(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135867
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20240927BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20240927BHJP
F01N 13/18 20100101ALI20240927BHJP
F01N 1/08 20060101ALI20240927BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240927BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F01N13/00 A
F01N13/14
F01N13/18
F01N1/08 K
F01N3/24 J
F02D35/00 368E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046758
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】木口 喜美
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004BA01
3G004BA06
3G004CA04
3G004CA13
3G004DA07
3G004DA09
3G004DA14
3G004DA21
3G004DA25
3G004EA05
3G004FA04
3G004GA04
3G091AA03
3G091AB03
3G091BA39
3G091EA34
3G091HA05
3G091HA08
3G091HA37
(57)【要約】
【課題】消音器内において触媒の下流側が消音器の外壁から大きく離れている場合でも、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサを消音器に容易に取り付けることができるようにする。
【解決手段】排気装置における消音器17内に設けられた下流触媒62の下流側には、下流触媒62内を流通した後の排気ガスが流通する下流パイプ35が設けられ、下流パイプ35にはセンサ挿入穴38が設けられている。消音器17の外壁18の貫通穴(穴部45)の周縁部には、消音器17とは別体の有底筒状の部材であり、外壁18から下流パイプ35に向かって伸長した取付部材71が取り付けられている。取付部材71の内側には排気ガスセンサ63が配置され、排気ガスセンサ63は、その一端側部分が取付部材71の底穴内および下流パイプ35のセンサ挿入穴38内に挿入された状態で、取付部材71に固定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における内燃機関からの排気ガスを排出する排気装置であって、
排気音を減少させる消音器と、
前記消音器内に設けられ、排気ガスを浄化する触媒と、
前記消音器内において前記触媒の下流側に設けられ、前記触媒内を流通した後の排気ガスが流通する管部と、
一端側部分にセンサ素子が設けられ、前記触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサと、
前記排気ガスセンサを前記消音器に取り付ける取付部材とを備え、
前記管部には、前記排気ガスセンサの一端側部分を前記管部の内側に挿入するためのセンサ挿入穴が設けられ、
前記取付部材は、前記消音器とは別体の有底筒状の部材であり、前記消音器の外壁を貫通した貫通穴の周縁部に取り付けられ、前記消音器の外壁から前記管部に向かって伸長し、
前記取付部材の底部には前記底部を貫通する底穴が設けられ、
前記排気ガスセンサは、前記貫通穴を介して前記取付部材の内側に配置され、かつ前記排気ガスセンサの一端側部分が前記底穴内および前記センサ挿入穴内に挿入された状態で、前記取付部材に固定されていることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記貫通穴は前記消音器の外壁の幅方向における一方の側部に設けられ、前記センサ挿入穴は前記管部の幅方向における前記一方の側部に設けられ、前記取付部材は前記消音器の外壁の幅方向における前記一方の側部から前記管部の幅方向における前記一方の側部に向かって側方に伸長し、前記取付部材は前記消音器の外壁の幅方向における前記一方の側部から前記管部の幅方向における前記一方の側部に向かって漸次縮径していることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記触媒は前記消音器の幅方向中心に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項4】
前記底穴の周縁部には、前記排気ガスセンサを前記取付部材に固定するためのボス部が取り付けられ、前記ボス部は前記取付部材の底部から前記管部に向かって突出し、前記ボス部の突出端側部分は前記センサ挿入穴の周縁部に接合されていない状態で前記センサ挿入穴内に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項5】
前記取付部材は、
有底筒状に形成された第1の筒状部材と、
有底筒状に形成され、前記第1の筒状部材において前記消音器の内側を向いた面を覆う第2の筒状部材とを備え、
前記底穴は前記第1の筒状部材の底部および前記第2の筒状部材の底部にそれぞれ設けられ、
前記第1の筒状部材の周壁部と前記第2の筒状部材の周壁部との間には、空間が形成され、または断熱材もしくは消音材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項6】
前記取付部材は、
有底筒状に形成された第1の筒状部材と、
有底筒状に形成され、前記第1の筒状部材において前記消音器の内側を向いた面を覆う第2の筒状部材とを備え、
前記底穴は前記第1の筒状部材の底部および前記第2の筒状部材の底部にそれぞれ設けられ、
前記ボス部は前記第1の筒状部材の底部に設けられた前記底穴の周縁部に接合され、
前記第2の筒状部材の開口部の周縁部は前記第1の筒状部材の開口部の周縁部に接合され、
前記ボス部の前記取付部材に対する接合箇所は前記第1の筒状部材の底部に設けられた前記底穴の周縁部のみであり、前記第1の筒状部材と前記第2の筒状部材との接合箇所は、前記第1の筒状部材の開口部の周縁部および前記第2の筒状部材の開口部の周縁部のみであることを特徴とする請求項4に記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における内燃機関からの排気ガスを排出する排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動四輪車、自動二輪車等、内燃機関を動力源とする車両において、触媒を消音器内に設けることがある。また、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出するために、消音器に排気ガスセンサを取り付けることがある。特開2017-227157号公報(特許文献1)には、排気ガスセンサをマフラ(消音器)に取り付けた車両が記載されている。
