(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135829
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240927BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20240927BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03G15/08 221
G03G15/08 226
G03G15/06 101
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046709
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】曽我 仁
【テーマコード(参考)】
2H073
2H077
2H270
【Fターム(参考)】
2H073AA02
2H073BA02
2H073BA09
2H073BA12
2H073BA13
2H073CA02
2H077AC04
2H077AD06
2H077AD13
2H077AD35
2H077AE02
2H077DB01
2H077DB08
2H077DB25
2H077EA11
2H270KA21
2H270LA64
2H270LA65
2H270LD14
2H270MC29
2H270MD02
2H270MH09
2H270MH16
2H270ZC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印刷速度に応じて、印刷後の工程で、現像電圧と供給電圧とを制御することにより、残留したスポンジ粉による縦白スジの発生を防ぐようにする。
【解決手段】この開示に係る画像形成装置は、所定の印刷速度により記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、像担持体の静電潜像に現像剤を用いて現像する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、現像剤担持体上の現像剤の層を規制する規制部材とを有する画像形成部と、現像剤担持体に印加する現像電圧値と、供給部材に印加する供給電圧値とを制御する電圧制御部とを備え、電圧制御部が、印刷速度に応じて、画像形成後の工程で、現像電圧値と供給電圧値とを制御することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の印刷速度により記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
像担持体の静電潜像に現像剤を用いて現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、前記現像剤担持体上の現像剤の層を規制する規制部材とを有する画像形成部と、
前記現像剤担持体に印加する現像電圧値と、前記供給部材に印加する供給電圧値とを制御する電圧制御部と
を備え、
前記電圧制御部が、前記印刷速度に応じて、画像形成後の工程で、前記現像電圧値と前記供給電圧値とを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電圧制御部が、画像形成後の非画像形成工程で、前記印刷速度に応じて、前記現像電圧値と前記供給電圧値との差分値を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷速度が閾値未満の低速印刷のとき、前記供給電圧値が、前記現像電圧値と同極性であって、前記現像電圧値の絶対値よりも大きい値であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷速度が閾値未満の低速印刷のとき、前記現像電圧値から前記供給電圧値を引いた値が、現像剤の帯電極性と逆極性であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記低速印刷後の空回しのときの前記現像電圧値と前記供給電圧値との差分値が、前記印刷速度が閾値以上の高速印刷後の空回しのときの前記現像電圧値と前記供給電圧値との差分値よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成工程中では、現像ローラ(現像剤担持体)と供給ローラ(供給部材)とのそれぞれに、トナー(現像剤)と同極性のバイアス電圧を印加し、現像と次の現像との合間の非画像形成の際には、現像ローラから供給ローラにトナーを回収するために、トナーの帯電極性と逆極性の電圧を供給ローラに印加している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像形成装置には、次のような課題がある。