新方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、第一エリアで作業対象物を取り扱う遠隔作業装置と、前記遠隔作業装置の周囲の線量率を計測する遠隔作業用線量計と、前記第一エリアの線量分布を記録する線量分布データベースと、前記遠隔作業用線量計により計測された第一エリア線量率と前記線量分布データベースに記録された前記線量分布から第一放射能濃度を演算する第一放射能濃度推定装置と、前記第一エリアとは異なる第二エリアで運搬される前記作業対象物を受け取る受取装置と、前記受取装置の周囲の線量率を計測する受取装置用線量計と、前記受取装置用線量計により計測された第二エリア線量率から第二放射能濃度を演算する第二放射能濃度推定装置と、前記第一放射能濃度を前記第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する更新係数演算装置と、前記第一エリア線量率、前記線量分布データベースに記録された前記線量分布、及び前記更新係数演算装置で算出した前記更新係数から前記作業対象物の運搬に伴う前記第一エリアでの第三放射能濃度を算出する第三放射能濃度推定装置と、前記第一放射能濃度、前記第二放射能濃度、及び前記第三放射能濃度のそれぞれから、監視位置での線量率を推定する監視線量推定装置と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業の安全性を担保しながら、従来に比べて放射性物質取扱作業をより合理的に実施することが可能なことができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1の線量推定装置の構成を示す図。
【
図2】実施例1の線量分布データベースのプロファイルとその項目を示す図。
【
図3】実施例1の線量分布プロファイルデータと線量率測定データを示す図。
【
図5】実施例2の作業計画更新システムの構成を示す図。
【
図7】実施例3の第一エリアにおける線量推定装置の構成の一部を示す図。
【
図8】実施例3の第一エリアにおける線量推定装置の構成の他の一部を示す図。
【
図9】実施例3の線量分布プロファイルデータと線量率測定データを示す図。
【
図11】実施例4の線量計の時系列データを示す図。
【
図12】実施例4の第一エリアの測定データから推定した放射能濃度とその放射能濃度から推定した監視線量の時系列データを示す図。
【
図14】実施例5のエネルギー分析データを示す図。
【
図15】実施例5の線量分布プロファイルデータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、作業安全上遵守すべき線量上限値を守りながら放射性物質取扱作業を合理的に実施するために、種々検討して得た新たな知見に基づいてなされたものである。
【0018】
以下に本発明の放射性物質を安全に取り扱うための線量推定装置及び作業計画更新システム並びに線量推定方法及び作業計画更新方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0019】
<実施例1>
本発明の線量推定装置及び線量推定方法の実施例1について
図1乃至
図4を用いて説明する。
【0020】
最初に、線量推定装置の全体構成について
図1を用いて説明する。
図1に線量推定装置の構成図を示す。
【0021】
図1に示す実施例1の線量推定装置100は、放射性物質である作業対象物112を安全に取り扱う作業の作業計画を策定する際に好適に用いられる装置であり、遠隔作業装置101、遠隔作業用線量計102、受取装置104、受取装置用線量計105、線量分布データベース106、第一放射能濃度推定装置107、第二放射能濃度推定装置108、更新係数演算装置109、第三放射能濃度推定装置110、及び監視線量推定装置111等から構成される。
【0022】
作業対象物112が存在する第一エリア113には、この第一エリア113で作業対象物112を取り扱う遠隔作業装置101と遠隔作業装置101の周囲の線量率を計測する遠隔作業用線量計102とが配置される。
【0023】
また、第一エリア113とは異なる第二エリア114には運搬経路103により運搬される作業対象物112を受け取る受取装置104と受取装置104の周囲の線量率を計測する受取装置用線量計105とが配置される。
【0024】
これら第一エリア113と第二エリア114とは運搬経路103で接続されている。
【0025】
第一エリア113と第二エリア114は温度や酸素、放射線量、粉塵、暗所などの作業員が立ち入るにあたり安全上の懸念が存在することで、作業員の立ち入りが制限・管理された環境である。
【0026】
線量分布データベース106、第一放射能濃度推定装置107、第二放射能濃度推定装置108、更新係数演算装置109、第三放射能濃度推定装置110、及び監視線量推定装置111は、好適には、第一エリア113と第二エリア114とは異なり、作業員が比較的容易に立ち入ることができる別エリアに配置され、各種運用管理を実施できる。
