(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135820
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、および送受信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 69/324 20220101AFI20240927BHJP
H04L 45/247 20220101ALI20240927BHJP
【FI】
H04L69/324
H04L45/247
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046699
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薗田 大資
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 志保
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 学
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA11
5K030KA02
5K030MD01
(57)【要約】
【課題】エラーによる影響を低減した通信が可能な送信装置、受信装置、および送受信システムを提供すること。
【解決手段】送信装置は、第1の端子と、第2の端子と、を備える。第1の端子には、第1転送方式でシリアル信号が転送される第1のシリアル通信線が接続される。第2の端子には、第1転送方式よりもシリアル信号の転送レートが高い第2転送方式でシリアル信号が転送される第2のシリアル通信線が接続される。送信装置は、前記第1の端子を介した第1のシリアル通信線および前記第2の端子を介した第2のシリアル通信線を並列的に使用して情報の送信を行う。送信装置は、第2のシリアル通信線を使用した通信が途絶した場合、第1のシリアル通信線を使用して情報の送信を継続する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の転送方式でシリアル信号が転送される第1のシリアル通信線が接続される第1の端子と、
第2の転送方式でシリアル信号が転送され、前記第2の転送方式でのシリアル信号の転送レートは前記第1の転送方式でのシリアル信号の転送レートよりも高い、第2のシリアル通信線が接続される第2の端子と、
前記第1の端子を介した前記第1のシリアル通信線および前記第2の端子を介した前記第2のシリアル通信線を並列的に使用して情報の送信を行い、前記第2のシリアル通信線を使用した通信が途絶した場合、前記第1のシリアル通信線を使用して前記情報の送信を継続するように構成されたインタフェース装置と、
を備える、
送信装置。
【請求項2】
前記インタフェース装置は、前記第2のシリアル通信線を使用した通信が途絶した後に前記第1のシリアル通信線を介して前記第2のシリアル通信線の通信の回復の要求を受信した場合、前記要求に応じて前記第2のシリアル通信線の通信の回復の動作を実行する、ように構成された、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
第1の転送方式でシリアル信号が転送される第1のシリアル通信線が接続される第1の端子と、
第2の転送方式でシリアル信号が転送される第2のシリアル通信線が接続され、前記第2の転送方式でのシリアル信号の転送レートは前記第1の転送方式でのシリアル信号の転送レートよりも高い、第2の端子と、
前記第1の端子を介した前記第1のシリアル通信線および前記第2の端子を介した前記第2のシリアル通信線を介して並列的に情報を受信し、前記第2のシリアル通信線を使用した通信が途絶した場合、前記第2のシリアル通信線の通信の回復を前記第1のシリアル通信線を使用して要求するように構成されたインタフェース装置と、
を備える、
受信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の送信装置と、
前記第1のシリアル通信線と、
前記第2のシリアル通信線と、
前記送信装置に前記第1のシリアル通信線および前記第2のシリアル通信線を介して接続された受信装置と、
を備える、
送受信システム。
【請求項5】
第1の転送方式でシリアル信号が転送される第1のシリアル通信線が接続される第1の端子と、
