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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135853
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車いす用ヘッドサポート装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/12 20060101AFI20240927BHJP
   B60N 2/865 20180101ALI20240927BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61G5/12 703
B60N2/865
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046740
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慎也
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB08
3B087DC07
(57)【要約】
【課題】ヘッドサポート部の前後位置に関わらず、介助者による車いす後方からの介護を容易に行うことができる車いす用ヘッドサポート装置を提案する。
【解決手段】車いすの本体フレームに取り付けられる支持杆部17と、前端部が相互に回転可能に連結されると共に各後端部が支持杆部17に移動可能かつ回転可能に支持された一対のリンク片部22,22を有するリンク機構部3とを備え、リンク片部22,22の前端部に連結されたヘッドサポート部2が、各リンク片部22,22の後端部を互いに離間させることによって後方へ移動する一方、該後端部を互いに接近させることによって前方へ移動するものとした。かかる構成は、リンク片部22,22の作動によりヘッドサポート部2を前後移動できるため、介助者が後方から介護を行い易い。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いすの本体フレームに取り付けられるものであって、該本体フレームに取り付けられた状態で、該車いすに着座した使用者の頭部を支持するヘッドサポート部が該本体フレームに対して前後方向へ相対移動可能に設けられた車いす用ヘッドサポート装置において、
前記本体フレームに取り付けられる、前記した前後方向と略直交する方向に沿う支持杆部と、
前記支持杆部に、後端部が該支持杆部に沿って移動可能かつ回転可能に支持された一対のリンク片部を有し、各リンク片部の前端部が互いに回転可能に連結されてなるリンク機構部と、
前記リンク片部を、前記支持杆部に沿って移動可能な状態と移動不能な状態とに変換するロック手段と、
前記リンク片部の前端部に回転可能に連結され、前記ヘッドサポート部が配設された連結手段と
を備え、
前記ヘッドサポート部が、前記リンク片部の後端部を互いに離間する方向へ移動させることによって後方へ移動する一方、該後端部を互いに接近する方向へ移動させることによって前方へ移動するものであることを特徴とする車いす用ヘッドサポート装置。
【請求項2】
一対のリンク片部は、両方の後端部を最も接近させた状態で、両リンク片部の間に空隙が形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の車いす用ヘッドサポート装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすに着座した使用者の頭部を支持するヘッドサポート部を、該車いすに取り付ける車いす用ヘッドサポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の頭部を支持するヘッドサポート部を、車いすに取り付ける車いす用ヘッドサポート装置は、従来から知られている。例えば、特許文献1には、車いす後部の左右の縦フレーム間に取り付けられる横バー部材と、該横バー部材に支持された縦バー部材と、該縦バー部材に前後にスライドでき且つスライド位置で固定できる取付バーと、該取付バーの前端部に設けたヘッドサポート(ヘッドレスト)とを備えた構成が提案されている。