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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135844
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20240927BHJP
   H10B 61/00 20230101ALI20240927BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20240927BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
G11C11/16 240
H10B61/00
H01L29/82 Z
H10N50/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046727
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 裕香
(72)【発明者】
【氏名】松岡 史宜
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA05
4M119BB01
4M119DD17
4M119DD24
4M119DD31
4M119EE22
4M119EE27
4M119HH01
5F092AA03
5F092AB07
5F092AB08
5F092AC11
5F092AD23
5F092BB33
5F092BB36
5F092BB43
5F092BC04
5F092DA03
5F092EA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】短時間でデータを書き込む記憶装置を提供する。
【解決手段】記憶装置は、第1方向に延びるワード線WLと、第1方向と交差する第2方向に延びるビット線BLと、メモリセルMCと、グローバルワード線GWLと電気的に接続された電圧回路CV4及び電流回路CI2と、グローバルビット線GBLと電気的に接続された電圧回路CV3及び電流回路CI1と、を含む。メモリセルは、交差する位置において、グローバルワード線及びグローバルビット線との間に接続され、第1可変抵抗素子及び第1可変抵抗素子と接続された第1スイッチング素子を含む。電圧回路CV4は、グローバルワード線に第1電圧が印加された後にグローバルワード線に第1電圧より高い第2電圧を印加し、電流回路CI2は、グローバルワード線に電圧回路によって第2電圧が印加されている間にグローバルワード線に電流を供給する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる第1導電体と、
前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2導電体と、
前記交差する位置において、前記第1導電体及び前記第2導電体との間に接続され、第1可変抵抗素子及び前記第1可変抵抗素子と接続された第1スイッチング素子を含む第1メモリセルと、
前記第1導電体と電気的に接続された電圧回路と、
前記第1導電体と電気的に接続された電流回路と、
を備え、
前記電圧回路は、前記第1導電体に第1電圧が印加された後に前記第1導電体に前記第1電圧より高い第2電圧を印加し、
前記電流回路は、前記第1導電体に前記電圧回路によって前記第2電圧が印加されている間に前記第1導電体に電流を供給する、
記憶装置。
【請求項2】
シンク回路をさらに備え、
前記シンク回路は、前記第2導電体に前記第1電圧が印加された後で前記第1導電体に前記電流回路によって前記電流が供給されている間に、前記第2導電体に前記第1電圧より低い第3電圧を印加する、
請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子は、第4電圧を受けると、オンし、
前記第2電圧と第3電圧の差が、前記第4電圧より低い、
請求項1に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子は、第4電圧を受けると、オンし、
前記第2電圧と第3電圧の差が、前記第4電圧より高い、
請求項1に記載の記憶装置。
【請求項5】
第3導電体と、
第4導電体と、
前記第3導電体及び前記第4導電体と接続され、第2可変抵抗素子及び前記第2可変抵抗素子と接続された第2スイッチング素子を含む第2メモリセルと、
前記第3導電体と電気的に接続された第2電圧回路と、
をさらに備え、
前記第2電圧回路は、前記第3導電体に前記第1電圧が印加された後に前記第3導電体に前記第2電圧より高い第5電圧を印加し、
前記電流回路は、前記第3導電体に前記第2電圧回路によって前記第5電圧が印加されている間に前記第3導電体に電流を供給する、
請求項1に記載の記憶装置。
【請求項6】
第1導電体と、
第2導電体と、
前記第1導電体及び前記第2導電体と接続され、第1可変抵抗素子及び前記第1可変抵抗素子と接続された第1スイッチング素子を含む第1メモリセルと、
前記第1導電体と電気的に接続された電流回路と、
前記第2導電体と電気的に接続されたシンク回路と、
を備え、
前記第1導電体及び前記第2導電体に第1電圧が印加され、
前記電流回路は、前記第1電圧が前記第1導電体に印加された後の第1時刻から前記第1導電体に電流を供給し、
前記シンク回路は、前記第1電圧が前記第2導電体に印加された後かつ前記第1時刻より後の第2時刻から前記第2導電体に前記第1電圧より低い第2電圧を印加する、
記憶装置。
【請求項7】
第3導電体と、
第4導電体と、
前記第3導電体及び前記第4導電体と接続され、第2可変抵抗素子及び前記第2可変抵抗素子と接続された第2スイッチング素子を含む第2メモリセルと、
をさらに備え、
前記電流回路は、前記第3導電体と電気的に接続されており、
前記シンク回路は、前記第4導電体と電気的に接続されており、
前記第3導電体及び前記第4導電体に前記第1電圧が印加され、
前記電流回路は、前記第1電圧が前記第3導電体に印加された後の第3時刻から前記第3導電体に電流を供給し、
前記シンク回路は、前記第1電圧が前記第4導電体に印加された後かつ前記第3時刻より後の第4時刻から前記第4導電体に前記第1電圧より低い第2電圧を印加し、
前記第3時刻と前記第4時刻の間隔は、前記第1時刻と前記第2時刻の間隔より長い、
請求項6に記載の記憶装置。
【請求項8】
前記第2導電体と電気的に接続された第1トランジスタと、
前記第4導電体と電気的に接続された第2トランジスタと、
をさらに備え、
前記第1トランジスタから前記第1メモリセルまでの電流経路の距離は、前記第2トランジスタから前記第2メモリセルまでの電流経路の距離より短い、
請求項7に記載の記憶装置。
【請求項9】
前記第1導電体及び前記第3導電体は、第1方向に並ぶ、
請求項8に記載の記憶装置。
【請求項10】
前記第1導電体とトランジスタを介して電気的に接続され、かつ前記第3導電体とトランジスタを介して電気的に接続された第5導電体をさらに備え、
書込み回路は、前記第5導電体の第1部分に電気的に接続されている、
請求項7に記載の記憶装置。
【請求項11】
前記第1導電体と電気的に接続された第3トランジスタと、
前記第3導電体と電気的に接続された第4トランジスタと、
をさらに備え、
前記第3トランジスタから前記第1メモリセルまでの電流経路の距離は、前記第4トランジスタから前記第2メモリセルまでの電流経路の距離より短い、
請求項7に記載の記憶装置。
【請求項12】
前記第1導電体及び前記第3導電体は、第1方向に並び、
前記第2導電体及び前記第4導電体は、第2方向に並ぶ、
請求項7に記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動的に可変な抵抗を有する素子を用いてデータを記憶する記憶装置が知られている。記憶装置は、短時間でデータを書き込むことを求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8120948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
短時間でデータを書き込む記憶装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態による記憶装置は、第1方向に延びる第1導電体と、上記第1方向と交差する第2方向に延びる第2導電体と、第1メモリセルと、上記第1導電体と電気的に接続された電圧回路と、上記第1導電体と電気的に接続された電流回路と、を含む。上記電圧回路は、上記第1導電体に第1電圧が印加された後に上記第1導電体に上記第1電圧より高い第2電圧を印加する。上記電流回路は、上記第1導電体に上記電圧回路によって上記第2電圧が印加されている間に上記第1導電体に電流を供給する。上記第1メモリセルは、前記交差する位置において、上記第1導電体及び上記第2導電体との間に接続され、第1可変抵抗素子及び上記第1可変抵抗素子と接続された第1スイッチング素子を含む。上記電圧回路は、上記第1導電体に第1電圧が印加された後に上記第1導電体に上記第1電圧より高い第2電圧を印加する。上記電流回路は、上記第1導電体に上記電圧回路によって上記第2電圧が印加されている間に上記第1導電体に電流を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態の記憶装置の機能ブロックを示す図。
図2図2は、第1実施形態のメモリセルアレイの回路図。
図3図3は、第1実施形態のメモリセルアレイの一部の斜視図。
図4図4は、第1実施形態のメモリセルMCの構造の例の断面を示す。
図5図5は、第1実施形態の記憶装置の一部の機能ブロック及び回路を示す。
図6図6は、第1実施形態の記憶装置の書込み回路の構成要素及び構成要素の接続を示す。
図7図7は、第1実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図8図8は、参考用の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図9図9は、第2実施形態の記憶装置の書込み回路の構成要素及び構成要素の接続を示す。
図10図10は、第2実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図11図11は、第3実施形態の記憶装置の一部の構成要素のxy面に沿うレイアウトを示す。
図12図12は、第3実施形態の記憶装置による動作において使用されるメモリセルのグループ分けの例を示す。
図13図13は、第3実施形態の記憶装置の書込み回路の構成要素及び構成要素の接続を示す。
図14図14は、第3実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位を時間に沿って示す。
図15図15は、第3実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流の変化の例を時間に沿って示す。
図16図16は、第4実施形態の記憶装置の書込み回路の構成要素及び構成要素の接続を示す。
図17図17は、第4実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図18図18は、第5実施形態の記憶装置の書込み回路の構成要素及び構成要素の接続を示す。
図19図19は、第5実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図20図20は、参考用の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図21図21は、第6実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図22図22は、第6実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
図23図23は、第6実施形態及び参考用の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。或る実施形態又は相違する実施形態での略同一の機能及び構成を有する複数の構成要素は、互いに区別されるために、参照符号の末尾にさらなる数字又は文字が付加される場合がある。或る記述済みの実施形態に後続する実施形態では、記述済みの実施形態と異なる点が主に記述される。或る実施形態についての記述は全て、明示的に又は自明的に排除されない限り、別の実施形態の記述としても当てはまる。
【0008】
図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なり得る。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、或る第1要素が別の第2要素に「接続されている」又は「電気的に接続されている」とは、第1要素が直接的又は常時或いは選択的に導電性となる要素を介して第2要素に接続されていることを含む。
【0010】
1.第1実施形態
1.1.構成(構造)
1.1.1.全体の構成
図1は、第1実施形態の磁気記憶装置の機能ブロックを示す。記憶装置1は、データを記憶する装置である。記憶装置1は、可変な抵抗を示す磁性体の積層体を用いてデータを記憶する。図1に示されるように、記憶装置1は、メモリセルアレイ11、入出力回路12、制御回路13、ロウ選択回路14、カラム選択回路15、書込み回路16、及び読出し回路17を含む。
【0011】
メモリセルアレイ11は、配列された複数のメモリセルMCの集合である。メモリセルMCは、データを不揮発に記憶することができる。メモリセルアレイ11中には、複数のワード線WL及び複数のビット線BLが位置している。各メモリセルMCは、1つのワード線WL及び1つのビット線BLと接続されている。ワード線WLは行(ロウ)と関連付けられている。ビット線BLは列(カラム)と関連付けられている。1つの行の選択及び1つの列の選択により、1つのメモリセルMCが特定される。
【0012】
入出力回路12は、データ及び信号の入出力を行う回路である。入出力回路12は、記憶装置1の外部から、例えばメモリコントローラから、制御信号CNT、コマンドCMD、アドレス情報ADD、及びデータDATを受け取る。入出力回路12は、データDATを出力する。データDATは、記憶装置1でのデータ書込みの場合は、書込みデータである。データDATは、記憶装置1からのデータ読出しの場合は、読出しデータである。
【0013】
電圧生成回路18は、記憶装置1の外部から受ける電圧から、種々の大きさの電圧を生成する回路である。電圧生成回路18は、データ読出しに使用される一定の大きさの電圧を出力する。電圧生成回路18は、データ書込みに使用される一定の大きさの電圧を出力する。
【0014】
