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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135791
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20240927BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B63H21/38 B
F02M37/00 341D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046660
(22)【出願日】2023-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)販売日(公開日) 令和4年12月16日(引渡し日) 販売した場所(納品・引渡し場所) 福岡県北九州市門司区西海岸1丁目2-7、門司4,5号岸壁 販売先 株式会社商船三井 (東京都港区虎ノ門2丁目1番1号) 運用先 株式会社フェリーさんふらわあ (大分県大分市生石5丁目3番1号) 公開者 三菱造船株式会社 株式会社商船三井 株式会社フェリーさんふらわあ
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 知得
(57)【要約】
【課題】船内空間が小さくなるのを抑えつつ、燃料タンクと船内空間との間の防火性能を確保する。
【解決手段】船舶は、一対の舷側、及び上甲板を有し、上甲板の下側に船内空間が形成された船体と、上甲板上に配置された燃料タンクと、を備え、燃料タンクは、燃料タンク本体と、上甲板に固定され、燃料タンク本体を下方から支持するタンク支持部と、を備え、燃料タンク本体は、燃料タンク本体の下端と上甲板の上面との間に、900mm以上2000mm以下の間隔をあけて配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の舷側、及び上甲板を有し、前記上甲板の下側に船内空間が形成された船体と、
前記上甲板上に配置された燃料タンクと、を備え、
前記燃料タンクは、
燃料タンク本体と、
前記上甲板に固定され、前記燃料タンク本体を支持するタンク支持部と、を備え、
前記燃料タンク本体は、前記燃料タンク本体の下端と前記上甲板の上面との間に、900mm以上2000mm以下の間隔をあけて配置されている
船舶。
【請求項2】
前記タンク支持部は、
前記上甲板上に設けられ、鉛直方向に所定の厚さを有した基台と、
前記基台上に設けられ、前記燃料タンク本体を下方から支持する支持脚と、を含む
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
鉛直方向から見た際、少なくとも前記燃料タンク本体と重なる領域に配置され、前記上甲板の下面を覆う防熱材を備えた防熱部、を更に備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船体の船首尾方向の中央よりも船首側に配置され、
前記燃料タンクの重量に基づいて設定された質量を有するバラスト部、を更に備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項5】
前記バラスト部は、
前記船体内の底部に形成されたバラスト室と、
前記バラスト室内に貯留された液体と、を含む
請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記バラスト部は、
前記船体内の底部に固定され、前記燃料タンクの重量に基づいて設定された質量を有する質量体を含む
請求項4に記載の船舶。
【請求項7】
前記バラスト部は、前記船体の重心位置を中心として、前記燃料タンクと点対称となる位置を含んで配置されている
請求項4に記載の船舶。
【請求項8】
前記上甲板からさらに上方に向かって延び、居住区を有する上部構造と、
前記燃料タンクと前記上部構造との間に設けられた隔壁と、を更に備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項9】
前記上甲板の下側の前記船内空間に設けられ、複数台の車両を搭載可能な車両甲板を有した車両搭載部、を更に備える
