(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135837
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】工作機械のカバー装置、及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20240927BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
E06B9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046720
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 龍一
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011DD02
(57)【要約】
【課題】ロック機構の故障や不正操作を抑制し、省スペース化に寄与する工作機械のカバー装置を提供する。
【解決手段】工作機械の装置本体の開口部に対して開閉可能なカバーであって、装置本体に回転可能に支持された第1カバー部211と、第1カバー部211に回転可能に支持された第2カバー部213と、を有するカバーと、第2カバー部213に接続される第1移動体であって、カバーに隣接して設けられた装置本体のガイド部251にガイドされながら移動する第1移動体と、ガイド部251にガイドされながら第1移動体と共に移動する第2移動体と、第1移動体及び第2移動体と共に移動するキー231と、キー231をロック可能なロック装置233と、を備える工作機械のカバー装置であって、キー231及びロック装置233は、ガイド部251に対してカバーと反対側に設けられ、第1移動体及び第2移動体の位置によって、キー231の姿勢が定まる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の装置本体の開口部を覆い、前記開口部に対して開閉可能なカバーであって、前記装置本体に第1回転軸線を中心に回転可能に支持された第1カバー部と、前記第1回転軸線と平行な第2回転軸線を中心に前記第1カバー部に回転可能に支持された第2カバー部と、を有するカバーと、
前記第2カバー部に接続される第1移動体であって、前記カバーに第1回転軸線方向に隣接して設けられた前記装置本体のガイド部にガイドされながら前記第1回転軸線方向と直交する方向に移動する第1移動体と、
前記ガイド部にガイドされながら前記第1移動体と共に移動する第2移動体と、
前記第1移動体及び前記第2移動体と共に移動するキーと、
前記キーが挿入されるキー穴が形成され、前記キーをロック可能なロック装置と、
を備える工作機械のカバー装置であって、
前記キー及び前記ロック装置は、前記第1回転軸線方向において、前記ガイド部に対して前記カバーと反対側に設けられ、
前記第1移動体及び前記第2移動体の位置によって、前記キーの姿勢が定まることを特徴とする工作機械のカバー装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記第1回転軸線方向に貫通し、前記第1回転軸線方向と直交する方向に延伸するガイド孔であり、
前記第1移動体及び前記第2移動体は、前記ガイド孔の内部で前記ガイド孔の延伸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のカバー装置。
【請求項3】
前記第1移動体及び前記第2移動体は、前記回転軸線方向に延びる軸体と、前記軸体を中心に回転可能な回転体と、を有するローラであることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のカバー装置。
【請求項4】
前記第1移動体の軸体と前記第2移動体の軸体を接続する板状の接続部材を更に備え、
前記キーは、前記接続部材に取り付けられ、前記第1移動体及び前記第2移動体の移動に伴って前記接続部材と一体的に姿勢が変化することを特徴とする請求項3に記載の工作機械のカバー装置。
【請求項5】
装置本体と、
刃物台と、
主軸と、
請求項1~4のいずれか1項に記載のカバー装置と、
を備える工作機械であって、
