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特開2024-135854歯ぎしり検出システム、及び歯ぎしり検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135854
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】歯ぎしり検出システム、及び歯ぎしり検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240927BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240927BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B5/11 300
A61B5/00 101R
A61B5/16 100
A61B5/0245 100C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046741
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】野々村 琢人
(72)【発明者】
【氏名】島田 紗樹
(72)【発明者】
【氏名】仁科 翠
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AC03
4C017BC16
4C038PP05
4C038PS00
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB05
4C038VB32
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB04
4C117XB09
4C117XC02
4C117XD08
4C117XE13
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE30
(57)【要約】
【課題】使用者への負担を軽減しつつ、歯ぎしりを高精度に検出することができる歯ぎしり検出システムを提供する。
【解決手段】歯ぎしり検出システム1は、入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の歯ぎしりを検出する歯ぎしり検出システムであって、使用者に対して非接触で、使用者の振動を示す振動情報を取得するセンサ部11と、振動情報から歯ぎしりの前に生じる兆候を示す兆候情報を抽出し、振動情報及び兆候情報から歯ぎしりを検出する検出部41と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の歯ぎしりを検出する歯ぎしり検出システムであって、
前記使用者に対して非接触で、前記使用者の振動を示す振動情報を取得するセンサ部と、
前記振動情報から前記歯ぎしりの前に生じる兆候を示す兆候情報を抽出し、前記振動情報及び前記兆候情報から前記歯ぎしりを検出する検出部と、を備える、歯ぎしり検出システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記振動情報から前記使用者の心拍を示す心拍情報を抽出し、
前記検出部は、前記心拍情報から前記歯ぎしりの前に生じる心拍数の増加を前記兆候情報として抽出する、請求項1に記載の歯ぎしり検出システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記振動情報から前記使用者の自律神経の状態を示す自律神経情報を抽出し、
前記検出部は、前記自律神経情報から前記歯ぎしりの前に生じる交感神経指標の増加を前記兆候情報として抽出する、請求項1又は請求項2に記載の歯ぎしり検出システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記振動情報を波形として検出し、検出した前記波形を、予め記憶されている歯ぎしり波形と比較することによって、前記歯ぎしりと特定する、請求項1又は請求項2に記載の歯ぎしり検出システム。
【請求項5】
センサ部によって取得された使用者の振動を示す振動情報から歯ぎしりの前に生じる兆候を示す兆候情報を抽出するステップと、
前記振動情報及び前記兆候情報から前記歯ぎしりを検出するステップと、
をコンピュータに実行させる、歯ぎしり検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯ぎしり検出システム、及び歯ぎしり検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、口腔内に装着される装置本体を有する歯ぎしり防止装置が記載されている。装置本体は、上顎歯と下顎歯との接触状態を検出する圧電センサを有する。歯ぎしり防止装置は、圧電センサの信号から歯ぎしりを判別する制御手段を有する。
【0003】
特許文献2には、動物が発する身体の振動を検出する振動信号センサ手段を含む生体情報検出装置が記載されている。振動信号センサ手段は、振動センサ本体と、当該振動センサ本体の上下に積層して形成される底板、クッション部材及び振動収集板のうちの少なくとも1つ以上とから構成される。当該動物と振動センサ本体とは、互いに非接触である。生体情報検出装置は、振動信号センサ手段によって検出された信号から歯ぎしりの音を分離する。より具体的には、振動信号センサ手段によって人体からの信号が検出される。そして、検出した信号の前処理を行う工程と、前処理が行われた信号をフィルタリング処理して複数の信号に分離し、呼吸振動、心拍振動、いびき及び体動信号のうち少なくとも2つの信号を得る工程とが実行される。この生体情報検出装置では、上記のいびきが、歯ぎしり、くしゃみ、寝言等の音を発生するものを含むとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-75018号公報
