IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人首都大学東京の特許一覧

特開2024-135821二酸化炭素吸収放出剤、二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素の吸収方法、二酸化炭素の放出方法、二酸化炭素吸収放出装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135821
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収放出剤、二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素の吸収方法、二酸化炭素の放出方法、二酸化炭素吸収放出装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240927BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 271/02 20060101ALI20240927BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/18 110
C07C271/02
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046700
(22)【出願日】2023-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/二酸化炭素のリサイクル・資源化のための新しい触媒プロセス開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山添 誠司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 聡一
(72)【発明者】
【氏名】八木原 陸矢
【テーマコード(参考)】
4D020
4G146
4H006
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC10
4D020CB01
4G146JA02
4G146JC28
4H006AA03
4H006AB80
(57)【要約】
【課題】十分な二酸化炭素の吸収能および放出能を有する二酸化炭素吸収放出剤と、新規の二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素吸収放出装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素を吸収し、吸収後の前記二酸化炭素を放出する、二酸化炭素吸収放出剤であって、前記二酸化炭素吸収放出剤が、下記式(1)で表される化合物を含有する、二酸化炭素吸収放出剤。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸収し、吸収後の前記二酸化炭素を放出する、二酸化炭素吸収放出剤であって、前記二酸化炭素吸収放出剤が、下記式(1)で表される化合物を含有する、二酸化炭素吸収放出剤。
【化1】
【請求項2】
下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(A)と、
前記二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(B)と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
【化2】
【請求項3】
前記工程(A)および工程(B)を2回以上繰り返して行う、請求項2に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項4】
下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(a)を有する、二酸化炭素の吸収方法。
【化3】
【請求項5】
下記式(1)で表される化合物と、二酸化炭素と、の反応物を含有する二酸化炭素放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(b)を有する、二酸化炭素の放出方法。
【化4】
【請求項6】
下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤を収容する反応容器と、
前記反応容器に収容した前記二酸化炭素吸収放出剤を加熱する加熱部と、
前記反応容器に接続され、前記反応容器内にガスを流入する第1のガス流路と、
前記第1のガス流路に設けられ、前記ガスの流量を調節する第1の開閉弁と、
前記反応容器に接続され、前記反応容器内からガスを放出する第2のガス流路と、
前記第2のガス流路に設けられ、前記ガスの流量を調節する第2の開閉弁と、を備える、二酸化炭素吸収放出装置。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸収放出剤、二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素の吸収方法、および二酸化炭素の放出方法、二酸化炭素吸収放出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素ガスは、温室効果ガスであり、大気中での濃度が上昇することによって、地球温暖化の原因となる。地球上ではこれまでに、文明の進歩によって化石燃料の大量消費が続き、二酸化炭素の排出量が増大し続けてきた。これに対して、植物は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。しかし、世界的規模で森林伐採が進み、植物が大量に失われてきており、二酸化炭素の消費量が減少し続けてきている。その結果、大気中の二酸化炭素の濃度が上昇してきており、温暖化が原因と考えられる様々な弊害が、世界的規模で認められる。このような背景から、大気中の二酸化炭素を吸収して固定化する技術が、種々検討されている。
【0003】
例えば、1,3-ジアミノシクロヘキサン、またはそのシクロヘキサン環骨格中の1~3個の水素原子が、炭素数1~4のアルキル基で置換された誘導体を含有する、二酸化炭素吸収剤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この二酸化炭素吸収剤は、1,3-ジアミノシクロヘキサンおよびその前記誘導体が、その中のアミノ基(-NH)において、二酸化炭素と反応し、アミノ基がカルボキシアミノ基(-NH-C(=O)-OH)となったカルバミン酸誘導体となることにより、二酸化炭素を吸収した状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-520201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、1,3-ジアミノシクロヘキサンおよびその誘導体は、それ自体がポリマー化し易いことが知られており、二酸化炭素吸収能が低下し易いという問題点があった。
一方で、二酸化炭素は、植物の光合成に利用されるだけでなく、高機能材料の製造原料でもある。そこで近年は、二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素を放出する、二酸化炭素の回収技術の開発が進められている。これに対して、特許文献1に記載の1,3-ジアミノシクロヘキサンおよびその誘導体は、十分な二酸化炭素放出能を有するか、定かではない。
【0006】
本発明は、十分な二酸化炭素の吸収能および放出能を有する二酸化炭素吸収放出剤と、新規の二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素吸収放出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を採用する。
[1]二酸化炭素を吸収し、吸収後の前記二酸化炭素を放出する、二酸化炭素吸収放出剤であって、前記二酸化炭素吸収放出剤が、下記式(1)で表される化合物を含有する、二酸化炭素吸収放出剤。
【0008】
【化1】
【0009】
[2]下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(A)と、
前記二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(B)と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
【0010】
【化2】
【0011】
[3]前記工程(A)および工程(B)を2回以上繰り返して行う、[2]に記載の二酸化炭素の回収方法。
【0012】
