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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135831
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カスケードポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 5/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F04D5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046713
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000176383
【氏名又は名称】三相電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 香月
(72)【発明者】
【氏名】今川 優
(72)【発明者】
【氏名】則定 健太
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB55
3H130AC30
3H130BA14A
3H130CA02
3H130CB01
3H130DA02Z
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EB01A
3H130EC09A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】静粛性に優れたカスケードポンプを提供する。
【解決手段】所定の半径位置から半径方向外側に羽根部と溝部とが回転方向に交互に形成されたインペラと、インペラを回転自在に収容したケーシングとを備え、ケーシング内にインペラの外周部とケーシングの内周部との間に形成された優弧状の昇圧流路と、吸込口から吸込まれる液体を昇圧流路の一端部に導入する吸込流路と、昇圧流路の他端部から流出する液体を吐出口に導出する吐出流路と、昇圧流路の両端部の間を隔てるためにケーシングの内面が羽根部の先端部および側端部の近傍まで張り出してなる隔壁部とを含み、隔壁部には、羽根部の先端部が内接する仮想円筒面に対向する円弧面が形成され、インペラが何れの回転位置にあっても、円弧面の吸込流路側に形成された輪郭線と、前記羽根部の正回転方向後側の羽根面の延長面とが、前記羽根面の全幅に亘って合致しないように形成されているカスケードポンプ。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の半径位置から半径方向外側に羽根部と溝部とが回転方向に交互に形成されたインペラと、
前記インペラを回転自在に収容したケーシングと、
を備え、
前記ケーシング内に、
前記インペラの外周部と前記ケーシングの内周部との間に形成された優弧状の昇圧流路と、
吸込口から吸込まれる液体を前記昇圧流路の一端部に導入する吸込流路と、
前記昇圧流路の他端部から流出する液体を吐出口に導出する吐出流路と、
前記昇圧流路の両端部の間を隔てるために、前記ケーシングの内面が前記羽根部の先端部および側端部の近傍まで張り出してなる隔壁部と、
を含むカスケードポンプであって、
前記隔壁部には、前記羽根部の先端部が内接する仮想円筒面に対向する円弧面が形成されており、
前記インペラが何れの回転位置にあっても、前記円弧面の前記吸込流路側に形成された輪郭線と、前記羽根部の正回転方向後側の羽根面の延長面とが、前記羽根面の全幅に亘って合致しないように形成されている、ことを特徴とするカスケードポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のカスケードポンプにおいて、
前記輪郭線は、前記インペラの径向視において、前記インペラの回転軸線と交わる方向に延びている、ことを特徴とするカスケードポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のカスケードポンプにおいて、
前記ケーシングは、前記インペラの一側に配された一側壁を有する第1ケーシングと、前記インペラの他側に配された他側壁を有する第2ケーシングとを含み、
前記隔壁部の前記円弧面は、前記第1ケーシングに形成されており、
前記輪郭線は、前記第2ケーシングの前記他側壁に近づくにつれて、前記インペラの逆回転方向に移動するように形成されている、
ことを特徴とするカスケードポンプ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のカスケードポンプにおいて、