【0027】
作業対象物112は固体状のものや砂状、液体状など様々な形態であり、作業によって形状が変化するものも含まれる。そのために遠隔作業装置101で作業対象物112を取り扱うことで、形状やその放射能濃度が変化することがある。
【0028】
遠隔作業装置101で回収された作業対象物112の一部は運搬経路103を経て、受取装置104まで運搬される。運搬経路103では作業対象物112を運搬できれば特段の制約はなく、固体状のものであれば図示の都合で記載を省略している遠隔作業装置での運搬や容器に搭載してコンベアなどで運搬する等、液体状であればポンプとホースで運搬する等、作業対象物112の形態と作業効率に従った手法が取られる。
【0029】
遠隔作業用線量計102は、遠隔作業装置101が作業する作業環境である第一エリア113の線量率の変化を逐次観測する。同様に、受取装置104の近傍には受取装置用線量計105が配置されており、第二エリア114及び受取装置104近傍の線量率の変化を逐次観測する。
【0030】
遠隔作業用線量計102や受取装置用線量計105を構成する代表的な線量計として、半導体方式やシンチレーション方式、光ファイバ方式、ガス方式などが存在する。
【0031】
半導体であれば例えばシリコンやシリコンカーバイド(SiC)、ダイヤモンド、ゲルマニウム(Ge)、GaAs、CdTeやCZT、TlBrなどの化合物半導体が挙げられる。シンチレーション方式であれば、NaIやCsI、LaBr3、LaCl3、SrI、BGO、GSOなどの様々な蛍光体が挙げられる。光ファイバ方式であれば、YAGやYAP、上述したシンチレーション方式で利用される蛍光体が光ファイバの先端に取り付けられる方式や、光ファイバ自体を蛍光体として線量と位置情報を分析する方式などが挙げられる。ガス方式であれば、電離箱やGM計数管、比例計数管などが挙げられる。
【0032】
ここで計測する線量は作業対象物112に含まれる放射性物質から放出されるガンマ線を主因とする線量を測定するものとし、以降の実施例ではガンマ線による線量測定結果として後述するが、これはガンマ線に限るものではなく、比較的透過性の高い中性子も対象とすることができるし、更には他の放射線も対象とすることができる。
【0033】
中性子を計測する場合には、熱中性子や熱外中性子を計測する検出器、もしくは高速中性子を計測する検出器、もしくはその両方を計測する検出器が適用される。代表的な熱中性子検出器の種類として、ガス検出器やシンチレーション検出器、半導体検出器が存在する。これらの検出器には熱中性子有感材として、リチウムやボロン、ガドリニウム、カドミウム、ウラン、プルトニウムなどが適用される。ガス検出器には、He-3比例計数管やBF3比例計数管、B-10塗布型比例計数管、核分裂計数管などが適用される。シンチレーション検出器には、リチウム6やボロン10、ガドリニウムなどの熱中性子の反応断面積が大きい元素を含んだシンチレータを搭載しており、シンチレータの種類として、例えば、LiI:Euや、ZnS:Ag、ボロン10含有プラスチックシンチレータ、リチウム6もしくはボロン10含有ガラスシンチレータ、LiCaAlF6、Gd3Al2Ga3O12、Gd2SiO5:Ce、Cs2LiLaBr6:Ce、Cs2LiYCl6:Ce、Cs2LiLaCl6:Ce、Cs2LiLaBr6-xClx:Ce、Cs2LiYBr6:Ceなどがある。
【0034】
また、シンチレータの表面に熱中性子に有感な元素を塗布する手法もあり、その場合には上述したシンチレータだけでなく、LaBr3やCsBr3、LYSO、LSO、GAGG、CsI、NaI、BGO、GPS、La-GPS、LuAG、SrI、プラスチックシンチレータなどの放射線検出器として利用されるシンチレータ全般を中性子検出器として取り扱うことが可能となる。
【0035】
半導体検出器も同様に、リチウム6やボロン10、ガドリニウムなどの熱中性子の反応断面積が大きい元素を含んだ半導体を搭載しており、半導体の種類として、CdTeやCdZnTeがある。更に半導体の表面に熱中性子に有感な元素を塗布する手法もあり、その場合にはCdTeやCdZnTeだけでなく、シリコンやゲルマニウム、ダイヤモンド、シリコンカーバイド、Perovskite構造を有するCsPbCl3,CsPbBr3,LiTaO3等の半導体検出器などの半導体検出器を利用することができる。
【0036】
熱外中性子検出器には、ガス検出器として、水素ガスやメタンガスを有感部として、中性子と水素の反応による反跳陽子によるエネルギー付与を計測する反跳陽子計数管がある。
【0037】
高速中性子検出器にはしきい検出器が適用される。主に使用される種類の一つとして核分裂計数管があり、中性子有感部としてウラン234やウラン236、ウラン238、ネプツニウム237、トリウム232などが適用される。また、アントラセンやスチルベンなどの有機シンチレータも利用される。更に高圧にしたヘリウム4ガスから発するシンチレーション光によって高速中性子を計測する検出器を取り扱うことも可能である。
