(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135858
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/68 20060101AFI20240927BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65H3/68
B65H3/52 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046746
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 一俊
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石黒 誠
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC22
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JD33
3F343JD39
3F343KA13
3F343KB05
3F343KB13
3F343LA04
3F343LC02
3F343LC12
3F343LC15
3F343MB04
3F343MB14
3F343MC04
(57)【要約】
【課題】分離ローラーユニット51の交換の際に案内部55の位置がズレやすい問題がある。
【解決手段】本媒体搬送装置7は、分離ローラーユニット51と、分離ローラーユニット51が着脱可能に設けられるユニット収容部71とを備え、分離ローラーユニット51は、媒体3を給送する給送ローラー52に接触し且つ軸56周りに回転可能に設けられる分離ローラー54と、分離ローラー54を保持し、給送ローラー52に向けて媒体3を案内する案内部55を有するローラーホルダー53とを備え、ユニット収容部71は、案内部55の位置を軸56の軸方向と交差する方向に調整する調整部72が設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離ローラーユニットと、
前記分離ローラーユニットが着脱可能に設けられるユニット収容部と、を備え、
前記分離ローラーユニットは、
媒体を給送する給送ローラーに接触し且つ軸の周りに回転可能に設けられる分離ローラーと、
前記分離ローラーを保持し、前記給送ローラーに向けて前記媒体を案内する案内部を有するローラーホルダーと、を備え、
前記ユニット収容部は、前記案内部の位置を前記軸の軸方向と交差する方向に調整する調整部が設けられている、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記調整部は、
前記分離ローラーユニットが前記ユニット収容部に取り付けられた状態における前記ユニット収容部の前記ローラーホルダーが載置される位置となる被載置面と、
前記被載置面に配置され前記案内部の位置を調整するためのスペーサと、備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記調整部は、動力源の動力により前記案内部の位置を調整する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記調整部は、
前記案内部を少なくとも2つの位置に調整可能とするカム部材を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の媒体搬送装置において、
前記分離ローラーユニットは、前記分離ローラーを前記給送ローラーに向かって弾性的に押す第1押し部材を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の媒体搬送装置において、
前記第1押し部材は、前記軸方向に沿って設けられるネジリコイルバネであって、
前記ネジリコイルバネの一端部は、前記分離ローラーユニットの外部に露出しており、
前記分離ローラーユニットは、前記一端部を保持する保持部を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の媒体搬送装置において、
前記分離ローラーユニットは、
前記ユニット収容部に設けられる第1被係止部と係止する第1係止部であって、前記軸方向において前記分離ローラーユニットにおける両端部に設けられる前記第1係止部を備え、
前記第1係止部が前記第1被係止部から離間することで着脱可能となる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体搬送装置において、
前記分離ローラーユニットは、前記ユニット収容部に設けられる第2被係止部と係止し、前記ユニット収容部に対して位置決めするための第2係止部を備え、
前記第2係止部と前記第2被係止部とが係止する位置は、前記媒体の搬送方向において、前記第1係止部と前記第1被係止部とが係止する位置且つ前記軸よりも上流に位置する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記調整部は、
前記ユニット収容部に設けられ、前記分離ローラーユニットを前記給送ローラーに向かって弾性的に押す第2押し部材と、
前記ユニット収容部に設けられ、前記第2押し部材で押される前記分離ローラーユニットを所定位置に止めて位置決めする位置決め部と、を備え、
前記分離ローラーユニットは、前記第2押し部材と前記位置決め部によって前記軸の軸方向と交差する方向において変位可能であり、
前記給送ローラーは、前記軸方向に沿って回転軸から着脱可能であり、
前記案内部は、前記軸の軸方向と交差する方向において、前記給送ローラーとオーバーラップする、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の媒体搬送装置において、
前記分離ローラーユニットは、前記給送ローラーと前記分離ローラーのニップ位置における前記媒体の搬送方向に沿って着脱可能である、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項11】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置から搬送される媒体に対して記録する記録部と、を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例として、特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、リタードローラー52と給送ローラー46との接触部であるニップ部に向けて用紙を案内する案内部としてのガイドプレート142を備える給送ユニット50が開示されている。また、ガイドプレート142は位置の変更が可能である。
