(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135790
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】締結構造および締結方法
(51)【国際特許分類】
F16B 1/02 20060101AFI20240927BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16B1/02 L
F16B5/02 R
F16B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046659
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA04
3J001HA07
3J001JA03
3J001KA12
3J001KA13
(57)【要約】
【課題】フレーム間の締結および解除作業を簡便かつ低コストで行うことができる締結装置および締結方法を提供する。
【解決手段】軸方向に延びる穴5が形成された第一のフレーム3と、第一のフレーム3と軸方向に対向し、軸方向に延びる穴6が形成された第二のフレーム4と、軸方向に延び、穴5、6に挿し込まれる軸体7と、軸体7を第一のフレーム3または第二のフレーム4のいずれか一方に対し軸方向に位置決めする位置決め機構8と、軸体7に設けられた軸方向長さが可変の軸力発生部材9と、軸力発生部材9と軸方向に隣り合うように軸体7に設けられ、軸力発生部材9の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力部材10と、を有し、反力部材10から軸力発生部材9に作用した前記反力によって、第一のフレーム3または第二のフレーム4の他方に対し、第一のフレーム3と第二のフレーム4が互いに接近するように軸力を与える構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる穴が(5)形成された第一のフレーム(3)と、
前記第一のフレーム(3)と軸方向に対向し、軸方向に延びる穴(6)が形成された第二のフレーム(4)と、
前記両フレーム(3、4)にそれぞれ形成された前記穴(5、6)に挿し込まれる軸方向に延びる軸体(7)と、
前記軸体(7)を前記第一のフレーム(3)または前記第二のフレーム(4)のいずれか一方に対し軸方向に位置決めする位置決め機構(8)と、
前記軸体(7)に設けられた軸方向長さが可変の軸力発生部材(9)と、
前記軸力発生部材(9)と軸方向に隣り合うように前記軸体(7)に設けられ、前記軸力発生部材(9)の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力部材(10)と、
を有し、前記反力部材(10)から前記軸力発生部材(9)に作用した前記反力によって、前記第一のフレーム(3)または前記第二のフレーム(4)の他方に対し、前記第一のフレーム(3)と第二のフレーム(4)が互いに接近するように軸力を与える締結構造。
【請求項2】
前記位置決め機構(8)が、前記軸体(7)に形成された雄ねじ部(11)を、前記第一のフレーム(3)または前記第二のフレーム(4)の一方の前記穴(5、6)に形成された雌ねじ部(12)にねじ込むことで構成された請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記位置決め機構(8)が、前記軸体(7)に形成された雄ねじ部(11)を前記第一のフレーム(3)または前記第二のフレーム(4)の一方の前記穴(5、6)に挿通および突出させた上で、その突出部に止めナット(20)をねじ込むことで構成された請求項1に記載の締結構造。
【請求項4】
前記軸力発生部材(9)が、シリンダ(13)と、前記シリンダ(13)の内部を軸方向に移動可能なピストン(14)を有する油圧シリンダ装置(9)である請求項1から3のいずれか1項に記載の締結構造。
【請求項5】
前記シリンダ(13)が、内径側に配置される内筒(13a)と、外径側に配置される外筒(13b)と、前記内筒(13a)と前記外筒(13b)を軸方向に相対移動不能に一体化する止め輪(13c)と、を有しており、前記止め輪(13c)の取り付け位置が、前記内筒(13a)および前記外筒(13b)の軸方向範囲の内側にある請求項4に記載の締結構造。
【請求項6】
