(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135823
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析システム、画像解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B6/00 350D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046702
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 謙太
(72)【発明者】
【氏名】角森 昭教
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 春彦
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA13
4C093AA26
4C093CA15
4C093DA03
4C093FF16
4C093FF22
4C093FF23
4C093FF24
4C093FF28
4C093FG13
4C093FG14
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】高精度に気管・気管支の狭窄状態を推定可能な画像解析装置、画像解析システム、画像解析方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像解析装置3は、気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信部31と、複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域R1として特定する特定部31と、胸腔内領域R1から気管壁Wを抽出する抽出部31と、気管壁Wから気管径rを計測する計測部31を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信部と、
前記複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域と設定する設定部と、
前記複数のフレーム画像から気管壁を抽出する抽出部と、
前記胸腔内領域内の前記気管壁から気管径を計測する計測部と、を備える画像解析装置。
【請求項2】
前記設定部は、胸郭の構造物に基づいて前記胸腔内領域を設定する請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記胸郭の構造物は、胸鎖骨関節部、椎体及び胸郭肋骨のうち少なくとも一つである請求項2に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記設定部は、気管支領域を設定し、
前記計測部は、前記気管支領域を除く範囲で気管径を計測する請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記計測部の計測結果を表示部に表示する表示制御部を備える請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記計測結果として、前記複数のフレーム画像における気管径の平均値、最大値、最小値及び分散値のグラフ、最大フレーム画像及び最小フレーム画像、気管径の径変化量及び径変化率あるいはフレーム画像における気管径の最大径及び最小径のうち少なくともいずれかを表示する請求項5に記載の画像解析装置。
【請求項7】
被写体の呼気状態を特定する特定部を備え、
前記計測部は、前記特定部の特定内容に基づいて気管径を計測する前記フレーム画像を選択する請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項8】
前記特定部は、前記フレーム画像が呼気開始時のフレーム画像あるいは呼気終末時のフレーム画像であるかを特定する請求項7に記載の画像解析装置。
【請求項9】
前記特定部は、肺野の面積、画素値あるいは横隔膜の位置の少なくともいずれかに基づいて被写体の呼気状態を特定する請求項8に記載の画像解析装置。
【請求項10】
胸腔内気管領域の濃度の経時変化を測定する測定部を備える請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項11】
前記計測部は、前記気管壁について人体の頭尾方向と垂直な方向に代表点を抽出して、人体の頭尾方向に当該代表点を連ねた代表線をもとに当該代表線を構成する各点における傾きに対する法線から、気管径を計測する請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項12】
前記代表点は、左右前記気管壁の中点である請求項11に記載の画像解析装置。
【請求項13】
前記気管壁の修正が可能な修正部を備え、
前記計測部は、前記修正部による前記気管壁の修正に基づき、気管径を再計測する請求項1から12のいずれか一項に記載の画像解析装置。
【請求項14】
前記修正部は、前記胸腔内領域及び/又は前記気管支領域の修正が可能である請求項4を引用する請求項13に記載の画像解析装置。
【請求項15】
気管を含む被写体の動態を撮影して複数のフレーム画像からなる動態画像を取得する撮影装置と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の画像解析装置と、を備える画像解析システム。
【請求項16】
画像解析装置の画像解析方法であって、
気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信ステップと、
前記複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域として設定する設定ステップと、
前記複数のフレーム画像から気管壁を抽出する抽出ステップと、
前記胸腔内領域内の前記気管壁から気管径を計測する計測ステップと、を備える画像解析方法。
【請求項17】
画像解析装置のコンピューターを、
気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信部、
前記複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域として設定する設定部、
前記複数のフレーム画像から気管壁を抽出する抽出部、
前記胸腔内領域内の前記気管壁から気管径を計測する計測部、として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置、画像解析システム、画像解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