リタードローラー52が取り付けられる第2ホルダー114が、ガイドプレート142が設けられる給送ユニット50から着脱可能であるため、リタードローラー52の交換後にガイドプレート142の取り付け位置を別途、調整する作業が不要となる旨が開示されている(段落0076)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、分離ローラーユニットの交換はユーザーが行うことが多いが、上記従来の構成では案内部としてのガイドプレート142が給送ユニット50に設けられるため、交換の際に案内部の位置がズレやすい問題がある。その結果として、搬送不良が生じる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る媒体搬送装置は、分離ローラーユニットと、前記分離ローラーユニットが着脱可能に設けられるユニット収容部と、を備え、前記分離ローラーユニットは、媒体を給送する給送ローラーに接触し且つ軸周りに回転可能に設けられる分離ローラーと、前記分離ローラーを保持し、前記給送ローラーに向けて前記媒体を案内する案内部を有するローラーホルダーと、を備え、前記ユニット収容部は、前記案内部の位置を前記軸の軸方向と交差する方向に調整する調整部が設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る記録装置は、後述する第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に記載の媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置から搬送される媒体に対して記録する記録部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】同実施形態1の記録装置の内部概略構成を表す図。
【
図3】同実施形態1の媒体搬送装置を示す要部斜視図。
【
図4】同実施形態1の媒体搬送装置を示す要部側断面図。
【
図5】同実施形態1の分離ローラーユニットを示す斜視図と一部拡大図。
【
図6】同実施形態1の分離ローラーアセンブリを示す斜視図。
【
図7】同実施形態1のユニット収容部を示す平面図。
【
図8】同実施形態1の分離ローラーユニットの一部を断面にした斜視図。
【
図9】同実施形態1の分離ローラーユニットの一部を断面にした斜視図。
【
図10】同実施形態1の分離ローラーユニットの一部を断面にした斜視図。
【
図11】同実施形態1の分離ローラーユニットの側断面図。
【
図12】実施形態2に係る調整部を示す要部断面図。
【
図13】実施形態3に係る調整部の一部を断面にした斜視図。
【
図14】実施形態3に係る分離ローラーユニットの要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について先ず概略的に説明する。
上記課題を解決するため、本発明に係る媒体搬送装置の第1の態様は、分離ローラーユニットと、前記分離ローラーユニットが着脱可能に設けられるユニット収容部と、を備え、前記分離ローラーユニットは、媒体を給送する給送ローラーに接触し且つ軸周りに回転可能に設けられる分離ローラーと、前記分離ローラーを保持し、前記給送ローラーに向けて前記媒体を案内する案内部を有するローラーホルダーと、を備え、前記ユニット収容部は、前記案内部の位置を前記軸の軸方向と交差する方向に調整する調整部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記調整部が、前記分離ローラーユニットに設けられるのではなく、前記ユニット収容部に設けられ、前記案内部の位置を前記軸の軸方向と交差する方向に調整するように構成されている。これにより、前記調整部が前記ユニット収容部に設けられていることで、前記分離ローラーの交換の際に、前記案内部の位置がずれる虞を低減することができる。その結果として、前記媒体の搬送不良が生じる問題を抑制することができる。
【0010】
本発明に係る媒体搬送装置の第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記調整部は、前記分離ローラーユニットが前記ユニット収容部に取り付けられた状態における前記ユニット収容部の前記ローラーホルダーが載置される位置となる被載置面と、前記被載置面に配置され前記案内部の位置を調整するためのスペーサと、備えることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記調整部は、前記ユニット収容部に設けられている前記被載置面と前記スペーサで構成されている。これにより、前記スペーサを変えるだけで前記案内部の位置を調整することが可能である。従って、簡単な構成で、前記案内部の微小な位置調整を行うことが可能である。
【0012】
本発明に係る媒体搬送装置の第3の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記調整部は、動力源の動力により前記案内部の位置を調整することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記調整部は、動力源の動力により前記案内部の位置を調整する。このように、前記駆動源により前記案内部の位置を調整可能とすることにより、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
また、前記媒体の種類毎に前記案内部の位置を変更することが可能になるので、前記媒体搬送装置が対応可能な媒体の種類を増やすことが可能になる。また、前記分離ローラーの交換の際毎に前記案内部の位置を自動で調整することが可能となる。
【0014】
本発明に係る媒体搬送装置の第4の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記調整部は、前記案内部を少なくとも2つの位置に調整可能とするカム部材を備えることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記調整部は、前記案内部を少なくとも2つの位置に調整可能とするカム部材を備える。これにより、前記カム部材という簡易な構成で前記案内部の位置を調整することができる。
