(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013585
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240125BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20240125BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20240125BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
B23K35/26 310A
C22C13/02
C22C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115778
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 薫子
(72)【発明者】
【氏名】池田 靖
(72)【発明者】
【氏名】山下 志郎
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044QQ03
(57)【要約】
【課題】はんだのボイド破壊を抑制できる。
【解決手段】半導体装置は、第1方向に対向して配される電子部品および基板と、電子部品および基板を接続するはんだとを備え、電子部品は基板と対向する面に第1電極を備え、基板は電子部品と対向する面に第2電極を備え、はんだは、電子部品および基板のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部を有し、はんだはSnを主成分とし、接合部における第1方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル未満である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に対向して配される電子部品および基板と、前記電子部品および前記基板を接続するはんだとを備える半導体装置であって、
前記電子部品は前記基板と対向する面に第1電極を備え、
前記基板は前記電子部品と対向する面に第2電極を備え、
前記はんだは、前記第1電極および前記第2電極のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部を有し、
前記はんだはSnを主成分とし、
前記接合部における前記第1方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル未満である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記電子部品および前記はんだは、ボールグリッドアレイパッケージを形成する、半導体装置。
【請求項3】
第1方向に対向して配される電子部品および基板と、前記電子部品および前記基板を接続するはんだとを備える半導体装置であって、
前記電子部品は前記基板と対向する面に第1電極を備え、
前記基板は前記電子部品と対向する面に第2電極を備え、
前記はんだは、前記第1電極および前記第2電極のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部を有し、
前記はんだはSnを主成分とし、
前記接合部における前記第1方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル以上であり、
前記接合部のBiの含有率が3.0重量%未満である、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記接合部はBiの含有率が3.0重量%未満かつ、Sbの含有率が3.0重量%以上である、半導体装置。
【請求項5】
第1方向に対向して配される電子部品および基板と、前記電子部品および前記基板を接続するはんだとを備える半導体装置であって、
前記電子部品は前記基板と対向する面に第1電極を備え、
前記基板は前記電子部品と対向する面に第2電極を備え、
前記はんだは、前記第1電極および前記第2電極のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部を有し、
前記はんだはSnを主成分とし、
前記接合部における前記第1方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル以上であり、
前記接合部はBiを含まず、Sb含有率が3.0重量%以上である、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高密度化および高機能化を目的に、半導体装置には小型化、高密度化が要求され、BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)のようなエリアアレイ型のパッケージ型半導体装置が多く利用されている。エリアアレイ型のパッケージ型半導体装置は、裏面に一様な電極およびはんだボールが一定サイズ、一定面積、かつ一定ピッチで形成されている。これらの電極およびはんだボールに対応するように、配線基板の電極も一定サイズ、一定面積、および一定ピッチで形成されている。
【0003】
エリアアレイ型のパッケージ型半導体装置において、電極およびはんだボールはパッケージメーカによりあらかじめ形成されており、はんだボールの組成は、Sn-3.0Ag-0.5Cuが一般的である。はんだボールを用いることで、配線基板の電極に迎えはんだを形成し、パッケージ型半導体装置を搭載して加熱することによりはんだバンプを形成して、対応する電極同士が接合される。はんだバンプは、サイズおよびピッチを小さくすることで一定面積内に多数配置することが可能であり、小型化、高密度化に有利である。はんだバンプは、リードを介して接続する構造よりも配線長が短いため、高速伝送に有利であり高性能化を達成できる。車載電子制御装置は、自動車の電子化、EV化、機電一体化の要求の高まりを受けて、エンジン周辺やモータ周辺などの高温部への搭載の機会が増加することが考えられる。
