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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135784
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】工業用ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240927BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20240927BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16G1/00 Z
G06K19/077 252
F16G1/08 A
F16G1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046649
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】小田中 啓
(72)【発明者】
【氏名】鹿室 俊二
(72)【発明者】
【氏名】新居 俊男
(57)【要約】
【課題】非接触型データ受送信体が破損しにくい工業用ベルトを提供する。
【解決手段】工業用ベルト100は、非接触型データ受送信体10と、ベルト本体110とを備える。非接触型データ受送信体10は、板状の基材11と、ICチップ13と、回路と、少なくとも一部が基材11の外に延びる線状体で形成されたアンテナ12と、を備える。アンテナ12は、線状体が基材11と交差する方向に延びて折り返される折返し部41,141と、線状体が折返し部41,141から延出する主体部42,142と、を備える。折返し部41,141は、線状体が湾曲して基材11の外に至る湾曲部を有する。主体部42,142は、平均延出方向がベルト本体110の短手方向に交差する。基材11は、長手方向がベルト本体110の長手方向に交差するように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型データ受送信体と、前記非接触型データ受送信体が設置される可撓性のベルト本体と、を備え、
前記非接触型データ受送信体は、
板状の基材と、
前記基材に設けられたICチップと、
前記基材に設けられて前記ICチップに電気的に接続された回路と、
前記回路と電気的に接続され、少なくとも一部が前記基材の外に延びる線状体で形成されたアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記線状体が前記基材と交差する方向に延びて折り返される折返し部と、前記線状体が前記折返し部から延出する主体部と、を備え、
前記折返し部は、前記線状体が湾曲して前記基材の外に至る湾曲部を有し、
前記主体部は、平均延出方向が前記ベルト本体の短手方向に交差し、
前記基材は、長手方向が前記ベルト本体の長手方向に交差するように配置されている、
工業用ベルト。
【請求項2】
前記主体部は、前記基材の一方の面を含む基準面に沿って配置されている、
請求項1記載の工業用ベルト。
【請求項3】
前記湾曲部は、円弧状とされ、
前記湾曲部の半径は、1.0mm~3.0mmの範囲である、
請求項1記載の工業用ベルト。
【請求項4】
前記基材の厚さ方向と平行な方向から見て、前記折返し部と前記主体部との接続点と、前記基材との距離は、0.5mm~4.5mmの範囲である、
請求項1記載の工業用ベルト。
【請求項5】
前記非接触型データ受送信体は、前記折返し部が前記ベルト本体の外面側に凸となる姿勢で前記ベルト本体に設置されている、
請求項1記載の工業用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
流通管理などを目的として、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ(非接触型データ受送信体)が用いられている。RFIDタグは、リーダライタとの間で近距離の無線通信を行うことができる(例えば、特許文献1を参照)。
工業用のベルトは、例えば、プーリに巻き掛けられ、プーリの回転駆動とともに走行する。特許文献2には、RFIDタグを設置したベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4914215号公報
【特許文献2】特開2020-118297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のベルトは、プーリに巻き掛けられて走行する際に、RFIDタグ(非接触型データ受送信体)の基材またはアンテナが損傷を受ける可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、非接触型データ受送信体が破損しにくい工業用ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、非接触型データ受送信体と、前記非接触型データ受送信体が設置される可撓性のベルト本体と、を備える。前記非接触型データ受送信体は、板状の基材と、前記基材に設けられたICチップと、前記基材に設けられて前記ICチップに電気的に接続された回路と、前記回路と電気的に接続され、少なくとも一部が前記基材の外に延びる線状体で形成されたアンテナと、を備え、前記アンテナは、前記線状体が前記基材と交差する方向に延びて折り返される折返し部と、前記線状体が前記折返し部から延出する主体部と、を備え、前記折返し部は、前記線状体が湾曲して前記基材の外に至る湾曲部を有し、前記主体部は、平均延出方向が前記ベルト本体の短手方向に交差し、前記基材は、長手方向が前記ベルト本体の長手方向に交差するように配置されている、工業用ベルトを提供する。
【0007】
前記主体部は、前記基材の一方の面を含む基準面に沿って配置されていることが好ましい。
【0008】
前記湾曲部は、円弧状とされ、前記湾曲部の半径は、1.0mm~3.0mmの範囲であることが好ましい。
【0009】
前記基材の厚さ方向と平行な方向から見て、前記折返し部と前記主体部との接続点と、前記基材との距離は、0.5mm~4.5mmの範囲であることが好ましい。
【0010】