【0016】
本発明に係る媒体搬送装置の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、前記分離ローラーユニットは、前記分離ローラーを前記給送ローラーに向かって弾性的に押す第1押し部材を備えることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記分離ローラーユニットは、前記分離ローラーを前記給送ローラーに向かって弾性的に押す第1押し部材を備える。これにより、前記第1押し部材が前記分離ローラーユニットに組み込まれているので、メンテナンス性が向上する。具体的には、典型的な不良であるバネ等の前記押し部材のへたりや変形に対する対応や、想定していない種類の媒体を使用したいユーザーへの対応としての弾性力の増減等の調整を、容易に取ることができる。
【0018】
本発明に係る媒体搬送装置の第6の態様は、第5の態様に従属する態様であって、前記押し部材は、前記軸方向に沿って設けられるネジリコイルバネであって、前記ネジリコイルバネの一端部は、前記分離ローラーユニットの外部に露出しており、前記分離ローラーユニットは、前記一端部を保持する保持部を備えることを特徴とする。
ここで、「保持部」とは、前記ネジリコイルバネの一端部が、前記分離ローラーユニットの外部に前記露呈されていることで外部からの力が作用しても不用意に移動しない状態を保つように保持する構造部を意味する。
【0019】
本態様によれば、前記ネジリコイルバネは前記軸方向に沿って設けられるので、前記軸と交差する方向に設けられる構成と比較して、前記分離ローラーユニットの高さ方向の寸法を小型化することができる。
また、前記ネジリコイルバネの一端部は、前記分離ローラーユニットの外部に露出しているが、前記分離ローラーユニットは、前記一端部を保持する保持部を備える。これにより、ユーザーが触らないように前記ネジリコイルバネの一端部を覆う部材を設けることで部品点数が増える虞や、前記分離ローラーユニットの交換の際やジャム解除の際等に前記分離ローラーユニットにユーザーが触れた際に前記一端部が外れる虞を低減することができる。
【0020】
本発明に係る媒体搬送装置の第7の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、前記分離ローラーユニットは、前記ユニット収容部に設けられる第1被係止部と係止する第1係止部であって、前記軸方向において前記分離ローラーユニットにおける両端部に設けられる前記第1係止部を備え、前記第1係止部が前記第1被係止部から離間することで着脱可能となることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記分離ローラーユニットは、前記第1係止部が前記ユニット収容部に設けられる前記第1被係止部から離間することで着脱可能となる。即ち、スナップフィット構造のような前記第1係止部と前記第1被係止部の係止構造とすることで、前記分離ローラーユニットの交換を容易に行うことができる。
【0022】
本発明に係る媒体搬送装置の第8の態様は、第7の態様に従属する態様であって、前記分離ローラーユニットは、前記ユニット収容部に設けられる第2被係止部と係止し、前記ユニット収容部に対して位置決めするための第2係止部を備え、前記第2係止部と前記第2被係止部とが係止する位置は、前記媒体の搬送方向において、前記第1係止部と前記第1被係止部とが係止する位置且つ前記軸よりも上流に位置することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記分離ローラーユニットは、前記ユニット収容部に設けられる第2被係止部と係止し、前記ユニット収容部に対して位置決めするための第2係止部を備える。これにより、前記第1係止部に加えて前記第2係止部を備えるので、前記分離ローラーユニットの装着時の姿勢が安定する。
また、前記第2係止部と前記第2被係止部とが係止する位置は、前記媒体の搬送方向において、前記第1係止部と前記第1被係止部とが係止する位置よりも上流に位置する。これにより、前記分離ローラーユニットを前記搬送方向から入れる際に、前記分離ローラーユニットを位置決めされた位置に正確に嵌めやすい。ここで、前記第2係止部と前記第2被係止部との係止構造として、位置決め穴にボスを落とす構造にすると角度変化が少なく、装着後のガタツキを減らすことができる。
【0024】
本発明に係る媒体搬送装置の第9の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記調整部は、前記ユニット収容部に設けられ、前記分離ローラーユニットを前記給送ローラーに向かって弾性的に押す第2押し部材と、前記ユニット収容部に設けられ、前記第2押し部材で押される前記分離ローラーユニットを所定位置に止めて位置決めする位置決め部と、を備え、前記分離ローラーユニットは、前記第2押し部材と前記位置決め部によって前記軸の軸方向と交差する方向において変位可能であり、前記給送ローラーは、前記軸方向に沿って回転軸から着脱可能であり、前記案内部は、前記軸の軸方向と交差する方向において、前記給送ローラーとオーバーラップすることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、前記調整部は、前記ユニット収容部に設けられる前記第2押し部材と、同じく前記ユニット収容部に設けられる前記位置決め部とを備えて構成されている。これにより、前記調整部を簡単な構造で実現することができる。
また、前記案内部は、前記軸の軸方向と交差する方向において、前記給送ローラーとオーバーラップするように配置されている。これにより、前記給送ローラーと前記分離ローラーによる分離性能が向上する。
一方で、前記分離ローラーの交換性を考慮すると、前記オーバーラップする構造の場合は前記給送ローラーと前記案内部が干渉する位置関係になるのでその交換性が悪化する。しかし本態様によれば、前記案内部が変位可能である、即ち退避可能であるので、前記交換の際に前記給送ローラーが前記案内部と干渉することを抑制でき、以って交換性の低下を抑制できる。
【0026】
