(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135888
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体基板の保持システム、半導体基板の保持方法および保持用治具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L21/68 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046785
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA21
5F131AA22
5F131BA01
5F131BA03
5F131BA13
5F131BA15
5F131BA23
5F131BA24
5F131BA52
5F131CA07
5F131CA08
5F131DA05
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA17
5F131EB54
5F131EB61
5F131EB75
5F131GA13
5F131GA26
5F131GA92
5F131JA04
5F131JA23
5F131JA24
5F131JA32
5F131JA35
5F131KA42
(57)【要約】
【課題】半導体素子を安定して製造することができ、得られる半導体素子の性能低下も抑制できる、半導体基板の保持方法および半導体基板の保持システムを提供する。
【解決手段】治具本体と、半導体基板100を保持する保持部と、治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部と、を有する保持用治具20;吸排気部と接続された圧力調整装置30、を有する半導体基板の保持システム10。ここで、保持用治具20は、保持部が半導体基板を保持することにより、治具本体の内部を気密に保持できるようになっている。また、半導体基板100に対して処理を行う処理装置40を設け半導体素子の製造装置とすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、半導体基板の保持システム:
治具本体と、半導体基板を保持する保持部と、前記治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部と、を有する保持用治具;および
前記吸排気部と接続された圧力調整装置、
ここで、前記保持用治具は、前記保持部が前記半導体基板を保持することにより、前記治具本体の内部を気密に保持できる。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
さらに、前記半導体基板に対して処理を行う処理装置が複数設けられ、前記保持用治具を複数の前記処理装置に順番に搬送する搬送手段を有する、半導体基板の保持システム。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記複数の処理装置における処理として、カーボン成膜処理、アニール処理およびカーボン除去処理を含む、半導体基板の保持システム。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記吸排気部に、開度調整バルブが設けられている、半導体基板の保持システム。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記吸排気部は、気圧調整室を介して前記圧力調整装置と接続されている、半導体基板の保持システム。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記保持用治具は、前記圧力調整装置との間にロータリージョイントが設けられ、前記保持用治具が水平回転可能となっている、半導体基板の保持システム。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記圧力調整装置は、回転数が変更可能なサーボモータに接続されている、半導体基板の保持システム。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記治具本体が、前記保持部が前記半導体基板を保持することにより、内部をそれぞれ独立して気密に保持できる複数の空間に仕切ることができる仕切り板を有し、前記複数の空間のそれぞれに前記吸排気部が設けられている、半導体基板の保持システム。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記保持部は、前記半導体基板との接触部分に弾性部材が設けられている、半導体基板の保持システム。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体基板の保持システムにおいて、
前記保持部は、前記半導体基板を厚さ方向に挟持可能な構造を有する、半導体基板の保持システム。
【請求項11】
以下を含む、半導体基板の保持方法:
(a)治具本体と、半導体基板を保持する保持部と、前記治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部と、を有する保持用治具に半導体基板を保持する工程;
(b)前記(a)工程の後、前記保持部で前記半導体基板を保持することにより気密に保持された前記治具本体の内部の圧力を調整する工程;および
(c)前記(b)工程の後、前記圧力が調整された状態を保持する工程。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体基板の保持方法において、
前記(b)工程において、前記半導体基板が所定のたわみ度合(平坦度)に保持されるように、前記内部の圧力を調整する、半導体基板の保持方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体基板の保持方法において、
前記(b)工程において、前記内部の圧力が前記外部の圧力よりも高くなるように調整する、半導体基板の保持方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体基板の保持方法において、
前記(c)工程において、前記保持用治具が、前記半導体基板を処理する複数の処理装置に順番に搬送され、前記半導体基板に対して複数の処理を行う、半導体基板の保持方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体基板の保持方法において、
前記複数の処理装置における処理として、カーボン成膜処理、アニール処理およびカーボン除去処理を含む、半導体基板の保持方法。
【請求項16】
請求項11に記載の半導体基板の保持方法において、
前記(c)工程において、前記処理装置における処理を、前記保持用治具を水平方向に回転させながら行う、半導体基板の保持方法。
【請求項17】
請求項11に記載の半導体基板の保持方法において、
前記治具本体が、前記保持部が前記半導体基板を保持することにより、内部をそれぞれ独立して気密に保持できる複数の空間に仕切ることができる仕切り板を有し、前記複数の空間のそれぞれに前記吸排気部が設けられており、