【特許文献2】特開2019-673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した歯ぎしり防止装置では、歯ぎしりを検出するために、装置本体が口腔内に装着される必要がある。よって、特に睡眠時において、当該装置本体が口腔内に含まれることによる被験者の負担が大きいことが懸念される。
【0006】
前述した生体情報検出装置では、人体からの信号が前処理及びフィルタリング処理を経て複数の信号に分離され、分離されたいびきの信号に、くしゃみ及び寝言等の音と共に歯ぎしりが含まれる。よって、人体から検出された信号が、歯ぎしりによるものなのか、くしゃみによるものなのか、又は寝言によるものなのかを判別できなくなる懸念がある。したがって、歯ぎしりの検出の精度の点において改善の余地がある。
【0007】
本開示は、使用者への負担を軽減しつつ、歯ぎしりを高精度に検出することができる歯ぎしり検出システム、及び歯ぎしり検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る歯ぎしり検出システムは、(1)入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の歯ぎしりを検出する歯ぎしり検出システムである。歯ぎしり検出システムは、使用者に対して非接触で、使用者の振動を示す振動情報を取得するセンサ部と、振動情報から歯ぎしりの前に生じる兆候を示す兆候情報を抽出し、振動情報及び兆候情報から歯ぎしりを検出する検出部と、を備える。
【0009】
この歯ぎしり検出システムでは、センサ部は、使用者に対して非接触で、使用者の振動を示す振動情報を取得する。よって、使用者はセンサ部と非接触な状態で歯ぎしりが検出されるので、歯ぎしりを検出しているときにおける使用者への負担を軽減することができる。また、検出部は、使用者の振動を示す振動情報と、歯ぎしりの前に生じる歯ぎしりの兆候を示す兆候情報とから歯ぎしりを検出する。振動情報には、歯ぎしりそのものの振動が含まれるので、振動情報から歯ぎしりを検出することができる。さらに、歯ぎしりの前に生じる兆候である兆候情報が振動情報に加味されて歯ぎしりが検出されるので、兆候情報を用いて振動情報の振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。したがって、使用者への負担を軽減しつつ歯ぎしりを高精度に検出することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、検出部は、振動情報から使用者の心拍を示す心拍情報を抽出してもよく、検出部は、心拍情報から歯ぎしりの前に生じる心拍数の増加を兆候情報として抽出してもよい。使用者が歯ぎしりを行う前に、使用者の心拍数が増加することがある。よって、歯ぎしりの前に生じる心拍数の増加を兆候情報として検出部が抽出する場合、心拍数の増加を用いて振動情報の振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、検出部は、振動情報から使用者の自律神経の状態を示す自律神経情報を抽出してもよく、検出部は、自律神経情報から歯ぎしりの前に生じる交感神経指標の増加を兆候情報として抽出してもよい。使用者が歯ぎしりを行う前に、使用者の交感神経が亢進することがある。この構成によれば、検出部は、歯ぎしりの前に生じる交感神経指標の増加を兆候情報として抽出するので、検出された振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、検出部は、振動情報を波形として検出してもよく、検出した波形を、予め記憶されている歯ぎしり波形と比較することによって、歯ぎしりと特定してもよい。この場合、予め検出されており、かつ、振動情報及び兆候情報から高精度に検出された歯ぎしり波形を用いて、検出した波形が歯ぎしりであるか否かを特定することができる。よって、検出された波形が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。
【0013】
本開示に係る歯ぎしり検出プログラムでは、(5)センサ部によって取得された使用者の振動を示す振動情報から歯ぎしりの前に生じる兆候を示す兆候情報を抽出するステップと、振動情報及び兆候情報から歯ぎしりを検出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0014】
この歯ぎしり検出プログラムを実行するコンピュータは、使用者の振動を示す振動情報と、歯ぎしりの前に生じる歯ぎしりの兆候を示す兆候情報とから歯ぎしりを検出する。振動情報には、歯ぎしりそのものの振動が含まれるので、振動情報から歯ぎしりを検出することができる。さらに、兆候情報が振動情報に加味されて歯ぎしりが検出されるので、兆候情報を用いて振動情報の振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。したがって、歯ぎしりを高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、使用者への負担を軽減しつつ、歯ぎしりを高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る歯ぎしり検出システムを示すブロック図である。