請求項1又は2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船体の船尾部の上甲板上に、燃料タンクを備えた構成の船舶が開示されている。この特許文献1の燃料タンクは、船舶を航行させる推進力を発揮する主機等の燃料となる液化ガスを収容している。燃料タンクは、居住区を有する上部構造に対して船尾側の上甲板上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6966661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料タンクに収容する液化ガスが、例えばLNG(液化天然ガスLNG:Liquefied Natural Gas)等である場合、上甲板の下側に位置する、船体の船内空間との間で、所定の防火設備要件を満たす構造とする必要がある。このため、上甲板の下側、換言すると、船体内に設けられた最上層の甲板上の船内空間の天井面に、上下方向に所定の厚さを有するコファダム(空所)を形成する必要がある。これにより、最上層の甲板上の船内空間の高さが低くなり、船内空間が小さくなってしまう。その結果、例えば、船体内の甲板上に車両を搭載する場合、最上層の甲板上に搭載できる車両の高さが制限を受けることに繋がる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、船内空間が小さくなるのを抑えつつ、燃料タンクと船内空間との間の防火性能を確保できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、燃料タンクと、を備えている。前記船体は、一対の舷側、及び上甲板を有している。前記船体は、前記上甲板の下側に船内空間が形成されている。前記燃料タンクは、前記上甲板上に配置されている。前記燃料タンクは、燃料タンク本体と、タンク支持部と、を備えている。前記タンク支持部は、前記上甲板に固定され、前記燃料タンク本体を支持する。前記燃料タンク本体は、前記燃料タンク本体の下端と前記上甲板の上面との間に、900mm以上2000mm以下の間隔をあけて配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、船内空間が小さくなるのを抑えつつ、燃料タンクと船内空間との間の防火性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶に設けられた燃料タンクを示す平面図である。
図3】本開示の実施形態に係る燃料タンクを示す図であり、図2のA-A線に沿う断面図である。
図4】本開示の実施形態の変形例に係る船舶の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、図1図4を参照して説明する。
(船舶の全体構成)
図1図2に示すように、本実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造7と、燃料タンク10と、防熱部25(図2参照)と、隔壁40と、バラスト部30と、を備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種は、例えば、液化ガス運搬船、貨物船、フェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)、客船、観測・調査船等を例示できる。
【0010】
図1に示すように、船体2は、その外殻をなす一対の舷側3A,3Bと、船底4と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有する。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船体2の船首2aと船尾2bとを結ぶ方向である船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0011】
船体2は、その内部に、上甲板5を含む、複数層の甲板を備えている。この実施形態で例示する上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。複数層の甲板のうち、最上層の甲板8Aを含む少なくとも一部は、車両甲板8とされている。本開示の実施形態では、車両甲板8は、上下方向に間隔をあけて複数層設けられている。各車両甲板8には、車両が積載可能となっている。車両甲板8上の船内空間は、車両を搭載する車両搭載部Scとされている。
上部構造7は、船体2の船尾2bに近い側の上甲板5上に形成されている。上部構造7は、居住区を有している。
【0012】
(燃料タンクの構成)
図3は、本開示の実施形態に係る燃料タンクを示す図であり、図2のA-A線に沿う断面図である。
燃料タンク10は、上甲板5上に設けられている。燃料タンク10は、船体2の後部に設けられている。燃料タンク10は、上部構造7に対して船首尾方向FAの船尾2b側に設けられている。燃料タンク10は、燃料タンク本体12と、タンク支持部20と、を備えている。燃料タンク本体12は、船舶1内にて消費する燃料としての液化ガスを貯留可能である。本実施形態の燃料タンク本体12は、例えば船体2内に収容された主機、補機、発電機用エンジン等の燃焼器9の燃料としてLNGを貯留する場合を例示している。