前記刃物台及び前記主軸が内部に配置され、前記装置本体と前記カバーによって形成される第1空間と、前記キー及び前記ロック装置が内部に配置され、前記装置本体と前記ガイド部によって前記カバーの側方に形成される第2空間と、が形成されていることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー装置と、カバー装置を備える工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具によりワークを加工する工作機械においては、切りくずやクーラントの飛散防止、加工室への異物侵入防止のために、開閉可能なカバーを有するカバー装置が設けられることが一般的である。カバー装置としては、キーとキー穴により構成されるロック機構が設けられ、カバー装置のカバーが閉じた状態でロックされる構成が知られている。
【0003】
特許文献1には、キーが工作機械の装置本体の前面側に露出して設けられ、キーが挿入されるキー穴がカバーに露出して設けられ、カバーを閉じる動作に伴ってキーがキー穴に挿入されるカバー装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように、キーやキー穴が露出して配置されている構成においては、例えば、切削工具やワークの取付け取外しの際に、キーやキー穴に切削工具等が衝突することでロック機構が故障するおそれがある。また、ユーザがアクセス容易な位置にキーやキー穴が配置されているため、ロック機構の不正操作が比較的容易であり、安全性の観点から好ましくない。かといって、キーやキー穴を覆うような構成をロック機構に新たに追加すると、ロック機構やカバー装置の大型化につながりうる。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ロック機構の故障や不正操作を抑制し、省スペース化に寄与する工作機械のカバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記課題を解決するため、本発明の態様1に係るカバー装置は工作機械の装置本体の開口部を覆い、前記開口部に対して開閉可能なカバーであって、前記装置本体に第1回転軸線を中心に回転可能に支持された第1カバー部と、前記第1回転軸線と平行な第2回転軸線を中心に前記第1カバー部に回転可能に支持された第2カバー部と、を有するカバーと、前記第2カバー部に接続される第1移動体であって、前記カバーに第1回転軸線方向に隣接して設けられた前記装置本体のガイド部にガイドされながら前記第1回転軸線方向と直交する方向に移動する第1移動体と、前記ガイド部にガイドされながら前記第1移動体と共に移動する第2移動体と、前記第1移動体及び前記第2移動体と共に移動するキーと、前記キーが挿入されるキー穴が形成され、前記キーをロック可能なロック装置と、を備える工作機械のカバー装置であって、前記キー及び前記ロック装置は、前記第1回転軸線方向において、前記ガイド部に対して前記カバーと反対側に設けられ、前記第1移動体及び前記第2移動体の位置によって、前記キーの姿勢が定まる。
【0008】
(態様2)
上記態様1において、前記ガイド部は、前記第1回転軸線方向に貫通し、前記第1回転軸線方向と直交する方向に延伸するガイド孔であり、前記第1移動体及び前記第2移動体
は、前記ガイド孔の内部で前記ガイド孔の延伸方向に移動可能に構成されてもよい。
【0009】
(態様3)
上記態様1又は2において、前記第1移動体及び前記第2移動体は、前記回転軸線方向に延びる軸体と、前記軸体を中心に回転可能な回転体と、を有するローラであってもよい。
【0010】
(態様4)
上記態様3において、前記第1移動体の軸体と前記第2移動体の軸体を接続する板状の接続部材を更に備え、前記キーは、前記接続部材に取り付けられ、前記第1移動体及び前記第2移動体の移動に伴って前記接続部材と一体的に姿勢が変化してもよい。
【0011】
(態様5)
上記課題を解決するため、本発明の態様5に係る工作機械は、装置本体と、刃物台と、主軸と、態様1~4のいずれか一の態様のカバー装置と、を備える工作機械であって、前記刃物台及び前記主軸が内部に配置され、前記装置本体と前記カバーによって形成される第1空間と、前記キー及び前記ロック装置が内部に配置され、前記装置本体と前記ガイド部によって前記カバーの側方に形成される第2空間と、が形成されている。
【0012】
なお、上記各態様の構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロック機構の故障や不正操作を抑制し、省スペース化に寄与する工作機械のカバー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】実施例に係るキーの周囲に配置される種々の部材の説明図である。
【
図5】実施例に係るカバーの開閉動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0016】
<実施例>
[工作機械]
まず、本発明の実施例に係る工作機械100の概要構成について説明する。