図2図2(a)は、センサ部が取り付けられるクッション体を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)に示されたクッション体を構成する芯材を示す斜視図である。
図3図3(a)は、歯ぎしりの模式的な波形図である。図3(b)は、寝返りの模式的な波形図である。図3(c)は、安静時の模式的な波形図である。
図4図4は、歯ぎしりの前に心拍数が増加することによって生じる兆候情報を示す波形の模式的な波形図である。
図5図5は、歯ぎしりの発生頻度の高低の基準の一例を示す模式的な図である。
図6図6は、歯ぎしり検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る歯ぎしり検出システム及び歯ぎしり検出プログラムの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
本開示に係る歯ぎしり検出システムは、使用者の歯ぎしりを検出する。「歯ぎしり」とは、歯を動的若しくは静的に摺り合わせること、又は噛みしめることを言う。歯ぎしりを行うことによって、歯が擦り減っていき割れること、及び知覚過敏又は歯周病を悪化させることが懸念される。また、歯ぎしりを行うことは、顎関節症、頭痛、又は肩こりを引き起こす要因になりうる。また、歯ぎしりによって音が生じるので、同室で寝ている人間の睡眠の質を悪化させることも生じうる。
【0019】
歯ぎしり検出システムは、入眠時刻から覚醒時刻までの使用者の歯ぎしりを検出する。歯ぎしり検出システムは、例えば、個人用又は家庭用として用いられてもよいし、試験研究用として研究所等で用いられるものであってもよい。また、歯ぎしり検出システムは、治療用として病院等で用いられるものであってもよい。「使用者」は、歯ぎしり検出システムにより歯ぎしりを検出される対象となる者を言う。使用者は、例えば、歯ぎしりによる健康リスクを抱える者、病院等で歯ぎしりの治療を含む睡眠治療を受ける者、又は自己の睡眠時における歯ぎしりの有無の検査を希望する者である。
【0020】
図1は、一実施形態に係る歯ぎしり検出システム1を示すブロック図である。歯ぎしり検出システム1は、例えば、コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、腕時計、又はウェアラブル端末等の情報端末100において実行可能とされている。歯ぎしり検出システム1は、例えば、センサ部11と、情報端末100とを備える。情報端末100は、歯ぎしり検出アプリケーション40(歯ぎしり検出プログラム)と、表示部20とを有する。
【0021】
歯ぎしり検出アプリケーション40は、例えば、情報端末100において実行されるアプリケーションプログラムである。歯ぎしり検出アプリケーション40は、情報端末100にダウンロードされるアプリケーションであって情報端末100において実行されるアプリケーションであってもよい。以下では、歯ぎしり検出アプリケーション40が情報端末100にダウンロードされたアプリケーションであって、歯ぎしり検出アプリケーション40の機能が情報端末100において実行される例について説明する。
【0022】
「情報端末」は、例えば、携帯端末である。「携帯端末」は、例えば、スマートフォンを含む携帯電話、タブレット又はノートパソコン等、携帯可能な情報端末を示している。「情報端末」は、携帯端末以外の端末であってもよく、例えば、デスクトップのパソコンであってもよい。「情報端末」は、一例として、オペレーティングシステム及びソフトウェア(アプリケーション)等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM及びRAMによって構成される主記憶部と、フラッシュメモリ等によって構成される補助記憶部と、無線通信モジュール等によって構成される通信制御部と、入力装置と、ディスプレイ等の出力装置とを備える。但し、「情報端末」の構成は、上記に限定されず適宜変更可能である。
【0023】
歯ぎしり検出アプリケーション40の各機能は、プロセッサ又は主記憶部に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、主記憶部又は補助記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。歯ぎしり検出アプリケーション40の機能の実行に必要なデータ又はデータベースは主記憶部又は補助記憶部に格納される。
【0024】
「情報端末」の各機能要素は、プロセッサ又は記憶部(例えば前述した主記憶部又は補助記憶部)に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し及び書き出しを行う。「情報端末」の処理に用いられるデータ又はデータベースは記憶部に格納される。
【0025】
歯ぎしり検出システム1は、複数のコンピュータによって実行される分散処理システムであってもよいし、クライアントサーバシステム、又はクラウドシステムであってもよい。本実施形態に係る歯ぎしり検出アプリケーション40は、例えば、メインモジュール、データ取得モジュール、検出モジュール、及び出力モジュールを含む。データ取得モジュール、検出モジュール、及び出力モジュールが実行されることによって歯ぎしり検出アプリケーション40の各機能要素が機能する。歯ぎしり検出アプリケーション40は、一例として、CD-ROM、DVD-ROM、又は半導体メモリ等の有形の記憶媒体に固定的に記録された上で提供されるものであってもよい。また、歯ぎしり検出アプリケーション40は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されるものであってもよい。
【0026】