気管・気管支が軟化して縮むことで、息を吐いた時に気道が狭窄する疾患である気管・気管支軟化症が知られている。画像解析装置により、気管・気管支が狭窄しているか否かを画像から判定するためには、画像から気管領域を特定する必要がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、声帯位置と気管支の樹状構造の分岐位置を検出することで気管領域を特定する医用画像処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、気管・気管支軟化症において、狭窄が起こらない胸腔外も気管領域として特定する。そのため、気管・気管支が狭窄しているか否かを判定する際にその精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、高精度に気管・気管支の狭窄状態を推定可能な画像解析装置、画像解析システム、画像解析方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、画像解析装置であって、
気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信部と、
前記複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域と設定する設定部と、
前記複数のフレーム画像から気管壁を抽出する抽出部と、
前記胸腔内領域内の前記気管壁から気管径を計測する計測部と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像解析装置であって、
前記設定部は、胸郭の構造物に基づいて前記胸腔内領域を設定する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像解析装置であって、
前記胸郭の構造物は、胸鎖骨関節部、椎体及び胸郭肋骨のうち少なくとも一つである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像解析装置であって、
前記設定部は、気管支領域を設定し、
前記計測部は、前記気管支領域を除く範囲で気管径を計測する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の画像解析装置であって、
前記計測部の計測結果を表示部に表示する表示制御部を備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像解析装置であって、
前記表示制御部は、前記計測結果として、前記複数のフレーム画像における気管径の平均値、最大値、最小値及び分散値のグラフ、最大フレーム画像及び最小フレーム画像、気管径の径変化量及び径変化率あるいはフレーム画像における気管径の最大径及び最小径のうち少なくともいずれかを表示する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の画像解析装置であって、
被写体の呼気状態を特定する特定部を備え、
前記計測部は、前記特定部の特定内容に基づいて気管径を計測する前記フレーム画像を選択する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像解析装置であって、
前記特定部は、前記フレーム画像が呼気開始時のフレーム画像あるいは呼気終末時のフレーム画像であるかを特定する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の画像解析装置であって、
前記特定部は、肺野の面積、画素値あるいは横隔膜の位置の少なくともいずれかに基づいて被写体の呼気状態を特定する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の画像解析装置であって、
胸腔内気管領域の濃度の経時変化を測定する測定部を備える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載の画像解析装置であって、
前記計測部は、前記気管壁について人体の頭尾方向と垂直な方向に代表点を抽出して、人体の頭尾方向に当該代表点を連ねた代表線をもとに当該代表線を構成する各点における傾きに対する法線から、気管径を計測する。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像解析装置であって、
前記代表点は、左右前記気管壁の中点である。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項1から12のいずれか一項に記載の画像解析装置であって、
前記気管壁の修正が可能な修正部を備え、
前記計測部は、前記修正部による前記気管壁の修正に基づき、気管径を再計測する。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項4を引用する請求項13に記載の画像解析装置であって、
前記修正部は、前記胸腔内領域及び/又は前記気管支領域の修正が可能である。
【0021】
請求項15に記載の発明は、画像解析システムであって、
気管を含む被写体の動態を撮影して複数のフレーム画像からなる動態画像を取得する撮影装置と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の画像解析装置と、を備える。
【0022】
請求項16に記載の発明は、
画像解析装置の画像解析方法であって、
気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信ステップと、
前記複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域として設定する設定ステップと、
前記複数のフレーム画像から気管壁を抽出する抽出ステップと、
前記胸腔内領域内の前記気管壁から気管径を計測する計測ステップと、を備える。
【0023】
請求項17に記載の発明は、プログラムであって、
画像解析装置のコンピューターを、
気管を含む被写体の呼気状態を動態撮影した複数のフレーム画像からなる動態画像を受信する受信部、
前記複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域として設定する設定部、
前記複数のフレーム画像から気管壁を抽出する抽出部、
前記胸腔内領域内の前記気管壁から気管径を計測する計測部、として機能させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高精度に気管・気管支の狭窄状態を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】画像解析システムの全体構成を示す図である。
【
図4】フレーム画像のクロップ処理のフローチャートである。
【
図6】胸腔内領域、胸腔内気管領域、胸腔外領域及び気管支領域を示す図である。