[4]下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(a)を有する、二酸化炭素の吸収方法。
【0013】
【化3】
【0014】
[5]下記式(1)で表される化合物と、二酸化炭素と、の反応物を含有する二酸化炭素放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(b)を有する、二酸化炭素の放出方法。
【0015】
【化4】
【0016】
[6]下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤を収容する反応容器と、
前記反応容器に収容した前記二酸化炭素吸収放出剤を加熱する加熱部と、
前記反応容器に接続され、前記反応容器内にガスを流入する第1のガス流路と、
前記第1のガス流路に設けられ、前記ガスの流量を調節する第1の開閉弁と、
前記反応容器に接続され、前記反応容器内からガスを放出する第2のガス流路と、
前記第2のガス流路に設けられ、前記ガスの流量を調節する第2の開閉弁と、を備える、二酸化炭素吸収放出装置。
【0017】
【化5】
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十分な二酸化炭素の吸収能および放出能を有する二酸化炭素吸収放出剤と、新規の二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素吸収放出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の一実施形態に係る二酸化炭素吸収放出装置を示す模式図である。
図2】実施例1において、二酸化炭素の吸収時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図3】実施例1において、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図4】実施例2において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図5】実施例3において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例4において、二酸化炭素の吸収時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図7】実施例4において、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図8】実施例5において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図9】実施例6において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図10】実施例7において、二酸化炭素の吸収時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図11】実施例8において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図12】実施例9において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図13】実施例10において、二酸化炭素の吸収時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図14】実施例11において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図15】実施例12において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図16】実施例13において、二酸化炭素の吸収時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図17】実施例14において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図18】実施例15において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図19】実施例1において得られたイソホロンジアミンに二酸化炭素が2mol結合した化合物の13C-NMRスペクトルである。
図20】実施例17において、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図21】実施例18において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図22】実施例19において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図23】実施例20において、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図24】実施例21において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図25】実施例22において、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図26】実施例23において、二酸化炭素濃度と、二酸化炭素吸収量および二酸化炭素放出量との関係を示す図である。
図27】実施例24において、ジアミンまたはモノエタノールアミンの二酸化炭素負荷を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<<二酸化炭素吸収放出剤>>
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素吸収放出剤は、二酸化炭素を吸収し、吸収後の前記二酸化炭素を放出する、二酸化炭素吸収放出剤であって、下記式(1)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)」と称することがある)を含有する。
【0021】
【化6】
【0022】
本実施形態の二酸化炭素吸収放出剤において、二酸化炭素を吸収し、吸収後の二酸化炭素を放出する活性成分は、化合物(1)である。すなわち、化合物(1)は二酸化炭素との反応性(換言すると吸収性)を有し、化合物(1)と二酸化炭素との反応物は、二酸化炭素の放出性を有する。
【0023】
より具体的には、化合物(1)は、イソホロンジアミンの中のアミノ基(-NH)において、二酸化炭素と反応し、アミノ基がカルボキシアミノ基(-NH-C(=O)-OH)となったカルバミン酸誘導体である。化合物(1)は、このようなカルバミン酸誘導体をとることにより、二酸化炭素を吸収可能な状態となる。このとき、カルバミン酸誘導体が置かれた条件によっては、前記カルボキシアミノ基は式「-NH-C(=O)-O」で表される基、または式「-NH -C(=O)-O」で表される基となることもある。化合物(1)は、メチルアミノ気(-CH-NH)がさらに二酸化炭素と反応し、アミノ基がカルボキシアミノ基(-NH-C(=O)-OH)となって、二酸化炭素を吸収する。さらに、化合物(1)と二酸化炭素との反応物である前記カルバミン酸誘導体は、その中のカルボキシアミノ基から二酸化炭素を放出し、アミノ基を形成する。その結果、前記カルバミン酸誘導体は、化合物(1)に戻る。
この二酸化炭素を吸収し、放出した後の化合物(1)は、再度、同様の反応機構によって、二酸化炭素を吸収し、放出することが可能である。すなわち、化合物(1)は、二酸化炭素の吸収および放出を繰り返すことが可能である。
【0024】
本実施形態の二酸化炭素吸収放出剤は、化合物(1)を含有しており、化合物(1)のみを含有していてもよい(換言すると、化合物(1)からなるものであってもよい)し、化合物(1)と、化合物(1)以外の成分と、を含有していてもよい。
例えば、化合物(1)と溶媒を含有する液状の前記二酸化炭素吸収放出剤は、二酸化炭素の吸収および放出がより容易である点で好ましい。
【0025】
<溶媒>
前記溶媒は、特に限定されないが、化合物(1)を溶解させるものが好ましく、常温以下の温度で化合物(1)を溶解させるものがより好ましい。このように、化合物(1)が溶媒に溶解している二酸化炭素吸収放出剤は、二酸化炭素をより容易に吸収できる。
【0026】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15℃~30℃の温度等が挙げられる。
【0027】
前記溶媒は、化合物(1)と二酸化炭素との反応物(前記カルバミン酸誘導体)を、溶解させるものであってもよいし、溶解させないものであってもよい。例えば、前記カルバミン酸誘導体および溶媒を含有する組成物において、いずれかの温度条件下で、前記カルバミン酸誘導体が溶解しない場合、前記カルバミン酸誘導体、すなわち、後述する二酸化炭素放出剤を、より容易に取り出すことができる。