表示部20は、例えば、歯ぎしり検出アプリケーション40によって生成された情報を情報端末100のディスプレイに表示する。表示部20は、情報端末100が備えるプロセッサ及びディスプレイによって実現される機能部である。センサ部11は、使用者の身体の情報を取得する。本実施形態では、センサ部11は、振動情報を取得する。振動情報は、使用者の振動を示す情報である。
【0027】
図2(a)は、センサ部11が取り付けられるクッション体10を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)に示されたクッション体10を構成する芯材2を示す斜視図である。図1図2(a)及び図2(b)に示されるように、センサ部11は、例えば、クッション体10に着脱可能なセンサシートである。センサ部11は、クッション体10に横たわる使用者のバイタルデータを取得する。
【0028】
例えば、センサ部11は糸状センサが刺繍されたシート状生地を有し、クッション体10に対する当該シート状生地の位置は変更可能とされている。センサ部11の糸状センサは、例えば、当該シート状生地において2次元的に広がるように刺繍によって固定されている。当該糸状センサは、一例として、圧電センサである。この場合、センサ部11の圧電センサが付与された使用者の身体の荷重から当該荷重に応じた電気信号を生成し、センサ部11は当該電気信号を前述した振動情報として取得する。振動情報として取得される電気信号を以下では「信号」と称することがある。
【0029】
センサ部11は、例えば、上記の糸状センサ(一例として圧電センサ)と、糸状センサにより生成された電気信号としての振動情報をセンサ部11の外部に出力する通信部とを有する。上記では、センサ部11が圧電センサを有する例について説明した。しかし、センサ部11のセンサの種類は、圧電センサに限られず、特に限定されない。例えば、センサ部11は、加速度センサを含んでいてもよい。
【0030】
例えば、センサ部11は、使用者の身体に載せられるクッション体10に取り付けられて用いられる。クッション体10は、平面視において長方形状を呈する。クッション体10は、長手方向D1、及び長手方向D1と直交する短手方向D2に延在する。クッション体10は、長手方向D1及び短手方向D2の双方に直交する厚さ方向D3に厚みを有する。
【0031】
クッション体10の長手方向D1の長さは、例えば、120cm以上且つ210cm以下(一例として195cm)である。クッション体10の短手方向D2の長さは、例えば、70cm以上且つ180cm以下(一例として97cm)である。クッション体10の厚さ方向D3の長さは、例えば、3cm以上且つ40cm以下(一例として9cm)である。
【0032】
本実施形態では、クッション体10は、マットレスである。クッション体10の使用者は、自らの身体をクッション体10の上に載せる。このとき、横たわった使用者の身体が延びる方向(すなわち、使用者の頭部と脚部とを結ぶ方向)は、例えば、クッション体10の長手方向D1と一致する。
【0033】
図2(b)に示されるように、クッション体10は、後述する側地3の内部に収容される芯材2を有する。本実施形態では、芯材2は、平面視において長方形状を呈する。芯材2は、例えば、内容物と、当該内容物を収容する袋体とを有する。内容物は、例えば、ウレタンフォーム、又はポリエステルである。袋体の材料は、例えば、綿、又はポリエステルである。
【0034】
芯材2は、直方体形状を呈する。芯材2は、使用者の身体が載せられる上面21と、上面21とは反対側を向く下面22とを有する。上面21は、芯材2の厚さ方向D3の一方側(図2(b)における上側)を向く面である。下面22は、芯材2の厚さ方向D3の他方側(図2(b)における下側)を向く面である。また、芯材2は、上面21と下面22とを繋ぐ複数の側面23を有する。
【0035】
図2(a)に示されるように、クッション体10は、側地3を有する。本実施形態では、側地3は、袋状であり、平面視において長方形状を呈する。側地3は、例えば、芯材2の上面21を覆う表地31と、芯材2の下面22を覆う裏地32と、表地31及び裏地32を互いに繋ぐ開閉部材33とを有する。開閉部材33は、側地3における芯材2の側面23に対向する位置に設けられている。厚さ方向D3から見た場合において、開閉部材33は、芯材2の側面23の外側に位置する。側地3は、芯材2から着脱可能とされている。「芯材から着脱可能」とは、芯材に対して側地を捲り上げること、及び、側地を捲って芯材の少なくとも一部を露出させることを含んでいる。
【0036】
開閉部材33は、一例として、いわゆるダブルスライダである。開閉部材33は、2つのスライダ34と、スライダ34のスライドによって表地31及び裏地32を開閉するエレメント35とを有してもよい。
【0037】
この場合、一方のスライダ34をエレメント35に沿って一方向(図2(a)における時計回りの方向)にスライドさせると共に、他方のスライダ34をエレメント35に沿って他方向(図2(a)における反時計回りの方向)にスライドさせることで、表地31及び裏地32を開くことができる。
【0038】
また、一方のスライダ34をエレメント35に沿って他方向にスライドさせると共に、他方のスライダ34をエレメント35に沿って一方向にスライドさせることで、表地31及び裏地32を閉じることができる。開閉部材33は、いわゆるシングルスライダであってもよい。この場合、開閉部材33は、1つのスライダ34と、エレメント35とを有する。
【0039】