書込み回路16は、メモリセルMCへのデータの書込みを制御する回路である。入出力回路12から書込みデータDATを受け取り、電圧生成回路18からデータ書込みのための電圧を受ける。書込み回路16は、制御回路13の制御及び書込みデータDATに基づいて、データ書込みに使用される電圧及び電流を出力する。
【0015】
読出し回路17は、メモリセルMCからのデータの読出しを制御する回路である。読出し回路17は、電圧生成回路18からデータ読出しのための電圧を受ける。読出し回路17は、制御回路13の制御に基づいて、データ読出しに使用される電圧を使用して、メモリセルMCに保持されているデータを決定する。決定されたデータは、読出しデータDATとして、入出力回路12に供給される。読出し回路17は、センスアンプを含む。
【0016】
ロウ選択回路14は、メモリセルMCの行を選択する回路である。ロウ選択回路14は、入出力回路12からアドレス情報ADDを受け取る。ロウ選択回路14は、書込み回路16からデータ書込みのための電圧を受ける。ロウ選択回路14は、読出し回路17からデータ読出しのための電圧を受ける。ロウ選択回路14は、データ書込みの間、データ書込みのための電圧を使用して、受け取られたアドレス情報ADDにより特定される行と関連付けられた1つ又は複数のワード線WLを選択された状態にする。ロウ選択回路14は、データ読出しの間、データ読出しのための電圧を使用して、受け取られたアドレス情報ADDにより特定される行と関連付けられた1つ又は複数のワード線WLを選択された状態にする。
【0017】
カラム選択回路15は、メモリセルMCの列を選択する回路である。カラム選択回路15は、入出力回路12からアドレス情報ADDを受け取る。カラム選択回路15は、書込み回路16からデータ書込みのための電圧を受ける。カラム選択回路15は、読出し回路17からデータ読出しのための電圧を受ける。カラム選択回路15は、データ書込みの間、データ書込みのための電圧を使用して、受け取られたアドレス情報ADDにより特定される列と関連付けられた1つ又は複数のビット線BLを選択された状態にする。カラム選択回路15は、データ読出しの間、データ読出しのための電圧を使用して、受け取られたアドレス情報ADDにより特定される列と関連付けられた1つ又は複数のビット線BLを選択された状態にする。
【0018】
制御回路13は、記憶装置1の動作を制御する回路である。制御回路13は、入出力回路12から制御信号CNT及びコマンドCMDを受け取る。制御回路13は、制御信号CNTによって指示される制御及びコマンドCMDに基づいて、書込み回路16及び読出し回路17を制御する。具体的には、制御回路13は、書込み回路16を制御して、メモリセルMCへのデータの書込みの間、書込み回路16が電圧生成回路18から受けた電圧をロウ選択回路14及びカラム選択回路15に供給する。制御回路13は、読出し回路17を制御して、メモリセルMCからのデータの読出しの間、読出し回路17が電圧生成回路18から受けた電圧をロウ選択回路14及びカラム選択回路15に供給する。
【0019】
1.1.2.メモリセルアレイの回路構成
図2は、第1実施形態のメモリセルアレイ11の回路図である。図2に示されるように、メモリセルアレイ11中には、M+1(Mは正の整数)本のワード線WL(WL_0、WL_1、…、WL_M)、及びN+1(Nは正の整数)本のビット線BL(BL_0、BL_1、…、BL_N)が位置している。
【0020】
各メモリセルMCは、1つのワード線WL及び1つのビット線BLと接続されている。各メモリセルMCは、1つのMTJ素子MTJ及び1つのスイッチング素子SEを含む。各メモリセルMCにおいて、MTJ素子MTJとスイッチング素子SEは直列に接続されている。各メモリセルMCのスイッチング素子SEは、1つのワード線WLと接続されている。各メモリセルMCのMTJ素子MTJは、1つのビット線BLと接続されている。
【0021】
MTJ素子MTJは、トンネル磁気抵抗効果を示し、例えば、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction; MTJ)を含む素子である。MTJ素子MTJは、磁気抵抗効果素子MTJとも称される。MTJ素子MTJは、低抵抗の状態と高抵抗の状態との間を切り替ることができる可変抵抗素子である。MTJ素子MTJは、2つの抵抗状態の違いを利用して、1ビットのデータを記憶することができる。例えば、MTJ素子MTJは、低抵抗状態によって“0”データを記憶し、高抵抗状態によって“1”データを記憶する。
【0022】
スイッチング素子SEは、自身の両端の電気的接続又は切断を行う素子である。スイッチング素子SEは、2つの端子を有する。スイッチング素子SEは、2端子間に印加される電圧が或る第1閾値未満の場合、高抵抗状態、例えば電気的に非導通状態(オフ状態)である。2端子間に印加される電圧が上昇して、第1閾値以上になると、スイッチング素子SEは低抵抗状態、例えば電気的に導通状態(オン状態)になる。低抵抗状態のスイッチング素子SEの2端子間に印加される電圧が低下して、第2閾値以下になると、スイッチング素子SEは高抵抗状態になる。スイッチング素子SEは、このような第1方向に印加される電圧の大きさに基づく高抵抗状態及び低抵抗状態の間の切替わりの機能と同じ機能を、第1方向と反対の第2方向についても有する。すなわち、スイッチング素子SEは、双方向スイッチング素子である。スイッチング素子SEのオン又はオフにより、このスイッチング素子SEと接続されたMTJ素子MTJへの電流の供給の有無、すなわちMTJ素子MTJの選択又は非選択が制御されることが可能である。
【0023】
1.1.3.メモリセルアレイの構造
図3は、第1実施形態のメモリセルアレイ11の一部の斜視図である。図3に示されるように、複数の導電体21及び複数の導電体22が設けられている。
【0024】
導電体21は、直線の形状を有し、或る方向に延びる。導電体21が延びる方向は、以下、x方向と称される。導電体21は、x方向と交わる方向又はx方向と直交する方向に並ぶ。導電体21が並ぶ方向は、以下、y方向と称される。各導電体21は、1つのワード線WLとして機能する。
【0025】
導電体22は、導電体21が位置する層と異なる層に位置する。導電体21から導電体22に向かう方向は、以下、z方向と称される。導電体22は、直線の形状を有し、y方向に延び、x方向に並ぶ。各導電体22は、1つのビット線BLとして機能する。
【0026】
導電体21と導電体22の交点の各々に1つのメモリセルMCが設けられている。メモリセルMCは、x方向とy方向からなるxy面に沿って行列状に配列されている。各メモリセルMCは、スイッチング素子SEとして機能する構造と、MTJ素子MTJとして機能する構造を含む。スイッチング素子SEとして機能する構造及びMTJ素子MTJとして機能する構造は、各々、1又は複数の層を含む。例えば、MTJ素子MTJとして機能する構造は、スイッチング素子SEとして機能する構造の上面上に位置する。メモリセルMCの下面は、1つの導電体21の上面と接している。メモリセルMCの上面は、1つの導電体22の下面と接している。
【0027】
1.1.5.メモリセル
図4は、第1実施形態のメモリセルMCの構造の例の断面を示す。
【0028】
スイッチング素子SEは、可変抵抗材料32を含む。可変抵抗材料32は、動的に可変な抵抗を示す材料であり、例えば層の形状を有する。可変抵抗材料32は、2端子間スイッチング素子であり、2端子のうちの第1端子は可変抵抗材料32の上面及び下面の一方であり、2端子のうちの第2端子は可変抵抗材料32の上面及び下面の他方である。2端子間に印加される電圧が或る第1閾値(閾値電圧Vth)未満の場合、可変抵抗材料は“高抵抗”状態、例えば電気的に非導通状態である。2端子間に印加される電圧が上昇し、第1閾値以上になると、可変抵抗材料は“低抵抗”状態、例えば電気的に導通状態になる。低抵抗状態の可変抵抗材料32の2端子間に印加される電圧が低下し、第2閾値以下になると、可変抵抗材料は高抵抗状態になる。可変抵抗材料32は、絶縁体と、絶縁体にイオン注入により導入されたドーパントを含む。絶縁体は、例えば、酸化物を含み、SiO或いはSiOから実質的になる材料を含む。ドーパントは、例えば、ヒ素(As)、ゲルマニウム(Ge)を含む。なお、本実施形態では、上述の組成からなる可変抵抗材料32として説明したが、本組成に限定されない。「実質的になる(又は、構成される)」という記載及び同種の記載は、「実質的になる」構成要素が意図せぬ不純物を含有することを許容することを意味する。
【0029】
スイッチング素子SEは、下部電極31及び上部電極33をさらに含み得る。図4は、そのような例を示す。可変抵抗材料32は下部電極31の上面上に位置し、上部電極33は可変抵抗材料32の上面上に位置する。
【0030】
MTJ素子MTJは、強磁性層35、絶縁層36、及び強磁性層37を含む。例として、図4に示されるように、絶縁層36は強磁性層35の上面上に位置し、強磁性層37は絶縁層36の上面上に位置する。
【0031】
強磁性層35は、強磁性を示す材料の層である。強磁性層35は、強磁性層35、絶縁層36、及び強磁性層37の界面を貫く方向に沿った磁化容易軸を有し、例えば、界面に対して45°以上90°以下の角度の磁化容易軸を有し、例えば、界面と直交する方向に沿う磁化容易軸を有する。強磁性層35の磁化の向きはメモリセルMCでのデータの読出し及び書込みによっても不変であることを意図されている。強磁性層35は、いわゆる参照層として機能することができる。強磁性層35は、複数の層を含んでいてもよい。以下、強磁性層35は、参照層35と称される場合がある。
【0032】
絶縁層36は、絶縁体の層である。絶縁層36は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)を含むか、MgOから実質的に構成され、いわゆるトンネルバリアとして機能する。
【0033】
強磁性層37は、強磁性を示す材料の層である。強磁性層37は、例えば、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含むか、CoFeB又はFeBから実質的に構成される。強磁性層37は、強磁性層35、絶縁層36、及び強磁性層37の界面を貫く方向に沿う磁化容易軸を有し、例えば、界面に対して45°以上90°以下の角度の磁化容易軸を有し、例えば、界面と直交する方向に沿う磁化容易軸を有する。強磁性層37の磁化の向きはメモリセルMCへのデータ書込みによって可変であり、強磁性層37は、いわゆる記憶層として機能することができる。以下、強磁性層37は、記憶層37と称される場合がある。
【0034】
記憶層37の磁化の向きが参照層35の磁化の向きと平行であると、MTJ素子MTJは、或る低い抵抗を有する。記憶層37の磁化の向きが参照層35の磁化の向きと反平行であると、MTJ素子MTJは、記憶層37の磁化の向きと参照層35の磁化の向きが反平行である場合の抵抗よりも高い抵抗を有する。以下、或るMTJ素子MTJの強磁性層37の磁化の向きが参照層35の磁化の向きと平行である状態は、MTJ素子MTJが「平行状態にある」、又は「P状態にある」と称される場合がある。或るMTJ素子MTJの強磁性層37の磁化の向きが参照層35の磁化の向きと反平行である状態は、MTJ素子MTJが「反平行状態にある」、又は「AP状態にある」と称される場合がある。
【0035】
記憶層37から参照層35に向かって或る大きさの電流Icp以上の大きさの電流ICELLが流れると、記憶層37の磁化の向きは参照層35の磁化の向きと平行になる。スイッチング電流Icpは、Pスイッチング電流Icpと称される場合がある。MTJ素子MTJを平行状態にするための動作は、「P書込み」と称される場合がある。磁化の向きの反転は確率論的現象なので、一例において、マージンを取って、MTJ素子MTJを平行状態にするために、MTJ素子MTJにはPスイッチング電流Icpよりも大きなP書込み電流Iwpが流される。
【0036】
参照層35から記憶層37に向かって或る大きさの電流Icap以上の大きさの電流ICELLが流れると、記憶層37の磁化の向きは参照層35の磁化の向きと反平行になる。スイッチング電流Icapは、APスイッチング電流Icapと称される場合がある。APスイッチング電流Icapは、Pスイッチング電流Icpより大きい。MTJ素子MTJを反平行状態にするための動作は、「AP書込み」と称される場合がある。P書込みと同様に、一例において、マージンを取って、MTJ素子MTJを反平行状態にするために、MTJ素子MTJにはAPスイッチング電流Icapよりも大きなAP書込み電流Iwapが流される。
【0037】
MTJ素子MTJは、さらなる層を含んでいてもよい。
【0038】
1.1.6.ロウ選択回路及びカラム選択回路
図5は、第1実施形態の記憶装置の一部の機能ブロック及び回路を示す。具体的には、図5は、メモリセルアレイ11と書込み回路16との接続を示し、ロウ選択回路14及びカラム選択回路15の構成要素及び構成要素の接続を示す。以下、トランジスタのソース及びドレインの一方はトランジスタの第1端と称され、他方はトランジスタの第2端と称される場合がある。
【0039】
図5に示されるように、ロウ選択回路14は、M+1個のn型のMOSFET TR_0~TR_Mを含む。トランジスタTR_0~TR_Mのそれぞれの第1端は、それぞれ、ワード線WL_0~WL_Mと接続されている。トランジスタTR_0~TR_Mのそれぞれの第2端は、グローバルワード線GWLと接続されている。グローバルワード線GWLは、書込み回路16と接続されている。
【0040】
カラム選択回路15は、N+1個のn型のMOSFET TC_0~TC_Nを含む。トランジスタTC_0~TC_Nのそれぞれの第1端は、それぞれ、ビット線BL_0~BL_Nと接続されている。トランジスタTC_0~TC_Nのそれぞれの第2端は、グローバルビット線GBLと接続されている。グローバルビット線GBLは、書込み回路16と接続されている。
【0041】
1.1.7.書込み回路
図6は、第1実施形態の記憶装置の書込み回路の構成要素及び構成要素の接続を示す。図6に示されるように、書込み回路16は、電流回路CI1及びCI2、電圧回路CV1及びCV2、ドライバ回路DV1及びDV2、シンク回路SN1及びSN2、並びに書込み制御回路161を含む。
【0042】
電流回路CI1は、電流を供給する回路である。電流回路CI1は、定電流を供給することができる。電流回路CI1は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電流を供給する。電流回路CI1は、信号WENPを受け取り、信号WENPに基づくタイミングで電流をグローバルビット線GBLに供給する。電流回路CI1は、例えば、定電流源CS1とp型のMOSFET TP1を含む。定電流源CS1は、電源電圧VHHを受けるノードとトランジスタTP1の第1端の間に接続されており、P書込み電流Iwpを出力する。トランジスタTP1の第2端は、グローバルビット線GBLに接続されている。トランジスタTP1は、ゲートにおいて、信号WENPを受け取る。