前記第一のフレーム(3)がコーンクラッシャ(2)の上部フレーム(3)、前記第二のフレーム(4)が前記コーンクラッシャ(2)の下部フレーム(4)であって、前記上部フレーム(3)および前記下部フレーム(4)に、前記軸体(7)、前記位置決め機構(8)、前記油圧シリンダ装置(9)、および、前記反力部材(10)が周方向に沿って複数配置されており、前記各油圧シリンダ装置(9)を作動させる作動油が、作動油供給源から、前記周方向の一方向と、前記一方向とは逆向きの逆方向の両方向に分岐して環状に供給されている請求項4に記載の締結構造。
【請求項7】
軸方向に延びる穴(5)が形成された第一のフレーム(3)と、前記第一のフレーム(3)と軸方向に対向し、軸方向に延びる穴(6)が形成された第二のフレーム(4)のそれぞれの前記穴(5、6)に軸方向に延びる軸体(7)を挿し込む工程と、
前記軸体(7)を前記第一のフレーム(3)または前記第二のフレーム(4)のいずれか一方に対し軸方向に位置決めする工程と、
前記軸体(7)に、軸方向長さが可変の軸力発生部材(9)と、前記軸力発生部材(9)と軸方向に隣り合うように、前記軸力発生部材(9)の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力部材(10)と、を設ける工程と、
前記軸力発生部材(9)の長さを延ばし、前記反力部材(10)から前記軸力発生部材(9)に作用した前記反力によって、前記第一のフレーム(3)または前記第二のフレーム(4)の他方に対し、前記第一のフレーム(3)と前記第二のフレーム(4)が互いに接近するように軸力を与える工程と、
を有する締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばコーンクラッシャの上下フレームの締結に採用される締結構造および締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーンクラッシャなどの機械装置においては、その機体フレームが上部フレームと下部フレームから構成され、両フレームに形成されたボルト孔に植込ボルトを設けた上でナットを締結することで両フレームを一体化する構成としているものがある。特にコーンクラッシャなどの大型装置は、両フレームを確実に締結するため、比較的大きいサイズの植込ボルトとナット(M36など)が採用されることが多い。
【0003】
この場合、上下フレームの締結および解除作業の際に、作業者がナットに設けた打撃用メガネレンチを大型のハンマーで打撃する必要があるが、大型装置では、上下フレームの周方向の全周に亘って複数の箇所で締結または解除作業を行う必要があり、作業者の負担が大きい問題がある。
【0004】
そこで、例えば下記特許文献1、2では、上下フレームの一方側に、油圧によって伸縮するピストンロッドを備えた油圧シリンダを設けるとともに、上下フレームの他方側に、ピストンロッドが係止される係止部を設けた構成を採用している。上下フレームの締結に際しては、まず、上部フレームを下部フレームに設けた油圧サポートで昇降し、上下フレームの間の位置決めを行った上で、油圧シリンダのピストンロッドを伸縮することによって、ピストンロッドと係止部を係合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3743719号公報
【特許文献2】特許第3827234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に係る構成においては、油圧サポートで上部フレームを昇降して両フレーム間の位置決めを行った上でピストンロッドと係止部を係合させるため、締結作業に手間を要する。また、ピストンロッドを係止することができるようにフレームを特殊な形状に加工する必要があるため、そのフレームのための新規金型の製作などが必要となり、コストが嵩む問題がある。また、従来のフレームを転用できないためフレーム形状が多品種化し、そのための保管スペースの増大や管理の煩雑化により、在庫管理コストが嵩む問題もある。
【0007】
そこで、この発明は、フレーム間の締結および解除作業を簡便かつ低コストで行うことができる締結装置および締結方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明においては、
軸方向に延びる穴が形成された第一のフレームと、
前記第一のフレームと軸方向に対向し、軸方向に延びる穴が形成された第二のフレームと、