かかる構成は、ヘッドサポートを設けた取付バーを、縦バー部材に対して前後へスライドさせることによって、該ヘッドサポートを使用者に適した前後位置に変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-26140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した特許文献1に記載された従来構成にあっては、ヘッドサポートを前端部に設けた取付バーを、車いすの縦フレームに対して前後方向へ移動させることによって、該ヘッドサポートの前後位置を変更するものであるから、ヘッドサポートを後方へ移動させるに伴って取付バーが後方へ突出する。ここで、一般的な車いすは、左右の縦フレームの上部に、介助者により操作されるハンドルが設けられている。そのため、前述の従来構成を車いすに取り付けた場合に、ヘッドサポートを後方へ移動させた状態では、介助者の直前に取付バーが突出することから、該介助者が後方から介護し難いという問題があった。
【0005】
本発明は、ヘッドサポートの前後位置に関わらず、介助者による車いす後方からの介護を行い易い車いす用ヘッドサポート装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車いすの本体フレームに取り付けられるものであって、該本体フレームに取り付けられた状態で、該車いすに着座した使用者の頭部を支持するヘッドサポート部が該本体フレームに対して前後方向へ相対移動可能に設けられた車いす用ヘッドサポート装置において、前記本体フレームに取り付けられる、前記した前後方向と略直交する方向に沿う支持杆部と、前記支持杆部に、後端部が該支持杆部に沿って移動可能かつ回転可能に支持された一対のリンク片部を有し、各リンク片部の前端部が互いに回転可能に連結されてなるリンク機構部と、前記リンク片部を、前記支持杆部に沿って移動可能な状態と移動不能な状態とに変換するロック手段と、前記リンク片部の前端部に回転可能に連結され、前記ヘッドサポート部が配設された連結手段とを備え、前記ヘッドサポート部が、前記リンク片部の後端部を互いに離間する方向へ移動させることによって後方へ移動する一方、該後端部を互いに接近する方向へ移動させることによって前方へ移動するものであることを特徴とする車いす用ヘッドサポート装置である。
ここで、リンク片部の後端部は、リンク片部の基端部と換言できると共に、リンク片部の前端部は、リンク片部の先端部と換言できる。
【0007】
かかる構成にあっては、一対のリンク片部の各後端部を支持杆部に沿って移動させることによって、ヘッドサポート部を前後方向へ移動させることができると共に、ロック手段によって該ヘッドサポート部を所望の前後位置で保持することができる。そして、本発明の構成は、ヘッドサポート部の前後移動をリンク機構部の作動により行うことから、前述した従来構成のようにヘッドサポート部の取付バーが後方へ突出することが無い。このように本発明の構成によれば、ヘッドサポート部の前後位置に関わらず、車いすに着座した使用者を介助者が後方から介護し易い。
【0008】
前述した本発明の車いす用ヘッドサポート装置にあって、一対のリンク片部は、両方の後端部を最も接近させた状態で、両リンク片部の間に空隙が形成されるものである構成が提案される。
【0009】
かかる構成にあっては、ヘッドサポート部を最も前方位置に移動させた際に、両リンク片部の間の空隙によって、該リンク片部間で指などを挟んでしまうというアクシデントの発生を抑制できる。
【0010】
尚、本構成にあって、一対のリンク片部は、両方の後端部を最も離間させた状態で、各リンク片部と支持杆部との間に空隙が形成されるものである構成が好適である。この構成にあっては、ヘッドサポート部を最も後方位置に移動させた際に、両リンク片部と支持杆部との間で指などを挟んでしまうアクシデントの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車いす用ヘッドサポート装置によれば、ヘッドサポート部の前後移動によって、介助者の後方からの介護を妨げることが無く、車いすに着座した使用者を容易に介護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1を取り付けた車いす101の側面図である。
図2】操作レバー部を省略して示す、車いす用ヘッドサポート装置1の平面図である。
図3】車いす用ヘッドサポート装置1の側面図である。
図4】車いす用ヘッドサポート装置1の縦断面図である。
図5】クランプ部材21の、(A)一部を切り欠いて示す側面図と、(B)分解図と、(C)取付態様を示す説明図である。
図6】(A)ヘッドサポート部2を前方へ移動させた状態と、(B)後方へ移動させた状態とを示す平面図である。
図7】(A)ヘッドサポート部2を左右方向へ傾動させた態様を示す平面図と、(B)上下方向へ傾動させた態様を示す側面図である。