【0028】
前記溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシドが挙げられる。
【0029】
前記二酸化炭素吸収放出剤が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、2種以上の溶媒は、水と、1種または2種以上の有機溶媒と、からなる水系混合溶媒であってもよいし、2種以上の有機溶媒からなる非水系混合溶媒であってもよい。
【0030】
溶媒を含有する場合の、前記二酸化炭素吸収放出剤の化合物(1)の濃度は、特に限定されないが、0.05M~5Mであることが好ましく、例えば、0.05M~3.5M、および0.05M~2Mのいずれかであってもよい。
【0031】
本明細書において、濃度単位「M」は「mol/L」を表し、濃度単位「mM」は「mmol/L」を表す。
【0032】
前記二酸化炭素吸収放出剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(1)と、溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、目的に応じ任意に選択でき、特に限定されない。
【0033】
前記二酸化炭素吸収放出剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。前記他の成分が、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0034】
前記二酸化炭素吸収放出剤(二酸化炭素の吸収を開始する前の二酸化炭素吸収放出剤)において、二酸化炭素吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、前記他の成分の含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。溶媒の含有の有無によらず、前記割合が前記上限値以下であることで、二酸化炭素吸収放出剤が二酸化炭素を吸収および放出する能力が、より高くなる。
換言すると、前記二酸化炭素吸収放出剤(二酸化炭素の吸収を開始する前の二酸化炭素吸収放出剤)において、二酸化炭素吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、化合物(1)および溶媒の合計含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0035】
本実施形態の二酸化炭素吸収放出剤は、二酸化炭素を容易に吸収でき、しかも、吸収した二酸化炭素を容易に放出できる点で、優れた効果を奏する。
従来の二酸化炭素吸収放出剤は、例えば、二酸化炭素を容易に吸収できる反面、二酸化炭素を放出することが困難であるか、または、二酸化炭素を容易に放出できる反面、二酸化炭素を吸収することが困難であった。すなわち、従来の二酸化炭素吸収放出剤は、二酸化炭素の吸収および放出を実用的に両立できなかった。
これに対して、本実施形態の二酸化炭素吸収放出剤は、二酸化炭素を吸収し、吸収後の二酸化炭素を放出する活性成分として、特定範囲の構造を有する化合物(1)を含有することで、従来の問題点を解決している。
【0036】
化合物(1)と、それ以外の成分(溶媒または前記他の成分)と、を含有する、本実施形態の二酸化炭素吸収放出剤は、これらの成分を混合することで、製造できる。
【0037】
<<二酸化炭素の回収方法>>
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の回収方法は、下記式(1)で表される化合物(すなわち化合物(1))を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(A)と、前記二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(B)と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
【0038】
【化7】
【0039】
本実施形態の二酸化炭素の回収方法によれば、前記二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収でき、吸収した二酸化炭素を容易に放出できるため、二酸化炭素を容易に回収できる。
【0040】
<工程(A)>
前記工程(A)においては、化合物(1)を含有する前記二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる。工程(A)においては、二酸化炭素吸収放出剤中の化合物(1)が、その中のアミノ基において二酸化炭素と反応し、上記式(1)で表される化合物(化合物(1))と、二酸化炭素と、の反応物(下記式(2)で表される化合物(化合物(2))であるカルバミン酸誘導体(ジカルバミン酸)となることにより、二酸化炭素が吸収された状態となる。
【0041】
【化8】
【0042】
前記工程(A)においては、例えば、二酸化炭素ガスを二酸化炭素吸収放出剤と接触させればよい。なかでも、化合物(1)および溶媒を含有する液状の二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、工程(A)をより容易に行うことができる。液状の二酸化炭素吸収放出剤は、先に説明したものである。
【0043】
二酸化炭素(ガス)は、単独で二酸化炭素吸収放出剤に吸収させてもよいし、他のガスとの混合ガスの状態で二酸化炭素吸収放出剤に吸収させてもよい。
前記混合ガスとしては、例えば、二酸化炭素の回収対象であるガス状の目的物を、そのまま用いてもよいし、前記目的物をさらに他のガスと混合して希釈して用いてもよい。前記混合ガスとしては、例えば、空気を用いてもよく、乾燥空気は、二酸化炭素の回収対象として、より好適である。他の前記混合ガスとしては、例えば、二酸化炭素ガスおよび不活性ガスを含む混合ガスが挙げられる。ただし、ここで挙げた混合ガスは一例である。
【0044】
前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらの中でも、窒素ガスは、安価であるため特に好適である。
【0045】
二酸化炭素吸収放出剤と接触させる、二酸化炭素を含むガスの、二酸化炭素の濃度は、100体積%以下であればよく、例えば、90体積%以下、80体積%以下、60体積%以下、および40体積%以下のいずれかであってもよい。
二酸化炭素吸収放出剤と接触させる、二酸化炭素を含むガスの、二酸化炭素の濃度は、例えば、30体積%以上であってもよい。
本実施形態の回収方法においては、前記二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収できるだけでなく、二酸化炭素の濃度が上記のように幅広いガスを用いることができ、有用性が高い。
【0046】
二酸化炭素(ガス)を含む前記混合ガスの二酸化炭素の濃度は、特に限定されないが、0.04~100体積%であることが好ましく、例えば、0.04~30体積%、0.04~15体積%、および0.04~5体積%のいずれかであってもよいし、5~100体積%、15~100体積%、および25~100体積%のいずれかであってもよいし、5~30体積%であってもよい。前記濃度が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。前記濃度が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収漏れがより抑制される。
本実施形態の回収方法においては、前記二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収できるだけでなく、二酸化炭素の濃度が上記のように幅広い前記混合ガスを用いることができ、有用性が高い。
工程(A)では、前記二酸化炭素吸収放出剤に、20体積%以上の濃度の二酸化炭素を吸着することができる。固体の化合物(1)を含むDMSO溶液に対して、20体積%以上の二酸化炭素を流通させると、前記化合物(1)に二酸化炭素が1mol吸収され、ジカルバミン酸が生成する。このジカルバミン酸は、DMSOに溶解するため、均一な溶液になる。
【0047】
二酸化炭素を二酸化炭素吸収放出剤に吸収させるときの、二酸化炭素ガスの流量は、目的に応じて任意に選択できる。