前記両フレームにそれぞれ形成された前記穴に挿し込まれる軸方向に延びる軸体と、
前記軸体を前記第一のフレームまたは前記第二のフレームのいずれか一方に対し軸方向に位置決めする位置決め機構と、
前記軸体に設けられた軸方向長さが可変の軸力発生部材と、
前記軸力発生部材と軸方向に隣り合うように前記軸体に設けられ、前記軸力発生部材の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力部材と、
を有し、前記反力部材から前記軸力発生部材に作用した前記反力によって、前記第一のフレームまたは前記第二のフレームの他方に対し、前記第一のフレームと第二のフレームが互いに接近するように軸力を与える締結構造を構成した。
【0009】
このようにすると、ボルトで締結する従来のフレーム形状を変えることなく、軸力発生部材の作用によって両フレーム同士を締結することができる。このため、フレーム形状が多品種化することなく、そのための保管スペースの増大や管理の煩雑化に伴う在庫管理コストを抑制することができる。
【0010】
前記構成においては、前記位置決め機構が、前記軸体に形成された雄ねじ部を、前記第一のフレームまたは前記第二のフレームの一方の前記穴に形成された雌ねじ部にねじ込むことで構成されている、あるいは、前記軸体に形成された雄ねじ部を前記第一のフレームまたは前記第二のフレームの一方の前記穴に挿通および突出させた上で、その突出部に止めナットをねじ込むことで構成されているのが好ましい。このようにすると、軸体と第一のフレームまたは第二のフレームとを軸方向に容易にかつ確実に位置決めすることができる。
【0011】
前記のすべての構成においては、前記軸力発生部材が、シリンダと、前記シリンダの内部を軸方向に移動可能なピストンを有する油圧シリンダ装置である構成とするのが好ましい。このようにすると、油圧シリンダ装置に供給される油圧の調整により、両フレーム間の締結および締結解除を容易に行うことができる。
【0012】
前記油圧シリンダ装置を有する構成においては、前記シリンダが、内径側に配置される内筒と、外径側に配置される外筒と、前記内筒と前記外筒を軸方向に相対移動不能に一体化する止め輪と、を有しており、前記止め輪の取り付け位置が、前記内筒および前記外筒の軸方向範囲の内側にある構成とするのが好ましい。このようにすると、内筒と外筒を一部材で構成したシリンダと比較して各筒の形状がシンプルとなり、容易に加工することができる。このため、製造コストを抑制できる可能性がある。また、締結時に上部フレームの上面には内筒または外筒のみが接触して止め輪はこの上面には接触しないため、接触に伴う軸力によって止め輪が損傷するのを防止することができる。
【0013】
前記油圧シリンダ装置を有する構成においては、前記第一のフレームがコーンクラッシャの上部フレーム、前記第二のフレームが前記コーンクラッシャの下部フレームであって、前記上部フレームおよび前記下部フレームに、前記軸体、前記位置決め機構、前記油圧シリンダ装置、および、前記反力部材が周方向に沿って複数配置されており、前記各油圧シリンダ装置を作動させる作動油が、作動油供給源から、前記周方向の一方向と、前記一方向とは逆向きの逆方向の両方向に分岐して環状に供給されている構成とするのが好ましい。このようにすると、複数の油圧シリンダ装置に対して一方向のみから作動油を供給する場合と比較して、極力速やかに作動油の供給を完了することができる。このため、コーンクラッシャの上部フレームと下部フレームを周方向の全周に亘って均等に締結することができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、この発明においては、
軸方向に延びる穴が形成された第一のフレームと、前記第一のフレームと軸方向に対向し、軸方向に延びる穴が形成された第二のフレームのそれぞれの前記穴に軸方向に延びる軸体を挿し込む工程と、
前記軸体を前記第一のフレームまたは前記第二のフレームのいずれか一方に対し軸方向に位置決めする工程と、
前記軸体に、軸方向長さが可変の軸力発生部材と、前記軸力発生部材と軸方向に隣り合うように、前記軸力発生部材の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力部材と、を設ける工程と、
前記軸力発生部材の長さを延ばし、前記反力部材から前記軸力発生部材に作用した前記反力によって、前記第一のフレームまたは前記第二のフレームの他方に対し、前記第一のフレームと前記第二のフレームが互いに接近するように軸力を与える工程と、