本発明に係る媒体搬送装置の第10の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、前記分離ローラーユニットは、前記給送ローラーと前記分離ローラーのニップ位置における前記媒体の搬送方向に沿って着脱可能であることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、前記分離ローラーユニットは、前記給送ローラーと前記分離ローラーのニップ位置における前記媒体の搬送方向に沿って着脱可能に構成されている。これにより、前記分離ローラーユニットを交換するために必要なスペースを少なくすることができ、結果として装置を小型化できる。
【0028】
また、本発明に係る記録装置の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様の媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置から搬送される媒体に対して記録する記録部と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、記録装置として、前記媒体搬送装置における各態様の効果を得ることができる。
【0029】
[実施形態]
以下、本発明に係る媒体搬送装置の実施形態と、この媒体搬送装置を備えるインクジェットプリンター等の記録装置について、図面に基づいて具体的に説明する。
以下の説明においては、互いに直交する3つの軸を、各図に示すように、それぞれX軸、Y軸、Z軸とする。3つの軸(X,Y,Z)の矢印の示す方向が各方向の+方向であり、その逆が-方向である。Z軸方向は鉛直方向即ち重力が作用する方向に相当し、+Z方向が鉛直上方を示し、-Z方向が鉛直下方を示す。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に相当する。+Y方向が装置の前方向を示し、-Y方向が装置の後方向を示す。+X方向が装置の右方向を示し、-X方向が装置の左方向を示す。
【0030】
[実施形態1]
<記録装置>
本実施形態の記録装置1は、一例であるがインクジェットプリンターである。
図1と
図2に示したように、この記録装置1は、載置トレイ50に載置される媒体3を搬送する媒体搬送装置7と、媒体搬送装置7により搬送される用紙等の媒体3に対して記録を行う記録部5と、媒体収容部11とを備える。記録部5の媒体3への記録実行動作や媒体搬送装置7による媒体3の搬送動作は、図示を省く制御部によって行われる。ここで、制御部は、CPU、フラッシュROM、及びRAMを備えている。CPUはフラッシュROMに格納されたプログラムに従って各種演算処理を行い、記録装置1全体の動作を制御する。記憶手段の一例であるフラッシュROMは読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリである。記憶手段の一例であるRAMには、一時的に各種情報が格納される。
記録部5は、ここではラインヘッドであるが、媒体3の幅方向(Y軸方向)に往復移動するシリアルタイプのヘッド等でもよい。記録部5の記録実行領域8で媒体3を支持するプラテンは、ここでは無端の搬送ベルト2である。搬送ベルト2はプーリー4とプーリー6間に掛け回されて、両プーリー4,6が回転することで搬送ベルト2が回動し、これにより媒体3を搬送方向Fに搬送する。搬送ベルト2は媒体3が搬送される搬送経路9の一部を成している。
【0031】
この記録装置1は、
図1と
図2に示したように、装置本体34の一部を成す扉部17が設けられている。扉部17は、水平方向に回動して開閉する構造である。扉部17は、
図1と
図2において、-Y方向の端部の位置に図示を省く回動軸を有しており、この回動軸を回動支点として回動する。
扉部17を開くと、搬送経路9が露呈してユーザーが媒体3の詰り、即ちジャムの処理を行えるように構成されている。
【0032】
この記録装置1では、用紙等の媒体3を収容するカセット式の媒体収容部11からピックローラー10でピックされた媒体3は、給送ローラー対13によって第1搬送経路91を搬送方向Fに搬送される。尚、以下では、「ローラー対」とは、特に説明しない限り図示を省くモーターによって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成される。
また、第1搬送経路91の給送ローラー対13の下流位置には第2搬送経路92が合流されている。第1搬送経路91と第2搬送経路92の合流地点Pより記録部5側に位置する搬送経路9を、ここでは第3搬送経路93として、以下説明する。
【0033】
合流地点Pには切替部19が配置されている。切替部19は、第1搬送経路91を開く第1状態と、第2搬送経路92を開く第2状態とに変位可能に構成されている。即ち、媒体3が第1搬送経路91を搬送方向Fに搬送される場合は、その搬送を可能にする位置をとり、媒体3が第2搬送経路92を搬送方向Fに搬送される場合は、その搬送を可能にする位置をとるように構成されている。
本実施形態では、切替部19は、扉部17が閉状態であるときに、前記第1状態と第2状態とに変位可能に構成されている。
【0034】
また、合流地点Pと記録部5の間に搬送ローラー対15が配置されている。媒体3は、第3搬送経路93を搬送ローラー対15により搬送方向Fに搬送される。媒体3の表面だけへの片面記録の場合は、媒体3は、記録実行領域8で表面への記録が実行され、搬送ローラー対12,14の搬送力を受けて排出トレイ16に排出される。
両面記録の場合は、媒体3は、搬送ローラー対12の下流位置でフラップ18によってスイッチバック経路20に誘導される。スイッチバック経路20には搬送ローラー対22,24が配置されている。スイッチバック経路20に誘導された媒体3は、搬送ローラー対22,24が逆転するように制御されることで、分岐点Kにおいて図示を省いた誘導部材によって、反転経路になる第2搬送経路92に誘導される。第2搬送経路92には、搬送ローラー対26,28と、従動ローラーである反転ローラー30及び対を成す駆動ローラー32が配置されている。
【0035】
以上の説明で理解できるように、第1搬送経路91は、媒体収容部11に収容された媒体3を第3搬送経路93に給送する給送経路であり、第2搬送経路92は、記録部5によって記録が行われた記録済み媒体3を反転させて第3搬送経路93に搬送する反転経路であり、第3搬送経路93は、記録部5による記録位置を含む記録時搬送経路である。
図2において、符号36は複数の種類のインクを収容するインク収容部を示す。各インク収容部36は着脱可能に装着されている。記録部5から吐出されるインクは、各インク収容部36から図示を省くチューブを介して記録部5に供給される。また、符号38は廃液収容部を示す。符号42は検知部を示す。検知部42は、反転経路92における媒体3の有無を検知すると共に、媒体3の幅方向(Y軸方向)における端部を検知することで媒体3の幅を検知する。