図1は、工作機械100の外観を示す斜視図である。工作機械100の外装部は、工作機械100の上面側と前面側に開口する開口部を有する装置本体10と、装置本体10の開口部を覆うように開閉可能に設けられるカバー21により構成される。装置本体10は、おおよそ直方体形状であり、前面側に重力方向に対して傾斜した斜面部が形成されている。
【0017】
工作機械100の装置本体10の内部の第1空間H1は、装置本体10の開口部を介して工作機械100の外部と連通する。第1空間H1には、切削工具によりワーク(切削対
象物)の加工を行うための加工室が形成されている。加工室には、切削工具を取り付け可能な刃物台(不図示)や、ワークを取り付け可能な主軸(不図示)が設けられている。刃物台に保持された切削工具と主軸に保持されたワークが相対的に平行移動や回転移動することで、加工室内で切削加工が行われる。
【0018】
工作機械100には、装置本体10の開口部を覆うカバー21を有するカバー装置20が設けられている。カバー21が開いた状態において、装置本体10の開口部は露出され、ユーザは加工室にアクセスしてワークの加工条件に基づいた切削工具や素形材のような短尺ワークを工作機械100に取り付け可能である。また、カバー21が閉じた状態において、加工室は密閉され、ユーザの安全を確保しつつ、加工室への異物の侵入や加工中に発生する切りくずやクーラントの工作機械100外部への飛散が防止される。
図1には、閉じた状態のカバー21が実線で示され、開いた状態のカバー21が二点鎖線で示されている。
【0019】
また、カバー装置20は、カバー21を閉状態でロックするためのロック機構23(
図2参照)を有する。ロック機構23については、詳細構成を後述する。工作機械100は、ユーザの安全確保のため、カバー21が閉じられてロック機構23によりロックされた状態でないと切削加工を開始できないように予め設定されている。
【0020】
実施例に係る工作機械100において、ロック機構23は、加工室が形成された第1空間H1とは異なる第2空間H2であって、閉状態のカバー21の側方に形成される第2空間H2に配置されている。第2空間H2は装置本体10等により外部と仕切られており、ロック機構23はユーザのアクセスが容易でない位置に配置されている。このような構成により、ロック機構23が切りくず等によって傷つくことが防止され、且つロック機構23の不正操作防止にもつながる。
【0021】
また、工作機械100の前面側には、ユーザが操作可能な操作部41が設けられている。操作部41は、ユーザが各種設定を行うためのユーザインターフェースであり、ユーザは操作部41を通じて加工プログラムを作成し、工作機械100に加工動作や計測動作を実行させたり、ロック機構23のロック状態を切り替えたりすることができる。また、操作部41には表示パネルが設けられ、ユーザは表示パネルを通じて加工プログラムの進行状況や計測結果、エラー発生などを知得できる。
【0022】
[カバー装置]
次に、本実施例に係るカバー装置20の詳細構成について説明する。
図2(a)はカバー装置20の斜視図であり、
図2(b)はカバー装置20の正面図であり、
図2(c)は
図2(b)のA-A断面図である。
【0023】
カバー装置20は、カバー21と、カバー21をロックするロック機構23と、カバー21の開閉動作をガイドするガイド部材25と、第1ローラ27と、第2ローラ28と、第1ローラ27と第2ローラ28を接続する板状の接続部材29と、を備える。
【0024】
カバー21は、跳ね上げ式のカバーであり、第1カバー部としての上側カバー体211と、第2カバー部としての前側カバー体213と、を有する。上側カバー体211は、第1回転軸線L1を中心に装置本体10に回転可能に支持され、カバー21が閉状態のときに装置本体10の開口部の上部を覆う。前側カバー体213は、第1回転軸線L1と平行な第2回転軸線L2を中心に上側カバー体211に回転可能に支持され、カバー21が閉状態のときに装置本体10の開口部の前部を覆う。第1回転軸線L1と第2回転軸線L2は、工作機械100の前後方向と直交する左右方向に延びている。
【0025】
なお、前側カバー体213は、上側カバー体211に支持された回転軸によって支持されていてもよいし、ヒンジ部を通じて上側カバー体211に支持されてもよい。すなわち、上側カバー体211が前側カバー体213を回転可能に支持する機構は、公知の回転支持機構を適用可能である。
【0026】
前側カバー体213には、開閉動作の際にユーザがカバー21を操作するために把持する取っ手部215と、切削加工中に加工室(第1空間H1の内部)の様子を確認するための窓217が設けられている。ユーザが取っ手部215を把持して前側カバー体213を持ち上げることで、前側カバー体213が上側カバー体211に対して折り畳まれるようにカバー21が変形してカバー21は開かれる。
