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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135814
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】スピーカー装置およびその設置構造
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046689
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 潤弥
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AE16
(57)【要約】
【課題】スピーカー装置を小型化する。
【解決手段】スピーカー装置21は、スピーカーユニット30と、スピーカーユニット30を内装部材10に対して弾性的に支持する支持機構40とを具備し、支持機構40は、内装部材10に固定される第1固定部41と、内装部材10に固定される第2固定部42と、第1固定部41および第2固定部42にスピーカーユニット30を弾性的に連結する支持部43とを含み、スピーカーユニット30は、中心軸Zの方向にみて第1固定部41と第2固定部42との間に位置し、第1固定部41と第2固定部42とを通過する直線は、スピーカーユニット30の中心軸Zに直交する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットを外部構造体に対して弾性的に支持する支持機構とを具備し、
前記支持機構は、
前記外部構造体に固定される第1固定部と、
前記外部構造体に固定される第2固定部と、
前記第1固定部および前記第2固定部に前記スピーカーユニットを弾性的に連結する支持部とを含み、
前記スピーカーユニットは、中心軸の方向にみて前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置し、
前記第1固定部と前記第2固定部とを通過する直線は、前記スピーカーユニットの中心軸に直交する
スピーカー装置。
【請求項2】
前記支持部は、板厚方向が前記スピーカーユニットの中心軸に沿う弾性板を含み、
前記弾性板は、相互に反対側の第1面と第2面とを有し、
前記中心軸の方向において、前記スピーカーユニットの重心は、前記第1面と前記第2面との間に位置する
請求項1のスピーカー装置。
【請求項3】
前記スピーカーユニットと前記支持機構とにより構成される振動構造において、前記中心軸の方向における振動の共振周波数は、前記スピーカーユニットの最低共振周波数を下回る
請求項1のスピーカー装置。
【請求項4】
前記スピーカーユニットと前記支持機構とにより構成される振動構造において、前記中心軸に直交する方向における振動の共振周波数は、100Hz以上である
請求項1のスピーカー装置。
【請求項5】
音響シール部材をさらに具備し、
前記スピーカーユニットは、音波が通過する開口を包囲する放音部を含み、
前記音響シール部材は、前記放音部に沿って設置され、前記外部構造体の設置面から突出し当該外部構造体の放音孔を包囲する突出部により押圧されることで弾性変形する
請求項1のスピーカー装置。
【請求項6】
外部構造体と、
前記外部構造体に設置されるスピーカー装置とを具備し、
前記スピーカー装置は、
スピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットを前記外部構造体に対して弾性的に支持する支持機構とを含み、
前記支持機構は、
前記外部構造体に固定される第1固定部と、
前記外部構造体に固定される第2固定部と、
前記第1固定部および前記第2固定部に前記スピーカーユニットを弾性的に連結する支持部とを含み、
前記スピーカーユニットは、中心軸の方向にみて前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する
スピーカー装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカー装置およびその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の内装等の構造体(以下「外部構造体」という)にスピーカー装置を設置するための各種の構造が従来から提案されている。例えば特許文献1には、外部構造体に固定される取付部材とスピーカーユニットのコーン部とが板バネにより連結された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-123478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1構成においては、スピーカーユニットが全周にわたり支持されるから、中心軸の方向にみたスピーカー装置の小型化が制限される。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、中心軸の方向にみたスピーカー装置の小型化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係るスピーカー装置は、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを外部構造体に対して弾性的に支持する支持機構とを具備し、前記支持機構は、前記外部構造体に固定される第1固定部と、前記外部構造体に固定される第2固定部と、前記第1固定部および前記第2固定部に前記スピーカーユニットを弾性的に連結する支持部とを含み、前記スピーカーユニットは、中心軸の方向にみて前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する。
【0006】