【0038】
図2に線量分布データベースのプロファイルとその項目を示す。
図2に示す線量分布データベース106は、第一エリア113の線量分布を記録する記録媒体であり、事前に第一エリア113における線量分布を解析してその解析結果をデータベース化したものである。
【0039】
データベースの条件として、2つ以上の形状プロファイル、2つ以上の材料プロファイル、2つ以上の放射能濃度プロファイルのいずれか、もしくはいずれかを組み合わせて算出された線量分布プロファイルを記録している。
【0040】
作業対象物112の形状プロファイルは、多角形モデルや楕円モデル、円モデル、これらを組み合わせたモデルから形成される。材料プロファイルでは、組成や密度、空隙率から形成される。放射能濃度プロファイルでは、作業対象物112の内部の放射能濃度プロファイルを示すものであって、均一モデルや偏心1モデル外部が高く、内部が低い)、偏心2モデル(外部が低く、内部が高い)、層状モデル、これらを組み合わせたモデルから形成される。
【0041】
第一放射能濃度推定装置107は、遠隔作業用線量計102により計測された第一エリア線量率と線量分布データベース106に記録された線量分布とから第一放射能濃度を演算する。
図3に線量分布プロファイルデータと線量率測定データを示す。この第一放射能濃度推定装置107が、好適には、作業対象物112を取り扱う第一エリア113において時刻t
0で測定した第一測定線量率と予め記録された第一エリア113の線量分布とから第一放射能濃度を求める工程の実行主体となる。
【0042】
第一放射能濃度推定装置107では、
図3に示すように線量率測定データ118と線量分布プロファイル115,116,117との相関を比較することで、最も適切な線量分布プロファイルを選択する。
【0043】
図3では、相関を比較する方法として、最小二乗法などに代表される最尤推定や、最大事後確率推定や、ベイズ推定、更には深層学習を含む様々な手法を用いた機械学習、また遠隔作業装置101に搭載したカメラ映像データで形状プロファイルを限定、またはこれらを組み合わせることで選択することができる。ここでは一例として3点で線量率測定データ118と3点の線量分布プロファイル115,116,117するが、3点以外でも構わない。1点での線量率測定データを取得してカメラ映像データによる形状プロファイルの限定で線量分布プロファイルを選択することができる。線量分布プロファイルを選択できれば、式(1)に従って第一放射能濃度を推定する。
S
1n=PF
1a(D
1n(x)) (1)
【0044】
式(1)中、S1nは第一エリア113の第n回目の放射能濃度(Bq/g)、PF1aは第一エリア113の第a回目の線量分布プロファイル、Dn(x)は第n回目の作業対象物との距離xにおける線量率測定データ(Gy/h)とする。
【0045】
第二放射能濃度推定装置108は、受取装置用線量計105により計測された第二エリア線量率から第二放射能濃度を演算する部分であり、受取装置104と受取装置用線量計105との位置関係が固定であることから、受取装置用線量計105での線量率測定データから受取装置104で受け取られた作業対象物112の放射能濃度を推定する。この第二放射能濃度推定装置108が、好適には、時刻t0より後の時刻t1において作業対象物112が第一エリア113とは異なる第二エリア114に到達したときの第二エリア114で測定した第二測定線量率から第二放射能濃度を求める工程の実行主体となる。
【0046】
第二放射能濃度推定装置108では、以下のような式(2)に従って第二放射能濃度として推定する。
S2n=PF2(D2n) (2)
【0047】
式(2)中、S2nは第二エリア114の第n回目の放射能濃度(Bq/g)、PF2は第二エリア114の線量分布プロファイル、D2nは第二エリアの第n回目の線量率測定データ(Gy/h)とする。
【0048】
更新係数演算装置109は、第一放射能濃度推定装置107で求められた第一放射能濃度を第二放射能濃度推定装置108で求められた第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する部分であり、例えば以下の式(3)を使って更新係数を算出する。また、最小二乗法などに代表される最尤推定や、最大事後確率推定、ベイズ推定、更には深層学習を含む様々な手法を用いた機械学習を用いることと、第n+1回目以降において過去に演算したデータや線量分布の解析結果をデータベース化したもの、そして式(3)を組み合わせることで、更新係数を演算する。この更新係数演算装置109が、好適には、第一放射能濃度を第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する工程の実行主体となる。
ΔSn=-(S1n-S2n)/S2n (3)
【0049】
式(3)中、ΔSnは第n回目の更新係数である。