【0003】
排気ガスセンサは排気ガス中の酸素濃度を検出する。車両に設けられる排気ガスセンサとして、センサ素子にジルコニアを用いたジルコニア方式の酸素センサが用いられることが多い。
【0004】
ジルコニア方式の酸素センサの動作原理は次の通りである。ジルコニアにより形成されたセンサ素子の一側部分を排気ガスに曝し、センサ素子の他側部分に基準ガス(例えば大気)を供給すると、基準ガスと排気ガスとの酸素濃度差によってセンサ素子に起電力が生じる。この起電力に基づいて排気ガス中の酸素濃度を検出する。
【0005】
車両に設けられるジルコニア方式の酸素センサは、筒状のケーシングの軸方向一端側部分にセンサ素子が設けられ、ケーシングの他端側部分にケーブルが接続された構造を有している。また、ケーシングの他端側部分に、センサ素子に供給する大気をケーシング内に導入する導入口が設けられている。触媒内を流通した後の排気ガスの酸素濃度を当該酸素センサにより検出する場合、当該酸素センサは、センサ素子が、例えば消音器内において触媒の下流側に接続された管部(以下、これを「触媒下流管部」という。)の内側に配置され、ケーブルおよび導入口が消音器の外側に配置されるように、消音器に取り付けられる。具体的には、触媒下流管部の周壁に貫通穴が設けられ、かつ、消音器の外壁において、触媒下流管部の貫通穴と対応する部分に貫通穴が設けられ、酸素センサの一端側部分に設けられたセンサ素子がこれら2つの貫通穴内に挿入される。この状態で、ケーブルおよび導入口は消音器の外側に配置されている。また、この状態で、酸素センサのケーシングが消音器の外壁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10(A)に示すように、触媒下流管部123が消音器121の外壁122に接近しており、消音器121の外壁122の外面と触媒下流管部123の外周面との距離Gが短い場合、
図10(B)に示すように、触媒下流管部123の周壁に貫通穴を設け、消音器121の外壁122において触媒下流管部123の貫通穴と対応する部分に貫通穴を設け、これら2つの貫通穴内に、排気ガスセンサ124の一端側部分に設けられたセンサ素子125を挿入した状態で、排気ガスセンサ124を消音器121の外壁122に固定することができる。このように、消音器の外壁の外面と触媒下流管部の外周面との距離が短い場合には、排気ガスセンサの一端側部分に設けられたセンサ素子を触媒下流管部の内側に配置し、かつ排気ガスセンサの他端側部分に設けられたケーブル等を消音器の外側に配置した状態で、排気ガスセンサを消音器に取り付けることができる。
【0008】
また、
図10(C)に示すように、触媒下流管部123が消音器121の外壁122からある程度離れており、消音器121の外壁122の外面と触媒下流管部123の外周面との距離Gがそこそこ長い場合でも、
図10(D)に示すように、触媒下流管部123の周壁に貫通穴を設け、消音器121の外壁122において触媒下流管部123の貫通穴と対応する部分に、消音器121の外壁122にプレス加工を施すことによって凹部126を成形し、凹部126の底部に貫通穴を設け、触媒下流管部123の周壁に設けた貫通穴と、凹部126の底部に設けた貫通穴内に、排気ガスセンサ124の一端側部分に設けられたセンサ素子125を挿入した状態で、排気ガスセンサ124を消音器121の外壁122に固定することができる。このように、消音器の外壁の外面と触媒下流管部の外周面との距離がそこそこ長い場合でも、消音器の外壁にプレス加工を施して凹部を成形することにより、排気ガスセンサの一端側部分に設けられたセンサ素子を触媒下流管部の内側に配置し、かつ排気ガスセンサの他端側部分に設けられたケーブル等を消音器の外側に配置した状態で、排気ガスセンサを消音器に取り付けることができる。
【0009】
しかしながら、例えば、
図10(E)に示すように、触媒下流管部123が消音器121の外壁122から大きく離れており、消音器121の外壁122の外面と触媒下流管部123の外周面との距離Gが極めて長い場合、消音器の外壁にプレス加工を施して凹部を成形する方法では、排気ガスセンサの一端側部分に設けられたセンサ素子を触媒下流管部の内側に配置し、かつ排気ガスセンサの他端側部分に設けられたケーブル等を消音器の外側に配置した状態で、排気ガスセンサを消音器に取り付けることが困難になる。
【0010】
すなわち、消音器の外壁の外面と触媒下流管部の外周面との距離が極めて長い場合には、排気ガスセンサの一端側部分に設けられたセンサ素子を触媒下流管部の内側に配置することができるようにするために、消音器の外壁に形成する凹部の深さ寸法を大きくする必要がある。消音器の外壁にプレス加工を施すことにより消音器の外壁に大きな深さ寸法を有する凹部を成形することは難しく、例えば、凹部を張り出し加工により成形する場合には、凹部の周壁部または底部の厚さが薄くなりすぎ、凹部の必要な強度を確保することができないおそれがある。また、プレス加工により、消音器の外壁に、大きな深さ寸法を有し、かつ強度の高い凹部を成形するためには、高度の加工技術が必要になり、消音器の製造コストが上昇するおそれがある。
【0011】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、消音器内において触媒の下流側が消音器の外壁から大きく離れている場合でも、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサを消音器に容易に取り付けることができる排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、車両における内燃機関からの排気ガスを排出する排気装置であって、排気音を減少させる消音器と、前記消音器内に設けられ、排気ガスを浄化する触媒と、前記消音器内において前記触媒の下流側に設けられ、前記触媒内を流通した後の排気ガスが流通する管部と、一端側部分にセンサ素子が設けられ、前記触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサと、前記排気ガスセンサを前記消音器に取り付ける取付部材とを備え、前記管部には、前記排気ガスセンサの一端側部分を前記管部の内側に挿入するためのセンサ挿入穴が設けられ、前記取付部材は、前記消音器とは別体の有底筒状の部材であり、前記消音器の外壁を貫通した貫通穴の周縁部に取り付けられ、前記消音器の外壁から前記管部に向かって伸長し、前記取付部材の底部には前記底部を貫通する底穴が設けられ、前記排気ガスセンサは、前記貫通穴を介して前記取付部材の内側に配置され、かつ前記排気ガスセンサの一端側部分が前記底穴内および前記センサ挿入穴内に挿入された状態で、前記取付部材に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、消音器内において触媒の下流側が消音器の外壁から大きく離れている場合でも、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサを消音器に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例の排気装置が設けられた車両を示す外観図である。