第2の転送方式でシリアル信号が転送される第2のシリアル通信線が接続され、前記第2の転送方式でのシリアル信号の転送レートは前記第1の転送方式でのシリアル信号の転送レートよりも高い、第2の端子と、
制御に関する第1情報を前記第1の端子を介して前記第1のシリアル通信線のみを用いて送信し、制御に関しない第2情報を前記第2の端子を介して前記第2のシリアル通信線を用いて送信するように構成されたインタフェース装置と、
を備える、
送信装置。
【請求項6】
前記送信装置は、前記第1のシリアル通信線および前記第2のシリアル通信線を並列的に使用して通信フレームを送信し、
前記第1情報は、前記通信フレームの先頭を示す情報、前記通信フレームの末尾を示す情報、および前記通信フレームの誤り検出符号を含む、
請求項5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記第1情報はコマンドであり、
前記第2情報はデータであり、
前記データを前記第2のシリアル通信線のみを用いて送信するように構成された、
請求項5に記載の送信装置。
【請求項8】
第1の転送方式でシリアル信号が転送される第1のシリアル通信線が接続される第1の端子と、
第2の転送方式でシリアル信号が転送される第2のシリアル通信線が接続され、前記第2の転送方式でのシリアル信号の転送レートは前記第1の転送方式でのシリアル信号の転送レートよりも高い、第2の端子と、
制御に関する第1情報を前記第1の端子を介して前記第1のシリアル通信線のみから受信し、制御に関しない第2情報を前記第2の端子を介して前記第2のシリアル通信線から受信するように構成されたインタフェース装置と、
を備える、
受信装置。
【請求項9】
前記受信装置は、前記第1のシリアル通信線および前記第2のシリアル通信線を介して並列的に通信フレームを受信し、
前記第1情報は、前記通信フレームの先頭を示す情報、前記通信フレームの末尾を示す情報、および前記通信フレームの誤り検出符号を含む、
請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記第1情報はコマンドであり、
前記第2情報はデータであり、
前記データを前記第2のシリアル通信線のみから受信するように構成された、
請求項8に記載の受信装置。
【請求項11】
請求項5に記載の送信装置と、
前記第1のシリアル通信線と、
前記第2のシリアル通信線と、
前記送信装置に前記第1のシリアル通信線および前記第2のシリアル通信線を介して接続された受信装置と、
を備える、
送受信システム。
【請求項12】
前記第1の転送方式は前記第2の転送方式よりも信頼性が高い、
請求項1、2、5、6および7の何れか一項に記載の送信装置。
【請求項13】
前記第1の転送方式は前記第2の転送方式よりも信頼性が高い、
請求項3、8、9および10の何れか一項に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、送信装置(transmitter)、受信装置(receiver)、および送受信システム(transmission and reception system)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリアル通信は様々なアプリケーションにおいて使用されている。そして、将来、シリアル通信には、さらなる高速化が求められると考えられる。シリアル通信では、通信速度が高速になるにつれてエラー発生率が増加する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、エラーによる影響を低減した通信が可能な送信装置、受信装置、および送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、送信装置は、第1の端子と、第2の端子と、を備える。第1の端子には、第1の転送方式でシリアル信号が伝送される第1のシリアル通信線が接続される。第2の端子には、第2の転送方式でシリアル信号が伝送される第2のシリアル通信線が接続される。第2の転送方式でのシリアル信号の転送レートは第1の転送方式でのシリアル信号の転送レートよりも高い。送信装置は、前記第1の端子を介した第1のシリアル通信線および前記第2の端子を介した第2のシリアル通信線を並列的に使用して情報の送信を行う。送信装置は、第2のシリアル通信線を使用した通信が途絶した場合、第1のシリアル通信線を使用して情報の送信を継続する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムが適用された情報処理システムの構成の一例を示す模式的な図。