例えば、供給ローラと現像ローラとの摩擦により微小なスポンジ粉が生じ得るが、印刷速度が遅くなると、スポンジ粉の流れが小さくなり、現像ブレード(規制部材)近傍にスポンジ粉が留まりやすくなる。そのため、現像ブレード通過前の現像ローラの表面のトナー層に、スポンジ粉が付着しやすくなる。そして、非画像形成時に、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が供給ローラに印加されるため、現像ブレード通過前の現像ローラの表面のトナー付着量は少なくなる。つまり、印刷速度が遅く、且つ、非画像形成時の現像ブレード通過前の現像ローラの表面は、トナー付着量は少なく、スポンジ粉が接触しやすい状態となる。
【0005】
このような状態で、現像ローラの表面に現像ブレードが接触すると、スポンジ粉が現像ブレードに接触する頻度が上がり、スポンジ粉が現像ブレード近傍に残留しやすくなる。そして、残留したスポンジ粉が、現像ローラの表面上のトナー層を掻き落としてしまい、縦白スジが発生してしまうと、画像品質の低下につながってしまうという課題が生じ得る。
【0006】
そこで、この開示は、上記課題に鑑み、非画像形成工程の際に、印刷速度に応じて、現像電圧と供給電圧とを制御することにより、残留したスポンジ粉による縦白スジの発生を抑止することができる画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、この開示に係る画像形成装置は、所定の印刷速度により記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、像担持体の静電潜像に現像剤を用いて現像する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、現像剤担持体上の現像剤の層を規制する規制部材とを有する画像形成部と、現像剤担持体に印加する現像電圧値と、供給部材に印加する供給電圧値とを制御する電圧制御部とを備え、電圧制御部が、印刷速度に応じて、画像形成後の工程で、現像電圧値と供給電圧値とを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この開示によれば、上記特徴を有するので、非画像形成工程の際に、印刷速度に応じて、現像電圧と供給電圧とを制御することにより、残留したスポンジ粉による縦白スジの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施形態に係る画像形成部の構成を示す構成図である。
【
図3】実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示す構成図である。
【
図4】印刷速度に応じて、印加する現像電圧値と供給電圧値との一例を示す図である。
【
図5】画像形成時と非画像形成時に印加する現像電圧と供給電圧のタイミングチャートである。
【
図6】実施形態の画像形成装置による処理動作の効果を評価した評価結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A)実施形態
次に、この開示に係る画像形成装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)画像形成装置1の構成
図1は、実施形態に係る画像形成装置の構成を示す構成図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真方式を採用したカラープリンターであり、媒体としての記録媒体13の表面にカラー画像を形成するものである。画像形成装置1は、略箱型に形成された筐体の内部に種々の部品が配置されている。なお、以下では、
図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0012】
画像形成装置1は、例えば図示しないコンピュータ装置等の上位装置と接続しており、上位装置から印刷指示や印刷データを画像形成装置1が受信すると、画像形成装置1は記録媒体13に印刷画像を形成する。なお、画像形成装置1は、例えば操作入力を受け付けたり、種々の情報を表示したりする表示操作部を備えてもよい。
【0013】
