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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135868
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/00 20100101AFI20240927BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240927BHJP
   F01N 13/10 20100101ALI20240927BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20240927BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240927BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F01N13/00 C
F01N13/08 G
F01N13/10
F01N13/00 A
F01N3/00 F
F01N3/24 K
F01N3/24 J
F02D35/00 368D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046759
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】木口 喜美
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004DA13
3G004DA25
3G091AA03
3G091AB03
3G091HA05
3G091HA35
(57)【要約】
【課題】消音器に取り付けられた排気ガスセンサと車体に設けられた機器とを接続するケーブルを、消音器の熱から保護し、ぶらつきを防ぎつつ、消音器の近傍に配索することができるようにする。
【解決手段】鞍乗型車両は、後輪32の側方に設けられた消音器36と、消音器36内に設けられた下流触媒と、消音器36に取り付けられ、下流触媒を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサ61と、一端部が排気ガスセンサ61に接続され、他端部が鞍乗型車両1の車体に設けられたECUに接続されたケーブル85とを備え、消音器36には、消音器36をアーム11から離しつつアーム11に固定する上ブラケット68が設けられ、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は上ブラケット68に保持されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを含む車体、前記車体の前部に支持された前輪、および前記車体の後部に支持された後輪を備えた鞍乗型車両であって、
前記後輪の側方に設けられ、前記エンジンから排出される排気ガスの排気音を減少させる消音器と、
前記消音器内に設けられ、前記排気ガスを浄化する触媒と、
前記消音器に取り付けられ、前記触媒を流通した後の前記排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサと、
一端部が前記排気ガスセンサに接続され、他端部が前記車体に設けられた機器に接続されたケーブルとを備え、
前記消音器には、前記消音器を前記車体から離しつつ前記車体に固定するブラケットが設けられ、前記ケーブルの一端部と他端部との間の部分は前記ブラケットに保持されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記ブラケットは前記消音器から外向きに突出し、前記ケーブルは前記ケーブルの前記部分が前記ブラケットの突出端側の縁に沿って伸長するように前記ブラケットに保持されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記ブラケットは前記消音器から外向きに突出し、前記ブラケットには前記ブラケットを前記車体に固定するための固定部材を挿通させる挿通部が設けられ、前記ケーブルは前記ケーブルの前記部分が前記ブラケットにおいて前記挿通部が設けられている部分よりも突出端側の部分を通るように前記ブラケットに保持されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記ケーブルの前記部分は前記ブラケットの突出端側部分において前記挿通部よりも一側の部分および前記挿通部よりも他側の部分にそれぞれ保持されていることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記排気ガスセンサおよび前記ブラケットはいずれも前記消音器において前記車体側を向いた部分に前記車体に向かって突出するように取り付けられ、前記ケーブルの一端部は前記排気ガスセンサの突出端側部分に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記車体に向かって側方に突出し、かつ前後方向に伸長した板状に形成され、前記ケーブルは前記ケーブルの前記部分が前記ブラケットにおいて下を向いた面よりも下側を通るように前記ブラケットに保持されていることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記ブラケットは前記排気ガスセンサよりも前側に配置され、前記ブラケットには前記ブラケットを前記車体に固定するための固定部材を挿通させる挿通部が設けられ、前記挿通部から前記ブラケットの後端までの長さは前記挿通部から前記ブラケットの前端までの長さの2倍以上であることを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記エンジンはユニットスイング式のエンジンユニットに設けられ、前記エンジンユニットには前記後輪を支持するためのアームが設けられ、前記消音器は前記ブラケットを介して前記アームに固定され、前記排気ガスセンサは前記消音器において前記アームよりも後ろ側に位置する部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記ブラケットには、前記ケーブルの前記部分を自身と前記ブラケットとの間に保持する保持部材が設けられ、前記保持部材の一端側部分は前記ブラケットに固定され、前記保持部材の他端側部分と前記ブラケットとの間には、前記ケーブルの前記部分を前記保持部材と前記ブラケットとの間に挿入することができる隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、消音器、触媒および排気ガスセンサを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等、内燃機関を動力源とする鞍乗型車両において、触媒を消音器内に設けることがある。また、触媒内を流通した後の排気ガスの状態を検出するために、消音器に排気ガスセンサを取り付けることがある。特開2017-227157号公報(特許文献1)には、排気ガスセンサをマフラ(消音器)に取り付けた自動二輪車が記載されている。
【0003】