【0043】
電圧回路CV1は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV1は、n型のMOSFET TN11を含み、電圧VCLAMP1からトランジスタTN11の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧VCLAMP1は、一定の大きさを有し、電圧(VCLAMP1-Vthn)は、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthより低い。電圧VCLAMP1は、例えば、電圧生成回路18から供給される。電圧回路CV1は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電圧を供給する。電圧回路CV1は、信号VEN1を受け取り、信号VEN1に基づくタイミングで電圧(VCLAMP1-Vth)をグローバルビット線GBLに供給する。電圧回路CV1は、例えば、トランジスタTN11に加えて、p型のMOSFET TP11を含む。トランジスタTN11及びTP11は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルビット線GBLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN11は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP1を受ける。トランジスタTP11は、ゲートにおいて信号VEN1を受け取る。
【0044】
ドライバ回路DV1は、電圧を供給する回路である。ドライバ回路DV1は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに一定の大きさの電圧VUSELを供給する。電圧VUSELは、例えば、電源電圧VHHと接地(共通)電圧VSSとの間の大きさを有し、例えば、電源電圧VHHの大きさと接地電圧VSSの大きさの中間の大きさを有する。電圧VUSELは、記憶装置1の外部からまたは電圧生成回路18から供給される。ドライバ回路DV1は、信号DEN1を受け取り、信号DEN1に基づくタイミングで電圧VUSELをグローバルビット線GBLに供給する。ドライバ回路DV1は、例えば、n型のMOSFET TN1を含む。トランジスタTN1は、電圧VUSELを受けるノードとグローバルビット線GBLとの間に接続されている。トランジスタTN1は、ゲートにおいて、信号DEN1を受け取る。
【0045】
シンク回路SN1は、電圧を供給する回路である。シンク回路SN1は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに接地電圧VSSを供給する。シンク回路SN1は、信号SEN1を受け取り、信号SEN1に基づくタイミングで接地電圧VSSをグローバルビット線GBLに供給する。シンク回路SN1は、例えば、n型のMOSFET TN2を含む。トランジスタTN2は、グローバルビット線GBLと接地電圧VSSを受けるノードとの間に接続されている。トランジスタTN2は、ゲートにおいて、信号SEN1を受け取る。
【0046】
電流回路CI2は、電流を供給する回路である。電流回路CI2は、定電流を供給することができる。電流回路CI2は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電流を供給する。電流回路CI2は、信号WENAPを受け取り、信号WENAPに基づくタイミングで電流をグローバルワード線GWLに供給する。電流回路CI2は、例えば、定電流源CS2とp型のMOSFET TP2を含む。定電流源CS2は、電源電圧VHHを受けるノードとトランジスタTP2の第1端の間に接続されており、AP書込み電流Iwapを出力する。トランジスタTP2の第2端は、グローバルワード線GWLに接続されている。トランジスタTP2は、ゲートにおいて、信号WENAPを受け取る。
【0047】
電圧回路CV2は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV2は、n型のMOSFET TN21を含み、電圧VCLAMP1からトランジスタTN21の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧回路CV2は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧を供給する。電圧回路CV2は、信号VEN2を受け取り、信号VEN2に基づくタイミングで電圧(VCLAMP1-Vth)をグローバルワード線GWLに供給する。電圧回路CV2は、例えば、トランジスタTN21に加えて、p型のMOSFET TP21を含む。トランジスタTN21及びTP21は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルワード線GWLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN21は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP1を受ける。トランジスタTP21は、ゲートにおいて信号VEN2を受け取る。
【0048】
ドライバ回路DV2は、電圧を供給する回路である。ドライバ回路DV2は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧VUSELを供給する。ドライバ回路DV2は、信号DEN2を受け取り、信号DEN2に基づくタイミングで電圧VUSELをグローバルワード線GWLに供給する。ドライバ回路DV2は、例えば、n型のMOSFET TN3を含む。トランジスタTN3は、電圧VUSELを受けるノードとグローバルワード線GWLとの間に接続されている。トランジスタTN3は、ゲートにおいて、信号DEN2を受け取る。
【0049】
シンク回路SN2は、電圧を供給する回路である。シンク回路SN2は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに接地電圧VSSを供給する。シンク回路SN2は、信号SEN2を受け取り、信号SEN2に基づくタイミングで接地電圧VSSをグローバルワード線GWLに供給する。シンク回路SN2は、例えば、n型のMOSFET TN4を含む。トランジスタTN4は、グローバルワード線GWLと接地電圧VSSを受けるノードとの間に接続されている。トランジスタTN4は、ゲートにおいて、信号SEN2を受け取る。
【0050】
書込み制御回路161は、信号VEN1、VEN2、DEN1、DEN2、WENAP、WENP、SEN1、及びSEN2を出力する。
【0051】
1.2.動作
図7は、第1実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。以下の記述では、或る信号のレベルは、この信号が別のレベルに遷移することが記述される時刻まで、維持されている。
【0052】
データ書込みの対象のメモリセルMCは、選択メモリセルMCsと称される場合がある。選択メモリセルMCsのスイッチング素子SEは、選択スイッチング素子SEsと称される場合がある。選択メモリセルMCと接続されているビット線BL及びワード線WLは、それぞれ選択ビット線BLs及び選択ワード線WLsと称される場合がある。選択ビット線BLsはカラム選択回路15を介してグローバルビット線GBLと接続されている。選択ワード線WLsはロウ選択回路14を介してグローバルワード線GWLと接続されている。
【0053】
図7は、P書込みのケースを示す。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号VEN2はハイレベルに維持され、これにより、電圧回路CV2はディセーブルに維持されている。
【0054】
図7に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の通りである。信号VEN1は、ハイレベルを有し、よって、電圧回路CV1は、ディセーブルとされており、電圧を供給していない。信号WENPは、ハイレベルを有し、よって、電流回路CI1は、ディセーブルとされており、電流を供給していない。信号DEN1及びDEN2は、ハイレベルを有し、よって、ドライバ回路DV1及びDV2はイネーブルとされており、電圧を供給している。信号SEN2は、ローレベルを有し、よって、シンク回路SN2は、ディセーブルにされており、電圧を供給していない。
【0055】
ドライバ回路DV1がイネーブルであるため、ビット線電位VBLは、電位VUSELを有する。ビット線電位VBLは、選択ビット線BLsの電位である。電位VUSELは、電圧VUSELの大きさの電位である。ドライバ回路DV2がイネーブルであるため、ワード線電位VWLは、電位VUSELを有する。ワード線電位VWLは、選択ワード線WLsの電位である。
【0056】
ビット線電位VBL及びワード線電位VWLが電位VUSELを有するため、選択スイッチング素子SEsはオフしており、選択メモリセルMCsを流れるセル電流ICELLはゼロである。
【0057】
時刻t0において、信号DEN1及びDEN2がローレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV1及びDV2は、ディセーブルとされ、電圧の印加を停止する。
【0058】
時刻t0において、信号VEN1がローレベルとされる。これにより、電圧回路CV1は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP1-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電流回路CI1は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電流を供給する。電圧回路CV1による電圧の印加及び電流回路CI1による電流の供給により、時刻t0から、ビット線電位VBLは上昇する。
【0059】
時刻t0において、信号SEN2がハイレベルとされる。これにより、シンク回路SN2は、イネーブルとされ、選択ワード線WLsに接地電圧VSSを印加する。よって、ワード線電位VWLは下降する。
【0060】
時刻t1において、信号VEN1がハイレベルとされる。これにより、電圧回路CV1は、ディセーブルとされ、選択ビット線BLsへの電圧の印加を停止する。
【0061】
ビット線電位VBLは上昇を続け、ワード線電位VWLは下降を続け、時刻t2において、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差はスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。以下、選択ビット線BLsの電位VUSELからの電位の上昇及び(又は)選択ワード線WLsの電位VUSELからの電位の下降が開始する時刻(時刻t0)からビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達するまでの時刻(時刻t2)は、期間Tonと称される場合がある。
【0062】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達することに基づいて、選択スイッチング素子SEsはオンする。よって、時刻t2からセル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t3において、P書込み電流Iwpに達する。P書込み電流Iwpによって、時刻t3から選択メモリセルMCsへのP書込みが開始する。以下、選択ビット線BLsの電位VUSELからの電位の上昇及び(又は)選択ワード線WLsの電位VUSELからの電位の下降が開始する時刻(時刻t0)からセル電流ICELLがP書込み電流Iwp(及びAP書込み電流Iwap)に達するまでの時刻(時刻t3)は、期間Twと称される場合がある。
【0063】
時刻t4において、信号WENPがハイレベルとされる。これにより、電流回路CI1は、電流の供給を停止する。時刻t4において、信号SEN2がローレベルとされる。これにより、シンク回路SN2は電圧の印加を停止する。時刻t4において、信号DEN1及びDEN2がハイレベルとされる。よって、ドライバ回路DV1及びDV2は、電圧の印加を開始する。これにより、ビット線電位VBLは下降して電位VUSELとなり、ワード線電位VWLは上昇して電位VUSELとなる。
【0064】
時刻t4からビット線電位VBLとワード線電位VWLの差が低下する。このため、選択スイッチング素子SEsはオフし、これにより、セル電流ICELLは0になる。
【0065】
ここまで、図7を参照してP書込みの例について記述された。しかしながら、AP書込みについても同様である。AP書込みの動作のP書込みの動作との違いは、以下の通りである。すなわち、AP書込みの間、信号WENPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI1はディセーブルに維持されている。AP書込みの間、信号SEN2はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN2はディセーブルに維持されている。AP書込みの間、信号VEN1はハイレベルに維持され、これにより、電圧回路CV1はディセーブルに維持されている。そして、図7を参照して上でなされている記述のうちの信号SEN2についての記述が信号SEN1に当てはまり、信号WENPについての記述が信号WENAPに当てはまり、信号VEN1についての記述が信号VEN2に当てはまる。これにより、P書込みの間のビット線電位VBLとワード線電位VWLの大小関係は、AP書込みの間のワード線電位VWL及びビット線電位VBLの大小関係と反対の関係と同じとなる。この結果、選択メモリセルMCsにAP書込み電流Iwapが流れる。
【0066】
1.3.利点(効果)
第1実施形態の記憶装置は、以下に記述されるように、短い時間でデータを書き込むことができる。
【0067】
比較のために、図8を参照して、参考用の記憶装置について記述される。参考用の記憶装置における要素のうち、記憶装置1の要素に相当するとともに記憶装置1の要素と異なる要素は、その参照符号の末尾に「R」を付されている。書込み回路16Rは、記憶装置1の書込み回路16の構成要素のうち、電圧回路CV1を含まない。
【0068】