前記流量は、二酸化炭素を単独で用いるか、または混合ガスとして用いるか、の使用形態によらず、二酸化炭素吸収放出剤中の化合物(1)の量1molあたり、0.01~20mol/hであることが好ましく、例えば、0.01~10mol/h、0.01~5mol/h、および0.01~1mol/hのいずれかであってもよいし、0.1~20mol/h、1~20mol/h、および10~20mol/hのいずれかであってもよい。前記流量が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。前記流量が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収漏れがより抑制される。
本実施形態の回収方法においては、前記二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収できるだけでなく、二酸化炭素ガスの流量を上記のように幅広く設定でき、有用性が高い。
【0048】
二酸化炭素を二酸化炭素吸収放出剤に吸収させるときの、二酸化炭素吸収放出剤の温度は、二酸化炭素吸収放出剤の種類に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
前記温度は、-18~30℃であることが好ましく、例えば、-18~25℃、-18~15℃、および18~5℃のいずれかであってもよいし、-8~30℃、8~30℃、および18~30℃のいずれかであってもよいし、-8~25℃、および8~15℃のいずれかであってもよい。前記温度が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。前記温度が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収漏れがより抑制される。
【0049】
工程(A)においては、液状の二酸化炭素吸収放出剤を用いる場合、二酸化炭素を単独で用いるか、または混合ガスとして用いるか、の使用形態によらず、二酸化炭素を液状の二酸化炭素吸収放出剤中に直接流入させて、バブリングすることが好ましい。このようにすることで、二酸化炭素の吸収効率を向上させることができる。
また、二酸化炭素を液状の二酸化炭素吸収放出剤中に直接流入させる場合には、二酸化炭素吸収放出剤を公知の手法によって、撹拌してもよい。このようにすることで、二酸化炭素の吸収効率の向上が可能な場合がある。
【0050】
本実施形態においては、化合物(1)の一部が二酸化炭素と未反応の段階で、工程(A)を終了してもよいし、化合物(1)の全量を二酸化炭素と反応させてから、工程(A)を終了してもよい。
工程(A)を開始したときの二酸化炭素吸収放出剤中の化合物(1)の量(モル数)に対する、工程(A)を終了するときの二酸化炭素吸収放出剤中の化合物(1)の量(モル数)の割合は、20モル%以下であることが好ましく、例えば、10モル%以下、5モル%以下、および1モル%以下のいずれかであってもよいし、0モル%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、続く工程(B)における、二酸化炭素の放出量がより増大する。
【0051】
工程(A)においては、液状の二酸化炭素吸収放出剤を用いた場合、これが含有している溶媒の種類に応じて、固体の前記反応物(前記カルバミン酸誘導体)が析出する場合と、析出しない場合がある。前記反応物が析出する場合には、析出物の量の増大によって、二酸化炭素の吸収量の増大を視覚的に確認できる。
本実施形態においては、固体の前記反応物の析出の有無によらず、続く工程(B)を良好に行うことができる。
【0052】
<工程(B)>
前記工程(B)においては、二酸化炭素を吸収後の二酸化炭素吸収放出剤、すなわち、上記式(2)で表される化合物(化合物(2))を含む二酸化炭素吸収放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる。工程(B)においては、工程(A)で生じた前記カルバミン酸誘導体が二酸化炭素を放出し、アミノ基が再生される。その結果、前記カルバミン酸誘導体は、化合物(1)に戻る。
【0053】
本明細書において、「室温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15℃~30℃の温度等が挙げられる。
【0054】
前記回収方法においては、工程(A)および工程(B)を、1回のみ行ってもよいし、2回以上繰り返して行ってもよい。
先の説明のとおり、工程(B)を行うことによって、化合物(1)と二酸化炭素との反応物である前記カルバミン酸誘導体は、二酸化炭素を放出して化合物(1)に戻る。この再生された化合物(1)は、再度、二酸化炭素の吸収および放出に利用できる。したがって、前記回収方法においては、工程(A)および工程(B)を2回以上繰り返して行うことが可能である。
【0055】
工程(A)および工程(B)を繰り返して行う場合には、化合物(1)の一部が二酸化炭素と未反応の段階で、工程(A)を終了することによって、工程(A)および工程(B)をより円滑に行うことができ、二酸化炭素の回収の全工程をより短時間で行うことが可能となることがある。ここで、「化合物(1)の一部が二酸化炭素と未反応の段階」とは、例えば、先に説明した化合物(1)の量(モル数)の割合(モル%)で表される段階である。
【0056】
前記回収方法は、下記式(3)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(3)」と称することがある)を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(C)と、前記二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤を、加熱処理することにより、前記二酸化炭素吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(D)とを有していてもよい。工程(C)は前記工程(A)の前に行われ、工程(D)は前記工程(B)の後、または、工程(C)の後に行われる。
【0057】
【化9】
【0058】
<工程(C)>
前記工程(C)においては、化合物(3)を含有する前記二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる。工程(C)においては、二酸化炭素吸収放出剤中の化合物(3)が、その中のアミノ基において二酸化炭素と反応し、前記カルバミン酸誘導体となることにより、二酸化炭素が吸収された状態となる。
【0059】
前記工程(C)においては、例えば、二酸化炭素ガスを二酸化炭素吸収放出剤と接触させればよい。なかでも、化合物(3)および溶媒を含有する液状の二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、工程(C)をより容易に行うことができる。液状の二酸化炭素吸収放出剤は、先に説明したものである。
【0060】
前記工程(A)と同様に、二酸化炭素(ガス)は、単独で二酸化炭素吸収放出剤に吸収させてもよいし、他のガスとの混合ガスの状態で二酸化炭素吸収放出剤に吸収させてもよい。
【0061】
二酸化炭素吸収放出剤と接触させる、二酸化炭素を含むガスの、二酸化炭素の濃度は、100体積%以下であればよく、例えば、80体積%以下、60体積%以下、40体積%以下、32体積%以下、25体積%以下、15体積%以下、および5体積%以下のいずれかであってもよい。
二酸化炭素吸収放出剤と接触させる、二酸化炭素を含むガスの、二酸化炭素の濃度は、例えば、0.04体積%(400ppm)以上であってもよい。
【0062】
前記工程(A)と同様に、二酸化炭素を二酸化炭素吸収放出剤に吸収させるときの、二酸化炭素ガスの流量は、目的に応じて任意に選択できる。
【0063】
前記工程(A)と同様に、二酸化炭素を二酸化炭素吸収放出剤に吸収させるときの、二酸化炭素吸収放出剤の温度は、二酸化炭素吸収放出剤の種類に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
【0064】
工程(C)においては前記工程(A)と同様に、液状の二酸化炭素吸収放出剤を用いる場合、二酸化炭素を単独で用いるか、または混合ガスとして用いるか、の使用形態によらず、二酸化炭素を液状の二酸化炭素吸収放出剤中に直接流入させて、バブリングすることが好ましい。
【0065】
工程(C)においては、液状の二酸化炭素吸収放出剤を用いた場合、これが含有している溶媒の種類に応じて、固体の前記反応物(前記カルバミン酸誘導体)が析出する場合と、析出しない場合がある。前記反応物が析出する場合には、析出物の量の増大によって、二酸化炭素の吸収量の増大を視覚的に確認できる。
【0066】
工程(C)により、上記式(3)で表される化合物の中のアミノ基(-NH)において、二酸化炭素と反応し、アミノ基がカルボキシアミノ基(-NH-C(=O)-OH)となったカルバミン酸誘導体である、上記式(1)で表される化合物が得られる。従って、引き続き、前記工程(A)により、上記式(1)で表される化合物に二酸化炭素を吸収させることができる。