前記輪郭線は、直線状であることを特徴とするカスケードポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カスケードポンプ(渦流ポンプ)に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプの一種であるカスケードポンプが広く用いられている。カスケードポンプは、ケーシング内の収容部に収容したインペラを回転させることにより送液に渦流を形成しながら昇圧し吐出するように構成される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に示されるように、カスケードポンプ(1)のインペラ(15)は、その外周部に回転方向に交互に形成された羽根部(15c)と溝部(15b)とを有する。羽根部(15c)および溝部(15b)は、放射状に形成されている。溝部(15b)は、インペラの両面に形成されており、一方の面に形成された溝部(15b)と他方の面に形成された溝部(15b)とが仕切部(15d)によって仕切られている。インペラ(15)の外周部と、ケーシングカバー(14)およびケーシングライナー(17)からなるケーシング(14,17)の内周部との間には、優弧状の昇圧流路が形成される。昇圧流路の一端部には吸込口(11)から吸込まれる液体を導入する吸込流路が接続され、昇圧流路の他端部には流出する液体を吐出口(12)に導出する吐出流路が接続されている。また、昇圧流路の両端部の間には、ケーシング(14,17)の内面が羽根部の先端部および側端部の近傍まで張り出している。この張り出し部が昇圧流路の両端部を隔てる隔壁部(17d)となって、昇圧流路の他端部から一端部への液体の逆流を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-53726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カスケードポンプの騒音に関する研究開発を行っていた本願発明者らは、カスケードポンプ特有の耳障りな騒音を低減するために、カスケードポンプのインペラの羽根部の先端部と隔壁部の吸込流路側の形状との関係に着目し、カスケードポンプ特有の騒音が発生するメカニズムの一部を見つけ出すに至った。以下では、そのメカニズムについて、従来例に係るカスケードポンプ(1)を使って説明する。
【0006】
図8および図9は、従来のカスケードポンプ(1)におけるケーシング(14,17)の隔壁部(17d)近傍を模式的に示すものであり、隔壁部(17d)近傍をインペラの径方向の外側から内側に向かって視た図である。
【0007】
従来のカスケードポンプ(1)では、吸込流路から昇圧流路に流入し、昇圧流路をほぼ一周して昇圧流路の他端部に到達する液体の大部分は、隔壁部(17d)によって流れ方向を変えて吐出流路に送り出される。しかし、その液体の一部は、吐出流路に送り出されることなく、インペラの溝部(15b)に入り込んで、図8に示すように、羽根部(15c)と仕切部(15d)と隔壁部(17d)との間に形成されるスペースSにほぼ出入不能に閉じ込められた状態で、吸込流路側へ移送される。
【0008】
ここで、従来のカスケードポンプ(1)では、図8に示すように、隔壁部(17d)のインペラ(15)の外周部と対向するインペラ対向面の吸込流路側の輪郭線(171)が、インペラの半径方向から視て、インペラの羽根部(15c)の羽根面の先端の回転方向後側の輪郭線(151)と平行になっている。このため、図8に示す状態からインペラが更に回転すると、羽根面の先端の回転方向後側の輪郭線(151)がインペラ対向面の吸込流路側の輪郭線(171)と一瞬重複した後、図9に示すように、スペースSの一部が吸込流路および昇圧流路に開放され、スペースSにほぼ閉じ込められていた流体は、隔壁部(17d)の吸込流路側を高速で流れる流体に引き込まれる形で合流する。
【0009】
一般に、流れの無い状態の液体が急激に流動し始める際には、振動や騒音を伴うと考えられることから、スペースSにほぼ閉じ込められ、流れの無い状態にあった液体が、隔壁部(17d)の吸込流路側を高速で流れる流体に引き込まれる形で、急激に流動し始めることにより騒音が発生すると考えられる。
【0010】
また、羽根部(15c)と仕切部(15d)と隔壁部(17d)との間に形成される閉塞的状態のスペースSの容積は小さいため、1つのスペースSに閉じ込められた流体が、隔壁部(17d)の吸込流路側に急激に流動し始めることによって生じる騒音は瞬間的に発生し、その騒音レベルが小さいとしても、カスケードポンプ(1)の稼働中は、常に、多数のスペース(S)が閉塞的状態から開放状態になることを繰り返すため、カスケードポンプ全体として、問題となるレベルの騒音を発生し続けることになる。