センサ部11は、例えば、袋状の側地3の内部に配置されている。より具体的には、センサ部11は、芯材2と側地3との間に配置されている。センサ部11がクッション体10に取り付けられるに際し、例えば、センサ部11は、クッション体10の短手方向D2に延びるように配置される。この場合、センサ部11は、クッション体10の側地3から見て使用者の身体とは反対側に位置する。よって、クッション体10に使用者の身体が載せられたとき、センサ部11は、使用者に対して非接触となる。
【0040】
「センサ部11が使用者に対して非接触となる」とは、センサ部11が使用者の身体に対して直接接触していないことを言う。センサ部11と使用者との間にクッション体10が位置することによってセンサ部11と使用者とが間接的に接続されていることは、「センサ部11が使用者に対して非接触となる」ことに含まれる。例えば、使用者の身体とセンサ部11との間には、使用者が着用する衣類及び側地3が介在する。これにより、センサ部11は使用者の身体に対して非接触である。センサ部11は、使用者に対して非接触で振動情報を取得する。
【0041】
センサ部11は、例えば、長手方向D1における使用者の心臓と対応する位置に取り付けられる。センサ部11は、一例として、使用者の頭部が載せられる位置からクッション体10の長手方向D1に離隔した位置(図2(a)における右下側の位置)までのいずれかの位置に取り付けられる。長手方向D1におけるセンサ部11の取付位置は変更可能とされている。使用者の頭部が載せられる位置からセンサ部11が取り付けられる位置までの距離は、例えば、40cm以上且つ50cm以下(一例として50cm)であってもよい。
【0042】
歯ぎしり検出システム1は、波形記憶部50を備える。波形記憶部50は、情報端末100が備えるプロセッサ及び記憶部によって実現される機能部である。図3(a)、図3(b)及び図3(c)のそれぞれに示されるように、波形記憶部50は、歯ぎしりによる振動を波形化したときの模式的な波形(以下、「歯ぎしりの模式的な波形」と称する。)、寝返りによる振動を波形化したときの模式的な波形(以下、「寝返りの模式的な波形」と称する。)、及び安静時に生じる振動を波形化したときの模式的な波形(以下、「安静時の模式的な波形」と称する。)を記憶している。図3(a)は、歯ぎしりの模式的な波形図である。図3(b)は、寝返りの模式的な波形図である。図3(c)は、安静時の模式的な波形図である。
【0043】
歯ぎしりの模式的な波形は、例えば、歯ぎしりの振動が有する振幅、振動数及び継続時間の特徴の理論値を反映した波形である。寝返りの模式的な波形は、例えば、寝返りの振動が有する振幅、振動数及び継続時間の特徴の理論値を反映した波形である。安静時の模式的な波形は、例えば、安静時の振動が有する振幅、振動数及び継続時間の特徴の理論値を反映した波形である。上記各理論値は、例えば、使用者の年齢、性別又は体型から算出される値であってもよい。
【0044】
波形記憶部50は、歯ぎしりの前に生じる兆候を示す兆候情報の典型例を記憶している。兆候情報としては、例えば、歯ぎしりの所定時間前に使用者の心拍数が増加すること、及び歯ぎしりの前に使用者の交感神経指標が増加することが挙げられる。「心拍」は、心臓の拍動を言う。「所定時間」は、例えば、数秒、又は直前である。波形記憶部50は、歯ぎしりの前に心拍数が増加することによって生じる兆候情報を示す波形の模式的な波形を記憶している。図4は、歯ぎしりの前に心拍数が増加することによって生じる兆候情報を示す波形の模式的な波形図である。図4に示されるように、歯ぎしりによって生じる波形の直前に、心拍数が増加することによって生じる波形を確認することができる。
【0045】
波形記憶部50は、歯ぎしり波形を予め記憶している。波形記憶部50は、例えば、後述する歯ぎしり判定部44によって出力される歯ぎしり波形を記憶している。「歯ぎしりの模式的な波形」が歯ぎしりの振動が有する特徴の理論値を反映した波形であるのに対し、「歯ぎしり波形」は、実際に検出された使用者の過去の歯ぎしりの波形である。波形記憶部50は、例えば、検出した使用者の過去の歯ぎしりの波形の数と同一の数の歯ぎしり波形のデータを有する。歯ぎしり波形には、使用者と異なる人間の過去の歯ぎしりの波形が含まれていてもよい。その場合、波形記憶部50は、検出した使用者の過去の歯ぎしりの波形の数よりも多い数の歯ぎしり波形のデータを有する。
【0046】
歯ぎしり検出アプリケーション40は、例えば、振動情報から使用者の入眠時刻及び覚醒時刻を取得する。入眠時刻とは、使用者が入眠した時刻を言う。覚醒時刻とは、使用者が覚醒した時刻を言う。歯ぎしり検出アプリケーション40は、例えば、センサ部11によって取得された体動情報、及びセンサ部11の加速度センサによって検知された寝具の動きから入眠時刻を判定して入眠時刻の取得を行ってもよい。覚醒時刻の取得も同様である。上記の例とは異なり、使用者が情報端末100で歯ぎしり検出アプリケーション40を操作して、使用者の操作によって入眠時刻及び覚醒時刻の取得が行われてもよい。
【0047】
歯ぎしり検出アプリケーション40は、振動情報及び兆候情報から使用者の歯ぎしりを検出する検出部41を備える。検出部41は、振動情報を波形として検出する波形検出部42と、兆候情報を抽出する兆候情報抽出部43と、検出された波形が歯ぎしりによる波形であるか否かを判定する歯ぎしり判定部44とを有する。
【0048】
検出部41は、振動情報から使用者の自律神経の状態を示す情報である自律神経情報を抽出する。例えば、検出部41は、振動情報から心拍情報を抽出する。そして、検出部41は、抽出した心拍情報を解析することで、使用者の心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)を取得する。検出部41は、取得した使用者の心拍変動から自律神経情報を取得する。例えば、自律神経情報は、心拍変動に含まれる周期性成分を示す情報を含む。検出部41は、心拍変動の周期性成分を周波数解析し、各周波数のパワースペクトルを示す情報を取得する。