前記(b)工程において、前記複数の空間の圧力を独立して調整する、半導体基板の保持方法。
【請求項18】
以下を含む、保持用治具:
治具本体;
半導体基板を保持する保持部;および
前記治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部、
ただし、前記保持用治具は、前記保持部が前記半導体基板を保持することにより、前記治具本体の内部を気密に保持できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の保持システム、半導体基板の保持方法および保持用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Siに代わる半導体材料の一つとしてSiCが注目されている。SiCはバンドギャップがSiのバンドギャップと比べて3倍近く大きいため、動作上限温度を高くできる。また、絶縁破壊電界強度がSiに比べて約一桁大きいため、絶縁破壊電界強度の3乗の逆数で効いてくるオン抵抗が低減され、定常状態での電力損失を低減できる。さらに、熱伝導もSiに比べて3倍以上高いので、熱冷却効果が高く冷却装置を小型化できる利点も有する。さらに、飽和ドリフト速度が大きいため、高速動作にも優れている。このようなことからSiCは電力用半導体素子や高周波デバイス、高温動作デバイスなどへの応用が期待されている。
【0003】
このSiC材料からなるSiC半導体素子を製造するにあたっては、求める構成となるように、SiC半導体基板に所定の処理を順番に行って、特定の構造となるようにする。例えば、ウェハ上に薄い膜を均一に作製するための成膜処理、ウェハ内に適度な不純物を注入するためのイオン注入処理、ウェハに熱を加え、求めている化学反応や物理現象を促進させる熱処理、ウェハ上に精密な回路パターンを形成するための露光処理、レジスト等を除去するためのアッシング処理、ウェハを切断しチップ化するためのダイシング処理、などの各種処理が挙げられる。
【0004】
このような処理の一例として、例えば、活性ガス中でカーボン膜を形成した後、アニール処理、次いで、カーボン膜を除去するアッシング処理を行い、半導体素子の表面を清浄かつ平滑なものとして得ようとする半導体素子の製造方法が知られている(例えば、特開2011-146662号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、年々、半導体素子はダウンサイジング化し、その加工処理におけるサイズも微細化処理が求められ、その処理精度の向上がますます必要となってきている。また、例えば、処理として加熱処理を行う場合には、その熱により半導体基板が過剰にたわみ、処理精度の低下する要因の一つとなるおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、このような高い処理精度が求められる場合においても、半導体素子を安定して製造することができ、得られる半導体素子の性能低下も抑制できる、半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される半導体基板の保持システムは、半導体基板を保持できる保持用治具と、保持用治具の吸排気部と接続された圧力調整装置と、を含む。ここで、保持用治具は、治具本体と、半導体基板を保持する保持部と、治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部と、を有し、保持部が半導体基板を保持することにより、治具本体の内部を気密に保持できるようになっている。
【0009】
本願において開示される半導体基板の保持方法は、(a)治具本体と、半導体基板を保持する保持部と、治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部と、を有する保持用治具に半導体基板を保持する工程、(b)(a)工程の後、保持部で半導体基板を保持することにより気密に保持された保持用治具の内部の圧力を調整する工程、(c)(b)工程の後、圧力が調整された状態を保持する工程、を含む。また、(b)工程において、半導体基板のたわみ具合が調整されるようにすることが好ましい。
【0010】
本願において開示される保持用治具は、治具本体、半導体基板を保持する保持部および治具本体の内部と外部とを接続する吸排気部を含む。この保持用治具は、保持部が半導体基板を保持することにより、治具本体の内部を気密に保持できる。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法によれば、半導体基板を所定のたわみ具合(所定の平坦度)に安定して保持できる。したがって、精度の高い処理等に適用でき、例えば、半導体素子を安定して製造することができ、半導体素子の性能低下も抑制できる。
【0012】
本願において開示される保持用治具によれば、処理条件に応じて、半導体基板のたわみ具合を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1の半導体基板の保持システムの概略構成を示す図である。
【
図5】保持用治具および圧力調整装置の概略構成例を示した図である。
【
図6】保持用治具および圧力調整装置の概略構成例を示した図である。
【
図7】保持用治具および圧力調整装置の概略構成例を示した図である。
【
図10】保持用治具の保持部の構成例を説明するための図である。
【
図11】保持用治具の保持部の構成例を説明するための図である。
【
図12】実施の形態2の半導体基板の保持方法を説明するためのフローチャートである。
【
図13】実施の形態2で使用する処理装置の配置構成を示した図である。
【
図14】半導体基板を保持用治具で保持する動作の流れを示した図である。
【
図15】半導体基板を保持用治具で保持する他の動作の流れを示した図である。
【
図16】実施の形態3で使用するECR処理手段の概略構成を示した図である。
【
図17】実施の形態3のカーボン成膜処理装置おける半導体基板100周辺の概略構成を示した図である。
【
図18】実施の形態3のアニール処理装置における半導体基板100周辺の概略構成を示した図である。
【
図19】実施の形態3のカーボン除去処理装置における半導体基板100周辺の概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成やハッチングを省略または簡略化している場合もある。
【0015】
<検討の経緯>
まず、本願発明の検討の経緯について説明する。
【0016】
上記のように、半導体素子の製造においては、その求められる構造が精細で、非常に高い精度が求められる。ところで、このような半導体素子を製造するにあたっては、一般的に円板形状の半導体基板を用意し、この半導体基板に対して、上記したような各種処理を順番に行っていくことで所望の半導体素子構造とする。
【0017】