【
図2】第1の実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムの構成の一例を示す模式的な図。
【
図3】第1の実施形態の送受信システムにおける通常の転送動作の一例を示す模式的な図。
【
図4】第2のシリアル通信線においてエラーが発生した際の第1の実施形態の送受信システムの動作を説明するための図。
【
図5】第2の実施形態のフレームの構造の一例を示す模式的な図。
【
図6】第2の実施形態の送受信システムにおいて1フレームが送信される際の、各レーンでの情報の送信順の一例を示す模式的な図。
【
図7】比較例にかかる送受信システムにおいて1フレームが送信される際の、各レーンでの情報の送信順の一例を示す模式的な図。
【
図8】第3の実施形態の送受信システムにおける各レーンでの情報の送信の動作の一例を示す模式的な図。
【
図9】第3の実施形態の送受信システムにおける動作モードの変更のための動作を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムは、種々のシステムに適用され得る。ここでは一例として、情報処理システムに適用された送信装置、受信装置、および送受信システムを説明する。
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムが適用された情報処理システムを詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムが適用された情報処理システム1の構成の一例を示す模式的な図である。
【0010】
情報処理システム1は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、ポータブル音楽プレーヤー、撮像装置、サーバ装置、などのコンピュータシステムである。情報処理システム1は、ホスト装置HAおよびメモリシステムMSを備える。ホスト装置HAは、例えば上記のコンピュータシステムに備えられるプロセッサである。メモリシステムMSは、例えばSSD(Solid State Drive)である。なお、ホスト装置HAおよびメモリシステムMSは上記の例に限定されない。
【0011】
ホスト装置HAとメモリシステムMSとは、有線通信路2で接続されている。有線通信路2は、電線、または半田及び端子を含む。
【0012】
メモリシステムMSは、メモリコントローラMCおよび1以上のメモリチップCPを備える。1以上のメモリチップCPは、1以上のチャネルを介してメモリコントローラMCと接続される。
【0013】
図1には、一例として、メモリシステムMSは、8個のメモリチップCPと2個のチャネルCH0、CH1とを備える。そして、チャネルCH0には、8個のメモリチップCPのうちの4個のメモリチップCPが接続され、チャネルCH1には、残りの4個のメモリチップCPが接続される。なお、メモリシステムMSが備えるメモリチップCPの数、チャネルの数、およびメモリコントローラMCと各メモリチップCPとの接続関係はこれに限定されない。
【0014】
メモリチップCPは、NAND型フラッシュメモリのメモリチップである。なお、メモリチップCPの例はこれに限定されない。
【0015】
メモリコントローラMCは、ホスト装置HAからのコマンドに従って、ホスト装置HAと8個のメモリチップCPとの間のデータ転送を制御する。メモリコントローラMCは、ホスト装置HAと8個のメモリチップCPとの間のデータ転送のほかに、ガベージコレクション動作などの8個のメモリチップCP間でのデータの転記を実行してもよい。
【0016】
第1の実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムは、一例として、有線通信路2に接続する一方または両方のインタフェース装置に適用される。
【0017】
図2は、情報処理システム1に適用された第1の実施形態にかかる送信装置、受信装置、および送受信システムの構成の一例を示す模式的な図である。
【0018】
ホスト装置HAは、有線通信路2を介した通信を行うためのインタフェース装置10-0を備える。メモリコントローラMCは、有線通信路2を介した通信を行うためのインタフェース装置10-1を備える。インタフェース装置10-0とインタフェース装置10-1とは、有線通信路2で相互に接続されている。
【0019】