【0004】
特許文献1には、BGA電極を有するBGAと、回路基板電極を有する回路基板と、前記回路基板電極上に配置され前記BGA電極と接続されたはんだ接合部を有し、前記はんだ接合部は、Cuの含有率が0.6mass%以上1.2mass%以下のCuとAgの含有率が3.0mass%以上4.0mass%以下のAgと、Biの含有率が0mass%以上1.0mass%以下のBiとを含み、(1)Cuの含有率が0.6mass%以上0.91mass%以下の範囲では、Inの含有率が5.3+(6-(1.55×Cuの含有率+4.428))mass%以上6.8+(6-(1.57×Cuの含有率+4.564))mass%以下であり、残部はSnからなり、(2)Cuの含有率が0.91mass%より大きく1.0mass%以下の範囲では、Inの含有率が5.3+(6-(1.55×Cuの含有率+4.428))mass%以上6.8mass%以下であり、残部はSnからなり、(3)Cuの含有率が1.0mass%より大きく1.2mass%以下の範囲では、Inの含有率が5.3mass%以上6.8mass%以下であり、残部はSnからなり、前記(1)から(3)の何れかを満たすことを特徴とする実装構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている発明では、ボイド破壊への対策が不明である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による半導体装置は、第1方向に対向して配される電子部品および基板と、前記電子部品および前記基板を接続するはんだとを備える半導体装置であって、前記電子部品は前記基板と対向する面に第1電極を備え、前記基板は前記電子部品と対向する面に第2電極を備え、前記はんだは、前記第1電極および前記第2電極のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部を有し、前記はんだはSnを主成分とし、前記接合部における前記第1方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル未満である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、はんだのボイド破壊を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】下部金属間化合物の形状の違いによるボイド破壊発生の有無を示す図
【
図5】第2の実施の形態における温度サイクル試験の結果を示す図
【
図6】第3の実施の形態における第1の温度サイクル試験の結果を示す図
【
図7】第3の実施の形態における第2の温度サイクル試験の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
―第1の実施の形態―
以下、
図1~
図4を参照して、半導体装置の第1の実施の形態を説明する。
【0011】
第1の実施の形態を
図1~
図4を参照して説明する。
図1は、半導体装置100の外観図である。図面間の相関を明示するために、相互に直交するXYZ軸を定義する。以下では、Z軸方向を「第1方向」とも呼ぶ。
図1では奥側がY軸である。
図1に示すように、半導体装置100は配線基板1と電子部品である半導体パッケージ2とを有する。この半導体パッケージ2は、エリアアレイ型パッケージである。配線基板1は、上面に複数の下部電極4を有する。半導体パッケージ2は、下面に複数の上部電極3を有し、上部電極3に備えられたはんだボール5を介して複数の下部電極4と配線基板1に対向して実装され、はんだバンプ7を形成する。以下では、上部電極3は「第1電極」とも呼び、下部電極4は「第2電極」とも呼ぶ。
【0012】
図2は、
図1に示したはんだバンプ7の詳細図である。はんだボール5および後述するはんだペースト6が加熱溶融によりはんだバンプ7を形成すると、下部電極4とはんだバンプ7との界面には下部金属間化合物8aが形成される。同様に上部電極3とはんだバンプ7の界面にも上部金属間化合物8bが形成される。上部金属間化合物8bは、BGAパッケージの場合はパッケージメーカではんだボール5が取り付けられる際に形成されており、配線基板1と接続される際の加熱溶融によって成長することもある。なお以下では、下部金属間化合物8aおよび上部金属間化合物8bを「接合部」8とも呼ぶ。
【0013】
図3は、下部金属間化合物8aの形状の違いによるボイド破壊発生の有無を示す図である。
図3の左側は下部金属間化合物8aの厚みのばらつきが2μm以上の場合を示し、
図3の右側は下部金属間化合物8aの厚みのばらつきが2μm未満の場合を示す。また
図3の上段は模式図、
図3の中段は拡大図、
図3の下段は広域図である。拡大図および広域図は実物の観察結果であり、左右で縮尺は一致している。中段および下段の詳細は後述する。下部金属間化合物8aの厚みのばらつきとは、下部金属間化合物8aの厚みの最大値と最小値の差であり、
図3における長さL1や長さL2である。長さL1は2μm以上であり、長さL2は2μm未満である。
【0014】
下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきが2μm以上の場合には、応力の集中が起きやすくマイクロボイドが生成されやすいと考えられる。これに対して、金属間化合物のZ方向の厚みのばらつきが小さければ応力の集中が起きにくくマイクロボイドの生成が抑制される。直径0.8mmのはんだボール、それに相当する電極に印刷したはんだペースト6ともにSn-3.0Ag-0.5CuであるBGA接合部の断面観察結果を中段に示す。これらに対して、環境温度を-40℃と125℃とに交互に変化させる温度サイクル試験を500サイクル実施した。500サイクル後の断面観察結果を下段に示す。