鞍乗型車両には、排気ガスセンサにより検出された排気ガスの状態に基づいて処理または制御を行う例えばECU(電子制御ユニット)等の機器が設けられている。排気ガスセンサは、このような機器とケーブルを介して接続され、排気ガスの状態を示す検出信号を当該機器に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-227157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鞍乗型車両において、上記機器は、カウルまたは車体カバー等で覆われた車体の内側部分に配置されていることが多い。また、消音器は後輪の側方に配置されていることが多い。このような鞍乗型車両において、排気ガスセンサを消音器に取り付けた場合、排気ガスセンサと上記機器とを接続するケーブルを消音器の近傍に配索する必要がある。
【0006】
消音器は排気ガスの熱によって高温になり、消音器の外壁の温度はケーブルの被覆の耐熱温度を超える。そのため、ケーブルを消音器の近傍に配索するに当たり、ケーブルを消音器の熱から保護することを考慮しなければならない。また、ケーブルが弛んでぶらつく場合には、鞍乗型車両において消音器の周辺に設けられた部品にケーブルが接触し、ケーブルの被覆が擦れ、または、消音器の周辺に設けられた部品にケーブルが引っ掛かってケーブルが引っ張られ、ケーブルが損傷することが懸念される。そのため、ケーブルを消音器の近傍に配索するに当たり、ケーブルが弛んでぶらつくことのないようにケーブルの配索方法や保持方法を検討しなければならない。このように、鞍乗型車両において、排気ガスセンサを消音器に取り付けた場合、排気ガスセンサと上記機器とを接続するケーブルを配索することは容易でない。
【0007】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、消音器に取り付けられた排気ガスセンサと車体に設けられた機器とを接続するケーブルを、消音器の熱から保護し、かつ、ぶらつきを防ぎつつ、消音器の近傍に配索することができる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、エンジンを含む車体、前記車体の前部に支持された前輪、および前記車体の後部に支持された後輪を備えた鞍乗型車両であって、前記後輪の側方に設けられ、前記エンジンから排出される排気ガスの排気音を減少させる消音器と、前記消音器内に設けられ、前記排気ガスを浄化する触媒と、前記消音器に取り付けられ、前記触媒を流通した後の前記排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサと、一端部が前記排気ガスセンサに接続され、他端部が前記車体に設けられた機器に接続されたケーブルとを備え、前記消音器には、前記消音器を前記車体から離しつつ前記車体に固定するブラケットが設けられ、前記ケーブルの一端部と他端部との間の部分は前記ブラケットに保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、消音器に取り付けられた排気ガスセンサと車体に設けられた機器とを接続するケーブルを、消音器の熱から保護し、かつ、ぶらつきを防ぎつつ、消音器の近傍に配索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施例の鞍乗型車両を示す説明図である。
図2図1中の鞍乗型車両の後ろ下部の構造を右から見た状態を示す説明図である。
図3図1中の鞍乗型車両の後ろ下部の構造を上から見た状態を示す説明図である。
図4図2中の鞍乗型車両の後ろ下部の構造から消音器等を取り除いたものを示す説明図である。
図5】本発明の第1の実施例の鞍乗型車両においてアームおよび消音器を後から見た状態を示す説明図である。
図6】本発明の第1の実施例の鞍乗型車両における消音器を左から見た状態を示す説明図である。
図7図6中の消音器の内部を示す説明図である。
図8図6中の切断線VIII-VIIIに沿って切断した消音器を上後方から見た状態を示す断面部である。
図9】本発明の第1の実施例の鞍乗型車両において、ケーブルが保持された消音器の上ブラケットを示す説明図である。
図10】本発明の第2の実施例の鞍乗型車両において、ケーブルを消音器の上ブラケットに保持する構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の鞍乗型車両は、エンジンを含む車体、車体の前部に支持された前輪、および車体の後部に支持された後輪を備えている。また、本実施形態の鞍乗型車両は、消音器、触媒、排気ガスセンサ、およびケーブルを備えている。消音器は、後輪の側方に設けられ、エンジンから排出される排気ガスの排気音を減少させる。触媒は、消音器内に設けられ、排気ガスを浄化する。排気ガスセンサは、消音器に取り付けられ、触媒を流通した後の排気ガスの状態を検出する。ケーブルは、信号伝送または電力供給等を行うための電気ケーブルであり、その一端部が排気ガスセンサに接続され、他端部が車体に設けられた機器に接続されている。さらに、本実施形態の鞍乗型車両において、消音器には、消音器を車体から離しつつ車体に固定するブラケットが設けられ、ケーブルの一端部と他端部との間の部分はそのブラケットに保持されている。
【0012】
ブラケットは、消音器を車体から離した状態で車体に固定する部材である。ブラケットは、消音器と車体との間隔に対応した長さを有する部材であり、例えばブラケットの長さ方向一端部が消音器に接続され、ブラケットの長さ方向他端部が車体に接続されている。
【0013】
ブラケットは、消音器と車体との間に配置されており、それゆえ、消音器の近傍に位置している。したがって、ケーブルの一端部と他端部との間の部分がブラケットに保持される構成とすることにより、ケーブルを消音器の近傍に配索することができる。
【0014】
また、ブラケットの長さ方向他端側の部分は消音器から離れている。それゆえ、エンジンの稼働中、消音器内を流通する排気ガスの熱により消音器の外壁が高温になった場合でも、ブラケットの長さ方向他端側の部分は消音器の外壁よりも温度が低くなる。また、ブラケットは消音器と車体との間を架橋するように設けられているので、鞍乗型車両の走行中、ブラケットには走行風が当たり易く、走行風によりブラケットの温度は下がり易い。したがって、ケーブルの一端部と他端部との間の部分をブラケットに保持させることにより、消音器の熱(排気ガスの熱)がケーブルに伝わることを抑制することができる。よって、消音器の熱からケーブルを保護することができる。
【0015】
また、排気ガスセンサおよびブラケットはいずれも消音器に設けられているので、排気ガスセンサとブラケットとは互いに接近している。排気ガスセンサに接続されたケーブルを、排気ガスセンサに接近した位置に配置されているブラケットに保持させることにより、排気ガスセンサとブラケットとの間でケーブルの弛みを抑えることができ、ケーブルのぶらつきを防ぐことができる。これにより、鞍乗型車両において消音器の周辺に設けられた部品にケーブルが接触してケーブルの被覆が擦れることを防ぐことができ、また、消音器の周辺に設けられた部品にケーブルが引っ掛かってケーブルが引っ張られることを防ぐことができる。したがって、ケーブルの損傷を抑制することができる。
【0016】
このように、本実施形態の鞍乗型車両によれば、消音器に取り付けられた排気ガスセンサと車体に設けられた機器とを接続するケーブルを、消音器の熱から保護し、かつ、ぶらつきを防ぎつつ、消音器の近傍に配索することができる。
【第1実施例】
【0017】