【
図2】エンジンユニット、後輪、および本発明の実施例の排気装置を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施例の排気装置における消音器を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施例の排気装置における消音器の内部を示す説明図である。
【
図5】
図3中の切断線V-Vに沿って切断した消音器を後ろ上方から見た状態を示す断面図である。
【
図6】
図5中の消音器から、排気ガスセンサを取り除き、かつ消音器の外筒の左壁板および取付部材を分離させた状態を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例の排気装置において、消音器の外筒の左壁板、および分解した状態の取付部材を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例の排気装置において、取付部材の底側部分、ボス部および下流パイプのセンサ挿入穴を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施例の排気装置の変形例を示す断面図である。
【
図10】消音器内に設けられた触媒を流通した後の排気ガスの酸素濃度を検出するために排気ガスセンサを消音器に取り付ける従来の方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、車両における内燃機関からの排気ガスを排出する排気装置であって、消音器、触媒、管部、排気ガスセンサ、および取付部材を備えている。消音器は、排気音を減少させる装置である。触媒は、排気ガスを浄化する装置であり、消音器内に設けられている。管部は、消音器内において触媒の下流側に設けられた管状の部材であり、管部内には、触媒内を流通した後の排気ガスが流通する。排気ガスセンサは、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出するセンサであり、その一端側部分にセンサ素子が設けられている。また、管部には、排気ガスセンサの一端側部分を管部の内側に挿入するためのセンサ挿入穴が設けられている。また、消音器の外壁には、当該外壁を貫通する貫通穴が設けられている。
【0016】
取付部材は、排気ガスセンサを消音器に取り付ける部材である。取付部材は、消音器とは別体の有底筒状の部材である。取付部材は、消音器の外壁に設けられた貫通穴の周縁部に取り付けられている。また、取付部材は、消音器の外壁から管部に向かって伸長している。また、取付部材の底部には当該底部を貫通する底穴が設けられている。底穴は、取付部材の底部において、センサ挿入穴と対応する部分に配置されている。
【0017】
排気ガスセンサは、消音器の外壁に設けられた貫通穴を介して取付部材の内側に配置され、かつ排気ガスセンサの一端側部分が底穴内およびセンサ挿入穴内に挿入された状態で、取付部材に固定されている。
【0018】
消音器の外壁に設けられた貫通穴の周縁部に取付部材を取り付けることにより、消音器には、その外壁にプレス加工を施すことによって当該外壁に凹部を成形した場合と概ね同様の構造が形成される。また、消音器の外壁に設けられた貫通穴の周縁部に取付部材を取り付けることにより、消音器の外壁にプレス加工を施すことによって当該外壁に凹部を成形する場合と比較して、取付部材の軸方向の寸法、すなわち凹部の深さ寸法を大きくすることが容易になり、かつ、取付部材の強度、すなわち凹部の強度を高めることが容易になる。具体的に説明すると、取付部材は、それが消音器の外壁の貫通穴の周縁部に取り付けられる前の段階では、消音器とは別体の部材であるので、消音器の外壁を成形するプレス加工と、取付部材を成形するプレス加工とをそれぞれ別々に行うことができる。取付部材を絞り加工等により成形する場合、消音器の外壁に凹部を張り出し加工等により成形する場合と比較して、取付部材の軸方向の寸法、すなわち凹部の深さ寸法を大きくすることが容易であり、かつ取付部材の強度、すなわち凹部の強度を高めることが容易である。
【0019】
したがって、消音器の外壁の外面と管部の外周面との間の距離が極めて長い場合でも、その距離と同等の軸方向寸法を有する取付部材を容易に製造することができる。そして、その取付部材を消音器の外壁の貫通穴の周縁部に取り付け、排気ガスセンサを、消音器の外壁の貫通穴内に挿入し、当該外壁に取り付けられた取付部材の内側に配置し、排気ガスセンサの一端側部分を取付部材の底穴内および管部のセンサ挿入穴内に挿入し、この状態で排気ガスセンサを取付部材に固定することにより、排気ガスセンサの一端側部分に設けられたセンサ素子を管部の内側に配置し、かつ排気ガスセンサの他端側部分を消音器の外側に配置した状態で、排気ガスセンサを消音器に取り付けることができる。
【0020】
このように、本発明の実施形態によれば、消音器内において触媒の下流側に設けられた管部が消音器の外壁から大きく離れている場合でも、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサを消音器に容易に取り付けることができる。
【実施例0021】
図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。実施例の説明において、上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、
図1~9中の角部に描いた矢印に従う。
【0022】
(車両)
図1は、本発明の実施例の排気装置が設けられた車両1を右から見た状態を示している。本実施例では、車両1として、鞍乗型の自動二輪車、具体的にはスクータを例にあげる。
図1に示すように、車両1の後ろ側の下部には、ユニットスイング式のエンジンユニット2、後輪9、後輪9を支持するアーム10、および排気装置15が設けられている。
【0023】