本開示のひとつの態様に係るスピーカー装置の設置構造は、外部構造体と、前記外部構造体に設置されるスピーカー装置とを具備し、前記スピーカー装置は、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを前記外部構造体に対して弾性的に支持する支持機構とを含み、前記支持機構は、前記外部構造体に固定される第1固定部と、前記外部構造体に固定される第2固定部と、前記第1固定部および前記第2固定部に前記スピーカーユニットを弾性的に連結する支持部とを含み、前記スピーカーユニットは、中心軸の方向にみて前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における音響システムの設置例である。
図2】内装部材およびスピーカー装置の分解斜視図である。
図3】スピーカー装置の上面図である。
図4図3におけるIV-IV線の断面図である。
図5】スピーカー装置の各要素の位置関係に関する説明図である。
図6】対比例1の説明図である。
図7】音響シール部材の近傍を拡大した断面図である。
図8】第1実施形態の効果を説明するための断面図である。
図9】第2実施形態におけるスピーカー装置の断面図である。
図10】第2実施形態における音響シール部材の近傍を拡大した断面図である。
図11】第2実施形態の効果を説明するための断面図である。
図12】第3実施形態におけるスピーカー装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態における音響システム100の設置例である。第1実施形態の音響システム100は、例えば自動車等の車輌Cに設置される車載オーディオシステムである。具体的には、音響システム100は、車輌Cの天井部に設置されたオーバーヘッドコンソールを構成する。
【0009】
第1実施形態の音響システム100は、内装部材10とスピーカー装置21とマイクロホン22とを具備する。内装部材10は、車輌Cの内装を構成する構造体である。第1実施形態の内装部材10は、基礎部11を含む。基礎部11は、意匠面S1を含む板状部分である。意匠面S1は、車輌Cの内側を向く表面である。内装部材10のうち意匠面S1とは反対側の表面(以下「設置面S2」という)にスピーカー装置21とマイクロホン22とが設置される。第1実施形態の内装部材10は、「外部構造体」の一例である。
【0010】
スピーカー装置21は、車輌C内に音響を放射する。例えば、音楽の再生音のほか、搭乗者(運転者または同乗者)に緊急事態を通報する通報音声、または運転者を案内する案内音声等の各種の音響が、スピーカー装置21から放射される。マイクロホン22は、車輌Cの搭乗者の音声を収音する。例えば車輌C内の情報機器の音声操作のために搭乗者が発声した操作音声がマイクロホン22により収音される。なお、第1実施形態においては1個のスピーカー装置21と1個のマイクロホン22に便宜的に着目するが、2個以上のスピーカー装置21と2個以上のマイクロホン22とが設置されてもよい。
【0011】
図2は、内装部材10およびスピーカー装置21の分解斜視図である。図3は、内部部材およびスピーカー装置21の上面図であり、図4は、図3におけるIV-IV線の断面図である。なお、図2および図3においては、弾性板44の領域に便宜的に網掛が付加されている。
【0012】
なお、以下の説明においては、スピーカー装置21の中心軸Zと、中心軸Zに直交するX-Y平面とを便宜的に想定する。X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向とは反対の方向をX2方向と表記する。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向とは反対の方向をY2方向と表記する。
【0013】
また、中心軸Zに沿う一方向をZ1方向と表記し、Z1方向の反対の方向をZ2方向と表記する。Z1方向は、車輌Cの内部に向かう方向である。具体的には、Z1方向はスピーカー装置21の前面側(前方)であり、Z2方向はスピーカー装置21の背面側(後方)である。また、音響システム100の任意の要素を中心軸Zに沿う方向に観察することを以下では「平面視」と表記する。
【0014】
図1および図2に例示される通り、内装部材10の基礎部11には放音孔12が形成される。放音孔12は、スピーカー装置21から放射された音波が通過する開口である。放音孔12は、相互に平行に配列する複数の貫通孔により略円形状の概形に形成される。なお、放音孔12は、平面状に配列された複数の点状の貫通孔により構成されてもよい。
【0015】
図2および図4に例示される通り、内装部材10は、以上に説明した基礎部11のほかに、第1支持部131と第2支持部132と突出部14とを含む。第1支持部131と第2支持部132と突出部14とは、基礎部11のうち意匠面S1とは反対側の設置面S2からZ2方向に突出する。
【0016】
内装部材10は、各種の樹脂材料または金属材料により形成される。具体的には、内装部材10は、基礎部11と第1支持部131と第2支持部132と突出部14とが射出成形により一体に構成された成形品である。第1実施形態においては、前述の通り、第1支持部131と第2支持部132と突出部14とが設置面S2からZ2方向に突出する。したがって、内装部材10の成形に利用される一対の成形型の一方を他方に対してZ1方向またはZ2方向に離間することで、内装部材10を容易に成形できる。
【0017】
第1支持部131および第2支持部132は、設置面S2からZ2方向に突出する円柱状の部分である。第1支持部131と第2支持部132とは、X軸の方向に相互に間隔をあけて設置される。具体的には、平面視において第1支持部131と第2支持部132との間に放音孔12が位置する。第1支持部131の形状および寸法と第2支持部132の形状および寸法とは共通する。例えば、第1支持部131の高さと第2支持部132の高さとは相等しい。なお、第1支持部131および第2支持部132の形状は任意であり、例えば角柱状でもよい。
