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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135887
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046784
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】矢野 新也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB05
5F136BC02
5F136DA27
5F136EA13
5F136FA05
(57)【要約】
【課題】外部配線との接続が容易な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体チップ、第1配線部および熱拡散部を備える。半導体チップは、相互に対向する第1面と第2面を有し、第1面に配置された第1電極を含む。第1配線部は、外部配線と接続する接続領域が定義された第1接続面を有し、第1接続面に対向する第2接続面で第1電極と電気的に接続する。熱拡散部は、第2面を介して半導体チップと熱的に接続する。第1配線部の接続領域の面積は、第1配線部と接続する第1電極の面積よりも広い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部配線と接続可能な半導体装置であって、
相互に対向する第1面と第2面を有し、前記第1面に配置された第1電極を含む半導体チップと、
相互に対向する第1接続面と第2接続面を有し、前記第1接続面に前記外部配線と接続する接続領域が定義され、前記第2接続面で前記第1電極と電気的に接続する第1配線部と、
前記第2面を介して前記半導体チップと熱的に接続する熱拡散部と
を備え、
前記接続領域の面積が、前記第1配線部と接続する前記第1電極の面積よりも広い、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップから前記熱拡散部に熱が伝達される放熱経路において、前記放熱経路の前記半導体チップに向いた面積が、前記半導体チップの前記熱拡散部に対向する面積よりも広い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1配線部が導電体で形成された配線パターンであり、
前記第1配線部と前記第1電極は、ビアを介して電気的に接続されている、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップが、前記第2面に配置された第2電極を含む横型構造の半導体素子を含み、
前記第1電極と前記第2電極が電気的に絶縁されている、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップの周囲に配置された基材と、
前記基材と前記半導体チップとの隙間に配置されたフィリング材と、
前記半導体チップの表面を覆う保護絶縁膜と
を備える、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
複数の前記接続領域を有し、
前記接続領域の相互の距離が、空気により絶縁される距離よりも長い、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップが相互に並列接続された複数の半導体素子を含み、
前記第1配線部は、前記半導体チップと前記熱拡散部の間に配置された第2配線部の一部と電気的に接続され、
前記第1配線部と前記第2配線部を含んで前記接続領域から前記第1電極までを電気的に接続する配線の長さが、それぞれの前記半導体素子で等しい、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1配線部と同一平面レベルに配置されて前記第1配線部と逆向きの電流が流れる配線部の一部と、前記第2配線部の一部が対向している、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体チップが相互に並列接続された複数の半導体素子を含み、
前記第1配線部が配置された平面レベルの下方、且つ前記第1電極が配置された平面レベルの上方の平面レベルに配置され、前記接続領域と前記第1電極を電気的に接続する中間配線部を備え、
前記第1配線部と前記中間配線部を含んで前記接続領域から前記第1電極までを電気的に接続する配線の長さが、それぞれの前記半導体素子で等しい、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1配線部と同一平面レベルに配置されて前記第1配線部と逆向きの電流が流れる配線部の一部と、前記中間配線部の一部が対向している、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記外部配線が、前記第1面の法線方向から見た平面視において前記第1配線部と交差し、且つ、前記接続領域と接続する部分を除いて前記第1配線部から離隔して前記第1配線部の上方を通過する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体チップが、前記フィリング材と異なる材料の封止材で覆われている、請求項5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを内蔵した半導体装置を冷却するために、半導体素子と熱的に接続された冷却装置が半導体装置に配置される。そして、半導体チップの電極と接続された半導体装置の配線部に外部配線が電気的に接続されて、半導体装置における電気信号および電力の入出力が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/176129号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップの小型化に伴い、半導体チップの電極の面積が小さくなっている。このため、半導体チップと外部配線の接続領域が小さくなり、電気抵抗の増大などの問題が生じている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、外部配線との接続が容易な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体チップ、第1配線部および熱拡散部を備える。半導体チップは、相互に対向する第1面と第2面を有し、第1面に配置された第1電極を含む。第1配線部は、外部配線と接続する接続領域が定義された第1接続面を有し、第1接続面に対向する第2接続面で第1電極と電気的に接続する。熱拡散部は、第2面を介して半導体チップと熱的に接続する。第1配線部の接続領域の面積は、第1配線部と接続する第1電極の面積よりも広い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部配線との接続が容易な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る半導体装置を含む半導体モジュールの構成を示す回路図である。