【0027】
ガイド部材25は、第1回転軸線L1方向と直交する方向に延伸する板金状の部材であり、カバー21と第1回転軸線L1方向に隣接して配置される。ガイド部材25は閉状態のカバー21に沿って形成され、水平に延びる上部と、上部から前方向且つ下方向に延伸する傾斜部と、を有する。また、ガイド部材25は、装置本体10と共にロック機構23が内部に配置される第2空間H2を形成する。すなわち、ガイド部材25は、加工室が形成される第1空間H1とロック機構23が配置される第2空間H2を仕切る仕切り板として機能する。
【0028】
ガイド部材25には、第1回転軸線L1方向に開口するガイド孔251が形成されている。ガイド孔251は、第1回転軸線L1方向と直交する方向に延伸し、閉状態のカバー21に沿って形成されている。ガイド孔251は、カバー21の開閉動作の際にカバー21をガイドするガイド部である。
【0029】
第1ローラ27及び第2ローラ28は、ガイド孔251の内部に配置され、第1回転軸線L1方向と平行な回転軸線を中心に回転可能に構成される。第1ローラ27は、前側カバー体213の側面から第1回転軸線L1方向に突出するように前側カバー体213に接続されている。一方、第2ローラ28は、接続部材29及び第1ローラ27を介して間接的に前側カバー体213に接続されている。カバー21が閉状態のとき、第2ローラ28は第1ローラ27に対して上方に位置する。
【0030】
第1ローラ27はガイド孔251の内部を移動する第1移動体であり、第2ローラ28はガイド孔251の内部を移動する第2移動体である。また、第1ローラ27及び第2ローラ28は、ガイド孔251にガイドされながらガイド孔251の延伸方向に移動する被ガイド部である。すなわち、前側カバー体213に接続された第1ローラ27がガイド孔251にガイドされることで、開閉動作の際にカバー21がガイド孔251に沿って移動される。また、接続部材29によって互いに接続された第1ローラ27及び第2ローラ28は、ガイド孔251の内部で共に連動して移動する。
【0031】
ロック機構23は、第1回転軸線L1方向において、ガイド部材25に対してカバー21と反対側に設けられている。ロック機構23は、接続部材29に接続されたキー231と、キー231が挿入されるキー穴233aが形成されたロック装置233により構成される。
【0032】
キー231は、接続部材29と第1ローラ27を介して前側カバー体213に間接的に接続され、カバー21の開閉動作に伴ってキー穴233aに挿抜される。ロック装置233は、
図2(c)に示されるように、第1回転軸線L1方向に見たときに、ガイド孔251の下方側且つ前方側の端部と重なる位置に設けられる。
【0033】
次に、
図3を参照して、カバー21の側部に配置される種々の部材の詳細構成について
説明する。
図3は、カバー21の側部のキー231の周囲に配置される種々の部材を第1ローラ27の回転軸線方向と直交する方向から見た図である。
【0034】
第1ローラ27は、軸体271と、軸体271の周りに回転可能に設けられた回転体である車輪部273を有する。第1ローラ27は、回転軸線方向において、ガイド部材25から両側に突出するようにガイド孔251の内部に設けられている。軸体271の回転軸線方向の一端部は前側カバー体213に接続され、他端部には接続部材29が接続されている。軸体271の一端部が前側カバー体213の側面に形成された穴部に挿入されることで、カバー21と第1ローラ27は接続されている。
【0035】
第2ローラ28は、軸体281と、軸体281の周りに回転可能に設けられた車輪部283を有する。第2ローラ28は、回転軸線方向において、ガイド部材25から両側に突出するようにガイド孔251の内部に設けられている。軸体281の回転軸線方向の一端部はカバー21に接続されてはおらず、他端部には接続部材29が接続されている。このような構成により、第1ローラ27及び第2ローラ28は、ガイド孔251の内部を回転しながらスムーズに移動するため、カバー21の開閉動作の作業性が向上する。
【0036】
接続部材29は、軸体271と軸体281が貫通する孔部が設けられ、ナット等の固定部材31により軸体271と軸体281に対して固定されている。すなわち、接続部材29は、第1ローラ27と第2ローラ28との間隔を一定に保ちつつ、軸体271と軸体281と一体的に移動する。
【0037】