【0018】
突出部14は、設置面S2からZ2方向に突出する円筒状の部分である。具体的には、突出部14は、放音孔12を包囲する環状に形成される。突出部14は、平面視で第1支持部131と第2支持部132との間に位置する。突出部14の高さは第1支持部131および第2支持部132の高さを下回る。
【0019】
図2および図4に例示される通り、スピーカー装置21は、スピーカーユニット30と支持機構40と音響シール部材50とを具備する。中心軸Zは、詳細にはスピーカーユニット30の中心軸である。第1実施形態のスピーカー装置21を構成する各要素について以下に詳述する。
【0020】
[スピーカーユニット30]
スピーカーユニット30は、増幅装置等の外部装置(図示略)から供給される音響信号に応じて音波を放射する放音機器である。図4に例示される通り、第1実施形態のスピーカーユニット30は、振動板31と駆動機構32と支持フレーム33とを具備する。なお、スピーカーユニット30に音響信号を供給するための配線の図示は便宜的に省略されている。
【0021】
振動板31は、振動により音波を発生する振動体である。具体的には、振動板31は、Z1方向の端部の直径がZ2方向の端部の直径を上回る円錐台筒状に形成されたコーンである。振動板31は、例えば繊維基材に含浸した樹脂材料を硬化させることで製造される。なお、振動板31の形状は任意であり、例えばドーム状(半球状)でもよい。振動板31の内周縁には円筒状のボビン35が設置される。ボビン35のうちZ1方向に位置する端部の開口はセンターキャップ36により閉塞される。
【0022】
駆動機構32は、音響信号に応じて振動板31を中心軸Zの方向に振動させる。振動板31の振動により音波が放射される。中心軸Zは、振動板31が振動する方向に沿う軸線とも表現される。図4に例示される通り、第1実施形態の駆動機構32は、磁気回路37とボイスコイル38とを含む。磁気回路37は、振動板31のZ2方向(すなわち背面側)に設置されて磁場を発生する。ボイスコイル38は、磁気回路37が発生する磁場内においてボビン35に巻回される。
【0023】
磁気回路37は、ヨーク371とセンターポール372とマグネット373とを具備する。ヨーク371は中心軸Zに同心に設置された円盤状の磁性体である。センターポール372は、ヨーク371からZ1方向に突出する円柱状の磁性体であり、ボビン35の内側に位置する。マグネット373は、センターポール372を包囲する環状に形成される。
【0024】
支持フレーム33は、振動板31および磁気回路37を支持する構造体である。支持フレーム33は、例えば金属材料または樹脂材料により形成される。第1実施形態の支持フレーム33は、第1部分331と第2部分332とを含む。第1部分331は、磁気回路37を収容する円筒状の筐体である。
【0025】
第2部分332は、振動板31を支持する。具体的には、第2部分332は、振動板31を包囲する円錐台筒状の構造体である。すなわち、第2部分332のうちZ1方向の端部(以下「放音部34」という)の直径は、第2部分332のうちZ2方向の端部の直径を上回る。放音部34は、振動板31により放射される音波が通過する開口Oを包囲する環状の部分である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態のスピーカーユニット30は、音波が通過する開口Oを包囲する放音部34を有する。
【0026】
振動板31の外周縁は、環状のエッジ391により放音部34の内周縁に連結される。また、振動板31の内周縁は、環状のダンパー392により第2部分332の内壁面に連結される。エッジ391およびダンパー392は弾性材料で形成される。
【0027】
[支持機構40]
図2の支持機構40は、スピーカーユニット30を内装部材10に対して弾性的に支持する構造体である。以上の構成によれば、スピーカーユニット30の放音動作に起因した振動が内装部材10に伝達することが抑制される。例えば、スピーカーユニット30の振動が内装部材10を介してマイクロホン22に伝達することが抑制される。なお、放音動作は、振動板31の振動により音波を放射するスピーカーユニット30の動作である。
【0028】
図2から図4に例示される通り、第1実施形態の支持機構40は、第1固定部41と第2固定部42と支持部43とを具備する。第1固定部41および第2固定部42は、内装部材10に固定される。第1固定部41は内装部材10の第1支持部131に固定される。具体的には、第1固定部41は、締結具81により第1支持部131の頂面に固定される。第2固定部42は内装部材10の第2支持部132に固定される。具体的には、第2固定部42は、締結具82により第2支持部132の頂面に固定される。締結具81および締結具82は、例えばネジまたはボルトである。第1固定部41と第2固定部42とは、X軸の方向に相互に間隔をあけて設置される。
【0029】
支持部43は、第1固定部41および第2固定部42にスピーカーユニット30を弾性的に連結する構造体である。平面視における支持部43の中央にスピーカーユニット30が設置される。支持部43のうちX1方向の端部が第1固定部41に固定され、支持部43のうちX2方向の端部が第2固定部42に連結される。したがって、平面視において、第1固定部41と第2固定部42との間にスピーカーユニット30が位置する。すなわち、平面視においてスピーカーユニット30のX1方向に第1固定部41が位置し、スピーカーユニット30のX2方向に第2固定部42が位置する。図2および図4から理解される通り、中心軸Zに直交するY方向からの側面視においても、第1固定部41と第2固定部42との間にスピーカーユニット30が位置する。
【0030】