図8に示されるように、信号SEN2は、時刻t0においてハイレベルとされ、これにより、ワード線電位VWLRは時刻t0から下降する。ビット線電位VBLRとワード線電位VWLRの差は、時刻t2Rにおいて、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、時刻t2Rからセル電流ICELLRは上昇し、時刻t3RにおいてP書込み電流Iwpに達する。定電流の供給のみによって選択ビット線BLsが充電されるため、充電の速度は遅い。よって、時刻t2Rは、時刻t0から長い時間の経過後に到来し、ひいては、時刻t3Rも時刻t0から長い時間経過後に到来する。
【0069】
第1実施形態の記憶装置1は、選択ビット線BLsを、電位VUSELから、最初、電圧及び電流の両方によって充電し、その後、電流によって充電する。このため、ビット線電位VBLは、時刻t0から速やかに上昇し、よって、ビット線電位VBLとワード線電位VWLの差は、時刻t2でスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。時刻t2は、時刻t0から時刻t2Rより早く到来し、すなわち、記憶装置1での期間Tonは、参考用の記憶装置での期間Tonより短い。よって、時刻t3は、時刻t0から時刻t3Rより早く到来し、すなわち、記憶装置1での期間Twは、参考用の記憶装置での期間Twより短い。よって、記憶装置1は、時刻t0から短い時間でデータを書き込むことができる。
【0070】
ここまでの記述は、P書込みに関する。しかしながら、AP書込みの場合も、P書込みでのビット線電位VBL及びワード線電位VWLがそれぞれワード線電位VWL及びビット線電位VBLに対応し、セル電流ICELLの方向と大きさは異なるが、基本的な電位変化はP書込みと同じである。よって、AP書込みにおいても、P書込みでの利点と同じ利点が得られる。AP書込みに関する利点は、後述の第2乃至第6実施形態にも当てはまる。
【0071】
2.第2実施形態
第2実施形態は、グローバルビット線GBL及びグローバルワード線GWLに印加される電圧の大きさの点で第1実施形態と異なる。
【0072】
2.1.構成
図9は、第2実施形態の記憶装置1bの書込み回路16bの構成要素及び構成要素の接続を示す。書込み回路16bは、第1実施形態の記憶装置1の書込み回路16の電圧回路CV1及びCV2にそれぞれ代えて、電圧回路CV3及びCV4を含む。
【0073】
電圧回路CV3は、電圧VCLAMP2からトランジスタTN11の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧VCLAMP2は、一定の大きさを有し、電圧VCLAMP1より高い。電圧VCLAMP2は、例えば、電圧生成回路18から供給される。電圧回路CV3は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電圧(VCLAMP2-Vthn)を供給する。電圧回路CV3は、信号VEN1を受け取り、信号VEN1に基づくタイミングで電圧をグローバルビット線GBLに供給する。電圧回路CV3は、電圧回路CV1と同じ構成要素を含み、一方、電圧回路CV3は、電圧回路CV1と異なる電圧を受ける。すなわち、トランジスタTN11は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP2を受ける。
【0074】
電圧回路CV4は、電圧VCLAMP2からトランジスタTN21の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧回路CV4は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧(VCLAMP2-Vthn)を供給する。電圧回路CV4は、信号VEN2を受け取り、信号VEN2に基づくタイミングで電圧をグローバルワード線GWLに供給する。電圧回路CV4は、電圧回路CV2と同じ構成要素を含み、一方、電圧回路CV4は、電圧回路CV2と異なる電圧を受ける。すなわち、トランジスタTN21は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP2を受ける。
【0075】
2.2.動作
図10は、第2実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。図10は、P書込みのケースを示す。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号VEN2はハイレベルに維持され、これにより、電圧回路CV2はディセーブルに維持されている。
【0076】
時刻t0において、信号VEN1がローレベルとされる。これにより、電圧回路CV3は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP2-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電流回路CI1は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電流を供給する。電圧回路CV3による電圧の印加及び電流回路CI1による電流の供給により、ビット線電位VBLは上昇する。選択ビット線BLsは、電圧(VCLAMP2-Vthn)を受けている。電圧VCLAMP2は、電圧VCLAMP1より高い。よって、ビット線電位VBLは、第1実施形態でのケースよりも高い傾きで上昇する。
【0077】
時刻t11において、信号VEN1がハイレベルとされる。これにより、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0078】
時刻t12において、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差はスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。時刻t0からのビット線電位VBLの上昇が速いことに基づいて、期間Ton(時刻t0から時刻t12までの期間)は短い。
【0079】
閾値電圧Vthの到達によって選択スイッチング素子SEsがオンし、時刻t12からセル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t13において、P書込み電流Iwpに達する。期間Tonが短いことに基づいて、期間Tw(時刻t0から時刻t13までの期間)は短い。
【0080】
ここまで、図10を参照してP書込みの例について記述された。AP書込みの場合の制御については、第1実施形態でのAP書込みの場合の制御と同じである。
【0081】
2.3.利点
第2実施形態の記憶装置1bは、第1実施形態と同じく、選択ビット線BLsを、電位VUSELから、最初、電圧及び電流の両方によって充電し、その後、電流によって充電する。よって、第1実施形態と同じ利点を得られる。さらに、第2実施形態では電圧(VCLAMP2-Vthn)によって、選択ビット線BLsが充電される。電圧VCLAMP2は、第1実施形態の電圧VCLAMP1より高い。よって、第2実施形態での期間Ton及びTwは、第1実施形態での期間Ton及びTwより短い。すなわち、記憶装置1bは、第1実施形態での記憶装置1より短い時間でデータを書き込むことができる。
【0082】
第2実施形態は、例えば、書込み回路16bから電流経路上で遠くに位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みに適用されることができる。選択メモリセルMCsが書込み回路16bから遠くに位置すると、書込み回路16bから選択メモリセルMCsまでの選択ビット線BLsを含む電流経路の距離及び(又は)書込み回路16bから選択メモリセルMCsまでの選択ワード線WLsを含む電流経路の距離は長い。よって、選択ビット線BLs及び(又は)選択ワード線WLsの充電に時間を要する。このことに基づいて、第2実施形態が書込み回路16bから遠くに位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みに適用されることにより、書込み回路16bから近くに位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みでの期間Twと同程度の期間Twが実現されることが可能である。
【0083】
3.第3実施形態
第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態に部分的に基づき、選択メモリセルMCsの位置に基づく制御が行われる点で第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
【0084】
3.1.構成
3.1.1.平面レイアウト
図11は、第3実施形態の記憶装置1cの一部の構成要素のxy面に沿うレイアウトを示す。図11に示されるように、導電体21_0~21_Mは、y軸の座標の大きい方向(+y方向)の側に、この順に並ぶ。導電体21_0~21_Mは、それぞれ、ワード線WL_0~WL_Mとして機能する。
【0085】
導電体22_0~22_Nは、x軸の座標の大きい方向(+x方向)の側に、この順に並ぶ。導電体22_0~22_Nは、それぞれ、ビット線BL_0~BL_Nとして機能する。
【0086】
記憶装置1は、導電体26、27、M+1個の導電体31_0~31_M、N+1個の導電体32_0~32_N、及び導電体41並びに42をさらに含む。
【0087】
導電体26は、メモリセルアレイ11から、x軸の座標の小さい方向(-x方向)に離れた位置に位置する。導電体26は、y軸に沿って延びる。導電体26は、グローバルワード線GWLの少なくとも一部として機能する。
【0088】
導電体31_0~31_Mは、導電体26と接続されている。導電体31_0~31_Mは、それぞれ、導電体21_0~21_Mと、電流経路を介して電気的に接続されている。電流経路は、互いに独立しており、図において、導電体21_0~21_Mと、導電体31_0~31_Mとを結ぶ線のシンボルによって表現されている。電流経路は、1又は複数の配線、1又は複数のコンタクトプラグ、及び(或いは)複数のトランジスタの電流経路(トランジスタがオンしている間のチャネル)を含む。電流経路のトランジスタは、ロウ選択回路14中のトランジスタTR_0~TR_Mを含む。電流経路は、導電体21_0~21_Mの-x方向の側の端において、導電体21_0~21_Mと接続されている。
【0089】
導電体27は、メモリセルアレイ11から、y軸の座標の小さい方向(-y方向)に離れた位置に位置する。導電体27は、x軸に沿って延びる。導電体27は、グローバルビット線GBLの少なくとも一部として機能する。
【0090】
導電体32_0~32_Nは、導電体27と接続されている。導電体32_0~32_Nは、それぞれ、導電体22_0~22_Nと、電流経路を介して電気的に接続されている。電流経路は、互いに独立しており、図において、導電体22_0~22_Nと、導電体32_0~32_Nとを結ぶ線のシンボルによって表現されている。電流経路は、1又は複数の配線、1又は複数のコンタクトプラグ、及び(或いは)複数のトランジスタの電流経路(トランジスタがオンしている間のチャネル)を含む。電流経路のトランジスタは、カラム選択回路15中のトランジスタTC_0~TC_Nを含む。電流経路は、導電体22_0~22_Nの-y方向の側の端において、導電体22_0~22_Mと接続されている。
【0091】
書込み回路領域WCAは、書込み回路16が形成される領域である。
【0092】
導電体41は、部分的に書込み回路領域WCA中に位置し、書込み回路領域WCA中で、書込み回路16中の構成要素と電気的に接続されている。導電体41は、グローバルワード線GWLの一部として機能する。導電体41は、導電体26と電流経路によって接続されている。電流経路は、1又は複数の配線、1又は複数のコンタクトプラグ、及び(或いは)複数のトランジスタの電流経路(トランジスタがオンしている間のチャネル)を含む。
【0093】
導電体42は、部分的に書込み回路領域WCAに位置し、書込み回路領域WCA中で、書込み回路16中の構成要素と電気的に接続されている。導電体42は、グローバルビット線GBLの一部として機能する。導電体42は、導電体27と電流経路によって接続されている。電流経路は、1又は複数の配線、1又は複数のコンタクトプラグ、及び(或いは)複数のトランジスタの電流経路(トランジスタがオンしている間のチャネル)を含む。
【0094】
3.1.2.メモリセルのグループ分け
図12は、第3実施形態の記憶装置1cによる動作において使用されるメモリセルMCのグループ分けの例を示す。
【0095】
ワード線WL_0~WL_Mは、複数のワード線群WLGのいずれかに属する。各ワード線群WLGは、1以上のワード線WLを含む。各ワード線群WLGは、同じ数のワード線WLを含んでいてもよいし、相違する数のワード線WLを含んでいてもよい。図12は、例として、8つのワード線群WLG1~WLG8を示す。図11を参照して上記されているように、同一のビット線BL(ビット線BL_0~BL_Nとしてそれぞれ機能する導電体22_0~22_Nの各々)上においてワード線WL_0~WL_Mとしてそれぞれ機能する導電体21_0~21_Mに接続するメモリセルMCがこの順で、導電体27(グローバルビット線GBL)上の電気的な接続点(導電体32_0~32_N)から、ひいては、カラム選択回路15(すなわち、トランジスタTC_0~TC_N)からより遠くに位置する。このことに基づいて、ワード線WL_0~WL_Mに接続するメモリセルMCは、この順で、ビット線BL(導電体22)上の“Near”側からより“Far”側に位置すると扱われる。整数p(pは1以上7以下の整数)がより小さいワード線群WLGpは、より“Near”側に位置するメモリセルMCが接続するワード線WLで構成され、整数pが大きいワード線群WLGpは、より“Far”側に位置するメモリセルMCが接続するワード線WLで構成される。
【0096】
ビット線BL_0~BL_Nは、複数のビット線群BLGのいずれかに属する。各ビット線群BLGは、1以上のビット線BLを含む。各ビット線群BLGは、同じ数のビット線BLを含んでいてもよいし、相違する数のビット線BLを含んでいてもよい。図12は、例として、8つのビット線群BLG1~BLG8を示す。図11を参照して上記されているように、同一のワード線WL(ワード線WL_0~WL_Mとしてそれぞれ機能する導電体31_0~31_Mの各々)上においてビット線BL_0~BL_Nとしてそれぞれ機能する導電体22_0~22_Nに接続するメモリセルMCがこの順で、導電体26(グローバルワード線GWL)上の電気的な接続点(導電体31_0~31_M)から、ひいては、ロウ選択回路14(すなわち、トランジスタTR_0~TR_M)からより遠くに位置する。このことに基づいて、ビット線BL_0~BL_Nに接続するメモリセルMCは、この順で、ワード線WL(導電体21)上の“Near”側からより“Far”側に位置すると扱われる。整数q(qは1以上7以下の整数)がより小さいビット線群BLGqは、より“Near”側に位置するメモリセルMCが接続するビット線BLで構成され、整数pが大きいビット線群BLGqは、より“Far”側に位置するメモリセルMCが接続するビット線BLで構成される。