図1~9を参照しつつ、本発明の第1の実施例を説明する。実施例の説明において、上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、図中の角部に描いた矢印に従う。
【0018】
(鞍乗型車両)
図1は、本発明の第1の実施例の鞍乗型車両1を右から見た状態を示している。本実施例では、鞍乗型車両1として、自動二輪車、具体的にはスクータを例にあげる。鞍乗型車両1は、図1に示すように、車体2を有し、車体2は、車体フレーム3、ユニットスイング式のエンジンユニット4、後輪32を支持するアーム11、ハンドル25、シート26および車体カバー27を含む。エンジンユニット4およびアーム11は車体2の後ろ下部に配置されている。また、鞍乗型車両1は、前輪31、後輪32、消音器36、およびECU87を備えている。前輪31は車体2の前部に支持されている。後輪32は車体2の後部に支持されている。消音器36は後輪32の右方に配置されている。ECU87は車体2において車体カバー27またはシート26等に覆われた内側部分に配置されている。
【0019】
図2は鞍乗型車両1の後ろ下部の構造を右から見た状態を示している。図3は鞍乗型車両1の後ろ下部の構造を上から見た状態を示している。図2に示すように、エンジンユニット4は、鞍乗型車両1の動力源である内燃機関としてのエンジン5、およびエンジン5の動力を後輪32に伝える変速装置10を備えている。エンジン5は後輪32の前方に配置されている。エンジン5は、クランクケース6、シリンダ7、およびシリンダヘッド8を備えている。シリンダヘッド8の下部には、シリンダ7内からその外部へ排気ガスを排出するための排気口9が設けられている。排気口9はエキゾーストパイプ34を介して消音器36に接続されている。また、エキゾーストパイプ34内には上流触媒35が設けられている。上流触媒35は、排気ガスを浄化する装置であり、例えば三元触媒である。また、図3に示すように、変速装置10の前部はクランクケース6の左部に結合しており、変速装置10の後部は後輪32の左方に配置されている。
【0020】
アーム11は、エンジンユニット4と協働して後輪32を支持する機能を有する部材である。アーム11は、後輪32の右方に配置されており、アーム11の前端部はクランクケース6の右部に結合している。後輪32の車軸33の左端部はエンジンユニット4における変速装置10の後部に支持され、後輪32の車軸33の右端部はアーム11の後端部に支持されている。
【0021】
図4は、図2中の鞍乗型車両1の後ろ下部の構造から消音器36等を取り除き、アーム11の全体を視認することができるようにしたものである。図5はアーム11、およびアーム11に固定された消音器36を後から見た状態を示している。アーム11は、例えば、鋼またはアルミニウム等の金属材料により形成されている。アーム11は、図4に示すように、下アーム部12、上アーム部13、および補強部14を備えている。下アーム部12は、エンジン5のクランクケース6の右後ろの下部から後方に伸長している。上アーム部13は、エンジン5のクランクケース6の右後ろの上部から下方に傾斜しつつ後方に伸長した後、下アーム部12の後端部に結合している。補強部14は、下アーム部12の前端部と下アーム部12の前端部とを接続している。また、下アーム部12および上アーム部13のそれぞれの前端部には、アーム11をクランクケース6に結合するための結合部15が設けられている。また、互いに結合した下アーム部12および上アーム部13の後端部には、後輪32の車軸33を支持するための車軸支持部16が設けられている。
【0022】
また、アーム11は、消音器36をアーム11に固定するための構造を有している。すなわち、上アーム部13の前後方向略中間部には、消音器36に設けられた上ブラケット68を接続するための上接続部17が設けられている。上接続部17は、図5に示すように、上アーム部13から上方に傾斜しつつ右方に突出している。また、図4に示すように、上接続部17には、上ブラケット68を上接続部17に固定するボルト71を締着するための接続穴18が設けられている。接続穴18の内周面にはねじが形成されている。また、下アーム部12の後部には、消音器36に設けられた下ブラケット78を接続するための下接続部19が設けられている。また、下アーム部12の前部には、消音器36に設けられた下ブラケット81を接続するための下接続部21が設けられている。下接続部19、21は、図5に示すように、下アーム部12から右方にそれぞれ突出している。図4に示すように、下接続部19には、上接続部17と同様に、下ブラケット78を下接続部19に固定するボルト80を締着するための接続穴20が設けられ、接続穴20の内周面にはねじが形成されている。同様に、下接続部21にも、下ブラケット81を下接続部21に固定するボルト83を締着するための接続穴22が設けられ、接続穴22の内周面にはねじが形成されている。
【0023】
(消音器および下流触媒)
図6は消音器36を左から見た状態を示している。図7は消音器36の内部を示している。図8図6中の切断線VIII-VIIIに沿って切断した消音器36の断面を上後方(図6において右上)から見た状態を示している。消音器36は、エンジン5から排出される排気ガスの排気音を減少させる装置である。消音器36は後輪32の右方に配置され、前後方向に伸長している。また、消音器36はその後端部が前端部よりも上方に位置するように傾斜している。図6~8に示すように、消音器36は、その外郭を形成する外壁37を有している。外壁37は、外筒38、前内筒39、後内筒40、前蓋42、および後蓋43を備えている。
【0024】
外筒38は、楕円形の横断面形状を有する筒状に形成されている。外筒38は、例えばステンレス鋼等からなる金属板を湾曲させることにより形成された2枚の壁板のそれぞれの縁部を例えば溶接により互いに接合することにより形成されている。前内筒39および後内筒40は金属材料により楕円形の横断面形状を有する筒状に形成されている。前内筒39は外筒38の前部の内周側に設けられ、後内筒40は外筒38の後部の内周側に設けられている。また、外筒38の前部と前内筒39との間、および外筒38の後部と後内筒40との間には、断熱機能および消音機能を有するグラスウール41がそれぞれ設けられている。前蓋42は、外筒38および前内筒39の前端部に取り付けられ、外筒38および前内筒39の前側の開口部を塞いでいる。また、前蓋42の前端部には挿通穴が設けられ、この挿通穴内には上流パイプ49の前端部が挿入されている。後蓋43は、外筒38および後内筒40の後端部に取り付けられ、外筒38および後内筒40の後ろ側の開口部を塞いでいる。また、後蓋43の後端部には挿通穴が設けられ、この挿通穴内にはテールパイプ55の後端部が挿入されている。
【0025】
また、消音器36内には、2つの隔壁44、45が設けられている。これら隔壁44、45により、消音器36内には、その後部に配置された第1の膨張室46、前後方向中間部に配置された第2の膨張室47、および前部に配置された第3の膨張室48が形成されている。
【0026】
また、消音器36には、上流パイプ49、下流触媒50、下流パイプ51、第1の連通パイプ53、第2の連通パイプ54、およびテールパイプ55が設けられている。また、隔壁44、45には、複数の膨張室間を跨ぐパイプまたは下流触媒を通す穴が形成されている。
【0027】