【
図8A】気管領域の4点の検出処理を示す図である。
【
図10B】気管の法線と、法線と気管壁の交点を示す図である。
【
図10C】気管の最大径及び最小径を示す図である。
【
図11】呼気フレーム画像検出処理を示すフローチャートである。
【
図12】推定結果が表示された表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0027】
[画像解析システム]
図1に、本実施形態に係る画像解析装置である診断用コンソール3を備える画像解析システム100の全体構成を示す。
【0028】
図1に示すように、画像解析システム100は、撮影装置1及び撮影用コンソール2が通信ケーブル等により接続される。また、撮影用コンソール2及び診断用コンソール3は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続される。画像解析システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じる。そのため、各装置間の通信は、DICOMに則る。
【0029】
〔撮影装置〕
撮影装置1は、例えば、被写体Mの動態を撮影する撮影手段である。撮影装置1は、被写体Mに対し、X線等の放射線をパルス状にして所定間隔で繰り返し照射するパルス照射をする。もしくは、撮影装置1は、低線量率にして途切れなく継続して照射する連続照射をする。撮影装置1は、このようなパルス照射ないし連続照射による動態撮影で、被写体Mの動態を示す複数の画像を取得する。ここで、動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。ここで、動態撮影には動画撮影が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影するものは含まれない。また、動態画像には動画が含まれるが、動画を表示しながら静止画を撮影して得られた画像は含まれない。
なお、以下の実施形態では、撮影装置1が、パルス照射で胸部を動態撮影する場合を例示する。
【0030】
(放射線源)
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置される。放射線源11は、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
【0031】
(放射線照射制御装置)
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続される。放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影をする。当該放射線照射条件とは、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値及び付加フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致する。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致する。
【0032】
(放射線検出部)
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられる。放射線検出部13は、FPD(Flat Panel Display)等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有する。FPDの基板上の所定位置には、複数の検出素子(画素)がマトリクス状に配列される。検出素子は、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出する。また、検出素子は、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)等のスイッチング部を備えて構成される。FPDには、例えばシンチレーターを介して光電変換素子によりX線を電気信号に変換する間接変換型がある。また、FPDには、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型がある。本実施形態においては、放射線検出部13は、間接変換型のFPDを用いても、直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0033】
(読取制御装置)
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続される。読取制御装置14は、放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御する。当該制御は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づく。
【0034】
読取制御装置14は、各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングして、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることで、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像である。各フレーム画像は、各画素の濃度を表す信号値からなる。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。
【0035】
画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ及び画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致する。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致する。
【0036】
放射線照射制御装置12と読取制御装置14は、互いに接続される。放射線照射制御装置12と読取制御装置14は、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像読取動作を同調させる。
【0037】
〔撮影用コンソール〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力する。そして、撮影用コンソール2は、撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取りを制御する。また、撮影用コンソール2は、撮影装置1が取得した動態画像を表示する。これにより、撮影技師等の撮影実施者がポジショニングを確認できる。また、これにより、撮影技師等の撮影実施者が、診断に適した画像であるか否かを確認できる。
【0038】
撮影用コンソール2は、