【0097】
或るメモリセルMCと接続されているワード線WL及びビット線BLがそれぞれワード線群WLGt及びビット線群BLGuに含まれる場合、このメモリセルMCに(t+u)の数値が割り当てられる。数値は、ロウ選択回路14中のトランジスタTRからメモリセルMCまでのワード線WLを含む電流経路の距離(u)と、カラム選択回路15中のトランジスタTCからメモリセルMCまでのビット線BLを含む電流経路の距離(t)との合計を表す。このような数値の割り当てが、tが1から8の整数の各々のケースについて、また、uが1から8の整数の各々のケースについて、行われている。図12は、このように割り当てられた数値を示す。以下、数値は、ロウ/カラム選択回路からの合計距離と称される場合がある。
【0098】
各メモリセルMCは、合計距離に基づいて、2以上のグループに分類される。例として、図12は、3つのグループへの分類を示し、以下の記述は、この例に基づく。例えば、6以下の合計距離に位置するメモリセルMCは、“Near”グループに分類される。7以上11以下の合計距離に位置するメモリセルMCは、“Middle”グループに分類される。12以上の合計距離に位置するメモリセルMCは、“Far”グループに分類される。2つ又は4つ以上のグループが定義されてもよい。
【0099】
なお、グローバルワード線GWL(導電体26)上にも書込み回路領域WCAから各ワード線WL(導電体21)との電気的な接続点(導電体31_0~31_M)までの電流経路の差が生じるが、一般的にグローバルワード線GWLはワード線WL(WL0~WL_M)よりも寄生抵抗及び寄生容量が小さいためにここでは考慮していない。同様に、グローバルビット線GBL(導電体27)上にも書込み回路領域WCAから各ビット線BL(導電体22)との電気的な接続点(導電体32_0~32_N)までの電流経路の差が生じるが、一般的にグローバルビット線GBLはビット線BL(BL0~BL_M)よりも寄生抵抗及び寄生容量が小さいためにここでは考慮していない。
【0100】
3.1.3.書込み回路
図13は、第3実施形態の記憶装置1cの書込み回路16cの構成要素及び構成要素の接続を示す。図13に示されるように、書込み回路16cは、第1実施形態の書込み回路16の電圧回路CV1及びCV2に代えて、電圧回路CV11、CV12、CV13、CV21、CV22、及びCV23を含む。
【0101】
電圧回路CV11は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV11は、トランジスタTN11を含み、電圧VCLAMP11からトランジスタTN11の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧VCLAMP11は、一定の大きさを有し、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthより低くてもよいし、閾値電圧Vthと同じであってもよいし、閾値電圧Vthより高くてもよい。電圧VCLAMP11は、例えば、電圧生成回路18から供給される。電圧回路CV11は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電圧を供給する。電圧回路CV11は、信号VEN11を受け取り、信号VEN11に基づくタイミングで電圧をグローバルビット線GBLに供給する。電圧回路CV11は、電圧回路CV1と同じ構成要素を含み、一方、電圧回路CV11は、電圧回路CV1と異なる電圧を受ける。すなわち、トランジスタTN11は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP11を受ける。トランジスタTP11は、ゲートにおいて信号VEN11を受け取る。
【0102】
電圧回路CV12は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV12は、n型のMOSFET TN12を含み、電圧VCLAMP12からトランジスタTN12の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧VCLAMP12は、一定の大きさを有し、電圧VCLAMP11より高い。電圧VCLAMP12は、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthより低くてもよいし、閾値電圧Vthと同じであってもよいし、閾値電圧Vthより高くてもよい。電圧VCLAMP12は、例えば、電圧生成回路18から供給される。電圧回路CV12は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電圧を供給する。電圧回路CV12は、信号VEN12を受け取り、信号VEN12に基づくタイミングで電圧をグローバルビット線GBLに供給する。電圧回路CV12は、例えば、トランジスタTN12に加えて、p型のMOSFET TP12を含む。トランジスタTN12及びトランジスタTP12は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルビット線GBLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN12は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP12を受ける。トランジスタTP12は、ゲートにおいて信号VEN12を受け取る。
【0103】
電圧回路CV13は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV13は、n型のMOSFET TN13を含み、電圧VCLAMP13からトランジスタTN13の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧VCLAMP13は、一定の大きさを有し、電圧VCLAMP12より高い。電圧VCLAMP13は、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthより低くてもよいし、閾値電圧Vthと同じであってもよいし、閾値電圧Vthより高くてもよい。電圧VCLAMP13は、例えば、電圧生成回路18から供給される。電圧回路CV13は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電圧を供給する。電圧回路CV13は、信号VEN13を受け取り、信号VEN13に基づくタイミングで電圧をグローバルビット線GBLに供給する。電圧回路CV13は、例えば、トランジスタTN13に加えて、p型のMOSFET TP13を含む。トランジスタTN13及びトランジスタTP13は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルビット線GBLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN13は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP13を受ける。トランジスタTP13は、ゲートにおいて信号VEN13を受け取る。
【0104】
電圧回路CV21は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV21は、n型のMOSFET TN21を含み、電圧VCLAMP11からトランジスタTN21の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧回路CV21は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧を供給する。電圧回路CV21は、信号VEN21を受け取り、信号VEN21に基づくタイミングで電圧をグローバルワード線GWLに供給する。電圧回路CV21は、例えば、トランジスタTN21に加えて、p型のMOSFET TP21を含む。トランジスタTN21及びトランジスタTP21は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルワード線GWLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN21は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP11を受ける。トランジスタTP21は、ゲートにおいて信号VEN21を受け取る。
【0105】
電圧回路CV22は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV22は、n型のMOSFET TN22を含み、電圧VCLAMP12からトランジスタTN22の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧回路CV22は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧を供給する。電圧回路CV22は、信号VEN22を受け取り、信号VEN22に基づくタイミングで電圧をグローバルワード線GWLに供給する。電圧回路CV22は、例えば、トランジスタTN22に加えて、p型のMOSFET TP22を含む。トランジスタTN22及びトランジスタTP22は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルワード線GWLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN22は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP12を受ける。トランジスタTP22は、ゲートにおいて信号VEN22を受け取る。
【0106】
電圧回路CV23は、電圧を供給する回路である。電圧回路CV23は、n型のMOSFET TN23を含み、電圧VCLAMP13からトランジスタTN23の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧回路CV23は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧を供給する。電圧回路CV23は、信号VEN23を受け取り、信号VEN23に基づくタイミングで電圧をグローバルワード線GWLに供給する。電圧回路CV23は、例えば、トランジスタTN23に加えて、p型のMOSFET TP23を含む。トランジスタTN23及びトランジスタTP23は、この順で、電源電圧VHHを受けるノードとグローバルワード線GWLとの間に直列に接続されている。トランジスタTN23は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP13を受ける。トランジスタTP23は、ゲートにおいて信号VEN23を受け取る。
【0107】
書込み制御回路161cは、信号VEN11、VEN12、VEN13、VEN21、VEN22、VEN23、DEN1、DEN2、WENAP、WENP、SEN1、及びSEN2を出力する。
【0108】
3.2.動作
図14は、第3実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位を時間に沿って示す。図14は、P書込みのケースを示す。図14は、“Near”ケース、“Middle”ケース、及び“Far”ケースを示す。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号VEN21、VEN22、及びVEN23はハイレベルに維持され、これにより、電圧回路CV21、CV22、及びCV23はディセーブルに維持されている。
【0109】
信号DEN1、DEN2、及びSEN2については、第1実施形態(図7)と同じである。
【0110】
まず、“Near”ケースについて記述される。
【0111】
図14に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の通りである。信号VEN11、VEN12、及びVEN13は、ハイレベルを有し、よって、電圧回路CV11、CV12、及びCV13は、電圧を供給していない。信号WENPは、ハイレベルを有し、よって、電流回路CI1は、電流を供給していない。
【0112】
図14に示される期間に亘って、信号VEN12及びVEN13は、ハイレベルに維持されている。
【0113】
時刻t0において、信号VEN11がローレベルとされる。これにより、電圧回路CV11は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP11-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電流回路CI1は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電流を供給する。
【0114】
時刻t11において、信号VEN11がハイレベルとされる。これにより、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0115】
次に、“Middle”ケースについて記述される。
【0116】
図14に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の通りである。信号VEN11、VEN12、及びVEN13は、ハイレベルを有し、よって、電圧回路CV11、CV12、及びCV13は、電圧を供給していない。信号WENPは、ハイレベルを有し、よって、電流回路CI1は、電流を供給していない。
【0117】
図14に示される期間に亘って、信号VEN11及びVEN13は、ハイレベルに維持されている。
【0118】
時刻t0において、信号VEN12がローレベルとされ、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電圧回路CV12及び電流回路CI1は、イネーブルとされる。
【0119】
時刻t11において、信号VEN12がハイレベルとされる。これにより、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0120】
次に、“Far”ケースについて記述される。
【0121】
図14に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の通りである。信号VEN11、VEN12、及びVEN13は、ハイレベルを有し、よって、電圧回路CV11、CV12、及びCV13は、電圧を供給していない。信号WENPは、ハイレベルを有し、よって、電流回路CI1は、電流を供給していない。