図5は、スピーカーユニット30の位置に関する説明図である。図5に例示される通り、第1固定部41と第2固定部42とを通過する直線Lは、スピーカーユニット30の中心軸Zに直交する。直線Lは、第1固定部41の重心と第2固定部42の重心とを通過する直線である。以上の構成によれば、第1固定部41と第2固定部42との間にスピーカーユニット30をバランスよく支持できる。
【0031】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、第1固定部41と第2固定部42との間にスピーカーユニット30が弾性的に支持される。すなわち、スピーカーユニット30が2箇所において内装部材10に支持される。したがって、例えば支持機構40がスピーカーユニット30を全周にわたり支持する形態と比較して、平面視におけるスピーカー装置21の小型化を実現し易いという利点がある。
【0032】
図2から図4に例示される通り、第1実施形態の支持部43は、弾性板44と取付部材45とを具備する。弾性板44は、例えばゴムまたはエラストマー等の弾性係数が低い弾性材料により形成される。例えば、弾性板44は、内装部材10と比較して弾性係数が低い材料により形成される。第1固定部41および第2固定部42は、弾性板44よりも高剛性の材料により形成される。取付部材45も同様に、弾性板44よりも高剛性の材料により形成される。第1固定部41と第2固定部42と取付部材45とは、例えば同種の樹脂材料により形成される。弾性板44は、第1固定部41と第2固定部42と取付部材45とを構成する樹脂材料よりも弾性係数が低い材料により形成される。
【0033】
弾性板44は、第1面F1と第2面F2とを含む板状部材である。第1面F1と第2面F2とは、相互に反対側に位置する表面である。具体的には、第1面F1はZ1方向に向く表面(下面)であり、第2面F2はZ2方向に向く表面(上面)である。
【0034】
弾性板44は、X軸に沿う長尺状に形成される。弾性板44のうちX1方向の端部が第1固定部41に連結され、弾性板44のうちX2方向の端部が第2固定部42に連結される。弾性板44の板厚方向がスピーカーユニット30の中心軸Zに沿うように、第1固定部41および第2固定部42に弾性板44が連結される。なお、弾性板44の板厚方向は、第1面F1または第2面F2の法線の方向である。
【0035】
平面視における弾性板44の中央には円形状の開口46が形成される。取付部材45は、平面視において開口46に重なるように弾性板44に連結される。取付部材45は、Y軸に沿う長尺状に形成される。取付部材45のうちY1方向の端部とY2方向の端部とが弾性板44に連結される。すなわち、取付部材45は、弾性板44の開口46に懸架される。以上の説明から理解される通り、弾性板44の長手方向(X軸の方向)と取付部材45の長手方向(Y軸の方向)とは相互に直交する。
【0036】
第1実施形態の支持機構40は、例えば射出成形により形成された成形品である。具体的には、第1固定部41と第2固定部42と弾性板44と取付部材45とは、例えば2色成形により一体に構成される。すなわち、まず、第1固定部41と第2固定部42と取付部材45とが第1樹脂材料により形成され、次に、第1樹脂材料とは別種の第2樹脂材料により弾性板44が形成される。
【0037】
例えば、第1固定部41に形成された複数の取付孔H1の内部に弾性板44の材料が充填されることで第1固定部41と弾性板44とが固定される。同様に、第2固定部42に形成された複数の取付孔H2の内部に弾性板44の材料が充填されることで第2固定部42と弾性板44とが固定される。また、取付部材45に形成された複数の取付孔H3の内部に弾性板44の材料が充填されることで取付部材45と弾性板44とが固定される。
【0038】
スピーカーユニット30は、例えばネジまたはボルト等の締結具83により取付部材45に固定される。具体的には、放音部34がZ1方向に向く状態でスピーカーユニット30の背面が取付部材45に固定される。すなわち、スピーカーユニット30は取付部材45に吊下げられる。
【0039】
図5には、スピーカーユニット30の重心Gが図示されている。重心Gは、弾性板44の第1面F1よりもZ2方向に位置する。具体的には、中心軸Zの方向において、弾性板44の第1面F1と第2面F2との間に重心Gが位置する。例えば、第1面F1と第2面F2とから等距離にある中間平面M上に重心Gが位置する。なお、重心Gは、平面視において開口46の内側に位置する。
【0040】
図6は、スピーカーユニット30の重心Gが第1面F1からZ1方向に乖離した形態(以下「対比例1」という)の断面図である。図6に例示される通り、対比例1においては、弾性板44の第1面F1と第2面F2との間の地点を中心とする顕著なモーメントがスピーカーユニット30(重心G)に作用する。したがって、対比例1においては、図6に破線の矢印で図示される通り、中心軸Zに対してスピーカーユニット30が揺動し易い。対比例1とは対照的に、第1実施形態においては、弾性板44の第1面F1と第2面F2との間にスピーカーユニット30の重心Gが位置する。したがって、対比例1と比較してスピーカーユニット30の揺動(首振り)を抑制できる。
【0041】
以上に説明した通り、支持機構40はスピーカーユニット30を弾性的に支持する。したがって、中心軸Zの方向または中心軸Zに直交する方向にスピーカーユニット30が振動する構造(以下「振動構造」という)が構成される。第1実施形態の振動構造において中心軸Zの方向に発生する振動の共振周波数fzは、スピーカーユニット30の最低共振周波数f0を下回る(fz<f0)。最低共振周波数f0は、スピーカーユニット30が再生可能な周波数の下限値である。
【0042】