記録装置1は、媒体収容部11の下方にも図示を省く他の媒体収容部を備えている。他の媒体収容部内の媒体3もピックローラーでピックされ、搬送ローラー対40によって反転ローラー30のニップ位置より上流で第2搬送経路92に合流される。
【0036】
<載置トレイ>
図1から
図3に示したように、本実施形態では、手差しトレイとも称される載置トレイ50が、装置本体34に対して、閉状態(
図1)と開状態(
図2、
図3)とに変位可能に設けられている。ここでは、載置トレイ50は、装置本体34の側面に位置する扉部17に、下端部を回動支点として上端が自由端となって回動するように設けられている。
図2と
図3に示したように、開状態の載置トレイ50に載置される媒体3は、給送ローラー52と分離ローラー54の対によって、重送された複数の媒体3から給送ローラー52と接する位置の1枚の媒体3が分離される。分離された1枚の媒体3は、経路94を搬送され、反転ローラー30の手前で第2搬送経路92に送られ、搬送方向Fに搬送される。
【0037】
給送ローラー52は、不図示の駆動源の動力によって回転する駆動ローラーであり、媒体3を搬送方向Fに向かって搬送する。分離ローラー54は、別の駆動源の動力によって回転する駆動ローラーであり、複数枚の媒体3から媒体を1枚に分離する役割のローラーである。
ここで、分離ローラー54は、後述するトルクリミッタ63(
図6)を備えており、分離された1枚の媒体3を搬送する状態になると、トルクリミッタ63に設定値を超えるトルクがかかることで媒体3を搬送方向Fに送る回転方向に従動回転する。一方で、複数枚の媒体3が搬送される場合、トルクリミッタ63に設定値を超えるトルクがかからないため、分離ローラーが従動回転せず、複数の媒体から1枚の媒体に分離される。
【0038】
<媒体搬送装置>
図2から
図8に示したように、本実施形態では、媒体搬送装置7は、分離ローラーユニット51と、分離ローラーユニット51が着脱可能に設けられるユニット収容部71とを備えている。即ち、分離ローラーユニット51をユニット収容部71から外して分離ローラー54を交換することが可能に構成されている。
分離ローラーユニット51は、媒体3を給送する給送ローラー52に接触し且つ軸周りに回転可能に設けられる分離ローラー54と、分離ローラー54を保持するローラーホルダー53とを備えている。
ローラーホルダー53は、給送ローラー52と分離ローラー54のニップ位置64(
図4)に向けて媒体3を案内するリブ状の案内部55を、
図5に示したように、分離ローラー54の両側に有している。
図4と
図6において、符号56は軸であり、分離ローラー54は、軸56周りに回転可能である。案内部55は、給送ローラー52と分離ローラー54のニップ位置64における重送された複数の媒体3の分離に先行して、予備分離を行って重送される枚数を減らすために設けられている。
【0039】
ユニット収容部71は、
図2から
図4に示したように、記録装置1の扉部17に設けられている。具体的には、
図3と
図4に示したように、載置トレイ50を開状態にするとユーザーがアクセスできる位置に設けられている。
また、ユニット収容部71には、
図8に示したように、案内部55の位置を軸56の軸方向(Y軸方向)と交差する方向(Z軸方向)に調整する調整部72が2ヶ所に設けられている。この調整部72については、後述する。
【0040】
<分離ローラーユニット>
本実施形態では、
図5と
図6に示したように、分離ローラーユニット51は、分離ローラー54が組付けられている分離ローラーアセンブリ57と、分離ローラーアセンブリ57に装着されるローラーホルダー53とで構成されている。
図6に示したように、分離ローラーユニット57は、分離ローラー54の軸56の両端部がベース部58の左壁65と右壁66に固定されている。ベース部58は、その両端部の左壁65と右壁66の各外側面に一対の被装着部59,59を有している。一対の被装着部59,59は、ローラーホルダー53の基端部48,48が装着される部位となる。
また、左壁65と右壁66の各内方側には、軸62,62がそれぞれ設けられている。それぞれの軸62,62にネジリコイルバネ60,60がそのコイル部61,61を介して取付けられている。このネジリコイルバネ60,60の役割については、追って説明する。符号63が前述したトルクリミッタ―である。
【0041】
<調整部>
図7と
図8に示したように、本実施形態では、2ヶ所の調整部72,72は、ユニット収容部71の底面69に設けられる被載置面67,67と、被載置面67,67にローラーホルダー63が載置された状態(
図8)における案内部55の位置を調整するためのスペーサ68,68と備えている。被載置面67,67は、分離ローラーユニット51がユニット収容部71に取り付けられた状態におけるユニット収容部71の底面69であって、ローラーホルダー53の足部80,80が載置される位置に設けられている。足部80,80は、Z軸方向に見て、分離ローラー54の軸56と略同じY軸線上に位置するように設けられている。
本実施形態では、
図8に示したように、ユニット収容部71の底面69とは別の位置にも、ローラーホルダー53の他の足部81,81を乗せる乗せ部82,82が設けられている。他の足部81,81と乗せ部82,82は、ローラーホルダー53の基端部48の部位に位置する。このようにローラーホルダー53は、足部80と他の足部81の2か所でユニット収容部71に載置されるので、装着状態での安定性が良い。
尚、
図8では、調整部72,72の一方だけが断面図によって見えるように記載されている。
【0042】
スペーサ68は、ここではシート材で形成されている。シート材より成るスペーサ68が被載置面67に貼り付けられている。
図8の状態において、案内部55の給送ローラー52のニップ位置64に対する位置は、シート材の枚数を変えることで調整される。言い換えると、案内部55のZ軸方向における前記位置が設計位置となるようにシート材より成るスペーサ68の枚数が決められる。本実施形態では、案内部55の前記設計位置は、給送ローラー52のニップ位置64において、案内部55がZ軸方向において給送ローラー52とオーバーラップする位置、即ちオーバーラップする高さになるように設計されている。
