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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135793
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】時計用装飾部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20240927BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240927BHJP
   G04B 19/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G04B37/22 J
G04B19/06 B
G04B19/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046662
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】高崎 康太郎
(57)【要約】
【課題】優れた意匠性を有する時計用装飾部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】時計用装飾部材は、透光部材と、透光部材の一方の面を覆い、所定のパターンを表す開口が形成された誘電体多層膜と、誘電体多層膜を覆う遮光層と、透光性の塗料によって形成され、誘電体多層膜の開口を覆う第1印刷層と、第1印刷層を覆う第2印刷層と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光部材と、
前記透光部材の一方の面を覆い、所定のパターンを表す開口が形成された誘電体多層膜と、
前記誘電体多層膜を覆う遮光層と、
透光性の塗料によって形成され、前記誘電体多層膜の開口を覆う第1印刷層と、
前記第1印刷層を覆う第2印刷層と、
を有することを特徴とする時計用装飾部材。
【請求項2】
前記第1印刷層は、さらに前記遮光層を覆う、
請求項1に記載の時計用装飾部材。
【請求項3】
前記第1印刷層を形成する塗料は、夜光塗料である、
請求項1に記載の時計用装飾部材。
【請求項4】
前記誘電体多層膜は、複数の薄膜を積層させて形成され、
前記複数の薄膜は、第1の屈折率を有する第1の薄膜と前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の薄膜とを含む、
請求項1に記載の時計用装飾部材。
【請求項5】
前記第2印刷層は、遮光性を有する、
請求項1に記載の時計用装飾部材。
【請求項6】
透光部材の一方の面に誘電体多層膜を形成し、
前記誘電体多層膜を覆う遮光層を形成し、
前記誘電体多層膜および前記遮光層に所定のパターンを表す開口を形成し、
透光性の塗料によって、前記誘電体多層膜および前記遮光層の開口を覆う第1印刷層を形成し、
前記第1印刷層を覆う第2印刷層を形成する、
ことを含む時計用装飾部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用装飾部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計用装飾部材において、意匠性を高めるために様々な構造が提案されている。例えば、特許文献1には、透明カバーガラスの下部にカラー膜を形成するとともに夜光塗料を塗布した時計の回転ベゼル体について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-1247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
時計用装飾部材において、さらに意匠性を高めることが求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、優れた意匠性を有する時計用装飾部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る時計用装飾部材は、透光部材と、透光部材の一方の面を覆い、所定のパターンを表す開口が形成された誘電体多層膜と、誘電体多層膜を覆う遮光層と、透光性の塗料によって形成され、誘電体多層膜の開口を覆う第1印刷層と、第1印刷層を覆う第2印刷層と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、第1印刷層は、さらに遮光層を覆うことが好ましい。
【0008】
また、第1印刷層を形成する塗料は、夜光塗料であることが好ましい。
【0009】
また、誘電体多層膜は、複数の薄膜が積層されて形成され、複数の薄膜は、第1の屈折率を有する第1の薄膜と第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の薄膜とを含むことが好ましい。
【0010】