を有する締結方法を構成した。
【0015】
このようにすると、ボルトで締結する従来のフレーム形状を変えることなく、軸力発生部材の作用によって両フレーム同士を締結することができる。このため、フレーム形状が多品種化することなく、そのための保管スペースの増大や管理の煩雑化に伴う在庫管理コストを抑制することができる。また、軸体に第一のフレームと第二のフレームを挿し込んだ上で、この軸体に軸力発生部材と反力部材を設け、この軸力発生部材を軸方向に伸縮させるだけでフレーム間の締結および締結解除を行うことができ、上記特許文献1、2で必要だった両フレームの上下方向の位置決めやピストンロッドと係止部の係合作業が不要である。このため、フレーム間の締結および解除作業を簡便かつ低コストで行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、上記のように締結構造および締結方法を構成したので、フレーム間の締結および解除作業を簡便かつ低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明に係る締結構造(第一実施形態)を採用したコーンクラッシャの一例を示す正面図
【
図2】
図1に示す締結構造の断面図であって、(a)は油圧シリンダ装置の軸方向長さを縮めた状態、(b)は油圧シリンダ装置の軸方向長さを伸ばした状態
【
図4】
図2(a)(b)に示す締結構造の変形例の断面図であって、(a)は油圧シリンダ装置の軸方向長さを縮めた状態、(b)は油圧シリンダ装置の軸方向長さを伸ばした状態
【
図5】この発明に係る締結構造(第二実施形態)の断面図
【
図6】この発明に係る締結構造(第三実施形態)の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る締結構造1の第一実施形態を図面に基づいて説明する。この締結構造1は、
図1に示すように、例えばコーンクラッシャ2の機体フレームを構成する第一のフレーム3(以下、上部フレームと称し、第一のフレーム3と同じ符号を付する。)と第二のフレーム4(以下、下部フレームと称し、第二のフレーム4と同じ符号を付する。)を締結する際に適用される。なお、以下においては、締結構造1をコーンクラッシャ2に適用した例について説明するが、この締結構造1は、他の機械装置のフレーム同士の締結にも適用可能である。
【0019】
この締結構造1は、
図2(a)に示すように、軸方向に延びる穴5が形成された上部フレーム3と、上部フレーム3と軸方向に対向し、軸方向に延びる穴6が形成された下部フレーム4と、両フレーム3、4にそれぞれ形成された穴5、6に挿し込まれる軸方向に延びる軸体7と、軸体7を下部フレーム4に対し軸方向に位置決めする位置決め機構8と、軸体7に設けられた軸方向長さが可変の軸力発生部材9と、軸力発生部材9と軸方向に隣り合うように軸体7に設けられ、軸力発生部材9の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力部材10と、を有し、軸力発生部材9に作用した反力によって、上部フレーム3に対し、上部フレーム3と下部フレーム4が互いに接近するように軸力を与える機能を有している。
【0020】
軸体7は、軸方向に延びる棒状の部材である。その軸方向の両端(上端部と下端部)には、雄ねじ部11が形成されている。
【0021】
位置決め機構8は、軸体7の下端部に形成された雄ねじ部11を、下部フレーム4の穴6に形成された雌ねじ部12にねじ込むことで構成されている。この位置決め機構8により、下部フレーム4と軸体7の軸方向の相対位置が位置決めされる。
【0022】
軸力発生部材9は、この実施形態では油圧シリンダ装置(以下、軸力発生部材9と同じ符号を付する。)である。この油圧シリンダ装置9は、軸心を通る貫通孔と上向きに開口する凹部が形成されたシリンダ13と、軸心を通る貫通孔が形成されシリンダ13の凹部内を軸方向に移動可能なピストン14と、を有する。シリンダ13の内面には、シリンダ13からのピストン14の抜け出しを防止するピストンストッパ15が設けられている。ピストン14の上部には、軸心を通る貫通孔が形成されピストン14の上下動とともに上下動するシリンダカバー16が設けられている。このシリンダカバー16は、シリンダ13の上面をカバーして、このシリンダ13の内部に設けられたピストンストッパ15を防塵する作用を有する。