画像形成装置1は、筐体内の最下部に、記録媒体13を収容する給紙トレイ20を備える。給紙トレイ20の上方には、給紙トレイ20に収容される記録媒体13を分離するホッピングローラ21が設けられている。ホッピングローラ21は、給紙トレイ20から記録媒体13を1枚ずつ分離して搬送ガイドローラ22A及び搬送ローラ22Bに送り出す。搬送ガイドローラ22A及び搬送ローラ22Bは、分離された記録媒体13を画像形成装置1の前方に搬送し、その後記録媒体13を後方に折り返して、直線状の搬送路に沿って設けられた転写ベルト14に記録媒体13を搬送する。
【0014】
転写装置12は、転写ベルト14、駆動ローラ16、従動ローラ17、転写ローラ15、転写クリーニングブレード18を有する。
【0015】
画像形成装置1の前方から後方に向けて直線状の搬送路が形成されており、搬送路に沿って無端ベルトでなる転写ベルト14が設けられている。転写ベルト14は、後側に配置された駆動ローラ16と、前側に配置された従動ローラ17とにより張架された構成となっている。駆動ローラ16は、駆動モータ24から駆動力を伝達されると矢印方向に回転することで、転写ベルト14を前側から後側の方向に走行させる。
【0016】
搬送路に沿って設けられている転写ベルト14の上側には、4色の現像剤(トナー)毎に、画像形成部25C、25Y、25M、25Wが設けられている。各画像形成部25C、25Y、25M、25Wの感光体2と転写ローラ15とが回転することで、感光体2の表面上の現像剤を、転写ベルト14により搬送される記録媒体13の一方の面上に転写する。
【0017】
画像形成装置1の後側、すなわち転写ベルト14の下流側には、記録媒体13上の現像剤を、記録媒体13上に定着させる定着装置19が設けられている。排出ローラ23は、定着装置19により定着処理された記録媒体13を外部に排出する。また、画像形成装置1は、転写ベルト14上に付着した現像剤を除去するための転写クリーニングブレード18を有している。
【0018】
(A-1-2)画像形成部25の構成
上述したように、搬送路に沿って転写ベルト14が設けられており、転写ベルト14の上側には、4色の現像剤(トナー)毎に、画像形成部25C、25Y、25M、25Wが前後方向に沿って配列されている。
【0019】
画像形成部25C、25Y、25M、25Wはそれぞれ、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)のように現像剤の色が異なるが、画像形成部25C、25Y、25M、25Wの構成は基本的に同一である。したがって、共通の構成を説明するときには、画像形成部25と表記する。なお、以下では、画像形成部25を画像形成ユニット若しくはイメージドラム(ID)とも呼ぶ。
【0020】
図2は、実施形態に係る画像形成部25の構成を示す構成図である。
【0021】
図2において、画像形成部25は、感光体2と、感光体2の表面に当接して感光体2の表面を均一に帯電させる帯電ローラ3と、画像信号に基づく静電潜像を感光体2上に形成する露光装置4と、感光体2の表面に形成された静電潜像に現像剤(トナー)を移動させて現像する現像部5と、非磁性一成分の現像剤を収容して現像剤を現像部5へ供給するトナーカートリッジ6と、感光体2の表面の現像剤に付着していた外添剤や転写されなかった現像剤を掻き落とすためのクリーニングブレード7と、感光体2の表面電位のばらつきを除去するための除電装置8を有する。
【0022】
像担持体としての感光体2は、アルミニウム等の金属パイプの導電性支持体の表面に光導電層を被覆した構成となっている。帯電ローラ3は、金属シャフトの外周に、例えばエピクロロヒドリンゴム等の半導電性ゴム層を被覆した構成となっている。
【0023】
露光装置4は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子とレンズアレイとを備えたLEDヘッドである。露光装置4は、入力された印刷データに基づき、感光体2の表面に印刷ドット単位の光を照射し、光照射部分の電位を光減衰させて静電潜像を形成させる。
【0024】
現像部5は、感光体2の表面と接触して現像剤を担持する現像剤担持体としての現像ローラ9と、現像剤を現像ローラ9の表面に供給する供給部材としての供給ローラ10と、現像ローラ9の表面上の現像剤を薄層化して、現像剤層(トナー層)を形成する規制部材としての現像ブレード11とを有する。
【0025】
現像剤担持体としての現像ローラ9は、金属製のシャフトの外周に、例えば、厚さ6mm、ゴム硬度58°(アスカーC)の半導電性のシリコーンゴムの弾性体を被覆した構成となっている。
【0026】