前記非接触型データ受送信体は、前記折返し部が前記ベルト本体の外面側に凸となる姿勢で前記ベルト本体に設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、非接触型データ受送信体が破損しにくい工業用ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る工業用ベルトの内部構造の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る工業用ベルトに用いられるRFIDタグの一部の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る工業用ベルトの内部構造の平面図である。
図4】RFIDタグの基材の平面図である。
図5】RFIDタグの一部の断面図である。
図6】RFIDタグの一部の断面図である。
図7】RFIDタグの一部の断面図である。
図8】RFIDタグの第1放射素子の斜視図である。
図9】RFIDタグの第2放射素子の斜視図である。
図10】第1実施形態に係る工業用ベルトを用いた伝動装置の構成図である。
図11】第1実施形態に係る工業用ベルトの模式的な斜視図である。
図12】第1実施形態に係る工業用ベルトの一部断面状態の斜視図である。
図13】第2実施形態に係る工業用ベルトの内部構造の平面図である。
図14】第2実施形態に係る工業用ベルトに用いられるRFIDタグの一部の斜視図である。
図15】第2実施形態に係る工業用ベルトの使用例の一部断面図である。
図16】第3実施形態に係る工業用ベルトの内部構造の平面図である。
図17】第4実施形態に係る工業用ベルトの内部構造の平面図である。
図18】アンテナの変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による工業用ベルトについて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、本発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであって、本発明を限定しない。以下で参照する図面においては、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示する。
【0014】
[工業用ベルト](第1実施形態)
図10は、第1実施形態に係る工業用ベルト100を用いた伝動装置500の構成図である。図11は、工業用ベルト100の模式的な斜視図である。図12は、工業用ベルト100の一部断面状態の斜視図である。
【0015】
図10に示すように、伝動装置500は、工業用ベルト100と、駆動プーリ101と、従動プーリ102と、テンションプーリ103と、を備える。
駆動プーリ101、従動プーリ102およびテンションプーリ103は「回転体」の例である。駆動プーリ101および従動プーリ102の周縁には、複数の噛合溝が設けられていてもよい。テンションプーリ103は、工業用ベルト100を押圧することで工業用ベルト100に張力を与える。工業用ベルト100は、伝動ベルトの一例である。
【0016】
図11に示すように、工業用ベルト100は、無端状に形成されている。
図12に示すように、工業用ベルト100は、ベルト本体110と、RFIDタグ(非接触型データ受送信体)10と、を備える。
【0017】
ベルト本体110は、内層111と、中間層112と、外層113と、心線114とを備える。内層111、中間層112および外層113は、合成樹脂、ゴムなどで形成されている。内層111、中間層112および外層113の構成材料としては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン-プロピレンコポリマー(EPM)などのエチレン-α-オレフィンエラストマー;クロロプレンゴム(CR);クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)、ポリウレタン等が挙げられる。
【0018】
内層111の内面には、複数の歯部115が形成されている。複数の歯部115は、工業用ベルト100の長さ方向に等間隔をおいて形成されている。歯部115は、駆動プーリ101および従動プーリ102の噛合溝に噛み合う。
【0019】
心線114は、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚糸で構成されている。心線114は、中間層112に埋設されている。心線114は、例えば、ベルト本体110の長さ方向に沿って設けられている。
工業用ベルト100は、例えば、可撓性を有する。工業用ベルト100は、例えば、弾性的に曲げ変形可能である。
【0020】
図10に示すように、工業用ベルト100は、駆動プーリ101および従動プーリ102に巻き掛けられている。工業用ベルト100は、駆動プーリ101の駆動力(動力)を従動プーリ102に伝達する。伝動装置500は、例えば、工作機械、印刷機械、射出成形機等に用いられる。
【0021】
図1は、工業用ベルト100の内部構造の斜視図である。図2は、RFIDタグ10の一部の斜視図である。図3は、工業用ベルト100の内部構造の平面図である。図4は、RFIDタグ10の基材11の平面図である。図5図7は、RFIDタグ10の一部の断面図である。図8は、RFIDタグ10の第1放射素子17の斜視図である。図9は、RFIDタグ10の第2放射素子18の斜視図である。
【0022】
図1に示すように、RFIDタグ10は、基材11と、アンテナ12と、ICチップ13と、マッチング回路16(図4参照)とを備える。
基材11は、矩形板状に形成されている。基材11は、平面視において長方形状とされている。基材11の一方の面(+Z方向側の面)を第1主面11aという。第1主面11aと反対の面を第2主面11bという(図5参照)。
【0023】
以下の説明において、XYZ直交座標系を用いることがある。図4に示すように、X方向は第1主面11aの短手方向である。Y方向は第1主面11aの長手方向である。Y方向は第1主面11aに沿う面内においてX方向と直交する。Z方向はX方向およびY方向に直交する方向である。Z方向は基材11の厚さ方向である。Z方向と平行な方向から見ることを平面視という。X方向およびY方向に沿う平面をXY平面という。基材11は、Y方向(第2方向)の寸法がX方向(第1方向)の寸法より大きい形状を有する。
【0024】
図4における右方はX方向の一方の向き(+X方向)である。図4における左方は+X方向とは反対の向き(-X方向)である。図4における上方はY方向の一方の向き(+Y方向)である。図4における下方は+Y方向とは反対の向き(-Y方向)である。図4における紙面手前方向はZ方向の一方の向き(+Z方向)である。図4における紙面奥方向は+Z方向とは反対の向き(-Z方向)である。
【0025】
本実施形態では、図5に即して上下方向を仮に規定する。図5における上方(+Z方向)は上方である。+Z方向は高さ方向である。ここに規定する上下方向は、工業用ベルトの使用時の姿勢を限定しない。