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、隔壁部の吸込流路側における液体の急激な流れの発生による騒音を抑え、静粛性に優れたカスケードポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係るカスケードポンプは、所定の半径位置から半径方向外側に羽根部と溝部とが回転方向に交互に形成されたインペラと、前記インペラを回転自在に収容したケーシングと、を備え、前記ケーシング内に、前記インペラの外周部と前記ケーシングの内周部との間に形成された優弧状の昇圧流路と、吸込口から吸込まれる液体を前記昇圧流路の一端部に導入する吸込流路と、前記昇圧流路の他端部から流出する液体を吐出口に導出する吐出流路と、前記昇圧流路の両端部の間を隔てるために、前記ケーシングの内面が前記羽根部の先端部および側端部の近傍まで張り出してなる隔壁部と、を含むカスケードポンプであって、前記隔壁部には、前記羽根部の先端部が内接する仮想円筒面に対向する円弧面が形成されており、前記インペラが何れの回転位置にあっても、前記円弧面の前記吸込流路側に形成された輪郭線と、前記羽根部の正回転方向後側の羽根面の延長面とが、前記羽根面の全幅に亘って合致しないように形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2態様に係るカスケードポンプは、第1の態様に係るカスケードポンプにおいて、前記輪郭線は、前記インペラの径向視において、前記インペラの回転軸線と交わる方向に延びている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第3態様に係るカスケードポンプは、第1の態様に係るカスケードポンプにおいて、前記ケーシングは、前記インペラの一側に配された一側壁を有する第1ケーシングと、前記インペラの他側に配された他側壁を有する第2ケーシングとを含み、前記隔壁部の前記円弧面は、前記第1ケーシングに形成されており、前記輪郭線は、前記第2ケーシングの前記他側壁に近づくにつれて、前記インペラの逆回転方向に移動するように形成されている、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第4態様に係るカスケードポンプは、第1~第3の態様に係るカスケードポンプにおいて、前記輪郭線は、直線状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隔壁部の吸込口部側における送液の急激な流れの発生による騒音を抑え、静粛性に優れたカスケードポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るカスケードポンプを示す図であり、カスケードポンプのインペラおよび第1ケーシングの正面図である。
図2図1対応図であり、インペラを収容しない状態の第1ケーシングの正面図である。
図3図1の第1ケーシングの開口部を覆う第2ケーシングの正面図である。
図4図1のIV-IV線断面視による隔壁部近傍のインペラ、第1ケーシングおよび第2ケーシングの組付け状態を示す図である。
図5】第1ケーシングの要部を示す斜視図と、その一部領域Pを拡大して示す斜視図である。
図6図1のカスケードポンプにおける騒音低減構造の説明図であり、図1の第1ケーシングに設けられた隔壁部近傍の模式図である。
図7図1のカスケードポンプの騒音と従来型のカスケードポンプの騒音との比較実験の結果を示す図である。
図8】従来のカスケードポンプにおける騒音発生の説明図である。
図9】従来のカスケードポンプにおける騒音発生の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1図3に示すように、本実施形態のカスケードポンプ10は、インペラ20と、このインペラ20を回転自在に収容するケーシング(40,50)とを備え、ケーシング(40,50)内にてインペラ20が回転することにより送液(液体)に渦流を形成し、この渦流で送液を圧送するように構成されている。インペラ20は、軸穴43を介して図示しないモータの回転軸と回転一体に連結されている。さらに、本実施形態のカスケードポンプ10は、後述するように騒音を低減するための構造を備えている。はじめに、本実施形態のカスケードポンプ10の基本的な構造について説明する。
【0019】
カスケードポンプ10のインペラ20は、所定の半径位置から半径方向外側に渡り、回転方向に沿って多数の溝部21が刻設され、各溝部21間を隔てる羽根部22が多数形成されてなる。後に参照する図6に示すように、本実施形態では、インペラ20において仕切部28を境にした一方側の溝部21aおよび羽根部22aと他方側の溝部21bおよび羽根部22bとは、回転方向における形成位置が互いに異なっており、各羽根部22a,22bは千鳥状の配置となっている。なお、本実施形態では羽根部22は、仕切部28から延びており、回転方向に対して直角方向に延びている。
【0020】
溝部21と羽根部22は、図1に示すように、所定の半径位置から半径方向外側に向かって放射状に形成されている。図1における矢印D1はインペラ20の正回転方向を示し、図2における矢印D2はインペラ20の正回転時の送液の流れ方向を示している。
【0021】