【0067】
<工程(D)>
前記工程(D)においては、前記工程(C)にて二酸化炭素を吸収して得られた化合物(1)を含む二酸化炭素吸収放出剤を、加熱処理するか、または、前記工程(B)にて二酸化炭素を放出して得られた化合物(1)を含む二酸化炭素吸収放出剤を、加熱処理することにより、前記二酸化炭素吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる。工程(D)においては、工程(B)または工程(C)で生じた前記カルバミン酸誘導体が二酸化炭素を放出し、アミノ基が再生される。その結果、前記カルバミン酸誘導体は、化合物(3)に戻る。
【0068】
工程(D)において、二酸化炭素を吸収後の二酸化炭素吸収放出剤を加熱処理するときの温度は、例えば、化合物(1)の種類、溶媒を用いる場合にはその種類等を考慮して、適宜調節できる。前記加熱処理時の温度は、例えば、化合物(1)の沸点未満であることが好ましく、溶媒を用いる場合には溶媒の沸点未満であることが好ましい。前記加熱処理時の温度がこのような範囲であることで、化合物(1)または溶媒の散逸を抑制できる。
【0069】
前記加熱処理時の温度は、より具体的には、例えば、100℃以下であることが好ましく、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、および50℃以下のいずれかであってもよい。前記温度が前記上限値以下であることで、より少ないエネルギー量で、かつ、より短時間で、二酸化炭素を放出できる。
前記加熱処理時の温度の下限値は、特に限定されない。二酸化炭素の放出がより円滑に進行する点では、前記温度は、30℃以上であることが好ましい。
前記加熱処理時の温度が、従来の方法の場合よりも低めの温度であっても、工程(D)においては、前記カルバミン酸誘導体が十分な量の二酸化炭素を放出する。このように、加熱処理時の温度が低めである点で、本実施形態の回収方法は、有用性が高い。
【0070】
二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0071】
二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素吸収放出剤)において、二酸化炭素吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、前記他の成分の含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。溶媒の含有の有無によらず、前記割合が前記上限値以下であることで、二酸化炭素吸収放出剤が二酸化炭素を放出する能力が、より高くなる。
換言すると、二酸化炭素を吸収後の前記二酸化炭素吸収放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素吸収放出剤)において、二酸化炭素吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、前記カルバミン酸誘導体および溶媒の合計含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0072】
前記回収方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(A)と、工程(B)と、工程(C)と、工程(D)と、のいずれにも該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類および数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0073】
<<二酸化炭素の吸収方法>>
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収方法は、下記式(1)で表される化合物(すなわち化合物(1))を含有する二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させる工程(a)を有する)。
【0074】
【化10】
【0075】
本実施形態における工程(a)は、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の回収方法における工程(A)と同じである。したがって、ここでは、工程(a)の詳細な説明を省略する。
【0076】
本実施形態の二酸化炭素の吸収方法によれば、前記二酸化炭素吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収できる。
【0077】
本実施形態の二酸化炭素の吸収方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(a)に該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類および数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0078】
<<二酸化炭素の放出方法>>
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の放出方法は、下記式(1)で表される化合物(すなわち化合物(1))と、二酸化炭素と、の反応物を含有する二酸化炭素放出剤、すなわち、上記式(2)で表される化合物(化合物(2))を含む二酸化炭素吸収放出剤を、窒素雰囲気下、室温で放置することにより、前記二酸化炭素放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(b)を有する。
【0079】
【化11】
【0080】
本実施形態において、上述の化合物(1)と、二酸化炭素と、の反応物としては、先の説明のとおり、例えば、化合物(1)中の、シクロアルキル環骨格を構成している炭素原子に直接結合しているアミノ基と、二酸化炭素と、の反応物が挙げられる。
【0081】
<二酸化炭素放出剤>
前記二酸化炭素放出剤は、化合物(1)と二酸化炭素との反応物(化合物(2))を含有しており、前記反応物のみを含有していてもよい(換言すると、前記反応物からなるものであってもよい)し、前記反応物と、前記反応物以外の成分と、を含有していてもよい。
例えば、前記反応物と溶媒を含有する液状の前記二酸化炭素放出剤は、二酸化炭素の放出がより容易である点で好ましい。
【0082】
液状の前記二酸化炭素放出剤としては、例えば、上述の二酸化炭素を吸収後の液状の前記二酸化炭素吸収放出剤と同じものが挙げられる。
【0083】
二酸化炭素放出剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記カルバミン酸誘導体と、前記溶媒と、前記塩基触媒と、前記酸と、のいずれにも該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、目的に応じ任意に選択でき、特に限定されない。
【0084】
二酸化炭素放出剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせおよび比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0085】
前記二酸化炭素放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素放出剤)において、二酸化炭素放出剤の総質量(質量部)に対する、前記他の成分の含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。溶媒の含有の有無によらず、前記割合が前記上限値以下であることで、二酸化炭素放出剤が二酸化炭素を放出する能力が、より高くなる。
換言すると、前記二酸化炭素放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素放出剤)において、二酸化炭素放出剤の総質量(質量部)に対する、前記カルバミン酸誘導体および溶媒の合計含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0086】
本実施形態の二酸化炭素の放出方法によれば、前記二酸化炭素放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に放出できる。
【0087】
ここまでに説明した点を除けば、本実施形態における工程(b)は、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の回収方法における工程(B)と同じである。したがって、ここでは、これ以上の工程(b)の詳細な説明を省略する。
【0088】