このとき、半導体基板は、その表面を傷つけたり、汚染させたりしないようにする必要があり、半導体基板のうち半導体素子を形成しない部分を保持用治具等と接触させ、保持される。そして、保持用治具に保持された半導体基板は、所定の処理装置の処理ステージ上に配置するように移動され、各種処理が実施される。このとき、半導体基板は、通常、その最外周部分を保持用治具と接して支えられている。
【0018】
一方で、上記したように半導体装置における半導体素子のサイズは小さくなっていくが、半導体素子の製造効率を向上させるために、使用する半導体基板のサイズはできるだけ大きくすることが望ましい。このようにすることで、一度に製造できる半導体素子の個数を多くすることができ、製造効率を向上させることができる。例えば、SiC半導体基板では、その直径が100~200mmのものが用いられ得る。
【0019】
ところで、上記のように保持する際に、半導体基板が自重によってたわむ場合がある。また、処理によっては、その処理雰囲気や処理条件等により半導体基板自体がたわんでしまう場合もある。このように、たわんだ状態で各種処理を行うと、半導体素子として求める性能が確保できないおそれがあるため、製造歩留まりが低下し、製造コストが増加する可能性が高まる。
【0020】
そこで、本発明においては、このような処理時の半導体基板のたわみが生じないようにして、製造歩留まりを維持、向上させることができる半導体基板の保持方法および半導体基板の保持システムを見出した。以下、本実施の形態における半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法について、詳細に説明する。
【0021】
<実施の形態1>
[半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法]
以下に、本実施の形態の半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
[半導体基板の保持システム]
図1は、一実施の形態の半導体基板の保持システムの構成を説明するための図である。この
図1に示した半導体基板の保持システム10は、半導体基板100を保持するための保持用治具20と、保持用治具20に接続された圧力調整装置30と、を有して構成される保持システムである。ここでは、さらに保持用治具20に保持された半導体基板100に対して処理を行う処理装置40を有する構成を例示しており、この場合、全体としては半導体素子の製造システムとなる。
【0023】
まず、半導体基板の保持システムにおいて、特徴的な構成を有する保持用治具について説明する。
【0024】
(保持用治具)
本実施形態で用いられる保持用治具20としては、例えば、
図2に示したように、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、を有する保持用治具20Aが例示できる。
【0025】
治具本体21は、半導体基板100を保持したときに、その治具本体21の内部を気密にすることができるようになっている。すなわち、治具本体21には開口部が設けられており、この開口部を塞ぐように半導体基板100を治具本体21に保持させることで、半導体基板100と治具本体21とにより、その内部空間と外部空間とが隔離される。そのため、治具本体21の内部に、外部雰囲気と独立した空間を形成できる。
【0026】
保持部22は、半導体基板100を保持する部分である。この保持部22に半導体基板100を保持することにより、上記したように治具本体21の内部を気密に保持することができるようになる。したがって、この保持部22は、半導体基板100と直接接触する部分であって、半導体基板100を保持した際には、保持部22と半導体基板100との接触が、半導体基板100の外周全周に亘って密接に行われ、この接触部分で気体の流通が生じないようになっている。
【0027】
この保持部22は、
図2では、半導体基板100の外周部を上下(厚さ方向)から挟み込むように挟持した構成を示しているが、これに限られるものではない。この保持部22の変形例については、後述する。
【0028】
吸排気部23は、上記のように気密に保持された治具本体21の内部圧力を調整するために用いられ、吸気口23aにより治具本体21の外部から内部へのガス供給を行うことができ、排気口23bにより治具本体21の内部から外部へのガス排出を行うことができるようになっている。この吸排気部23には、後述する圧力調整装置30が接続され、治具本体21の内部の圧力が調整される。
【0029】
なお、ここで保持される対象の半導体基板100は、半導体素子の製造に用いられる半導体基板であれば特に限定されるものではなく、本明細書で「半導体基板」は、半導体素子を形成するための処理前の基板の他、処理途中の基板や処理後の基板も含まれる。半導体基板100は、その材料も限定されるものではないが、SiC、GaN、GaO、SiGe、GaAs、GaP、InP等の化合物半導体が好ましい。
【0030】
(圧力調整装置)
圧力調整装置30は、保持用治具20が半導体基板100を保持したときに、半導体基板100と治具本体21とによって気密に保持された空間の圧力を調整するものである。この圧力調整により、半導体基板100のたわみ具合を調整するようにする。圧力調整装置30としては、公知の圧力調整装置を特に限定せずに用いることができ、例えば、ポンプ等が例示できる。
【0031】
この圧力調整装置30としては、気密に保持された空間の圧力(内部の圧力)を外部の圧力よりを高くするように動作させてもよいし、内部の圧力を外部の圧力よりも低くするように動作させてもよい。いずれの圧力調整もできるようにすることが好ましい。
【0032】
この圧力調整装置30は、保持用治具20の治具本体21の内部の圧力を予め設定しておいた圧力に調整するようにしてもよいし、治具本体21の外部の圧力と内部の圧力とを測定し、その圧力差に応じて所定の圧力調整をするようにしてもよい。このとき、圧力の測定は圧力センサを用いて行えばよい。
【0033】
また、半導体基板100の表面のたわみの状態(平坦度)を計測できるたわみセンサを設け、半導体基板100のたわみ度合い(平坦度)を測定、確認しながら、治具本体21の内部の圧力を調整するようにすることもできる。
【0034】
この圧力調整装置30は、回転数が変更可能なサーボモータに接続されていることが好ましい。サーボモータに接続することで、気圧調整の効率を高めることができ、電力消費も抑制することができる。
【0035】
また、この圧力調整装置30は、複数個の圧力調整装置を設けることもできる。複数個の圧力調整装置を設けることで、段階的に圧力を調整することが可能となり、気圧調整の精度を高めることができる。
【0036】
(処理装置)
処理装置40は、半導体素子の製造にあたって用いられる処理装置であればよい。この処理装置としては、公知の半導体素子の製造における処理装置が挙げられ、例えば、成膜処理装置、イオン注入処理装置、熱処理装置、露光処理装置、カーボン除去処理装置、ダイシング処理装置、などが挙げられる。
【0037】
この処理装置40は、その内部の圧力や温度などを、その処理に適した条件となるようにできるチャンバーからなり、このチャンバーには、搬入口40aと搬出口40bとが設けられている。搬入口40aは、開閉可能であり、まず処理にあたって、搬入口40aを開いて、半導体基板100を外部からチャンバー内へ搬入することができる。半導体基板100をチャンバー内に搬入したら、搬入口40aを閉じ、チャンバー内の雰囲気を処理条件とする。