供給部材としての供給ローラ10は、現像ローラ9の表面と接触しており、現像ローラ9の表面に現像剤を供給する。供給ローラ10は、金属製のシャフトの外周に、例えば、厚さ5mm、硬度55°(アスカーF)のシリコーンスポンジ発泡体を被覆した構成となっている。シリコーンスポンジ発泡体の表面には、凹部から成る複数のセルが形成されている。
【0027】
規制部材としての現像ブレード11は、その先端が現像ローラ9の表面に当接しており、現像ローラ9の表面に付着した現像剤を薄層化する。現像ブレード11は、例えば、厚さ0.08mmのばね性を持ったステンレス鋼板を用いることができる。また、現像ブレード11が現像ローラ9と当接している部分は曲率を持った曲面形状を有している。
【0028】
感光体2と当接しているクリーニングブレード7は、例えば、ウレタンゴム等から構成されたゴムブレードを用いることができる。除電装置8は、除電板と、除電板に沿って一直線状に、略等間隔に複数配置されたLED素子から構成されている。
【0029】
(A-1-3)画像形成装置1の制御構成
図3は、実施形態に係る画像形成装置1の制御構成を示す構成図である。
【0030】
図3において、画像形成装置1は、主として、制御部100、受信部101、媒体設定部102、センサー103、駆動制御部104、露光制御部105、電圧制御部106を有する。
【0031】
制御部100は、画像形成装置1の機能を司るものである。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)フラッシュメモリ等を有する装置であり、CPUが処理プログラムを読み出して実行することにより、画像形成装置1の処理機能を行なう。
【0032】
制御部100は、受信部101、媒体設定部102、センサー103、駆動制御部104、露光制御部105、電圧制御部106と接続している。
【0033】
制御部100は、受信部101から画像データを取得すると、画像データに基づいて印刷画像情報を作成し、駆動制御部104、露光制御部105、電圧制御部106へ印刷動作の指示を出す。
【0034】
駆動制御部104は、制御部100から印刷動作の指示を受けると、駆動モータ24を駆動させる。駆動モータ24が駆動することにより、画像形成装置1の内部に存在する各種ローラが回転する。
【0035】
露光制御部105は、制御部100から印刷画像情報を取得すると、その印刷画像情報に基づいて、露光装置4のLEDヘッドを発光させる。
【0036】
電圧制御部106は、制御部100から印刷動作の指示を受けると、帯電ローラ3、現像ローラ9、供給ローラ10、現像ブレード11、転写ローラ15、除電装置8に印加する電圧値を制御する。
【0037】
受信部101は、図示しない上位装置から画像データを取得するインターフェース部であり、上位装置から画像データを受信部101が受信すると、受信部101は画像データを制御部100に与える。
【0038】
媒体設定部102は、記録媒体13のサイズ、厚さ、媒体種類等の設定情報を制御部100に与えて設定するものである。媒体設定部102は、例えば上位装置を通じて取得した記録媒体の設定情報を設定する。
【0039】
センサー103は、例えば、温湿度センサー、内部温度センサー、濃度センサー等の各種センサーとすることができ、センサー103はセンシングしたデータを制御部100に与える。センサー103が温湿度センサーであるとき、温湿度センサーは定着装置19の熱を影響を受けづらい位置に配置されている。
【0040】
(A-2)実施形態の動作
次に、この実施形態に係る画像形成装置1における処理動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
ここでは、4個の画像形成部25C、25Y、25M、25Wのうち、画像形成部25Wにおける処理動作を一例として挙げて説明する。
【0042】
勿論、他の画像形成部25C、25Y、25Mを用いてもよいが、使用される現像剤(トナー)の中でも白色トナーは密度が大きいので、低速印刷、且つ、非画像形成時に、現像ブレード11近傍にスポンジ粉が残留しやすくなる傾向がある。そのため、この実施形態では、顕著な効果が期待できる画像形成部25Wを用いた処理動作を一例として挙げるが、他の画像形成部25C、25Y、25Mに適用してもよい。また、黒色のトナーを用いた画像形成部に適用することもできる。
【0043】
ここで、「非画像形成工程」とは、記録媒体13に対して画像を形成していない工程をいう。具体的には、記録媒体13の後端が転写ローラ15上を通過後の工程をいう。一般的に、非画像形成工程時に、現像部5は空回しを行なっている。「空回し」とは、露光装置4が光を照射せずに、感光体2および、画像形成部25の各ローラが回転することをいう。