図8】ヘッドサポート部2を上方へ移動させた状態における、車いす101の側面図である。
図9】支持フレーム部4を前後逆に取り付けた状態を示す車いす用ヘッドサポート装置1の、(A)平面図と、(B)側面図である。
図10】(A)別例1の車いす用ヘッドサポート装置61の平面図と、(B)別例2の車いす用ヘッドサポート装置71の平面図である。
図11】別例3の車いす用ヘッドサポート装置81の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる車いす用ヘッドサポート装置1を具体化した実施例を、以下に説明する。
本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1は、図1に示すように、車いす101に取り付けられて使用される車いす101用のものであり、該車いす101に着座した使用者の頭部を支えるヘッドサポート部2を、該使用者に適した前後位置に変更可能である。本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1は、一般的な構成の車いす101に取り付け可能である。尚、本実施例では、車いす101に着座した使用者から見て、前後左右方向を定めている。
【0014】
車いす101は、金属製パイプで構成された本体フレーム102を備える。本体フレーム102は、左右一対のサイドフレーム部110を備えており、該サイドフレーム部110は、前後方向に配設されたベースフレーム部111と、該ベースフレーム部111の後部に接合された上下方向の後脚フレーム部112と、該後脚フレーム部112の上端から上方へ延出された背もたれフレーム部113と、該後脚フレーム部112の上端部から前方へ延出された上フレーム部115とを有する。さらに、左右の上フレーム部115には、凹溝状の座フレーム支持部116,116が夫々配設されており、各座フレーム支持部116に、前後方向に延成された左右一対の座フレーム杆部122が夫々載置される。
【0015】
前記した左右の背もたれフレーム部113は、その上部が後方へ折り曲げられており、介助者により把持されるハンドル部120が設けられている。また、前記した後脚フレーム部112には、主車輪103が配設されている。さらに、前記ベースフレーム部111の前端部には、キャスタ124が取り付けられている。
【0016】
前記した左右一対のサイドフレーム部110間には、一対の杆材が夫々の中央で回動自在に連結されたクロスフレーム部119が配設されている。このクロスフレーム部119は、その一対の杆材の夫々の下端が、前記したサイドフレーム部110を構成する左右のベースフレーム部111に回動可能に連結されると共に、該一対の杆材の夫々の上端が、前記した左右の座フレーム杆部122に回動可能に連結されている。
【0017】
本体フレーム102は、クロスフレーム部119によって左右のサイドフレーム部110が連結された構成であり、左右の座フレーム杆部122が前記座フレーム支持部116に載置されることによって、左右のサイドフレーム部110が左右に所定間隔をおいて離間された状態で保持される。この状態が、使用者の着座可能な使用状態である。こうした使用状態から左右の座フレーム杆部122が持ち上げられることによって、クロスフレーム部119の左右両端が近接し、これに伴って左右のサイドフレーム部110が互いに近接する。これにより、本体フレーム102(すなわち、車いす)が折り畳まれる。
【0018】
前記本体フレーム102の左右の背もたれフレーム部113には、柔軟性を有する布製の背もたれシート部材(図示せず)が取り付けられ、該背もたれシート部材によって、着座者の背部を支える背もたれ部が構成される。さらに、左右の座フレーム杆部122には、柔軟性を有する布製の着座シート部材(図示せず)が取り付けられ、該着座シート部材によって、使用者が着座する着座部が構成される。
尚、こうした車いす101は、一般的な構成のものであるから、詳細な説明を省略する。
【0019】
次に、本発明の要部にかかる車いす用ヘッドサポート装置1について説明する。
本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1は、図1~4に示すように、使用者の頭部を支持するヘッドサポート部2と、該ヘッドサポート部2を前後方向へ相対移動させるリンク機構部3と、該リンク機構部3を支持する支持フレーム部4と、該支持フレーム部4を前記左右の背もたれフレーム部113に取り付ける左右一対の取付部5,5とを備える。
【0020】