振動構造の共振周波数fzが最低共振周波数f0を上回る形態(以下「対比例2」という)においては、スピーカーユニット30が最低共振周波数f0の付近の音響成分を放射する場合に、中心軸Zの方向の過度な振動が振動構造に発生する可能性がある。対比例2とは対照的に、第1実施形態においては、振動構造の共振周波数fzがスピーカーユニット30の最低共振周波数f0を下回る。したがって、スピーカーユニット30が最低共振周波数f0の付近の音響成分を放射する状態でも、中心軸Zの方向の過度な振動が振動を低減できる。
【0043】
また、第1実施形態の振動構造において中心軸Zに直交する方向に発生する振動の共振周波数fxyは70Hz以上であり、さらに好適には100Hz以上である(fxy≧100Hz)。
【0044】
第1実施形態のスピーカー装置21が設置される自動車の車輌Cには振動が発生し易い。車輌Cに発生した振動はスピーカー装置21に伝達される。他方、車輌Cに発生する振動のうち10Hz以上の成分は、車輌Cのサスペンションにより充分に減衰される。第1実施形態においては、中心軸Zに直交する方向における振動構造の共振周波数fxyが70Hz以上に設定される。周波数が高い振動成分ほど減衰率は高いから、第1実施形態によれば、車輌Cからの振動に起因した振動構造の過度な振動を有効に抑制できる。共振周波数fxyが100Hz以上に設定された構成によれば、以上に説明した効果はさらに顕著である。
【0045】
[音響シール部材50]
図2の音響シール部材50は、内装部材10とスピーカーユニット30との間の隙間を密閉する。音響シール部材50により隙間が密閉されることで、スピーカーユニット30から放射された音波が放音部34と内装部材10との隙間から漏洩することが抑制される。音響シール部材50は、放音部34に沿う環状の部材である。音響シール部材50は放音部34と同心に設置される。
【0046】
図2および図4に例示される通り、音響シール部材50は、取付部51と封止部52とを含む。音響シール部材50は、例えば、取付部51と封止部52とが射出成形により一体に構成された成形品である。音響シール部材50は、例えばゴムまたはエラストマー等の弾性材料により形成される。なお、以下の説明においては、中心軸Zを中心とする任意径の仮想円の円周の方向を「周方向」と表記し、仮想円の半径の方向を「径方向」と表記する。
【0047】
取付部51は、放音部34に固定される環状の部分である。取付部51の内周面には、周方向に沿う溝部511が全周にわたり形成される。放音部34が溝部511に収容されることで取付部51が放音部34に設置される。なお、放音部34に取付部51を固定するための構造は任意であり、以上の例示に限定されない。封止部52は、取付部51から径方向の内側に突出する環状の部分である。すなわち、封止部52は、取付部51の内周面から内側に張り出す。
【0048】
図7は、音響シール部材50の近傍を拡大した断面図である。内装部材10に対するスピーカー装置21の設置前の状態(以下「未設置状態」という)と、内装部材10にスピーカー装置21が設置された状態(以下「設置済状態」という)とが図7には併記されている。図7に例示される通り、未設置状態における封止部52は、X-Y平面に平行な状態にある。
【0049】
図7に例示される通り、設置済状態においては、開口Oの全周にわたり封止部52の下面に突出部14の頂面が接触する。音響シール部材50の封止部52は、突出部14によりZ2方向に押圧されることで弾性変形する。具体的には、封止部52は、外周縁から内周縁にかけてZ2方向に曲線状に湾曲する。以上のように音響シール部材50が内装部材10の突出部14に接触することで、放音部34と内装部材10との隙間を密閉する音響シールが実現される。すなわち、スピーカーユニット30からの放射音がスピーカーユニット30と内装部材10との隙間から漏洩することが抑制される。
【0050】
なお、図7に例示される通り、突出部14の頂面のうち外周縁の部分はR形状である。以上の構成によれば、突出部14から封止部52に対する応力の局所的な集中が緩和される。したがって、突出部14の接触に起因した封止部52の損傷を抑制できる。
【0051】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、音響シール部材50の封止部52が突出部14により押圧されることで弾性変形する。すなわち、突出部14とスピーカーユニット30との位置関係の変動に応じて音響シール部材50は弾性変形する。したがって、内装部材10に対してスピーカーユニット30の振動が伝達することを抑制できる。具体的には、音響シール部材50の剛性がスピーカーユニット30と比較して低いため、音響シール部材50から突出部14に伝達される振動が抑制される。以上の通り、音響シール部材50の音響インピーダンスはスピーカーユニット30と比較して充分に低い。なお、音響シール部材50の剛性が低いのは、弾性係数が低い材料により形成されることに加え、突出部14とスピーカーユニット30と音響シール部材50とにより片持ち梁の構造が形成されることにも起因する。
【0052】
また、放音部34と突出部14との間隔の変動に連動して音響シール部材50が弾性変形する結果、音響シール部材50に突出部14が接触した状態が維持される。したがって、放音部34と内装部材10との隙間から音波が漏洩することを有効に抑制できる。
【0053】
また、第1実施形態においては、放音部34に固定される取付部51から径方向の内側に封止部52が突出し、内装部材10の突出部14は封止部52に接触する。したがって、突出部14に接触する部分が取付部51から径方向の外側に突出する形態と比較して、中心軸Zの方向にみたスピーカー装置21のサイズを低減できる。
【0054】
ところで、内装部材10のうち基礎部11の意匠面S1は車輌Cの内側に露出する。したがって、基礎部11の形状は、基礎部11に対するスピーカー装置21の設置よりも、意匠面S1の美観を優先的に考慮して設計されるのが一般的である。以上の事情のもとでは、基礎部11の形状が車輌Cの型式毎に多様に変更され得る。例えば、図8に例示される通り、基礎部11が中心軸Zに垂直な平板状である第1実施形態(構成A)のほか、基礎部11が中心軸Zに対して傾斜する構成B、または、基礎部11が曲面状である構成Cも想定される。