また、第2印刷層は、遮光性を有することが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る時計用装飾部材の製造方法は、透光部材の一方の面に誘電体多層膜を形成し、誘電体多層膜を覆う金属層を形成し、誘電体多層膜および金属層に所定のパターンの開口を形成し、透光性の塗料によって、誘電体多層膜および金属層の開口を覆う第1印刷層を形成し、第1印刷層を覆う第2印刷層を形成する、ことを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る時計用装飾部材は、優れた意匠性を有する。本発明に係る時計用装飾部材の製造方法は、優れた意匠性を有する時計用装飾部材を製造することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】時計1の平面図である。
図2】ベゼル7の平面図である。
図3】ベゼル7の模式的な断面図である。
図4】ベゼル7の製造方法の流れの例を示すフロー図である。
図5】(A)は遮光層形成工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図であり、(B)は開口形成工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図である。
図6】ベゼル7の製造方法の流れの他の例を示すフロー図である。
図7】(A)はマスク形成工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図であり、(B)は遮光層形成工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図であり、(C)はマスク除去工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図である。
図8】実施例に係るベゼルの反射特性を示す図である。
図9】実施例に係るベゼルを撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る時計1の平面図である。時計1は、腕時計であり、外装ケース2、文字板3、指針4、見返し5、風防ガラス6、ベゼル7等を有する。ベゼル7は、時計用装飾部材の一例である。
【0016】
外装ケース2は、時計1の各構成を収容する略円筒状の部材である。外装ケース2は、チタン、ステンレス等の金属、セラミックまたは樹脂により形成される。外装ケース2の側面の、時計1の6時側および12時側には、バンド(不図示)を取り付けるための取付部21がそれぞれ形成される。また、外装ケース2の側面の、時計1の3時側には、外装ケース2に挿通されて時計1のムーブメント(不図示)に接続される竜頭22が配置される。
【0017】
文字板3は、外装ケース2に収容される円板状の部材である。文字板3には、時字31が形成される。時字31は、文字板3への印刷によって形成されてもよく、文字板3に加工によって形成されてもよく、時字31の形状を有する部材を文字板3に配置することによって形成されてもよい。図1に示す例では、文字板3には30度間隔で12個の時字31が形成されている。
【0018】
指針4は、文字板3の上方に配置される時針41、分針42および秒針43を有する。時針41、分針42および秒針43は、ムーブメントから伝達される回転力に従って回転し、時字31を指示することにより時刻を表す。
【0019】
見返し5は、文字板3の外周を覆うように文字板3の上面に配置される環状の部材である。図1に示す例では、見返し5には6度間隔で60個の分目盛り51が形成されている。
【0020】
風防ガラス6は、文字板3および見返し5の上方に配置される、透光性を有する円板状の部材である。風防ガラス6は、例えばサファイアガラス、ミネラルガラス、アクリルガラス等により形成される。
【0021】
ベゼル7は、風防ガラス6を囲むように外装ケース2の上面に配置される環状の部材である。ベゼル7には、所定の装飾パターンPが表示される。図1に示す例では、装飾パターンPとして、都市名を示す文字が表示されている。このような例に限られず、装飾パターンPは任意の文字、記号、図形等であってよい。
【0022】
図2はベゼル7の平面図であり、図3図2のIII-III断面におけるベゼル7の模式的な断面図である。ベゼル7は、透光部材71、誘電体多層膜72、遮光層73、第1印刷層74および第2印刷層75を有する。透光部材71、誘電体多層膜72、遮光層73、第1印刷層74および第2印刷層75は、時計1の正面方向(図3の上方)からこの順に配置される。
【0023】
透光部材71は、透光性を有する環状の部材である。透光部材71は、例えばサファイアガラスにより形成される。好ましくは、透光部材71は、サファイアガラスにより形成される。透光部材71の厚さは、1.2mm以上であることが好ましい。
【0024】
誘電体多層膜72は、透光部材71の一方の面を覆うように、誘電体材料により形成される複数の薄膜を積層させて形成される。複数の薄膜のうちの一部の薄膜は、他の薄膜とは異なる屈折率を有する。すなわち、複数の薄膜は、第1の屈折率を有する第1の薄膜と第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の薄膜とを含む。薄膜を形成する誘電体材料は、例えば、高屈折率材料であるTiO2、Nb25、Ta25、ZrO2、中間屈折率材料であるAl23、低屈折率材料であるSiO2、MgF2等である。誘電体多層膜72は、材料の持つ屈折率とその膜厚により、光の入射角に応じて異なる反射特性を有するため、視線方向に応じて異なる色合いで視認される。
【0025】