図3図3は、図2に示した半導体モジュールのレイアウトを示す模式的な上面図である。
図4図4は、図3のIV-IV方向に沿った模式的な断面図である。
図5図5は、図2に示した半導体モジュールに含まれる第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な上面図である。
図6図6は、図2に示した半導体モジュールに含まれる第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な上面図である。
図7図7は、図6のVII-VII方向に沿った模式的な断面図である。
図8図8は、図2に示した半導体モジュールに含まれる第3の実施形態に係る半導体装置のレイアウトを示す模式的な上面図である。
図9図9は、図2に示した半導体モジュールに含まれる第3の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な上面図である。
図10図10は、図2に示した半導体モジュールに含まれる第4の実施形態に係る半導体装置のレイアウトを示す模式的な上面図である。
図11図11は、図10のXI-XI方向に沿った模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1は、図1に示すように、相互に対向する第1面101と第2面102を有する半導体チップ10と、相互に対向する第1接続面201と第2接続面202を有する第1配線部20を備える。第1配線部20の第1接続面201に接続領域210が定義されている。半導体装置1は、接続領域210において図示を省略する外部配線と接続可能である。以下において、第1面101の向いている方向を上方、第2面102の向いている方向を下方とする。また、上方を向いている面を上面、下方を向いている面を下面とも称する。
【0011】
半導体チップ10は、第1面101に配置された第1電極111を含む。第1配線部20は、第2接続面202で第1電極111と電気的に接続する。半導体装置1において、接続領域210の面積(以下、「第1接続面積S11」と表記する。)が、第1配線部20と接続する第1電極111の面積(以下、「第2接続面積S12」と表記する。)よりも広い。
【0012】
半導体装置1によれば、半導体チップ10の第1電極111の第2接続面積S12よりも、第1電極111と電気的に接続する第1配線部20の接続領域210の第1接続面積S11の方が広い。このため、第1電極111に外部配線を接続するよりも、第1配線部20の接続領域210に外部配線を接続した方が、半導体装置1の外部配線の接続が容易である。すなわち、第1電極111の面積が小さい場合にも、半導体装置1の外部配線と接続する領域を広く確保することができる。
【0013】
第1配線部20は導電体で形成された配線パターンであり、第1配線部20と第1電極111は、第1配線部20と半導体チップ10の間に配置されたビア1000を介して電気的に接続されている。第1配線部20を配線パターンで形成し、第1配線部20と第1電極111をビア1000により接続することにより、小さい面積の第1電極111でも容易に第1配線部20と電気的に接続ができる。更に、第1配線部20と第1電極111の間の電気抵抗を低減できる。
【0014】
半導体装置1は、第2面102を介して半導体チップ10と熱的に接続する熱拡散部40を備える。半導体チップ10で発生した熱は、熱拡散部40に伝達され、熱拡散部40から半導体装置1の外部に放出される。熱拡散部40は、例えば銅又は銅モリブデン(CuMo)、アルミニウムなどの金属で構成されている。半導体チップ10の下方に熱拡散部40を配置した半導体装置1では、熱抵抗を低減し、かつ、半導体チップ10の上方における外部配線との接続領域を増大できる。
【0015】
半導体チップ10から熱拡散部40に熱が伝達される経路を、以下において「放熱経路」とも称する。放熱経路の半導体チップ10に向いた面積(以下、「第1放熱面積S21」と表記する。)は、半導体チップ10の熱拡散部40に対向する面積(以下、「第2放熱面積S22」と表記する。)よりも広い。図1に示した半導体装置1の半導体チップ10は、第2面102に配置された第2電極112を含む。したがって、第2電極112の熱拡散部40と対向する面積が第2放熱面積S22であり、熱拡散部40の第2電極112と対向する面の面積が第1放熱面積S21である。
【0016】
半導体チップ10と熱拡散部40の間の放熱経路は、第2面102に対向して配置されて第2電極112と電気的に接続された第2配線部30、および第2配線部30と熱拡散部40を接続する接合材50を含む。以下において、半導体チップ10に配置された第1電極111と第2電極のそれぞれを限定しない場合は、「電極」とも表記する。
【0017】
接合材50は、例えば半田や銀、銅などの接合材である。熱拡散部40は、高熱伝導率の材料で第2配線部30と接合されることが好ましい。保護絶縁膜80に形成する開口部の面積によって、接合材50による接合面積を管理することができる。
【0018】
半導体装置1が第2配線部30を含まず、熱拡散部40が接合材50によって半導体チップ10と接合されてもよい。接合材50および熱拡散部40に導体のみを用いることにより、接合材50および熱拡散部40として熱伝導率が高い部材を使用できる。これにより、半導体装置1について低熱抵抗化を実現できる。
【0019】
第1放熱面積S21が第2放熱面積S22よりも広い半導体装置1によれば、半導体チップ10で発生する熱の放熱性を向上し、かつ、接合材50にクラックが入っても放熱経路の熱抵抗に対する影響を小さくできる。このため、半導体装置1の信頼性が向上する。
【0020】
半導体装置1は、半導体チップ10の周囲に配置された基材(図1では図示略)と、基材と半導体チップ10との隙間に配置されたフィリング材70と、半導体チップ10およびフィリング材70の表面を覆う保護絶縁膜80を含む。保護絶縁膜80は、第1配線部20および放熱経路を除いて半導体チップ10を覆っている。基材については後述する。
【0021】