【0044】
(A-2-1)画像形成処理
図3において、画像形成装置1において、コンピュータなどの上位装置からの印刷指示及び画像データが受信部101に入力すると、制御部100は、印刷動作の指示を駆動制御部104に与える。
【0045】
駆動制御部104は駆動モータ24を動作させ、各画像形成部25の感光体2および各画像形成部25の各ローラ(供給ローラ10、現像ローラ9、帯電ローラ3等)は、
図1に示す方向に回転する。
【0046】
また、駆動制御部104の指示に基づき各ローラが回転すると、帯電ローラ3、現像ローラ9、供給ローラ10、現像ブレード11及び除電装置8に、電圧制御部106から所定の直流電圧が印加される。
【0047】
供給ローラ10及び現像ブレード11には、現像ローラ9に印加される電圧の電圧値よりも、絶対値の大きい電圧値の同極性の電圧が印加される。また、転写ローラ15には、媒体設定部102で設定された情報に応じた直流電圧が印加される。帯電ローラ3に電圧が印加されることで、感光体2の表面は均一に帯電される。
【0048】
そして、露光制御部105は画像データを露光装置4に与えて、露光装置4は画像データに応じた発光パターンを感光体2の表面に発光し、感光体2の表面に静電潜像が形成される。感光体2の表面の静電潜像と現像ローラ9の電位差によって、現像ローラ9の表面の現像剤が感光体2の表面の静電潜像に移動して現像される。
【0049】
トナーカートリッジ6に収容されている現像剤が現像部5に供給され、現像部5では供給ローラ10と現像ローラ9とが接触しながら回転しているので、供給ローラ10と現像ローラ9との摩擦と電位差により、供給ローラ10の表面上の現像剤が帯電し、供給ローラ10の表面上の現像剤が現像ローラ9の表面に移動する。すなわち、現像剤が現像ローラ9の表面に供給される。
【0050】
現像ローラ9の表面には現像剤層が形成され、現像ローラ9の表面に当接している現像ブレード11の先端が、現像ローラ9の表面上の余分な現像剤を掻き落とし、均一な現像剤層を形成する。さらに現像ブレード11と現像ローラ9との摩擦と電位差により、現像剤が帯電する。ここで、現像に使用されなかった現像ローラ9の表面の現像剤は、供給ローラ10との摩擦により掻き取られて、掻き取られた現像剤は供給ローラ10内に回収される。なお、供給ローラ10内で回収できない現像剤は現像部5内に残る。
【0051】
駆動制御部104によってホッピングローラ21が回転することで、給紙トレイ20内の記録媒体13が選択的に取り出され、記録媒体13は搬送ガイドローラ22A及び搬送ローラ22Bによって転写ベルト14上に搬送される。駆動ローラ16と従動ローラ17とにより、転写ベルト14は
図1に示す方向に回転し、転写ベルト14上の記録媒体13も転写ベルト14と同じ方向に移動する。
【0052】
転写ローラ15と感光体2の表面の静電潜像との電位差から、感光体2の表面の現像剤は記録媒体13の一方の面に転写される。転写されずに感光体2の表面に残った現像剤は、クリーニングブレード7により除去される。
【0053】
クリーニングブレード7を通過した感光体2に対して除電装置8が発光して、感光体2の表面に光が照射されることにより、感光体2の表面電位は除電され、長手方向の表面電位のバラツキが無くなり、長手方向で均一な表面電位となる。
【0054】
現像剤が転写された記録媒体13は定着装置19に搬送され、熱、圧力により現像剤が溶融し、記録媒体13に現像剤が定着される。そして、記録媒体13は排出ローラ23により画像形成装置1の外へ排出される。また、転写ベルト14上に残った現像剤は転写クリーニングブレード18により除去される。
【0055】
(A-2-2)非画像形成時の処理
次に、非画像形成時の画像形成部25の処理動作を、図面を参照しながら説明する。
【0056】
図4は、印刷速度に応じて印加する現像電圧値と供給電圧値との一例を示す図である。
図5は、画像形成時と非画像形成時に印加する現像電圧と供給電圧のタイミングチャートである。
【0057】
電圧制御部106が、各画像形成部25C、25Y、25M、25Wの現像ローラ9に印加する現像電圧を、「DB-C」、「DB-Y」、「DB-M」、「DB-W」とする。特に、非画像形成工程で印加する現像電圧の現像電圧値を「DB0-C」、「DB0-Y」、「DB0-M」、「DB0-W」とし、非画像形成工程の現像電圧値は、画像形成工程のそれと値が異なる。
【0058】