【0049】
上記の周波数解析の結果として得られる自律神経のパワースペクトルは、低周波数帯(一例として0.04Hz~0.15Hz)におけるパワースペクトルの積分値であるLF(Low Frequency)成分と、高周波数帯(一例として0.15Hz~0.4Hz)におけるパワースペクトルの積分値であるHF(High Frequency)成分とに分けられる。LF成分は交感神経活動及び副交感神経活動を反映しており、HF成分は副交感神経活動を反映している。
【0050】
検出部41は、交感神経指標を示す情報、及び副交感神経指標を示す情報を自律神経情報として取得する。交感神経指標は、交感神経の優位性を示す指標である。交感神経指標は、一例として、LF成分の値をHF成分の値で除した値である。副交感神経指標は、副交感神経の優位性を示す指標である。副交感神経指標は、一例として、HF成分の値をLF成分及びHF成分の和で除した値である。
【0051】
波形検出部42は、センサ部11の圧電センサに使用者から付与された荷重の変化を示す信号を波形化することで、振動情報を波形として検出する。波形検出部42は、検出した波形の振幅と、歯ぎしりの模式的な波形の振幅との差が所定の閾値以下である場合に、当該検出した波形を候補波形として抽出する。例えば、シート型センサで測定される歯ぎしりの波形の振幅は、シート型センサで測定される安静時の呼吸及び心拍による波形の振幅よりも大きく、且つシート型センサで測定される寝返り及び体動による波形の振幅よりも小さい。波形検出部42は、シート型センサで測定された波形の振幅が安静時の波形の振幅より大きく且つ寝返りの波形の振幅より小さいときに、シート型センサで測定された波形を候補波形として抽出してもよい。
【0052】
波形検出部42は、検出した波形の振幅と、歯ぎしりの模式的な波形の振幅とを比較すること以外によって、候補波形を抽出してもよい。波形検出部42は、例えば、検出した波形の振幅の他に、波形の振動数、及び波形の継続時間に基づいて候補波形を抽出してもよい。例えば、シート型センサで測定される歯ぎしりは2Hz以上且つ4Hz以下の周期的な振動が2秒以上継続する現象である。よって、波形検出部42は、2秒以上継続する波形を検出する。波形検出部42は、当該波形の振動数、及び振幅の大きさを検出する。波形検出部42は、当該波形の振幅と、歯ぎしりの模式的な波形の振幅との差が閾値以下であること、当該波形の振動数と、歯ぎしりの模式的な波形の振動数との差が閾値以下であること、及び当該波形の継続時間が2秒以上であることを用いて、当該波形を候補波形として抽出してもよい。
【0053】
波形検出部42は、検出した波形が波形記憶部50に記憶されている寝返りの模式的な波形の特徴、及び安静時の模式的な波形の特徴を有していないことを更に検出してもよい。この場合、寝返りの波形、及び安静時の波形が歯ぎしりの波形と混同されることを抑制できる。
【0054】
兆候情報抽出部43は、心拍情報から兆候情報を抽出する心拍兆候抽出部431と、自律神経情報から兆候情報を抽出する自律神経兆候抽出部432とを有する。使用者が歯ぎしりをする前に、使用者の心拍数が増加することがある。心拍兆候抽出部431は、心拍情報から歯ぎしりの前に生じる心拍数の増加を兆候情報として抽出する。より具体的には、心拍兆候抽出部431は、心拍情報から候補波形の所定時間前に使用者の心拍数が増加していることを兆候情報として抽出する。
【0055】
使用者が歯ぎしりをする前に、使用者の交感神経が亢進することがある。自律神経兆候抽出部432は、自律神経情報から歯ぎしりの前に生じる交換神経指標の増加を兆候情報として抽出する。より具体的には、自律神経兆候抽出部432は、自律神経情報から候補波形の所定時間前に使用者の交感神経指標が増加していることを兆候情報として抽出する。
【0056】
歯ぎしり判定部44は、兆候情報が抽出されたことに基づいて、候補波形が歯ぎしりによる波形であると特定する。また、歯ぎしり判定部44は、兆候情報が抽出されていない場合には、波形記憶部50を参照し、予め記憶されている歯ぎしり波形と候補波形とを比較することによって、候補波形が歯ぎしりによる波形であると特定してもよい。歯ぎしり判定部44は、候補波形が歯ぎしりによる波形であると特定した場合には、当該候補波形を新たな歯ぎしり波形として波形記憶部50に出力する。波形記憶部50は、出力された新たな歯ぎしり波形を、過去の歯ぎしり波形として記憶する。
【0057】
歯ぎしり判定部44は、例えば、歯ぎしりの発生頻度の高低を判定する。図5は、歯ぎしりの発生頻度の高低の基準の一例を示す模式的な図である。図5に示される「高」、「中」及び「低」の文字は、歯ぎしりの発生頻度の高低を示している。図5に示される二次元のグラフにおいて、横軸は最大検出回数を示している。最大検出回数は、使用者が睡眠している時間帯を所定の間隔で区切ることによって区間を生成したときに、1つの区間あたりで検出された歯ぎしりの最大の回数である。
【0058】
上記の「1つの区間」は、睡眠時間を一定の時間間隔で区切った単位時間であり、一例として1時間である。この場合、例えば使用者の睡眠時間が午後10時から翌朝の午前6時までであったときに「1つの区間」は、午後10時から午後11時、午後11時から午前0時、午前0時から午前1時・・・午前5時から午前6時である。例えば、歯ぎしりであると特定した波形の継続時間が2秒以上であることによって、1回の歯ぎしりが生じたと検出される。図5に示されるグラフにおいて、縦軸は平均検出回数を示している。平均検出回数は、1つの区間あたりで検出された歯ぎしりの平均の回数である。