ヘッドサポート部2は、前面に湾曲状の凹部を有する立体形状からなり、樹脂製のカバー部材(図示せず)と該カバー部材に内包された発泡性のウレタン材(図示せず)とにより構成されている。ヘッドサポート部2の後部には、後述するヘッドサポート連結部23が配設されており、該ヘッドサポート連結部23を介して前記リンク機構部3に連結されている。
【0021】
取付部5は、背もたれフレーム部113に固定される固定部11と、上下方向に貫通する円筒状の取付筒部12とが一体的に設けられてなる。こうした取付部5が左右の背もたれフレーム部113に夫々固定され、各取付部5の取付筒部12に、前記支持フレーム部4の左右の縦杆部16,16が夫々挿通されて取り付けられる。取付部5の取付筒部12には、前記縦杆部16を上下方向へ移動可能な状態と移動不能な状態とに変換する位置決め手段(図示せず)が設けられており、所望の上下位置へ変換できる。
【0022】
支持フレーム部4は、左右方向に所定間隔をおいて配設された左右一対の縦杆部16,16と、両縦杆部16,16の上部に差し渡された左右方向の支持杆部17とを備える。縦杆部16は、円筒状のパイプからなり、前記取付部5の取付筒部12に挿通される上下方向の主杆部16aと、該主杆部16aの上端から折曲げられて後方へ突出する突出杆部16bとから構成され、突出杆部16bに前記支持杆部17が接合されている。支持杆部17は、断面異形状のパイプにより構成されており、その両端部が左右の縦杆部16,16の突出杆部16b,16bに接合されている。
【0023】
こうした支持フレーム部4は、左右の縦杆部16,16の間隔が、左右の背もたれフレーム部113の間隔に比して短く設定されており、前記取付部5,5を介して左右の背もたれフレーム部113に取り付けられた状態で、該背もたれフレーム部113の内側に配置される。支持フレーム部4は、その主杆部16aの長さの範囲内で、背もたれフレーム部113(本体フレーム102)に対して上下方向へ相対移動できる(図8参照)。
【0024】
リンク機構部3は、前記支持フレーム部4の支持杆部17に移動可能に外嵌された二個のクランプ部材21,21と、各クランプ部材21に夫々連結された左右一対のリンク片部22,22とを備える。そして、各リンク片部22,22は、前記ヘッドサポート部2に固定されたヘッドサポート連結部23に連結されている。
【0025】
本実施例のクランプ部材21は、図5に示すように、上側部材25と下側部材26とにより構成され、上側部材25と下側部材26とで支持杆部17を狭圧することによって移動不能となる一方、該狭圧を解除することによって移動可能となる。上側部材25は、後述の後端軸31が挿通される上側連結部25aと、下側部材26のフック部26bが引っ掛けられる杆部25bとを備える。下側部材25は、後述する後端軸31が挿通される下側連結部26aと、前記フック部26bとを備える。こうした上側部材25と下側部材26とは、該下側部材26のフック部26bを該上側部材25の杆部25bに引っ掛けて前記支持杆部17に外嵌される。そして、上側連結部25aと下側連結部26aとを締め付けることによって、クランプ部材21が支持杆部17に位置決め固定される。
【0026】
本実施例のリンク片部22は、図2~4に示すように、上下方向に間隔をおいて並設された二個のリンク板材22a,22aによって構成されており、該リンク板材22a,22aが左右外方へ凸状に湾曲する形状を成す。こうした上下のリンク板材22a,22aの後端部が、該後端部間に配置された前記クランプ部材21の上側連結部25aと下側連結部26aとに、上下方向の後端軸31によって回転自在に連結されている。これにより、リンク片部22の後端部が、クランプ部材21を介して支持杆部17に左右方向へ回転可能に軸支されている。また、後端軸31の上部には、該リンク板材22a,22aと上側連結部25aと下側連結部26aとを上下両側から狭圧して締結させる締結状態と、該狭圧を解除する非締結状態とに変換できる操作レバー部32が、傾動操作可能に配設されている。この締結状態では、上下のリンク板材22a,22aとクランプ部材21とが圧接されて回転不能であると共に、該クランプ部材21の該上側連結部25aと下側連結部26aとによって支持杆部17が狭圧されて位置決めされる。一方、非締結状態では、上下のリンク板材22a,22aとクランプ部材21とが回転自在であり、且つ該クランプ部材21が支持杆部17に沿って左右方向へ移動可能である。
【0027】