半導体チップ10の周囲にフィリング材70と保護絶縁膜80を配置することにより、半導体装置1が小型の場合でも、半導体装置1の絶縁性を確保できる。フィリング材70は、例えば樹脂材などの絶縁部材が使用される。基材と半導体チップの間をフィリング材70で埋めることにより、絶縁や防湿、耐振動性能が向上したり、半導体装置を任意の厚みで形成したりできる。
【0022】
第1配線部20および放熱経路を形成する開口部を除いて半導体チップ10の周囲を保護絶縁膜80で覆うことにより、半導体チップ10を周囲から絶縁したり、半導体チップ10を防湿したりできる。また、保護絶縁膜80により、接合材50が不必要に広がることを抑制できる。保護絶縁膜80に絶縁部材が使用され、例えばソルダレジストなどを保護絶縁膜80に使用してもよい。
【0023】
以上に説明したように、図1に示す半導体装置1では、外部配線と接続する接続領域210の面積(第1接続面積S11)が、半導体チップ10の第1電極111の面積(第2接続面積S12)よりも広い。このため、半導体装置1の外部配線との接続領域を広く確保できる。これにより、半導体装置1と外部配線を容易に接続できる。また、半導体装置1によれば、外部配線の断面積を大きくできる。これにより、外部配線の電流密度を高くしたり、電流容量を大きくしたりできる。したがって、半導体装置1によれば、半導体チップ10に大きな電流を流したり、外部配線のサイクル試験寿命を長くしたりできる。
【0024】
図1に示した半導体装置1の構成は、例えば図2に示す回路図で表される半導体モジュール2に使用される半導体装置に適用してもよい。図2に示す半導体モジュール2は、半導体素子100A、半導体素子100B、半導体素子100C、および半導体素子100Dを含む。以下において、半導体素子100A、半導体素子100B、半導体素子100C、および半導体素子100Dのそれぞれを限定しない場合は、「半導体素子100」と表記する。半導体素子100は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの電力用スイッチング半導体素子、還流ダイオードなどの電力用整流半導体素子などである。
【0025】
図2に示した半導体モジュール2は、半導体素子100Aと半導体素子100Bを並列接続した第1半導体装置11と、半導体素子100Cと半導体素子100Dを並列接続した第2半導体装置12を含む。半導体素子100Aと半導体素子100Bのソース電極と半導体素子100Cと半導体素子100Dのドレイン電極が接続されて、第1半導体装置11と第2半導体装置12は直列接続している。以下に説明するように、第1半導体装置11および第2半導体装置12は、図1に示した半導体装置1と同様の構成である。以下において、第1半導体装置11と第2半導体装置12のそれぞれを限定しない場合は、「半導体装置」と表記する。
【0026】
なお、図2に示したようにそれぞれが2つの半導体素子を並列接続した回路を直列接続した構成は、並列接続された複数の半導体素子100A、100Bや半導体素子100C、100Dの接続個数は2個でなくてもよい。また、半導体素子100と逆並列にダイオードが接続されていてもよい。
【0027】
図2に示した半導体モジュール2は、入力側正極端子190、出力端子191、入力側負極端子192、ゲート端子193、制御ソース端子194、制御ソース端子195、ゲート端子196を有する。半導体素子100Aと半導体素子100Bのドレイン電極に接続する入力側正極端子190に、主電力の入力正電圧が印加される。第1半導体装置11と第2半導体装置12の接続点である出力端子191から、モータなどの負荷に電力が出力される。半導体素子100Cと半導体素子100Dのソース電極に接続する入力側負極端子192に、主電力の入力負電圧が印加される。ゲート端子193を介して、半導体素子100Aと半導体素子100Bのゲート電極に駆動電圧が印加される。制御ソース端子194は、半導体素子100Aと半導体素子100Bのソース電極に接続され、半導体素子100Aと半導体素子100Bを制御するために使用される。制御ソース端子195は、半導体素子100Cと半導体素子100Dのソース電極に接続され、半導体素子100Cと半導体素子100Dを制御するために使用される。ゲート端子196を介して、半導体素子100Cと半導体素子100Dのゲート電極に駆動電圧が印加される。
【0028】
ゲート端子193およびゲート端子196のそれぞれを限定しない場合は「ゲート端子」と表記し、制御ソース端子194と制御ソース端子195のそれぞれを限定しない場合は「制御ソース端子」と表記する。半導体モジュール2のゲート端子や制御ソース端子はそれぞれの半導体素子100から個別に取り出してもよい。制御ソース端子は、半導体素子100から取り出さなくてもよいし、1つの半導体素子100のみから取り出してもよい。その他、半導体素子100に流れる電流を検出するための端子や温度を検出するための端子を、半導体モジュール2が有してもよい。
【0029】
また、図2に示した半導体モジュール2は、例えば電力用半導体素子として半導体素子100のみを有するが、半導体モジュール2が他の部品を有してもよい。例えば、半導体モジュール2が、スイッチング速度を調整するためのゲート抵抗や、並列接続されたチップ間のゲート振動およびゲート発振を抑制するための個別ゲート抵抗や個別ソース抵抗を含んでもよい。また、半導体モジュール2が、サージ電圧を吸収するためのスナバ回路、温度を検出するためのサーミスタ、電力用半導体素子を駆動するためのゲートICなどの部品を含んでもよい。更に、半導体モジュール2が、上記の内蔵する部品に接続された端子を有してもよい。以下において、半導体モジュール2の外部との接続に使用される端子のそれぞれを限定しない場合は、「外部端子」と表記する。図2には、半導体モジュール2の外部端子として、入力側正極端子190、出力端子191、入力側負極端子192、ゲート端子193、制御ソース端子194、制御ソース端子195およびゲート端子196が示されている。
【0030】
図3に、図2に示した半導体モジュール2をレイアウトした例の模式的な上面図を示す。図4に、図3のIV-IV方向に沿った断面図を示す。図3に示した第1半導体装置11は、半導体素子100Aと半導体素子100Bを並列接続した構成を有する。第2半導体装置12は、半導体素子100Cと半導体素子100Dを並列接続した構成を有する。図4に示すように、第1半導体装置11は、半導体チップ10Aと半導体チップ10Bを含む。半導体チップ10Aは半導体素子100Aを含み、半導体チップ10Bは半導体素子100Bを含む。半導体チップ10Aと半導体チップ10Bは、図1に示した半導体装置1の半導体チップ10に相当する。
【0031】