図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24及び通信部25等を備える。撮影用コンソール2の各部は、バス26で接続する。
【0039】
(制御部)
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されたシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開する。制御部21のCPUは、展開されたプログラムに従って、後述する撮影制御処理をはじめとする各種処理を実行する。制御部21のCPUは、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0040】
(記憶部)
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムや、各種プログラムによる処理を実行するのに必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、
図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶する。また、記憶部22は、検査対象部位や撮影方向に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶する。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0041】
(操作部)
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備える。操作部23は、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良い。この場合、操作部23は、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0042】
(表示部)
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成される。表示部24は、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0043】
(通信部)
通信部25は、LANアダプター、モデムあるいはTA(Terminal Adapter)等を備える。通信部25は、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0044】
〔診断用コンソール〕
診断用コンソール3は、
図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34及び通信部35等を備えて構成される装置である。診断用コンソール3の各部は、バス36で接続する。診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得する。診断用コンソール3は、取得した動態画像に基づいて、気管及び/又は気管支(以下、気管・気管支と表記)の狭窄状態を表す特徴量を測定する。診断用コンソール3は、特徴量の測定結果に基づいて気管・気管支の狭窄状態を推定する。
【0045】
(制御部)
制御部31は、CPU及びRAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されたシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開する。また、制御部31のCPUは、展開されたプログラムに従って、後述する狭窄状態推定処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3の各部の動作を集中制御する。
【0046】
後述するように、本発明において、制御部31は、動態画像を受信する受信部として機能する。また、制御部31は、複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域R1(
図6参照)として設定する設定部として機能する。また、制御部31は、複数のフレーム画像から気管壁W(
図8B参照)を抽出する抽出部として機能する。また、制御部31は、胸腔内領域R1内の気管壁Wから気管径r(
図10C参照)を計測する計測部として機能する。また、制御部31は、計測部の計測結果を表示部34に表示する表示制御部として機能する。また、制御部31は、被写体Mの呼気状態を特定する特定部として機能する。また、制御部31は、抽出された気管壁Wを修正する修正部として機能する。また、制御部31は、胸腔内気管領域R2(
図6参照)の濃度の計時変化を測定する測定部として機能する。
【0047】
(記憶部)
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、各種プログラムやプログラムによる処理の実行に必要なパラメーター或いは処理結果等のデータを記憶する。当該各種プログラムには、制御部31が
図3に示す狭窄状態推定処理を実行するためのプログラムを含む。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で記憶部32に格納される。制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0048】
また、記憶部32には、各種の情報が患者情報及び検査情報に対応付けて記憶される。当該各種の情報とは、例えば過去に撮影された動態画像及びその動態画像から測定された気管・気管支の後述する狭窄率、狭窄の有無及び疾患の推定結果等である。なお、当該患者情報は、例えば、患者ID、患者の氏名、身長、体重、年齢及び性別等を含む。また、当該検査情報は、例えば、検査ID、検査日、検査対象部位及び正面あるいは側面といった撮影方向等を含む。
【0049】
(操作部)
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイス等を備えて構成される。操作部33は、キー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良い。この場合、操作部33は、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0050】
(表示部)
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成される。表示部34は、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種の表示をする。
【0051】
(通信部)
通信部35は、LANアダプター、モデムあるいはTA等を備える。通信部35は、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0052】