また、接続部材29には、キー231を保持するキー保持部33が接続されている。キー231は、接続部材29の延伸方向であって、第2ローラ28から第1ローラ27に向かう方向に突出するようにキー保持部33に保持されている。キー231には、後述するプランジャ235が挿入されるロック孔231aが形成されている。キー231は、軸体271、軸体281及び接続部材29と一体的に移動し、且つ接続部材29と一体的に姿勢が変化する。
【0038】
[ロック動作]
次に、ロック機構23のロック動作について
図4(a)、(b)を参照して説明する。
図4(a)、(b)ともに第1回転軸線L1方向に見た断面図である。
図4(a)は、キー231がロックされていない非ロック状態のロック機構23を見た断面図である。
図4(b)は、キー231がロックされているロック状態のロック機構23を見た断面図である。
【0039】
ロック機構23は、ソレノイドロック式であり、不図示のコイルへの電力供給状態と電力遮断状態の切替によってプランジャ235が移動する。また、ロック装置233には、プランジャ235が挿抜されるロック孔233bが形成されている。非ロック状態において、プランジャ235はキー231のロック孔231aやロック装置233のロック孔233bから避難しており、キー231はキー穴233aに対して挿抜自在である。一方、ロック状態において、プランジャ235はキー231のロック孔231aやロック装置233のロック孔233bに挿入されており、キー231はキー穴233aから抜けないようにロックされている。
【0040】
[カバーの開閉動作]
次に、カバー21の開閉動作の詳細について
図5(a)~(d)を参照して説明する。
図5(a)~(d)はカバー21の開閉動作を示す
図2(b)のA-A断面図であり、
図5(a)から
図5(d)まで順にカバー21が徐々に閉状態から開状態に移行する様子が示されている。
【0041】
本実施例のガイド孔251は、第1孔部251aと、第2孔部251bと、屈曲部251cとにより構成される。第1孔部251aは、ガイド部材25の上部で水平な第1方向D1に延伸する。第2孔部251bは、ガイド部材25の傾斜部で水平方向及び重力方向に交差した第2方向D2に延伸する。屈曲部251cは、第1孔部251aと第2孔部251bの間に位置し、第1孔部251aと第2孔部251bを接続する。ガイド孔251の延伸方向において、第1孔部251aは屈曲部251cに対してガイド孔251の後方側に位置し、ガイド孔251の一端部を構成する。一方、ガイド孔251の延伸方向において、第2孔部251bは屈曲部251cに対してガイド孔251の前方側且つ下方側に位置し、ガイド孔251の他端部を構成する。
【0042】
図5(a)は、第1ローラ27と第2ローラ28が共に第2孔部251bに位置し、キー231がロック装置233のキー穴233aに挿入されてカバー21が閉状態である様子を示す。このとき、上側カバー体211と前側カバー体213は、装置本体10に沿って配置され、装置本体10の開口部を覆っている。また、キー231の延伸方向は、第2方向D2と略平行である。
【0043】
図5(b)は、
図5(a)に示される状態からカバー21が持上げられ、キー231がキー穴233aから抜けて、第1ローラ27と第2ローラ28が共に第2孔部251bに位置しているときの様子を示す。閉状態のカバー21が持上げられると、第1ローラ27と第2ローラ28が第2孔部251bにガイドされながら第2方向D2の上方向に移動する。
【0044】
第1ローラ27と第2ローラ28が第2孔部251b内を移動している間は、第1ローラ27及び第2ローラ28と共に移動する接続部材29やキー231の姿勢は変化しない。すなわち、キー231の延伸方向が第2方向D2と略平行な状態で、キー231は第1ローラ27及び第2ローラ28と共に移動する。また、上側カバー体211は第1回転軸線L1を中心に上方に回転し、前側カバー体213は上側カバー体211に対して折り畳まれるように第2回転軸線L2を中心に回転する。
【0045】
図5(c)は、
図5(b)に示される状態から更にカバー21が持上げられ、第1ローラ27と第2ローラ28が第2孔部251bから屈曲部251cを介して第1孔部251aに移動する途中の様子を示す。第1ローラ27に対して上方に位置する第2ローラ28が第2孔部251bから屈曲部251cに移動すると、接続部材29とキー231の姿勢が変化し始める。
【0046】
図5(d)は、
図5(c)に示される状態からカバー21が装置本体10の後方側に押し込まれて、第2ローラ28がガイド孔251の一端に当接し、カバー21が開状態である様子を示す。このとき、第1ローラ27及び第2ローラ28は第1孔部251aに位置し、キー231の延伸方向は略水平、且つ第1方向D1と略平行となる。
【0047】