【0013】
図2図3に示すように、本実施形態の燃料タンク本体12は、船幅方向Dwに並べて二つ設けられている。これら二つの燃料タンク本体12は、上甲板5上に配置されると共に、船幅方向Dwの中央に対して、船幅方向Dwの一方の舷側3A側に偏って配置されている。燃料タンク本体12の数は、二つに限らず、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。また、燃料タンク本体12は、船幅方向Dwの他方の舷側3B側に配置されていてもよいし、船幅方向Dwの中央部に配置されていてもよい。
【0014】
本実施形態の燃料タンク本体12は、水平方向に延びる円筒状をなし、船首尾方向FAに延びるように設けられている。また、燃料タンク本体12の形状は、円筒状に限られず、例えば燃料タンク本体12は球形、方形等であってもよい。
【0015】
タンク支持部20は、上甲板5に固定されている。タンク支持部20は、燃料タンク本体12を支持する。タンク支持部20は、基台21と、支持脚22と、を備えている。
【0016】
基台21は、上甲板5上に設けられている。基台21は、例えば、鋼製である。基台21は、鉛直方向Dvに所定の厚さTを有し、上甲板5の上面に沿って船首尾方向FA及び船幅方向Dwに延びている。基台21の厚さTは、例えば、300mm~500mmである。基台21は、鉛直方向Dvから見た際に、少なくとも支持脚22と重なる位置に設けられている。本実施形態の基台21は、鉛直方向Dvから見た際に、二つの燃料タンク本体12の全体と重なるように設けられている。
【0017】
支持脚22は、基台21上に、船首尾方向FAに間隔をあけて複数設けられている。複数の支持脚22は、各燃料タンク本体12を下方から支持している。基台21及び支持脚22によって支持された各燃料タンク本体12は、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間に、900mm以上2000mm以下の間隔K(図3参照)をあけて配置されている。燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間隔Kは、900mm以上1500mm以下としてもよい。さらに、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間隔Kは、900mm以上1000mm以下としてもよい。
【0018】
このように、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間隔Kを、900mm以上とすることで、燃料タンク本体12と上甲板5との間に、鉛直方向Dv(上下方向)に所定の厚さを有するコファダム(空所)に相当する空間が形成される。その一方で、燃料タンク本体12に燃料としての液化ガスを貯留した状態では、その重量が大きくなる。そして、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間隔Kを大きくすると、船舶1の高重心化に繋がってしまう。間隔Kを大きくすると、支持脚22の高さが大きくなるため、支持脚22の強度を確保するのが難しくなる。このため、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間隔Kは、過度に大きくしないのが好ましい。
【0019】
(防熱部の構成)
防熱部25は、鉛直方向Dvから見て、少なくとも燃料タンク本体12と重なる領域に配置されている。図3に示すように、本実施形態の防熱部25は、鉛直方向Dvから見た際、二つの燃料タンク本体12において、船首尾方向FAの船首2a側の一部と重なる領域に配置されている。防熱部25は、上甲板5の下面を覆う防熱材を備えている。防熱材としては、例えば、ロックウール等を用いることができる。防熱部25は、上甲板5下面のうち、燃料タンク本体12の直下の船体2内の船内空間に臨む部分を、防熱材で覆うことによって形成されている。
【0020】
本実施形態の防熱部25は、上甲板5の下面5bと、上甲板5の下側に設けられた補強のための鉄骨梁60とを、下方から覆うように形成されている。防熱部25の厚さTは、例えば20mm~25mmとすることができる。本実施形態における防熱部25の厚さT2の一例としては、例えば40mm程度を挙げることができる。このような防熱部25の厚さT2は、防熱のために上甲板の下側に設ける一般的なコファダムの鉛直方向Dvの寸法と比較して小さい。
【0021】
(隔壁の構成)
図2に示すように、隔壁40は、前部隔壁41と、側部隔壁42A,42Bと、を有している。