[画像解析システムの動作]
〔撮影制御処理〕
次に、本実施形態における上記画像解析システム100の動作について説明する。まず、撮影装置1及び撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図2に、撮影用コンソール2の制御部21で実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0053】
(患者情報の入力)
まず、ユーザーにより撮影用コンソール2の操作部23が操作される。当該操作により、被検者である被写体Mの患者情報及び検査情報が入力される(ステップS101)。
【0054】
(放射線照射条件及び画像読取条件の設定)
次いで、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定される。また、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS102)。ここで、フレームレートは、呼気サイクルより短くなるように設定される。一般的な動態撮影のフレームレートは15fpsである。しかしながら、呼気サイクルは周期が長いため、7.5fpsや3fpsなどとしてもよい。
【0055】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS103)。ここで、撮影実施者は、被写体Mを放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングをする。また、被写体Mに対して呼吸状態を指示する。具体的には、被写体Mに深呼吸を促す。あるいは、被写体Mに安静呼吸や努力呼吸を指示してもよい。撮影準備が整った時点で、撮影実施者は、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0056】
(動態撮影)
撮影実施者が放射線照射指示を入力すると(ステップS103;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される。(ステップS104)。すなわち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。
【0057】
操作部23による放射線照射終了指示の入力後、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止する。撮影実施者は、少なくとも呼気を含むタイミングで動態撮影するように、放射線照射終了を指示する。気管・気管支の狭窄は、呼気の最中に発生するからである。
【0058】
(動態画像記憶)
撮影により取得されたフレーム画像は、順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示すフレーム番号と対応付けて記憶部22に記憶される(ステップS105)。また、撮影により取得されたフレーム画像は、表示部24に表示される(ステップS106)。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認して、撮影OKであるか、撮影NGであるかを判断する。撮影実施者は、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0059】
(動態画像送信)
撮影OKが入力された場合(ステップS107;YES)、制御部21は、動態撮影で取得した一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像の識別情報を付帯する。当該識別情報は、例えば識別ID、患者情報、検査情報、放射線照射条件、画像読取条件及びフレーム番号等である。制御部21は、例えばDICOM形式で当該識別情報をヘッダ領域に書き込んだ画像データを、通信部25を介して診断用コンソール3に送信する(ステップS108)。各フレーム画像への識別情報の付帯並びに診断用コンソール3への送信後、本処理は終了する。
【0060】
(動態画像削除)
一方、撮影NGが入力された場合(ステップS107;NO)、制御部21は、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像を削除して(ステップS109)、本処理は終了する。この場合、再撮影が必要となる。
【0061】
本実施形態では、上記撮影制御処理で胸部正面及び/又は胸部側面の動態撮影をする。そして、動態撮影により、胸部正面及び/又は胸部側面の動態画像を取得する。
【0062】
〔狭窄状態推定処理〕
次に、診断用コンソール3による狭窄状態推定処理について、
図3に基づいて説明する。
【0063】
(動態画像受信)
初めに、制御部31は、撮影用コンソール2が撮影した胸部の動態画像の一連のフレーム画像を、通信部35を介して受信する(ステップS201)。
【0064】
(フレーム画像のクロップ)
制御部31は、胸腔内の気管領域を抽出する前に、受信したフレーム画像をクロップする(ステップS202)。線量の少ない動態画像では気管壁上にあるエッジが不鮮明である。そのため、セグメンテーション処理を行う深層学習への入力画像は高い解像度を維持したいが、画像サイズが大きいと処理時間が増大してしまう。胸部画像上での気管領域の存在範囲は一部のみであるため、クロップすることで処理時間を削減できる。
【0065】
フレーム画像のクロップについて、
図4及び
図5を元に説明する。クロップ位置は、肺や胸郭や縦隔や鎖骨などの解剖学的なランドマークを検出して決定すればよく、別途機械学習等を用いて認識した肺野マスクの位置情報を利用して決定すればよい。具体的には、制御部31は、左右肺それぞれの外接矩形と、当該外接矩形を構成する4点の座標を取得する(ステップS2021)。制御部31は、左右肺のうち、上端の位置が高い方のy座標y
topを求め、クロップ領域の上端位置の基準とする(ステップS2022)。これにより、胸腔外をクロップ領域外とできる。また、制御部31は、右肺の外接矩形右端のx座標x
rightと、左肺の外接矩形左端のx座標x
leftに基づいて、クロップ領域のx方向中心座標を表すx
centerを求める(ステップS2023)。x
centerの求め方は、下記(式1)に基づく。なお、(式1)において、αは固定値だが、気管は右肺側に寄っている傾向があることから、αは0.5以上とすることが望ましい。
x
center=α・x
right+(1.0-α)・x
left…(式1)
【0066】
ytop並びにxcenterの算出後、制御部31は、座標(xcenter、ytop)を上端中央としてクロップ領域を決定し、フレーム画像をクロップする(ステップS2024)。なお、クロップ領域の縦幅と横幅は、固定値でもよく、肺野マスクの大きさ等に比例する可変値としてもよい。
【0067】