【0050】
第三放射能濃度推定装置110は、第一エリア線量率、線量分布データベース106に記録された線量分布、及び更新係数演算装置109で算出した更新係数から作業対象物112の運搬に伴う第一エリア113での第三放射能濃度を算出する部分であり、以下の式(4)を用いて第三放射能濃度を推定する。この第三放射能濃度推定装置110が、好適には、時刻t0より後の時刻t2において第一エリア113で測定した第三測定線量率と予め記録された第一エリア113の線量分布と更新係数とに基づき、第三放射能濃度を求める工程の実行主体となる。
S1(n+1)=PF1a(D1(n+1)(x))/ΔSn (4)
【0051】
式(4)中、S1nは第一エリア113の第n+1回目の放射能濃度(Bq/g)、PF1aは第一エリア113の第aの線量分布プロファイル、Dn(x)は第n回目の作業対象物との距離xにおける線量率測定データ(Gy/h)である。
【0052】
監視線量推定装置111は、式(5)乃至式(7)のうちいずれか1つ以上を用いて、第一放射能濃度、第二放射能濃度、及び第三放射能濃度のそれぞれから、第二エリア114を含めた、作業対象地域に設置されたモニタリングポストなどが設置された位置などであり、様々な位置で構成される監視位置での線量率を推定する部分である。この監視線量推定装置111が、好適には、第一放射能濃度、第二放射能濃度、及び第三放射能濃度のそれぞれから、監視位置での線量率を推定する監視線量推定工程の実行主体となる。
Dn=S1n×Wn×C (5)
【0053】
式(5)中、Dnは第n回目の監視位置での監視線量推定値(Gy/h)、Wnは第n回目の受取装置での受取量(g)、Cは監視線量換算係数である。
Dn=S2n×Wn×C (6)
【0054】
式(6)中、Dnは第n回目の監視位置での監視線量推定値(Gy/h)、Wnは第n回目の受取装置での受取量(g)、Cは監視線量換算係数である。
Dn=S3n×Wn×C (7)
【0055】
式(7)中、Dnは第n回目の監視位置での監視線量推定値(Gy/h)、Wnは第n回目の受取装置での受取量(g)、Cは監視線量換算係数である。
【0056】
ここでは、それぞれの放射能濃度と受取装置104での受取量と監視線量換算係数を乗じて監視位置での監視線量を計算する。受取量は受取装置104の重量計や、液状であれば受取装置104の内部容量の目視等の手段を利用して算出する。監視線量換算係数は、受取装置104と監視位置の位置関係や構造物などの遮蔽体、空間状態を模擬した解析体系で事前に算出された計算値である。
【0057】
上述の、線量分布データベース106、第一放射能濃度推定装置107、第二放射能濃度推定装置108、更新係数演算装置109、第三放射能濃度推定装置110、及び監視線量推定装置111は、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置とハードディスク等の補助記憶装置、キーボードやUSBポート等の入力装置、モニタ等で構成される出力装置などのハードウェアを備えたPC(Personal Computer)などによって実現することができ、各機器の動作の制御や後述する各種演算処理等が様々なプログラムに基づいて実行される。
【0058】
プログラムは内部の記憶部や外部記録媒体、データサーバ(いずれも図示省略)等に格納されており、CPUによって読み出され、実行されるものとすることができる。なお、制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていてもよい。更には、各種プログラムは、プログラム配布サーバや内部記憶媒体や外部記録媒体からインストールされるものとしてもよい。
【0059】
本発明で想定する作業対象物112に対する作業は、連続的もしくは断続的に実施されるものである。そのため、好適には上述の線量推定装置100により、第四の放射能濃度、第五の放射能濃度、のように作業の進捗に従ってそれぞれのエリアで放射能濃度を推定し、連続的にもしくは所定期間ごとに更新係数を算出して、監視位置での線量率を推定する処理を連続的にもしくは所定期間ごとに実行することが望ましい。
【0060】
次いで、本発明の線量推定方法の一連の流れについて
図4を用いて説明する。
図4に線量推定方法を示す。
【0061】
図4に示すように、初めに、遠隔作業用線量計102により、第一エリア113における線量率D
1n(x)を測定し(S1001)、第一放射能濃度推定装置107により、線量率D
1n(x)と線量分布PF
1aを照合して、第一放射能濃度S
1nを推定する(S1002)。
【0062】
次に、監視線量推定装置111により、t=t1における受取装置104の受取量Wnの計画値を設定する(S1003)とともに、次にt=t1における監視位置での監視線量Dnを推定する(S1004)。
【0063】
次に、遠隔作業装置101により、作業対象物112の取り出しを開始する(S1005)。
【0064】