前記二酸化炭素放出剤は、例えば、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収方法によって、二酸化炭素吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、製造できる。
そして、この場合には、mが0であり、pが2であり、2個(p個)のカルボキシアミノ基が互いにメタ位に配置されている場合の化合物(1)を含有する二酸化炭素放出剤を用いてもよい。
また、前記二酸化炭素放出剤は、例えば、前記カルバミン酸誘導体を、別の方法で製造し、必要に応じて、前記カルバミン酸誘導体と、それ以外の成分(溶媒または前記他の成分)と、を混合することでも、製造できる。
【0089】
本実施形態の二酸化炭素の放出方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(b)に該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類および数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0090】
<<二酸化炭素吸収放出装置>>
図1は、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素吸収放出装置を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の二酸化炭素吸収放出装置1は、反応容器10と、加熱部20と、第1のガス流路30と、第1の開閉弁40と、第2のガス流路50と、第2の開閉弁60と、を備える。
【0091】
反応容器10は、下記式(1)で表される化合物を含有する二酸化炭素吸収放出剤100を収容する容器である。
【0092】
【化12】
【0093】
反応容器10としては、二酸化炭素吸収放出剤100によって劣化しないものであれば、特に限定されず、例えば、ガラス製の試験管、フラスコ等が挙げられる。
【0094】
加熱部20は、反応容器10の底部側において、反応容器10の外周面(外側面)および底面を囲むように配置されている。加熱部20は、反応容器10を外側から加熱することにより、反応容器10に収容した二酸化炭素吸収放出剤100、および反応容器10内に流入させたガスを、反応に適した温度に加熱する。
加熱部20としては、反応容器10内の二酸化炭素吸収放出剤100およびガスを所定の温度に加熱することができれば、特に限定されず、例えば、電熱ヒーター等が挙げられる。
【0095】
第1のガス流路30は、反応容器10に接続され、反応容器10内にガスを流入するためのものである。第1のガス流路30のうち、反応容器10内に配置されない方の端部30Aは、ガスが充填されているガスタンクに接続されている。第1のガス流路30のうち、反応容器10内に配置される方の端部30Bは、反応容器10に収容した二酸化炭素吸収放出剤100中に配置される。
【0096】
第1の開閉弁40は、第1のガス流路30の途中に設けられ、第1のガス流路30を通って反応容器10内に流入するガスの流量を調節するためのものである。第1の開閉弁40としては、特に限定されず、例えば、電磁バルブ等が挙げられる。
【0097】
第2のガス流路50は、反応容器10に接続され、反応容器10内からガスを放出するためのものである。第2のガス流路50のうち、反応容器10内に配置されない方の端部50Aは、二酸化炭素を回収するガスタンクに接続されている。第2のガス流路50のうち、反応容器10内に配置される方の端部50Bは、反応容器10に収容した二酸化炭素吸収放出剤100から離間した位置に配置される。
【0098】
第2の開閉弁60は、第2のガス流路50の途中に設けられ、第2のガス流路50を通って反応容器10内から放出するガスの流量を調節するためのものである。第2の開閉弁60としては、特に限定されず、例えば、電磁バルブ等が挙げられる。
【0099】
本実施形態の二酸化炭素吸収放出装置1は、流量計70を備えていてもよい。
流量計70は、第1のガス流路30の途中に設けられ、第1のガス流路30を通って反応容器10内に流入するガスの流量を測定するためのものである。
【0100】
本実施形態の二酸化炭素吸収放出装置1の使用方法を説明する。
【0101】
(二酸化炭素の吸収:前記工程A、前記工程C)
前記工程Aや前記工程Cにおいて、二酸化炭素吸収放出剤100に二酸化炭素を吸収させる場合、第1の開閉弁40を開いて、反応容器10内に二酸化炭素を流入させ、反応容器10内の二酸化炭素吸収放出剤100に二酸化炭素を吸収させる。この際、第2の開閉弁60は開いていてもよく、閉じていてもよい。
二酸化炭素吸収放出剤100による二酸化炭素の吸収が完了した後、第1の開閉弁40と第2の開閉弁60を閉じる。
【0102】
二酸化炭素吸収放出剤100に二酸化炭素を吸収させる際、加熱部20による、二酸化炭素吸収放出剤100および二酸化炭素の加熱を行う必要はない。
工程Aから開始した場合、前記化合物(1)1molに対して、二酸化炭素を1mol吸収させることができる。
工程Cから開始した場合、前記化合物(2)1molに対して、二酸化炭素を2mol吸収させることができる。
【0103】
(二酸化炭素の放出:前記工程B)
前記工程Bにおいて、二酸化炭素吸収放出剤100から二酸化炭素を放出させる場合、第1の開閉弁40と第2の開閉弁60を開いて、反応容器10内に窒素を流入させる。窒素雰囲気下、室温で放置することにより、二酸化炭素放出剤100に含まれる、前記化合物(1)と二酸化炭素との反応物から二酸化炭素が放出される。前記化合物(1)と二酸化炭素との反応物から、二酸化炭素を1mol放出させることができる。
【0104】
なお、第1の開閉弁40と流量計70を用いて、反応容器10内に流入させる窒素の流量を制御する必要はないが、窒素の流量が一定であれば、前記化合物(1)と二酸化炭素との反応物から放出される二酸化炭素の濃度を制御できる。
【0105】
(二酸化炭素の放出:前記工程D)
前記工程Dにおいて、前記工程Bにおいて、前記化合物(1)と二酸化炭素との反応物から二酸化炭素を放出した後、さらに、前記化合物(1)から二酸化炭素を放出させる場合、加熱部20によって、反応容器10内の二酸化炭素吸収放出剤100を60℃以上に加熱する。この際、第1の開閉弁40と第2の開閉弁60を開いて、反応容器10内に窒素を流入させて、反応容器10内を窒素雰囲気とする。これにより、二酸化炭素放出剤100に含まれる、前記化合物(1)から二酸化炭素が放出される。前記化合物(1)から、二酸化炭素を1mol放出させることができる。
【実施例0106】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0107】
<<二酸化炭素吸収放出剤の製造>>
下記式(4)で示されるイソホロンジアミンのカルバミン酸誘導体とジメチルスルホキシド(DMSO)を混合することにより、前記カルバミン酸誘導体の濃度が3mmolである、イソホロンジアミンのDMSO溶液を調製し、これを二酸化炭素吸収放出剤とした。このイソホロンジアミンのDMSO溶液を、以下の実施例1~実施例15で用いた。
【0108】
[実施例1]
<<二酸化炭素の吸収>>
試験管中に、上記で得られたカルバミン酸誘導体のDMSO溶液(15mL)を入れ、試験管の開口部に三方コックを装着した。前記三方コックのガスの流入口から、金属製の細管を試験管の内部に通し、前記細管の、試験管の内部側の端部を、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に配置した。以上により、三方コックのガスの流入口から、前記細管を通して、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に、試験管の外部からガスを直接流入させるとともに、試験管の内部の気相部分のガスを、三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出できるように、装置を組み立てた。
次いで、室温下で前記装置を用いて、二酸化炭素を10mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、40mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、下記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図2および図3に示す。
[二酸化炭素の除去効率(%)]=[二酸化炭素の吸収量]/[二酸化炭素の流入量]×100
【0109】
二酸化炭素の流入開始から60分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁し、その後透明に戻った。