上流パイプ49の前端部は、前蓋42の前端部に設けられた挿通穴を通って消音器36の外側に配置され、エキゾーストパイプ34の後端部に接続されている。上流パイプ49の後部は、第3の膨張室48内を通り抜けた後、第2の膨張室47内に至り、上流パイプ49の後端部は下流触媒50の前端部に接続されている。
【0028】
下流触媒50は、排気ガスを浄化する装置であり、例えば三元触媒である。下流触媒50は、消音器36内の前後方向中間部の下寄りの部分に配置されている。また、下流触媒50は、消音器36の左右方向における中心に配置されている。また、下流触媒50は第2の膨張室47と第1の膨張室46との間を跨ぎ、下流触媒50の前部は第2の膨張室47内に配置され、下流触媒50の後部は第1の膨張室46内に配置されている。
【0029】
下流パイプ51の前端部は下流触媒50の後端部に接続され、下流パイプ51の後端部は第1の膨張室46内に開口している。下流パイプ51内には、下流触媒50を流通した後の排気ガスが流通する。また、下流パイプ51の後部の左部にはセンサ挿入穴52が設けられている。
【0030】
第1の連通パイプ53は第1の膨張室46と第2の膨張室47との間を跨ぎ、第1の連通パイプ53の後端部は第1の膨張室46内に開口し、第1の連通パイプ53の前端部は第2の膨張室47内に開口している。第2の連通パイプ54は第2の膨張室47と第3の膨張室48との間を跨ぎ、第2の連通パイプ54の後端部は第2の膨張室47内に開口し、第2の連通パイプ54の前端部は第3の膨張室48内に開口している。テールパイプ55は、第3の膨張室48から、第2の膨張室47および第1の膨張室46を通り抜け、さらに後蓋43に設けられた挿通穴を通って消音器36の外側へ伸長している。テールパイプ55の前端部は第3の膨張室48内に開口し、テールパイプ55の後端部は消音器36の外側に後ろ向きに開口している。
【0031】
エンジン5の排気口9から排出された排気ガスは、エキゾーストパイプ34内に流入し、上流触媒35内を流通した後、消音器36の上流パイプ49内に流入する。その後、排気ガスは、上流パイプ49、下流触媒50、下流パイプ51のそれぞれの内部を流通して第1の膨張室46内に流入する。その後、排気ガスは、第1の連通パイプ53内を流通して第2の膨張室47内に流入する。その後、排気ガスは、第2の連通パイプ54内を流通して第3の膨張室48内に流入する。その後、排気ガスは、テールパイプ55内を流通し、テールパイプ55の後端側の開口部から大気中に排出される。
【0032】
(排気ガスセンサ)
消音器36には、下流触媒50を流通した後の排気ガスの状態を検出する排気ガスセンサ61が取り付けられている。下流触媒50内を流通した後の排気ガスの状態を検出することにより、下流触媒50の劣化を判定することができる。排気ガスセンサ61は、例えばジルコニア方式の酸素センサである。排気ガスセンサ61は、下流触媒50内を流通した後の排気ガスの酸素濃度を検出する。排気ガスセンサ61の一端側部分の内部には、図8に示すように、ジルコニアを用いて形成されたセンサ素子62が設けられている。
【0033】
排気ガスセンサ61は、消音器36において車体2側を向いた部分に、車体2に向かって突出するように取り付けられている。また、排気ガスセンサ61は、消音器36において、アーム11よりも後ろ側に位置する部分に取り付けられている。具体的には、排気ガスセンサ61は、図6に示すように、消音器36の後部の左部に左上方に突出するように取り付けられている。より具体的に説明すると、消音器36の外壁37の後部の左部には、消音器36の内部と外部との間を連通する貫通穴が設けられている。すなわち、図8に示すように、外筒38の後部の左部には、外筒38の当該部分を貫通する穴部56が設けられている。また、後内筒40において、この穴部56に対応する部分には、後内筒40の当該部分を貫通する穴部57が設けられている。また、グラスウール41において、穴部56に対応する部分には、グラスウール41の当該部分を貫通する穴部58が設けられている。消音器36の外壁37の後部の左部の貫通穴はこれら穴部56、57、58により構成されている。
【0034】
また、この貫通穴の周縁部には、排気ガスセンサ61を消音器36に固定するための取付部材63が取り付けられている。取付部材63は有底筒状(例えばカップ状)に形成されている。取付部材63の開口部の周縁部は、外筒38に設けられた穴部56の周縁部に例えば溶接により接合されている。また、取付部材63は、穴部56の周縁部から消音器36の内側に伸長し、取付部材63の底部は、下流パイプ51の左部に接近している。また、取付部材63の底部には、当該底部を貫通する底穴が設けられており、底穴の位置は、下流パイプ51のセンサ挿入穴52と対応している。また、取付部材63は、例えば金属材料からなる2つの有底筒状(カップ状)の部材63A、63Bを重ね合わせることにより形成されている。また、部材63Aの周壁部と部材63Bの周壁部との間には、断熱機能および消音機能を有するグラスウール64が設けられている。
【0035】
また、取付部材63の底穴の周縁部には、排気ガスセンサ61を取付部材63に固定するセンサ固定ボス部65が設けられている。センサ固定ボス部65は筒状に形成され、センサ固定ボス部65の内側は、排気ガスセンサ61を締結するための固定穴66となり、固定穴66の内周面にはねじが形成されている。センサ固定ボス部65は取付部材63の底穴の周縁部に例えば溶接により接合されている。センサ固定ボス部65は、取付部材63の底穴の周縁部から下流パイプ51に向かって突出している。センサ固定ボス部65の突出端側部分はセンサ挿入穴52内に挿入されている。また、センサ固定ボス部65の突出端側部分は、センサ挿入穴52の周縁部には接合されておらず、センサ挿入穴52の周縁部から全周に亘って離れている。また、センサ固定ボス部65の突出端側部分とセンサ挿入穴52の周縁部との隙間の大きさは、エンジン5の稼働中(エンジン5から消音器36内に排気ガスが送り込まれている間)に、当該隙間を排気ガスが流通することを十分に抑制することができるように、極めて小さい値(例えば6mm以下)に設定されている。
【0036】
排気ガスセンサ61は、消音器36の外壁37の貫通穴(穴部56、57、58)内に挿入され、取付部材63の内側に配置されている。また、排気ガスセンサ61の一端側部分は、センサ固定ボス部65の固定穴66内およびセンサ挿入穴52内に挿入されている。これにより、排気ガスセンサ61のセンサ素子62の一部が下流パイプ51の内側に挿入されている。このような状態で、排気ガスセンサ61はセンサ固定ボス部65に固定されている。また、排気ガスセンサ61はその大部分が取付部材63の内側に入り込んでいるが、排気ガスセンサ61の他端側部分は、取付部材63から外側に出ており、消音器36から左上方に突出している。
【0037】
(消音器の固定)
消音器36は、車体2の一部であるアーム11に固定されている。具体的には、図2および図3に示すように、消音器36は、アーム11の右方に配置され、アーム11の右部に、アーム11から右方に離れた状態で固定されている。消音器36には、消音器36をアーム11から離しつつアーム11に固定するための上ブラケット68および2つの下ブラケット78、81が設けられている。上ブラケット68および下ブラケット78、81は、消音器36において車体2側を向いた部分に、車体2に向かって突出するように取り付けられている。消音器36は上ブラケット68および下ブラケット78、81を介してアーム11に固定されている。