図2は、エンジンユニット2、後輪9、アーム10および排気装置15を右から見た状態を示している。
図2に示すように、エンジンユニット2は、車両1の動力源である内燃機関としてのエンジン3、およびエンジン3の動力を後輪9に伝える変速装置8を備えている。
【0024】
エンジン3は後輪9の前方に配置されている。エンジン3は、クランクケース4、シリンダ5、およびシリンダヘッド6を備えている。シリンダヘッド6の下部には、シリンダ5内から排気装置15へ排気ガスを排出するための排気口7が設けられている。変速装置8の前部はクランクケース4の左部に結合しており、変速装置8の後部は後輪9の左方に配置されている。アーム10は後輪9の右方に配置されており、アーム10の前端部はクランクケース4の右部に結合している。また、後輪9の車軸の左端部は変速装置8の後部に支持され、後輪9の車軸の右端部はアーム10の後端部に支持されている。排気装置15は、エンジン3およびアーム10の右方に配置されている。
【0025】
(排気装置)
図3は排気装置15における消音器17を左から見た状態を示している。
図4は消音器17の内部を示し、具体的には、
図3中の消音器17から、外筒19の左壁板19A、取付部材71、排気ガスセンサ63、前蓋22の左部、前内筒20の左部、後内筒21の左部、およびグラスウール26の左部を取り除いた状態を示している。
図5は、
図3中の切断線V-Vに沿って切断した消音器17の断面を後ろ上方(
図3において右上)から見た状態を示している。
図6は、
図5中の消音器17から排気ガスセンサ63を取り除き、かつ
図5中の消音器17から外筒19の左壁板19Aおよび取付部材71を分離させた状態を示している。
図7は、消音器17の外筒19の左壁板19A、および分解した状態の取付部材71を示している。
【0026】
排気装置15は、エンジン3からの排気ガスを大気中に排出する装置である。排気装置15は、エキゾーストパイプ16、消音器17、上流触媒61、下流触媒62、排気ガスセンサ63、および取付部材71を備えている。
【0027】
エキゾーストパイプ16は、エンジン3の排気口7から排出された排気ガスを消音器17に送る管である。
図2に示すように、エキゾーストパイプ16の前端部は排気口7に接続され、エキゾーストパイプ16の後端部は消音器17に設けられた上流パイプ34の前端部(
図4を参照)に接続されている。
【0028】
消音器17は排気音を減少させる装置である。消音器17はアーム10の右方に配置されている。
図2に示すように、消音器17はブラケット48、49、50によりアーム10に固定されている。
【0029】
上流触媒61および下流触媒62はいずれも、排気ガスを浄化する装置であり、例えば三元触媒である。上流触媒61は、
図2に示すように、エキゾーストパイプ16内に配置されている。下流触媒62は、
図4に示すように、消音器17内に配置されている。
【0030】
排気ガスセンサ63は、下流触媒62内を流通した後の排気ガスの状態を検出するセンサである。下流触媒62内を流通した後の排気ガスの状態を検出することにより、下流触媒62の劣化を判定することができる。排気ガスセンサ63は、
図3に示すように、消音器17の後部の左部に取り付けられている。排気ガスセンサ63は、例えばジルコニア方式の酸素センサである。排気ガスセンサ63は、下流触媒62内を流通した後の排気ガスの酸素濃度を検出する。
図5に示すように、排気ガスセンサ63の一端側部分の内部には、ジルコニアを用いて形成されたセンサ素子64が設けられている。
【0031】
また、排気ガスセンサ63の他端側部分にはケーブル65が接続されている。ケーブル65は、
図3に示すように、排気ガスセンサ63の他端側部分からアーム10と消音器17との間を通って前方へ伸長している。また、ケーブル65は、消音器17をアーム10に固定するブラケット48にクランプ66を用いて支持されている。
【0032】
ケーブル65は、具体的にはハーネスケーブルであり、センサ素子64から得られる検出信号を伝送する信号ケーブル、およびセンサ素子64を加熱するために排気ガスセンサ63内に設けられたヒータ(図示せず)に電力を供給するための電源ケーブル等を束ねたものである。信号ケーブルの一端部はセンサ素子64に接続され、信号ケーブルの他端部は例えば車両1に設けられた電子制御ユニット(ECU)に接続されている。また、電源ケーブルの一端部は上記ヒータに接続され、電源ケーブルの他端部は車両1に設けられた電源装置に接続されている。
【0033】
取付部材71は、
図3に示すように、排気ガスセンサ63を消音器17に取り付ける部材である。取付部材71は、消音器17の外筒19の左壁板19Aに取り付けられ、排気ガスセンサ63は取付部材71に固定されている。
【0034】
(消音器)
消音器17は、その外郭を形成する外壁18を有している。外壁18は、外筒19、前内筒20、後内筒21、前蓋22、後蓋23、支持部材24、結合部材25、およびグラスウール26を備えている。
【0035】
外筒19は、
図3~5に示すように、前後方向に伸長した筒状に形成されている。厳密には、消音器17全体がその前端よりも後端が上方に位置するように傾斜した姿勢で車両1の取り付けられているので、そのことを踏まえると、外筒19は、前端よりも後端が上方に位置するように傾斜しつつ前後方向に伸長した筒状に形成されている。また、外筒19の横断面形状は、上下方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい楕円形である。また、外筒19は、
図5に示すように、左壁板19Aおよび右壁板19Bにより形成されている。左壁板19Aおよび右壁板19Bは、例えば、ステンレス鋼等の金属材料からなる平板をプレス加工により湾曲させることによりそれぞれ形成されている。外筒19は、左壁板19Aおよび右壁板19Bのそれぞれの縁部を例えば溶接により互いに接合することにより筒状に形成されている。
【0036】
また、
図4に示すように、外壁18の胴部の前部は外筒19および前内筒20により二重筒構造になっており、外壁18の胴部の後部は外筒19および後内筒21により二重筒構造になっている。前内筒20および後内筒21はそれぞれ、金属材料により、横断面形状が楕円形の筒状に形成されている。前内筒20は外筒19の前部の内周側に配置されている。後内筒21は外筒19の後部の内周側に配置されている。
【0037】
前蓋22は、外筒19および前内筒20の前端部に取り付けられ、外筒19および前内筒20の前側の開口部を塞いでいる。また、前蓋22の前端部には挿通穴が設けられ、この挿通穴内には上流パイプ34の前端部が挿入されている。
【0038】
後蓋23は、外筒19および後内筒21の後端部に取り付けられ、外筒19および後内筒21の後ろ側の開口部を塞いでいる。また、後蓋23の後端部には挿通穴が設けられ、この挿通穴内にはテールパイプ41の後端部が挿入されている。