上述の通り、カバー装置20においては、第1ローラ27及び第2ローラ28がガイド孔251にガイドされながら、カバー21は閉状態から開状態へ移行する。なお、カバー21を開状態から閉状態へ移行する際は、上述の手順を逆順に行えばよい。カバー21の開閉動作において、カバー21に接続された第1ローラ27がガイド孔251にガイドされることによって、カバー21の移動方向は一意的に定まるため、カバー21の開閉動作の操作性が向上する。
【0048】
また、第2孔部251bの延伸方向である第2方向D2は、キー231のロック装置233に対する挿入方向と略平行である。そして、上述の通り、第1ローラ27と第2ロー
ラ28が共に第2孔部251b内を移動するとき、キー231の延伸方向が第2方向D2と略平行な状態で、キー231は第1ローラ27と第2ローラ28と共に第2方向D2に直進的に移動する。また、第2孔部251bの端部付近に位置するロック装置233のキー穴233aの深さ方向は第2方向D2と平行である。このような構成により、キー231をキー穴233aに挿抜する際のキー231の挿抜(移動)方向とキー231の延伸方向とが一致し、キー231の挿抜動作が精度良く確実に行われる。特に、本実施例の構成によれば、キー231がキー穴233a付近に位置するとき、キー231は回動することなく平行移動するため、キー231の長さが長い場合でも確実にキー231をキー穴233aに挿抜できる。
【0049】
また、第1ローラ27及び第2ローラ28が第1孔部251aに位置し、カバー21が開状態のとき、第1ローラ27と第2ローラ28は重力方向で同じ位置にあり、ガイド孔251の内壁の上に第1ローラ27と第2ローラ28が載置される。更に、屈曲部251cは、第1孔部251aから前方向且つ上方向に向かって延伸し、その後前方向且つ下方向に向かって延伸して第2孔部251bにつながる。従って、屈曲部251cの一部は、第1孔部251aより高い位置に位置する。このような構成により、カバー21が開状態のときに、重力によってカバー21が意図せず閉状態に移行するおそれが低減され、ユーザの安全確保につながる。更に、カバー21が装置本体10の上方に位置するため、カバー21が工作機械100の前方や側方に突出することがなく、ユーザが開状態のカバー21に干渉することを防ぐと共に、工作機械100の設置スペースの省スペース化に寄与する。
【0050】
また、キー231とロック装置233はガイド部材25を挟んでカバー21と反対側に形成される第2空間H2の内部に配置されている。第2空間H2は、ガイド孔251やプランジャ235の移動経路を除いて、ガイド部材25や装置本体10に覆われている。従って、切りくず等がロック機構23に干渉することが防止され、ロック機構23の故障発生が抑制される。更に、ユーザは容易にキー231やロック装置233にアクセスできないため、キー231やロック装置233の不正操作が行われるおそれが低減され、ユーザの安全性向上につながる。
【0051】
また、本実施例と同様に、跳ね上げ式のカバー21の側方にカバー21をガイドするガイド部材25が設けられる場合、ガイド部材25に対してカバー21と反対側に形成される第2空間H2はデッドスペースとなりがちである。しかし、本実施例の構成によれば、キー231やロック装置233が第2空間H2の内部に配置されるため、デッドスペースを有効活用でき、省スペース化に寄与する。更に、ロック機構23が加工室の内部に配置される構成と比較して、本実施例の構成によれば、加工室のスペースが削減されることがなく、且つロック機構23が切りくず等により傷つくおそれもない。
【0052】
また、接続部材29によって、キー231、軸体271、軸体281が互いに接続されているため、キー231は第1ローラ27及び第2ローラ28と共に移動し、第1ローラ27及び第2ローラ28の位置によって接続部材29とキー231の姿勢が定まる。より具体的には、第1ローラ27及び第2ローラ28が第2孔部251bに位置するときは、キー231の延伸方向は第2孔部251bの延伸方向である第2方向D2と略平行となる。そして、第1ローラ27及び第2ローラ28が第2孔部251bから屈曲部251cを通り第1孔部251aに移動するにつれて、キー231の延伸方向が徐々に水平に近づくようにキー231の姿勢は変化する。その後、第1ローラ27及び第2ローラ28が第1孔部251aに位置すると、キー231の延伸方向は略水平となり、第1孔部251aの延伸方向である第1方向D1と略平行となる。このような構成により、第1ローラ27及び第2ローラ28の移動に伴って、キー231の延伸方向がガイド部材25の延伸方向に沿うようにキー231の姿勢が変化するため、ガイド部材25の大型化を防ぎ、省スペー
ス化に寄与する。