前述した左右のリンク片部22,22は、夫々の前端部が上下方向の前端軸33によって回転自在に連結されている。ここで、左右のリンク片部22,22は、前述したように夫々が上下二個のリンク板材22a,22aで構成されており、合計四個のリンク板材22aの各前端部が上下方向に配置されて、前記前端軸33によって連結される。さらに、この前端軸33には、前記ヘッドサポート連結部23を構成する左右回転部41が回転自在に連結されている。これにより、ヘッドサポート連結部23(ヘッドサポート部2)が、リンク片部22,22に左右方向へ回転可能に軸支されている。また、前端軸33の上部には、各リンク板材22aと左右回転部41とを上下両側から狭圧して締結させる締結状態と、該狭圧を解除する非締結状態とに変換できる操作レバー部34が、傾動操作可能に配設されている。この締結状態では、各リンク板材22aと左右回転部41とが圧接されて回転不能である一方、非締結状態では、該圧接が解除されて回転可能である。
【0028】
さらに、本実施例にあっては、左右のリンク片部22,22を夫々構成する上側のリンク板材22a,22a間と下側のリンク板材22a,22a間とに、回転止め部材42,42が夫々介装されている。回転止め部材42は、リンク板材22a,22a間に介装される介装部42aと該介装部42aの前縁から折り曲げられた挿入部42bとにより構成された側面視略L形状に形成されている。これら回転止め部材42は、介装部42aで前端軸33に回転可能に連結される。そして、前記した前端軸33の操作レバー部34による締結状態では、回転止め部材42の介装部42aがリンク板材22aと圧接されて回転不能である一方、非締結状態では該圧接が解除されて回転可能である。
【0029】
前記したヘッドサポート連結部23の左右回転部41には、前記回転止め部材42の挿入部42bが嵌入される挿入口部43が上下両側に夫々設けられており、上下の挿入口部43,43に、前端軸33に連結された回転止め部材42,42の挿入部42b,42bが夫々挿入されている。これにより、左右回転部41と上下の回転止め部材42,42とが前端軸33を中心として一体的に回転する。こうした回転止め部材42,42によって、前端軸33の操作レバー部34による締結状態で、左右回転部41を回転しない状態で保持する効果が向上する。
【0030】
ヘッドサポート連結部23は、ヘッドサポート部2の後面に固定され且つ左右回転部41に上下方向に回転可能に連結された上下回転部47を備える。すなわち、本実施例のヘッドサポート連結部23は、左右回転部41と上下回転部47とにより構成される。上下回転部47は、左右回転部41に、ボルト48により上下方向へ回転可能に連結されており、該ボルト48によって該左右回転部41に軸支されている。そして、このボルト48の適切な締め付けにより、手動で上下方向へ傾動できるものの、着座した使用者の頭部では動かし難い程度の締付状態とされる。これにより、ヘッドサポート部2を所望の傾斜角度に調整して、該傾斜角度で比較的安定して保ち得る。
【0031】
前述した本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1は、前述した車いす101に取り付けられて使用される。
車いす用ヘッドサポート装置1は、図1に示すように、取付部5によって車いす101の背もたれフレーム部113に取り付けられる。ここで、通常は、支持フレーム部4の縦杆部16が、その突出杆部16bを後向きとした状態で、取付部5の取付筒部12に挿通されて取り付けられる(図2~4参照)。
【0032】
こうして車いす101に取り付けられた状態で、ヘッドサポート部2の前後方向の位置を変える場合には、左右の後端軸31,31の操作レバー部32,32を操作して非締結状態とすると共に、前端軸33の操作レバー部34を操作して非締結状態とする。これにより、左右のクランプ部材21,21が支持杆部17に沿って左右方向へ移動可能、左右のリンク片部22,22が各クランプ部材21,21に対して相対的に左右方向へ回動可能、および左右のリンク片部22,22が前端軸33を中心として相対的に左右方向へ回動可能となる。この状態では、図6(A)に示すように、左右のクランプ部材21,21が互いに接近する方向へ移動されることで、ヘッドサポート部2が前方へ移動できる。一方、図6(B)に示すように、左右のクランプ部材21,21が互いに離間する方向へ移動されることで、ヘッドサポート部2が後方へ移動できる。このように非締結状態としてヘッドサポート部2の前後位置を調整し、所望の前後位置で前記操作レバー部32,34を操作して締結状態とすることによって、ヘッドサポート部2の前後位置を位置決め固定できる。
【0033】