また、電圧制御部106が、各画像形成部25C、25Y、25M、25Wの供給ローラ10に印加する供給電圧を「SB-C」、「SB-Y」、「SB-M」、「SB-W」とする。特に、非画像形成工程で印加する供給電圧の供給電圧値を「SB0-C」、「SB0-Y」、「SB0-M」、「SB0-W」とし、非画像形成工程の供給電圧値は、画像形成工程のそれと値が異なる。
【0059】
図4の例は、感光体2の線速が105mm/s以上を「高速印刷」とし、線速が105mm/s未満を「低速印刷」とする場合を例示する。
【0060】
例えば、高速印刷、低速印刷の選定は媒体設定部102で設定されたサイズ、厚さ、媒体種類などの情報から制御部100が決める。高速印刷、低速印刷で用いる記録媒体13の一例として、高速印刷は、エクセレントホワイト、P厚口等の薄紙媒体で、低速印刷は、転写紙、ラベル紙、Color Copy250等の特殊紙や厚紙媒体とすることができる。
【0061】
なお、高速印刷と低速印刷とを区分する印刷速度に係る閾値(この例の場合、線速105mm/s)は一例であり、これに限定されない。また、「高速印刷」、「中速印刷」、「低速印刷」などのように、2個以上の印刷速度に係る閾値を事前に設定して、印刷速度を3個以上のカテゴリーに区分してもよい。
【0062】
図4の例では、印刷速度が105mm/s以上である高速印刷時は、現像電圧値と供給電圧値とは従来制御と同様の値とし、現像電圧値と供給電圧値との差分値(すなわち、電位差)を「-100V」としている。
【0063】
これに対して、印刷速度が105mm/s未満である低速印刷時では、供給電圧値を、現像電圧値と同極性で、現像電圧値の絶対値よりも大きな値として、現像電圧値と供給電圧値との差分値(電位差)を「+200V」としている。
【0064】
このように、印刷速度に応じて、非画像形成工程の現像電圧値と供給電圧値との差(電位差)を変化させている。
【0065】
なお、
図4の例では、現像電圧値と供給電圧値のうち、供給電圧値について、高速印刷時に「-100V」とし、低速印刷時に「-400V」に変化させる場合を例示したが、これに限らず、事前に電位差を決めたときには、事前の電位差となるように、現像電圧値の値を変更させても良いし、若しくは現像電圧値と供給電圧値の両方の値を変更させても良い。
【0066】
ここで、高速印刷と低速印刷とで現像電圧値と供給電圧値との差を変化させている理由を説明する。供給ローラ10と現像ローラ9との摩擦により、供給ローラ10の表面が千切れて、微小なスポンジ粉が発生する。
【0067】
低速印刷の場合、微小なスポンジ粉は現像ブレード11近傍にたまりやすくなる。これは、印刷速度が遅くなると、現像部5の現像剤はトナーカートリッジ6に移動する力が弱くなり、トナーカートリッジ6の現像剤の圧力によって現像部5の現像剤やスポンジ紛の流れが小さくなるためである。スポンジ紛が現像ブレード11近傍に留まりやすいので、現像ブレード11通過前の現像ローラ9の表面上の現像剤にスポンジ紛が付着しやすくなる。
【0068】
その状態で、非画像形成工程で、高速印刷と同様の現像電圧と供給電圧を印加すると、現像電圧値と供給電圧値の差が「-(マイナス)側」になって、現像ローラ9の表面上の現像剤付着量は少なくなってしまう。そして、現像ローラ9の表面で現像剤量が少ない箇所に、スポンジ紛が付着してしまうと、現像ブレード11との当接するときにスポンジ粉が現像ブレード11と接触する機会が増える。そのため、現像ブレード11にスポンジ粉が残留しやすくなる。現像ブレード11近傍にスポンジ粉が残留してしまうと、スポンジ紛が現像ローラ9の表面上の現像剤層(トナー層)を掻き落としてしまい、縦白スジが発生するという問題が生じ得る。
【0069】
そこで、この例では、低速印刷の場合、非画像形成工程の現像電圧値と供給電圧値の差を「+(プラス)側」にしている。この結果、現像ローラ9の表面上の現像剤量は増えるので、現像ローラ9の表面にスポンジ紛が付着していても、スポンジ紛が現像剤に埋もれる。そのため、スポンジ粉と現像ブレード11との接触する機会が減り、現像ブレード11近傍にスポンジ粉が残留することを低減できる。
【0070】
これに対して、この例では、高速印刷の場合、現像電圧値と供給電圧値の差を「-側」にしている。そもそも、高速印刷の場合、スポンジ紛の流れが大きくなり、スポンジ紛が現像ブレード11近傍に留まりにくいので、縦白スジは発生しない。また、低速印刷と同様の現像電圧値と供給電圧値の差に変更すると、現像ローラ9の表面上の現像剤を回収する力が弱まり不十分になるため、現像剤の付着量と電位が増加し、汚れが発生する。以上から、低速印刷と同様にすると不具合が発生するため、高速印刷と低速印刷とで現像電圧値と供給電圧値の差を変更する必要がある。
【0071】