【0038】
上ブラケット68は、図6に示すように、消音器36の外壁37の左前上部に設けられている。上ブラケット68は、図8に示すように、消音器36の外壁37の外面から左上方向に外向きに突出している。上ブラケット68の突出方向の水平に対する角度は例えばおよそ30~60度である。また、上ブラケット68は、左上方に突出しつつ前後方向に伸長した板状に形成されている。上ブラケット68は、例えばステンレス鋼板等の金属板により形成された2枚のブラケット片68Aを例えば溶接により互いに接合することにより形成されている。また、上ブラケット68の突出端側部分には、上ブラケット68をアーム11に固定するためのボルト71を、クッションゴム72を介して挿通させるボス69が設けられている。ボス69にはボルト71およびクッションゴム72を挿通させるための挿通穴70が設けられている。ボス69は、金属材料により形成され、例えば溶接により上ブラケット68に接合されている。また、上ブラケット68の基端側部分は消音器36の外壁37における外筒38の左の壁板の外面に例えば溶接により接合されている。なお、ボルト71は「固定部材」の具体例であり、ボス69は「挿通部」の具体例である。
【0039】
上ブラケット68は、アーム11の上接続部17の先端部に、金属製のボルト71により、クッションゴム72、ワッシャ73およびスペーサ74を介して固定される。すなわち、図8に示すように、上ブラケット68のボス69の挿通穴70内には円筒状のクッションゴム72が挿入され、そのクッションゴム72の中央の穴内には、ワッシャ73が装着されたボルト71が挿入される。また、クッションゴム72の中央の穴内に挿入されたボルト71にはスペーサ74が装着される。さらに、そのボルト71は、図5に示すように、アーム11の上接続部17の接続穴18内に締着される。
【0040】
下ブラケット78、81は、図6に示すように、消音器36の外壁37の左前下部にそれぞれ設けられている。下ブラケット78、81は、消音器36の外壁37の外面から左下方向に外向きに突出している。また、下ブラケット78、81は、左下方に突出しつつ前後方向に伸長した板状に形成されている。下ブラケット78は、上ブラケット68と同様に、2枚のブラケット片を互いに接合することにより形成され、下ブラケット78の突出端側部分にはボス79が接合されている。また、下ブラケット78の基端側部分は消音器36の外壁37における外筒38の左の壁板の外面に接合されている。下ブラケット81も下ブラケット78と同様に形成され、下ブラケット81の突出端側部分にはボス82が接合されている。また、下ブラケット81の基端側部分は消音器36の外壁37における前蓋42の外面に接合されている。図5に示すように、下ブラケット78は、アーム11の下接続部19の先端部に、金属製のボルト80により、クッションゴム、ワッシャおよびスペーサを介して固定される。また、下ブラケット81は、アーム11の下接続部21の先端部に、金属製のボルト83により、クッションゴム、ワッシャおよびスペーサを介して固定される。
【0041】
(ケーブルの配索および保持)
鞍乗型車両1は、図2および3に示すように、排気ガスセンサ61とECU87とを接続するケーブル85を備えている。排気ガスセンサ61は、下流触媒50を流通した後の排気ガスの酸素濃度を検出し、当該排気ガスの酸素濃度を示す検出信号を出力する。その検出信号はケーブル85を介してECU87に伝送される。ECU87は「車体に設けられた機器」の具体例である。
【0042】
ケーブル85の一端部は、消音器36の後部の左部から左上方に突出した排気ガスセンサ61の他端側部分(突出端側部分)に接続されている。排気ガスセンサ61の他端側部分の前後方向における位置は、後輪32の車軸33よりも後ろ側であり、かつ後輪32の外周面の最後端位置P(図2を参照)よりも前側である。排気ガスセンサ61の他端側部分の上下方向における位置は、後輪32の車軸33よりも上側であり、かつ後輪32の外周面の最上端位置Q(図2を参照)よりも下側である。排気ガスセンサ61の他端側部分の左右方向における位置は、後輪32と消音器36との間において、両者間の中心よりも消音器36寄りの位置である。一方、ケーブル85の他端部はコネクタ86を介してECU87に接続されている。ECU87は例えば鞍乗型車両1の車体2において前後方向中間部、例えばシート26の前部の下側に配置されている。ケーブル85は、排気ガスセンサ61の他端側部分から、後輪32と消音器36との間において後輪32の車軸33よりも上方の領域内を前方に伸長し、その後、クランクケース6の上部の右方を伸長し、その後、車体2の内側部分に入り、車体2の内側部分をECU87に至るまで伸長している。
【0043】
また、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、図3に示すように、上ブラケット68に保持されている。すなわち、ケーブル85においてその一端部および他端部を除く部分を中途部分というとすると、ケーブル85の中途部分における一部分が上ブラケット68に保持されている。上ブラケット68の前後方向における位置は、後輪32の車軸33よりも前側であり、かつクランクケース6よりも後ろ側である。また、上ブラケット68は排気ガスセンサ61よりも前側に配置されている。上ブラケット68の上下方向における位置は、後輪32の車軸33よりも上側であり、かつ後輪32の外周面の最上端位置Qよりも下側である。また、上ブラケット68の上下方向における位置は、排気ガスセンサ61の他端側部分の上下方向における位置よりも若干上側である。上ブラケット68の左右方向における位置は、後輪32と消音器36との間において、両者間の中心よりも消音器36寄りの位置である。また、上ブラケット68の左右方向における位置は排気ガスセンサ61の他端側部分の左右方向における位置と略同じである。
【0044】
ケーブル85は、その一端部と他端部との間の部分が上ブラケット68に保持されることにより、上述した排気ガスセンサ61の他端側部分の位置から、上述した上ブラケット68の位置を通り、前方に伸長している。排気ガスセンサ61の他端側部分および上ブラケット68が上述したような位置にそれぞれ配置されているので、ケーブル85は、排気ガスセンサ61の他端側部分から上ブラケット68に至るまで、若干上方に傾斜しつつ前方に伸長している。また、ケーブル85の左右方向の位置は、排気ガスセンサ61の他端側部分から前方に湾曲した後、上ブラケット68に至るまでの間、略変化していない。また、ケーブル85は、後輪32、消音器36およびアーム11のいずれにも接触していない。
【0045】
図9(A)はケーブル85が保持された上ブラケット68を左下から見た状態を示している。図9(B)はケーブル85が保持された上ブラケット68を左上から見た状態を示している。上ブラケット68は、図9(A)に示すように、山なり形状を有している。ボス69は、上ブラケット68の突出端側の頂部よりも若干下方に配置されている。また、上ブラケット68は前後方向に長い。また、ボス69から上ブラケット68の後端までの長さL1はボス69から上ブラケット68の前端までの長さL2の2倍以上である。
【0046】