図3に示すように、第1半導体装置11は、半導体装置1の接続領域210に相当する接続領域211A~214Aを有する。第2半導体装置12は、半導体装置1の接続領域210に相当する接続領域211B~214Bを有する。接続領域211A~214Aと接続領域211B~214Bのそれぞれを限定しない場合は、「上部接続領域」とも称する。
【0032】
図4に示すように、半導体チップ10Aの第1電極111はビア1211を介してソース配線20Sと電気的に接続され、半導体チップ10Bの第1電極111はビア1212を介してソース配線20Sと電気的に接続されている。ソース配線20Sは、図1に示した半導体チップ10の第1配線部20に相当する。言い換えると、接続領域211Aおよび接続領域212Aの面積は、半導体チップ10Aおよび半導体チップ10Bのソース配線20Sと接続する第1電極111の面積よりも広い。以下において、半導体装置において第1配線部20と同一平面レベルに配置された配線を「上部配線部」とも称する。上部接続領域は、保護絶縁膜80に形成した開口部に露出した(以下、単に「露出した」ともいう。)上部配線部の領域である。
【0033】
第1半導体装置11の接続領域211Aは、半導体素子100Aと半導体素子100Bのドレイン電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域211Aは、外部配線170を介して入力側正極端子190と電気的に接続されている。第1半導体装置11の接続領域212Aは、半導体素子100Aと半導体素子100Bのソース電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域212Aは、外部配線171を介して出力端子191と電気的に接続されている。第1半導体装置11の接続領域213Aは、半導体素子100Aと半導体素子100Bのゲート電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域213Aは、外部配線174を介してゲート端子193と電気的に接続されている。第1半導体装置11の接続領域214Aは、半導体素子100Aと半導体素子100Bのソース電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域214Aは、外部配線175を介して制御ソース端子194と電気的に接続されている。
【0034】
第2半導体装置12の接続領域211Bは、半導体素子100Cと半導体素子100Dのソース電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域211Bは、外部配線172を介して入力側負極端子192と電気的に接続されている。第2半導体装置12の接続領域212Bは、半導体素子100Cと半導体素子100Dのドレイン電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域212Bは、外部配線173を介して出力端子191と電気的に接続されている。第2半導体装置12の接続領域213Bは、半導体素子100Cと半導体素子100Dのゲート電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域213Bは、外部配線176を介してゲート端子196と電気的に接続されている。第1半導体装置11の接続領域214Bは、半導体素子100Cと半導体素子100Dのソース電極に接続する上部配線部が露出した領域である。接続領域214Bは、外部配線177を介して制御ソース端子195と電気的に接続されている。
【0035】
上記のように、外部端子と上部接続領域は外部配線170~177を介して電気的に接続されている。外部配線170~177は、例えば導電性ワイヤである。外部配線170~177のそれぞれを限定しない場合は、「外部配線」と表記する。
【0036】
第1半導体装置11は熱拡散部41、42を有し、第2半導体装置12は熱拡散部43、44を有する。熱拡散部41~44は半導体装置1の熱拡散部40に相当する。熱拡散部41~44は、冷却プレート150に配置されている。半導体モジュール2はケース180に格納され、ケース180に外部端子が配置されている。熱拡散部41~44により半導体チップで発生した熱が拡散されて、半導体モジュール2の熱抵抗を低減できる。
【0037】
ところで、半導体素子100に横型構造の素子を用いることにより、第1電極111の面積を小さくしやすい。また、半導体素子100を横型構造の素子とし、第1電極111と第2電極112の間を電気的に絶縁することで、横型構造の半導体素子100では熱拡散部40で素子間の電気的な絶縁を取る必要がないため、熱伝導率の高い導体を熱拡散部40に用いることができる。このように、半導体素子100に横型構造の素子を用いることにより、上部配線部の電流容量増大と低熱抵抗化の効果を得やすい。以下では半導体素子100が横型構造のMOSFETである場合を例示的に説明する。
【0038】
一方、半導体素子100に縦型素子を用いる場合などは、熱拡散部40にセラミックなどの絶縁部材を一部に有する材料を用いてもよい。熱拡散部40の熱干渉を低減させるために、半導体モジュール2では熱拡散部40を熱拡散部41~44に分割している。熱拡散部40での熱干渉の影響が少なく、半導体素子100が横型構造の素子などであって絶縁の必要がない場合は、熱拡散部40の一部またはすべてをまとめて1つとしてもよい。
【0039】
第1半導体装置11の下方において保護絶縁膜80に形成した開口部に、第2配線部30Aおよび第2配線部30Bが露出している。第2配線部30Aは、半導体チップ10Aの第2電極112とビア1213を介して電気的に接続されている。第2配線部30Aは、接合材51により熱拡散部41に接合されている。第2配線部30Bは、半導体チップ10Bの第2電極112とビア1214を介して電気的に接続されている。第2配線部30Bは、接合材51により熱拡散部42に接合されている。第2配線部30Aおよび第2配線部30Bは図1に示した第2配線部30に相当し、接合材51は図1に示した接合材50に相当する。以下において、半導体装置において第2配線部30と同一平面レベルに形成された配線を「底部配線部」と称する。底部配線部は、半導体チップと熱拡散部41~44の間に配置されている。また、上部配線部と底部配線部のそれぞれを限定しない場合は「配線部」と表記する。
【0040】
熱拡散部41、42は接合材52により冷却プレート150に接合され、冷却プレート150は冷却フィン151を有する。冷却プレート150および冷却フィン151は、例えばアルミニウム又は銅などの金属、若しくは高熱伝導率の炭素材料などで構成されている。冷却プレート150および冷却フィン151では、冷却水又はロングライフクーラントのような液体冷却若しくは空気による空冷などにより、半導体チップ10などで発生した熱を外部に放熱させる。図4では冷却フィン151がピンフィン形状である例を示したが、冷却フィン151がピンフィン形状以外の形状であってもよい。