ケーシング(40,50)は、一側壁41を有しインペラ20を収容する第1ケーシング40(図1)と、他側壁51を有し第1ケーシング40の開口部を覆う第2ケーシング50(図3)とを含む。図2および図3に示すように、第1ケーシング40および第2ケーシング50には、インペラ20の回転方向に沿って優弧状の第1弧状溝部42および第2弧状溝部52がそれぞれ形成されている。
【0022】
図4に示すように、第1ケーシング40における第1弧状溝部42の外周部42aとインペラ20の羽根部22の先端部23との間、第1弧状溝部42の底面部42bとインペラ20の羽根部22の一方側の側端部24aとの間、第2弧状溝部52の底面部52bとインペラ20の羽根部22の他方側の側端部24bとの間には空間が形成されるようになっている。なお、インペラ20における多数の羽根部22の先端部23は、特許請求の範囲に記載する、インペラの外周部の一部をなす。また、第1弧状溝部42の外周部42aは、特許請求の範囲に記載する、第1ケーシングの内周部に相当する。
【0023】
インペラ20の羽根部22と第1ケーシング40と第2ケーシング50とにより形成された上記空間は、第1弧状溝部42および第2弧状溝部52が延びる方向に沿う全体優孤状をなし、送液を昇圧して移送する昇圧流路60となる。
【0024】
送液は、図1および図2に示すように、インペラ20の回転に伴い第1ケーシング40側に設けられた吸込口44から吸い込まれ昇圧流路60の一端部61に導入される。優弧状の昇圧流路60の一端部61に導入された送液は、昇圧流路60を進むにつれて繰り返し形成される渦流により次第に昇圧されながら他端部62に至り吐出口45から流出する。本明細書では、吸込口44から昇圧流路60の一端部61までの流路を吸込流路と呼び、昇圧流路60の他端部62から吐出口45までの流路を吐出流路と呼ぶ。なお、本実施形態では、吸込口44の水路幅(流路断面)は、吐出口45の水路幅(流路断面)よりも大きい。
【0025】
第1ケーシング40には、図1および図4に示すように、昇圧流路60の両端部となる先述の一端部61と他端部62との間を隔てるために、第1ケーシング40の第1弧状溝部42における内面がインペラ20の羽根部22の先端部23および一方側の側端部24aの近傍まで張り出してなる隔壁部46が設けられている。隔壁部46のインペラ20の外周に臨む部分47(以下、「底面部47」ともいう。)は、図2に示すようにインペラ20の羽根部22の先端部23が内接する仮想円筒面に対向する円弧面で形成されている。
【0026】
一方、第2ケーシング50における第1ケーシング40の隔壁部46に対向する範囲には、図3および図4に示すように、インペラ20の羽根部22の他方側の側端部24bの近傍まで張り出した張り出し部53が形成されており、この張り出し部53も隔壁部46の一部を構成している。この張り出し部53を含む隔壁部46が昇圧流路60の両端部を隔てる壁となり、昇圧流路60の他端部62から一端部61への送液の逆流を阻止する。
【0027】
次に、カスケードポンプ10の騒音を低減するためのケーシング構造について説明する。カスケードポンプ10の騒音は、ケーシング(40,50)に設けられる隔壁部46の吸込流路側の形状設定により低減される。以下、本実施形態の隔壁部46の構造を具体的に説明する。
【0028】
隔壁部46は、図5および図6に示すように、インペラ20が何れの回転位置にあっても、底面部47における円弧面の吸込流路側に形成された輪郭線48と、インペラ20の羽根部22の正回転方向(図1の矢印D1方向)後側の羽根面25の延長面27とが、羽根面25の全幅に亘って合致しないように形成されている。なお、羽根面25の全幅はインペラ20の回転軸方向の寸法である。
【0029】
本実施形態では、羽根面25の延長面27は、インペラ20の径方向に延びている。そして、隔壁部46の輪郭線48は、インペラ20の径向視において図1に示す回転軸線C1と交わる方向に延びている。別の言い方をすれば、隔壁部46の輪郭線48は、羽根面25の回転軸線C1の長手方向に対して傾斜するように非平行状に形成されている。
【0030】
なお、第1ケーシング40は、隔壁部46を含む全体が射出成型で製造されている。製造時において第1ケーシング40を金型から抜き出せるように、隔壁部46は、完成時に第2ケーシング50の他側壁51に近づくにつれてインペラ20の逆回転方向(図1の矢印D1方向と逆の方向)に移動するように形成されている。また、隔壁部46の輪郭線48は、全長にわたって直線状になっており、曲線状である場合と比較して製造が容易なものになっている。
【0031】
以上説明した本実施形態のカスケードポンプ10の効果について、図6および図7を用いて説明する。図6は、本実施形態のカスケードポンプ10におけるケーシング(40,50)の隔壁部46近傍を模式的に示すものであり、隔壁部46近傍をインペラ20の径方向の外側から内側に向って視た図である。
【0032】