【0122】
図14に示される期間に亘って、信号VEN11及びVEN12は、ハイレベルに維持されている。
【0123】
時刻t0において、信号VEN13がローレベルとされ、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電圧回路CV13及び電流回路CI1は、イネーブルとされる。
【0124】
時刻t11において、信号VEN13がハイレベルとされる。これにより、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0125】
図15は、第3実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。図15は、P書込みのケースを示し、“Near”ケース、“Middle”ケース、及び“Far”ケースを示す。
【0126】
まず、“Near”ケースについて記述される。
【0127】
図15に示されるように、時刻t0において、信号VEN11がローレベルとされることに基づいて、電圧回路CV11は選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP11-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。電圧回路CV11による電圧の印加及び電流回路CI1による電流の供給により、ビット線電位VBLは上昇する。
【0128】
時刻t0において、信号SEN2がハイレベルとされることに基づいて、ワード線電位VWLは下降する。
【0129】
時刻t23において、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差はスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンし、セル電流ICELLは、上昇する。
【0130】
時刻t11において、信号VEN11がハイレベルとされることに基づいて、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0131】
セル電流ICELLは、時刻t23から上昇し続け、時刻t27において、P書込み電流Iwpに達する。
【0132】
時刻t4において、信号WENP及びSEN2がローレベルとされるとともに信号DEN1及びDEN2がハイレベルとされることに基づいて、ビット線電位VBL及びワード線電位VWLは、電位VUSELとなる。これにより、セル電流ICELLは0になる。
【0133】
次に、“Middle”ケースについて記述される。
【0134】
時刻t0において、信号VEN12がローレベルとされることに基づいて、電圧回路CV12は選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP12-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。電圧回路CV12による電圧の印加及び電流回路CI1による電流の供給により、ビット線電位VBLは上昇する。“Middle”グループの選択メモリセルMCsのロウ/カラム選択回路からの合計距離は、“Near”グループの選択メモリセルMCsのロウ/カラム選択回路からの合計距離より大きい。このため、ロウ/カラム選択回路から“Middle”グループの選択メモリセルMCsまでの電流経路(選択ビット線BLs、及び選択ワード線WLs等)の寄生抵抗及び寄生容量は、ロウ/カラム選択回路から“Near”グループの選択メモリセルMCsまでの電流経路の寄生抵抗及び寄生容量より大きい。しかしながら、電圧VCLAMP12は、電圧VCLAMP11より高く、電圧VCLAMP12が電圧VCLAMP11より十分に高い場合、ビット線電位VBLは、“Near”ケースでの傾きより大きい傾きで上昇する。図15は、そのような例を示す。
【0135】
時刻t0において、信号SEN2がハイレベルとされることに基づいて、ワード線電位VWLは下降する。
【0136】
時刻t22において、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差はスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。時刻t22は、例えば、時刻t23より先に到来する。このケースは、例えば、電圧VCLAMP12と電圧VCLAMP11との差が大きい場合に起こり得る。図15は、そのようなケースを示す。
【0137】
閾値電圧Vthの到達によって選択スイッチング素子SEsがオンし、時刻t22からセル電流ICELLが上昇する。
【0138】
時刻t11において、信号VEN12がハイレベルとされることに基づいて、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0139】
セル電流ICELLは、時刻t22から上昇し続け、時刻t26において、P書込み電流Iwpに達する。
【0140】
次に、“Far”ケースについて記述される。
【0141】
時刻t0において、信号VEN13がローレベルとされることに基づいて、電圧回路CV13は選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP13-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。電圧回路CV13による電圧の印加及び電流回路CI1による電流の供給により、ビット線電位VBLは上昇する。“Far”グループの選択メモリセルMCsのロウ/カラム選択回路からの合計距離は、“Middle”グループの選択メモリセルMCsのロウ/カラム選択回路からの合計距離より大きい。このため、ロウ/カラム選択回路から“Far”グループの選択メモリセルMCsまでの電流経路の寄生抵抗及び寄生容量は、ロウ/カラム選択回路から“Middle”グループの選択メモリセルMCsまでの電流経路の寄生抵抗及び寄生容量より大きい。しかしながら、電圧VCLAMP13は、電圧VCLAMP12より高く、電圧VCLAMP13が電圧VCLAMP12より十分に高い場合、ビット線電位VBLは、“Middle”ケースでの傾きより大きい傾きで上昇する。図15は、そのような例を示す。
【0142】
時刻t0において、信号SEN2がハイレベルとされることに基づいて、ワード線電位VWLは下降する。
【0143】
時刻t21において、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差はスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。時刻t21は、例えば、時刻t22より先に到来する。このケースは、例えば、電圧VCLAMP13と電圧VCLAMP12との差が大きい場合に起こり得る。図15は、そのようなケースを示す。
【0144】
閾値電圧Vthの到達によって選択スイッチング素子SEsがオンし、時刻t21からセル電流ICELLが上昇する。
【0145】
時刻t11において、信号VEN13がハイレベルとされることに基づいて、選択ビット線BLsへの電圧の印加は停止する。
【0146】
セル電流ICELLは、時刻t21から上昇し続け、時刻t25において、P書込み電流Iwpに達する。
【0147】
ここまで、図14及び図15を参照してP書込みの例について記述された。AP書込みの場合、信号WENPがハイレベルに維持され、信号SEN2がローレベルに維持される。そして、信号VEN11、信号VEN12、及び信号VEN13が、ハイレベルに維持されるとともに、信号SEN2についての記述が信号SEN1に当てはまり、信号WENPについての記述が信号WENAPに当てはまる。さらに、信号VEN11、信号VEN12、及び信号VEN13についての記述が、それぞれ、信号VEN21、信号VEN22、及び信号VEN23に当てはまる。
【0148】
3.3.利点
第3実施形態の記憶装置1cは、第1実施形態と同じく、選択ビット線BLsを、電位VUSELから、最初、電圧及び電流の両方によって充電し、その後、電流によって充電する。よって、第1実施形態と同じ利点を得られる。
【0149】
また、第3実施形態の記憶装置1cは、選択ビット線BLsを、選択メモリセルMCsのロウ/カラム選択回路からの合計距離に基づく大きさの電圧VCLAMP11、VCLAMP12、又はVCLAMP13で充電する。記憶装置1cは、選択メモリセルMCsがより大きい合計距離に位置する場合、より大きい電圧VCLAMPで選択ビット線BLsを充電する。このため、より大きい合計距離に位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みであっても、ビット線電位VBLは素早く上昇する。よって、ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsまでの合計距離が大きい選択メモリセルMCsへのデータ書込みも短時間で完了することができる。
【0150】
一方、記憶装置1cは、選択メモリセルMCsがより小さい合計距離に位置する場合、より小さい電圧VCLAMPで選択ビット線BLsを充電する。このため、より小さい合計距離に位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みであるにもかかわらず、選択メモリセルMCsに大きな電圧が印加されることが抑制される。このことは、選択メモリセルMCsへの過剰な電圧の印加によって選択メモリセルMCsが破壊されることを抑制する。
【0151】
4.第4実施形態
第4実施形態は、メモリセルMCへの電圧の印加の期間に関する。
【0152】
4.1.構成
図16は、第4実施形態の記憶装置1dの書込み回路16dの構成要素及び構成要素の接続を示す。図16に示されるように、書込み回路16dは、第1実施形態の書込み回路16の電圧回路CV1及びCV2に代えて、電圧回路CV31及びCV32を含む。
【0153】
電圧回路CV31は、n型のMOSFET TN11を含み、電圧VCLAMP31からトランジスタTN11の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧VCLAMP31は、一定の大きさを有し、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthより低くてもよいし、閾値電圧Vthと同じであってもよいし、閾値電圧Vthより高くてもよい。電圧VCLAMP31は、例えば、電圧生成回路18から供給される。電圧回路CV31は、グローバルビット線GBLと接続されており、グローバルビット線GBLに電圧を供給する。電圧回路CV31は、信号VEN31を受け取り、信号VEN31に基づくタイミングで電圧をグローバルビット線GBLに供給する。電圧回路CV31は、電圧回路CV1と同じ構成要素を含み、一方、電圧回路CV31は、電圧回路CV1と異なる電圧を受ける。すなわち、トランジスタTN11は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP31を受ける。トランジスタTP11は、ゲートにおいて信号VEN31を受け取る。
【0154】
電圧回路CV32は、n型のMOSFET TN21を含み、電圧VCLAMP31からトランジスタTN21の閾値電圧Vthn分だけ低い電圧を供給する。電圧回路CV32は、グローバルワード線GWLと接続されており、グローバルワード線GWLに電圧を供給する。電圧回路CV32は、信号VEN32を受け取り、信号VEN32に基づくタイミングで電圧をグローバルワード線GWLに供給する。電圧回路CV32は、電圧回路CV2と同じ構成要素を含み、一方、電圧回路CV32は、電圧回路CV2と異なる電圧を受ける。すなわち、トランジスタTN21は、ゲートにおいて、電圧VCLAMP31を受ける。トランジスタTP21は、ゲートにおいて信号VEN32を受け取る。
【0155】
書込み制御回路161dは、信号VEN31、VEN32、DEN1、DEN2、WENAP、WENP、SEN1、及びSEN2を出力する。
【0156】
4.2.動作
図17は、第4実施形態の記憶装置の幾つかの信号の電位を時間に沿って示す。図17は、P書込みのケースを示す。図17は、“Near”ケース、“Middle”ケース、及び“Far”ケースを示す。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号VEN32はハイレベルに維持され、これにより、電圧回路CV32はディセーブルに維持されている。
【0157】
信号DEN1、DEN2、及びSEN2については、第1実施形態(図7)と同じである。信号DEN1、DEN2、及びSEN2の変化は、“Near”ケース、“Middle”ケース、“Far”ケースにおいて共通である。
【0158】
図17に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の大きさを有する。信号VEN31は、“Near”ケース、“Middle”ケース、“Far”ケースのいずれにおいても、ハイレベルを有する。よって、電圧回路CV31は、ディセーブルとされている。信号WENPは、“Near”ケース、“Middle”ケース、“Far”ケースのいずれにおいても、ハイレベルを有する。よって、電流回路CI1は、ディセーブルとされている。信号DEN1及びDEN2がハイレベルを有することに基づいて、ドライバ回路DV1及びDV2は、イネーブルとされている。信号SEN2がローレベルを有することに基づいて、シンク回路SN2は、ディセーブルとされている。ドライバ回路DV1がイネーブルであることに基づいて、ビット線電位VBLは、電位VUSELを有する。ドライバ回路DV2がイネーブルであることに基づいて、ワード線電位VWLは、電位VUSELを有する。ビット線電位VBL及びワード線電位VWLが電位VUSELであることに基づいて、選択スイッチング素子SEsはオフしており、選択メモリセルMCsを流れるセル電流ICELLはゼロである。
【0159】
まず、“Near”ケースについて記述される。
【0160】
時刻t0において、信号VEN31がローレベルとされることに基づいて、電圧回路CV31は選択ビット線BLsに電圧(VCLAMP31-Vthn)を印加する。また、時刻t0において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。電圧回路CV31による電圧の印加及び電流回路CI1による電流の供給により、ビット線電位VBLは上昇する。
【0161】