また、上ブラケット68の突出端側部分には2つのクランプ取付穴75、76が設けられている。各クランプ取付穴75、76は、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分を上ブラケット68に保持させるためのクランプ77を取り付けるための穴であり、上ブラケット68を貫通している。一方のクランプ取付穴75は、上ブラケット68の突出端側部分の前後方向中間部に配置され、他方のクランプ取付穴76は、上ブラケット68の突出端側部分の前端側部分に配置されている。また、一方のクランプ取付穴75は、上ブラケット68の突出端側部分においてボス69よりも後ろ側に配置され、他方のクランプ取付穴76は、上ブラケット68の突出端側部分においてボス69よりも前側に配置されている。
【0047】
ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、当該部分における2箇所が上ブラケット68に保持されている。すなわち、ケーブル85の中途部分における一部分における2箇所が上ブラケット68に保持されている。具体的には、図9(A)および9(B)に示すように、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、クランプ取付穴75に取り付けられたクランプ77により、上ブラケット68の突出端側部分の前後方向中間部に保持され、クランプ取付穴76に取り付けられたクランプ77により、上ブラケット68の突出端側部分の前端側部分に保持されている。ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、2つのクランプ77により、上ブラケット68に対して前、後、上、下、左、右のいずれの方向にも移動しないように、上ブラケット68に保持されている。なお、各クランプ77の結束を弛めに設定することにより、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が上ブラケット68に対して前後方向に若干移動することができるようにしてもよい。
【0048】
各クランプ77は例えば樹脂製の結束バンドである。クランプ77をクランプ取付穴75(または76)内に通し、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分と上ブラケット68の突出端側部分とを結束することにより、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が上ブラケット68の突出端側部分に保持される。
【0049】
また、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、図9(A)に示すように、上ブラケット68においてボス69が設けられている部分よりも突出端側の部分を通るように上ブラケット68に保持されている。また、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、上ブラケット68の突出端側の縁に沿って伸長するように上ブラケット68に保持されている。また、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、図6、8および9(B)に示すように、上ブラケット68において下を向いた面よりも下側を通るように上ブラケット68に保持されている。
【0050】
以上説明した通り、本発明の第1の実施例の鞍乗型車両1においては、排気ガスセンサ61とECU87とを接続するケーブル85の一端部と他端部との間の部分が、消音器36をアーム11から離しつつアーム11に固定するための上ブラケット68に保持されている。上ブラケット68は消音器36をアーム11に固定する部材であるゆえ、消音器36の近傍に配置されている。ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が上ブラケット68に保持される構成とすることにより、ケーブル85を消音器36の近傍に配索することができる。
【0051】
また、エンジン5の稼働中、エンジン5から排出された高温の排気ガスが消音器36内を流通する。消音器36内の排気ガスの熱は消音器36の外壁37に伝導する。その結果、消音器36の外壁37の温度は上昇し、その温度は、ケーブル85の被覆の耐熱温度を超える。消音器36内の排気ガスの熱は消音器36の外壁37から上ブラケット68にも伝導する。しかしながら、上ブラケット68は、消音器36の外壁37から外向きに突出しており、外壁37と比較して、排気ガスが流通している消音器36の内部から離れている。それゆえ、上ブラケット68においては、外壁37と比較して排気ガスの熱の伝導が抑制される。その結果、上ブラケット68の温度は外壁37の温度よりも低く、ケーブル85の被覆の耐熱温度未満である。ケーブル85の一端部と他端部との間の部分を上ブラケット68に保持させることにより、ケーブル85を消音器36の近傍に配索しつつも、ケーブル85の被覆が消音器36の熱、すなわち消音器36の外壁37に伝導した排気ガスの熱により損傷することを防ぐことができる。
【0052】
また、上ブラケット68は、消音器36の外壁37から外向きの突出している。また、上ブラケット68は消音器36とアーム11との間を架橋するように配置されている。そのため、鞍乗型車両1の走行中、上ブラケット68には走行風が当たり易い。上ブラケット68に走行風が当たることにより、上ブラケット68が冷却される。さらに、上ブラケット68は消音器36の外壁37から突出しつつ前後方向に伸長した板状に形成されているので、上ブラケット68は冷却フィンとして機能し、走行風による上ブラケット68の冷却効率が高まる。したがって、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分を上ブラケット68に保持させることにより、ケーブル85の被覆が消音器36の熱により損傷することを確実に防ぐことができる。
【0053】
また、本実施例の鞍乗型車両1においては、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が、上ブラケット68の突出端側の縁に沿って伸長するように上ブラケット68に保持されている。上ブラケット68の突出端側部分は、上ブラケット68において消音器36の外壁37から最も離れている部分であるので、上ブラケット68において排気ガスの熱の伝導の抑制効果が大きい部分である。また、上ブラケット68の突出端側部分は、上ブラケット68において走行風が当たり易い部分であるので、走行風による冷却効率が高い部分である。したがって、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が上ブラケット68の突出端側の縁に沿って伸長するように上ブラケット68に保持される構成とすることにより、ケーブル85の被覆が消音器36の熱により損傷することを確実に防ぐことができる。また、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分を上ブラケット68の突出端側の縁に沿うようにすることで、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分における広い範囲を、上ブラケット68において温度の低い部分に配置することができ、ケーブル85の被覆が消音器36の熱により損傷することを防ぐ効果を高めることができる。
【0054】