【0038】
また、処理装置40による処理が終わったら、必要に応じてチャンバー内の雰囲気を調整して、搬出口40bを開いて、半導体基板100をチャンバー内から外部へ搬出することができる。半導体基板100を外部へ搬出したら、搬出口40bを閉じればよい。
【0039】
なお、処理装置40の代わりに、半導体基板の検査装置や測定装置を設けて、半導体基板が所望の特性や構成となっていることを調べる検査システムとしてもよい。ここで必須な構成は、半導体基板を所定のたわみ具合(所定の平坦度)に保持するための構成であり、保持用治具20と圧力調整手段30である。
【0040】
(変形例)
本実施の形態では、上記したように、保持用治具20および圧力調整装置30により半導体基板100において、所定のたわみ具合(または所定の平坦度)を確保できるように保持可能とすることが基本的な技術思想であり、上記説明した構成が基本的に備える構成である。例えば、保持用治具20は、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、を有していればよい。そして、圧力調整装置30は、その治具本体21の内部の圧力を所望の圧力に調整可能とできればよい。なお、その圧力調整を行うにあたっては、これら保持用治具20および圧力調整装置30について、以下のように一部の構成を変更したものも用いることもできる。
【0041】
図3には、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、を有する保持用治具20Bを例示した。この保持用治具20Bは、保持用治具20Aとは、吸排気部23が1つの部材で形成されている点で異なる。この吸排気部23は、ガス供給とガス排出とを1つの部材で行うことができ、その機能、作用は、保持用治具20Aにおける吸排気部23と同一である。
【0042】
図4には、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、吸排気部23に設けられた開度調整バルブ24と、を有する保持用治具20Cを例示した。この保持用治具20Cは、保持用治具20Bとは、吸排気部23の下部に開度調整バルブ24が設けられている点で異なる。
【0043】
この開度調整バルブ24を設けることにより、吸排気部23内を流通するガスの流量を調節することでき、治具本体21の内部の圧力調整をより繊細に行うことができる。したがって、圧力調整の精度を向上できる。
【0044】
図5には、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、吸排気部23に設けられた開度調整バルブ24と、吸排気部23に設けられた清浄化フィルタ25と、を有する保持用治具20Dを例示した。この保持用治具20Dは、保持用治具20Cとは、吸排気部23に清浄化フィルタ25が設けられている点で異なる。また、この
図5においては、圧力調整装置30と、この圧力調整装置30と吸排気部23とが、気圧調整室31を介して接続されている例を示している。
【0045】
清浄化フィルタ25を設けることで、圧力調整の際に治具本体21の内部に供給されるガス中に半導体基板100を汚染するような不純物が含まれている場合でも、その不純物をこの清浄化フィルタ25により除去し、半導体基板100を清浄に保つことできる。清浄化フィルタ25としては、例えば、HEPAフィルタなどが挙げられる。
【0046】
また、気圧調整室31を設けることにより、吸排気部23と圧力調整装置30とが直接接続されている場合に比べて、圧力調整装置30による圧力変動がダイレクトに行われることなく、緩やかに行うことができ、治具本体21の内部の圧力調整をより繊細に行うことができる。したがって、圧力調整の精度を向上できる。
【0047】
図6には、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、吸排気部23に設けられた開度調整バルブ24と、吸排気部23に設けられた清浄化フィルタ25と、を有する保持用治具20Eを例示した。この保持用治具20Eは、保持用治具20Dとは、吸排気部23の下端にロータリージョイント26が設けられている点で異なる。
【0048】
このロータリージョイント26は、治具本体21の外側における吸排気部23の下端外周に設けられており、気圧調整室31と繋がる配管と接続されている。吸排気部23とこの配管とは、ロータリージョイント26により気密に接続され、配管を固定したまま、ロータリージョイント26より上方に接続された保持用治具20Eを、鉛直方向に伸びた吸排気部23の軸を回転軸として水平方向に回転させることができるようになっている。
【0049】
この保持用治具20Eのような構成とすることで、治具本体21の内部の圧力を調整しながら、半導体基板100を回転することができる。すなわち、処理装置40による処理中に半導体基板100を回転させることができる。このように回転させながら各種処理を行うようにすると、半導体基板100の処理面における処理の偏りを抑制でき、好ましい。
【0050】
図7には、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、吸排気部23に設けられた開度調整バルブ24と、吸排気部23に設けられた清浄化フィルタ25と、ロータリージョイント26とを有し、さらに、治具本体21の吸排気部23側に、治具本体21の内部に設けられる空間および外部空間とは別の空間を形成するように設けられた隔壁27、を有する保持用治具20Fを例示した。
【0051】
この保持用治具20Fは、さらに、治具本体21に、その内部に設けられる空間と接続された弁28が設けられ、この弁28には清浄化フィルタ25が設けられている。また、開度調整バルブ24の開度を調整する制御部と接続される電気配線29を示した。この電気配線29は、吸排気部23が圧力調整装置30と接続される配管の内部に沿わせて、外部に設けられた制御部と接続するようにすることができる。なお、この電気配線29は、この図では有線の場合を例示しているが、無線により制御信号を伝達し、開度調整バルブ24の開度を調整するようにすることもできる。
【0052】
また、
図7に示した気圧調整室31は、上記隔壁27で形成された空間の内部に配置され、また、ロータリージョイント26を、治具本体21および隔壁27を一体として回転可能となるように設けられている。このようにすることで、気圧調整室31を含め、保持用治具20Fを回転しながら処理装置40による処理を行うことでき、より安定して圧力の調整を行うことができる。このとき、吸排気部23と圧力調整装置30とはフレキシブル配管32により接続することが好ましい。
【0053】
また、
図7に示した治具本体21には、弁28を設けているが、これは、治具本体21の内部の圧力が高くなり過ぎた場合や、低くなり過ぎた場合に、その内部の圧力を調整するためのものである。この弁28を設けておくことで、仮に圧力調整装置30による圧力調整動作が適当でなかった場合でも、大きな圧力変動を抑制し、半導体基板100を損傷する等の事態を回避することができる。