本実施形態のカスケードポンプ10の基本的な動作は、先述した従来のカスケードポンプ1と同様である。インペラ20の回転に伴い吸込流路から昇圧流路60に流入し、昇圧流路60をほぼ一周してこの昇圧流路60の他端部62に到達した送液の大部分は、隔壁部46によって流れ方向を変えて吐出流路に送り出される。また、昇圧流路60の他端部62に到達した送液の一部は、吐出流路に送り出されることなく、インペラ20の溝部21に入り込んで、図6に示すように羽根部22(22a,22b)と仕切部28と隔壁部46との間に形成されるスペースSにほぼ出入不能に閉じ込められた状態で吸込流路側へ移送される。
【0033】
ここで、本実施形態のカスケードポンプ10では、図5を用いて説明したように、インペラ20が何れの回転位置にあっても、隔壁部46の円弧面状の底面部47における吸込流路側に形成された輪郭線48と、インペラ20の羽根部22の正回転方向(図1の矢印D1方向)後側の羽根面25の延長面27とが、羽根面25の全幅に亘って合致しないように形成されている。図6の視点で視ると、隔壁部46の上記輪郭線48が、インペラ20の半径方向から視て、インペラ20の羽根部22の羽根面25の回転方向後側の輪郭線26と交わる方向に延びている。
【0034】
このため、本実施形態のカスケードポンプ10では、インペラ20が何れの回転位置にあっても、先述の従来例とは異なり、羽根面25の輪郭線26全体が隔壁部46の輪郭線48と重複する状態は生じない。したがって、カスケードポンプ10では、図6に示すように、たとえば溝部21aが隔壁部46の領域から出てスペースSが開放状態となる際には、初期に羽根部22の輪郭線26の一部が隔壁部46の領域から出て、羽根部22の輪郭線26の一部に対応する部分的な開放部S1が生じる。その後、インペラ20の回転に伴って隔壁部46の領域から出る羽根部22の輪郭線26が徐々に増大し、開放部S1が次第に拡大していく。つまり、本実施形態の隔壁部46を有するカスケードポンプ10では、図8に示す隔壁部17dを有する従来のカスケードポンプに比べ、隔壁部46の吸込流路側における液体の急激な流れの発生の勢いを抑えることができる。
【0035】
図6の隔壁部46を有するカスケードポンプ10の騒音と、図8の隔壁部17dを有する従来型のカスケードポンプの騒音との比較に関する実験結果を図7に示す。図7に示すように、本実施形態のカスケードポンプ10では、従来型のカスケードポンプに比べ、少なくとも3300Hz付近、6750Hz付近、10100Hz付近で見られる、他の周波数域の音よりも大きい特定周波数域の音(ピーク)が大きく低下している。人の耳はこのピークの音を異音と捉え、耳障りだと感じてしまう。本実施形態のカスケードポンプ10では、従来型のカスケードポンプに比べてこのピークが小さくなり、異音を感じにくいと言える。なお、図7に関する実験は、隔壁部以外は同じ構造のカスケードポンプで行ったものである。
【0036】
図7に示す実験結果によると、先述したように図8に示す隔壁部17dを有する従来型のカスケードポンプでは、スペースS内の液体が瞬時かつ勢いよく昇圧流路60に向かって流入するために、図7の如きピーク(耳障りな騒音)が大きくなっていると考えられる。本実施形態のカスケードポンプ10では、図6に示すように隔壁部46の形状設定により開放部S1が小さい開放度から大きい開放度へと次第に変化し、スペースS内の液体が昇圧流路60に向かって流入する際における当該流れの勢いが抑えられたことにより、上記ピークが小さく抑えられたものと考えられる。
【0037】
以上、本発明に係るカスケードポンプを1つの実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成については、本実施形態に限られるものではない。
【0038】
たとえば、隔壁部46の輪郭線48は、第2ケーシング50の他側壁51に近づくにつれてインペラ20の逆回転方向に移動するように形成しているが、第2ケーシング50の他側壁51に近づくにつれてインペラ20の正回転方向に移動するように形成してもよい。
【0039】
また、隔壁部46の輪郭線48は直線状で構成しているが、この輪郭線48は曲線状や階段状などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、カスケードポンプに広く適用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 カスケードポンプ
20 インペラ
21a 一方側の溝部
21b 他方側の溝部
22a 一方側の羽根部
22b 他方側の羽根部
23 羽根部の先端部(羽根部の外周部の一部)
24 羽根部の側端部
25 羽根面
27 羽根面の延長面
40 第1ケーシング
41 一側壁
42a 第1弧状溝部の外周部(第1ケーシングの内周部)
44 吸込口
45 吐出口
46 隔壁部
48 隔壁部の輪郭線
50 第2ケーシング
51 他側壁
60 昇圧流路
61 昇圧流路の一端部
62 昇圧流路の他端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9