次に、受取装置用線量計105により、第二エリア114における線量率D2nを測定し(S1006)、第二放射能濃度推定装置108線量率D2nと線量分布PF2を照合して第二放射能濃度S2nを推定する(S1007)。
【0065】
次に、受取装置104の受取量Wnの測定値もしくは評価値から、監視線量推定装置111により、監視位置での監視線量Dnを推定する(S1008)。
【0066】
次に、好適には作業従事者や管理者、あるいは作業計画更新装置119(
図5参照)により、作業対象物112の取り出しが完了したか否かを判断する(S1009)。
【0067】
完了していれば処理を終了し、完了していなければ処理をステップS1010に進め、更新係数演算装置109により、更新係数ΔSnを算出する(S1010)。
【0068】
次に、遠隔作業用線量計102により、第一エリア113における線量率D1(n+1)(x)を測定する(S1011)。
【0069】
次に、第三放射能濃度推定装置110により、線量率D1(n+1)(x)と線量分布PF1aと更新係数ΔSnとを照合して、第三放射能濃度S1(n+1)を推定する(S1012)。
【0070】
次に、受取装置104の受取量Wn+1の計画値を設定する(S1013)。
【0071】
次に、監視線量推定装置111により、監視位置での監視線量Dn+1を推定する(S1014)。その後はS1005に戻る。
【0072】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0073】
上述した本発明の実施例1の線量推定装置100は、第一エリア113で作業対象物112を取り扱う遠隔作業装置101と、遠隔作業装置101の周囲の線量率を計測する遠隔作業用線量計102と、第一エリア113の線量分布を記録する線量分布データベース106と、遠隔作業用線量計102により計測された第一エリア線量率と線量分布データベース106に記録された線量分布とから第一放射能濃度を演算する第一放射能濃度推定装置107と、第一エリア113とは異なる第二エリア114で運搬される作業対象物112を受け取る受取装置104と、受取装置104の周囲の線量率を計測する受取装置用線量計105と、受取装置用線量計105により計測された第二エリア線量率から第二放射能濃度を演算する第二放射能濃度推定装置108と、第一放射能濃度を第二放射能濃度に近似するための更新係数を算出する更新係数演算装置109と、第一エリア線量率、線量分布データベース106に記録された線量分布、及び更新係数演算装置109で算出した更新係数から作業対象物112の運搬に伴う第一エリア113での第三放射能濃度を算出する第三放射能濃度推定装置110と、第一放射能濃度、第二放射能濃度、及び第三放射能濃度のそれぞれから、監視位置での線量率を推定する監視線量推定装置111と、を備える。
【0074】
これによって、作業の安全性を担保しながら、放射性物質取扱作業を合理的に実施するための線量を推定できるため、作業中の線量実測値を用いた設定値の更新や予測、それに伴う作業計画の更新や作業量の監視制御を実現することができる。
【0075】
また、線量分布データベースは、2つ以上の形状プロファイル、2つ以上の材料プロファイル、2つ以上の放射能濃度プロファイルのいずれか、もしくはいずれかを組み合わせて算出された線量分布プロファイルを更に記録しているため、高い精度での第一放射能濃度の算出が可能となる。
【0076】
更に、連続的にもしくは所定期間ごとに更新係数を算出して、監視位置での線量率を推定することで、時間経過と伴に変化する作業環境の変化に応じた作業計画の見直しを実現することができる。
【0077】
<実施例2>
本発明の実施例2の作業計画更新システムについて
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は実施例2の作業計画更新システムを示す図、
図6は作業計画更新方法を示す図である。
【0078】
実施例2は、作業中の線量実測値を用いた設定値の更新や推定に基づいて作業計画の更新を実施する装置及び方法の具体例の一例に関するものである。
【0079】
図5に示す本実施例の作業計画更新システム140は、
図1に示した実施例1の線量推定装置100に加えて、作業計画更新装置119、作業工程データベース120、作業人員データベース121、作業班編成データベース122、作業設備データベース123、作業監視機器データベース124、作業環境データベース125、作業計画表示装置126から構成される。
【0080】
このうち、作業工程データベース120、作業人員データベース121、作業班編成データベース122、作業設備データベース123、作業監視機器データベース124及び作業環境データベース125は、好適にはデータサーバなどで構成されるが特に限定は無い。
【0081】
作業計画更新システム140では、線量推定装置100から監視位置での線量率のデータを作業計画更新装置119に伝送する。
【0082】