【0054】
図8には、治具本体21と、半導体基板100の保持部22と、治具本体21の底面に設けられた吸排気部23と、治具本体21の内部の空間に、該空間を仕切る仕切り板21aを有する保持用治具20Gを例示した。この保持用治具20Gは、保持用治具20Aとは、仕切り板21aが設けられており、吸排気部23が複数設けられている点で異なる。
【0055】
この保持用治具20Gでは、仕切り板21aにより、半導体基板100を保持した際に、治具本体21の内部の空間が、複数の空間にそれぞれ独立に形成できるようになっている。すなわち、治具本体21の内部に形成された複数の空間は、それぞれが独立して気密に保持されるようになっている。したがって、この空間ごとに吸排気部23を設けることで、空間ごとに圧力を調整することができる。このような構成とすることにより、半導体基板100に対して分割して圧力調整をすることができ、よりきめ細かい圧力調整ができる。
【0056】
なお、この保持用治具20Gのようにする場合、半導体基板100は、半導体基板100の外周よりも中心に近い部分で、仕切り板21aと接触することとなる。したがって、形成される半導体素子の製造効率を低下させないように、接触する部分は半導体素子として影響を受けない箇所とすることが好ましい。この接触箇所としては、例えば、半導体素子を製造した半導体基板をダイシングによりチップ化するときの切断部分とすることが好ましい。また、接触箇所の面積が大きくなると、やはり半導体素子の製造効率の低下が生じてしまう。そのため、例えば、
図9に示したように、仕切り板21aと半導体基板100との接触面積が小さくなるように、仕切り板21aの上部に微細バンプ21bを設け、この微細バンプ21bのみが半導体基板100と接触するような構成とすることが好ましい。
【0057】
また、保持用治具20において、保持部22については、上記説明では、半導体基板100の外周の周縁部を上下から挟むようにして保持できる構成の保持部について説明したが、
図10に示したような保持構造としてもよい。
【0058】
この
図10において、
図10(a)には、保持用治具20として、治具本体21の上部が保持部22となっており、この保持部22は半導体基板100を上方から載せて保持できるようになっている構成の例を示している。
図10(b)には、
図10(a)において、半導体基板100と保持部22との接触が弾性部材22aを介して行うことができるようになっている構成の例を示している。
図10(c)には、
図2~9で説明した構成の保持部22において、半導体基板100と保持部22との接触が上下ともに弾性部材22aを介して行うことができるようになっている構成の例を示している。さらに、
図10(d)には、カプラ式着脱機構により、半導体基板100を保持することができる構造例を示している。
【0059】
なお、
図10(b)~(d)のように、保持部22と半導体基板100とを弾性部材22aを介して接触させる場合、
図11に示した構成とすることもできる。この
図11では、弾性部材22aは、部材22a1、22a2および22a3を介して、保持部22に固定されている。部材22a1は、弾性部材22aを保持する部材であり、部材22a2は、部材22a1と保持部22とを接続するフレキシブル部材であり、部材22a3は、部材22a2を保持部22に固定する部材である。
【0060】
半導体素子の製造処理において、半導体基板100は、室温より高い温度に加熱される場合がある。保持用治具20と半導体基板100とは、通常、熱膨張率が異なる素材から形成されている(保持用治具の方が熱膨張率が高い)ため、加熱されると保持用治具20により気密に保持された半導体基板100には、熱膨張率の差に起因する応力が発生する。
【0061】
この応力によって半導体基板100が変形する場合があるが、この変形を抑制するために、
図11に示したように、弾性部材22aに加えて、フレキシブル部材22a2を備えるような構成としてもよい。フレキシブル部材22a2は、柔軟性を有し、加熱温度に耐性を有する部材であれば特に限定されず、例えば、金属ベローズやシリコンラバークッション等が挙げられる。
【0062】
このように、本実施の形態における半導体基板100の保持構造は、治具本体21と半導体基板100とにより気密に保持できる空間を形成できればよく、種々の変形を行うことができる。
【0063】
[半導体基板の保持方法]
次に、本実施の形態における半導体基板の保持方法について、
図1および
図3で示した構成の半導体基板の保持システムを用いた場合を例に説明する。
【0064】
まず、半導体素子製造用の処理対象となる半導体基板100を用意する。そして、この半導体基板100を保持用治具20Bで保持する((a)工程)。ここで、保持用治具20Bは、上記説明したように
図3に示した構成からなる。保持用治具20Bに半導体基板100を保持することにより、半導体基板100と治具本体21の内部に、半導体基板100と治具本体21とで形成され、気密に保持できる空間(内部空間)が得られる。
【0065】
次いで、(a)工程の後、保持用治具20Bの内部に形成された空間(内部空間)の圧力を調整する((b)工程)。この圧力の調整は、吸排気部23により、ガスの供給またはガスの排気をすることで行うことができ、このガスの供給および排気は、吸排気部23に接続された圧力調整装置30により行うことができる。
【0066】
そして、本実施の形態においては、この圧力調整装置30による圧力の調整は、半導体基板100がたわみ具合を調整できるように行われる。具体的には、半導体基板100が過剰に下(内部空間側)にたわんでいる場合、治具本体21の内部空間の圧力が高くなるように圧力調整装置30からガス供給を行う。一方、半導体基板100が過剰に上(外部空間側)にたわんでいる場合、治具本体21の内部空間の圧力が低くなるように圧力調整装置30からガス排気を行う。
【0067】
上記のように、治具本体21の内部空間の圧力を、高くなるように調整することもできるし、低くなるように調整することもできるが、通常、調整前においては、治具本体21の内部空間と外部空間のそれぞれの圧力は同程度であり、半導体基板100の自重により半導体基板100の中央部分が下(内部空間側)にたわむことが多いことが想定される。そのため、常圧で処理が行われる場合、この圧力調整の工程で例えば半導体基板を平坦に保持しようとするためには、治具本体21の内部空間にガス供給を行い、外部の圧力よりも高くなるように調整する。
【0068】
次いで、(b)工程の後、圧力が調整された状態を保持する((c)工程)。このようの保持した状態で、例えば、半導体基板100に処理装置40で処理を行う。この処理は、上記処理装置40において説明した各種装置により行われ、例えば、成膜処理、イオン注入処理、熱処理、露光処理、アッシング処理、ダイシング処理、などが挙げられる。
【0069】