尚、被載置面67にローラーホルダー63が載置された状態で案内部55のZ軸方向における前記位置が設計位置となる場合は、スペーサ68は0枚となる。言い換えると、調整部72は、被載置面67と0枚のスペーサ68で構成されている状態である。そのため、被載置面67の高さ位置は、被載置面67にローラーホルダー63が載置された状態で案内部55の前記位置が設計位置を超えないように設計されるのが望ましい。
【0043】
尚、分離ローラー54を交換するために、分離ローラーユニット51をユニット収容部71から外し、別の分離ローラー54に換えて、再度分離ローラーユニット51をユニット収容部71に装着する場合は、以下のようになる。
分離ローラー54は交換されて変わっていてもローラーホルダー53が変わらない場合は、通常は、そのままユニット収容部71に装着する。これにより、案内部55の前記位置は、設計位置となる。尚、ローラーホルダー53を別のものに換える場合でも、案内部55の位置が設計位置となる場合には分離ローラーユニット51がそのままユニット収容部71に装着される。
案内部55が摩耗等の何らかの原因で、当初の状態と異なっている場合は、そのままユニット収容部71に装着しても、案内部55の前記位置は、設計位置とならない。そのため、スペーサ68の枚数を増やす等の調整をして、案内部55の前記位置が設計位置となるようにする。この調整はサービスマンが行うことが望ましい。
【0044】
図11に示したように、本実施形態では、分離ローラーユニット51は、分離ローラー54を給送ローラー52に向かって弾性的に押す第1押し部材70を備えている。ここでは、第1押し部材70は、軸62にコイル部61,61を介して取り付けられている既述のネジリコイルバネ60で構成されている。即ち、第1押し部材70であるネジリコイルバネ60は、軸56の方向に沿って設けられている。
具体的には、ネジリコイルバネ60のコイル部61から延びる端部の一つである基端部74は、
図6と
図11に示したように、ベース部58の左壁65と右壁66のそれぞれ設けられた係止部75に係止されている。コイル部61から延びる他の端部である一端部76は、
図5と
図11に示したように、ローラーホルダー53に設けられた溝状の保持部77にネジリコイルバネ60の弾性力が圧縮された状態で保持されている。
これにより、ネジリコイルバネ60の基端部74と一端部76がコイル部61を基点にして互いに離れる方向に弾性力が働くことで、分離ローラー54が給送ローラー52に向かって弾性的に押される状態になる。
【0045】
図11は、分離ローラーユニット51が、ユニット収容部71から外された単独の状態である。
図11の上の図は、ネジリコイルバネ60の前記弾性力によって、ベース部58が+Z方向に押し上げられている状態である。同図に示したように、分離ローラー54の外面が案内部55よりも+Z方向に少し突出している。尚、ベース部58は、ローラーホルダー53内の図示を省く規制部に当接してその状態の位置で保持されている。
図11の下の図は、ローラーホルダー53のZ軸方向の位置を固定した状態で、分離ローラー54を-Z方向に押した状態である。この状態は、分離ローラーユニット51が、ユニット収容部71に装着され、更に給送ローラー52と分離ローラー54とが接触した状態に相当する。この状態では、分離ローラー54が給送ローラー52により-Z方向に押されるので、分離ローラー54の外面が案内部55よりも+Z方向に少し突出した
図11の上の図の状態から
図11の下の図の突出していない状態になる。これにより、分離ローラー54は、ネジリコイルバネ60である第1押し部材70によって給送ローラー52に向かって弾性的に押された状態になる。
【0046】
図5と
図11に示したように、本実施形態では、前記軸方向に沿って設けられるネジリコイルバネ60,60がそのコイル部61,61を介して軸62,62に取付けられている。ネジリコイルバネ60の一端部76は、分離ローラーユニット63の外部に露出している。そのため、ユーザーが不用意に一端部76に触れる場合があり得る。
そこで、
図5の下部の要部拡大図に示したように、ネジリコイルバネ60の一端部76を保持する保持部77は、ユーザーが不用意に一端部76に触れても、その一端部76が保持部77から外れ難いように深い溝状に形成されている。更に、前記溝状の保持部77にネジリコイルバネ60の一端部76を挿入するために挿入路78が設けられている。そして、保持部77と挿入路78との接続部位に堰壁79が配置されている。即ち、ネジリコイルバネ60の一端部76を先ず挿入路78に位置合わせし、次いで一端部76を挿入路78に沿って登るように移動させ、更に堰壁79を乗り越えて溝状の保持部77に落し入れることができるように構成されている。
同拡大図において、符号46を付した矢印は、一端部76の保持部77内への挿入の際の移動軌跡である。言い換えると、保持部77は、ネジリコイルバネ60の一端部76にユーザーが不用意に触れても堰壁78が在ることで、一端部76が簡単には外れないように構成されている。
【0047】
また、本実施形態では、
図10に示したように、分離ローラーユニット51は、ユニット収容部71に設けられる第1被係止部83,83と係止する第1係止部84,84を備えている。第1係止部84,84は、分離ローラー54の軸56の方向において分離ローラーユニット51における両端部に設けられている。
図10では、前記両端部の一方に位置する第1係止部84と第1被係止部83だけ見える状態で記載されている。第1係止部84,84は、スナップフィット構造に形成され、このスナップフィット構造により第1被係止部83,83に対して着脱される。
分離ローラーユニット51の第1係止部84,84をユニット収容部71の第1被係止部83、83から外し、分離ローラーユニット51を+X方向に引き抜くことで、分離ローラーユニット51をユニット収容部71から外すことができる。
【0048】
また、本実施形態では、
図9に示したように、分離ローラーユニット51は、ユニット収容部71に設けられる第2被係止部85,85と係止し、ユニット収容部71に対して位置決めするための第2係止部86,86を備えている。ここでは、凸形状の第2係止部86,86が凹形状の第2被係止部85,85に嵌ることでX軸方向とY軸方向の位置決めができるように構成されている。このように第2係止部86,86と第2被係止部85,85とで位置決めするので、第1係止部84,84と第1被係止部83,83には、位置決めの機能を持たせなくてもよい構造になっている。
更に、第2係止部86,86と第2被係止部85,85とが係止する位置P2は、媒体3の搬送方向Fにおいて、第1係止部84,84と第1被係止部83,83とが係止する位置P1(