有線通信路2は、第1のシリアル通信線と、1以上の第2のシリアル通信線と、を含む。第1のシリアル通信線では、第1の転送(transmission)方式でシリアル信号が転送される。第2のシリアル通信線では、第1の転送方式よりも転送される情報のビットエラーレートが高い第2転送方式でシリアル信号が転送される。つまり、第1の転送方式は、第2の転送方式よりも信頼性が高い。その代わり、第2の転送方式でのシリアル信号の転送レートは、第1の転送方式でのシリアル転送レートよりも高い。
【0020】
ここでは一例として、第1の転送方式はNRZ(Non Return to Zero)方式であり、第2の転送方式はPAMx(Pulse-Amplitude Modulation x-levels)方式であることとする。xは2以上の整数である。
【0021】
具体的には、有線通信路2は、NRZ方式でシリアル信号を転送する1つのレーン(レーン#0とする)と、PAMx方式でシリアル信号を転送するN個のレーン(レーン#1~レーン#Nとする)と、を含む。Nは1以上の整数である。
【0022】
各レーンは、転送されるシリアル信号の方向が異なる2つの信号線を含む。さらに、各レーンを構成する2つの信号線のそれぞれは、差動信号を転送するための1対の信号線によって構成される。
図2および以降では、説明が煩雑になることを防ぐために、各レーンを構成する2つの信号線のそれぞれは1本の信号線であると見なして説明する。なお、各レーンを構成する2つの信号線のそれぞれは、実際に1本の信号線で構成されていてもよい。
【0023】
インタフェース装置10-0は、レーン#0のうちのシリアル信号を送信するための信号線が接続される端子Ttx0-0と、レーン#1~レーン#Nのうちのシリアル信号を送信するための信号線が接続される端子Ttx1-0~TtxN-0と、を備える。また、インタフェース装置10-0は、レーン#0のうちのシリアル信号を受信するための信号線が接続される端子Trx0-0と、レーン#1~レーン#Nのうちのシリアル信号を受信するための信号線が接続される端子Trx1-0~TrxN-0と、を備える。
【0024】
インタフェース装置10-1は、レーン#0のうちのシリアル信号を送信するための信号線が接続される端子Ttx0-1と、レーン#1~レーン#Nのうちのシリアル信号を送信するための信号線が接続される端子Ttx1-1~TtxN-1と、を備える。また、インタフェース装置10-1は、レーン#0のうちのシリアル信号を受信するための信号線が接続される端子Trx0-1と、レーン#1~レーン#Nのうちのシリアル信号を受信するための信号線が接続される端子Trx1-1~TrxN-1と、を備える。
【0025】
インタフェース装置10-0およびインタフェース装置10-1は、実施形態の送受信システムSYSを構成する。インタフェース装置10-0およびインタフェース装置10-1の間で情報が送受信されるとき、インタフェース装置10-0およびインタフェース装置10-1のうちの情報を送信する側の装置は、実施形態の送信装置である。インタフェース装置10-0およびインタフェース装置10-1の間で情報が送受信されるとき、インタフェース装置10-0およびインタフェース装置10-1のうちの情報を受信する側の装置は、実施形態の受信装置である。
【0026】
第1の実施形態および以降の実施形態では、インタフェース装置10-0がインタフェース装置10-1に情報を転送する場合について説明する。なお、インタフェース装置10-1がインタフェース装置10-0に情報を転送することも可能であることは言うまでもない。以降の説明は、インタフェース装置10-0の動作とインタフェース装置10-1の動作とを読み替えた場合でも成立する。
【0027】
図3は、第1の実施形態の送受信システムSYSにおける通常の転送動作の一例を示す模式的な図である。本図では、インタフェース装置10-0からインタフェース装置10-1へ情報が転送される際に使用される信号線群が示されている。
【0028】
通常の転送動作では、送信装置としてのインタフェース装置10-0は、レーン#0~レーン#Nの全てを並列的に使用して情報を送信する。つまり、インタフェース装置10-0は、レーン#0~レーン#Nのそれぞれを介した情報の送信期間が重複するように、レーン#0~レーン#Nを介した情報の送信を行う。なお、レーン#0~レーン#Nのそれぞれを介した情報の送信期間が全レーンで完全に一致していてもよいし、一部で一致していなくてもよい。なお、転送される情報は、具体的にはコマンドまたはデータである。
【0029】