ところで、非画像形成工程の現像電圧値と供給電圧値の差を「+200V」にすると、高速印刷で汚れは発生するが、低速印刷で汚れが発生しない。これは、低速印刷にすると各部材間の摩擦力が低下し、現像剤の帯電が低下しているので、現像剤の量が増加してもトナー電位(現像剤電位)が低いため、汚れが発生しないからである。
【0072】
次に、
図5を用いて、非画像形成工程の現像電圧と供給電圧の印加タイミングを説明する。
【0073】
図5において、タイミングT0は、制御部100が印刷ジョブを受信した時点、すなわち画像形成工程を開始する時点である。
【0074】
タイミングT0では、駆動制御部104の指示により駆動モータ24が駆動し、各画像形成部25の供給ローラ10、現像ローラ9、感光体2等が回転動作を開始する。同時に、現像電圧DB-C、DB-Y、DB-M、DB-Wが、電圧制御部106から現像ローラ9に印加され、供給電圧SB-C、SB-Y、SB-M、SB-Wが電圧制御部106から供給ローラ10に印加される。ここで、画像形成工程で、各画像形成部25の現像ローラ9に印加する現像電圧値は「-150V」とし、供給電圧値は「-250V」としている。
【0075】
転写ベルト14上の記録媒体13の先端が、画像形成部25C、25Y、25M、25Wの各転写ニップに到達するタイミングの所定時間前に、露光制御部105が、各画像形成部25の露光装置4を発光させ、各画像形成部25の感光体2の表面に潜像を形成する。
【0076】
これにより、画像形成部25C、25Y、25M、25Wの各感光体2の表面に潜像が形成される。各感光体2の表面の潜像は、現像ローラ9の現像剤によって現像されて現像剤像となる。感光体2の表面の現像剤像は、転写ニップを通過する記録媒体13に転写される。
【0077】
タイミングT1は、記録媒体13の後端が、画像形成部25Cの転写ニップ(感光体2と転写ローラ15の接触部)を通過するタイミングである。電圧制御部106は、タイミングT1で画像形成部25Cにおける非画像形成工程を開始し、現像電圧DB-Cを現像電圧値「DB0-C」とし、供給電圧SB-Cを供給電圧値「SB0-C」とする。
【0078】
ここで、制御部100は、媒体設定部102で設定された記録媒体13のサイズ、厚さ、媒体種類などの媒体情報に基づいて、高速印刷又は低速印刷を選定する。そして、電圧制御部106は、制御部100により選定された印刷速度に基づいて
図4を参照して、印刷速度に応じた、現像電圧値「DB0-C」及び供給電圧値「SB0-C」を印加する。
【0079】
タイミングT2は、記録媒体13の後端が、画像形成部25Yの転写ニップを通過するタイミングである。電圧制御部106は、タイミングT2で画像形成部25Yにおける非画像形成工程を開始し、
図4を参照して、現像電圧DB-Yを、印刷速度に応じた現像電圧値「DB0-Y」とし、供給電圧SB-Yを、印刷速度に応じた供給電圧値「SB0-Y」とする。
【0080】
タイミングT3は、記録媒体13の後端が、画像形成部25Mの転写ニップを通過するタイミングである。電圧制御部106は、タイミングT2で画像形成部25Mにおける非画像形成工程を開始し、
図4を参照して、現像電圧DB-Mを、印刷速度に応じた現像電圧値「DB0-M」とし、供給電圧SB-Mを、印刷速度に応じた供給電圧値「SB0-M」とする。
【0081】
タイミングT4は、記録媒体13の後端が、画像形成部25Wの転写ニップを通過するタイミングである。電圧制御部106は、タイミングT2で画像形成部25Wにおける非画像形成工程を開始し、
図4を参照し、現像電圧DB-Wを、印刷速度に応じた現像電圧値「DB0-W」とし、供給電圧SB-Wを、印刷速度に応じた供給電圧値「SB0-W」とする。
【0082】
その後、タイミングT5において、画像形成部25C、25Y、25M、25Wにおける非画像形成工程を終了する。すなわち、駆動制御部104が駆動モータ24の回転を停止し、電圧制御部106が、現像電圧DB-C、DB-Y、DB-M、DB-Wの印加および供給電圧SB-C、SB-Y、SB-M、SB-Wの印加を停止する。
【0083】
なお、
図5には、現像電圧DBと供給電圧SBのみを示しているが、現像ブレード11に印加されるブレード電圧は、供給電圧SBと同電圧となるように制御される。
【0084】
[評価]
図6は、実施形態の画像形成装置1による処理動作の効果を評価した評価結果図である。
【0085】