フレーム画像のクロップにより、後述するステップS203で、深層学習に画像入力する際に解像度が維持され、各種処理が軽量化する。なお、制御部31は、クロップせずに、胸腔内の気管領域を抽出してもよい。
【0068】
なお、以下においては、
図6に示すように、胸腔内領域でかつ気管支領域R4を除いた領域R1を「胸腔内領域R1」とし、胸腔内領域R1内の気管領域を「胸腔内気管領域R2」とする。また、胸腔内領域R1よりも上側の領域R3は胸腔外領域R3である。
【0069】
(セグメンテーション処理)
フレーム画像のクロップ後、制御部31は、セグメンテーション処理では、胸腔内気管領域R2又は気管壁Wを直接抽出する。すなわち、胸腔内領域R1と、気管領域又は気管壁とを同時抽出し、その重複領域が胸腔内領域R2又は気管壁Wとなる(ステップS203)。セグメンテーション処理では、深層学習を用い、予め胸腔内気管領域R2又は気管壁Wを正解画像としてモデルを学習させておくことで、推論を可能とする。同時抽出とすることで、処理構成がシンプルで高速になる効果がある。
【0070】
正解画像の作成においては、例えば、胸鎖骨関節部、肺尖上端あるいは胸郭肋骨等を胸腔内気管領域R2又は気管壁Wの上端としておく。また、気管支分岐点から椎体1つ分上の部分又は気管壁Wが分岐により膨らんだ部分等を胸腔内気管領域R2又は気管壁Wの下端としておく。これにより、胸腔内のみが胸腔内気管領域R2又は気管壁Wとして抽出され、制御部31が、高精度に気管・気管支の狭窄状態を推定できる。また、胸腔内気管領域R2又は気管壁Wが気管支領域R4を含まないため、分岐による気管径rや気管径rの径変化率等の計測方法の定義の混乱を招かない範囲で、高精度に気管の狭窄状態を推定できる。
【0071】
同時抽出を行わない場合は、深層学習モデルは胸腔内気管領域R2又は気管壁Wを胸腔外領域R3や気管支領域R4を含む正解画像を用いて学習させておく。そして、深層学習モデルを推論して得られた気管領域に対し、別手段で計測範囲である胸腔内領域R1の内側に限定することで、胸腔内気管領域R2又は気管壁Wを特定する。計測範囲は、すなわち胸腔内領域R1である。
【0072】
計測範囲検出手段は、ランドマーク検出等を用いれば良い。ステップS203において、制御部31は、例えば胸鎖骨関節部、肺尖上端あるいは胸郭肋骨等を胸腔内領域R1の上端部として検出する。また、制御部31は、例えば気管支分岐点から椎体1つ分上までの部分又は気管壁Wが分岐により膨らんだ部分まで等を気管支領域R4の上端位置として検出する。これにより、胸腔内のみが胸腔内気管領域R1として抽出され、制御部31が、高精度に気管・気管支の狭窄状態を推定できる。
【0073】
なお、制御部31の深層学習モデルに、胸腔内気管領域R2と気管支領域R4上端の2つのセグメンテーション出力を行うようにマルチタスクで学習させておくのが好ましい。当該構成とすることで、気管支領域R4上端の認識にも重み付けでき、同時抽出の精度を上げることができる。また、当該同時抽出においては、深層学習内部における各画素の受容野の半径を、上下各々の計測範囲境界近傍の気管画素から、上下各々の計測範囲定義構造物までの距離以上とする。ここで、計測範囲定義構造物とは、胸鎖骨関節部や気管分岐点を指す。このように、受容野を広くすることで、気管壁Wの認識と、気管方向である上下方向の認識が同時にできる。
【0074】
(気管壁抽出)
制御部31は、胸腔内気管領域R2から左右の気管壁Wを抽出する(ステップS204)。気管壁Wの抽出について、
図7、
図8A及び
図8Bを元に説明する。制御部31は、胸腔内気管領域R2の推論結果に対して二値化及びノイズ除去をする(ステップS2041)。そして、制御部31は、
図8Aに示すように、胸腔内気管領域R2の左上、右上、左下、右下の四隅の点を検出する(ステップS2042)。そして、制御部31は、胸腔内気管領域R2の輪郭のうち左下の点から左上の点までの点列、また、胸腔内気管領域R2の輪郭のうち右下の点から右上の点までの点列をそれぞれ気管壁Wとする。
【0075】
深層学習のセグメンテーション処理はしばしば未検出または過検出することから、後処理にて補正してもよい。制御部31は、左上から左下へ左気管壁Wを特定する際に、気管壁Wの傾きが大きく変動する点を不連続点として検出し、左下から左上への逆方向にも同様に不連続点を検出する。そして、制御部31は、2つの不連続点を直線等で接続することで、未検出または過検出を補正した左気管壁Wを得る(ステップS2043)。右気管壁Wについても同様である。
なお、気管壁Wの上端や下端は、左と右それぞれの気管壁Wの上端位置と下端位置に基づき、決定すればよく、好適には、左右の気管壁の短い側に合わせればよい。
【0076】
また、制御部31は、ステップS203における深層学習の際に、気管壁領域を直接推定してもよい。具体的には制御部31は、気管壁領域の推定後に、気管壁領域の左上、右上、左下、右下の四隅の点を検出する。そして、制御部31は、気管壁領域の輪郭のうち左下の点から左上の点までの点列、また、気管壁領域の輪郭のうち右下の点から右上の点までの点列をそれぞれ気管壁Wとする。
【0077】
(気管径計測)
制御部31は、各フレーム画像における、胸腔内気管領域R2内の気管径rの最大径及び最小径を計測する(ステップS205)。一のフレーム画像における、胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径及び最小径の計測について、
図9及び
図10Aから
図10Cを元に説明する。
【0078】
従来、複数時相のCT画像で気管狭窄を推定する手法においては、CT画像のスキャン方向の1つであるAxial断面で胸腔内気管領域R2の面積を複数時相で算出し、面積変化率をもとに気管狭窄を推定していた。動態画像においても従来、動態画像のY方向を人体の頭尾方向とした際のX方向に、左右の気管壁間の距離を計測し、気管径としている研究があった。しかし、実際には気管は人体の頭尾方向に真っすぐでは無く斜めに曲がっているため、本来の気管径を精度よく計測できず、気管狭窄の推定の精度が悪かった。
【0079】
これを解決するため本手法では、気管の走行方向を特定し、走行方向の法線方向に左右気管壁Wとの交点を算出し、交点間の距離を気管径rとして算出する。具体的には、
図10Aに示すように、制御部31は、各y座標にて、左右気管壁Wの代表点としてたとえば中点を計算して、胸腔内気管領域R2の中線Cを代表線として求める(ステップS2051)。中線Cの算出後、制御部31は、
図10Bに示すように、当該中線Cの各点における傾きを求め、当該傾きに対する法線を求める(ステップS2052)。そして、制御部31は、当該法線と左右気管壁Wの交点をそれぞれ求め、当該法線と左右気管壁Wの交点それぞれを結ぶ線分を気管径rとする(ステップS2053)。
【0080】
制御部31は、このような複数の気管径rから、