図2および図3から明らかなように、二酸化炭素の流入開始直後から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約80分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素を6.03mmol吸収することが確認された。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液では、下記式(4)で示す反応により、イソホロンジアミンに二酸化炭素が吸収されていると考えられる。
【0110】
【化13】
【0111】
[実施例2]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例1における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を10mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、40mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図4に示す。
二酸化炭素の放出量は2.63mmolであることが確認された。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液では、下記式(5)で示す反応により、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素が放出されていると考えられる。
【0112】
【化14】
【0113】
[実施例3]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例2継続して、窒素を10mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、40mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図5に示す。
二酸化炭素の放出量は2.94mmolであることが確認された。
【0114】
[実施例4]
<<二酸化炭素の吸収>>
前記装置を用いて、二酸化炭素を30体積%、窒素を70体積%でそれぞれ含む混合ガスを、33.3mL/min(二酸化炭素が26.8mmol/h)の流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、16.7mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図6および図7に示す。
【0115】
二酸化炭素の流入開始から10分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁し、その後透明に戻った。
図6および図7から明らかなように、二酸化炭素の流入開始直後から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約10分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素を6.91mmol吸収することが確認された。
【0116】
[実施例5]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例4における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を33.3mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、16.7mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図8に示す。
二酸化炭素の放出量は2.63mmolであることが確認された。
【0117】
[実施例6]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例5から継続して、窒素を3.3mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、16.7mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図9に示す。
二酸化炭素の放出量は3.02mmolであることが確認された。
【0118】
[実施例7]
<<二酸化炭素の吸収>>
前記装置を用いて、二酸化炭素を20体積%、窒素を80体積%でそれぞれ含む混合ガスを、50mL/min(二酸化炭素が26.8mmol/h)の流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。同様の操作を2回行った。結果を図10に示す。図10に示す「try1」は1回目の操作の結果を示し、「try2」は2回目の操作の結果を示す。
【0119】
二酸化炭素の流入開始から10分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁し、その後透明に戻った。
図10から明らかなように、二酸化炭素の流入開始直後から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約10分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、1回目には二酸化炭素を2.91mmol吸収し、2回目には二酸化炭素を2.71mmol吸収することが確認された。
【0120】
[実施例8]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例7における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。同様の操作を2回行った。結果を図11に示す。図11に示す「try1」は1回目の操作の結果を示し、「try2」は2回目の操作の結果を示す。結果を図9に示す。
二酸化炭素の放出量は、1回目には1.17mmolであり、2回目には1.97mmolであることが確認された。
【0121】
[実施例9]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例8から継続して、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。同様の操作を2回行った。結果を図10に示す。図10に示す「try1」は1回目の操作の結果を示し、「try2」は2回目の操作の結果を示す。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図10に示す。
二酸化炭素の放出量は、1回目には3.51mmolであり、2回目には3.14mmolであることが確認された。
【0122】
[実施例10]
<<二酸化炭素の吸収>>
前記装置を用いて、二酸化炭素を10体積%、窒素を90体積%でそれぞれ含む混合ガスを、50mL/min(二酸化炭素が13.4mmol/h)の流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図13に示す。
【0123】
二酸化炭素の流入開始から20分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁し、その後透明に戻った。
図13から明らかなように、二酸化炭素の流入開始直後から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約20分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素を4.17mmol吸収することが確認された。
【0124】
[実施例11]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例10における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、目視では変化が確認されなかった。結果を図14に示す。
二酸化炭素の放出量は0.75mmolであることが確認された。
【0125】
[実施例12]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例11から継続して、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い透明に戻った。結果を図15に示す。
二酸化炭素の放出量は3.12mmolであることが確認された。
【0126】
[実施例13]
<<二酸化炭素の吸収>>
前記装置を用いて、二酸化炭素を1体積%、窒素を99体積%でそれぞれ含む混合ガスを、50mL/min(二酸化炭素が1.34mmol/h)の流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図16に示す。