これら処理においては、その処理条件に応じて圧力調整装置30により半導体基板100が所定のたわみ具合(または所定の平坦度)となるように圧力調整することが好ましい。上記したように圧力センサやたわみセンサを設け、処理装置40における処理前に圧力調整を行った後、その圧力を保持しながら処理装置40による処理を行うようにしてもよいし、処理装置40内にたわみセンサを設け、処理を行っている最中に、そのたわみを測定しながら、半導体基板100の過剰なたわみが生じたことを検知した場合に、圧力調整装置30により圧力調整を行うようにしてもよい。
【0070】
処理装置40は複数設け、半導体基板100を、これら複数の処理装置40間を順番に搬送手段により搬送し、複数の処理を連続的に行うようにしてもよい。
【0071】
また、半導体基板の保持システムでも説明したように、処理装置40は必須の構成ではなく、その代わりに、検査装置や測定装置を設けて、保持された半導体基板の検査や測定を行うようにすることもできる。
【0072】
<実施の形態2>
次に、実施の形態1で説明した半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法において、半導体素子を製造するための処理装置40による好ましい処理について説明する。すなわち、ここで説明する実施の形態は、半導体素子の製造システムおよび半導体素子の製造方法と言うことができる。半導体基板に対する処理としては、大別すると、前工程と呼ばれる、複数の半導体素子の積層構造を形成する工程と、後工程と呼ばれる、半導体素子ごとにパッケージ化する工程と、がある。また、これら工程の間に、各種処理を行う場合もある。
【0073】
この実施の形態2においては、前工程により複数の半導体素子が形成された半導体基板に対して、後工程に付す前に、カーボン成膜処理、アニール処理およびカーボン除去処理を順番に行う処理を例に説明する(
図12)。なお、これら処理は、前工程の一部と考えることもできる。
【0074】
これらカーボン成膜処理(S1)、アニール処理(S2)およびカーボン除去処理(S3)は、いずれの処理も公知の条件、装置などを用いることができる。これら処理にあたって、上記実施の形態1で説明した保持用治具20および圧力調整装置30を用いて、半導体基板100のたわみ具合を調整するようにする。
【0075】
また、カーボン成膜処理(S1)、アニール処理(S2)およびカーボン除去処理(S3)を一連の処理として連続して行うこともでき、例えば、
図13に示したように、カーボン成膜処理装置41、アニール処理装置42およびカーボン除去処理装置43を接続して、各処理を連続的に行うようにできる。本実施の形態では、これら各処理を実施するにあたって、各処理装置内の雰囲気を所定の条件とする。そのため、処理の前後に、内部雰囲気を調整できる調整室RC1、RC2を設けることが好ましい。なお、
図1312は、各処理装置を上方から見たときの配置を示しており、半導体基板100を保持した保持用治具20の移動する方向を矢印で示している。
【0076】
まず、半導体基板100を、外部から調整室RC1に、ロボットアーム等の搬送ロボット(搬送手段)を用いて搬入する。半導体基板100の調整室RC1への搬入は、その搬入前に、半導体基板100を保持用治具20に保持させて行ってもよいし、半導体基板100のみを調整室RC1へ搬入し、調整室RC1内で保持用治具20に保持させるようにしてもよい。
【0077】
半導体基板100を保持用治具20に保持する方法としては、
図14に示したように、支持板SP上に支持された半導体基板100の上方から保持用治具20を逆さにして近づけ(
図14(a))、保持用治具20の保持部と半導体基板100とを接触させる(
図14(b))。保持用治具20と半導体基板100とを接触させたら、保持用治具20の内部空間の圧力を、圧力調整装置により低下させて半導体基板100を吸着し、持ち上げる(
図14(c))。次いで、半導体基板100を吸着した保持用治具20を上下反転させる(
図14(d))。このようにして、半導体基板100を保持した保持用治具20が得られる。
【0078】
また、半導体基板100を保持用治具20に保持する方法としては、
図15に示したように行うこともできる。まず、支持板SP上に支持された半導体基板100の下方から保持用治具20を近づけ(
図15(a))、支持板SPと半導体基板100とを接触させる(
図15(b))。保持用治具20と支持板SPとを接触させたら、必要に応じて、保持用治具20の内部空間を圧力調整装置により圧力を低下させて半導体基板100を吸着する(
図15(c))。なお、
図15においては、支持板SPは、半導体基板100の外周を支持し、半導体基板100の中央部分は開口しており、半導体基板100と保持用治具20により保持用治具の内部空間が気密にできるようになっている。
【0079】
さらに、必要に応じて、半導体基板100の上方に、支持板SPと挟んで保持できる枠体22bを設けてもよい。枠体22bを設けることで、半導体基板100を保持用治具20で確実に保持できる(
図15(d))。このようにして、半導体基板100を保持した保持用治具20が得られる。
【0080】
その後、調整室RC1の内部雰囲気を、例えば、真空や特定の雰囲気となるように調整する。真空の調整は、例えば、保持用治具20を搬入後、減圧装置により、真空になるまで圧力を低下させて雰囲気調整を行うことができる。また、保持用治具20を搬入後、減圧装置により、真空になるまで圧力を低下させ、次いで、窒素(N2)等の不活性ガスで内部雰囲気を置換後、再度減圧装置により真空になるまで圧力を低下させるなど、雰囲気置換と雰囲気調整を組み合わせて行うこともできる。雰囲気置換を行うことで、空気が残留することを抑制でき、処理時の不具合等が生じる可能性を有意に低減でき好ましい。
【0081】
このように調整室RC1での雰囲気調整が終わった後、カーボン成膜処理装置41、アニール処理装置42およびカーボン除去処理装置43に順番に搬送し、各処理装置で所定の処理を行う。なお、この各処理装置での処理前または処理中に、実施の形態1で説明した圧力調整を行い、半導体基板100のたわみ具合を調整するようにする。
【0082】
そして、全ての処理が終了した後、半導体基板100を保持した保持用治具20は、調整室RC2に搬送される。調整室RC2では、この半導体基板100を保持した保持用治具20を処理装置40の外部に排出するための調整を行う。
【0083】
ここでの調整動作は、調整室RC1とは逆の調整となる。すなわち、まずは真空状態に調整されており、そこに全ての処理が終了した半導体基板100が搬送される。次いで、ガスを供給して、大気圧となるように圧力調整が行われる。また、必要に応じて、半導体基板100は、保持用治具20から解放され、支持板SP上に載置された状態とし、調整室RC2から装置外部へ搬出される。
【0084】
なお、
図13に示したように、各処理装置を所定の大きさのユニットとして合わせて構成することで、ユニットの増設や入替などを容易にでき好ましい。また、
図13に示したように、一連の処理を行う処理装置の搬入口と搬出口を隣り合うようにして、その搬送経路を往復させるように配置することで、製造ラインをコンパクトにして装置の設置面積を小さくすることができ、また装置間の移送によるロスも削減できるため製造効率を向上することができる。