【0041】
接合材52は、半田又は銀、銅などの高熱伝導率の接合材であることが好ましい。半導体装置の製造プロセスでの制約条件によっては、グリースや放熱シートなどを使用して、熱拡散部41、42を冷却プレート150に接合してもよい。また、接合材52を使用せずに、熱拡散部41、42と冷却プレート150を一体化してもよい。
【0042】
半導体チップ10Aで発生した熱は、第2配線部30A、熱拡散部41および冷却プレート150を放熱経路として、半導体モジュール2の外部に放出される。半導体チップ10Bで発生した熱は、第2配線部30B、熱拡散部42および冷却プレート150を放熱経路して、半導体モジュール2の外部に放出される。これらの放熱経路では、第2配線部30Aおよび第2配線部30Bの保護絶縁膜80の開口部の面積が、第2電極112の熱拡散部41および熱拡散部42と接続する面積よりも広い。これにより、半導体モジュール2における放熱性を向上することができる。更に、接合材51にクラックが入っても放熱経路の熱抵抗に対する影響を小さくして半導体モジュール2の信頼性が向上する。
【0043】
図4に示すように、ソース配線20Sは、導電体1215を介して第2配線部30Sと電気的に接続されている。第2配線部30Sは、底部配線部である。半導体チップ10Aおよび半導体チップ10Bの第2電極112は、例えば銅などのビア1213およびビア1214によって第2配線部30Aおよび第2配線部30Bとそれぞれ電気的に接続されている。第2配線部30A、30Bは、半導体チップ10A、10Bから熱拡散部41、42までの放熱経路を構成するために、保護絶縁膜80に形成された開口部に露出している。
【0044】
実施形態の説明では、ビア1213、1214などのビアを円柱形状の銅などが絶縁部材に埋められた形状で図示している。しかし、ビアが貫通する領域の絶縁部材を全面的に開口して銅などの金属材で埋め込むことにより、電極と配線部を電気的に接続してもよい。或いは、はんだや銀などの接合材で電極と配線部を接続してもよい。
【0045】
半導体チップ10Aおよび半導体チップ10Bの周囲に基材60が配置され、基材60と半導体チップ10Aおよび半導体チップ10Bとの隙間にフィリング材70が配置されている。基材60およびフィリング材70の上面と下面と保護絶縁膜80が形成されている。冷却プレート150の上面に、第1半導体装置11の周囲を囲むようにケース180が配置され、ケース180の内部は封止材160によって埋め込まれている。
【0046】
基材60はガラスエポキシなどで構成された基板などであり、ドリルなどで基板に穴を空けるなどして半導体チップ10Aおよび半導体チップ10Bを内蔵する。基材60の内部に半導体チップを配置した例を図示したが、基材60の上部に半導体チップを配置する構成としてもよい。基材60により、半導体装置の機械的強度が高くなる。例えば、半導体チップの周囲に基材60が配置されていることにより、半導体装置の耐振動性能の向上、半導体チップ間の絶縁、半導体チップの反りの低減などの効果を得られる。
【0047】
第1半導体装置11と接続する外部配線は、封止材160に埋め込まれて、ケース180に接合された外部端子と接続されている。例えば、入力側正極端子190は端子締結部197によってケース180に接合されていてもよい。
【0048】
外部端子は、例えば樹脂などで構成されたケース180と一体化されている。半導体装置の製造プロセスの制約条件などにより、外部端子とケース180は別体であってもよい。ケース180は、冷却プレート150と図示しない接着剤などで接着されており、防湿や絶縁、封止材160の流出防止などの役割を果たす。外部端子と上部接続領域を接続する外部配線は、例えばアルミニウム又は銅などのワイヤである。或いは、ワイヤ以外のリードフレーム又はリボン材料などで外部端子と上部接続領域を接続してもよい。
【0049】
半導体チップ10を覆う封止材160は、例えばシリコーンのゲルや樹脂などであり、防湿や絶縁、耐振動性能の向上などの役割を果たす。例えば、封止材160とフィリング材70に異なる材料を用いてもよい。これにより、防湿性能、ヤング率、および線膨張係数などの特性がフィリング材70と異なる材料を封止材160に選択することができる。このため、封止材160によって、絶縁や防湿、耐振動性能などの点でフィリング材70では不十分な機能を補填することができる。
【0050】
図5に、図4に示した第1半導体装置11の上面図を示す。図5は、表面の保護絶縁膜80および封止材160を透過した第1半導体装置11の構造を示す。図5のIV-IV方向に沿った断面図が図4に相当する。
【0051】
既述のように、半導体素子100が横型構造のMOSFETである場合を例示的に実施形態で説明している。半導体素子100が横型構造の素子であるため、半導体チップ10の上面(第1面101)に配置されたドレイン電極、ソース電極、ゲート電極の第1電極111は、半導体チップ10の下面(第2面102)に配置された第2電極112と電気的に絶縁されている。図5に示した第1電極111Aは半導体チップ10Aのソース電極であり、第1電極111Bが半導体チップ10Bのソース電極である。第1電極111Cが半導体チップ10Aのドレイン電極であり、第1電極111Dが半導体チップ10Bのドレイン電極である。第1電極111Eが半導体チップ10Aのゲート電極であり、第1電極111Fが半導体チップ10Bのゲート電極である。ただし、第2電極112がソース電極などに接続された構成でもよい。
【0052】
第1電極111は、めっきなどで形成された銅のパターンなどで構成された上部配線部とビアを介して電気的に接続されている。図5などの上面図において、ビアが配置された領域を破線で囲んで示している(以下において同様。)。ビアをめっきなどにより円柱形状の銅などが埋められた形状で断面図を示しているが、第1電極111と上部配線部の間の領域でフィリング材70を全面的に開口し、開口部を銅で埋めるなどして第1電極111と上部配線部を接続してもよい。
【0053】
半導体チップ10Aのソース電極は、ビア1211を介してソース配線20Sと電気的に接続されている。半導体チップ10Bのソース電極は、ビア1212を介してソース配線20Sと電気的に接続されている。半導体チップ10Aのドレイン電極は、ビア1230を介してドレイン配線20Dと電気的に接続されている。半導体チップ10Bのドレイン電極は、ビア1231を介してドレイン配線20Dと電気的に接続されている。半導体チップ10Aのゲート電極は、ビア1234を介してゲート配線20Gと電気的に接続されている。半導体チップ10Bのゲート電極は、ビア1235を介してゲート配線20Gと電気的に接続されている。