ここでは、実施例1は、現像電圧値と供給電圧値との差について、高速印刷時に「-100v」とし、低速印刷時に「+200V」とした。他方、比較例1は、従来の画像形成装置と同様に、印刷速度に応じて、現像電圧値と供給電圧値との差を変化させるものではなく、高速印刷時と低速印刷時との両方とも、現像電圧値と供給電圧値との差を「-100v」とした。そして、実施例1と比較例1のときの縦白スジ及び汚れを確認して評価した。「縦白スジ」は画像の上から下にかけて、縦に2mm程度の白い線(画像が抜けている線状部分)が発生することをいい、「汚れ」は画像の上部が下部に比べて、濃くなうことである。
【0086】
効果の確認方法は、印刷Duty0%の白紙パターンをA4縦送りで3000枚印刷した後に、全面印刷Duty30%のパターンを1枚印刷して、縦白スジと汚れのレベルを判定する。また、その後に画像形成時の供給電圧の供給電圧値を「-350V」に変更して、全面印刷Duty30%のパターンを1枚印刷し、汚れのレベルを判定する。
【0087】
上記の確認を高速印刷と、低速印刷とで実施した。高速印刷は、感光体2の線速を160mm/sにして、評価に使用する記録媒体13の種類はP厚口で行なった。他方、低速印刷は、感光体2の線速を70mm/sにして、評価に使用する記録媒体13の種類はColor Copy250で行なった。
【0088】
縦白スジと汚れのレベルは目視で確認し、レベルを10段階で判定した。レベル1が一番悪く、レベルが上がる毎に良くなり、レベル10が一番良いとした。縦白スジのレベルが8以上はかすかに見られるが、認識しにくいため「〇(問題なし)」とし、レベルが7以下は縦白スジが見えやすくなるため「×(問題あり)」とする。また、汚れのレベルが8以上は上部と下部との濃度差がわずかなため「〇(問題なし)」とし、レベルが7以下は上部と下部との濃度差が感じられるため「×(問題あり)」とする。更に、上記の汚れがレベル8以上で、画像形成工程の供給電圧値を「-350V」に変更した時の汚れのレベルも8以上の時は、汚れに対して供給電圧にマージンがあり、「◎」と判断する。
【0089】
図6より、比較例1の結果は、高速印刷の場合、縦白スジと汚れが共に「〇(問題なし)」であり、低速印刷の場合、汚れは「◎」だが、縦白スジはレベル7以下の「×(問題あり)」であった。
【0090】
これに対して、実施例1の結果は、高速印刷と低速印刷で、縦白スジと汚れが共に、レベル8以上で「〇(問題なし)」であった。低速印刷の場合の汚れは供給電圧値に対してのマージンが無くなるが、レベル8以上のため実際の印刷は問題ない。このように、実施例1を適用する事で、低速印刷の縦白スジの発生を防ぐことができる。
【0091】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、印刷速度に応じて、非画像形成工程の現像ローラ9と供給ローラ10に印加する電圧を制御する事ができるため、印刷速度が遅い時の非画像形成工程の現像ローラ9の表面上の現像剤の量が小さくならず、スポンジ紛が現像ブレード11に残留しなくなるので、縦白スジの発生を防ぐという効果が得られる。
【0092】
(B)他の実施形態
(B-1)上述した実施形態では、電圧制御部106が、印刷速度に応じて、印刷後の非画像形成工程での現像電圧値と供給電圧値との差分値を制御する場合を例示し、低速印刷時の前記差分値が、高速印刷時の前記差分値よりも大きくなるように制御する場合を例示した。
【0093】
上述した実施形態では、
図4の例のように、1個の閾値を用いて低速印刷と高速印刷とを区分し、低速印刷時の前記差分値と、高速印刷時の前記差分値を事前に設定するものとしたが、これに限定されない。例えば、低速印刷時の前記差分値が、高速印刷時の前記差分値よりも大きくなるように制御できるのであれば、印刷速度と前記差分値との関係を示す関数式を事前に設定して、印刷速度に応じた前記差分値を導出できるようにしてもよい。
【0094】
(B-2)上述した実施形態の
図4、
図6に例示した現像電圧値、供給電圧値、現像電圧値と供給電圧値との差分値は一例であり、図示した値に限定されない。
【符号の説明】
【0095】
1…画像形成装置、2…感光体、3…帯電ローラ、4…露光装置、5…現像部、6…トナーカートリッジ、7…クリーニングブレード、8…除電装置、9…現像ローラ、10…供給ローラ、11…現像ブレード、12…転写装置、13…記録媒体、14…転写ベルト、15…転写ローラ、16…駆動ローラ、17…従動ローラ、18…転写クリーニングブレード、19…定着装置、20…給紙トレイ、21…ホッピングローラ、22A…搬送ガイドローラ、22B…搬送ローラ、23…排出ローラ、24…駆動モータ、25(25C、25Y、25M、25W)…画像形成部、100…制御部、101…受信部、102…媒体設定部、103…センサー、104…駆動制御部、105…露光制御部、106…電圧制御部。