図10Cに示すような気管領域R2の気管径rの最大径及び最小径を決定する(ステップS2054)。
【0081】
制御部31は、全てのフレーム画像で胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径及び最小径を計測したか判定する(ステップS206)。全てのフレーム画像における胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径及び最小径を計測していない場合(ステップS206;No)、制御部31は、ステップS202に遷移する。そして、制御部31は、他のフレーム画像における胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径及び最小径を計測する。
【0082】
(フレーム画像検出)
全てのフレーム画像で胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径及び最小径を計測した後(ステップS206;Yes)、制御部31は、狭窄状態の推定に用いるフレーム画像を検出する(ステップS207)。
【0083】
狭窄状態の推定に用いるフレーム画像の検出について、
図11を元に説明する。制御部31は、フレーム画像毎の肺野面積を、0.0~1.0の範囲で正規化する(ステップS2071)。そして、制御部31は、各フレーム画像における肺野面積の変化量を算出する(ステップS2072)。そして、制御部31は、閾値処理により、呼気開始時のフレーム画像である呼気開始フレーム画像を検出する。また、制御部31は、閾値処理により、呼気終末時のフレーム画像である呼気終末フレーム画像を検出する(ステップS2073)。なお、以下においては呼気開始フレーム画像及び呼気終末フレーム画像をまとめて呼気フレーム画像と呼ぶ。
【0084】
具体的には、制御部31は、時間順方向に探索して肺野面積が所定の閾値以下となる最初のフレーム画像を呼気終末フレーム画像として検出する。呼気終末フレーム画像の検出における、肺野面積の当該所定の閾値は、例えば0.3である。また、制御部31は、呼気終末フレーム画像から時間逆方向に探索して肺野面積が所定の閾値以上となる最初のフレーム画像を呼気開始フレーム画像として検出する。呼気開始フレーム画像の検出における、肺野面積の当該所定の閾値は、例えば0.7である。なお、呼気フレーム画像の検出順はいずれかが先でもよい。また、肺野面積の変化量が閾値以下に収まり、平坦に近付いているか否かに基づいて呼気フレーム画像を検出してもよい。
【0085】
また、呼気開始時は吸気位であり、肺組織が広がり疎になることから、肺野領域が高い画素値になる。また、呼気終末時は呼気位であり、肺組織が縮み密になることから、肺野領域が低い画素値になる。そのため、肺野の画素値に基づいて呼気フレーム画像を検出してもよい。
【0086】
また、呼気開始時は吸気位であり、横隔膜は相対的に下方に位置する。また、呼気終末時は呼気位であり、横隔膜は相対的に上方に位置する。そのため、横隔膜の位置に基づいて呼気フレーム画像を検出してもよい。
【0087】
制御部31は、呼気開始フレーム画像の周辺のフレーム画像から、胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径が最も大きいフレーム画像である、最大フレーム画像を検出する。また、制御部31は、呼気終末フレーム画像の周辺のフレーム画像から、胸腔内気管領域R2の気管径rの最小径が最も小さいフレーム画像である、最小フレーム画像を検出する(ステップS2074)。これは、胸腔内気管領域R2は呼気開始時に最も広がるからである。また、胸腔内気管領域R2の狭窄は、呼気終末時に発生するからである。なお、「呼気フレーム画像の周辺のフレーム画像」とは、例えば、呼気フレーム画像から例えば1秒以内に撮影されたフレーム画像を指す。
【0088】
(気管径の最大径・最小径取得、径変化量・径変化率算出)
最大フレーム画像及び最小フレーム画像の検出後、制御部31は、最大フレーム画像から、胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径Dmaxを取得する。また、制御部31は、最小フレーム画像から、胸腔内気管領域R2の気管径rの最小径Dminを取得する(ステップS208)。そして、制御部31は、Dmax及びDminから径変化量及び径変化率を算出する(ステップS209)。なお、径変化率は、(式2)により算出できる。
径変化率={(Dmax-Dmin)/Dmax}×100[%]…(式2)
【0089】
(推定結果表示)
制御部31は、表示部34に推定結果を表示する(ステップS210)。
図12に推定結果が表示された表示部34の一例を示す。
図12に示すように、表示部34には、一のフレーム画像の左右の気管壁W、胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径、最小径及びその値が表示される。
【0090】
制御部31は、径変化率が所定の閾値以上である場合、胸腔内気管領域R2が狭窄状態であると判定する。他方、制御部31は、径変化率が所定の閾値未満である場合、胸腔内気管領域R2が狭窄状態ではないと判定する。
【0091】
一般的な診断では、気管又は気管支の断面積が50%以上変化した場合、狭窄状態であると判断する。また、気管又は気管支の断面を正円と仮定すると、気管又は気管支の断面積は「半径×半径×π」となる。そのため、当該所定の閾値は29.3%とすることが好ましい。
【0092】
なお、表示部34における表示内容としては、一のフレーム画像の左右の気管壁W、胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径、最小径及びその値に限られない。
図12に示すように、横軸にフレーム番号、縦軸に各フレーム画像における胸腔内気管領域R2の気管径rの最大径、最小径及び肺野面積をプロットしたグラフを表示してもよい。また、横軸に計測日付、縦軸にDmax及びDminをプロットした、同一症例の被験者のグラフを表示してもよい。あるいは、各フレーム画像における胸腔内気管領域R2の気管径rの平均値や分散値を算出して、これをグラフ表示してもよい。
【0093】
また、気管壁Wは胸腔外の気管壁Wや気管支付近までを表示し、計測範囲をX方向への線分で表示してもよい。計測範囲の上端を線で表示することで、胸腔内を示すランドマークである、胸鎖骨関節部、胸郭肋骨や肺尖部及び椎体との位置関係を視認可能となる。また、計測範囲の下端を線で表示することで、気管支分岐点から椎体1つ分上の部分又は気管壁が分岐により膨らんだ部分との位置関係を視認することが可能となる。なお、気管支分岐点を検出している場合は、気管支分岐点の検出位置も表示しておくことが望ましい。
【0094】