【0054】
半導体チップ10Aの制御ソース電極は、ビア1232を介して制御ソース配線20CSと電気的に接続されている。半導体チップ10Bの制御ソース電極は、ビア1233を介して制御ソース配線20CSと電気的に接続されている。このように主回路用のソース電極と制御ソース電極を一体としているが、主回路用のソース電極と制御ソース電極を分離させてもよいし、制御ソース電極を第1電極111Aから取り出してもよい。
【0055】
ソース配線20S、ドレイン配線20D、ゲート配線20Gおよび制御ソース配線20CSは、第1配線部20に相当する上部配線部である。ただし、ゲート配線20Gと制御ソース配線20CSに流れる電流が小さい場合には、ゲート配線20Gと制御ソース配線20CSの上部接続領域の面積は、半導体チップ10Aおよび半導体チップ10Bの第1電極と接続する領域の面積より広くなくてもよい。
【0056】
ソース配線20Sは、導電体1215を介して第2配線部30Sと電気的に接続されている。導電体1215は、例えば、スルーホール又はビア、めっきによる全面埋め込み、銅ブロックなどで構成されている。第2配線部30Sは、導電体1250を介して接続領域212Aと電気的に接続する。導電体1250は、導電体1215と同様に、例えばスルーホール又はビア、めっきによる全面埋め込み、銅ブロックなどで構成されている。接続領域212Aは、外部配線と接続できるように露出している。
【0057】
ソース配線20Sと同様に、ドレイン配線20Dは接続領域211Aで露出する。ゲート配線20Gは、接続領域213Aで露出する。制御ソース配線20CSは接続領域214Aで露出する。上面図において、第1配線部20に相当するソース配線20S、ドレイン配線20D、ゲート配線20Gおよび制御ソース配線20CSの、外部配線が接続される上部接続領域を一点鎖線で囲んで示している(以下において同様。)。
【0058】
上記のように第1半導体装置11の構成について説明したが、第2半導体装置12の構成も第1半導体装置11と同様である。
【0059】
図5に示したように、ドレイン電極である第1電極111Cおよび第1電極111Dの合計面積よりも、接続領域211Aの面積の方が大きい。このような構成にすることにより、ワイヤである外部配線を直接に第1電極111Cおよび第1電極111Dに接続するよりも、外部配線を上部接続領域に接続することで、ワイヤの本数を多くしたり、ワイヤの断面積を大きくしたりできる。このため、外部配線の許容電流量を大きくしたり、同じ電流を流した場合の外部配線の温度が下がることでパワーサイクル試験寿命を向上させたり、外部配線の損失を低減させたりすることができる。同様に、ソース電極である第1電極111Aおよび第1電極111Bの合計面積よりも接続領域212Aの面積を大きくすることにより、ドレイン電極と同じ上記効果を得ることができる。第2半導体装置12についても、第1半導体装置11と同様の構成により同様の効果が得られる。
【0060】
また、図4に示したように、第2電極112の面積よりも、半導体チップ10Aの下方に形成された保護絶縁膜80の開口部の面積が広い。これにより、第2電極112と直接に接合する場合よりも放熱経路における接合材51の断面積を大きくすることができる。その結果、放熱経路の熱抵抗を低減させることができる。更に、温度サイクル試験やパワーサイクル試験において、接合材51の角部又は端部からクラックがはいったとしても半導体チップに到達するまでの距離を長くすることができる。このため、サイクル試験の定命を向上させることができる。第2半導体装置12についても、第1半導体装置11と同様の構成により同様の効果が得られる。
【0061】
半導体モジュール2では、上部接続領域の相互の距離を、例えば常圧、常温で空気により絶縁される距離よりも長くすることができる。これにより、半導体モジュール2での絶縁性能を向上させることが可能である。更に、半導体装置の単体について必要な電圧を印加した検査を行うことができるため、すべての部品を実装した後での試験を行う前に不良品を検出することができる。その結果、半導体モジュール2の歩留まりを向上させることができる。
【0062】
上記のように、上部配線部であるソース配線20Sは、半導体チップ10Aと半導体チップ10Bの中間において底部配線部である第2配線部30Sに接続される。第2配線部30Sは、導電体1250を介して上部配線部と同一平面レベルの接続領域212Aに接続されている。ソース電極である第1電極111Aおよび第1電極111Bから上部接続領域までの電気経路(以下、「ソース配線」と称する。)は、第2配線部30S以外の底部配線部と電気的に絶縁されている。このため、熱拡散部41~44に高熱伝導率の導体を用いることができる。その結果、半導体モジュール2の低熱抵抗化を実現できる。更に、第2配線部30Sを使用してソース配線の長さを調整することにより、それぞれの半導体素子100のソース配線の長さを等しくできる。これにより、半導体素子100間で寄生抵抗および寄生インダクタンスを揃えることができる。このため、スイッチング時などの電流を均一化できる。このように、上部配線部と底部配線部を用いて配線を行うことで、並列接続した半導体チップについて配線の長さを等しくする等長配線を実現できる。更に、外部配線と接続する上部接続領域を半導体装置の上面に配置することにより、半導体装置の下面に配置する放熱経路を導電体で実現することができる。これにより、半導体装置の熱抵抗を低減させることができる。
【0063】
ドレイン配線20Dは、半導体チップ10Aと半導体チップ10Bの中間で引き出されて接続領域211Aに接続されている。このため、ドレイン電極である第1電極111Cおよび第1電極111Dから上部接続領域までの電気経路(以下、「ドレイン配線」と称する。)を、ソース配線と同様に、それぞれの半導体素子100で等しくして、電流均一化の効果を得ることができる。
【0064】
また、第2配線部30Sと上部配線部のドレイン配線20Dは上下方向において少なくとも一部が対向しており、相互に逆向きの電流が流れる。このため、電流変化時の電界を打ち消し合い、寄生インダクタンスを低減させることができる。その結果、半導体素子をターンオフさせる際のサージ電圧低減及びノイズ発生量抑制などの効果を得られる。また、並列接続する半導体装置の半導体素子の数が増えても、上記と同様の構成により等長配線を実現できる。図5に示した実施形態では高電圧が印加されるドレイン配線ではなくソース配線の一部を底部配線部にすることにより絶縁を取りやすくしている。しかし、ドレイン配線の一部を底部配線部にする構成としてもよい。