また、本実施例の鞍乗型車両1においては、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が、上ブラケット68においてボス69が設けられている部分よりも突出端側の部分を通るように上ブラケット68に保持されている。ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、消音器36から見てボス69の向こう側に配置されているので、ボス69に設けられたクッションゴム72等の遮熱作用により、排気ガスの熱がケーブル85に伝わり難くなる。したがって、ケーブル85の被覆が排気ガスの熱により損傷することを確実に防ぐことができる。
【0055】
また、本実施例の鞍乗型車両1において、排気ガスセンサ61および上ブラケット68はいずれも消音器36に設けられているので、排気ガスセンサ61と上ブラケット68とは互いに接近している。排気ガスセンサ61の他端側部分に接続されたケーブル85を、排気ガスセンサ61に接近した位置に配置されている上ブラケット68に保持させることにより、排気ガスセンサ61の他端側部分と上ブラケット68との間でケーブル85の弛みを抑えることができ、ケーブル85のぶらつきを防ぐことができる。これにより、消音器36の周辺に設けられた部品(例えばアーム11や後輪32)にケーブル85が接触してケーブル85の被覆が擦れることを防ぐことができ、また、消音器36の周辺に設けられた部品にケーブル85が引っ掛かってケーブル85が引っ張られることを防ぐことができる。したがって、ケーブル85の損傷を抑制することができる。
【0056】
また、本実施例の鞍乗型車両1において、排気ガスセンサ61および上ブラケット68はいずれも、消音器36において車体2側を向いた部分に車体2に向かって突出するように設けられている。これにより、排気ガスセンサ61の他端側部分から上ブラケット68にかけてケーブル85を直線に近い状態で配索することができる。したがって、ケーブル85の弛みを小さくすることができる。
【0057】
また、本実施例の鞍乗型車両1においては、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が、上ブラケット68の突出端側部分における前後方向中間部と前端側部分との2箇所に保持されている。これにより、ケーブル85を排気ガスセンサ61の他端側部分から前方に向かうように、ケーブル85の配索方向を高精度に定めることができる。また、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が上ブラケット68に対して移動しないようにし、または移動し難くなるようにすることできる。したがって、排気ガスセンサ61の他端側部分と上ブラケット68との間において、ケーブル85が弛むことを抑えることができる。
【0058】
また、本実施例の鞍乗型車両1において、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、上ブラケット68において下を向いた面よりも下側を通るように上ブラケット68に保持されている。これにより、消音器36とアーム11との間に配置されたケーブル85の上方を上ブラケット68で覆うことができ、消音器36の上方からケーブル85に接近する物体(同乗者の足や、シート後部に荷物を固定するためのロープ等)からケーブル85を保護することができる。
【0059】
また、本実施例における上ブラケット68において、ボス69から上ブラケット68の後端までの長さは、ボス69から上ブラケット68の前端までの長さの2倍以上である。これにより、上ブラケット68の後部の大きい面積を有する板状の部分で、ケーブル85の一端側部分を広範囲に亘って覆って保護することができる。また、上ブラケット68の面積を大きくすることにより上ブラケット68の放熱性(冷却フィンとしての性能)を高めることができる。
【0060】
また、本実施例の鞍乗型車両1において、排気ガスセンサ61は、消音器36においてアーム11よりも後ろ側に位置する部分に取り付けられている。これにより、鞍乗型車両1において、配置されている部品の数が少なく、排気ガスの熱がこもり難い場所に排気ガスセンサ61を配置することができる。したがって、排気ガスセンサ61の他端側部分に接続されたケーブル85の一端部の温度上昇を抑えることができる。
【第2実施例】
【0061】
図10を参照しつつ、本発明の第2の実施例を説明する。なお、第2の実施例において、上記第1の実施例と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。本発明の第2の実施例の鞍乗型車両の特徴は、ケーブル85を消音器36の上ブラケット68に掛け留めする保持部材91が上ブラケット68に設けられ、ケーブル85が保持部材91を用いて上ブラケット68に保持されている点にある。図10(A)は、保持部材91を用いてケーブル85が保持された上ブラケット68を左下から見た状態を示している。図10(B)は、ボルト71およびケーブル85等が取り外された図10(A)中の上ブラケット68を略後ろから見た状態を示している。図10(C)は保持部材91の外観を示している。図10(D)は、図10(C)中の切断線X-Xに沿って切断した保持部材91の断面を図10(C)中における右から見た状態を示している。
【0062】
保持部材91は、図10(C)および10(D)に示すように、耐熱性の高い材料、例えば金属材料からなる棒材を、長方形の環状に曲げることにより形成されている。保持部材91は、図10(A)および10(B)に示すように、上ブラケット68の左下を向いた外面90に設けられている。保持部材91の上部91A(一端側部分)は例えば溶接により外面90上に固定されている。図10(A)中の符号95は固定箇所を示している。一方、保持部材91の下部91B(他端側部分)は外面90から離れている。保持部材91の前部91Cおよび後部91Dは、それらの上端側が外面90に接近し、下端側が外面90から離れるように、外面90に対して傾斜している。保持部材91の前部91Cの上下方向中間部には、外面90から離れる方向に突出するように屈曲した屈曲部93が形成されている。また、保持部材91の後部91Dの上下方向中間部にも、外面90から離れる方向に突出するように屈曲した屈曲部94が形成されている。図10(B)に示すように、上ブラケット68を略後ろから見たとき、保持部材91および上ブラケット68により、フック状の構造が形成されている。なお、第2の実施例においては、第1の実施例と異なり、上ブラケット68にクランプ取付穴75、76が設けられていない。
【0063】
ケーブル85の一端部と他端部との間の部分は、保持部材91と外面90との間に挿入され、両者間に掛け留めされることにより、上ブラケット68に保持されている。ケーブル85は、保持部材91の屈曲部94と外面90との間、および保持部材91の屈曲部93と外面90との間を通っている。すなわち、ケーブル85は、屈曲部94と外面90との間を通る部分と、屈曲部93と外面90との間と通る部分の2箇所において、上ブラケット68に保持されている。屈曲部94と外面90との隙間の大きさ、および屈曲部93と外面90との隙間の大きさはぞれぞれケーブル85の外径よりも若干大きい。したがって、ケーブル85は、保持部材91と外面90との間において概ね前後方向に若干動くことができる。
【0064】