また、表示部34に推定結果を表示する際、左右の気管壁W、気管径r(最大径、最小径)の識別性を上げるため、気管壁W及び気管径rの色を変えて表示することが好ましい。また、表示部34に推定結果を表示する際、狭窄状態の推定に応じて、気管径rの線の色を変えることが好ましい。当該構成とすることで、数値を見なくても、画像の線の色から一目で解るようになる。
【0095】
(気管壁の修正操作)
また、上記したように、表示部34には左右の気管壁Wが表示される。ここで、制御部31は、ユーザーの操作による気管壁Wの抽出内容の修正操作を受け付ける(ステップS211)。
【0096】
ユーザーが気管壁Wの修正操作をしなかった場合(ステップS211;No)、制御部31は、狭窄状態推定処理を終了する。ユーザーが気管壁Wの修正操作をした場合(ステップS211;Yes)、ステップS205に遷移し、制御部31は、修正後の気管壁Wを用いて修正操作のあった全フレーム画像から気管径rや気管径rの最大径、最小径を再計測する。また、再計測された結果に基づき、最大フレーム画像と最小フレーム画像、最大径Dmaxと最小径Dmin、径変化率及び径変化量も、再度計算される。
【0097】
さらに、最大フレーム画像と最小フレーム画像をユーザーが操作部33により設定可能であるのが好ましい。自動抽出が失敗した場合に、多フレームの気管壁Wをユーザーが手修正することは非常に手間がかかる。そのため、ユーザーは最大フレーム画像と最小フレーム画像を特定して、制御部31が2つのフレーム画像の気管壁Wのみを修正することで、最大径Dmaxと最小径Dminを再計算することができる。もしくは、ユーザーが修正した一つのフレーム画像の気管壁Wに基づき、制御部31が、深層学習により全フレームの気管壁を再抽出することが好ましい。
【0098】
また、気管壁Wは胸腔外の気管壁や気管支付近までの気管壁を表示し、計測範囲をx方向への線分で表示し、制御部31は、気管壁と計測範囲を個別に修正可能とすることで気管壁Wを間接的に修正可能としても良い。
【0099】
[発明の効果]
以上に示すように、本実施形態に係る画像解析装置である診断用コンソール3は、気管・気管支を含む複数のフレーム画像を受信する受信部としての制御部31を備える。また、診断用コンソール3は、複数のフレーム画像において胸腔内を胸腔内領域R1として設定する設定部としての制御部31を備える。また、診断用コンソール3は、複数のフレーム画像から気管壁Wを抽出する抽出部としての制御部31を備える。また、診断用コンソール3は、気管壁Wから気管径rを計測する計測部としての制御部31を備える。
当該構成によれば、胸腔内を胸腔内領域R1として気管径rを計測するため、高精度に気管・気管支が狭窄状態か否かを推定できる。
【0100】
[その他の構成]
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、制御部31は、正面及び/又は側面の撮影方向の動態画像を用いて気管・気管支の狭窄状態を推定するとしたが、これに限られない。制御部31は、斜位方向の動態画像を加えて狭窄状態を推定してもよい。当該構成とすると、変則的な縮まり方など、より多くの情報を元に制御部31が推定できるようになるため、狭窄状態の推定がより高精度となる。
【0101】
また、上記においては、診断用コンソール3が径変化率に基づいて狭窄状態か否かを判定する場合を例示したが、これに限られない。制御部31を、胸腔内気管領域R2の濃度の経時変化を測定する測定部として機能させることで、狭窄状態か否かを推定してもよい。当該構成において、制御部31は、胸腔内気管領域R2の中心等の予め定められた位置の画素の信号値を濃度として測定してよい。あるいは、制御部31は、胸腔内気管領域R2内の画素の信号値の平均値、中央値、最大値あるいは最小値等の代表値を濃度として測定してもよい。
【0102】
例えば、正面の動態画像において、胸腔内気管領域R2の濃度が増加している場合、制御部31は、気管・気管支軟化症のSaber-sheath typeであると推定できる。また、側面の動態画像において、胸腔内気管領域R2の濃度が増加している場合、制御部31は、気管・気管支軟化症のCrescent typeであると推定できる。また、正面の動態画像のみ、胸腔内気管領域R2の濃度が減少している場合、制御部31は、気管の筋肉が縮む動的気道虚脱であると推定できる。また、正面の動態画像と側面の動態画像の両方において、胸腔内気管領域R2の濃度が減少している場合、制御部31は、気管・気管支軟化症のCircumferential typeであると推定できる。
【0103】
また、上記においては、ステップS211でユーザーが気管壁Wの修正操作をした場合、制御部31は、全フレーム画像の気管径rを再計測するとしたが、これに限られない。すなわち、制御部31は、修正操作がされたフレーム画像のみ、気管径rを再計測してもよい。
【0104】
また、上記においては、診断用コンソール3が受信する画像は、胸部の動態画像であるとしたが、これに限られない。診断用コンソール3が受信する画像は、気管・気管支を含む被写体Mが撮影された動態画像であればよく、特に限定されない。また、診断用コンソール3が受信する画像は、気管・気管支を含む被写体Mを呼気サイクルよりも短い時間間隔で連続的に撮影することとで得られる、複数の静止画像であってもよい。
【0105】
また、上記においては、胸腔内領域R1の気管壁Wを抽出するとしたが、これに限られない。すなわち、
図13に示すように、胸腔外の気管壁Wを別途抽出して、胸腔内の気管壁Wと合わせて表示部34に表示させてもよい。また、この時、胸腔内領域R1の範囲と、胸腔外と胸腔内を含む気管壁Wとを、共に修正操作可能としてもよい。
【0106】
また、複数のフレーム画像を、声帯や気管分岐部で気管の位置合わせした上で、同一位置の気管ごとに気管径rを求め、各位置の気管ごとに気管径rの全フレーム最大値と全フレーム最小値を求め、各位置の気管ごとに径変化率及び径変化量を求め、表示部34に表示させてもよい。
【0107】
また、上記においては、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用する例を開示したが、これに限られない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体としては、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0108】
その他、画像解析装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0109】
100 画像解析システム
1 撮影装置
3 診断用コンソール(画像解析装置)
31 制御部(受信部、設定部、抽出部、特定部、計測部、表示制御部、修正部、特定部、測定部)
34 表示部
C 中線
M 被写体
R1 胸腔内領域
R2 胸腔内気管領域
R4 気管支領域
r 気管径
W 気管壁