【0059】
また、「X1」、「X2」、「X3」、「Y1」、「Y2」及び「Y3」は、所定の自然数である。一例として、X1は5であり、X2は10であり、X3は15である。一例として、Y1は2であり、Y2は4であり、Y3は6である。X1~X3、及びY1~Y3の値は、変更可能な値であってもよい。歯ぎしり判定部44は、歯ぎしりの発生頻度の高低を、歯ぎしり検出システム1が備える表示部20に出力する。
【0060】
続いて、本実施形態に係る歯ぎしり検出システム1の動作の一例について説明する。図6は、歯ぎしり検出システム1の動作の一例を示すフローチャートである。歯ぎしり検出システム1を動作させる前に、まず、クッション体10にセンサ部11を取り付ける。クッション体10に使用者の身体が載せられたときにセンサ部11が使用者に対して非接触となるように、センサ部11をクッション体10に取り付ける。例えば、センサ部11を芯材2及び側地3の間に配置する。次に、センサ部11が取り付けられたクッション体10に使用者の身体を横たえる。使用者の身体は、例えば、側地3の表地31に接するようにクッション体10に載せられる。
【0061】
続いて、使用者が生じる振動から、センサ部11が心拍情報及び自律神経情報を含む振動情報を取得する(工程S1)。工程S1では、センサ部11が使用者の振動を示す振動情報を取得する。センサ部11は、例えば、圧電センサに使用者から付与された荷重の変化を示す信号をセンサ部11の外部に出力する。検出部41は、センサ部11によって出力された信号を受信する。検出部41は、信号として受信された振動情報から心拍情報及び自律神経情報を抽出する。
【0062】
続いて、波形検出部42は、センサ部11から出力された上記信号を波形化することで、振動情報を波形として検出する(工程S2)。
【0063】
続いて、波形検出部42は、検出した波形に候補波形が含まれている否かを判定する(工程S3)。工程S3では、波形検出部42は、検出した波形が歯ぎしりの模式的な波形の特徴を含んでいること、並びに、検出した波形が寝返りの模式的な波形の特徴及び安静時の模式的な波形の特徴を含んでいないことを確認することによって、候補波形を抽出する。
【0064】
続いて、波形検出部42が検出した波形に候補波形が含まれていると判定した場合(S3:YES)、兆候情報抽出部43は、振動情報から兆候情報を抽出する(工程S4)。工程S4では、心拍兆候抽出部431が、候補波形が検出された時点の直前の心拍情報から兆候情報を抽出する。また、自律神経兆候抽出部432が、候補波形が検出された時点の直前の自律神経情報から兆候情報を抽出する。
【0065】
続いて、歯ぎしり判定部44は、兆候情報が振動情報に含まれている否かを判定する(工程S5)。工程S5では、歯ぎしり判定部44が、心拍兆候抽出部431によって心拍情報から兆候情報が抽出されているか否か、及び自律神経兆候抽出部432によって自律神経情報から兆候情報が抽出されているか否かの双方を判定する。
【0066】
続いて、歯ぎしり判定部44が、兆候情報が含まれていないと判定した場合(S5:NO)、歯ぎしり判定部44は、候補波形を予め記憶されている過去の歯ぎしり波形と比較する(工程S6)。工程S6では、歯ぎしり判定部44は、候補波形が予め記憶されている過去の歯ぎしり波形の特徴を有するか否かを判定する。
【0067】
そして、兆候情報が含まれていると歯ぎしり判定部44が判定した場合(S5:YES)、歯ぎしり判定部44は候補波形が歯ぎしりによる波形であると特定する(工程S7)。以上のように、検出部41は、振動情報及び兆候情報から歯ぎしりを検出する。
【0068】
また、候補波形が予め記憶されている過去の歯ぎしり波形の特徴を有すると歯ぎしり判定部44が判定した場合(S6:YES)、歯ぎしり判定部44は候補波形が歯ぎしりによる波形であると特定する(工程S7)。
【0069】
続いて、歯ぎしり判定部44は、特定した歯ぎしり波形を出力する(工程S8)。工程S8では、歯ぎしり判定部44は、波形記憶部50に候補波形を新たな歯ぎしり波形として出力する。
【0070】
続いて、歯ぎしり判定部44は、歯ぎしりの検出回数を1回増やす(工程S9)。工程S9では、歯ぎしり判定部44は、候補波形が検出された時刻に紐付けて検出した回数を1回増やす。例えば、午前3時から午前4時まで(一つの区間)に、候補波形が検出されて当該候補波形が歯ぎしりによる波形であると特定された場合には、午前3時から午前4時までという一つの区間においては歯ぎしりの回数を1加算する。
【0071】
上記のように、使用者の睡眠中に、歯ぎしり判定部44は、検出回数を数える。歯ぎしり判定部44は、使用者が覚醒したときに、加算された一つの区間ごとの歯ぎしりの回数から、歯ぎしりの回数の平均検出回数及び最大検出回数を算出する。そして、歯ぎしり判定部44は、算出した平均検出回数及び最大検出回数を表示部20に出力する。表示部20は、歯ぎしり判定部44から出力された平均検出回数及び最大検出回数に基づいて、図5に示される二次元のグラフを表示する。表示部20は、図5に示される二次元のグラフに、使用者の最大検出回数及び平均検出回数に対応する点をプロットすることによって、使用者の歯ぎしりの発生頻度を表示する。
【0072】
また、候補波形が振動情報に含まれていないと波形検出部42が判定した場合(S3:NO)、又は候補波形が予め記憶されている過去の歯ぎしり波形の特徴を有しないと歯ぎしり判定部44が判定した場合(S6:NO)、歯ぎしり判定部44は検出した波形には歯ぎしりが含まれていないと特定する(工程S10)。
【0073】