作業工程データベース120には作業対象物112の取り扱いに関する作業工程と作業計画が蓄積されており、これらのデータを作業計画更新装置119に伝送する。
【0083】
作業人員データベース121には作業対象物112の取り扱いに資する作業員のデータが蓄積されている。例えば作業員の経験年数やスキルデータ、健康管理時間、他作業も含めた被ばく累積線量などの労務や安全管理、技術データが登録されている。これら作業員データを作業計画更新装置119に伝送する。
【0084】
作業班編成データベース122には作業工程と作業内容、作業員のそれぞれのデータに従って構成された作業員班編成のプロファイルと作業員を組み込んだ班編成データが登録されている。これら班編成データを作業計画更新装置119に伝送する。
【0085】
作業設備データベース123では、作業対象物112の取り扱いに使用する機器、設備、施設に関するデータが蓄積されている。これら作業設備データを作業計画更新装置119に伝送する。
【0086】
作業監視機器データベース124では、作業対象物112の取り扱いを監視する機器に関するデータが蓄積されている。これは作業対象物112を取り扱うための機器や設備、施設だけでなく、他作業の監視にも利用される監視機器を含む。例えば作業を実施する建屋のエリア放射線モニタやダストモニタ、放射線管理区域全域の放射線を監視するモニタリングポストなどである。これら作業監視機器データを作業計画更新装置119に伝送する。
【0087】
作業環境データベース125では、第一エリア113と第二エリア114、運搬経路103の環境データが蓄積されている。例えば、エリアなどの寸法や線量率、構造物や干渉物の配置、などである。これら作業環境データを作業計画更新装置119に伝送する。
【0088】
作業計画更新装置119では入力推定された監視位置での線量率に基づいて作業対象物112を取り扱う作業計画を更新する部分であり、数理最適化モデルや機械学習機能、もしくは人による調整や意思決定を含めた作業計画更新を実施する装置であり、作業期間やその前後関係の更新や、それに紐づく作業内容の更新、作業に携わる作業員とその班編成、使用する機材、設備、施設の調整を実施する。この更新結果を作業計画表示装置126で可視化する。この作業計画更新装置119が、好適には、推定された監視位置での線量率と遵守すべき線量率の上限値とに基づいて、作業対象物112を取り扱う作業計画を更新する工程の実行主体となる。
【0089】
作業計画表示装置126で可視化された更新された新作業計画を作業者に提示し、新作業計画に基づいて作業対象物112に対する作業を実行する。
【0090】
図6に作業計画更新方法を示す。
図4に示した線量推定方法にサブルーチンとして加えて使用するものである。
【0091】
図6に示すように、例えばステップS1004やステップS1008、ステップS1014において監視線量が推定されるときに、それぞれのデータベースも含めて作業計画更新装置119にデータを集約する(S2001)。
【0092】
次に作業計画更新装置119で作業計画を更新し(S2002)、作業計画表示装置126で作業計画を可視化する(S2003)。
【0093】
その他の構成・動作は前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0094】
本発明の実施例2の作業計画更新システム及び作業計画更新方法においても、前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法を備えていることにより、ほぼ同様な効果が得られる。
【0095】
また、推定された監視位置での線量率に基づいて作業対象物112を取り扱う作業計画を更新する作業計画更新装置119を更に備え、推定された監視位置での線量率と遵守すべき線量率の上限値とに基づいて、作業対象物112を取り扱う作業計画を更新する工程と、更新された新作業計画を作業者に提示し、新作業計画に基づいて作業対象物112に対する作業を実行する工程と、と更に有することにより、作業中の線量実測値を用いた設定値の更新や予測だけでなく、作業に伴う工程や人員、各種データに基づく作業計画の更新や作業量の監視制御を実現することが可能となる。
【0096】
なお、作業計画更新システム140が備える線量推定装置として実施例1で説明した線量推定装置100を採用した形態を例に示したが、後述する実施例3の線量推定装置、実施例4の線量推定装置150、実施例5の線量推定装置200のいずれかを線量推定装置100の替わりに採用することができる。
【0097】
<実施例3>
本発明の実施例3の線量推定装置及び線量推定方法について
図7乃至
図9を用いて説明する。
図7及び
図8は実施例3の第一エリアにおける線量推定装置の構成の一部を示す図、
図9は線量分布プロファイルデータと線量率測定データを示す図である。
【0098】
実施例3は、複数台の線量計と遠隔作業装置とを用いた放射能濃度の推定を実施する装置及び方法に関するものである。