【0039】
支持部材24は、前内筒20の後端部および後内筒21の前端部を外筒19の内周側に支持する部材である。結合部材25は、前蓋22の後端部と、外筒19および前内筒20のそれぞれの前端部とを互いに結合する部材である。支持部材24および結合部材25はいずれも環状に形成されている。また、外筒19および後内筒21のそれぞれの後端部は後蓋23の外周側部分に結合されている。
【0040】
グラスウール26は、外筒19と前内筒20との間、および外筒19と後内筒21との間にそれぞれ設けられている。グラスウール26は断熱材であり、かつ消音材である。グラスウール26は、消音器17内に送られた排気ガスの熱が外筒19に伝わることを抑制する断熱機能、および消音器17の消音効果を高める消音機能を有している。
【0041】
また、消音器17内には、2つの隔壁27、28が設けられている。これら隔壁27、28により、消音器17内には、その後部に配置された第1の膨張室31、前後方向中間部に配置された第2の膨張室32、および前部に配置された第3の膨張室33が形成されている。
【0042】
また、消音器17には、
図4に示すように、上流パイプ34、下流触媒62、下流パイプ35、第1の連通パイプ39、第2の連通パイプ40、およびテールパイプ41が設けられている。
【0043】
上流パイプ34は、エキゾーストパイプ16と消音器17内の下流触媒62との間を接続する管であり、概ね、外筒19の伸長方向と平行に前後方向に伸長している。上流パイプ34の前端部は、前蓋22の前端部に設けられた挿通穴を通って消音器17の外側に配置され、エキゾーストパイプ16の後端部に接続されている。上流パイプ34の前端部以外の部分は、第3の膨張室33内を通り抜けた後、隔壁28に設けられた上流パイプ34用の挿通穴を通って第2の膨張室32内に至っている。そして、上流パイプ34の後端部は、第2の膨張室32内において下流触媒62の前端部(上流端部)に接続されている。
【0044】
下流触媒62は、外筒19の伸長方向と平行に前後方向に伸長し、消音器17内の前後方向略中間部の下寄りの位置に配置されている。具体的には、下流触媒62の前部(上流部)は第2の膨張室32内に配置され、下流触媒62の前後方向中間部は、隔壁28に設けられた下流触媒62用の挿通穴を通り、下流触媒62の後部(下流部)は第1の膨張室31内に配置されている。また、下流触媒62は、
図5に示すように、消音器17の左右方向(幅方向)における中心に配置されている。
【0045】
下流パイプ35は、消音器17内において下流触媒62の下流側に設けられ、下流触媒62内を流通した後の排気ガスが流通する管である。
図4に示すように、下流パイプ35は第1の膨張室31内において下流触媒62の後方に配置されている。下流パイプ35は外筒19の伸長方向と平行に前後方向に伸長し、下流パイプ35の前端部は下流触媒62の後端部(下流端部)に接続されている。また、下流パイプ35の後端部は第1の膨張室31内に開口している。下流パイプ35の前端部の外径は下流触媒62の外径と略等しい(厳密には、下流触媒62の後端部が下流パイプ35の前端部内に挿入されているので、下流パイプ35の前端部の外径は下流触媒62の外径よりも若干大きい)。また、下流パイプ35の前部は後方に向かって漸次縮径しており、下流パイプ35の後部の外径は下流触媒62の外径よりも小さくなっている。また、下流パイプ35の後部は一定の径寸法を維持したまま伸長している。また、
図5に示すように、下流パイプ35は下流触媒62と同様に消音器17の左右方向中心に配置されているが、下流パイプ35の前部が、その中心が左方に漸次変位するように縮径しているため、下流パイプ35の後部は消音器17の左右方向中心よりも左側に位置している。また、下流パイプ35は、モナカ構造を有しており、それぞれ湾曲した金属板である左板片35Aと右板片35Bとを例えば溶接により互いに接合することによって形成されている。なお、下流パイプは「管部」の具体例である。
【0046】
また、下流パイプ35の後部の左部にはセンサ挿入穴38が設けられている。具体的には、
図6に示すように、下流パイプ35の後部の左部において若干上寄りの部分には、水平よりも若干上方に傾斜しつつ左方に突出した突出部36が形成されている。また、突出部36の突出端には、突出部36の突出方向と直交した方向に拡がる平らな面を有する平板部37が形成されている。この平板部37は、
図5に示すように、取付部材71における第2の筒状部材75の底部75Cの右面に接近しており、また、この平板部37が有する平らな面は、取付部材71における第2の筒状部材75の底部75Cの右面と平行である。そして、この平板部37にセンサ挿入穴38が形成されている。センサ挿入穴38は、排気ガスセンサ63の一端側部分を下流パイプ35の内側に挿入するための穴であり、下流パイプ35の周壁、具体的には平板部37を貫通している。
【0047】
第1の連通パイプ39は、
図4に示すように、外筒19の伸長方向と平行に前後方向に伸長している。第1の連通パイプ39の後端部は第1の膨張室31内に配置され、第1の膨張室31内に開口している。第1の連通パイプ39は、第1の膨張室31内から、隔壁27に設けられた第1の連通パイプ39用の挿通穴を通って第2の膨張室32内に至り、第1の連通パイプ39の前端部は第2の膨張室32内に開口している。第1の膨張室31と第2の膨張室32とは第1の連通パイプ39を介して連通している。
【0048】
第2の連通パイプ40は外筒19の伸長方向と平行に前後方向に伸長している。第2の連通パイプ40の後端部は第2の膨張室32内に配置され、第2の膨張室32内に開口している。第2の連通パイプ40は、第2の膨張室32内から、隔壁28に設けられた第2の連通パイプ40用の挿通穴を通って第3の膨張室33内に至り、第2の連通パイプ40の前端部は第3の膨張室33内に開口している。第2の膨張室32と第3の膨張室33とは第2の連通パイプ40を介して連通している。
【0049】
テールパイプ41は外筒19の伸長方向と平行に前後方向に伸長している。テールパイプ41の前端部は第3の膨張室33内に配置され、第3の膨張室33内に開口している。テールパイプ41は、隔壁28に設けられたテールパイプ41用の挿通穴を通り、続いて、第2の膨張室32内を通り抜け、続いて、隔壁27に設けられたテールパイプ41用の挿通穴を通り、続いて、第1の膨張室31内を通り抜け、続いて、後蓋23に設けられた挿通穴を通って消音器17の外側へ伸長している。そして、テールパイプ41の後端部は消音器17の外側に後ろ向きに開口している。
【0050】