よって、例えば、レーン#1~レーン#Nにおける信号の転送方式がPAM8であり、レーン#0~レーン#Nにおいて転送クロックの周波数が共通かつ転送クロックが同期していると仮定した場合、送受信システムSYSは、通常の転送動作において1UI(Unit Interval)あたり最大で(1+3N)ビットの転送レートでの情報の転送が可能である。
【0030】
なお、レーン#1~レーン#Nのそれぞれにおいて発生し得るビットエラーのレートは、レーン#0において発生し得るビットエラーのレートよりも高い。よって、レーン#1~レーン#Nにおいては、レーン#0に比べてエラーの発生率が高い。レーン#1~レーン#Nにおいてエラーが発生した場合、次に説明するような動作が実行される。
【0031】
図4は、レーン#1~レーン#Nにおいてエラーが発生した際の第1の実施形態の送受信システムSYSの動作を説明するための図である。
【0032】
レーン#1~レーン#Nにおいて、エラーの発生により通信が途絶する(S1)。すると、インタフェース装置10-0は、レーン#1~レーン#Nにおいて通信が途絶している期間にも、レーン#0を用いた情報の送信を継続する(S2)。
【0033】
S2では、レーン#1~レーン#Nが使用できないので、通常動作時に比べて遅い転送レートで情報の転送が行われる。具体的には、インタフェース装置10-0は、S2においては、1UIあたり1ビットの転送レートで情報の送信を継続する。
【0034】
インタフェース装置10-1は、レーン#1~レーン#Nにおいて通信が途絶したことを検知すると、レーン#0を介してインタフェース装置10-0にエラー回復要求を送信する(S3)。エラー回復要求は、通信の回復の要求である。インタフェース装置10-0、10-1は、エラー回復要求に応じて、レーン#1~レーン#Nにおける通信の回復を試みる。通信の回復の動作は、例えば、バーストの再オープンや差動信号を使ったPHY初期化シーケンスなどである。なお、レーン#0を介したエラー回復要求の送信と、エラーからの回復の動作に要するコマンドの送受信とは、S2において継続されている通信の合間に実行される。
【0035】
レーン#1~レーン#Nにおける通信が回復すると、送受信システムSYSは、
図3に例示された通常の転送動作に復帰する。
【0036】
このように、第1の実施形態によれば、送信装置としてのインタフェース装置10-0は、それぞれは第2のシリアル通信線であるレーン#1~レーン#Nにおいて通信が途絶した場合、第1のシリアル通信線であるレーン#0を使用して情報の送信を継続する。なお、レーン#1~レーン#Nの全てにおいて通信が途絶するのではなく、レーン#1~レーン#Nの何れかのレーンにおいて通信が途絶した場合であっても、
図4を用いて説明した動作を実行してもよい。
【0037】
例えば、エラーによって通信が完全に途絶した場合、通信の途絶に応じて通信の回復の動作が実行される。通信の回復の動作の間、情報の送信が途切れてしまう。
【0038】
第1の実施形態では、有線通信路2は、複数のシリアル通信線を含み、当該複数のシリアル通信線は、他のシリアル通信線よりも転送される情報のビットエラーレートが低い第1のシリアル通信線(上記の例ではレーン#0)を含む。よって、エラーが発生したとしても、当該エラーに起因するレーン#0~レーン#Nの全てにおいて通信が途絶するような深刻な事象の発生を回避して、通信の即時性を維持することができる。つまり、エラーによる影響を低減した通信が可能である。
【0039】
なお、前述されたように、第1の実施形態および以降の実施形態の送受信システムSYSは、情報処理システム1以外にも適用できる。
【0040】
例えば、車両などの移動体に関して自動運転の技術が盛んに開発されている。自動運転の分野では、通信の即時性を維持することが非常に重要と考えられる。送受信システムSYSが、移動体に搭載されるECU(Electronic Control Unit)間の接続や、ECUの内部におけるプロセッサ、メモリ、およびI/O装置の間の接続に適用された場合、エラーが起きた時にも通信の即時性を維持することが可能になる。
【0041】
また、第1の実施形態によれば、受信装置としてのインタフェース装置10-1は、レーン#1~レーン#Nにおいて通信が途絶した場合、第1のシリアル通信線であるレーン#0を使用して通信の回復の要求を送信する。送信装置としてのインタフェース装置10-0は、当該要求に応じてレーン#1~レーン#Nの通信の回復の動作を実行する。
【0042】
よって、レーン#1~レーン#Nにおいて通信が途絶した場合であっても、レーン#0を使用した情報の転送を継続させながらレーン#1~レーン#Nにおける通信を回復させることが可能となる。