【0026】
基材11としては、樹脂基材、紙基材、セラミックス基材等が使用できる。樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材などが挙げられる。
【0027】
基材11は、繊維強化樹脂で形成されていてもよい。例えば、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂を含浸させて熱硬化させた基材を用いることができる。基材11の曲げ弾性率(JIS K7171またはJIS R1602に準拠。例えば、3点または4点曲げ試験)は、例えば、1GPa以上(好ましくは10GPa以上)であってよい。
【0028】
図4に示すように、ICチップ13は、基材11の第1主面11aに設けられている。ICチップ13は、第1主面11aの長手方向のほぼ中央に位置する。ICチップ13は、特に限定されず、アンテナ12およびマッチング回路16を介して非接触で情報の書き込みおよび読み出しが可能であればよい。
【0029】
ICチップ13は、温度センサ15を備えていてもよい。温度センサ15は、ベルト本体110の温度を測定できる。ICチップ13は、温度センサ15からのデータを記憶する記憶部を備えていてもよい。
【0030】
マッチング回路16は、第1配線21を有する。マッチング回路16は、パターン形状によってインピーダンスの調整が可能である。マッチング回路16は「回路」の一例である。
【0031】
第1配線21は、第1経路23と、第2経路24とを備える。
第1経路23の一端23aはICチップ13に電気的に接続されている。第1経路23の他端23bは第1接続箇所25に電気的に接続されている。第2経路24の一端24aはICチップ13に電気的に接続されている。第2経路24の他端24bは第2接続箇所26に電気的に接続されている。
【0032】
第1接続箇所25は、ICチップ13に対して+Y方向側に離れて位置する。第2接続箇所26は、ICチップ13に対して-Y方向側に離れて位置する。
【0033】
マッチング回路16は、基材11の第1主面11aに、金属メッキによって形成することができる。マッチング回路16は、導電性箔によって形成してもよい。マッチング回路16は、ポリマー型導電インクを用いて、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成してもよい。
【0034】
マッチング回路16をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。マッチング回路16をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0035】
図3に示すように、アンテナ12は、第1放射素子17と、第2放射素子18とを備える。第1放射素子17および第2放射素子18を「放射素子17,18」ということがある。第1放射素子17および第2放射素子18は「一対の放射素子」の例である。
【0036】
放射素子17,18は、線状体によって形成される。放射素子17,18は、例えば、スチール、ステンレス鋼、銅、銅合金などの金属で形成されている。放射素子17,18は、例えば、硬鋼線、銅合金線などで形成することが好ましい。放射素子17,18を構成する線状体は、エナメル線などの絶縁被覆線材であってもよい。線状体として絶縁被覆線材を使用すれば、巻回部33において線状体どうしの通電を抑えることができる。
【0037】
第1放射素子17は、半田付け、ハトメ留め、カシメ留め、超音波接合、などによって、第1接続箇所25に電気的に接続するとともに、第1接続箇所25に固定することができる。第1放射素子17は、第1接続箇所25において、金属接合部27(半田接合部など)を介してマッチング回路16と電気的に接続される(図4参照)。
【0038】
第2放射素子18は、半田付け、ハトメ留め、カシメ留め、超音波接合、などによって、第2接続箇所26に電気的に接続するとともに、第2接続箇所26に固定することができる。第2放射素子18は、第2接続箇所26において、金属接合部28(半田接合部など)を介してマッチング回路16と電気的に接続される(図4参照)。
【0039】
図2図3および図5に示すように、第1放射素子17は、折返し部41と、主体部42とを備える。
図2に示すように、折返し部41は、第1延出部51と、湾曲部52(応力吸収部)と、第2延出部53とを有する。
第1延出部51は、第1接続箇所25から+Z方向に延出する。第1延出部51の延出方向(+Z方向)は、基材11と交差する方向である。第1延出部51は、Z方向に沿う直線状とされている。第1延出部51は、平面視において基材11と重なる位置にある。
【0040】
湾曲部52は、第1延出部51の先端から延出する。湾曲部52は、線状体の延出方向を反転させる反転部である。湾曲部52は、+Z方向に凸となる湾曲形状を有する。湾曲部52の湾曲形状は、例えば、円弧状(例えば、半円状)、楕円弧状、高次曲線状(例えば、放物線状、双曲線状など)等である。湾曲部52は、第1延出部51の+Z方向の端と第2延出部53の+Z方向の端とを接続する。湾曲部52は、急峻な曲げ箇所がなく、緩やかに曲がる形状を有する。
【0041】
湾曲部52の半径は、1.0mm以上が好ましい。これにより、曲げ力が加えられた際の応力集中を緩和できる。湾曲部52の半径がこの範囲であると、線状体の線径に関する制約は少なくなる。湾曲部52の半径がこの範囲であると、折返し部41と基材11との離間距離を大きくできる。湾曲部52の半径は、3.0mm以下が好ましい。これにより、折返し部41のサイズを小さくし、RFIDタグ10を小型化できる。そのため、ベルト本体110に対するRFIDタグ10の設置位置の制約を少なくできる。
【0042】
湾曲部52の一部の長さ部分は、平面視において基材11に重なる位置にある。湾曲部52の他の長さ部分は、平面視において基材11の外に位置する。湾曲部52は、平面視において基材11の長辺である外周縁と交差する。湾曲部52の延出方向の先端は、平面視において基材11の+X方向側に、基材11から離れて位置する。
【0043】
第2延出部53は、湾曲部52の先端から延出する。第2延出部53は、湾曲部52の先端から-Z方向に延出する。第2延出部53は、Z方向に沿う直線状とされている。第2延出部53は、第1延出部51に対して+X方向側に離れて位置する。第1延出部51と第2延出部53とは、X方向に間隔をおいて並んで配置されている。第2延出部53は、平面視において基材11の外に、基材11から+X方向側に離れて位置する。