時刻t31において、信号VEN31がハイレベルとされる。これにより、電圧回路CV31は、ディセーブルとされる。時刻t31は、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達し、P書込み電流Iwpを流す電圧を超過する前、すなわち、後述の時刻t37よりも前に到来する。すなわち、電圧回路CV31のディセーブル化は、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差が選択スイッチング素子SEsの閾値電圧Vthに到達し、P書込み電流Iwpを流す電圧を超過する前に行われる。時刻t31は、例えば、“Near”グループに属するメモリセルMCのうちで、ロウ/カラム選択回路から最小の合計距離に位置するメモリセルMCへのデータ書込みの間にビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達するタイミングの前に設定される。
【0162】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t32においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンし、時刻t32から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t37において、P書込み電流Iwpに達する
時刻t4において、信号WENP及びSEN2がローレベルとされるとともに信号DEN1及びDEN2がハイレベルとされることに基づいて、ビット線電位VBL及びワード線電位VWLは、電位VUSELとなる。これにより、セル電流ICELLは0になる。
【0163】
次に、“Middle”ケースについて記述される。
【0164】
時刻t33において、信号VEN31がハイレベルとされる。これにより、電圧回路CV31は、ディセーブルとされる。時刻t33は、時刻t31より後に到来する。このため、“Middle”グループの選択メモリセルMCsは、“Near”グループの選択メモリセルMCsが電圧回路CV31の電圧を受ける時間よりも長い時間に亘って、電圧回路CV31の電圧を受ける。例えば、時刻t33は、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達しP書込み電流Iwpを流す電圧を超過する前、すなわち、後述の時刻t38よりも前に到来する。時刻t33は、例えば、“Middle”グループに属するメモリセルMCのうちで、ロウ/カラム選択回路から最小の合計距離に位置するメモリセルMCへのデータ書込みの間にビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達するタイミングと同程度又はその直前に設定される。
【0165】
時刻t33は、時刻t31の後に到来する。すなわち、“Middle”ケースでは、電圧回路CV31のディセーブル化は、“Near”ケースで行われる時刻より後で行われる。すなわち、“Middle”ケースでは、電圧回路CV31は、“Near”ケースでの電圧回路CV31による電圧の印加の期間よりも長い期間に亘って電圧を印加、すなわち選択ビット線BLsを充電する。
【0166】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t34においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンし、時刻t34から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t38において、P書込み電流Iwpに達する。
【0167】
次に、“Far”ケースについて記述される。
【0168】
時刻t35において、信号VEN31がハイレベルとされる。これにより、電圧回路CV31は、ディセーブルとされる。時刻t35は、時刻t33より後に到来する。このため、“Far”グループの選択メモリセルMCsは、“Middle”グループの選択メモリセルMCsが電圧回路CV31の電圧を受ける時間よりも長い時間に亘って、電圧回路CV31の電圧を受ける。例えば、時刻t35は、ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEのスイッチング素子の閾値電圧Vthに達し、P書込み電流Iwpを流す電圧を超過する前、すなわち、後述の時刻t39より前に到来する。時刻t35は、例えば、“Far”グループに属するメモリセルMCのうちで、ロウ/カラム選択回路から最小の合計距離に位置するメモリセルMCへのデータ書込みの間にビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達するタイミングの後に設定される。
【0169】
時刻t35は、時刻t33の後に到来する。すなわち、“Far”ケースでは、電圧回路CV31のディセーブル化は、“Middle”ケースで行われる時刻より後で行われる。“Far”ケースでは、電圧回路CV31は、“Middle”ケースでの電圧回路CV31による電圧の印加の期間よりも長い期間に亘って電圧を印加、すなわち選択ビット線BLsを充電する。
【0170】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t36においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンし、時刻t36から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t39において、P書込み電流Iwpに達する。
【0171】
ここまで、図17を参照してP書込みの例について記述された。AP書込みの場合、信号WENPがハイレベルに維持され、信号SEN2がローレベルに維持される。そして、信号VEN31がハイレベルに維持されるとともに、信号SEN2についての記述が信号SEN1に当てはまり、信号WENPについての記述が信号WENAPに当てはまる。さらに、信号VEN31についての記述が、信号VEN32に当てはまる。
【0172】
4.3.利点
第4実施形態の記憶装置1dは、第1実施形態と同じく、選択ビット線BLsを、最初、電圧及び電流の両方によって充電し、その後、電流によって充電する。よって、第1実施形態と同じ利点を得られる。
【0173】
また、第4実施形態の記憶装置1dは、選択ビット線BLsを、電位VUSELから、ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsまでの合計距離に基づく期間に亘って充電する。記憶装置1dは、選択メモリセルMCsがより大きい合計距離に位置する場合、より長い期間に亘って選択ビット線BLsを充電する。このため、より大きい合計距離に位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みであっても、ビット線電位VBLは素早く上昇する。よって、書込み回路16dから選択メモリセルMCsまでの合計距離が大きい選択メモリセルMCsへのデータ書込みも短時間で完了することができる。
【0174】
一方、書込み回路16dは、選択メモリセルMCsがより小さい合計距離に位置する場合、より短い期間に亘って選択ビット線BLsを充電する。このため、より小さい合計距離に位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みであるにもかかわらず、選択メモリセルMCsに大きな電圧が印加されることが抑制される。このことは、選択メモリセルMCsへの過剰な電圧の印加によって、選択メモリセルMCsが破壊されることを抑制できる。
【0175】
5.第5実施形態
第5実施形態は、データ書込みの間の電圧の供給の点で第1実施形態と異なる。
【0176】
5.1.構成
図18は、第5実施形態の記憶装置1eの書込み回路16eの構成要素及び構成要素の接続を示す。図18に示されるように、記憶装置1eは、第1実施形態(図6を参照)の書込み回路16に含まれる構成要素のうち、電圧回路CV1及びCV2以外の構成要素を含む。書込み制御回路161eは、第1実施形態の書込み制御回路161と異なる動作を行い、後述される動作を行う。
【0177】
5.2.動作
図19は、第5実施形態の記憶装置1eの幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。図19は、P書込みのケースを示す。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。
【0178】
図19に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の通りである。信号WENPは、ハイレベルを有し、よって、電流回路CI1は、電流を供給していない。信号DEN1及びDEN2は、ハイレベルを有し、よって、ドライバ回路DV1及びDV2は、電圧を供給している。信号SEN2は、ローレベルを有し、よって、シンク回路SN2は、電圧を供給していない。
【0179】
時刻t40において、信号DEN1及びDEN2がローレベルとされる。これにより、選択ビット線BLs及び選択ワード線WLsへのドライバ回路DV1及びDV2による電圧の印加は停止する。時刻t40において、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電流回路CI1はイネーブルとされ、ビット線電位VBLは上昇する。一方、時刻t40において、信号SEN2はローレベルを維持している。よって、シンク回路SN2はディセーブルとされている。このため、ワード線電位VWLは、電位VUSELである。
【0180】
時刻t41において、信号SEN2がハイレベルとされる。これにより、シンク回路SN2はイネーブルとされ、選択ワード線WLsの電位は下降する。
【0181】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t42においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンする。このとき、ビット線電位VBLは、或る大きさの電位Vonを有する。
【0182】
選択スイッチング素子SEsのオンにより、時刻t42から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t43において、P書込み電流Iwpに達する
時刻t44において、信号SEN2がローレベルとされるとともに信号WENP、DEN1、及びDEN2がハイレベルとされる。これにより、ビット線電位VBL及びワード線電位VWLは、電位VUSELとなる。このため、セル電流ICELLは0になる。
【0183】
ここまで、図19を参照してP書込みの例について記述された。AP書込みの場合、信号WENPがハイレベルに維持され、信号SEN2がローレベルに維持される。そして、信号SEN2についての記述が信号SEN1に当てはまり、信号WENPについての記述が信号WENAPに当てはまる。
【0184】
5.3.利点
第5実施形態の記憶装置1eは、以下に記述されるように、短い時間でデータを書き込める。
【0185】
図20を参照して、参考用の記憶装置について記述される。参考用の記憶装置における要素のうち、記憶装置1eの要素に相当するとともに記憶装置1eの要素と異なる要素は、その参照符号の末尾に「R」を付されている。図20は、書込み回路から比較的遠い位置の(例えば、“Middle”グループに属する)選択メモリセルについて示す。
【0186】
時刻t40において、信号DEN2Rがローレベルとされるとともに、信号SEN2Rがハイレベルとされる。これにより、時刻t40から、ワード線電位VWLRは低下する。ビット線電位VBLRとワード線電位VWLRとの差は、時刻t42Rにおいて、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。このとき、ビット線電位VBLRは、或る大きさの電位VonRを有する。時刻t42Rは、第5実施形態においてビット線電位VBLRとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する時刻t42より先に到来する。
【0187】
時刻t42Rにおいて選択メモリセルMCsRのスイッチング素子SEがオンすることに基づいて、時刻t42Rから、セル電流ICELLRが上昇する。しかしながら、時刻t42Rにおいて、選択メモリセルMCsRに電流を供給する能力の大きな要因である高い方の電位、すなわち、ビット線電位VBLRは電位VonRであり、電位VonRは低い。このため、セル電流ICELLRの大きさは、最初、急上昇するものの、急上昇の期間は短く、さらに、急上昇後は緩やかにしか上昇しない。そして、セル電流ICELLRは、時刻t43Rにおいて、P書込み電流Iwpに達する。時刻t40から時刻t43Rまでの期間Tonは長い。選択メモリセルが書込み回路からより遠いと、期間Tonはより長い。
【0188】
図20に示される動作であっても、選択メモリセルが書込み回路に近ければ、時刻t43Rはより早く到来する。しかしながら、一般に、記憶装置では、選択メモリセルの位置によらずにP書込み電流Iwpが供給されることを保証するために、最も遅くP書込み電流Iwpに達するメモリセルに合わせて設計される。具体的には、動作のタイミング(例えば、セル電流ICELLがP書込み電流Iwpに達してからセル電流ICELLが0にされるまで(時刻t44)の期間)が設定される。このため、期間Tonは短いことが望まれる。
【0189】
第5実施形態の記憶装置1eは、データ書込みの間、ビット線電位VBLを電位VUSELから上昇させ始めた後に、ワード線電位VWLを電位VUSELから下降させ始める。このため、ビット線電位VBLとワード線電位VWLがスイッチング素子SWの閾値電圧Vthに達する時刻t42での選択ビット線BLsの電位Vonは、参考用の記憶装置でビット線電位VBLRとワード線電位VWLRが閾値電圧Vthに達する時刻t42Rでの選択ビット線BLsRの電位VonRより高い。このため、図19に示されるように、セル電流ICELLは素早くP書込み電流Iwpに達する。記憶装置1eでの期間Ton(時刻t40から時刻t42)は、参考用の記憶装置での期間Ton(時刻t40から時刻t42R)より長い。しかしながら、記憶装置1eでの時刻t40からセル電流ICELLがP書込み電流Iwpに達する時刻t43までの期間Twは、参考用の記憶装置での期間Tw(時刻t40から時刻t43R)より短い。よって、記憶装置1eは、短い期間でデータ書込みを完了することができる。
【0190】
6.第6実施形態
第6実施形態は、第5実施形態に基づき、選択メモリセルMCsが属するグループに基づく制御が行われる。
【0191】
6.1.構成
第6実施形態の記憶装置1fの書込み回路16fの構成要素及び構成要素の接続は、第5実施形態(図18)と同じである。ただし、第6実施形態の書込み制御回路161fは、第5実施形態の書込み制御回路161eの動作と異なる動作を行う。