エンジン3の排気口7から排出された排気ガスは、エキゾーストパイプ16内に流入し、上流触媒61内を流通した後、消音器17の上流パイプ34内を流通し、続いて、下流触媒62内を流通し、続いて下流パイプ35内を流通し、下流パイプ35の後端部の開口部から第1の膨張室31内に流入する。第1の膨張室31内に流入した排気ガスは、第1の連通パイプ39内を流通して第2の膨張室32内に流入する。第2の膨張室32内に流入した排気ガスは、第2の連通パイプ40内を流通して第3の膨張室33内に流入する。第3の膨張室33内に流入した排気ガスは、テールパイプ41内を流通し、テールパイプ41の後端側の開口部から大気中に排出される。
【0051】
また、消音器17の外壁18の左部には、当該外壁18の左部を貫通した貫通穴が設けられている。具体的には、
図6に示すように、外筒19の左壁板19Aには、左壁板19Aを貫通した穴部45が設けられている。穴部45は、
図7に示すように、左壁板19Aの後部の上下方向略中間部に配置されている。また、
図6に示すように、後内筒21の周壁において、外筒19の左壁板19Aに設けられた穴部45と対応する部分には、後内筒21の周壁を貫通した穴部46が設けられている。また、外筒19と後内筒21との間に配置されたグラスウール26において、外筒19の左壁板19Aに設けられた穴部45と対応する部分には、グラスウール26を貫通した穴部47が設けられている。消音器17の外壁18の左部には、外筒19の左壁板19Aの穴部45、後内筒21の穴部46、およびグラスウール26の穴部47により、当該外壁18の左部を貫通した貫通穴が形成されている。当該貫通穴の直径、すなわち穴部45、46、47のそれぞれの直径は、排気ガスセンサ63の最大外径よりも大きい値に設定されている。
【0052】
(取付部材)
取付部材71は消音器17とは別体の部材である。取付部材71は有底筒状、具体的には有底の円筒状に形成されている。より具体的には、取付部材71は、
図6に示すように、カップ状に形成されている。
【0053】
取付部材71は、
図5に示すように、消音器17の外壁18の左部に設けられた貫通穴の周縁部に取り付けられている。取付部材71は、取付部材71が消音器17の内側に入り、取付部材71の開口側が消音器17の外側を向き、取付部材71の底側が消音器17の内側を向くように外壁18に取り付けられている。
【0054】
取付部材71は、消音器17の外壁18の左部から、下流パイプ35の左部において若干上寄りの部分(平板部37)に向かって若干下方に傾斜しつつ右方に伸長している。取付部材71の底側部分は、下流パイプ35の平板部37に極めて接近しているが、接触してはいない。また、取付部材71は、消音器17の外壁18の左部から下流パイプ35の平板部37に向かって漸次縮径している。また、取付部材71の周壁部の下側部分72は、取付部材71の底側よりも取付部材71の開口側の方が下方に位置するように傾斜している。また、取付部材71の開口部および底部のそれぞれの内径は、排気ガスセンサ63の最大外径よりも大きい値に設定されている。
【0055】
また、取付部材71は、
図7に示すように、第1の筒状部材73、第2の筒状部材75、およびグラスウール77を有している。
【0056】
第1の筒状部材73および第2の筒状部材75はそれぞれ、例えばステンレス鋼等の金属材料により、有底筒状、具体的には有底の円筒状、より具体的にはカップ状に形成されている。
図6に示すように、第2の筒状部材75は、第1の筒状部材73において消音器17の内側を向いた面を覆うように、第1の筒状部材73に取り付けられる。具体的には、第2の筒状部材75の開口部の周縁部75Aが第1の筒状部材73の開口部の周縁部73Aに例えば溶接により全周に亘って接合される。第1の筒状部材73と第2の筒状部材75との接合箇所は、第2の筒状部材75の開口部の周縁部75Aおよび第1の筒状部材73の開口部の周縁部73Aのみである。
【0057】
第2の筒状部材75が第1の筒状部材73に接合された状態では、第2の筒状部材75の開口部の周縁部75Aにおいて消音器17の外側を向いた面が、第1の筒状部材73の開口部の周縁部73Aにおいて消音器17の内側を向いた面に全周に亘って接触している。また、第2の筒状部材75の底部75Cにおいて消音器17の外側を向いた面が、第1の筒状部材73の底部73Cにおいて消音器17の内側を向いた面に接触している。また、第2の筒状部材75が第1の筒状部材73に接合された状態において、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとは互いに離間している。
【0058】
また、
図5に示すように、第1の筒状部材73の開口部の周縁部73Aは外筒19の左壁板19Aの穴部45の周縁部に例えば溶接により全周に亘って接合されている。これにより、取付部材71は、外壁18の貫通穴の周縁部に取り付けられている。また、第1の筒状部材73の開口部の周縁部73Aにおいて消音器17の外側を向いた面は、外筒19の左壁板19Aにおいて消音器17の内側に向いた面(左壁板19Aの右面)に全周に亘って接触している。
【0059】
グラスウール77は、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとの間に設けられている。グラスウール77は断熱材であり、かつ消音材である。グラスウール77は、消音器17内に送られた排気ガスの熱が第1の筒状部材73に伝わることを抑制する断熱機能、および消音器17の消音効果を高める消音機能を有している。
【0060】
また、
図7に示すように、第1の筒状部材73の底部73Cの中央には、底部73Cを貫通する底穴74が設けられている。また、第2の筒状部材75の底部75Cの中央には、底部75Cを貫通する底穴76が設けられている。
図6に示すように、底穴74および底穴76の位置は互いに対応している。また、底穴74および底穴76の位置は、
図5に示すように、下流パイプ35のセンサ挿入穴38の位置と対応している。
【0061】
また、取付部材71にはボス部78が設けられている。ボス部78は、排気ガスセンサ63を取付部材71に固定する部材である。ボス部78は、
図7に示すように、例えば円筒状に形成され、ボス部78の中央が、排気ガスセンサ63を固定するための固定穴79となっている。固定穴79の内周面には、ねじが形成されている。排気ガスセンサ63は、
図5に示すように、固定穴79内に挿入されて締結され、ボス部78に固定される。
【0062】
図8は、取付部材71の底側部分、ボス部78および下流パイプ35のセンサ挿入穴38を拡大して示している。
図8に示すように、ボス部78は取付部材71の底側に取り付けられている。具体的には、ボス部78は、第1の筒状部材73の底穴74の周縁部に例えば溶接により接合されている。例えば、ボス部78の外周面は底穴74の周縁部に全周に亘って溶接されている。ボス部78の取付部材71に対する接合箇所は第1の筒状部材73の底穴74の周縁部のみである。ボス部78は、第2の筒状部材75の底穴76に、接合されていない状態で挿入されている。