【0044】
折返し部41は、X方向に間隔をおいて並ぶ第1延出部51および第2延出部53と、第1延出部51と第2延出部53の一端どうしを接続する湾曲部52とを備える。そのため、折返し部41は、基材11と交差する方向に延びて折り返される形状(逆U字形状)を有する。折返し部41は、平面視において、第1接続箇所25から延出して基材11の外(基材11の+X方向側)に至る。なお、折返し部は、湾曲部のみからなる形状であってもよい。
【0045】
折返し部41がこのように形成されていることにより、工業用ベルト100の駆動時に曲げ力がRFIDタグ10に加えられたとしても、折返し部41と基材11との接触は起こりにくい。そのため、第1放射素子17および基材11に破損は生じにくい。
【0046】
図3に示すように、主体部42は、複数の直線部31と、複数の反転部32とを備える。主体部42は、平面視において基材11の外にある。
【0047】
直線部31は、Y方向に沿う直線状とされている。直線部31の延在方向(Y方向)は、X方向に交差する方向である。複数の直線部31は、互いにほぼ平行である。複数の直線部31は、X方向(主方向)に間隔をおいて、X方向に並んで配置されている。
【0048】
複数の直線部31を、第1接続箇所25に近い直線部31から並び順(+X方向の順)に、第1直線部31、第2直線部31、・・・という。最も第1接続箇所25に近い第1直線部31は、折返し部41の延出方向の先端(第2延出部53の-Z方向の端)を起点として、+Y方向に延出する。
【0049】
反転部32は、隣り合う直線部31の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続する。複数の反転部32を、第1接続箇所25に近い反転部32から並び順(+X方向の順)に、第1反転部32、第2反転部32、・・・という。
【0050】
第n反転部32は、第n直線部31の一端(+Y方向の端)と、第n+1直線部31の一端(+Y方向の端)とを接続する(nは1以上の奇数)。第n+1反転部32は、第n+1直線部31の他端(-Y方向の端)と、第n+2直線部31の他端(-Y方向の端)とを接続する。
【0051】
このように、複数の反転部32は、隣り合う直線部31の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続するため、第1放射素子17は、全体として蛇行形状となっている。
【0052】
図8に示すように、主体部42は、隣り合う2つの直線部31と、隣り合う2つの反転部32とで構成される繰り返し単位43を複数有する。複数の繰り返し単位43は、折返し部41の先端を起点として+X方向に並ぶ。主体部42の平均延出方向は、繰り返し単位43の並び方向である+X方向である。
【0053】
反転部32は、巻回部33を有する。巻回部33は、平面視において円形状とされている。巻回部33は、Z方向に沿う軸(図示略)の周りをZ方向に進行しつつ周回するらせん状とされている。
【0054】
例えば、第1反転部32の巻回部33(第1巻回部33)は、第1直線部31の一端(+Y方向の端)を始点とし、第2直線部31の一端(+Y方向の端)を終点とする、1.5周回のらせん状とされている。第n反転部32(nは1以上の奇数)の巻回部33は、第1巻回部33と同じ構造である。
【0055】
第2反転部32の巻回部33(第2巻回部33)は、第2直線部31の他端(-Y方向の端)を始点とし、第3直線部31の他端(-Y方向の端)を終点とする、1.5周回のらせん状とされている。第n+1反転部32(nは1以上の奇数)の巻回部33は、第2巻回部33と同じ構造である。
【0056】
図5に示すように、主体部42は、基材11の第2主面11b(一方の面)を含む基準面P1に沿って配置されている。基準面P1は、XY平面に沿う面である。主体部42の下面は、例えば、基準面P1とほぼ同じ高さ位置にある。
主体部42が基準面P1に沿って配置されているため、RFIDタグ10の厚さ寸法を抑えることができる。そのため、RFIDタグ10を小型化することができる。なお、基準面は、第1主面11aを含む面であってもよい。
【0057】
図2および図5に示すように、折返し部41と主体部42との接続点44は、第2延出部53と第1直線部31との接続点である。平面視における接続点44と基材11との距離Lは、0.5mm以上が好ましい。これにより、第1放射素子17と基材11との接触を起こりにくくすることができる。距離Lは、4.5mm以下が好ましい。これにより、折返し部41を小さくできるため、主体部42の長さを確保しやすくなる。
【0058】
図2および図3に示すように、第2放射素子18は、折返し部141と、主体部142とを備える。
図2に示すように、折返し部141は、第1延出部151と、湾曲部152(応力吸収部)と、第2延出部153とを有する。
第1延出部151は、第2接続箇所26から+Z方向に延出する。第1延出部151の延出方向(+Z方向)は、基材11と交差する方向である。第1延出部151は、Z方向に沿う直線状とされている。第1延出部151は、平面視において基材11と重なる位置にある。
【0059】
湾曲部152は、第1延出部151の先端から延出する。湾曲部152は、線状体の延出方向を反転させる反転部である。湾曲部152は、+Z方向に凸となる湾曲形状を有する。湾曲部152の湾曲形状は、例えば、円弧状(例えば、半円状)、楕円弧状、高次曲線状(例えば、放物線状、双曲線状など)等である。湾曲部152は、第1延出部151の+Z方向の端と第2延出部153の+Z方向の端とを接続する。湾曲部152は、急峻な曲げ箇所がなく、緩やかに曲がる形状を有する。
【0060】
湾曲部152の半径は、湾曲部52の半径と同様の理由で、1.0mm以上が好ましい。湾曲部152の半径は、湾曲部52の半径と同様の理由で、3.0mm以下が好ましい。
【0061】
湾曲部152の一部の長さ部分は、平面視において基材11に重なる位置にある。湾曲部152の他の長さ部分は、平面視において基材11の外に位置する。湾曲部152は、平面視において基材11の長辺である外周縁と交差する。湾曲部152の延出方向の先端は、平面視において基材11の-X方向側に、基材11から離れて位置する。
【0062】
第2延出部153は、湾曲部152の先端から延出する。第2延出部153は、湾曲部152の先端から-Z方向に延出する。第2延出部153は、Z方向に沿う直線状とされている。第2延出部153は、第1延出部151に対して-X方向側に離れて位置する。第1延出部151と第2延出部153とは、X方向に間隔をおいて並んで配置されている。第2延出部153は、平面視において基材11の外に、基材11から-X方向側に離れて位置する。