【0065】
半導体素子100として、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体を用いる場合、一般的にシリコン(Si)半導体よりもチップサイズが小さいことが多い。このため、ワイドバンドギャップ半導体の半導体素子100では第1電極111の面積が小さいことが多い。したがって、第1の実施形態に係る半導体装置によれば、ワイドバンドギャップ半導体の半導体素子100を含む半導体装置において、上部接続領域の面積が電極よりも広いことによる効果がより大きい。例えば、半導体素子100にワイドバンドギャップ半導体を用いた場合に、外部配線の断面積を大きく確保できるため、外部配線の電流密度を高くしたり、電流容量を大きくしたりできる。このため、外部配線のサイクル試験寿命を長くしたり、半導体装置と外部配線の接続を容易にしたりできる。
【0066】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る第1半導体装置11の上面図を図6に示し、図6のVII-VII方向に沿った断面図を図7に示す。図6は、図5と同様に表面の保護絶縁膜80および封止材160を透過した第1半導体装置11の構造を示す。第1半導体装置11は、図2に示した半導体モジュール2に含まれる半導体素子100Aを含む半導体チップ10Aと半導体素子100Bを含む半導体チップ10Bを、並列接続した構成を有する。
【0067】
第2の実施形態に係る第1半導体装置11は、図6および図7に示すように、上部配線部が配置された平面レベルの下方、且つ第1電極111が配置された平面レベルの上方の平面レベルに配置された中間配線部25Sを備える。中間配線部25Sは、上部接続領域と第1電極111を電気的に接続する。以下において、上部配線部と第1電極111の間に配置された配線を「中間配線部」とも称する。第1半導体装置11は、中間配線部を備えることが図5に示した第1半導体装置11と異なる点である。言い換えると、第1半導体装置11は、配線部が配置された平面レベルが第1電極111よりも上方に2つ存在する点が第1の実施形態と異なる。その他の構成については、第2の実施形態に係る半導体装置は第1の実施形態と同様である。
【0068】
ソース電極である第1電極111A、111Bは、ソース配線の一部を構成する中間配線部25Sと、それぞれビア2211、2212を介して接続されている。中間配線部25Sはビア2239を介して接続領域212Aに接続されている。中間配線部25Sは、基材60の上面に配置されて半導体チップ10Aと半導体チップ10Bの中間を通過する。
【0069】
ドレイン電極である第1電極111C、111Dは、それぞれビア1230、1231を介して上部配線部であるドレイン配線20Dと電気的に接続されている。ドレイン配線20Dは、接続領域211Aに接続されている。
【0070】
半導体チップ10Aの第2電極112は、ビア1232を介して第2配線部30Cと電気的に接続されている。半導体チップ10Bの第2電極112は、ビア1233を介して第2配線部30Dと電気的に接続されている。第2配線部30Cおよび第2配線部30Dは、図1に示した第2配線部30に相当し、底部配線部である。第2配線部30C、30Dは、半導体チップ10A、半導体チップ10Bから熱拡散部(図7で図示略)までの放熱経路の一部を構成し、第1半導体装置11の下方において保護絶縁膜80に形成された開口部に露出している。
【0071】
中間配線部25Sは半導体チップ10Aと半導体チップ10Bの中間から引き出され、ビア2239を介して接続領域212Aと電気的に接続される。つまり、第2の実施形態では中間配線部をソース配線の一部として使用している。このため、第1の実施形態で底部配線部をソース配線の一部として使用した場合と同様に、第2の実施形態においても半導体素子100のそれぞれのソース配線の長さを等しくして、寄生抵抗や寄生インダクタンスを揃えることができる。その結果、スイッチング時などの電流を半導体素子100で均一化できる。また、ソース配線が底部配線部と電気的に絶縁されているため、熱拡散部に高熱伝導率の導体を用いることができ、第1の実施形態と同様に低熱抵抗化を実現できる。また、ドレイン配線に関しても上部配線部であるドレイン配線20Dを半導体チップ10Aと半導体チップ10Bの中間から引き出し、中間配線部と電気的に絶縁された上部配線部で引き回すことにより、等長配線を実現できる。このため、ドレイン配線に関しても電流の均一化を実現できる。
【0072】
第2の実施形態に係る半導体装置では、ソース配線の一部を構成する中間配線部25Sと上部配線部のドレイン配線20Dが上下方向において少なくとも一部で対向し、相互に逆向きの電流が流れる。このため、寄生インダクタンスを低減させることができる。このため、半導体素子をターンオフさせる際のサージ電圧低減やノイズ発生量抑制などの効果を得られる。また、並列接続する半導体素子の数が増えても同様の構成で等長配線を実現することができる。
【0073】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る第1半導体装置11によれば、複数の平面レベルを用いて配線を行うことで、並列接続した半導体チップの主電極に接続する配線について等長配線を実現できる。更に、外部配線と接続する上部接続領域を半導体装置の上面に配置することにより、半導体装置の下面に配置する放熱経路を導電体で実現できる。これにより、半導体装置の熱抵抗を低減させることができる。
【0074】
第2の実施形態では半導体チップよりも上方の2つの平面レベルに配線が配置されている場合を示したが、半導体チップよりも上方の3つ以上の平面レベルに配線を配置してもよい。また、第1の実施形態と同様に、底部配線部を主電極に接続する配線に使用してもよい。
【0075】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、半導体素子100にワイドバンドギャップ半導体を用いる場合に、電極よりも上部接続領域の面積が大きいことによる効果がより大きい。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0076】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の模式的な上面図を図8および図9に示す。図8は、図2に示した半導体モジュール2をレイアウトした上面図である。図9は、表面の保護絶縁膜80および封止材160を透過した第1半導体装置11の構造を示す。