図10)且つ軸56の位置よりも上流に位置するように配置されている。尚、
図9では、2ヶ所の第2係止部86,86と第2被係止部85,85の内、一方の第2係止部86と第2被係止部85が見える状態で記載されている。
【0049】
また、本実施形態では、
図3と
図4に示したように、分離ローラーユニット51は、給送ローラー52と分離ローラー54のニップ位置64における媒体3の搬送方向Fに沿って着脱可能に構成されている。
具体的には、給送ローラー52を外した状態にして、分離ローラーユニット51を少し持ち上げて第2係止部86,86を第2被係止部85,85から外し、次に手前(+X方向)の方向に引くことで、第1係止部84が第1被係止部83,83から外れて、ユニット収容部71から外すことができる。その後は、載置トレイ50の載置面45に沿って外部に取り出す。
【0050】
<実施形態1の効果の説明>
(1)本実施形態では、調整部72が、分離ローラーユニット51に設けられるのではなく、ユニット収容部71に設けられ、案内部55の位置を軸56の軸方向(Y軸方向)と交差する方向(Z軸方向)に調整するように構成されている。これにより、調整部72がユニット収容部71に設けられていることで、分離ローラー54の交換の際に、案内部55の位置がずれる虞を低減することができる。その結果として、媒体3の搬送不良が生じる問題を抑制することができる。
(2)また、本実施形態では、調整部72は、ユニット収容部71に設けられている被載置面67とスペーサ68で構成されている。これにより、スペーサ68を変えるだけで案内部55の位置を調整することが可能である。従って、簡単な構成で、案内部55の微小な位置調整を行うことが可能である。
【0051】
(3)また、本実施形態では、分離ローラーユニット51は、分離ローラー54を給送ローラー52に向かって弾性的に押す第1押し部材70を備える。これにより、第1押し部材70が分離ローラーユニット51に組み込まれているので、メンテナンス性が向上する。具体的には、典型的な不良であるバネ等の第1押し部材70のへたりや変形に対する対応や、想定していない種類の媒体を使用したいユーザーへの対応としての弾性力の増減等の調整を、容易に取ることができる。
(4)また、本実施形態では、ネジリコイルバネ60は軸56の方向(Y軸方向)に沿って設けられるので、軸56と交差する方向(Z軸方向)に設けられる構成と比較して、分離ローラーユニット51の高さ方向の寸法を小型化することができる。
また、ネジリコイルバネ60の一端部76は、分離ローラーユニット51の外部に露出しているが、分離ローラーユニット51は、一端部76を保持する保持部77を備える。これにより、ユーザーが触らないようにネジリコイルバネ60の一端部76を覆う部材を設けることで部品点数が増えたり、分離ローラーユニット51の交換の際やジャム解除の際等に分離ローラーユニット51にユーザーが触れた際に一端部76が外れる虞を低減することができる。
【0052】
(5)また、本実施形態では、分離ローラーユニット51は、第1係止部84がユニット収容部71に設けられる第1被係止部83から離間することで着脱可能となる。即ち、スナップフィット構造のような第1係止部84と第1被係止部83の係止構造とすることで、分離ローラーユニット51の交換を容易に行うことができる。
(6)また、本実施形態では、分離ローラーユニット51は、ユニット収容部71に設けられる第2被係止部85と係止し、ユニット収容部71に対して位置決めするための第2係止部86を備える。これにより、第1係止部84に加えて第2係止部86を備えるので、分離ローラーユニット51の装着時の姿勢が安定する。
また、第2係止部86と第2被係止部85とが係止する位置は、媒体3の搬送方向Fにおいて、第1係止部84と第1被係止部83とが係止する位置よりも上流に位置する。これにより、分離ローラーユニット51を搬送方向Fから入れる際に、分離ローラーユニット51を位置決めされた位置に正確に嵌めやすい。ここで、第2係止部86と第2被係止部85との係止構造として、位置決め穴にボスを落とす構造にすると角度変化が少なく、装着後のガタツキを減らすことができる。
また、第1係止部84及び第1被係止部83はスナップフィット構造により係止される構造であることに対し、第2係止部86及び第2被係止部85は位置決め穴にボスを落とす構造であるので、第2係止部86及び第2被係止部85により、分離ローラーユニット51の位置決め精度を向上させることができる。
(7)また、本実施形態では、分離ローラーユニット51は、給送ローラー52と分離ローラー54のニップ位置64における媒体3の搬送方向Fに沿って着脱可能に構成されている。これにより、分離ローラーユニット51を交換するために必要なスペースを少なくすることができ、結果として装置を小型化できる。
【0053】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る媒体搬送装置7について、
図12に基づいて説明する。実施形態1と同一部分については同一符号を付して、その構成及び対応する効果の説明は省略する。
本実施形態では、調整部72はカム部材33で構成されている。このカム部材33は、案内部55を少なくとも2つの位置に調整可能である。ここでは、カム部材33は、階段状に形成され、第1段部35と、第1段部35より高い第2段部37の二段で構成されている。カム部材33は、厚みが変化する円盤状部材で構成してもよい。
【0054】
案内部55の位置の調整は、階段状のカム部材33をユニット収容部71の底面上をY軸方向にスライドさせて、ローラーホルダー53の足部80が載置される位置を第1段部35と第2段部37との間で切り換えることで実行される。カム部材33は、ここでは階段状の二段であるが、三段以上で構成してもよいことは勿論である。
カム部材33の前記スライドは、本実施形態では、動力源39の動力により行われ、これにより案内部55の位置を調整するように構成されている。ここでは、図示を省く制御部が記録装置1のプリンタドライバーでの設定情報により前記スライドによる案内部55の位置の調整を実行する。駆動源39としては、ソレノイドやモーター等を用いることができる。
尚、カム部材33のスライドは、動力源39によらずに、手動で行える構造にしてもよい。
【0055】
本実施形態によれば、調整部72は、案内部55を少なくとも2つの位置に調整可能とするカム部材33を備える。これにより、カム部材33という簡易な構成で案内部55の位置を調整することができる。