【0023】
シリンダ13内に作動油が供給されていない状態では、
図2(a)に示すように、ピストン14がシリンダ13に形成された凹部の底部に位置し、油圧シリンダ装置9の軸方向長さが最短となる。その一方で、シリンダ13に形成された油孔17から作動油を供給すると、
図2(b)に示すように、ピストン14が作動油の油圧によって上昇し、油圧シリンダ装置9の軸方向長さが延びた状態となる。
【0024】
反力部材10は、軸体7の上端側に形成された雄ねじ部11にねじ込まれた反力ナット(以下、反力部材10と同じ符号を付する。)である。反力ナット10は、油圧シリンダ装置9の上面に当接するようにねじ込まれている。なお、必要に応じて、反力ナット10と油圧シリンダ装置9との間にスペーサが介在する構成とすることもできる。
【0025】
図1に示すコーンクラッシャ2においては、
図3に示すように、上部フレーム3および下部フレーム4に、軸体7、位置決め機構8、油圧シリンダ装置9、および、反力ナット10によって構成される締結構造1が周方向の全周に亘って20か所に配置されている。周方向に隣り合う油圧シリンダ装置1の油孔17は、作動油配管18によって互いに接続されている。この作動油配管18は、油圧源(図示せず)から油圧が供給されるウェッジロック機構(図示せず)から分岐されたロックシリンダ配管に接続されている。これにより、作動油は、作動油供給源から周方向の一方向(
図3中の矢印r1を参照)と、一方向とは逆向きの逆方向(
図3中の矢印r2を参照)の両方向に分岐して供給される。
【0026】
作動油配管18の一部には、作動油供給源から作動油を供給する際に作動油配管18内の空気を抜くためのエア抜きバルブ19が設けられている。また、配管途中にはデジタル圧力計(図示せず)が設けられており、作動油配管18内の油圧が設定圧力よりも低下すると油圧ポンプ(図示せず)を運転して再加圧する制御が行われる。なお、締結構造1の配置数は、コーンクラッシャ2のサイズなどによって適宜変更することができる。
【0027】
上記の締結構造1を用いた締結方法について説明する。まず、軸方向に延びる穴5が形成された上部フレーム3と、上部フレーム3と軸方向に対向し、軸方向に延びる穴6が形成された下部フレーム4のそれぞれの穴5、6に、上端部と下端部に雄ねじ部11が形成された軸体7を挿し込む。そして、下部フレーム4の穴6に形成された雌ねじ部12に、軸体7の下端部に形成された雄ねじ部11をねじ込み、下部フレーム4と軸体7の軸方向の相対位置を位置決めする。
【0028】
次に、軸体7に、軸方向長さが可変の油圧シリンダ装置9を挿し込んだ上で、油圧シリンダ装置9と軸方向に隣り合うように、油圧シリンダ装置9の長さを延ばした際に軸方向の反力を発生させる反力ナット10を軸体7の上端部に形成された雄ねじ部11にねじ込む。そして、油圧シリンダ装置9に油圧を与えてその長さを延ばし、反力ナット10から油圧シリンダ装置9に作用した反力によって、上部フレーム3に対し、上部フレーム3と下部フレーム4が互いに接近するように軸力を与えて、上部フレーム3と下部フレーム4を締結する。
【0029】
上部フレーム3と下部フレーム4の締結を解除するには、油圧シリンダ装置9に供給される油圧を減圧してその長さを短くした上で反力ナット10を取り外す。そして、軸体7から油圧シリンダ装置9を引き抜き、上部フレーム3と下部フレーム4から軸体7を取り外す。
【0030】
上記の実施形態に係る締結構造1は、ボルトで締結する従来のフレーム形状を変えることなく、油圧シリンダ装置9の作用によって両フレーム3、4同士を締結することができ、フレーム形状を多品種化する必要がない。このため、保管スペースの増大や管理の煩雑化に伴う在庫管理コストを抑制することができる。
【0031】
また、上記の実施形態に係る締結構造1は、位置決め機構8が、軸体7に形成された雄ねじ部11を、下部フレーム4の穴6に形成された雌ねじ部12にねじ込むことで構成されているので、軸体7と下部フレーム4とを軸方向に容易にかつ確実に位置決めすることができる。
【0032】
また、上記の実施形態に係る締結構造1は、軸力発生部材9が、シリンダ13と、シリンダ13の内部を軸方向に移動可能なピストン14を有する油圧シリンダ装置9である構成としたので、油圧シリンダ装置9に供給される油圧の調整により、両フレーム3、4間の締結および締結解除を容易に行うことができる。