さらに、前端軸33では締結状態を保持し且つ左右の後端軸31,31では非締結状態に変換すれば、ヘッドサポート部2を、前後方向位置を保持したままで、左右方向位置を変更できる。そして、ヘッドサポート部2の左右方向位置を調整して、後端軸31,31で締結状態へ変換することにより、ヘッドサポート部2の左右方向位置を位置決め固定できる。
【0034】
また、前端軸33と後端軸31,31とで非締結状態に変換し、一方のクランプ部材21を左右一方へ移動させて左右のクランプ部材21,21を離間させることによって、ヘッドサポート部2を左右一方の後方へ斜めに平行移動させることもできる。逆に、一方のクランプ部材21を左右他方へ移動させて左右のクランプ部材21,21を接近させることによって、ヘッドサポート部2を左右他方の前方へ斜めに平行移動させることもできる。
【0035】
このように本実施例の構成は、ヘッドサポート部2の前後方向位置と左右方向位置とを、車いす101に着座する使用者に合わせて適宜変更でき、さらには該ヘッドサポート部2を前後左右の斜め方向へ移動させることも可能である。
【0036】
また、前端軸33で非締結状態に変換すれば、図7(A)に示すように、ヘッドサポート部2を左右へ傾動させることができる。そして、この傾動後に締結状態に変換することにより、該ヘッドサポート部2を所望の左右角で保持できる。
【0037】
また、ヘッドサポート連結部23の上下回転部47と左右回転部41とが前記ボルト48の適切な締め付けによって連結されていることから、図7(B)に示すように、使用者や介助者等が手動でヘッドサポート部2を上下に傾動させることができ、所望の傾斜角度に調整できる。そして、前記ボルト48の適切な締め付けによって、ヘッドサポート部2を所望の傾斜角度で比較的安定して保ち得る。
【0038】
さらにまた、車いす用ヘッドサポート装置1は、取付部5の位置決め手段(図示せず)により支持フレーム部4を上下方向へ移動可能な状態とすれば、該支持フレーム部4を上下方向へ移動させることによって、ヘッドサポート部2を上下方向へ移動できる。これにより、ヘッドサポート部2の高さ位置を変更できる(図1,8参照)。
【0039】
一方、本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1は、図9に示すように、支持フレーム部4を、その突出杆部16bを前向きとして背もたれフレーム部113に取り付けることが可能である。このように取り付けすることで、突出杆部16bを後向きとした場合に比して、ヘッドサポート部2の位置をより前方へ配置させることができる。
【0040】
このように本実施例の車いす用ヘッドサポート装置1は、後端軸31,31で夫々連結された左右のリンク片部22の後端部と左右のクランプ部材21,21とを締結状態と非締結状態とに変換し、前端軸33で連結された左右のリンク片部22の前端部同士を締結状態と非締結状態とに変換することにより、ヘッドサポート部2の前後左右方向への相対移動と所望の位置での保持とを行うことができる。そして、本実施例は、こうしたヘッドサポート部2の前後左右方向への相対移動を、リンク機構部3の作動によって行う構成であることから、前述した従来構成のようにヘッドサポート部の取付バーが後方へ突出することが無い。したがって、本実施例の構成によれば、ヘッドサポート部2の位置変換に関わらず、車いす101に着座した使用者を介助者が後方から介護し易い。
【0041】
さらに、本実施例の構成は、ヘッドサポート部2の前後左右方向へ移動可能な状態と移動不能な状態とに、前記した操作レバー部32,34の操作により変換できることから、こうした状態の変換を比較的容易に行うことができる。これにより、使用者や介助者等が、ヘッドサポート部2の移動と位置決めとを行い易い。また、本実施例では、ヘッドサポート部2を上下方向と左右方向とに傾動可能としていることから、該ヘッドサポート部2を使用者に合わせた傾きに調節可能である。
【0042】
また、本実施例の構成は、左右のリンク片部22,22が、左右外方へ突出する湾曲形状のリンク板材22aにより構成されていることから、左右のリンク片部22,22を最も近接させた場合に、該リンク片部22,22間に空隙が生ずる(図6(A)参照)。この空隙によって、リンク片部22,22間に指などを挟んでしまうというアクシデントの発生を抑制できる。さらには、左右のリンク片部22,22を最も離間させた場合に、各リンク片部22と支持杆部17との間に空隙が生ずる(図6(B)参照)。これにより、リンク片部22と支持杆部17との間に指などを挟んでしまうというアクシデントの発生も抑制できる。
【0043】