【0063】
第1の筒状部材73の底部73Cおよび第2の筒状部材75の底部75Cは下流パイプ35の平板部37に極めて接近している。ボス部78は、第1の筒状部材73の底部73Cから下流パイプ35の平板部37に向かって突出している。ボス部78の突出端側部分はセンサ挿入穴38の周縁部に接合されていない状態でセンサ挿入穴38内に挿入されている。本実施例において、ボス部78の外径D1はセンサ挿入穴38の直径D2よりも大きい。ボス部78の突出端側部分は、その全周がセンサ挿入穴38の周縁部から離れた状態でセンサ挿入穴38内に挿入されている。また、ボス部78の突出端側部分とセンサ挿入穴38の周縁部との隙間の大きさは、エンジン3の稼働中(エンジン3から消音器17内に排気ガスが送り込まれている間)に、当該隙間を排気ガスが流通することを十分に抑制することができるように、極めて小さい値(例えば6mm以下)に設定されている。
【0064】
図5に示すように、排気ガスセンサ63は、外壁18の貫通穴(穴部45、46、47)内に挿入され、取付部材71の内側に配置されている。また、排気ガスセンサ63の一端側部分は底穴74、76内(固定穴79内)およびセンサ挿入穴38内に挿入されている。これにより、排気ガスセンサ63のセンサ素子64の一部が下流パイプ35の内側に挿入されている。一方、排気ガスセンサ63の他端側部分は消音器17の外側に配置されており、排気ガスセンサ63の他端側部分に接続されたケーブル65は消音器17の外側に位置している。このような状態で、排気ガスセンサ63は、取付部材71に設けられたボス部78に固定されている。また、排気ガスセンサ63の一端側端部が底穴74(固定穴79内)に挿入された状態でボス部78に固定されることにより、底穴74(固定穴79)が塞がれる。これにより、外壁18の貫通穴が、その周縁部に取り付けられた取付部材71、および取付部材71に固定された排気ガスセンサ63により密に塞がれた状態となる。
【0065】
下流パイプ35内には、下流触媒62を流通した後の排気ガスが流通する。排気ガスセンサ63は、下流パイプ35内を流通する排気ガスの酸素濃度を検出する。排気ガスセンサ63により検出された酸素濃度を示す検出信号は、ケーブル65(信号ケーブル)を介して電子制御ユニットに出力される。電子制御ユニットは、この検出信号に基づいて、例えば、下流触媒62の劣化判定を行う。
【0066】
以上説明した通り、本発明の実施例の排気装置15は、消音器17の外壁18に貫通穴(穴部45、46、47)を設け、その貫通穴の周縁部に、消音器17とは別体の有底筒状の部材である取付部材71を取り付け、排気ガスセンサ63を、外壁18の貫通穴を介して取付部材71の内側に配置し、かつ排気ガスセンサ63の一端側部分を底穴74、76内(固定穴79内)およびセンサ挿入穴38内に挿入した状態で、取付部材71に固定する構成を有している。この構成により、消音器17内において下流パイプ35が消音器17の外壁18から大きく離れている場合でも、排気ガスセンサ63の一端側部分に設けられたセンサ素子64を下流パイプ35の内側に配置し、かつ排気ガスセンサ63の他端側部分および当該部分に接続されたケーブル65を消音器17の外側に配置した状態で、排気ガスセンサ63を消音器17に容易に取り付けることができる。
【0067】
すなわち、消音器17内において、下流パイプ35が外壁18から大きく離れた位置に配置されている場合、排気ガスセンサ63を外壁18に取り付け、かつ排気ガスセンサ63の一端側部分に設けられたセンサ素子64を下流パイプ35の内側に配置することができるようにするために、消音器17の外壁18の一部が消音器17の内側に凹んだ構造を形成する必要がある。消音器17の外壁18の一部が消音器17の内側に凹んだ構造は、消音器17の外壁18にプレス加工を施すことによって外壁18に凹部を成形する方法と、消音器17の外壁18の貫通穴の周縁部に取付部材71を取り付ける方法とのいずれの方法でも形成することができる。しかしながら、消音器17の外壁18の一部が消音器17の内側に凹んだ構造を、消音器17の外壁18にプレス加工を施すことによって外壁18に凹部を成形する方法で形成する場合、大きな深さ寸法を有し、かつ強度の高い凹みを形成することが難しい。これに対し、消音器17の外壁18の一部が消音器17の内側に凹んだ構造を、消音器17の外壁18に設けられた貫通穴の周縁部に取付部材71を取り付ける方法により形成する場合には、上記構造を、消音器17の外壁18にプレス加工を施すことによって外壁18に凹部を成形する方法で形成する場合と比較して、大きな深さ寸法を有し、かつ強度の高い凹みを容易に形成することができる。具体的に説明すると、取付部材71は、それが消音器17の外壁18の貫通穴の周縁部に取り付けられる前の段階では、消音器17とは別体の部材であるので、消音器17の外壁18における外筒19の左壁板19Aを成形するプレス加工と、取付部材71における第1の筒状部材73および第2の筒状部材75を成形するプレス加工とをそれぞれ別々に行うことができる。取付部材71における第1の筒状部材73および第2の筒状部材75を絞り加工等により成形する場合、消音器17の外壁18における外筒19の左壁板19Aに凹部を張り出し加工等により成形する場合と比較して、取付部材71の軸方向の寸法、すなわち凹みの深さ寸法を大きくすることが容易であり、かつ取付部材71の強度、すなわち凹みの強度を高めることが容易である。したがって、消音器17の外壁18の外面と下流パイプ35の外周面との間の距離が極めて長い場合でも、その距離と同等の軸方向寸法を有する取付部材71を容易に製造することができる。よって、本実施例の排気装置15によれば、消音器17内において下流パイプ35が消音器17の外壁18から大きく離れている場合でも、排気ガスセンサ63の一端側部分に設けられたセンサ素子64を下流パイプ35の内側に配置し、かつ排気ガスセンサ63の他端側部分および当該部分に接続されたケーブル65を消音器17の外側に配置した状態で、排気ガスセンサ63を消音器17に容易に取り付けることができる。
【0068】
また、本実施例の排気装置15において、消音器17の外壁18の貫通穴(穴部45、46、47)は外壁18の左部に設けられ、センサ挿入穴38は下流パイプ35の左部(厳密には下流パイプ35の後部の左部において若干上寄りの部分)に設けられ、取付部材71は消音器17の外壁18の左部から下流パイプ35の左部に向かって右方に伸長し、かつ取付部材71は消音器17の外壁18の左部から下流パイプ35の左部に向かって漸次縮径している。この構造により、取付部材71の周壁部の下側部分72は、取付部材71の底側よりも取付部材71の開口側の方が下方に位置するように傾斜している。取付部材71の周壁部の下側部分72がこのように傾斜しているので、取付部材71内に入った跳ね水や雨水は、取付部材71の周壁部の下側部分72の面を取付部材71の開口側に向かって流れ、取付部材71の外側に出る。したがって、取付部材71の内側に跳ね水や雨水が溜まるのを防ぐことができ、排気ガスセンサ63が水に浸かるのを抑制することができる。