【0055】
第1実施形態においては、音響シール部材50が突出部14からの押圧により弾性変形するから、図8に例示される通り、基礎部11の形状に関わらず、音響シール部材50を突出部14に接触させることが可能である。すなわち、相異なる形状の内装部材10に対して共通のスピーカー装置21が設置される場合でも、音響シールを有効に維持できる。以上の説明から理解される通り、第1実施形態によれば、内装部材10の設計の自由度を充分に確保できるという利点がある。
【0056】
また、音響シール部材50が突出部14からの押圧により弾性変形するから、突出部14の直径が相違する複数の内装部材10に対して共通のスピーカー装置21が設置される場合でも、音響シールを有効に維持できる。すなわち、第1実施形態によれば、突出部14の形状が相違する複数の内装部材10にスピーカー装置21を流用できる。
【0057】
B:第2実施形態
第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0058】
図9は、第2実施形態に係る音響システム100の断面図である。第2実施形態においては、音響シール部材50の形状が第1実施形態とは相違する。具体的には、第2実施形態の音響シール部材50は、第1実施形態の音響シール部材50に内周部53を追加した形状である。内周部53は、例えば樹脂材料の射出成形により取付部51および封止部52と一体に形成される。
【0059】
図10は、音響シール部材50の近傍を拡大した断面図である。図9および図10に例示される通り、内周部53は、音響シール部材50のうち封止部52の内周縁に連続する部分である。内周部53は、全周にわたり封止部52の内周縁に沿う環状に形成される。また、内周部53は、封止部52に対して角度をなす。具体的には、内周部53は封止部52に直交する。
【0060】
図10に例示される通り、未設置状態において、封止部52は、第1実施形態と同様にX-Y平面に平行な状態にある。未設置状態において、内周部53は、封止部52の内周縁から中心軸Zに沿う方向に突出する。具体的には、内周部53は、封止部52の内周縁からスピーカーユニット30とは反対側に向けて突出する。封止部52の内周縁から内装部材10に向けて内周部53が突出する構成とも表現される。
【0061】
内周部53の厚さは封止部52の厚さと同等である。ただし、内周部53の厚さが封止部52の厚さを上回る形態、または、内周部53の厚さが封止部52の厚さを下回る形態も想定される。また、内周部53の幅W2は、封止部52の幅W1を下回る。なお、封止部52の幅W1は、径方向における封止部52の寸法であり、内周部53の幅W2は、中心軸Zの方向における内周部53の寸法である。
【0062】
設置済状態においては、第1実施形態と同様に、開口Oの全周にわたり封止部52の下面に突出部14の頂面が接触する。音響シール部材50の取付部51は、突出部14によりZ2方向に押圧されることで曲線状に弾性変形する。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、放音部34と内装部材10との隙間を密閉する音響シールが実現される。
【0063】
音響シール部材50以外の構成は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、封止部52の内周縁に内周部53が設置されることで、封止部52の内周縁の機械的な強度が補強される。したがって、突出部14により押圧されたときの封止部52の内径の拡大が第1実施形態と比較して抑制される。すなわち、突出部14による押圧に対抗する封止部52の復元力が増強される。以上の構成により突出部14と封止部52との密着性が向上する結果、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して有効な音響シールを実現できる。
【0064】
また、音響シール部材50の封止部52とスピーカーユニット30の振動板31との間には、内周部53の内側をネック部とする共鳴空間が形成され、当該共鳴空間においてヘルムホルツ共鳴が発生し得る。したがって、内周部53の特性(例えば弾性特性)および寸法に応じて放射音の音響特性を調整できる。
【0065】
第1実施形態においては、封止部52の内周縁からスピーカーユニット30とは反対側に向けて内周部53が突出する。以上の構成によれば、突出部14が封止部52を押圧しながら当該封止部52の内周側に近付く過程において、封止部52に対する突出部14の移動は、図11に例示される通り、突出部14が内周部53に接触することで停止する。したがって、突出部14が封止部52の内側まで到達することが防止される。すなわち、内周部53は、突出部14が封止部52の内側に到達することを阻止するストッパとして機能する。また、放音部34の内側の空間に対する空気の出入口(開口O)に内周部53によりダクト形状が形成されることで空気の流れが整えられ、結果的に風切り音を低減できる。
【0066】
C:第3実施形態
図12は、第3実施形態における音響システム100の断面図である。第3実施形態のスピーカーユニット30は、第1実施形態と同様の要素に加えて第1腕部61と第2腕部62とを具備する。第1腕部61および第2腕部62は支持フレーム33(具体的には第1部分331)に連結される。第1腕部61は支持フレーム33からX1方向に突出し、第2腕部62は支持フレーム33からX2方向に突出する。すなわち、第1腕部61と第2腕部62との間に支持フレーム33が位置する。
【0067】