前部隔壁41は、二つの燃料タンク本体12を備えた燃料タンク10に対して、船首尾方向FAの船首2a側に配置されている。前部隔壁41は、上甲板5の上面から上方に向かって立ち上がり、船幅方向Dwに延びている。本実施形態の前部隔壁41は、燃料タンク10と上部構造7との間に設けられている。
【0022】
側部隔壁42A,42Bは、前部隔壁41の船幅方向Dwの両端部から、船首尾方向FAの船尾2b側に延びている。側部隔壁42A,42Bは、上甲板5の上面から上方に向かって立ち上がっている。側部隔壁42Aは、上甲板5上において、二つの燃料タンク本体12に対して、船幅方向Dwの一方の舷側3A側に配置されている。側部隔壁42Bは、上甲板5上において、二つの燃料タンク本体12に対して、船幅方向Dwの他方の舷側3B側に配置されている。図1に示すように、側部隔壁42A、42Bは、船幅方向Dwから見た際に、二つの燃料タンク本体12の少なくとも一部を覆うように設けられている。本実施形態における前部隔壁41と、側部隔壁42A,42Bとは、同一高さで且つ一定の高さを有している場合を例示しているが、この構成に限られない。例えば、前部隔壁41と、側部隔壁42A,42Bとの互いの高さを異なるようにしたり、前部隔壁41と側部隔壁42A,42Bとの高さを変化させたりしてもよい。
【0023】
(バラスト部30の構成)
バラスト部30は、船体2の船首尾方向FAの中央2cよりも船首2a側に配置されている。バラスト部30は、船体2の重心位置Gを中心として、燃料タンク10と点対称となる位置Pを含んで配置されている。なお、バラスト部30の配置は、重心位置Gを中心として燃料タンク10と点対称な位置に限られない。バラスト部30は、例えば、燃料タンク10の重心位置と、船体2の重心位置Gを通る直線(図1中、一点鎖線で示す)上のうち、船体2内で最も燃料タンク10から離れた位置に配置してもよい。船体2内で最も燃料タンク10から離れた位置としては、船体2内の底部を例示できる。
【0024】
本実施形態では、バラスト部30は、内底板6上に設けられている。内底板6は、船底外板とともに二重底を形成している。バラスト部30は、左右対称に一対の舷側3A,3Bに沿って一対設けられている。バラスト部30は、内底板6と船底4の船底外板との間の二重底の部分に設けられていてもよい。本実施形態で例示する二つの燃料タンク本体12は、上甲板5上に配置され、且つ船幅方向Dwの中央に対して、船幅方向Dwの一方の舷側3A側に偏って配置されている。このため、本実施形態の燃料タンク10と点対称となる位置は、船幅方向Dwの中央に対して、船幅方向Dwの他方の舷側3B側に偏った位置となっている。
【0025】
バラスト部30は、燃料タンク10の重量に基づいて設定された質量を有している。ここで、燃料タンク10の重量とは、燃料タンク本体12内が空の状態であるときの重量であってもよいし、燃料タンク本体12内に液化ガスが満載された状態であるときの重量であってもよい。さらに、燃料タンク10の重量は、燃料タンク本体12内に液化ガスが所定量貯留された状態であるときの重量であってもよい。
本実施形態で例示するバラスト部30は、バラスト室31と、液体32と、を含んでいる。バラスト室31は、船体2内の底部に形成されている。バラスト室31は、内底板6と、内底板6の上側に配置された甲板との間に設けられた区画壁31wの内側に形成されている。液体32は、バラスト室31内に貯留されている。液体32としては、海水、清水等があげられる。バラスト部30の質量は、バラスト室31内に液体32を所定量入れた状態の質量である。
【0026】
(作用効果)
上記実施形態の船舶1では、燃料タンク本体12が、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間に、900mm以上2000mm以下の間隔Kをあけて配置されている。このため、燃料タンク本体12と上甲板5との間に、鉛直方向Dv(上下方向)に所定の厚さを有するコファダム(空所)に相当する空間を形成することができる。これにより、燃料タンク10と船内空間との間の防火性能が確保され、上甲板5の下側、つまり、船体2内に設けられた最上層の甲板8A上の船内空間の天井面にコファダムを形成する必要がなくなる。したがって、船体2内の最上層の甲板8A上の船内空間の上下方向の寸法が狭められることが抑えられる。その結果、船内空間が小さくなるのを抑えつつ、燃料タンク10と船内空間との間の防火性能を確保することが可能となる。
【0027】
また、上記実施形態では、タンク支持部20が、基台21と、基台21上に設けられた支持脚22とを含んでいる。このように、基台21を設けることで、支持脚22の上下方向の高さを小さく抑えることができる。その結果、燃料タンク本体12を安定的に支持することができる。
【0028】