【0069】
また、本実施例の排気装置15において、下流触媒62は消音器17の左右方向中心に配置されている。この構成により、下流触媒62を消音器17の外壁18から大きく離すことができ、下流触媒62からの熱が消音器17の外壁18に伝わることを抑制することができる。これにより、消音器17の周辺に配置された他の部品への熱害を防止することができる。また、このように、下流触媒62が消音器17内の中心付近に配置されている場合には、下流触媒62の下流端部に接続された下流パイプ35の外周面と消音器17の外壁18の外面との間の距離が極めて長くなるが、本実施形態の排気装置15によれば、消音器17の外壁18の貫通穴の周縁部に取付部材71を取り付ける構成により、下流パイプ35内を流通する排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサ63を消音器17に容易に取り付けることができる。
【0070】
また、本実施例の排気装置15において、取付部材71に設けられたボス部78の突出端側部分は、下流パイプ35のセンサ挿入穴38の周縁部に接合されていない状態でセンサ挿入穴38内に挿入されており、また、ボス部78の突出端側部分はセンサ挿入穴38の周縁部から離れた状態でセンサ挿入穴38内に挿入されている。この構成により、消音器17の外壁18、取付部材71等が排気ガスの熱により変形し、取付部材71の底側と下流パイプ35との距離が変化した場合に、ボス部78、取付部材71、下流パイプ35等に応力が加わることを抑制することができる。すなわち、仮に、ボス部78の突出端側部分が下流パイプ35のセンサ挿入穴38の周縁部に接合されているとすると、消音器17の外壁18、取付部材71等の膨張によって取付部材71の底側と下流パイプ35との距離が短くなった場合には、ボス部78と下流パイプ35とが互いに押し付けられ、ボス部78、取付部材71、下流パイプ35等に応力が加わる。また、消音器17の外壁18、取付部材71等の収縮によって取付部材71の底側と下流パイプ35との距離が長くなった場合には、ボス部78と下流パイプ35とが互いに引っ張られ、ボス部78、取付部材71、下流パイプ35等に応力が加わる。しかしながら、本実施例の排気装置15においては、ボス部78の突出端側部分が下流パイプ35のセンサ挿入穴38の周縁部に接合されておらず、また、ボス部78の突出端側部分が下流パイプ35のセンサ挿入穴38の周縁部から離れているので、消音器17の外壁18、取付部材71等の膨張または収縮によって取付部材71の底側と下流パイプ35との距離が変化した場合には、ボス部78が下流パイプ35に対して変位することができる。したがって、ボス部78、取付部材71、下流パイプ35等に応力が加わることを抑制することができる。よって、本実施例の排気装置15によれば、消音器17の外壁18、取付部材71等が排気ガスの熱により変形した場合に、ボス部78、取付部材71、下流パイプ35等が破損することを防ぐことができる。
【0071】
また、本実施例の排気装置15の取付部材71において、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとの間には、断熱機能および消音機能を有するグラスウール77が設けられている。この構成により、消音器17の断熱性能および消音性能を向上させることができる。
【0072】
また、本実施例の排気装置15の取付部材71において、ボス部78の取付部材71に対する接合箇所は第1の筒状部材73の底穴74の周縁部のみであり、第1の筒状部材73と第2の筒状部材75との接合箇所は、第1の筒状部材73の開口部の周縁部73Aおよび第2の筒状部材75の開口部の周縁部75Aのみである。この構成によれば、取付部材71を消音器17の外壁18の貫通穴の周縁部に取り付け、かつ排気ガスセンサ63を取付部材71に固定したときに、消音器17の外壁18の貫通穴を取付部材71および排気ガスセンサ63によって密に塞ぐ効果(シール効果)を十分に確保しながらも、取付部材71における接合箇所を少なくすることができる。したがって、上記シール効果を確保しながら、排気装置15の製造における接合作業の工数を減らして排気装置15の生産性を向上させることができる。
【0073】
なお、上記実施例では、
図8に示すように、ボス部78の突出端側部分がセンサ挿入穴38の周縁部から離れた状態でセンサ挿入穴38内に挿入されている場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、ボス部の突出端側部分をセンサ挿入穴の周縁部に軽く接触させてもよい。例えば、
図9に示すように、ボス部91の突出端側部分にテーパ部91Aを形成し、センサ挿入穴92の周縁部93を下流パイプ35の内側に曲げ、ボス部91のテーパ部91Aの外周面をセンサ挿入穴92の周縁部93に軽く接触させてもよい。
【0074】
また、上記実施例では、取付部材71において、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとの間にグラスウール77を設ける場合を例にあげたが、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとの間に何も設けず、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとの間を空間としてもよい。また、第1の筒状部材73の周壁部73Bと第2の筒状部材75の周壁部75Bとの間、外筒19と前内筒20との間、または外筒19と後内筒21との間に、グラスウール以外の断熱材または吸音材を設けてもよい。
【0075】
また、上記実施例では、車両の右側に配置された排気装置15を例にあげたが、本発明は、車両の左側に配置された排気装置にも適用することができる。この場合には、排気装置15の構成要素の配置および向きを左右逆にする。また、消音器において、膨張室の個数、または連通パイプの本数または配置は
図4に示すものに限定されない。また、下流触媒は消音器内において消音器の左右方向(幅方向)の中心から外れた位置に配置されていてもよい。また、本発明は、スクータに限らず、種々の型の自動二輪車に適用することができ、また、自動二輪車に限らず、種々の型の車両に適用することができる。
【0076】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う排気装置もまた本発明の技術思想に含まれる。