【0043】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる事項について説明し、第1の実施形態と同じ事項については説明を省略するかまたは簡略的に説明する。
【0044】
送受信システムSYSにおいては、フレーム(通信フレーム)またはパケットと称される単位で情報の転送が行われる。以降では、情報の転送の単位となる情報の塊を、フレームと表記する。
【0045】
図5は、第2の実施形態のフレームの構造の一例を示す模式的な図である。
【0046】
フレームは、フレームの制御に関する情報と、フレームの制御に関しない情報と、を含む。
図5に示される例では、フレームの制御に関する情報は、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC(Cyclic Redundancy Check)符号を含む。ペイロードは、フレームの制御に関しない情報である。
【0047】
ペイロードのサイズまたは数は可変であり、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC符号のそれぞれのサイズは固定されている。
図5に示される例では、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC符号のそれぞれは16ビットのサイズを有することとしている。なお、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC符号のそれぞれのサイズはこれに限定されない。
【0048】
フレーム先頭情報は、フレームの先頭(head)を示す。フレーム末尾情報は、フレームの末尾(tail)を示す。CRC符号は、フレーム先頭情報、全ペイロード、およびフレーム末尾情報からなる情報の塊から生成された誤り検出符号である。なお、適用可能な誤り検出符号は、CRC符号だけに限定されない。
【0049】
CRC符号は、フレームの末尾に配置されており、CRC符号の位置は、フレーム末尾情報の位置を基準として特定可能となっている。CRC符号は、通信の際にこの情報の塊に生じ得るエラーの検出のために使用される。しかしながら、CRC符号に基づくエラー検出を正しく実施するためには、受信装置は、フレーム先頭情報およびフレーム末尾情報に基づき、フレームの先頭、フレームの末尾、およびCRC符号の位置を正確に検出する必要がある。
【0050】
例えば、フレーム末尾情報の破損によりフレームの末尾が特定できなかったり、ペイロードの或る部分のビット列の破損によりそのビット列が偶然にフレーム末尾情報のビット列と一致してしまったりした場合、受信装置は、送信装置から送信されたCRC符号を特定することができない。これによって、CRC符号を用いたエラー検出を正しく実施できない。
【0051】
そこで、第2の実施形態では、送信装置は、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC符号など、フレームの制御に関する情報を、第1のシリアル通信線のみを使用して送信する。
【0052】
図6は、第2の実施形態の送受信システムSYSにおいて1フレームが送信される際の、各レーンでの情報の送信順の一例を示す模式的な図である。本図に示される例では、Nは3であり、レーン#1~レーン#3における信号の転送方式がPAM8であることとしている。
【0053】
送信装置は、レーン#0を介して、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC符号をこの順で送信する。さらに、
図6に示されるように、送信装置は、1フレームに含まれるペイロードの量に応じて、レーン#0を介してフレーム先頭情報とフレーム末尾情報との間にペイロードの一部を送信することができる。
【0054】
送信装置は、レーン#1~レーン#3を介してペイロードを送信する。送信装置は、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、およびCRC符号のいずれも、レーン#1~レーン#3を介しては送信しない。送信装置は、レーン#1~レーン#3を介しては、ペイロードのみ送信することができる。
【0055】