さらに、上記実施形態では、鉛直方向Dvから見た際に、少なくとも燃料タンク本体12と重なる領域に、上甲板5の下面を覆う防熱材を備えた防熱部25を設けている。これにより、燃料タンク10と、上甲板5の下側の船内空間との間の防火性能を高めることができる。例えば、防熱材を上甲板5上に設けた場合には、波浪や雨雪等によって、防熱材が濡れて劣化してしまう可能性があるが、防熱材を上甲板5の下側に設けることで、防熱材が濡れて劣化することを抑えられる。
【0029】
また、上記実施形態では、船体2の船首尾方向FAの中央2cよりも船首2a側に、燃料タンク10の重量に基づいて設定された質量を有するバラスト部30を備えている。これにより、上甲板5上の上部構造7よりも船尾2bに近い側に燃料タンク10が配置される場合であっても、船体2の船首尾方向FAにおける重量バランスを平衡させて復原性などが低下することを抑えられる。
【0030】
さらに、上記実施形態では、バラスト室31内に液体32を貯留して燃料タンク10との重量バランスをとるようにしたため、容易にバランス調整することが可能となる。
【0031】
また、上記実施形態では、バラスト部30を、船体2の重心位置Gを中心として、燃料タンク10と点対称となる位置Pを含んで配置している。そのため、上甲板5上に設けられた燃料タンク10に対し、バラスト部30により効率よく船体2の重量バランスを平衡状態にすることができる。
【0032】
また、上記実施形態では、燃料タンク10と上部構造7との間に隔壁40が設けられている。この隔壁40により、万が一燃料タンク10に貯留される燃料が漏れた場合であっても、燃料が上部構造7に及ぶことを効果的に抑えることができる。また、この隔壁40は、上部構造7に対する防火区画とすることもできる。したがって、上部構造7のうち燃料タンク10に対向する側の防火性能を確保することによるコスト増加を抑制ができる。
【0033】
また、上記実施形態では、燃料タンク本体12が、燃料タンク本体12の下端12bと上甲板5の上面5tとの間に、900mm以上2000mm以下の間隔Kをあけて配置されることで、船体2内の最上層の車両甲板8上に形成された車両搭載部Scの上下方向の寸法が狭められることが抑えられる。したがって、車両搭載部Scに搭載される車両の車高が制限されることを抑え、船舶1における車両搭載性を高めることができる。
【0034】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、バラスト部30として、バラスト室31に液体32を貯留した構成を例示したが、これに限られない。
例えば、図4に示すように、バラスト部30として、船体2内の底部に固定されたいわゆる固定バラストとしての質量体35を設けるようにしてもよい。質量体35は、燃料タンク10の重量に基づいて設定された質量を有している。このような質量体35としては、コンクリート、金属ブロック、船体2内の内底板6等の上に重ねて置いた鋼板、船体2内の内底板6等の厚みを大きくしたもの、船体2内の内底板6等の上に載置した機器等が挙げられる。このような質量体35としては、船体2内のスペースの観点から、船体2の浮かぶ周囲の水よりも比重の高いものとするのが好ましい。このように、バラスト部30として、質量体35を備えることで、上甲板5上に設けられた燃料タンク10によって船体2のバランスが低下することが抑えられる。
【0035】
上記実施形態では、基台21を設ける場合について説明したが、基台21は、必要に応じて設ければ良く省略してもよい。また、燃料タンク本体12を下方から支持する支持脚22を備える場合について説明したが、燃料タンク本体12は、下方から支持されるものに限られない。
【0036】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係る船舶1は、一対の舷側3A、3B、及び上甲板5を有し、前記上甲板5の下側に船内空間が形成された船体2と、前記上甲板5上に配置された燃料タンク10と、を備え、前記燃料タンク10は、燃料タンク本体12と、前記上甲板5に固定され、前記燃料タンク本体12を支持するタンク支持部20と、を備え、前記燃料タンク本体12は、前記燃料タンク本体12の下端12bと前記上甲板5の上面5tとの間に、900mm以上2000mm以下の間隔Kをあけて配置されている。
【0038】
これにより、燃料タンク本体12と上甲板5との間に、上下方向に所定の厚さを有するコファダム(空所)に相当する空間を形成することができ、燃料タンク10と船内空間との間の防火性能が確保される。したがって、上甲板5の下側、つまり、船体2内に設けられた最上層の甲板8A上の船内空間の天井面にコファダムを形成する必要がなくなる。したがって、船体2内の最上層の甲板8A上の船内空間の上下方向の寸法が狭められることが抑えられる。その結果、船内空間が小さくなるのを抑えつつ、燃料タンク10と船内空間との間の防火性能を確保できる。