【0077】
第3の実施形態に係る半導体装置は、図8および図9に示すように、第1面101の法線方向から見た平面視において、第1半導体装置11の中心付近に接続領域212Aが配置され、第2半導体装置12の中心付近に接続領域211Bが配置されている。第3の実施形態に係る半導体装置は、接続領域212Aと接続領域211Bが半導体装置の中心付近に配置されていることが、接続領域212Aと接続領域211Bが半導体装置の端部付近に配置されている第1の実施形態と異なる。その他の構成については、第3の実施形態に係る半導体装置は第1の実施形態と同様である。
【0078】
第1半導体装置11において、半導体チップ10Aと半導体チップ10Bの中間で接続領域212Aがソース配線20Sと接続する。このため、ソース配線は、底部配線部又は中間配線部とビアなどを介する接続領域を含まない。接続領域212Aに、外部配線171が接続されている。第2半導体装置12においても同様であり、第2半導体装置12の中心付近において接続領域211Bがソース配線20Sと接続し、ソース配線は底部配線部又は中間配線部とビアなどを介する接続領域を含まない。接続領域211Bに、外部配線173が接続されている。
【0079】
半導体装置の中心付近に配置された接続領域212A、211Bに接続された外部配線171、173は、平面視において上部配線部と交差し、且つ、上部接続領域と接続する部分を除いて上部配線部から離隔して、上部配線部の上方を通過する。外部配線が半導体装置の外側で上部配線部を跨ぐように配置されることにより、中間配線部又は底部配線部を使用しないでも、配線間の干渉を抑制しながら等長配線を実現できる。これにより、スイッチング時などの電流の均一化や低熱抵抗化の効果を得られる。また、第3の実施形態に係る半導体装置によれば、中間配線部および底部配線部を使用しないことにより、半導体装置の軽量化などの効果を得ることができる。ただし、中間配線部又は底部配線部を使用した半導体装置においても、上部配線部の上方を通過する外部配線を併用してもよい。
【0080】
第3の実施形態においても、半導体素子100にワイドバンドギャップ半導体を用いる場合に、電極よりも上部接続領域の面積が大きいことによる効果がより大きい。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0081】
(第4の実施形態)
図10に、第4の実施形態に係る半導体装置の模式的な上面図を示す。図10は、第1半導体装置11の表面の保護絶縁膜80および封止材160を透過した図面である。図11に、図10のXI-XI方向に沿った断面図を示す。第4の実施形態に係る半導体装置は、外部配線としてリードフレームを用いている点が、第1乃至第3の実施形態に係る半導体装置と異なる。その他の構成については、第4の実施形態に係る半導体装置は第1乃至第3の実施形態と同様である。
【0082】
第4の実施形態に係る半導体装置のリードフレームは、第1乃至第3の実施形態に係る半導体装置の外部配線と同様に上部接続領域に接続されると共に、外部端子として使用されている。リードフレーム470は、外部配線170と同様に接続領域211Aに接続する。リードフレーム471は、外部配線171、173と同様に接続領域212A、212Bに接続する。リードフレーム472は、外部配線172と同様に接続領域211Bに接続する。リードフレーム474は、外部配線174と同様に接続領域213Aに接続する。リードフレーム475は、外部配線175と同様に接続領域214Aに接続する。リードフレーム476は、外部配線176と同様に接続領域213Bに接続する。リードフレーム477は、外部配線177と同様に接続領域214Bに接続する。リードフレーム470、471、472、474、475、476、477のそれぞれを限定しない場合は、「リードフレーム」と表記する。
【0083】
リードフレームは、銅又はアルミニウム、銅のクアッド材などの導体により構成され、半田または銀などの導電性の接合材53により上部接続領域と電気的に接続される。封止材160として、トランスファーモールド成形で封止するモールド樹脂を例として用いることにより、ケース180を使用せずに半導体装置の全体を封止できる。図10に示した構成では上部接続領域との接続の全てをリードフレームで行っているが、一部の上部接続領域との接続をワイヤで行ってもよい。例えばリードフレーム474~477の代わりにワイヤにより上部接続領域と外部端子を接続するなど、リードフレームとワイヤの混合構成としてもよい。
【0084】
外部配線としてリードフレームを用い、樹脂で半導体装置を封止することにより、外部配線および接合材の寿命を向上させることができる。リードフレームを半田で実装する場合、接合面積が小さいと半田の厚みおよび接合面積の管理が極めて難しいため、一定の接合面積が必要となる。これに対し、第4の実施形態に係る半導体装置によれば、第1接続面積S11を第2接続面積S12よりも広い構成とすることにより、電極面積が小さい半導体素子を用いる場合でもリードフレームのはんだ接合を実現できる。特にゲート電極のような制御用電極は面積が小さく、リードフレームの接合が難しい。しかし、接続領域213A、214A、213B、214Bの面積を大きくすることにより、制御用電極とリードフレームを電気的に接続することが容易である。
【0085】
第4の実施形態においても、半導体素子100にワイドバンドギャップ半導体を用いる場合に、電極よりも上部接続領域の面積が大きいことによる効果がより大きい。他は、他の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。例えば、上部配線部および中間配線部を含む半導体装置の外部配線としてリードフレームを使用してもよい。
【0086】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0087】
例えば、半導体装置が、半導体装置に含まれる半導体素子100に接続する受動素子および半導体素子を駆動する回路の少なくともいずれかを含む構成であってもよい。半導体装置に受動部品や駆動用ICを実装することにより、半導体素子100を低い寄生インダクタンスで実装することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体装置
10 半導体チップ
20 第1配線部
30 第2配線部
40 熱拡散部
101 第1面
102 第2面
111 第1電極
112 第2電極
201 第1接続面
202 第2接続面
210 接続領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11