フレーム末尾情報の送信のタイミング(例えばタイミングt0)から1フレームの情報の送信の終了のタイミング(例えばタイミングt1)までの期間が予め定められている。送信装置は、レーン#0を介してフレーム末尾情報を送信すると、フレーム末尾情報の送信のタイミングを基準とした所定の時間までに1フレームの情報の全ての送信を完了する。よって、受信装置は、フレーム末尾情報の受信に基づき、1フレームの情報の受信の終了のタイミングを判断することができる。なお、送信装置は、タイミング調整のために、適宜、ペイロードに無効な情報を示すフィラーを加えてもよい。
【0056】
ここで、第2の実施形態と比較される技術について説明する。第2の実施形態と比較される技術を比較例と表記する。比較例によれば、送信装置は、フレームを構成する情報を、シリアライザなどを介して単純にレーン#0~#3に分配する。
【0057】
図7は、比較例にかかる送受信システムにおいて1フレームが送信される際の、各レーンでの情報の送信順の一例を示す模式的な図である。
【0058】
図5に示されたフレームを構成する情報を単純にレーン#0~#3に分配すると、フレームを構成する情報は、例えば
図7に示されたように送信される。即ち、フレーム先頭情報がレーン#0を介して送信され、ペイロードがレーン#0~#3を介して並列的に送信される。そして、最後に、フレーム末尾情報がレーン#2を介して送信され、CRC符号がレーン#3を介して送信される。
【0059】
このように、比較例によれば、フレームの制御に関する情報は、第2のシリアル通信線としてのレーン#1~レーン#Nの何れかを介して送信され得る。第2のシリアル通信線としてのレーン#1~レーン#Nで発生し得るビットエラーのレートは、第1のシリアル通信線としてのレーン#0で発生し得るビットエラーのレートに比べて高いため、フレームの制御に関する情報が破損する可能性が高まる。特に、フレーム末尾情報がレーン#1~レーン#Nの何れかを介して送信されて、フレーム末尾情報が破損した場合、受信装置は、CRC符号の位置(
図7の例ではレーン#3においてフレーム末尾情報と同時期に転送される位置)を特定できず、これによってCRC符号を用いたエラー検出を正しく実施できない可能性がある。
【0060】
これに対し、第2の実施形態によれば、送信装置は、第1のシリアル通信線としてのレーン#0と、第2のシリアル通信線としてのレーン#1~レーン#Nと、を並列的に使用してフレームを送信する。そして、送信装置は、フレームの制御に関する情報を第1のシリアル通信線としてのレーン#0のみを用いて送信する。
【0061】
よって、フレームの制御に関する情報が破損する可能性を抑制できる。また、第2のシリアル通信線としてのレーン#1~レーン#Nで転送されるペイロードの或るビット列がフレーム末尾情報として誤検出されることが防止される。その結果、フレームの先頭、フレームの末尾、およびCRC符号の位置を正しく検出でき、CRC符号を用いたエラー検出を正しく実施できるようになる。つまり、エラーによる影響を低減した通信が可能となる。
【0062】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態と異なる事項について説明し、第1の実施形態と同じ事項については説明を省略するかまたは簡略的に説明する。
【0063】
第3の実施形態では、制御に関する情報であるコマンドは、第1のシリアル通信線を介して送信される。制御に関しない情報であるデータは、第2のシリアル通信線を介して送信される。
【0064】
図8は、第3の実施形態の送受信システムSYSにおける各レーンでの情報の送信の動作の一例を示す模式的な図である。
【0065】
図8に示される例では、まず、送信装置は、レーン#0を介して、或るデータ(データD1と表記する)のライトを要求するライトコマンド(第1ライトコマンドと表記する)を送信する(時刻t10)。そして、送信装置は、第1ライトコマンドの送信に続き、レーン#1~#Nを介してデータD1を送信する(時刻t11)。送信装置は、データD1の送信のためにレーン#1~#Nを並列に使用する。
【0066】
送信装置は、レーン#1~#Nを介したデータD1の送信を行っている期間に、別のデータ(データD2と表記する)のライトを要求するライトコマンド(第2ライトコマンドと表記する)を送信する(時刻t12)。そして、送信装置は、第2ライトコマンドを送信し、かつレーン#1~#Nを介したデータD1の送信の後に、レーン#1~#Nを介してデータD2を送信する(時刻t13)。送信装置は、データD2の送信のときと同様、データD2の送信のためにレーン#1~#Nを並列に使用する。
【0067】
このように、第3の実施形態では、制御情報とデータとはそれぞれ異なるレーンを転送されるように送受信システムSYSが構成されている。よって、送信装置は、データの送信中に次のコマンドを送信することが可能である。