【0192】
6.2.動作
図21は、第6実施形態の記憶装置1fの幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。図21は、P書込みのケースを示す。図21は、“Near”ケース、“Middle”ケース、“Far”ケースを示す。信号DEN1については、第5実施形態(図19)と同じである。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。
【0193】
図21に示される期間の開始の時点で各信号及び配線の電位並びに電流は、以下の通りである。信号WENPは、ハイレベルを有し、よって、電流回路CI1は、電流を供給していない。信号DEN1及びDEN2は、ハイレベルを有し、よって、ドライバ回路DV1及びDV2は、電圧を供給している。信号SEN2は、“Near”ケース、“Middle”ケース、“Far”ケースのいずれにおいてもローレベルを有し、よって、シンク回路SN2は、電圧を供給していない。
【0194】
まず、“Near”ケースについて記述される。
【0195】
時刻t40において、信号WENPがローレベルとされる。これにより、電流回路CI1は、イネーブルとされ、選択ビット線BLsに電流を供給する。時刻t40において、信号DEN2がローレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV2は、ディセーブルとされる。また、時刻t40において、信号SEN2がハイレベルとされる。これにより、シンク回路SN2はイネーブルとされる。
【0196】
時刻t44において、信号WENPがハイレベルとされる。これにより、電流回路CI1は、ディセーブルとされる。時刻t44において、信号SEN2がローレベルとされる。これにより、シンク回路SN2は、ディセーブルとされる。時刻t44において、信号DEN1及びDEN2がハイレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV1及びDV2は、イネーブルとされる。
【0197】
次に、“Middle”ケースについて記述される。
【0198】
時刻t40において、信号DEN2はハイレベルを維持する。よって、ドライバ回路DV2は電圧を供給している。時刻t40において、信号SEN2は、ローレベルを維持する。よって、シンク回路SN2は、電圧を供給していない。
【0199】
時刻t51において、信号DEN2がローレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV2はディセーブルとされる。時刻t51において、信号SEN2がハイレベルとされる。これにより、シンク回路SN2はイネーブルとされる。このように、ドライバ回路DV2のディセーブル化及びシンク回路SN2のイネーブル化は、“Middle”ケースにおいて“Near”ケースでのタイミングより遅いタイミングで起こる。
【0200】
時刻t44において、信号SEN2がローレベルとされる。これにより、シンク回路SN2は、ディセーブルとされる。時刻t44において、信号DEN2がハイレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV2は、イネーブルとされる。
【0201】
次に、“Far”ケースについて記述される。
【0202】
時刻t40及びt51において、信号DEN2はハイレベルを維持する。よって、ドライバ回路DV2は電圧を供給している。時刻t40において、信号SEN2は、ローレベルを維持する。よって、シンク回路SN2は、電圧を供給していない。
【0203】
時刻t52において、信号DEN2がローレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV2はディセーブルとされる。時刻t52において、信号SEN2がハイレベルとされる。これにより、シンク回路SN2はイネーブルとされる。このように、ドライバ回路DV2のディセーブル化及びシンク回路SN2のイネーブル化は、“Far”ケースにおいて“Middle”ケースでのタイミングより遅いタイミングで起こる。
【0204】
時刻t44において、信号SEN2がローレベルとされる。これにより、シンク回路SN2は、ディセーブルとされる。時刻t44において、信号DEN2がハイレベルとされる。これにより、ドライバ回路DV2は、イネーブルとされる。
【0205】
図22は、第6実施形態の記憶装置の幾つかの要素の電位及び電流を時間に沿って示す。図22は、P書込みのケースを示し、“Near”ケース、“Middle”ケース、及び“Far”ケースを示す。P書込みの間、信号WENAPはハイレベルに維持され、これにより、電流回路CI2はディセーブルに維持されている。P書込みの間、信号SEN1はローレベルに維持され、これにより、シンク回路SN1はディセーブルに維持されている。
【0206】
まず、“Near”ケースについて記述される。
【0207】
時刻t40において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。これにより、ビット線電位VBLは上昇する。
【0208】
時刻t40において、信号SEN2がハイレベルとされることに基づいて、シンク回路SN2は、選択ワード線WLsに電圧を印加する。これにより、ワード線電位VWLは下降する。
【0209】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t61においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンする。このとき、ビット線電位VBLは、或る大きさの電位Von_nを有する。選択スイッチング素子SEsのオンにより、時刻t61から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t64において、P書込み電流Iwpに達する。
【0210】
次に、“Middle”ケースについて記述される。
【0211】
時刻t40において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。これにより、ビット線電位VBLは上昇する。一方、“Near”ケースと異なり、時刻t40において、信号DEN2はハイレベルを有し、信号SEN2はローレベルを有する。よって、時刻t40において、ワード線電位VWLは、電位VUSELを維持する。
【0212】
時刻t51において、信号SEN2がハイレベルとされることに基づいて、シンク回路SN2は、選択ワード線WLsに電圧を印加する。これにより、ワード線電位VWLは下降する。このように、“Middle”ケースでは、“Near”ケースでのワード線電位VWLの下降が開始される時刻t40より後の時刻t51でワード線電位VWLの下降が開始される。
【0213】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t62においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンする。このとき、ビット線電位VBLは、或る大きさの電位Von_mを有する。選択スイッチング素子SEsのオンにより、時刻t62から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t65において、P書込み電流Iwpに達する。
【0214】
次に、“Far”ケースについて記述される。
【0215】
時刻t40において、信号WENPがローレベルとされることに基づいて、電流回路CI1は、選択ビット線BLsに電流を供給する。これにより、ビット線電位VBLは上昇する。一方、“Near”ケースと異なり、時刻t40において、信号DEN2はハイレベルを有し、信号SEN2はローレベルを有する。よって、時刻t40において、ワード線電位VWLは、電位VUSELを維持する。また、“Middle”ケースと異なり、時刻t51において、信号DEN2はハイレベルを有し、信号SEN2はローレベルを有する。よって、時刻t51において、ワード線電位VWLは、電位VUSELを維持する。
【0216】
時刻t52において、信号SEN2がハイレベルとされることに基づいて、シンク回路SN2は、選択ワード線WLsに電圧を印加する。これにより、ワード線電位VWLは下降する。このように、“Far”ケースでは、“Middle”ケースでのワード線電位VWLの下降が開始される時刻t51より後の時刻t52でワード線電位VWLの下降が開始される。
【0217】
ビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差は、時刻t63においてスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。これにより、選択スイッチング素子SEsがオンする。このとき、ビット線電位VBLは、或る大きさの電位Von_fを有する。選択スイッチング素子SEsのオンにより、時刻t63から、セル電流ICELLが上昇する。セル電流ICELLは、時刻t66において、P書込み電流Iwpに達する。
【0218】
ここまで、図21及び図22を参照してP書込みの例について記述された。AP書込みの場合、信号WENPがハイレベルに維持され、信号SEN2がローレベルに維持される。そして、信号SEN2についての記述が信号SEN1に当てはまり、信号WENPについての記述が信号WENAPに当てはまる。
【0219】
6.3.利点
第6実施形態の記憶装置1fは、第5実施形態と同じく、データ書込みの間、ビット線電位VBLを電位VUSELから上昇させ始めた後に、ワード線電位VWLを電位VUSELから下降させ始める。このため、第5実施形態と同じ利点を得られる。
【0220】
また、第6実施形態の記憶装置1fは、以下に記述されるように、短時間でデータ書込みを行えるとともに、メモリセルMCの破壊を抑制できる。
【0221】
ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsへの合計距離がより大きいと、ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsまでの電流経路の寄生抵抗及び寄生容量は大きい。寄生抵抗及び寄生容量がより大きいと、電流経路の充電に時間を要する。電流経路の充電に要する時間が長いと、選択スイッチング素子SEsに閾値電圧Vthが印加されるときのビット線電位VBLは低い。このため、ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsへの合計距離がより大きいほど、セル電流ICELLの上昇はより緩やかであり、ひいては、セル電流ICELLはP書込み電流Iwpに到達するのにより長い時間を要する。
【0222】
また、第6実施形態の記憶装置1fは、ビット線電位VBLの電位の上昇の開始から、ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsまでの合計距離に基づく期間の経過後に、ワード線電位VWLの下降を開始する。このため、ロウ/カラム選択回路からより大きな合計距離に位置する選択メモリセルMCsへのデータ書込みのとき、選択スイッチング素子SEsがオンする時点でビット線電位VBLはより高い。このため、より大きい合計距離の位置に位置する電流経路により大きな容量が寄生している選択メモリセルMCsにより高いビット線電位VBLを印加することができる。よって、大きい合計距離に位置する選択メモリセルMCsであっても、選択スイッチング素子SEsのオンから短い期間にP書込み電流Iwpを流し始めることができる。よって、大きい合計距離に位置する選択メモリセルMCsにも短時間でデータ書込みを完了できる。
【0223】
図23に示されるように、第6実施形態によれば、“Far”グループであっても、記憶装置1fでの期間Tonは、参考用の記憶装置での期間Tonより長い。図23は、上部において、図22の一部を示し、第6実施形態の“Far”ケースでのビット線電位VBL、ワード線電位VWL、及びセル電流ICELLを示す。また、図23は、下部において、参考用の記憶装置についてのビット線電位VBLR、ワード線電位VWLR、及びセル電流ICELLRを示す。参考用の記憶装置における要素のうち、記憶装置1fの要素に相当するとともに記憶装置1fの要素と異なる要素は、その参照符号の末尾に「R」を付されている。図23は、書込み回路から遠い位置の(例えば、“Far”グループに属する)選択メモリセルMCsについて示す。
【0224】
図23に示されるように、ビット線電位VBLRとワード線電位VWLRとの差は、時刻t63Rにおいて、スイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する。このとき、ビット線電位VBLRは、或る大きさの電位VonRを有する。電位VonRは、電位Von_fより低い。時刻t63Rは、記憶装置1fにおいてビット線電位VBLとワード線電位VWLとの差がスイッチング素子SEの閾値電圧Vthに達する時刻t63より先に到来する。しかしながら、セル電流ICELLRは、時刻t63Rから緩やかに上昇し、時刻t66Rにおいて、P書込み電流Iwpに到達する。時刻t66Rは、時刻t66より後に到来する。よって、記憶装置1fでの期間Tw(時刻t40から時刻t66までの期間)は、参考用の記憶装置での期間Tw(時刻t40から時刻t66Rまでの期間)より短い。
【0225】
また、第6実施形態の記憶装置1fは、ビット線電位VBLの電位の上昇の開始から、ロウ/カラム選択回路から選択メモリセルMCsまでの合計距離に基づく期間の経過後に、ワード線電位VWLの下降を開始する。このため、ロウ/カラム選択回路からの合計距離が小さいにも関わらず、ワード線電位VWLの下降が遅く開始して、選択スイッチング素子SEsがオンする時点でビット線電位VBLが過剰な大きさになることが抑制される。このことは、過剰なセル電流ICELLによって選択メモリセルMCsが破壊されることを抑制する。
【0226】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0227】
1…記憶装置、11…メモリセルアレイ、12…入出力回路、13…制御回路、14…ロウ選択回路、15…カラム選択回路、16…書込み回路、17…読出し回路、18…電圧生成回路、MC…メモリセル、BL…ビット線、WL…ワード線、MTJ…MTJ素子、SE…スイッチング素子、GWL…グローバルワード線、GBL…グローバルビット線、
SN1…シンク回路、SN2…シンク回路、CV1…電圧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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