また、本実施例の構成は、クランプ部材21の上側部材25と下側部材26とを締め付けることによって、異形断面形状の支持杆部17に位置決め固定するものであるから、該クランプ部材21を支持杆部17に確実かつ安定して固定できる。これにより、ヘッドサポート部2を所望の位置で安定して保持できる。さらに、本実施例のクランプ部材21は、上側部材25の杆部25bに下側部材26のフック部26bを引っ掛けることにより連結されたのであるから、設置や交換などに要する作業を行い易いという優れた利点もある。さらには、こうした二個の部材を軸材などで連結する構成に比して、製造に要する時間とコストとを低減できるという利点もある。
【0044】
また、本実施例の構成は、ヘッドサポート連結部23の左右回転部41に回転不能に連結された回転止め部材42が、前端軸33に回転可能に連結されており、該前端軸33における締結状態で、該回転止め部材42を回転不能に変換する。こうした回転止め部材42によって、前記締結状態でヘッドサポート部2を回転しない状態で一層確実かつ安定して保持できる。
【0045】
前述した本実施例にあって、クランプ部材21と、該クランプ部材21を締結状態と非締結状態とに変換する構造とが、本発明にかかるロック手段に相当する。そして、この締結状態が、本発明にかかるリンク片部の移動可能な状態に相当し、該非締結状態が本発明にかかる移動不能な状態に相当する。また、ヘッドサポート連結部23(左右回転部41および上下回転部47)が、連結手段に相当する。
【0046】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
【0047】
前述した実施例では、支持杆部が左右方向に沿って配設された構成であるが、これに限らず、支持杆部が上下方向や斜め方向に沿って配設された構成とすることも可能である。このように上下方向や斜め方向に沿う支持杆部を設けた構成にあっても、実施例と同様にヘッドサポート部を前後方向へ移動させることができると共に、支持杆部の方向に沿ってヘッドサポート部を移動させることも可能である。例えば、上下方向に沿って支持杆部を設けた構成では、ヘッドサポート部を前後方向と上下方向とに移動させて、所望位置で保持できる。
【0048】
前述した実施例では、各リンク片部が上下のリンク板材からなるものとした構成であるが、これに限らず、各リンク片部がそれぞれ一の部材(例えば、一のリンク板材)から形成された構成であっても良い。このように各リンク片部は、一又は複数の部材により構成されたものとできる。
【0049】
前述した実施例では、リンク片部が、そのリンク板材を外方へ湾曲状に突出した形状としたが、これに限らず、左右のリンク片部が最も接近させた状態で空隙が形成される構成であれば、形状を適宜変更することができる。例えば、外方へV字状に突出する形状やコ字状に突出する形状等とすることができる。又は、左右のリンク片部が、最も接近させた状態で空隙が形成されるように、左右のクランプ部材の下限間隔を設定した構成としても良い。
【0050】
前述した実施例では、前端軸に上下二個の回転止め部材を挿通させた構成であるが、これに限らず、上下いずれか一個の回転止め部材を配設した構成としても良い。又は、回転止め部材を配設しない構成であっても良い。
【0051】
前述した実施例では、前端軸と後端軸との各操作レバー部による操作で上下両側から狭圧して締結状態とする一方、該狭圧を解除して非締結状態とする構成であるが、こうした締結状態(回転不能な状態)と非締結状態(回転自在な状態)とに変換する構造は、前述の実施例に限定されず、適宜変更できる。
【0052】
前述した実施例では、異形断面形状の支持杆部に移動可能に設けたクランプ部材にリンク片部の後端部を回転可能に連結した構成としたが、支持杆部に沿ってリンク片部の後端部を移動可能とする構成は適宜変更することが可能である。例えば、断面円形、楕円形、又は断面多角形の支持杆部と、この支持杆部に外嵌されるクランプ部材とを備えた構成とすることもできる。さらには、支持杆部にリンク片部の後端部を位置決めする構成としては、該支持杆部に圧接して位置決め固定されるクランプ部材に限らない。例えば、以下に示す別例1~3の構成とすることができる。
【0053】