【0063】
折返し部141は、X方向に間隔をおいて並ぶ第1延出部151および第2延出部153と、第1延出部151と第2延出部153の一端どうしを接続する湾曲部152とを備える。そのため、折返し部141は、基材11と交差する方向に延びて折り返される形状(逆U字形状)を有する。折返し部141は、平面視において、第2接続箇所26から延出して基材11の外(基材11の-X方向側)に至る。なお、折返し部は、湾曲部のみからなる形状であってもよい。
【0064】
折返し部141がこのように形成されていることにより、工業用ベルト100の駆動時に曲げ力がRFIDタグ10に加えられたとしても、折返し部141と基材11との接触は起こりにくい。そのため、第2放射素子18および基材11に破損は生じにくい。
【0065】
図3に示すように、主体部142は、複数の直線部131と、複数の反転部132とを備える。主体部142は、平面視において基材11の外にある。
【0066】
直線部131は、Y方向に沿う直線状とされている。直線部131の延在方向(Y方向)は、X方向に交差する方向である。複数の直線部131は、互いにほぼ平行である。複数の直線部131は、X方向(主方向)に間隔をおいて、X方向に並んで配置されている。
【0067】
複数の直線部131を、第2接続箇所26に近い直線部131から並び順(-X方向の順)に、第1直線部131、第2直線部131、・・・という。最も第2接続箇所26に近い第1直線部131は、折返し部141の延出方向の先端(第2延出部153の-Z方向の端)を起点として、-Y方向に延出する。
【0068】
反転部132は、隣り合う直線部131の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続する。複数の反転部132を、第2接続箇所26に近い反転部132から並び順(-X方向の順)に、第1反転部132、第2反転部132、・・・という。
【0069】
第m反転部132は、第m直線部131の一端(-Y方向の端)と、第m+1直線部131の一端(-Y方向の端)とを接続する(mは1以上の奇数)。第m+1反転部132は、第m+1直線部131の他端(+Y方向の端)と、第m+2直線部131の他端(+Y方向の端)とを接続する。
【0070】
このように、複数の反転部132は、隣り合う直線部131の一端どうしおよび他端どうしを交互に接続するため、第2放射素子18は、全体として蛇行形状となっている。
【0071】
図9に示すように、主体部142は、隣り合う2つの直線部131と、隣り合う2つの反転部132とで構成される繰り返し単位143を複数有する。複数の繰り返し単位143は、折返し部141の先端を起点として-X方向に並ぶ。主体部142の平均延出方向は、繰り返し単位143の並び方向である-X方向である。
【0072】
反転部132は、巻回部133を有する。巻回部133は、平面視において円形状とされている。巻回部133は、Z方向に沿う軸(図示略)の周りをZ方向に進行しつつ周回するらせん状とされている。
【0073】
例えば、第1反転部132の巻回部133(第1巻回部133)は、第1直線部131の一端(-Y方向の端)を始点とし、第2直線部131の一端(-Y方向の端)を終点とする、1.5周回のらせん状とされている。第m反転部132(mは1以上の奇数)の巻回部133は、第1巻回部133と同じ構造である。
【0074】
第2反転部132の巻回部133(第2巻回部133)は、第2直線部131の他端(+Y方向の端)を始点とし、第3直線部131の他端(+Y方向の端)を終点とする、1.5周回のらせん状とされている。第m+1反転部132(mは1以上の奇数)の巻回部133は、第2巻回部133と同じ構造である。
【0075】
巻回部33,133は、らせん状であるためトーションバネとしての弾性を有する。そのため、放射素子17,18は、隣り合う直線部どうしの角度が増減するように弾性的に変形可能である。したがって、巻回部33,133は、放射素子17,18に外力(例えば、引張力または圧縮力)が作用した場合に、応力を吸収することができる。よって、放射素子17,18の基端部分(接続箇所25,26)に作用する応力を抑え、接続箇所25,26の破損を回避することができる。
【0076】
主体部142は、基材11の第2主面11b(一方の面)を含む基準面P1に沿って配置されている(図5参照)。主体部142の下面は、例えば、基準面P1とほぼ同じ高さ位置にある。これにより、RFIDタグ10の厚さ寸法を抑えることができる。そのため、RFIDタグ10を小型化することができる。
【0077】
図2に示すように、144は、折返し部141と主体部142との接続点である。平面視における接続点144と基材11との距離は、距離L(図5参照)と同様の理由で、0.5mm以上が好ましい。接続点144と基材11との距離は、距離L(図5参照)と同様の理由で、4.5mm以下が好ましい。
【0078】
図3に示すように、第1放射素子17と第2放射素子18とは、例えば、基材11の中央を通るZ方向軸を中心軸とする回転対称形である。
放射素子17,18は、線状体にフォーミング加工を施すことによって作製することができる。
【0079】
図1および図3に示すように、RFIDタグ10は、ベルト本体110に設置される。基材11は、ベルト本体110に沿う姿勢となる。基材11の厚さ方向はベルト本体110の厚さ方向(内層111、中間層112および外層113の厚さ方向)に沿う(図12参照)。
【0080】
RFIDタグ10の設置箇所は特に限定されない。図12に示すように、RFIDタグ10は、外層113の内部に設けてもよい。RFIDタグ10は、中間層112の内部に設けてもよい。RFIDタグ10は、内層111の内部に設けてもよい。RFIDタグ10は、外層113と中間層112との間に設けてもよい。RFIDタグ10は、中間層112と内層111との間に設けてもよい。RFIDタグ10は、外層113の外面または内層111の内面に設けてもよい。
【0081】
RFIDタグ10の設置形態について説明する。
図1および図3に示すように、RFIDタグ10は、基材11の長手方向がベルト本体110の長手方向に交差するように配置される。基材11の長手方向は、ベルト本体110の短手方向に沿うことが好ましい。基材11の長手方向は、ベルト本体110の長手方向に直交することが好ましいが、ベルト本体110の長手方向に対して傾斜していてもよい。ベルト本体110の長手方向に対する基材11の長手方向の傾斜角度は、45度を越える(例えば、60度以上である)ことが好ましい。
【0082】