第3実施形態においては、第1実施形態の支持機構40が図12の支持機構70に置換される。支持機構70は、スピーカーユニット30を内装部材10に対して弾性的に支持する構造体である。したがって、第1実施形態と同様に、スピーカーユニット30の放音動作に起因した振動が内装部材10に伝達することが抑制される。
【0068】
第3実施形態の支持機構70は、第1固定部71と第2固定部72と支持部73と連結部74とを具備する。第1固定部71および第2固定部72は、内装部材10に固定される。具体的には、第1固定部71は、第1支持部131の頂面に固定される。第2固定部72は、第2支持部132の頂面に固定される。連結部74は、第1固定部71と第2固定部72とを連結する。第1固定部71は連結部74のX1方向に位置し、第2固定部72は連結部74のX2方向に位置する。なお、連結部74は省略されてもよい。第1固定部71が第1支持部131を含む形態、または、第2固定部72が第2支持部132を含む形態も想定される。
【0069】
支持部73は、第1固定部71および第2固定部72にスピーカーユニット30を弾性的に連結する構造体である。具体的には、支持部73は、第1案内部731と第2案内部732と第1上バネ75aと第1下バネ75bと第2上バネ76aと第2下バネ76bとを具備する。
【0070】
第1案内部731は、第1固定部71の下面と基礎部11の設置面S2とにわたる柱状の部分である。同様に、第2案内部732は、第2固定部72の下面と基礎部11の設置面S2とにわたる柱状の部分である。第1案内部731は、スピーカーユニット30の第1腕部61に形成された貫通孔に挿通される。第2案内部732は、スピーカーユニット30の第2腕部62に形成された貫通孔に挿通される。したがって、スピーカーユニット30は、平面視で第1案内部731と第2案内部732との間に位置する。第1案内部731および第2案内部732は、X-Y平面内の方向におけるスピーカーユニット30移動を規制するガイドである。
【0071】
第1上バネ75aは第1固定部71と第1腕部61との間に位置し、第1下バネ75bは第1腕部61と基礎部11との間に位置する。同様に、第2上バネ76aは第2固定部72と第2腕部62との間に位置し、第2下バネ76bは第2腕部62と基礎部11との間に位置する。したがって、スピーカーユニット30がZ2方向に移動した場合には支持部73からZ1方向の弾性力が作用し、スピーカーユニット30がZ1方向に移動した場合には支持部73からZ2方向の弾性力が作用する。すなわち、第3実施形態の支持機構70は、中心軸Zの方向におけるスピーカーユニット30の移動を抑制する。
【0072】
図12から理解される通り、平面視において、第1固定部71と第2固定部72との間にスピーカーユニット30が位置する。すなわち、平面視においてスピーカーユニット30のX1方向に第1固定部71が位置し、スピーカーユニット30のX2方向に第2固定部72が位置する。
【0073】
以上に説明した通り、第3実施形態においては、第1実施形態と同様に、スピーカーユニット30が2箇所において内装部材10に支持される。したがって、例えば支持機構70がスピーカーユニット30を全周にわたり支持する形態と比較して、平面視におけるスピーカー装置21の小型化を実現し易い。
【0074】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0075】
(1)前述の各形態においては、放音部34が環状(特に円環状)である形態を例示したが、放音部34の平面形状は以上の例示に限定されない。例えば、放音部34が楕円または長円の環状である形態も想定される。また、放音部34が多角形の枠状である形態も想定される。以上の例示から理解される通り、放音部34は、スピーカーユニット30から放射される音波が通過する開口Oを包囲する平面形状であればよい。
【0076】
(2)前述の各形態においては、音響シール部材50の封止部52が取付部51から径方向の内側に突出する形態を例示したが、封止部52は取付部51から径方向の外側に突出してもよい。突出部14は、封止部52に接触するように取付部51よりも大径に形成される。
【0077】
(3)前述の各形態においては、弾性板44の第1面F1と第2面F2との間に重心Gが位置する構成を例示したが、重心Gの位置は以上の例示に限定されない。具体的には、重心Gが第1面F1よりもZ1方向に位置する構成も想定される。例えば、スピーカーユニット30の揺動が実質的に抑制される程度に、重心Gが第1面F1(または第2面F2)の近傍に位置する構成が例示される。さらに詳述すると、スピーカーユニット30の揺動に関する共振周波数が100Hz以上となる程度に重心Gが第1面F1(または第2面F2)の近傍に位置する構成が好適である。
【0078】
(4)前述の各形態においては、車輌Cの内装部材10にスピーカー装置21が設置された構造を例示したが、スピーカー装置21が設置される構造体(外部構造体)は内装部材10に限定されない。
【0079】
(5)前述の各形態においては、支持機構40が第1支持部131および第2支持部132に固定される構成を例示した。以上の構成においては、内装部材10に対してスピーカーユニット30が2点で支持される。しかし、スピーカーユニット30を支持するための構造は以上の例示に限定されない。例えば、内装部材10に対してスピーカーユニット30が3点以上で支持されてもよい。
【0080】
(6)前述の各形態においては、以下の構成Aおよび構成Bを例示した。
・構成A:スピーカーユニット30の放音部34に沿う音響シール部材50が突出部14により押圧されることで弾性変形する構成。
・構成B:スピーカーユニット30が平面視で第1固定部41(71)と第2固定部42(72)との間に位置する構成。
構成Aおよび構成Bの各々は独立に成立し得る構成である。したがって、構成Aおよび構成Bの一方にとって他方は必須の要件ではない。
【0081】