遮光層73は、誘電体多層膜72を覆うように形成される。遮光層73は、高い遮光性を有する材料で形成される。遮光層73は、例えば、Cr、Ag、Ti、Zr、Al、Pt、Pd、Rh等の銀白色の金属またはこれらの合金により形成される。遮光層73は、Au、Cu、Au-Cu合金等の有色の金属により形成されてもよい。遮光層73は、TiAlN、TiN、CrN等の窒化金属により形成されてもよい。遮光層73は、DLC(Diamond Like Carbon)等の非金属により形成されてもよい。遮光層73の厚さは、10nm以上であることが好ましい。これにより、遮光層73が高い遮光性を有し、誘電体多層膜72の色合いが明瞭に視認される。
【0026】
誘電体多層膜72および遮光層73には、装飾パターンPを表す開口721および731がそれぞれ形成される。すなわち、誘電体多層膜72の装飾パターンPに対応する領域には開口721が形成され、遮光層73の装飾パターンPに対応する領域には開口731が形成される。これにより、誘電体多層膜72および遮光層73は、装飾パターンPを表す。
【0027】
第1印刷層74は、透光性の塗料によって形成される。第1印刷層74は、誘電体多層膜72の開口721および遮光層73の開口731に充填されることにより、誘電体多層膜72の開口721および遮光層73の開口731を覆う。また、第1印刷層74は、遮光層73を覆う。第1印刷層74の厚さ(遮光層73と第2印刷層75との間の間隔)は、2μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0028】
第1印刷層74を形成する塗料は、透光性の樹脂にアルミン酸塩系、硫化物系等の蓄光顔料を分散させた夜光塗料であることが好ましい。これにより、暗所において装飾パターンPの領域が発光し、装飾パターンPが容易に視認されるとともに、ベゼル7が優れた意匠性を有する。
【0029】
第2印刷層75は、塗料によって形成され、第1印刷層74を覆うように配置される。第2印刷層75を形成する塗料は、高い遮光性を有する塗料である。第2印刷層75を形成する塗料は、白色塗料であることが好ましい。第1印刷層74は透光性の塗料によって形成されるから、第2印刷層75が白色塗料で形成されることにより、装飾パターンPが白色に視認されるようになる。一般に、誘電体多層膜72は特定の色の光を強く反射するため、装飾パターンPが白色に視認されることにより、誘電体多層膜72の色と装飾パターンPの色とが明瞭に区別され、装飾パターンPが容易に視認される。
【0030】
図4は、ベゼル7の製造方法の流れの例を示すフロー図である。
【0031】
最初に、透光部材準備工程(ステップS11)において、透光部材71が準備される。
【0032】
次に、誘電体多層膜形成工程(ステップS12)において、透光部材71の一方の面を覆う誘電体多層膜72が形成される。誘電体多層膜72は、透光部材71の一方の面に複数の薄膜が順次積層されることにより形成される。各薄膜は、真空蒸着により誘電体材料を透光部材71の一方の面に積層させて形成される。各薄膜は、スパッタリング、アークイオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)等により形成されてもよい。薄膜の厚さは、透光部材71の面上の位置に応じて異なってもよい。例えば、薄膜の一部を積層させるときに蒸着を防ぐ遮蔽マスクを用いることにより、薄膜の厚さを位置に応じて異ならせることができる。このように遮蔽マスクで薄膜の厚さを変えた場合、様々な色見を持ったグラデーションカラーを形成することができる。
【0033】
次に、遮光層形成工程(ステップS13)において、誘電体多層膜72を覆う遮光層73が形成される。遮光層73は、蒸着により金属、窒化金属、DLC等の材料を誘電体多層膜72に積層させて形成される。遮光層73は、スパッタリング、アークイオンプレーティング、CVD等により形成されてもよい。
【0034】
図5(A)は、遮光層形成工程の直後のベゼル7の模式的な断面図である。図5(A)に示すように、遮光層形成工程の直後において、誘電体多層膜72および遮光層73は、透光部材71の一方の面に一様に積層される。すなわち、誘電体多層膜72および遮光層73には開口721および731が形成されていない。
【0035】
図4に戻り、次に、開口形成工程(ステップS14)において、誘電体多層膜72および遮光層73に装飾パターンPを表す開口721および731が形成される。開口721および731は、エッチングにより、誘電体多層膜72および遮光層73の装飾パターンPに対応する領域が除去されることにより形成される。エッチングは、レーザ照射または溶液によって行われる。
【0036】
図5(B)は、開口形成工程の直後のベゼル7の模式的な断面図である。図5(B)に示すように、開口形成工程の直後において、誘電体多層膜72の装飾パターンPに対応する領域には開口721が形成され、遮光層73の装飾パターンPに対応する領域には開口731が形成されている。
【0037】
図4に戻り、次に、第1印刷層形成工程(ステップS15)において、誘電体多層膜72および遮光層73の開口721および731を覆う第1印刷層74が形成される。第1印刷層74は、パッド印刷により透光性の塗料を遮光層73に塗布して形成される。第1印刷層74は、スクリーン印刷、塗装等により形成されてもよい。