RFIDタグ10は、放射素子17,18の平均延出方向がベルト本体110の短手方向に交差するように配置される。放射素子17,18の平均延出方向は、ベルト本体110の長手方向に沿うことが好ましい。放射素子17,18の平均延出方向は、ベルト本体110の短手方向に直交することが好ましいが、ベルト本体110の短手方向に対して傾斜していてもよい。ベルト本体110の短手方向に対する放射素子17,18の平均延出方向の傾斜角度は、45度を越える(例えば、60度以上である)ことが好ましい。
【0083】
RFIDタグ10は、折返し部41,141がベルト本体110の外面側に凸となる姿勢(外向き姿勢)でベルト本体110に設置されることが望ましい。詳しくは、RFIDタグ10の+Z方向は、内層111から外層113に向かう方向と一致するのが望ましい。RFIDタグ10の姿勢をこのように定めることによって、RFIDタグ10を、ベルト本体110に容易に設置することができる。なお、RFIDタグ10は、外向き姿勢と反対の姿勢(内向き姿勢)であってもよい。
【0084】
図10に示すように、伝動装置500の駆動プーリ101を駆動させると、工業用ベルト100は、駆動プーリ101と従動プーリ102との間で走行する。工業用ベルト100は、駆動プーリ101の駆動力(動力)を従動プーリ102に伝達する。工業用ベルト100は、プーリ101,102に巻き掛けられて動力を伝達する伝動ベルトである。
【0085】
工業用ベルト100は、プーリ101,102上を走行する際に、プーリ101,102の周縁に沿う湾曲形状となるため、RFIDタグ10には曲げ力が加えられることがある。
図6に示すように、例えば、RFIDタグ10に、放射素子17を押し上げる方向の曲げ力が加えられた場合、折返し部41の湾曲部52は、広がる方向(第2延出部53が第1延出部51から離れる方向)に曲げ変形するとともに、放射素子17にかかる応力を吸収する。
図7に示すように、例えば、RFIDタグ10に、放射素子17を押し下げる方向の曲げ力が加えられた場合、折返し部41の湾曲部52は、閉じる方向(第2延出部53が第1延出部51に近づく方向)に曲げ変形するとともに、放射素子17にかかる応力を吸収する。
【0086】
[第1実施形態の工業用ベルトが奏する効果]
工業用ベルト100では、RFIDタグ10のアンテナ12は、湾曲部52,152を有する折返し部41,141を備える。図6および図7に示すように、RFIDタグ10では、折返し部41,141によって曲げ力を吸収することができるため、放射素子17,18および基材11に局所的な力が加えられるのを抑えることができる。よって、放射素子17,18および基材11に破損は生じにくい。
【0087】
RFIDタグ10は、アンテナ12が折返し部41,141を備えるため、放射素子17,18と基材11との接触が起こりにくい。よって、放射素子17,18と基材11との接触による破損を回避できる。
RFIDタグ10では、折返し部41,141によって曲げ力を吸収することができるため、放射素子17,18の基端部分(接続箇所25,26)に作用する応力を抑え、接続箇所25,26の破損を回避することができる。
【0088】
RFIDタグ10は、折返し部41,141を有するため、厚さ方向の曲げ可能範囲を大きく確保することができる。よって、曲げに対する耐久性を高めることができる。
【0089】
図1および図3に示すように、RFIDタグ10の基材11は、長手方向がベルト本体110の短手方向に沿うように配置されているため、ベルト長さ方向の基材11の寸法は小さい。したがって、工業用ベルト100の曲げによって基材11に加えられる力を抑制できる。基材11は、通常、放射素子17,18に比べて曲げ耐性が低いが、工業用ベルト100では、基材11に加えられる曲げ力が小さくなるため、基材11の破損は起こりにくい。
【0090】
RFIDタグ10は、放射素子17,18の平均延出方向がベルト本体110の長手方向に沿うように配置されている。そのため、放射素子17,18の長さに制約が少ない。RFIDタグ10では、放射素子17,18を長く形成することによって、通信性能を高めることができる。例えば、通信距離を長くすることができる。
【0091】
RFIDタグ10は、平面視において折返し部41,141が基材11の短手方向に延びるため、Y方向の寸法を小さくできる。よって、幅が狭い工業用ベルトにも適用できる。
【0092】
第1放射素子17は、第1接続箇所25において、半田付けなどによる金属接合部27(図4参照)を介してマッチング回路16と電気的に接続される。第2放射素子18は、第2接続箇所26において、半田付けなどによる金属接合部28(図4参照)を介してマッチング回路16と電気的に接続される。これにより、放射素子17,18とマッチング回路16との電気的な接続特性は良好となる。
【0093】
放射素子17,18は、線状体で形成されているため引張強度が高い。工業用ベルト100がプーリ101,102上を走行する際には、放射素子17,18にベルト長さ方向の引張力が加えられることがあるが、放射素子17,18は、引張強度が高いため、断線は起こりにくい。
【0094】
[工業用ベルト](第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る工業用ベルト200の内部構造を示す平面図である。図14は、RFIDタグ210の一部の斜視図である。図15は、工業用ベルト200の使用例の一部断面図である。他の実施形態との共通構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0095】
図13に示すように、工業用ベルト200は、ベルト本体110Aと、RFIDタグ(非接触型データ受送信体)210と、を備える。工業用ベルト200は、RFIDタグ10に代えて、RFIDタグ210を備える。RFIDタグ210は、アンテナ12に代えてアンテナ212が用いられている点で、図3に示すRFIDタグ10と異なる。
【0096】
図13および図14に示すように、アンテナ212は、第1放射素子217と、第2放射素子218とを備える。
第1放射素子217は、折返し部241と、基延出部30と、主体部42とを備える。折返し部241は、第1延出部51と、湾曲部52(応力吸収部)と、第2延出部53とを有する。湾曲部52は、平面視において基材11の短辺である外周縁と交差する。湾曲部52の延出方向の先端は、平面視において基材11の+Y方向側に、基材11から離れて位置する。
【0097】
第2延出部53は、第1延出部51に対して+Y方向側に離れて位置する。第1延出部51と第2延出部53とは、Y方向に間隔をおいて並んで配置されている。第2延出部53は、平面視において基材11の外に、基材11から+Y方向側に離れて位置する。