例えば、構成Aが採用された音響システム100において、構成Bは必須ではない。具体的には、構成Aにとって、スピーカーユニット30を支持するための構成は任意である。また、構成Bが採用された音響システム100において、構成Aは必須ではない。具体的には、構成Bにとって、音響シール部材50の有無および構成は任意である。
【0082】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0083】
本開示のひとつの態様(態様1)に係るスピーカー装置は、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを外部構造体に対して弾性的に支持する支持機構とを具備し、前記支持機構は、前記外部構造体に固定される第1固定部と、前記外部構造体に固定される第2固定部と、前記第1固定部および前記第2固定部に前記スピーカーユニットを弾性的に連結する支持部とを含み、前記スピーカーユニットは、中心軸の方向にみて前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する。以上の態様においては、第1固定部と第2固定部との間にスピーカーユニットが弾性的に支持される。したがって、例えば支持機構がスピーカーユニットを全周にわたり支持する形態と比較して、中心軸の方向にみたスピーカー装置の小型化を実現し易い。
【0084】
態様1の具体例(態様2)において、前記第1固定部と前記第2固定部とを通過する直線は、前記スピーカーユニットの中心軸に直交する。以上の態様によれば、第1固定部と第2固定部との間にスピーカーユニットをバランスよく支持できる。
【0085】
態様1または態様2の具体例(態様3)において、前記支持部は、板厚方向が前記スピーカーユニットの中心軸に沿う弾性板を含み、前記弾性板は、相互に反対側の第1面と第2面とを有し、前記中心軸の方向において、前記スピーカーユニットの重心は、前記第1面と前記第2面との間に位置する。以上の態様においては、中心軸の方向においてスピーカーユニットの重心が第1面と第2面との間に位置する。したがって、スピーカーユニットの重心が第1面と第2面との範囲内から乖離した形態と比較してスピーカーユニットの揺動(首振り)を抑制できる。
【0086】
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、前記スピーカーユニットと前記支持機構とにより構成される振動構造において、前記中心軸の方向における振動の共振周波数は、前記スピーカーユニットの最低共振周波数を下回る。以上の態様においては、振動構造における中心軸の方向における振動の共振周波数が、スピーカーユニットの最低共振周波数(f0)を下回る。したがって、中心軸の方向における振動構造の過度な振動を有効に抑制できる。
【0087】
態様1から態様4の何れかの具体例(態様5)において、前記スピーカーユニットと前記支持機構とにより構成される振動構造において、前記中心軸に直交する方向における振動の共振周波数は、100Hz以上である。例えば自動車等の移動体にスピーカー装置が設置される場合を想定すると、移動体からの振動(10Hz以上の成分)はダンパーにより充分に減衰される。したがって、中心軸に直交する方向における振動構造の振動の共振周波数が100Hz以上である形態によれば、移動体からの振動に起因した振動構造の過度な振動を有効に抑制できる。
【0088】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様6)において、音響シール部材をさらに具備し、前記スピーカーユニットは、音波が通過する開口を包囲する放音部を含み、前記音響シール部材は、前記放音部に沿って設置され、前記外部構造体の設置面から突出し当該外部構造体の放音孔を包囲する突出部により押圧されることで弾性変形する。以上の態様においては、放音部に沿う音響シール部材が外部構造体の突出部に接触することで、放音部と外部構造体との隙間を密閉する音響シールが実現される。すなわち、スピーカーユニットからの放射音がスピーカーユニットと外部構造体との隙間から漏洩することが抑制される。
【0089】
本開示のひとつの態様(態様7)に係る設置構造は、外部構造体と、前記外部構造体に設置されるスピーカー装置とを具備し、前記スピーカー装置は、スピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを前記外部構造体に対して弾性的に支持する支持機構とを含み、前記支持機構は、前記外部構造体に固定される第1固定部と、前記外部構造体に固定される第2固定部と、前記第1固定部および前記第2固定部に前記スピーカーユニットを弾性的に連結する支持部とを含み、前記スピーカーユニットは、中心軸の方向にみて前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する。
【符号の説明】
【0090】
100…音響システム、10…内装部材、11…基礎部、12…放音孔、131…第1支持部、132…第2支持部、14…突出部、21…スピーカー装置、22…マイクロホン、30…スピーカーユニット、31…振動板、32…駆動機構、33…支持フレーム、331…第1部分、332…第2部分、34…放音部、35…ボビン、36…センターキャップ、37…磁気回路、38…ボイスコイル、40…支持機構、41…第1固定部、42…第2固定部、43…支持部、44…弾性板、45…取付部材、46…開口、50…音響シール部材、51…取付部、52…封止部、53…内周部、61…第1腕部、62…第2腕部、70…支持機構、71…第1固定部、72…第2固定部、73…支持部、731…第1案内部、732…第2案内部、74…連結部、75a…第1上バネ、75b…第1下バネ、76a…第2上バネ、76b…第2下バネ、81,82,83…締結具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12