【0039】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記タンク支持部20は、前記上甲板5上に設けられ、鉛直方向Dvに所定の厚さを有した基台21と、前記基台21上に設けられ、前記燃料タンク本体12を下方から支持する支持脚22と、を含んでいる。
このような基台21を設けることで、支持脚22の上下方向の高さを小さく抑えることができる。その結果、燃料タンク本体12を安定的に支持することができる。
【0040】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)又は(2)の船舶1であって、鉛直方向Dvから見た際、少なくとも前記燃料タンク本体12と重なる領域に配置され、前記上甲板5の下面を覆う防熱材を備えた防熱部25、を更に備えている。
これにより、燃料タンク10と、上甲板5の下側の船内空間との間の防火性能を高めることができる。防熱材を上甲板5上に設けた場合、波浪や雨雪等によって、防熱材が濡れて劣化してしまう可能性があるが、防熱材を上甲板5の下側に設けることで、防熱材が濡れて劣化することを抑えられる。
【0041】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(1)から(3)の何れか一つの船舶1であって、前記船体2の船首尾方向の中央よりも船首側に配置され、前記燃料タンク10の重量に基づいて設定された質量を有するバラスト部30、を更に備えている。
これにより、船体2の重量バランスを平衡させて復原性などが低下することを抑えられる。
【0042】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(4)の船舶1であって、前記バラスト部30は、前記船体2内の底部に形成されたバラスト室31と、前記バラスト室31内に貯留された液体32と、を含んでいる。
これにより、船体2の重量バランスを容易に調整することができる。
【0043】
(6)第6の態様に係る船舶1は、(4)の船舶1であって、前記バラスト部30は、前記船体2内の底部に固定され、前記燃料タンク10の重量に基づいて設定された質量を有する質量体35を含んでいる。
質量体35としては、コンクリート、金属ブロック、船体2内の甲板上に重ねて置いた鋼板、船体2内の鋼板の厚みを大きくしたもの、船体2内の甲板上に載置した機器が挙げられる。
これにより、より小さいスペースで船体2の重量バランスを平衡状態にすることができる。
【0044】
(7)第7の態様に係る船舶1は、(4)から(6)の何れか一つの船舶1であって、前記バラスト部30は、前記船体2の重心位置Gを中心として、前記燃料タンク10と点対称となる位置を含んで配置されている。
これにより、上甲板5上に設けられた燃料タンク10に対し、バラスト部30により効率よく船体2の重量バランスを平衡状態にすることができる。
【0045】
(8)第8の態様に係る船舶1は、(1)から(7)の何れか一つの船舶1であって、前記上甲板5からさらに上方に向かって延び、居住区を有する上部構造7と、前記燃料タンク10と前記上部構造7との間に設けられた隔壁40と、を更に備えている。
これにより、万が一燃料タンク10に貯留される燃料が漏れた場合であっても、燃料が上部構造7に及ぶことを、効果的に抑えることができる。また、この隔壁40は、上部構造7に対する防火区画とすることもできる。したがって、上部構造7のうち燃料タンク10に対向する側の防火性能を確保することによるコスト増加を抑制ができる。
【0046】
(9)第9の態様に係る船舶1は、(1)から(8)の何れか一つの船舶1であって、前記上甲板5の下側の前記船内空間に設けられ、複数台の車両を搭載可能な車両甲板8を有した車両搭載部Scを更に備えている。
【0047】
これにより、船体2内の最上層の車両甲板8上に形成された車両搭載部Scの上下方向の寸法が狭められることが抑えられる。したがって、車両搭載部Scに搭載される車両の車高が制限されることを抑え、船舶1における車両搭載性を高めることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…船舶 2…船体 2a…船首 2b…船尾 2c…中央 3A,3B…舷側 4…船底 5…上甲板 5b…下面 5t…上面 6…内底板 7…上部構造 8…車両甲板 8A…最上層の甲板 9…燃焼器 10…燃料タンク 12…燃料タンク本体 12b…下端 20…タンク支持部 21…基台 22…支持脚 25…防熱部 30…バラスト部 31…バラスト室 31w…区画壁 32…液体 35…質量体 40…隔壁 41…前部隔壁 42A、42B…側部隔壁 60…鉄骨梁 Dv…鉛直方向 Dw…船幅方向 FA…船首尾方向 G…重心位置 Sc…車両搭載部 T…厚さ T2…厚さ
図1
図2
図3
図4