【0098】
折返し部241は、Y方向に間隔をおいて並ぶ第1延出部51および第2延出部53と、第1延出部51と第2延出部53の一端どうしを接続する湾曲部52とを備える。そのため、折返し部241は、基材11と交差する方向に延びて折り返される形状(逆U字形状)を有する。折返し部241は、平面視において、第1接続箇所25から基材11の外(基材11の+Y方向側)に延出する。
【0099】
基延出部30は、折返し部241の先端から+X方向に延び、主体部42の第1直線部31に達する。
【0100】
第2放射素子18は、折返し部341と、基延出部130と、主体部142とを備える。折返し部341は、第1延出部151と、湾曲部152(応力吸収部)と、第2延出部153とを有する。湾曲部152は、平面視において基材11の短辺である外周縁と交差する。湾曲部152の延出方向の先端は、平面視において基材11の-Y方向側に、基材11から離れて位置する。
【0101】
第2延出部153は、第1延出部151に対して-Y方向側に離れて位置する。第1延出部151と第2延出部153とは、Y方向に間隔をおいて並んで配置されている。第2延出部153は、平面視において基材11の外に、基材11から-Y方向側に離れて位置する。
【0102】
折返し部341は、Y方向に間隔をおいて並ぶ第1延出部151および第2延出部153と、第1延出部151と第2延出部153の一端どうしを接続する湾曲部152とを備える。そのため、折返し部341は、基材11と交差する方向に延びて折り返される形状(逆U字形状)を有する。折返し部341は、平面視において、第2接続箇所26から基材11の外(基材11の-Y方向側)に延出する。
【0103】
基延出部130は、折返し部341の先端から-X方向に延び、主体部142の第1直線部131に達する。
【0104】
RFIDタグ210は、基材11の長手方向がベルト本体110の長手方向に交差するように配置される。基材11の長手方向は、ベルト本体110の短手方向に沿うことが好ましい。
RFIDタグ210は、放射素子217,218の平均延出方向がベルト本体110の短手方向に交差するように配置される。放射素子217,218の平均延出方向は、ベルト本体110の長手方向に沿うことが好ましい。
【0105】
図15に示すように、ベルト本体110Aとしては、Vベルトを使用できる。ベルト本体110Aは、内層611と、中間層612と、外層613と、心線614とを備える。心線614は、中間層612に埋設されている。ベルト本体110Aは、内周側に向かって幅が狭くなる。RFIDタグ210は、例えば、外層613の内部に設けられる。
【0106】
工業用ベルト200は、プーリ601に巻き掛けられる。プーリ601は、シーブ604,605を備える。シーブ604,605の間には溝616が形成されている。溝616は、深さ方向に幅が狭くなる。プーリ601に巻き掛けられた工業用ベルト200には、シーブ604,605の内側面によって、幅方向の圧縮力が作用する場合がある。
【0107】
[第2実施形態の工業用ベルトが奏する効果]
工業用ベルト200では、RFIDタグ210の折返し部241,341によって曲げ力を吸収することができるため、第1実施形態の工業用ベルト100と同様に、放射素子217,218および基材11に破損は生じにくい。
【0108】
RFIDタグ210では、折返し部241,341が平面視においてY方向に形成されているため、工業用ベルト200の幅方向の圧縮力が作用した場合でも(図15参照)、この圧縮力を吸収できる。よって、放射素子217,218および基材11に破損は生じにくい。
【0109】
[工業用ベルト](第3実施形態)
図16は、第3実施形態に係る工業用ベルト300の内部構造を示す平面図である。他の実施形態との共通構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0110】
図16に示すように、工業用ベルト300は、ベルト本体110と、RFIDタグ(非接触型データ受送信体)310と、を備える。工業用ベルト300は、RFIDタグ10に代えて、RFIDタグ310を備える。RFIDタグ310は、アンテナ12に代えてアンテナ312が用いられている点で、図3に示すRFIDタグ10と異なる。
【0111】
アンテナ312は、第1放射素子317と、第2放射素子318とを備える。
第1放射素子317は、折返し部441と、主体部42とを備える。折返し部441は、第1延出部51と、湾曲部52(応力吸収部)と、第2延出部53とを有する。折返し部441は、基材11と交差する方向に延びて折り返される形状(逆U字形状)を有する(図5参照)。
【0112】
折返し部441では、第2延出部53は、第1延出部51に対して、X方向およびY方向に傾斜する方向(+X方向側に行くほど+Y方向側に移行する傾斜方向)に離れて位置する。第2延出部53は、平面視において基材11の外に位置する(図5参照)。折返し部441は、平面視において、第1接続箇所25から、X方向およびY方向に傾斜する方向(+X方向側に行くほど+Y方向側に移行する傾斜方向)に形成されている。
【0113】
第2放射素子18は、折返し部541と、主体部142とを備える。折返し部541は、第1延出部151と、湾曲部152(応力吸収部)と、第2延出部153とを有する。折返し部541は、基材11と交差する方向に延びて折り返される形状(逆U字形状)を有する(図5参照)。
【0114】
折返し部541では、第2延出部53は、第1延出部51に対して、X方向およびY方向に傾斜する方向(-X方向側に行くほど-Y方向側に移行する傾斜方向)に離れて位置する。第2延出部53は、平面視において基材11の外に位置する(図5参照)。折返し部541は、平面視において、第2接続箇所26から、X方向およびY方向に傾斜する方向(-X方向側に行くほど-Y方向側に移行する傾斜方向)に形成されている。
【0115】
[第3実施形態の工業用ベルトが奏する効果]
工業用ベルト300では、RFIDタグ310の折返し部441,541は、平面視においてX方向およびY方向に傾斜する方向に形成されている。そのため、工業用ベルト300の長さ方向の曲げが加えられた場合、および工業用ベルト300の幅方向の圧縮力が作用した場合(図15参照)のいずれにおいても、放射素子317,318および基材11に破損は生じにくい。
【0116】
[工業用ベルト](第4実施形態)
図17は、第4実施形態に係る工業用ベルト400の内部構造を示す平面図である。他の実施形態との共通構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0117】