【0099】
図7に示すように、第一エリア113において、遠隔作業装置101a,101bと、これらの遠隔作業装置に搭載した遠隔作業用線量計102a,102bと、複数で構成される。ここでは一例として、2セットの遠隔作業装置101a,101bと遠隔作業用線量計102a,102bとを示したが、3セット以上とすることができる。
【0100】
図8に示すように、他の形態としては、1台の遠隔作業装置101に複数台の遠隔作業用線量計102cを搭載した構成とすることができる。逆に、複数台の遠隔作業装置に1台の遠隔作業用線量計とした構成とすることも可能である。
【0101】
これらの場合、複数の遠隔作業装置101a,101b及び/又は遠隔作業用線量計102a,102b,102cを組み合わせて第一エリア線量率を計測する。
【0102】
図9に線量分布プロファイルデータと線量率測定データを示す。ここでは一例として、線量率測定データ118a,118b,118c,118dを示す。
図7及び
図8で示した装置構成でこれらの線量率測定データ118を測定し、線量分布プロファイルとの照合を実施する。
【0103】
その他の構成・動作は前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0104】
本発明の実施例3の線量推定装置及び線量推定方法においても、前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0105】
また、遠隔作業装置101a,101b、遠隔作業用線量計102a,102b,102cのうち少なくともいずれかが複数で構成され、複数の遠隔作業装置101a,101b及び/又は遠隔作業用線量計102a,102b,102cを組み合わせて第一エリア線量率を計測することにより、線量率測定データを迅速に測定できることから、放射能濃度及び監視線量の推定を迅速に実施することが可能となる。また測定データ及び利用できる測定ポイント数が増え統計精度を向上できることから、放射能濃度及び監視線量の推定精度の更なる向上が期待できる。
【0106】
<実施例4>
本発明の実施例4の線量推定装置及び線量推定方法について
図10乃至
図12を用いて説明する。
図10は実施例4の線量推定装置の構成を示す図、
図11は線量計の時系列データを示す図、
図12は第一エリアの測定データから推定した放射能濃度とその放射能濃度から推定した監視線量の時系列データを示す図である。
【0107】
実施例4は、第一エリアから第二エリアに運搬する運搬時間が有意である場合において、運搬経路の時間を組み込んだ線量推定装置及びその方法に関するものである。
【0108】
図10に示す本実施例の線量推定装置150は、第一エリア113から第二エリア114に作業対象物112が運搬される運搬経路における運搬時間を算出する運搬時間算出装置155を更に備えており、監視線量推定装置157は、運搬時間算出装置155で算出された運搬時間も利用して監視位置での線量率を推定する。
【0109】
例えば、
図10に示すように、第一エリア113から運搬経路103を経て作業対象物112を第二エリア114に運搬し、第一エリア113と第二エリア114が一定の距離で離れている場合、作業上有意な運搬時間ΔT
nが存在すると設定できる。
【0110】
図11に線量計の時系列データを示す。ここで時系列データ127を遠隔作業用線量計102に基づき推定された放射能濃度、時系列データ128を受取装置用線量計105に基づき推定された放射能濃度とする。縦軸は測定線量率とするが、それぞれの時系列データの数値の大小関係はここでは無視する。また時刻T
0から取扱作業を開始したとする。
【0111】
図11に示すように、作業の途中の時刻T1から作業対象物112の放射能濃度推定値の上昇を時系列データ127から観測する。この場合、作業対象物112が第二エリアに到着するのはT=T
1+ΔT
nであり、そこから応答の変化を観測できる。
【0112】
作業上有意な運搬時間ΔT
nが存在する場合には、その時間差を加味した監視線量を算出する必要がある。
図12に第一エリアの測定データから推定した放射能濃度とその放射能濃度から推定した監視線量の時系列データを示す。
【0113】
図12に示すように、第一エリアの測定データから推定した放射能濃度129が推定され、その放射能濃度から推定した監視線量130を算出する場合には、運搬時間ΔT
nを加味するために式(8)を用いる。
D
n(t)=S
1n(t-ΔT
n)×W
n(t)×C (8)
【0114】
式(8)中、Dnは第n回目の監視位置での監視線量推定値(Gy/h)、Wnは第n回目の受取装置104での受取量(g)、Cは監視線量換算係数である。式(8)では時刻tにおける監視線量を推定するために、時刻t-ΔTnの放射能濃度と時刻tの受取装置104の受取量Wn(t)を用いることになる。
【0115】
その他の構成・動作は前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0116】