【0038】
次に、第2印刷層形成工程(ステップS16)において、第1印刷層74を覆う第2印刷層75が形成される。第2印刷層75は、パッド印刷により塗料を第1印刷層74に塗布して形成される。第2印刷層75は、スクリーン印刷、塗装等により形成されてもよい。以上のようにして、ベゼル7が製造される。
【0039】
以上説明したように、ベゼル7は、透光部材71と、透光部材71の一方の面を覆い、装飾パターンPを表す開口721が形成された誘電体多層膜72と、誘電体多層膜72を覆う遮光層73と、透光性の塗料によって形成され、誘電体多層膜72の開口を覆う第1印刷層74と、第1印刷層74を覆う第2印刷層75と、を有する。これにより、ベゼル7は、優れた意匠性を有する。
【0040】
すなわち、誘電体多層膜72は光の入射角に応じて異なる反射特性を有するため、視線方向に応じて異なる色合いで視認される。また、誘電体多層膜72には装飾パターンPを表す開口721が形成され、開口721を覆う第1印刷層74が透光性を有する塗料で形成されるため、装飾パターンPに対応する領域は第2印刷層75に対応する色合いで視認される。装飾パターンPは一定の色合いで、装飾パターンP以外の領域は視線方向に応じて異なる色合いで視認されるため、ベゼル7は優れた意匠性を有する。
【0041】
また、ベゼル7において、第1印刷層74を形成する塗料は、夜光塗料であることが好ましい。第1印刷層74が夜光塗料で形成されることにより、暗所において装飾パターンPの領域が発光し装飾パターンPが容易に視認されるとともに、ベゼル7が明所における場合とは異なる意匠性を有する。
【0042】
また、ベゼル7において、第2印刷層75を形成する塗料は、白色塗料であることが好ましい。一般に、誘電体多層膜は特定の色の光を強く反射して有色で視認されるため、第2印刷層75が白色塗料で形成されることにより、装飾パターンPが容易に視認される。また、第1印刷層74が夜光塗料で形成される場合には、第2印刷層75が白色塗料で形成されることにより、第1印刷層から放射される光が第2印刷層75で強く反射され、装飾パターンPがより容易に視認される。
【0043】
上述した説明では、第1印刷層74は誘電体多層膜72および遮光層73の開口721および731を覆うとともに遮光層73を覆うものとしたが、このような例に限られない。第1印刷層74は、誘電体多層膜72および遮光層73の開口721および731のみを覆い、遮光層73を覆わなくてもよい。すなわち、第1印刷層74は、誘電体多層膜72の開口721および遮光層73の開口731の内部にのみ形成されてもよい。このようにしても、ベゼル7は、優れた意匠性を有する。
【0044】
上述した説明では、誘電体多層膜72および遮光層73の装飾パターンPに対応する領域に開口721および731がそれぞれ形成されることにより、誘電体多層膜72および遮光層73が装飾パターンPを表すものとしたが、このような例に限られない。例えば、装飾パターンPに対応する領域のみに誘電体多層膜72および遮光層73が形成されることにより、誘電体多層膜72および遮光層73が装飾パターンPを表すものとしてもよい。このようにしても、ベゼル7は、優れた意匠性を有する。
【0045】
上述した説明では、ベゼル7は図4のフロー図に示される製造方法により製造されるものとしたが、このような例に限られない。
【0046】
図6は、ベゼル7の製造方法の流れの他の例を示すフロー図である。
【0047】
最初に、透光部材準備工程(ステップS21)において、ステップS11と同様に透光部材71が準備される。
【0048】
次に、マスク形成工程(ステップS22)において、透光部材71の一方の面の装飾パターンPに対応する領域にマスクMが形成される。マスクMは、パッド印刷により樹脂を透光部材71の一方の面に塗布して形成される。マスクMは、スクリーン印刷、塗装等により形成されてもよい。
【0049】
図7(A)は、マスク形成工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図である。図5(A)に示すように、マスク形成工程の直後において、透光部材71の一方の面の装飾パターンPに対応する領域にマスクMが形成されている。
【0050】
図6に戻り、誘電体多層膜形成工程(ステップS23)において、ステップS12と同様に誘電体多層膜72が形成される。このとき、装飾パターンPに対応する領域にはマスクMが形成されているため、誘電体多層膜72は透光部材71の面上ではなくマスクM上に形成される。
【0051】
次に、遮光層形成工程(ステップS24)において、ステップS13と同様に遮光層73が形成される。このとき、装飾パターンPに対応する領域にはマスクMが形成されているため、遮光層73はマスクM上の誘電体多層膜72を覆うように形成される。
【0052】
図7(B)は、遮光層形成工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図である。透光部材71の装飾パターンPに対応する領域にはマスクMが形成されているため、誘電体多層膜72および遮光層73は、透光部材71の一方の面上の装飾パターンPに対応する領域を除いた領域と、マスクM上に形成されている。
【0053】