【0127】
二酸化炭素の流入開始から20分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁した。
図16から明らかなように、二酸化炭素の流入開始2分後過ぎた頃から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約3分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素を3.38mmol吸収することが確認された。
【0128】
[実施例14]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例13における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、目視では変化が確認されなかった。結果を図17に示す。
二酸化炭素の放出量は0.18mmolであることが確認された。
【0129】
[実施例15]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例14から継続して、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い透明に戻った。結果を図18に示す。
二酸化炭素の放出量は3.17mmolであることが確認された。
【0130】
[実施例16]
実施例1で二酸化炭素の吸収時に得られた反応物が、イソホロンジアミンに二酸化炭素が2mol結合したものであることを、13C-NMRによる分析で確認した。結果を図19に示す。
【0131】
[実施例17]
<<二酸化炭素の吸収>>
前記装置を用いて、二酸化炭素を50体積%、窒素を50体積%でそれぞれ含む混合ガスを、20mL/min(二酸化炭素が26.8mmol/h)の流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、30mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図20に示す。
【0132】
二酸化炭素の流入開始から20分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁した。
図20から明らかなように、二酸化炭素の流入開始2分後過ぎた頃から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約60分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素を3.30mmol吸収することが確認された。
【0133】
[実施例18]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例17における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を20mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、30mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図21に示す。
二酸化炭素の放出量は1.11mmolであることが確認された。
【0134】
[実施例19]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例18から継続して、窒素を20mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、30mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。結果を図22に示す。
二酸化炭素の放出量は1.53mmolであることが確認された。
【0135】
[実施例20]
<<二酸化炭素の吸収>>
前記装置を用いて、二酸化炭素を15体積%、窒素を85体積%でそれぞれ含む混合ガスを、50mL/min(二酸化炭素が20.1mmol/h)の流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図23に示す。
【0136】
二酸化炭素の流入開始から20分後の段階では、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の吸収に伴い白濁した。
図23から明らかなように、二酸化炭素の流入開始2分後過ぎた頃から、二酸化炭素の除去効率は100%に近く、前記DMSO溶液は高効率で二酸化炭素を吸収していた。そして、時間経過とともに、二酸化炭素と反応可能なカルバミン酸誘導体の量が減少し、二酸化炭素の除去効率が低下していき、二酸化炭素の流入開始から約20分後には、二酸化炭素が除去されなくなった。
前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素を2.85mmol吸収することが確認された。
【0137】
[実施例21]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例20における二酸化炭素を窒素に切り替えて、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液は、二酸化炭素の放出に伴い白濁した。結果を図24に示す。
二酸化炭素の放出量は1.30mmolであることが確認された。
【0138】
[実施例22]
<<二酸化炭素の放出>>
室温下で前記装置を用いて、実施例21から継続して、窒素を50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液中に流入させてバブリングするとともに、前記カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を60℃に加熱して、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。結果を図25に示す。
二酸化炭素の放出量は1.80mmolであることが確認された。
【0139】
[実施例23]
実施例1~実施例15、および実施例17~実施例22の結果から、種々の二酸化炭素濃度における二酸化炭素吸収量および窒素流通下での室温または60℃における二酸化炭素放出量を図26に示す。
図26に示す結果から、吸収時におけるガス(混合ガス)中の二酸化炭素の濃度が20体積%以上であると、カルバミン酸誘導体のDMSO溶液による二酸化炭素の吸収量が多く、カルバミン酸誘導体のDMSO溶液を透明化できることが分かった。
【0140】
[実施例24]
イソホロンジアミン(IPDA)、ヘキサメチレンジアミン(Hexamethylenediamine)、1,4-シクロヘキサンジアミン(1,4-cyclohexanediamine)、1,3-シクロヘキサンジアミン(1,3-cyclohexanediamine)、モノエタノールアミン(MEA)を用いた際のCO吸収量を評価した。
室温下で前記装置を用いて、二酸化炭素(100%)を10mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記ジアミンまたはモノエタノールアミンのDMSO溶液中に流入させてバブリングする(工程(A))とともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。そして、この排出ガスを、40mL/minの流量の窒素ガスにより希釈し、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、前記ジアミンまたはモノエタノールアミンのDMSO溶液(すなわち二酸化炭素吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、上記式により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図27に示す。
図27に示す結果から、図27に示す前記ジアミンまたはモノエタノールアミンは、イソホロンジアミンと同様に室温下で二酸化炭素の吸収および放出に利用することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、二酸化炭素の固定、および二酸化炭素の回収の分野全般で利用可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 二酸化炭素吸収放出装置
10 反応容器
20 加熱部
30 第1のガス流路
40 第1の開閉弁
50 第2のガス流路
60 第2の開閉弁
70 流量計
100 二酸化炭素吸収放出剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27