本発明の実施例4の線量推定装置及び線量推定方法においても、前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0117】
また、第一エリア113から第二エリア114に作業対象物112が運搬される運搬経路における運搬時間を算出する運搬時間算出装置155を更に備え、監視線量推定装置157は、運搬時間も利用して監視位置での線量率を推定することにより、作業中の線量実測値を用いた設定値の予測、それに伴う作業計画の更新や作業量の監視制御を実現することが可能となる。
【0118】
<実施例5>
本発明の実施例5の線量推定装置及び線量推定方法について
図13乃至
図15を用いて説明する。
図13は実施例5の線量推定装置の構成を示す図、
図14はエネルギー分析データを示す図、
図15は線量分布プロファイルデータを示す図である。
【0119】
実施例5は、放射線エネルギー分析を利用して放射能濃度の推定を実施する装置及び方法に関するものである。
【0120】
図13に示す本実施例の線量推定装置200は、エネルギー分析機能搭載遠隔作業用線量計131及びエネルギー分析機能搭載受取装置用線量計133は放射線エネルギー分析機能を備え、線量分布データベース132は、放射線エネルギー情報を備えている。なお、エネルギー分析機能は、エネルギー分析機能搭載遠隔作業用線量計131及びエネルギー分析機能搭載受取装置用線量計133のうち少なくともいずれか一方が搭載していればよい。
【0121】
図14にエネルギー分析データを示す。ここでは一例としてエネルギースペクトル134を示す。
図14に示すように、エネルギー分析データを利用するには例えばエネルギースペクトル134のうち、放射線エネルギーの付与が大きい領域を関心領域135として抽出し、関心領域135の内部の測定値のみを取り扱う。
【0122】
図15にエネルギー分析を利用した線量分布プロファイルデータを示す。
図15に示すように、遠隔作業用線量計102で測定した線量率と照合したエネルギースペクトル134に対して、例えば
図14の関心領域135の測定値を使う場合、線量分布プロファイル136,137のうち線量分布プロファイル136が測定値と照合することになる。
【0123】
また別例として、中性子のエネルギー領域のうち、0.025eVのエネルギー領域の中性子(熱中性子)を観測して照合する場合には線量分布プロファイル136と照合することができる。
【0124】
その他の構成・動作は前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0125】
本発明の実施例5の線量推定装置及び線量推定方法においても、前述した実施例1の線量推定装置及び線量推定方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0126】
また、エネルギー分析機能搭載遠隔作業用線量計131及びエネルギー分析機能搭載受取装置用線量計133のうちいずれか一方以上は放射線エネルギー分析機能を備え、線量分布データベース132は、放射線エネルギー情報を備えることにより、線量率測定データだけでなくエネルギー情報を活用することで、そのエネルギーに適合した線量分布プロファイルを選択できることから、放射能濃度及び監視線量の推定精度の向上が期待できる。
【0127】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0128】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0129】
100,150,200…線量推定装置
101,101a,101b…遠隔作業装置
102,102a,102b,102c…遠隔作業用線量計
103…運搬経路
104…受取装置
105…受取装置用線量計
106…線量分布データベース
107…第一放射能濃度推定装置
108…第二放射能濃度推定装置
109…更新係数演算装置
110…第三放射能濃度推定装置
111,157…監視線量推定装置
112…作業対象物
113…第一エリア
114…第二エリア
115,116,117,136,137…線量分布プロファイル
118,118a,118b,118c,118d…線量率測定データ
119…作業計画更新装置
120…作業工程データベース
121…作業人員データベース
122…作業班編成データベース
123…作業設備データベース
124…作業監視機器データベース
125…作業環境データベース
126…作業計画表示装置
127,128…時系列データ
129…第一エリアの測定データから推定した放射能濃度
130…監視線量
131…エネルギー分析機能搭載遠隔作業用線量計
132…エネルギー分析データを搭載した線量分布データベース
133…エネルギー分析機能搭載受取装置用線量計
134…エネルギースペクトル
135…関心領域
140…作業計画更新システム
155…運搬時間算出装置