【0015】
下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきが大きい場合は、500サイクル後では接合部8と下部金属間化合物8aの界面にマイクロボイドが発生した。その一方で、下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきが小さい場合には、500サイクル後では接合部8と下部金属間化合物8aの界面にマイクロボイドは発生しなかった。詳細には、下部金属間化合物8aの幅方向とZ方向のサイズ比は1:1以下でZ方向の方が小さく、Z方向の粒径が2μm未満である場合にボイド破壊が抑制できる。ただし、下部金属間化合物8aの幅方向とは下部金属間化合物8aの付け根部分の寸法、たとえば上段のW1やW2である。下部金属間化合物8aのZ方向とは付け根部分から頂点までの寸法である。
【0016】
図4は、半導体装置100の製造工程を示す図である。半導体装置100は、配線基板1および半導体パッケージ2を備える。
図4(a)に示すように、配線基板1は上面すなわちZ軸プラス側の表面に複数の下部電極4を有する。
図4(b)に示すように、下部電極4のそれぞれにははんだペースト6が形成される。はんだペースト6は、印刷により形成してもよいし、ディスペンサーで塗布してもよく、その形成手法はこれらに限定されない。
【0017】
図4(c)に示すように、下面に複数の上部電極3を有し、上部電極3の下面にはんだボール5を備える半導体パッケージ2が、はんだペースト6の上に配される。半導体パッケージ2はたとえば、搭載機を用いて配される。
図4(c)に示す構成をリフロー炉等を用いて加熱すると、
図4(d)に示すように半導体装置100が形成される。
図4(d)に示すはんだバンプ7は、はんだボール5とはんだペースト6とが溶融し、冷却して形成されるものである。
【0018】
金属間化合物の粒径を小さくするためには、接合プロファイルの適正化、接合後の温度制御、部材のメタライズ適正化、はんだ付けに用いるはんだ組成の適正化など幾つかの工夫が必要となる。部材のメタライズへの工夫としては、表面、下地のいずれかにNiめっきされた電極で接合する方法などが挙げられる。また、はんだ付けに用いるはんだ組成への工夫として、金属間化合物がNi-Sn化合物の単独でもよいし、Cu-Sn化合物とNi-Sn化合物とが任意の割合で含まれていることなどが挙げられる。
【0019】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)半導体装置100は、第1方向、すなわちZ軸方向に対向して配される半導体パッケージ2および配線基板1と、半導体パッケージ2および配線基板1を接続するはんだバンプ7とを備える。半導体パッケージ2は配線基板1と対向する面に第1電極、すなわち上部電極3を備える。配線基板1は半導体パッケージ2と対向する面に第2電極、すなわち下部電極4を備える。はんだバンプ7は、上部電極3および下部電極4のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部8を有する。はんだはSnを主成分とする。接合部8におけるZ軸方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル未満である。そのため、
図3の右に示すようにはんだバンプ7中のボイド破壊を抑制できる。
【0020】
従来、高温環境下では、はんだと金属間化合物の間に微小な間隙(マイクロボイド)が発生し、これらが連なると電極界面で亀裂進展となって寿命が低下する問題が知られていた。また、はんだバンプには各構成部材の線膨張係数の違いにより、温度負荷時に変形し、BGAパッケージの最外周のはんだバンプに応力がかかり、亀裂がはんだ内を進展することも知られている。電極界面の亀裂進展と同時にこれらも発生するとはんだバンプの破断までの寿命が短くなり、信頼性がより損なわれる。しかし本実施の形態の半導体装置100は、接合部8におけるZ軸方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル未満に抑えることで、
図3の右に示すようにはんだバンプ7中のボイド破壊を抑制できる。
【0021】
(2)半導体パッケージ2およびはんだは、ボールグリッドアレイパッケージを形成する。そのため、上部電極3とはんだバンプ7とがあらかじめ接合されており、上部金属間化合物8bにおけるボイド破壊が発生しにくい。
【0022】
―第2の実施の形態―
図5を参照して、半導体装置の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、はんだの組成が第1の実施の形態と異なる。上述した第1の実施の形態でははんだにおけるBi(ビスマス)の含有率を特に限定しなかった。本実施の形態では、接合部8に含まれるBiの含有率を規定する。
【0023】
図5は、接合部8に含まれるBiの含有率が3.0重量%の場合、および2.6重量%の場合における温度サイクル試験の結果を示す図である。ただし温度サイクル試験とは、環境温度を-40℃と125℃とに交互に変化させる試験であり、500サイクル行った。
図5の上部に示すBiの含有率が3.0重量%の場合は、温度サイクル試験後にマイクロボイドが発生し、それらが連なって亀裂進展となった。
図5の下部に示すBiの含有率が2.6重量%の場合は、温度サイクル試験後でもマイクロボイドの発生はなかった。なお、いずれの場合も接合部8と下部電極4との界面に形成される下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきが2μm以上であった。したがって、接合部8におけるZ方向の厚みのばらつきが2μm以上であっても、接合部8のBi含有率が3.0重量%未満である場合にはボイド破壊が抑制される。