別例1の車いす用ヘッドサポート装置61は、図10(A)に示すように、断面円形の支持杆部62と、該支持杆部62に移動自在に外嵌された二個の外嵌部材63,63とを備え、各外嵌部材63,63にリンク片部22,22が後端軸31によって軸支されている。そして、支持杆部62には、長手方向(左右方向)に所定間隔をおいて複数の貫通孔64が形成されると共に、各外嵌部材63には、該貫通孔64に重ね合わせることができる挿通孔65が夫々設けられている。外嵌部材63は、挿通孔65を支持杆部62のいずれかの貫通孔64に重ね合わせた位置として、棒状のピン部材66を該挿通孔65および該貫通孔64に挿通させることにより、該支持杆部62に位置決めされて保持される。このように別例1の構成では、ピン部材66を外すことで、外嵌部材63を支持杆部62に沿って移動できることから、ヘッドサポート部2を前後左右方向へ移動できる一方、外嵌部材63の挿通孔65といずれかの貫通孔64とにピン部材66を挿通させることで、外嵌部材63を位置決めでき、ヘッドサポート部2を固定できる。尚、支持杆部62、外嵌部材63、およびピン部材66の他の構成は、前述した実施例と同じであることから、同じ構成要素には同じ符号を記しており、説明を省略する。尚、この別例1にあって、支持杆部は、断面円形に限らず、断面楕円形や断面多角形とすることもできる。
【0054】
別例2の車いす用ヘッドサポート装置71は、図10(B)に示すように、支持フレーム部4を構成する左右の縦杆部16,16の上部に、外周面に雄螺子部73,74を有する断面円形の支持杆部72が回転可能に設けられると共に、雌螺子孔(図示せず)を夫々有する二個の外嵌部材75,75が、該支持杆部72の雄螺子部73と雄螺子部74とに螺合されている。そして、各外嵌部材75,75に、リンク片部22,22が後端軸31によって軸支されている。支持杆部72の雄螺子部73と雄螺子部74とは、互いに逆向きの螺子であり、夫々に螺合される外嵌部材75,75の雌螺子部も互いに逆向きである。こうした支持杆部72は、その一方の端部に設けられたハンドル76を回動させることによって回転し、この回転方向を正逆変換することによって、二個の外嵌部材75,75を互いに離間する方向または接近する方向へ移動できる。これにより、ヘッドサポート部2を前後方向へ移動できる。また、ハンドル76を停止保持することによって、ヘッドサポート部2を所望位置で固定できる。尚、この別例2の構成にあって、支持杆部72と外嵌部材75,75以外は、前述した実施例と同じであるから、詳細は省略する。
【0055】
別例3の車いす用ヘッドサポート装置81は、図11に示すように、支持杆部82が、互いに対向状に配設された二個のラックギア84,84を長手方向(左右方向)へ移動可能に案内する構造を備えると共に、該ラックギア84,84に噛み合わせた一個のピニオンギア85が回転自在に配設された構成である。そして、各ラックギア84,84にリンク片部22,22が後端軸31によって軸支されている。かかる構成は、ピニオンギア85を正逆回転させることによって、二個のラックギア84,84を互いに逆向きに移動させることができる。こうした別例3の構成は、所謂ラックアンドピニオンギアの構造によって、左右のリンク片部22,22の後端部を互いに離間する方向と接近する方向とに移動させることができるから、ヘッドサポート部2を前後方向へ移動できる。また、ピニオンギア85を停止保持することによって、ヘッドサポート部2を所望位置で固定できる。尚、この別例3の構成にあって、支持杆部82、ラックギア84,84、およびピニオンギア85以外は、前述した実施例と同じであるから、詳細は省略する。
【符号の説明】
【0056】
1、61,71,81 車いす用ヘッドサポート装置
2 ヘッドサポート部
3 リンク機構部
4 支持フレーム部
5 取付部
11 固定部
12 取付筒部
16 縦杆部
16a 主杆部
16b 突出杆部
17,62,72,82 支持杆部
21 クランプ部材
22 リンク片部
22a リンク板材
23 ヘッドサポート連結部
25 上側部材
25a 上側連結部
25b 杆部
26 下側部材
26a 下側連結部
26b フック部
31 後端軸
32 操作レバー部
33 前端軸
34 操作レバー部
41 左右回転部
42 回転止め部材
42a 介装部
42b 挿入部
43 挿入口部
47 上下回転部
63,75 外嵌部材
64 貫通孔
65 挿通孔
66 ピン部材
73,74 雄螺子部
76 ハンドル
84 ラックギア
85 ピニンオンギア
101 車いす
102 本体フレーム
103 主車輪
110 サイドフレーム部
111 ベースフレーム部
112 後脚フレーム部
113 背もたれフレーム部
115 上フレーム部
116 座フレーム支持部
119 クロスフレーム部
120 ハンドル部
122 座フレーム杆部
124 キャスタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11