【0068】
送信装置は、データD2の送信に続いて、レーン#0を介して、送受信システムSYSの動作モードの変更を要求する動作モード変更コマンドを送信する(時刻t14)。送受信システムSYSは、動作モード変更コマンドによって動作モードの変更を行う。
【0069】
動作モードは、例えば転送レートの設定である。即ち、送受信システムSYSの各レーンは、転送レートが可変に構成される。動作モードが転送レートの設定である場合、送受信システムSYSにおいて2つの装置が動作モード変更コマンドの送信を含むシェイクハンドによって転送レートの設定の変更が行われる。
【0070】
図9は、第3の実施形態の送受信システムSYSにおける動作モードの変更のためのシェイクハンドの一例を示すシーケンス図である。
【0071】
まず、送信装置としてのインタフェース装置10-0が受信装置としてのインタフェース装置10-1に動作モード変更コマンドを送信する(S11)。前述されたように、動作モード変更コマンドの送信は、レーン#0を介して行われる。
【0072】
インタフェース装置10-1は、動作モード変更コマンドを正常に受信すると、動作モード変更コマンドに応じて転送レートの設定を変更する(S12)。転送レートの設定の変更が完了すると、インタフェース装置10-1は、動作モード変更コマンドに対応するコマンド応答をインタフェース装置10-0に送信する(S13)。コマンド応答は、レーン#0を介して送信される。
【0073】
インタフェース装置10-0は、コマンド応答を正常に受信すると、転送レートの設定を変更する(S14)。これによって、送受信システムSYSにおける転送レートの設定の変更が完了する。
【0074】
インタフェース装置10-0は、動作モード変更コマンドの送信(S11)の後、所定時間、コマンド応答を待ち受ける。インタフェース装置10-0は、動作モード変更コマンドの送信(S11)の後から所定時間が経過してもコマンド応答を受信できなかった場合、そのシェイクハンドはタイムアウトしたと判定し、S11の動作を再び実行する。
【0075】
このように、第3の実施形態では、動作モード変更コマンドおよびコマンド応答の送信は、発生し得るビットエラーのレートが低いレーン#0を介して行われる。よって、エラーに起因したタイムアウトの発生を抑制できる。
【0076】
以上述べたように、第3の実施形態によれば、送信装置は、コマンドを、第1のシリアル通信線としてのレーン#0のみを用いて送信し、データを、第2のシリアル通信線としてのレーン#1~レーン#Nのみを用いて送信する。
【0077】
よって、エラーに起因したタイムアウトの発生を抑制でき、エラーによる影響を低減した通信が可能となる。
【0078】
また、コマンドとデータとで送信に異なるシリアル通信線が使用されるので、送信装置は、データの送信期間にコマンドを送信することが可能となる。
【0079】
第2の実施形態および第3の実施形態によれば、送信装置は、制御に関する第1情報を第1のシリアル通信線のみを用いて受信装置に送信する。また、送信装置は、制御に関しない第2情報を第2のシリアル通信線を用いて第2装置に送信する。
【0080】
よって、第2の実施形態および第3の実施形態によれば、エラーによる影響を低減した通信が可能となる。
【0081】
なお、第2の実施形態において、第1情報は、フレームの制御に関する情報であり、具体的には、フレーム先頭情報、フレーム末尾情報、および誤り検出としてのCRC符号である。第2情報は、フレームのペイロードである。
【0082】
第3の実施形態において、第1情報はコマンドであり、第2情報はデータである。
【0083】
第1の実施形態、第2の実施形態、および第3の実施形態では、第1のシリアル通信線および第2のシリアル通信線のそれぞれは、それぞれ転送方向が異なる2つの信号線からなるとして説明した。第1のシリアル通信線および第2のシリアル通信線の一方または両方は、双方向の転送が可能な信号線によって構成されてもよい。
【0084】
また、第1の実施形態、第2の実施形態、および第3の実施形態は、情報処理システム1に限らず、任意のシステムに適用され得る。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 情報処理システム、2 有線通信路、10-0 インタフェース装置、10-1 インタフェース装置、HA ホスト装置、MC メモリコントローラ、MS メモリシステム。