保持部材91は、上ブラケット68の外面90において、ボス69よりも後側の部分に配置されている。また、保持部材91は、上ブラケット68を左下から見たときに、その上辺および下辺が上ブラケット68の後部の突出端側の縁に沿うように配置されている。それゆえ、屈曲部94と屈曲部93とを通る直線Kは、図10(A)に示すように、上ブラケット68の後部の突出端側の縁と略平行である。その結果、屈曲部94と外面90との間および屈曲部93と外面90との間を通るケーブル85は、上ブラケット68の後部の突出端側の縁と略平行に伸長することとなる。ケーブル85は、排気ガスセンサ61の他端側部分から若干上方に傾斜しつつ前方に伸長した後、屈曲部94と外面90との間を通り、続いて屈曲部93と外面90との間を通り、続いてボス69の上方を通り、その後、第1の実施例と同様にECU87に向かって伸長している。
【0065】
また、保持部材91の下部91Bと外面90との間には、図10(B)に示すように、隙間Gが形成されている。隙間Gの大きさは、例えばケーブル85の外径と略等しい値、またはケーブル85の外径よりも若干小さい値に設定されている。鞍乗型車両の製造者等は、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分を、隙間Gを通して、保持部材91と外面90との間に挿入することができ、また、隙間Gを通して、保持部材91と外面90との間から取り外すことができる。隙間Gの大きさが、ケーブル85の外径よりも若干小さい値に設定されている場合には、鞍乗型車両の製造者等は、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分を隙間Gに圧入することによって保持部材91と外面90との間に挿入することができる。ケーブル85の一端部と他端部との間の部分が保持部材91と外面90との間に挿入され、ケーブル85が配索された状態では、ケーブル85において保持部材91と外面90との間に挿入された部分には、上方にテンションがかかる。それゆえ、保持部材91と外面90との間に挿入されたケーブル85が、走行時の振動等により、隙間Gを介して保持部材91と外面90との間から抜け出ることはない。
【0066】
このような構成を有する本発明の第2の実施例の鞍乗型車両によっても、本発明の第1の実施例の鞍乗型車両1と同様に、消音器36に取り付けられた排気ガスセンサ61と車体2に設けられたECU87とを接続するケーブル85を、消音器36の熱から保護し、かつ、ぶらつきを防ぎつつ、消音器36の近傍に配索することができる。さらに、本発明の第2の実施例の鞍乗型車両によれば、ケーブル85を、保持部材91の下部91Bと外面90との間に設けられた隙間Gを通して、保持部材91と外面90との間に挿入し、また、保持部材91と外面90との間から取り外すことができる。これにより、鞍乗型車両の組立およびメンテナンスを容易にすることができる。また、上ブラケット68の左下を向いた外面90上に配置された保持部材91を用いてケーブル85を保持することにより、ケーブル85の保持部分を外部から隠すことができ、鞍乗型車両の外観を良くすることができる。
【0067】
なお、上記各実施例では、消音器36が上ブラケット68および下ブラケット78、81を介してアーム11に固定された構造を有する鞍乗型車両1を例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明は、例えば、ユニットスイング式のエンジンユニットを搭載した小型のスクータ等のように、エンジンユニットにアームが設けられておらず、消音器がブラケットを介してエンジンのクランクケースに固定された構造を有する鞍乗型車輌にも適用することができる。この場合には、排気ガスセンサとECUとを接続するケーブルを、エンジンのクランクケースに消音器を固定するブラケットに保持させる。また、本発明は、スクータ型ではない自動二輪車のように、操縦者が足を乗せるステップを車体フレームに固定するためのドライバステップブラケット、および同乗者が足を乗せるタンデムステップを車体フレームに固定するためのタンデムステップブラケットが設けられ、消音器がブラケットを介してドライバステップブラケットまたはタンデムステップブラケットに固定された構造を有する鞍乗型車両にも適用することができる。この場合には、ドライバステップブラケットまたはタンデムステップブラケットに消音器を固定するブラケットに、排気ガスセンサとECUとを接続するケーブルを保持させる。
【0068】
また、上記各実施例では、排気ガスセンサ61からECU87へ検出信号を伝送するケーブル85を消音器36の上ブラケット68に保持させる場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。排気ガスセンサには、検出信号をECUに伝送する信号ケーブルの他に、排気ガスセンサのセンサ素子を加熱するために排気ガスセンサ内に設けられたヒータに電力を供給するための電源ケーブルが接続されている場合がある。この場合には、信号ケーブルと電源ケーブルとを束ねたハーネスケーブルを排気ガスセンサに接続し、そのハーネスケーブルを消音器36の上ブラケット68に保持させる。また、ケーブル85の他端部が接続される機器はECUに限らず、例えば電源装置等、他の電気機器でもよい。
【0069】
また、一端部が排気ガスセンサに接続され、他端部が機器に接続されたケーブルとは、排気ガスセンサと機器との間が1本のケーブルのみで接続されている場合には、その1本のケーブルを意味し、排気ガスセンサと機器との間が、コネクタ等を介して直列に接続された複数のケーブルで接続されている場合には、コネクタ等を介して直列に接続された複数のケーブルを意味し、排気ガスセンサが車両内に形成された通信ネットワークを介して機器に接続されている場合には、排気ガスセンサを通信ネットワークに接続するケーブルおよび通信ネットワークを形成するケーブルを意味する。
【0070】
また、上記第1の実施例では、ケーブル85の一端部と他端部との間の部分における2箇所を上ブラケット68に保持させる場合を例にあげたが、ケーブル85を上ブラケット68に保持させる箇所は1箇所でもよいし、3箇所以上でもよい。
【0071】
また、上記第2の実施例における保持部材91の具体的な形状は限定されない。例えば、保持部材を、く字状または円弧状に曲がった短い棒状の部材としてもよい。この棒状の保持部材の一端部を上ブラケット68の外面90上に固定し、他端部を上ブラケット68の外面90から離し、この保持部材と上ブラケット68との間にケーブル85を掛け留めできるようにしてもよい。
【0072】
また、上記各実施例では、ケーブル85を上ブラケット68に保持させたが、ケーブル85を下ブラケット78または下ブラケット81に保持させることも可能である。また、上記各実施例で述べた鞍乗型車両1の後ろ下部の構造は左右逆でもよい。また、消音器36の外壁37または内部の具体的な構造は上記各実施例で述べたものに限定されない。また、本発明は自動三輪車にも適用することができる。
【0073】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 鞍乗型車両
2 車体
4 エンジンユニット
5 エンジン
11 アーム
32 後輪
36 消音器
50 下流触媒(触媒)
61 排気ガスセンサ
68 上ブラケット(ブラケット)
69 ボス(挿通部)
71 ボルト(固定部材)
85 ケーブル
87 ECU(機器)
90 外面
91 保持部材
図1
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