【0085】
<実施の形態3>
本実施の形態は、実施の形態2で説明した半導体基板の保持システムおよび半導体基板の保持方法において、さらに処理装置40による好ましい処理について説明する。この実施の形態3では、実施の形態2と同じシステム構成であるが、使用する装置の組合せを特定するものであり、また、その処理条件を常温で行うことができるようにしたものである。
【0086】
すなわち、この実施の形態における処理装置40は、実施の形態2と同じように、
図13に示したカーボン成膜処理装置41、アニール処理装置42およびカーボン除去処理装置43を接続して、各処理を連続的に行うようにできるものである。本実施の形態では、これら各処理を実施するにあたって、各処理装置を以下のように組合せて行う。
【0087】
(カーボン成膜処理)
本実施の形態では、カーボン成膜処理装置41として、ECR処理手段を用いる。このECR処理手段は、電子サイクロトロン共鳴現象(Electron Cyclotron Resonance:ECR)で発生させたECRプラズマを利用して、ECRプラズマの周囲に配置したターゲットにECRプラズマに含まれるイオンを衝突させることにより、ターゲットから飛び出したターゲット粒子(カーボン粒子)を基板上に付着させて膜を形成するECRスパッタリング装置である。
【0088】
図16に示したECR処理手段401は、成膜室410を有している。成膜室410には、成膜対象物である半導体基板100を保持する保持用治具20を配置する試料台411が設けられている。試料台411は、試料台411を上下方向に移動させるための上下移動機構412と、試料台411に配置された半導体基板100を保持する保持用治具20を回転させるための回転機構413とを備えている。そして、成膜室410には、プロセスガスを導入するための供給口414aが設けられているとともに、成膜室410の圧力を真空状態に近づけるための真空排気機構414bが設けられている。
【0089】
次に、ECR処理手段401は、成膜室410と接続されたECRスパッタリング部402を有している。このECRスパッタリング部402は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器420と、マイクロ波発振器420で発生したマイクロ波の伝搬経路となるマイクロ波導波管421と、マイクロ波をECRプラズマチャンバ425に導入するためのマイクロ波導入窓422を有している。そして、ECRスパッタリング部402は、マイクロ波導入窓422と接続されたECRプラズマチャンバ425を有しており、マイクロ波導入窓422から射出されたマイクロ波がECRプラズマチャンバ425の内部に導入されるようになっている。
【0090】
ここで、
図16に示すように、マイクロ波が、ECRプラズマチャンバ425の側面から導入されるようになっている。すなわち、ECR処理手段401では、マイクロ波発振器420から分岐した一対のマイクロ波導波管421が設けられており、一対のマイクロ波導波管421のそれぞれにマイクロ波導入窓422が設けられている。
【0091】
そして、マイクロ波導入窓422は、ECRプラズマチャンバ425の互いに対向する側面のそれぞれに設けられており、ECR処理手段401では、いわゆる「分岐結合型プラズマ源」が採用されている。
【0092】
ECRプラズマチャンバ425の内部には、防着筒426が設けられている一方、ECRプラズマチャンバ425の周囲には、磁場を発生させるためのコイル423およびコイル424が配置されている。
【0093】
ECRプラズマチャンバ425の内部には、例えば、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスが導入されており、コイル424によって発生する磁場と、マイクロ波導入窓422から導入されたマイクロ波によって、混合ガスからECRプラズマEPが生成される。つまり、マイクロ波発振器420、マイクロ波導波管421、マイクロ波導入窓422、コイル423、コイル424およびECRプラズマチャンバ425によって、ECRプラズマEPを生成するプラズマ発生部(第1プラズマ発生部)が構成されている。
【0094】
このように、プラズマ発生部は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発振器420と、マイクロ波発振器420で発生させたマイクロ波を伝搬させるマイクロ波導波路であって、マイクロ波発振器420から分岐するように設けられた一対のマイクロ波導波管421と、一対のマイクロ波導波管421のそれぞれに設けられたマイクロ波導入窓422と、マイクロ波導入窓422からマイクロ波が導入されるECRプラズマチャンバ425と、を有し、マイクロ波導入窓422は、ECRプラズマチャンバ425の側面に設けられている。
【0095】
続いて、ECRプラズマチャンバ425と接するようにターゲットTAが配置されており、このターゲットTAは、ターゲット装着部427に装着されている。ここで、ターゲットTAは、ECRプラズマチャンバ425で発生させたECRプラズマEPを構成する正イオン(窒素イオンやアルゴンイオン)を衝突させる部品であり、ターゲット装着部427に固定されている。そして、ターゲット装着部427は、スパッタリング電源428と電気的に接続されており、スパッタリング電源428から電力が供給される。この結果、ターゲット装着部427に固定されているターゲットTAに電力が供給される。したがって、スパッタリング電源428は、ターゲットTAに電力を供給可能な電力供給部として機能する。このスパッタリング電源428は、例えば、高周波電源、直流電源(DC電源)あるいは直流パルス電源から構成される。
【0096】
このように構成されているECR処理手段401では、ターゲット装着部427に装着されたターゲットTAにイオン(ECRプラズマEPを構成するイオン)を衝突させることにより飛び出したターゲット粒子(カーボン粒子)を半導体基板100の表面に堆積させることができる。ここでは、ターゲットとしてカーボンを用い、カーボン膜が形成される。
【0097】
なお、ターゲット装着部427は、断面視において、試料台411の表面の法線軸VL1とターゲット装着部427の中心軸VL2とのなす角度θが有限値となるように傾斜配置することが好ましい。
【0098】
図16において、ECRプラズマチャンバ425には、例えば、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが導入されている。そして、ECRプラズマチャンバ425の周囲に配置されているコイル424(磁場発生部)から磁場を発生させると、ECRプラズマチャンバ425に導入されている混合ガスに含まれる電子がローレンツ力を受けることにより、円運動する。このとき、電子の円運動の周期(あるいは周波数)と同じ周期(あるいは周波数)を有するマイクロ波(電磁波)がマイクロ波発振器420で発生しており、このマイクロ波がマイクロ波導波管421を介してマイクロ波導入窓422からECRプラズマチャンバ425に導入される。すると、円運動する電子とマイクロ波とが共鳴して、マイクロ波のエネルギーが円運動する電子に効率良く供給される(電子サイクロトロン共鳴現象)。この結果、混合ガスに含まれる電子の運動エネルギーが大きくなって、混合ガスが、正イオンと電子とに分離する。これにより、正イオンと電子とからなるECRプラズマEPが生成される。