以上、本実施形態に係る歯ぎしり検出システム1の動作の一例について説明した。しかしながら、歯ぎしり検出システム1の動作の各工程の内容及び順序は、前述の例に限られず、適宜変更可能である。
【0074】
続いて、本実施形態に係る歯ぎしり検出システム1の作用効果について説明する。この歯ぎしり検出システム1では、この歯ぎしり検出システム1では、センサ部11は、使用者に対して非接触で、使用者の振動を示す振動情報を取得する。よって、使用者はセンサ部11と非接触な状態で歯ぎしりが検出されるので、歯ぎしりを検出しているときにおける使用者への負担を軽減することができる。また、検出部41は、使用者の振動を示す振動情報と、歯ぎしりの前に生じる歯ぎしりの兆候を示す兆候情報とから歯ぎしりを検出する。振動情報には、歯ぎしりそのものの振動が含まれるので、振動情報から歯ぎしりを検出することができる。さらに、歯ぎしりの前に生じる兆候である兆候情報が振動情報に加味されて歯ぎしりが検出されるので、兆候情報を用いて振動情報の振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。したがって、使用者への負担を軽減しつつ歯ぎしりを高精度に検出することができる。
【0075】
一般に、歯ぎしりを測定する手段として、日常的に用いることができるものが少ない。歯ぎしり検出システム1は、非接触で歯ぎしり特有の振動を検知することによって歯ぎしりの有無及び頻度を日常的に測定することができる。
【0076】
歯ぎしり検出アプリケーション40を実行するコンピュータは、使用者の振動を示す振動情報と、歯ぎしりの前に生じる歯ぎしりの兆候を示す兆候情報とから歯ぎしりを検出する。振動情報には、歯ぎしりそのものの振動が含まれるので、振動情報から歯ぎしりを検出することができる。さらに、兆候情報が振動情報に加味されて歯ぎしりが検出されるので、兆候情報を用いて振動情報の振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。したがって、歯ぎしりを高精度に検出することができる。
【0077】
検出部41は、振動情報から使用者の心拍を示す心拍情報を抽出し、検出部41が有する心拍兆候抽出部431は、心拍情報から歯ぎしりの前に生じる心拍数の増加を兆候情報として抽出する。使用者が歯ぎしりを行う前に、使用者の心拍数が増加することがある。よって、歯ぎしりの前に生じる心拍数の増加を兆候情報として心拍兆候抽出部431が抽出する場合、心拍数の増加を用いて振動情報の振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。
【0078】
検出部41は、振動情報から使用者の自律神経の状態を示す自律神経情報を抽出し、検出部41が有する自律神経兆候抽出部432は、自律神経情報から歯ぎしりの前に生じる交感神経指標の増加を兆候情報として抽出する。使用者が歯ぎしりを行う前に、使用者の交感神経が亢進することがある。この構成によれば、自律神経兆候抽出部432は、歯ぎしりの前に生じる交感神経指標の増加を兆候情報として抽出するので、検出された振動が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。
【0079】
検出部41が有する波形検出部42は、振動情報を波形として検出し、歯ぎしり判定部44は、検出した波形を、予め記憶されている歯ぎしり波形と比較することによって、歯ぎしりと特定する。この場合、予め検出されており、かつ、振動情報及び兆候情報から高精度に検出された歯ぎしり波形を用いて、検出した波形が歯ぎしりであるか否かを特定する。よって、検出された波形が歯ぎしりによるものであることの確実性を向上させることができる。
【0080】
以上、本開示に係る歯ぎしり検出システムの実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。
【0081】
歯ぎしり検出システム1は、検出した睡眠時の歯ぎしりに関する結果を分析する機能部を更に備えてもよい。当該機能部は、睡眠時の歯ぎしりが客観的に測定された結果を用いて、使用者がマウスピースを睡眠時に装着する必要性を助言してもよく、また、治療の効果を判定してもよい。当該機能部は、使用者に適した日中の行動の対策をすることをしてもよい。当該機能部は、測定された結果を用いて治療方法等のソリューションを提供してもよい。
【0082】
歯ぎしり検出システム1は、歯ぎしりを検出したことに応じて使用者が寝ているときの姿勢を変化させる構成を更に備えてもよい。この場合、使用者の顎にかかる負担を軽減する対策が可能となる。
【0083】
歯ぎしり検出システム1は、使用者の睡眠状態の判定を行う機能部を更に備えてもよい。この場合、使用者の睡眠状態の判定を行うことで、歯ぎしりが発生する頻度が高い時間帯及び睡眠段階を特定することができる。これにより、歯ぎしりが生じたことと、睡眠の質が低下したこととの関連性をより詳細に分析できる。
【0084】
歯ぎしり検出システム1の動作において、工程S8及び工程S9が実行される順番は逆でもよく、また、工程S8及び工程S9は同時に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…歯ぎしり検出システム、2…芯材、3…側地、10…クッション体、11…センサ部、20…表示部、21…上面、22…下面、23…側面、31…表地、32…裏地、33…開閉部材、34…スライダ、35…エレメント、40…歯ぎしり検出アプリケーション、41…検出部、42…波形検出部、43…兆候情報抽出部、44…歯ぎしり判定部、50…波形記憶部、431…心拍兆候抽出部、432…自律神経兆候抽出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6