【0053】
<比較例>
以下、
図6(a)、(b)を参照して、比較例の構成について説明し、本発明によるガイド部材25の省スペース化の効果についてより詳細に説明する。
図6(a)は、比較例1のカバー装置50の構成を示す断面図である。
図6(b)は、比較例2のカバー装置60の構成を示す断面図である。以下、比較例1、2の説明において、上述の実施例と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
比較例1のカバー装置50は、第2ローラ28や接続部材29を備えず、カバー21に第1ローラ27(
図6(a)で不図示)のみが接続される点で本実施例と異なる。比較例1において、ガイド部材25のガイド孔251の開口方向に見たときに、キー231は第1ローラ27と重なる位置に設けられている。
【0055】
カバー21の端面を装置本体10に当接させて装置本体10の開口部を確実に塞ぐため、第1ローラ27はカバー21の先端に近い位置に設けられることが好ましい。移動方向が規制される第1ローラ27が前側カバー体213の先端部に接続されることで、カバー21の先端部の位置決めの際に、カバー21の撓み等の影響が抑制されてカバー21の先端部がより正確に確実に位置決めされる。
【0056】
しかし、比較例1のように、第1ローラ27が前側カバー体213の先端部に接続され、キー231が第1ローラ27の近傍に設けられている構成においては、本実施例と比較してロック装置233を前方且つ下方にずらして配置する必要がある。すると、比較例1においては、本実施例と比較して、ガイド部材25やガイド孔251を第2方向D2に延長する必要があるため、より多くのスペースが必要となる。
図6(a)には、比較例1において、本実施例に対するガイド部材25の延長部分が二点鎖線で示されている。
【0057】
次に、実施例に対してロック装置233の位置をずらさないようにロック装置233を配置可能な比較例2について説明する。比較例2のカバー装置60は、第2ローラ28を備えず、接続部材29が第1ローラ27(
図6(b)で不図示)にのみ接続されている点で本実施例と異なる。
【0058】
比較例2のカバー装置60においては、第1ローラ27に接続部材29が接続されて構成されているため、ガイド部材25の第2方向D2への延長を避けるため、本実施例と同様の位置でキー231を配置できる。一方で、カバー装置60には、第2ローラ28が設けられていないため、第1ローラ27が移動してもキー231の姿勢は変化することなく固定される。
【0059】
比較例2のように、キー231の姿勢が変化しない構成においては、キー231が常に第1ローラ27の上方に位置する。すると、第1ローラ27が上方の屈曲部251cや第1孔部251aに位置したときに、キー231が装置本体10の上部に干渉するおそれがある。従って、比較例2においては、本実施例と比較して、ガイド部材25やガイド孔251を上方に延長する必要があるため、より多くのスペースが必要となる。
図6(b)には、比較例2において、本実施例に対するガイド部材25の延長部分が二点鎖線で示されている。
【0060】
上述の通り、本実施例の構成においては、カバー21の先端に接続される第1ローラ27に対してキー231がずれて配置される。更に、本実施例の構成においては、第2ローラ28が設けられているため、カバー21の開閉動作に伴って、キー231の姿勢がガイド孔251に沿うように変化しながらキー231が移動する。従って、本実施例の構成に
よれば、ガイド部材25の大サイズ化を防止でき、省スペース化に寄与する。
【0061】
<その他の実施例>
上述の実施例はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。例えば、ガイド部材25や第1ローラ27は、カバー21の片側だけでなく両側に設けられていてもよい。特に、カバー21が大きい場合、カバー21の両側にガイド孔251等のカバー21の動きをガイドするガイド部を設けることで、カバー21の開閉動作の操作性は向上される。また、例えば、ロック機構23のうち、キー231が装置本体10に対して固定され、ロック装置233がカバー21と共に移動するようにカバー21に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…装置本体、20…カバー装置、21…カバー、211…上側カバー体(第1カバー部)、213…前側カバー体(第2カバー部)、231…キー、233…ロック装置、233a…キー穴、251…ガイド孔(ガイド部)、27…第1ローラ(第1移動体)、28…第2ローラ(第2移動体)、100…工作機械、L1…第1回転軸線、L2…第2回転軸線