また、本実施形態によれば、調整部72は、動力源39の動力により案内部55の位置を調整する。このように、駆動源39により案内部55の位置を調整可能とすることにより、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
また、媒体3の種類毎に案内部55の位置を変更することが可能になるので、媒体搬送装置7が対応可能な媒体3の種類を増やすことが可能になる。また、分離ローラー54の交換の際毎に案内部55の位置を自動で調整することが可能となる。
【0056】
[実施形態3]
次に、実施形態3に係る媒体搬送装置7について、
図13と
図14に基づいて説明する。実施形態1と同一部分については同一符号を付して、その構成及び対応する効果の説明は省略する。
本実施形態では、調整部72は、ユニット収容部71に設けられ、分離ローラーユニット51の被押し部25を給送ローラー52に向かって弾性的に押す第2押し部材23と、ユニット収容部71に設けられ、第2押し部材23で押される分離ローラーユニット51を所定位置に止めて位置決めする位置決め部21と、を備えている。分離ローラーユニット51は、第2押し部材23と位置決め部21によって軸56の軸方向(Y軸方向)と交差する方向、ここではZ軸方向において変位可能である。
第2押し部材23の弾性力は、第1押し部材70の弾性力より充分に大きく設定されている。即ち、第1押し部材70が弾性変形しても第2押し部材23は弾性変形しない弾性力に設定されている。
給送ローラー52は、軸56の軸方向(Y軸方向)に沿って回転軸31から着脱可能である。
【0057】
本実施形態では、案内部55は、軸56の軸方向(Y軸方向)と交差する方向(Z軸方向)において、給送ローラー52とオーバーラップするように配置されている。即ち、位置決め部21は、前記所定位置として、分離ローラーユニット51の案内部55の位置が前記オーバーラップする位置になるように設計されている。
図14において、案内部55の位置の高さがH1であり、給送ローラー52のニップ位置64の高さがH2である。案内部55は、Z軸方向において、H1-H2の寸法だけ給送ローラー52とオーバーラップしている。このオーバーラップにより、案内部55の予備分離性能が実施形態1の構造よりも向上されている。
【0058】
給送ローラー52を回転軸31から外す際は、そのままでは、前記オーバーラップ構造のため外せない。しかし本実施形態では、分離ローラーユニット51のローラーホルダー53を第2押し部材23の弾性力に抗して下方に押す。これにより、案内部55の位置をH1からH2に下げることができるので、その下げた状態で、給送ローラー52を回転軸31に沿って移動させて外すことができる。
更に、分離ローラーユニット51をユニット収容部71から外す場合は、先ず第2押し部材23を少し縮めて分離ローラーユニット51の被押し部25から離間させる。次いで、分離ローラーユニット51を手前となる+X方向に引き出すことで外すことができる。
分離ローラーユニット51をユニット収容部71に装着し、更に給送ローラー52を回転軸31に取り付けて元の使用可能状態にする場合は逆の手順を踏む。
【0059】
本実施形態によれば、調整部72は、ユニット収容部71に設けられる第2押し部材23と、同じくユニット収容部71に設けられる位置決め部21とを備えて構成されている。これにより、調整部72を簡単な構造で実現することができる。
また、案内部55は、軸56の軸方向(Y軸方向)と交差する方向(Z軸方向)において、給送ローラー52とオーバーラップするように配置されている。これにより、給送ローラー52と分離ローラー54による分離性能が向上する。
一方で、分離ローラー54の交換性を考慮すると、前記オーバーラップする構造の場合は給送ローラー52と案内部55が干渉する位置関係になるのでその交換性が悪化する。しかし本実施形態によれば、案内部55が変位可能である、即ち退避可能であるので、前記交換の際に給送ローラー52が案内部55と干渉することを抑制でき、以って交換性の低下を抑制できる。
【0060】
〔他の実施形態〕
本発明に係る媒体搬送装置7及び媒体搬送装置7を備える記録装置1は、以上述べた実施形態の構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことは勿論可能である。
媒体搬送装置7を備えるものとして、上記実施形態ではインクジェットプリンターについて説明したが、このプリンター以外のものでもよい。即ち、媒体3を搬送する媒体搬送装置7を有する他の装置にも適用可能である。
上記実施形態では、調整部72は、案内部55を給送ローラー52に向かう方向に調整する構造を説明したが、搬送方向Fに調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…記録装置、2…搬送ベルト、3…媒体、4…プーリー、5…記録部、
6…プーリー、7…媒体搬送装置、8…記録実行領域、9…搬送経路、
10…ピックローラー、11…媒体収容部、12…搬送ローラー対、
13…給送ローラー対、14…搬送ローラー対、15…搬送ローラー対、
16…排出トレイ、17…扉部、18…フラップ、20…スイッチバック経路、
21…位置決め部、22…搬送ローラー対、23…第2押し部材、
24…搬送ローラー対、25…被押し部、26…搬送ローラー対、
28…搬送ローラー対、30…反転ローラー、31…回転軸、32…駆動ローラー、
33…カム部材、34…装置本体、35…第1段部、36…インク収容部、
37…第2段部、38…廃液収容部、39…動力源、40…搬送ローラー対、
42…検知部、45…載置面、46…移動軌跡、48…基端部、50…載置トレイ、
51…離ローラーユニット、52…給送ローラー、53…ローラーホルダー、
54…分離ローラー、55…案内部、56…軸、57…分離ローラーアセンブリ、
58…ベース部、59…被装着部、60…ネジリコイルバネ、61…コイル部、
62…軸、63…トルクリミッタ、64…ニップ位置、65…左壁、66…右壁、
67…被載置面、68…スペーサ、69…底面、70…第1押し部材、
71…ユニット収容部、72…調整部、74…基端部、75…係止部、
76…一端部、77…保持部、78…挿入路、79…堰壁、80…足部、
81…足部、82…乗せ部、83…第1被係止部、84…第1係止部、
85…第2被係止部、86…第2係止部、91…第1搬送経路、
92…第2搬送経路、93…第3搬送経路、94…経路、
F…搬送方向、H1…案内部の高さ、H2…ニップ位置の高さ、K…分岐点、
P…合流地点、P1…係止する位置、P2…係止する位置