【0024】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(3)半導体装置100は、第1方向に対向して配される半導体パッケージ2および配線基板1と、半導体パッケージ2および配線基板1を接続するはんだとを備える。半導体パッケージ2は配線基板1と対向する面に第1電極、すなわち上部電極3を備える。配線基板1は半導体パッケージ2と対向する面に第2電極、すなわち下部電極4を備える。はんだバンプ7は、上部電極3および下部電極4のそれぞれとの界面に金属間化合物である接合部8を有する。はんだバンプ7はSnを主成分とする。接合部8におけるZ軸方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル以上であり、接合部8のBiの含有率が3.0重量%未満である。そのため
図5の下部に示すように、接合部8におけるZ軸方向の厚みのばらつきが2マイクロメートル以上であっても、はんだの組成を工夫することによりボイド破壊を抑制できる。
【0025】
―第3の実施の形態―
図6~
図7を参照して、半導体装置の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、はんだの組成が第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる。
【0026】
図6は、接合部8の組成がSn-3.9Ag-0.5Cu-3.0Sbである場合のサイクル試験結果を示す図である。
図6では、接合部8と下部電極4との界面に形成される下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきが2μm未満の場合を左側に示し、同じく2μm以上の場合を右側に示す。この温度サイクル試験では、他の実施の形態と同様に環境温度を-40℃と125℃との間で変化させた。ただし本実施の形態では、500サイクル後と2000サイクル後のそれぞれで観察を行った。上段に示す500サイクル後の観察結果では、下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきによらず、マイクロボイドの発生はなかった。下段に示す2000サイクル後の観察結果では、熱疲労破壊により接合部8内を進展する亀裂は確認されたが、接合界面にマイクロボイドの発生はなかった。
【0027】
図7は、接合部8の組成がSn-4.0Ag-0.5Cuである場合のサイクル試験結果を示す図である。すなわち
図7に示す接合部8にはBiが含まれていない。この場合は、接合部8と下部電極4との界面に形成される下部金属間化合物8aのZ方向の粒径が2μm以上である。この温度サイクル試験では、先の試験と同様に環境温度を-40℃と125℃との間で変化させ、500サイクル後と1000サイクル後のそれぞれで観察を行った。
【0028】
図7に示すように、500サイクル後ではマイクロボイドの発生はなかったが、1000サイクル後ではマイクロボイドが発生した。この結果を考察するにあたり、第1の実施の形態における
図3も参照する。
図3の左側に示したように、接合部8の組成がSn-3.0Ag-0.5Cuであり、下部金属間化合物8aのZ方向の厚みのばらつきが2μm以上であり、温度サイクル試験によりマイクロボイドが発生した。
【0029】
本実施の形態における
図6と
図7、第1の実施の形態の
図3の左側に示す観察結果から次のことがわかる。すなわち、はんだに多くのAgが含まれることにより、Ag
3Snネットワークが増加し、マイクロボイドの発生エリアが分散するため、ボイド破壊が抑制される傾向にある。しかしSbの固溶強化により変形性能が大きくなり、粒界に作用する応力を緩和する方が接合界面でのマイクロボイドを抑制する効果が大きいと考えられる。接合部8がBiを含まずSb含有率が3.0重量%以上である場合に最もよくボイド破壊が抑制できることがわかる。
【0030】
上述した第3の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(4)接合部8はBiの含有率が3.0重量%未満かつ、Sbの含有率が3.0重量%以上である。そのため、
図6に示したように接合部8のZ方向の厚みのばらつきによらず、マイクロボイドの発生を抑制できる。
【0031】
(5)接合部8におけるZ軸方向の厚みのばらつきは2マイクロメートル以上であり、接合部8はBiを含まず、Sb含有率が3.0重量%以上である。そのため、
図7に示したようにボイド破壊が抑制される。
【0032】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0033】
本発明に係る電子制御装置は、エリアアレイ型パッケージをはんだバンプ7を介して配線基板1に接続する構成を内蔵し、接合部8と電極との界面に形成される金属間化合物のZ方向の粒径が2μm未満であればボイド破壊が抑制でき、もしくは金属間化合物のZ方向の粒径が2μm以上であっても接合部8の組成がBiを含まずSb含有率が3.0重量%以上であればよく、それぞれの寸法およびその比率、形状は図の構成に限定されるものではなく、また、使用するエリアアレイ型パッケージや配線基板等の構成部材は任意である。
【0034】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 :配線基板
2 :半導体パッケージ
3 :上部電極
4 :下部電極
5 :はんだボール
6 :はんだペースト
7 :はんだバンプ
8 :接合部
8a :下部金属間化合物
8b :上部金属間化合物
100 :半導体装置