【0033】
また、上記の実施形態に係る締結構造1は、各油圧シリンダ装置9を作動させる作動油が、作動油供給源から、周方向の一方向と、一方向とは逆向きの逆方向の両方向に分岐して環状に供給されている構成としたので、複数の油圧シリンダ装置9に対して一方向のみから作動油を供給する場合と比較して、極力速やかに作動油の供給を完了することができる。このため、コーンクラッシャ2の上部フレーム3と下部フレーム4を周方向の全周に亘って均等に締結することができる。
【0034】
また、上記の実施形態に係る締結方法は、軸体7に上部フレーム3と下部フレーム4を挿し込んだ上で、この軸体7に油圧シリンダ装置9と反力ナット10を設け、この油圧シリンダ装置9を軸方向に伸縮させるだけでフレーム3、4間の締結および締結解除を行うことができる。このため、フレーム3、4間の締結および解除作業を簡便かつ低コストで行うことができる。また、反力ナット10の軸体7へのねじ込みは、油圧シリンダ装置9の位置決めができればよく、小さな手ハンマーで反力ナット10を回転させるスパナを軽く打撃する程度の固定でよいため、作業者の負担を軽減することができる。
【0035】
図2(a)(b)に示した油圧シリンダ装置9はシリンダ13を一部材で構成したが、
図4(a)(b)に示すように、シリンダ13を内径側に配置される内筒13aと、外径側に配置される外筒13bと、内筒13aと外筒13bを軸方向に相対移動不能に一体化する止め輪13cと、を有する構成とすることもできる。止め輪13cの取り付け位置は、内筒13aおよび外筒13bの軸方向範囲の内側となっており、上部フレーム3の上面には内筒13aのみが接触するように構成されている。
【0036】
このように油圧シリンダ装置9を構成すると、内筒13aと外筒13bを一部材で構成したシリンダ13(
図2(a)などを参照)と比較して各筒13a、13bの形状がシンプルとなり、容易に加工することができる。このため、製造コストを抑制できる可能性がある。また、締結時に上部フレーム3の上面には内筒のみ13aが接触して止め輪13cはこの上面には接触しないため、接触に伴う軸力によって止め輪13cが損傷するのを防止することができる。
【0037】
この発明に係る締結構造1の第二実施形態を
図5に示す。この締結構造1は、上部フレーム3の穴5に雌ねじ部12を形成し、この雌ねじ部12に軸体7の上端部に形成された雄ねじ部11をねじ込み、上部フレーム3と軸体7の軸方向の相対位置を位置決めするとともに、軸体7の下部フレーム4側に油圧シリンダ装置9と反力ナット10を設けた点で第一実施形態の構成と異なる。この第二実施形態においても、上記と同様に、油圧シリンダ装置9の長さを延ばすことによって、反力ナット10から油圧シリンダ装置9に作用した反力によって、下部フレーム4に対し、上部フレーム3と下部フレーム4が互いに接近するように軸力を与えて、両フレーム3、4を締結することができる。
【0038】
この発明に係る締結構造1の第三実施形態を
図6に示す。この締結構造1は、位置決め機構8が、軸体7の下端部に形成された雄ねじ部11を下部フレーム4に形成された穴6に挿通および突出させた上で、その突出部に止めナット20をねじ込むことで構成するとともに、軸体7の上部フレーム3側に油圧シリンダ装置9と反力ナット10を設けた点で、第一実施形態および第二実施形態の構成と異なる。この第三実施形態においても、上記と同様に、軸体7と下部フレーム4とを軸方向に容易にかつ確実に位置決めすることができるとともに、油圧シリンダ装置9の長さを延ばすことによって、反力ナット10から油圧シリンダ装置9に作用した反力によって、上部フレーム3に対し、上部フレーム3と下部フレーム4が互いに接近するように軸力を与えて、両フレーム3、4を締結することができる。
【0039】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1 締結構造
2 コーンクラッシャ
3 第一のフレーム(上部フレーム)
4 第二のフレーム(下部フレーム)
5、6 穴
7 軸体
8 位置決め機構
9 軸力発生部材(油圧シリンダ装置)
10 反力部材(反力ナット)
11 雄ねじ部
12 雌ねじ部
13 シリンダ
13a 内筒
13b 外筒
13c 止め輪
14 ピストン
15 ピストンストッパ
16 シリンダカバー
17 油孔
18 作動油配管
19 エア抜きバルブ
20 止めナット