図6に戻り、マスク除去工程(ステップS25)において、透光部材71の一方の面に形成されたマスクMが、マスクM上に形成された誘電体多層膜72および遮光層73とともに除去される。これにより、誘電体多層膜72および遮光層73に、装飾パターンPを表す開口721および731が形成される。マスクMは、透光部材71がアセトン、エタノール等の有機溶媒に浸漬されることにより除去される。有機溶媒に浸漬されている透光部材71に超音波が照射されてもよい。これにより、マスクMがより効率的に除去される。
【0054】
図7(C)は、マスク除去工程の直後におけるベゼル7の模式的な断面図である。透光部材71の装飾パターンPに対応する領域に形成されていたマスクMが除去されたことにより、誘電体多層膜72および遮光層73の装飾パターンPに対応する領域、すなわちマスクMが形成されていた領域に開口721および731がそれぞれ形成されている。
【0055】
図6に戻り、次に、第1印刷層形成工程(ステップS26)において、ステップS15と同様に第1印刷層74が形成される。
【0056】
次に、第2印刷層形成工程(ステップS27)において、ステップS16と同様に第2印刷層75が形成される。以上のようにして、ベゼル7が製造される。
【0057】
このように製造されたベゼル7は、図4のフロー図に示される製造方法によって製造されたベゼル7と同様に、優れた意匠性を有する。
【0058】
上述した説明では、時計用装飾部材がベゼル7であるものとしたが、このような例に限られない。時計用装飾部材は、文字板3または見返し5であってもよい。時計用装飾部材が文字板3である場合、文字板3は、図3の断面図に示される構成を有し、図4または図6のフロー図に示される製造方法により製造される。この場合、装飾パターンPは、例えば時字31である。時計用装飾部材が見返し5である場合、見返し5は、図3の断面図に示される構成を有し、図4または図6のフロー図に示される製造方法により製造される。この場合、装飾パターンPは、例えば分目盛り51である。また、時計用装飾部材は、所定の装飾パターンを表す指針4であってもよい。
【実施例0059】
図4のフロー図に示される製造方法により、実施例に係るベゼルが製造された。
【0060】
最初に、ステップS11において、1.2mmの厚さを有する環状のサファイアガラスである透光部材が準備された。
【0061】
次に、ステップS12において、透光部材が真空蒸着装置に投入された。透光部材の一方の面に、TiOからなる薄膜とSiOからなる薄膜がそれぞれ交互に5層ずつ、すなわち計10層の薄膜が積層されることにより誘電体多層膜が形成された。誘電体多層膜が青色に視認されるように、各薄膜は、透光部材の側から順に、それぞれ42nm、52nm、52nm、21nm、100nm、53nm、39nm、38nm、76nm、136nmの厚さを有するように形成された。
【0062】
次に、ステップS13において、透光部材の一方の面にCrを蒸着することにより遮光層が形成された。遮光層は、50nmの厚さを有するように形成された。
【0063】
次に、ステップS14において、透光部材が真空蒸着装置から取り出された。その後、レーザ照射によるエッチングにより、誘電体多層膜72および遮光層73に、装飾パターンPを表す開口721および731が形成された。
【0064】
次に、ステップS15において、透光部材が洗浄された。その後、パッド印刷により遮光層に夜光塗料が塗布され、第1印刷層が形成された。第1印刷層は、5μmの厚さを有するように形成された。
【0065】
次に、ステップS16において、パッド印刷により第1印刷層に白色塗料が塗布され、第2印刷層が形成された。第2印刷層は、10μmの厚さを有するように形成された。以上のようにして、実施例に係るベゼルが製造された。
【0066】
図8は、ステップS13の直後において測定された、実施例に係るベゼルの反射特性を示す図である。図8のグラフにおいて、横軸は波長であり、縦軸はパーセント表示された反射率である。また、図8のグラフの実線は入射角が0度の光に対する反射特性を示し、破線は入射角が30度の光に対する反射特性を示す。入射角は、透光部材の法線方向に対する角度である。
【0067】
図8に示すように、入射角が0度の光に対する反射特性のピークと入射角が30度の光に対する反射特性のピーク波長は、いずれも450nm未満であり、わずかに異なっていた。したがって、実施例に係るベゼルは、場所に応じてわずかに色合いが異なる青色に視認された。
【0068】
図9は、実施例に係るベゼルを撮影した画像である。図9に示すように、実施例に係るベゼルは、場所に応じて異なる色合いを有していた。図9には色相が表れていないが、実施例に係るベゼルは、右上から左下に向かうにつれて青紫色から青緑色に変化するような色合いで視認された。また、装飾パターンPである文字列は白色で視認されたため、青色の誘電体多層膜と容易に区別可能であった。このように、実施例に係るベゼルは、優れた意匠性を有するとともに、装飾パターンを容易に視認可能とすることが確認された。
【0069】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
7 ベゼル
71 透光部材
72 誘電体多層膜
721 開口
73 遮光層
731 開口
74 第1印刷層
75 第2印刷層
P 装飾パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9