図17に示すように、工業用ベルト400は、ベルト本体110と、RFIDタグ(非接触型データ受送信体)410と、を備える。工業用ベルト400は、RFIDタグ10に代えて、RFIDタグ410を備える。RFIDタグ410は、アンテナ12に代えてアンテナ412が用いられている点で、図3に示すRFIDタグ10と異なる。
【0118】
アンテナ412は、第1放射素子417と、第2放射素子418とを備える。
第1放射素子417は、折返し部441と、主体部442とを備える。主体部442は、複数の直線部431と、複数の反転部32とを備える。直線部431は、X方向およびY方向に対して傾斜する。隣り合う直線部431の傾斜方向は異なる。
【0119】
第2放射素子418は、折返し部541と、主体部542とを備える。主体部542は、複数の直線部531と、複数の反転部132とを備える。直線部531は、X方向およびY方向に対して傾斜する。隣り合う直線部531の傾斜方向は異なる。
【0120】
[第4実施形態の工業用ベルトが奏する効果]
工業用ベルト400では、RFIDタグ410の折返し部441,541は、平面視においてX方向およびY方向に傾斜する方向に形成されている。そのため、工業用ベルト400の長さ方向の曲げが加えられた場合、および工業用ベルト400の幅方向の圧縮力が作用した場合(図15参照)のいずれにおいても、放射素子417,418および基材11に破損は生じにくい。
【0121】
工業用ベルト400では、放射素子417,418の直線部431,531が傾斜しているため、他の実施形態の工業用ベルトで用いられるRFIDタグとは異なる送受信特性を得ることができる。
【0122】
[放射素子](変形例)
図18は、放射素子の変形例である放射素子717の主体部を示す平面図である。
図18に示すように、放射素子717の主体部は、メアンダ形状である。放射素子717の主体部は、複数の直線状の直線部31と、複数の反転部732とを備える。直線部31は、Y方向に沿う直線状とされている。反転部732は、隣り合う直線部31の一方および他方の端部どうしを交互に連結する。反転部732は、湾曲形状(例えば、円弧状、楕円弧状)を有する。
【0123】
放射素子717は、巻回部を有する放射素子(図8および図9参照)に比べ、製造が容易である。放射素子717は、巻回部を有する放射素子に比べて軽量である。
【0124】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されない。
図4に示すように、RFIDタグ10の基材11は長方形状とされているが、基材の形状は長方形に限らない。基材の第1主面に沿う2つの方向(第1方向および第2方向)を想定する。第1方向と第2方向とは互いに直交する。基材は、第1方向の寸法と第2方向の寸法とが異なっていればよい。基材の平面視形状は、例えば、楕円形状、長円形状、角丸四角形状、多角形状などであってもよい。
【0125】
RFIDタグ10では、放射素子17,18の一部について平均延出方向がベルト本体110の短手方向に交差する方向とされているが、放射素子の全部について平均延出方向がベルト本体の短手方向に交差する方向であってもよい。RFIDタグ10は、基材11と、ICチップ13と、回路16と、アンテナ12とを備えるが、RFIDタグは、基材と、ICチップと、アンテナとを備えていてもよい。その場合、アンテナはICチップに直接、接続される。
【0126】
図12に示す工業用ベルト100は、歯部115を有する歯付きベルトである。工業用ベルト100は、歯部115が駆動プーリ101および従動プーリ102の噛合溝に噛み合うことで動力を伝達する。実施形態の工業用ベルトは、プーリとの間の摩擦力にて動力を伝達する摩擦伝動ベルトであってもよい。摩擦伝動ベルトとしては、例えば、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルト等がある。
【0127】
Vベルトは、ベルト長さ方向に直交するベルト本体断面が、外周面側から内周面側に向かって幅が狭くなる略台形状の摩擦伝動ベルトである(図15参照)。Vベルトは、内向きに突出した複数の突部を備えていてもよい。複数の突部は、ベルト長さ方向に一定のピッチで設けられている。隣り合う突部の間には凹部が形成される。突部は、ベルト幅方向に延びるように形成されていてもよいし、ベルト幅方向に対して斜めに延びるように形成されていてもよい。
【0128】
Vリブドベルトは、1または複数の突条部を備えている。突条部は内向きに突出し、かつベルト長さ方向にわたって形成される。突条部は、例えば、ベルト長さ方向に直交する断面が略台形状である。
平ベルトは、ベルト長さ方向に直交するベルト本体断面が、ベルト幅方向が厚さ方向よりも広い略長方形状の摩擦伝動ベルトである。
【0129】
実施形態の工業用ベルトは、ダブルコグベルトであってもよい。ダブルコグベルトは、内向きに突出し、かつベルト長さ方向に一定のピッチで設けられた突部を内周面側に有する。ダブルコグベルトは、外向きに突出し、かつベルト長さ方向に一定のピッチで設けられた突部を外周面側に有する。
【0130】
実施形態の工業用ベルトは、サーペンタインベルトであってもよい。サーペンタインベルトは、内向きに突出し、かつベルト長さ方向に一定のピッチで設けられた複数の突部を内周面側に有する。サーペンタインベルトは、外向きに突出し、かつベルト長さ方向にわたって形成された1または複数の突条部を外周面側に有する。
【0131】
実施形態の工業用ベルトは、伝動ベルトに限らず、物品を搬送する搬送ベルトであってもよい。
実施形態の工業用ベルトは、伝動ベルトまたは搬送ベルトとして用いられることが好ましいが、用途については特に限定されない。
【符号の説明】
【0132】
10,210,310,410…RFIDタグ(非接触型データ受送信体)、11…基材、12,212,312,412…アンテナ、13…ICチップ、16…マッチング回路(回路)、17,217,317,417…第1放射素子(放射素子)、18,218,318,418…第2放射素子(放射素子)、41,141,241,341,441,541…折返し部、42,142,442,542…主体部、44,144…接続点、52…湾曲部、100,200,300,400…工業用ベルト、110,110A…ベルト本体、L…距離、P1…基準面
図1
図2
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図4
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図18