【0099】
次に、
図16において、スパッタリング電源428からターゲットTAに対して、例えば、高周波電圧(高周波電力)を供給する。この場合、高周波電圧が供給されたターゲットTAには、正電位と負電位とが交互に印加されることになる。ここで、ECRプラズマEPを構成する正イオンと電子のうち、ターゲットTAに印加される高周波電圧に追従することができるのは、質量の軽い電子である一方、質量の重い正イオンは、高周波電圧に追従することができない。この結果、追従する電子を引き付ける正電位が電子の有する負電荷によって相殺される一方、負電位が残存するため、高周波電力の平均値は、0Vから負電位にシフトする。このことは、ターゲットTAに対して高周波電圧が印加されているにも関わらず、あたかも、ターゲットTAに負電位が印加されているとみなすことができることを意味している。これにより、正イオンは、平均的に負電位が印加されているとみなされるターゲットTAに引き付けられて、ターゲットTAに衝突する。
【0100】
続いて、正イオンがターゲットTAに衝突すると、ターゲットTAを構成するターゲット粒子(カーボン粒子)が正イオンの運動エネルギーの一部を受けとって、ターゲットTAから成膜室410の内部空間に飛び出す。
【0101】
その後、成膜室410の内部空間に飛び出したターゲット粒子(カーボン粒子)の一部は、試料台411に配置されている半導体基板100の表面に付着する。そして、このような現象が繰り返されることによって、半導体基板100の表面に多数の第1ターゲット粒子が付着する結果、半導体基板100の表面上にターゲット粒子(カーボン粒子)が堆積してカーボン膜が得られる。
【0102】
このECR処理手段401は、カーボン膜をスパッタしている最中に、常に半導体基板100へイオンを照射でき、この照射効果により耐熱性に優れる結晶性のカーボン膜を形成することができる。このECR処理手段401において、例えば、基板温度を室温~400℃、ガス圧を0.01~0.2Pa、マイクロ波パワーを100~1,500Wに設定してカーボン成膜処理をすることができる。
【0103】
このカーボン成膜処理において形成されるカーボン膜の厚さは10~1,000nm程度が好ましく、10~100nmがより好ましい。
【0104】
また、
図17に示したように、ECR処理手段において、ECRスパッタリング部402で発生したECRプラズマEPを用いた成膜処理を進めるにあたって、膜厚計測部415やたわみ計測部416を設けることが好ましい。また、半導体基板100を水平回転させながら処理を行うことが好ましく、この回転により半導体基板100表面における処理を均一にできる。水平回転は、例えば、
図6で示した保持用治具20Eで説明したようにロータリージョイントを設けるようにして回転可能な構成とすればよい。
【0105】
このように膜厚計測部415を設けることにより、ここで半導体基板100の厚さを計測し、その表面に形成するカーボン膜が所望の厚さとなるまで、確認しながら処理を行うようにできる。また、たわみ計測部416を設けることにより、半導体基板100の平坦度を計測することができ、この平坦度が設定した閾値を超えた場合、保持用治具20の内部空間の圧力を調整するようにして、例えば、平坦度を小さくすることができる。これら、膜厚計測部415やたわみ計測部416は、レーザLS照射により非接触で厚さや平坦度を計測できる構成が好ましい。
【0106】
(アニール処理装置)
本実施の形態では、アニール処理装置42として、レーザ照射部を設ける。このレーザ照射部は、レーザ照射により半導体基板100の表面に対してアニール処理できるものであればよく、例えば、エキシマレーザ、第2高調波、CO2レーザ等のレーザを照射できるレーザ照射部が挙げられる。このレーザ照射部としては、例えば、特開2018-64048号公報に記載されているエキシマレーザ照射装置が挙げられる。エキシマレーザとしては、XeClエキシマレーザ(308nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)などが好ましいものとして挙げられる。
【0107】
半導体基板100に対するアニール処理により、その表面における炭化珪素結晶(SiC結晶)の結晶性を改質処理できる。なお、アニール処理は、通常、処理装置内の雰囲気を加熱して行うことが多いが、本実施の形態においてはレーザ照射による照射部を高温として行う処理であり、処理装置内の雰囲気は常温での実施が可能である。
【0108】
また、半導体基板100には、上記のようにカーボン成膜処理を行っているため、カーボン膜が形成されている。しかしながら、この形成されるカーボン膜の厚さは、上記のように10~100nm程度の厚さであり、使用するレーザがカーボン膜を透過して半導体基板100の表面をアニール処理できるため問題ない。
【0109】
このアニール処理においては、
図18に示したように、レーザ照射部430を設け、半導体基板100の表面にレーザ照射を行えばよい。このレーザ照射は、ラインレーザLLSとして照射することが好ましい。ラインレーザLLSを用い、半導体基板100をそのラインレーザLLSのラインに直交する方向に搬送することで、半導体基板100の表面のアニール処理を効率的に行うことができる。半導体基板100を保持した保持用治具20は、固定台431に固定され、この固定台はアニール処理装置内で水平方向に移動(搬送)できるようになっている。また、この固定台431は、試料台411と同様に、半導体基板100を保持する保持用治具20を回転させるための回転機構も備えている。
【0110】
このとき、レーザ照射部430は、半導体基板100を保持した保持用治具20の上方からレーザ照射を行うことができるように配置する。このとき、照射するレーザを、半導体基板100の搬送方向に対して垂直となるようにライン状に照射可能なように固定して設ければよい。このような配置とすることで、アニール処理装置内を、半導体基板100を保持した保持用治具20をその照射ラインに晒すように搬送させることで、半導体基板100の表面にレーザ照射を行うことができる。
【0111】
また、
図18に示したように、アニール処理装置において、レーザ照射部430によりアニール処理を進めるにあたって、ラマン分光分析部432やたわみ計測部416を設けることが好ましい。また、半導体基板100を水平回転させながら処理を行うことが好ましく、この回転により半導体基板100表面における処理を均一にできる。
【0112】
このようにラマン分光分析部432を設けることにより、ここで半導体基板100の表面でアニール処理が十分に行われているか否かを確認できる。ラマン分光分析部432は、レーザ照射した際に発生するラマン散乱光を利用することで、半導体基板100の表面物質の状態(結晶状態など)を確認できる装置である。
【0113】
また、このアニール処理装置でも、たわみ計測部416を設けて、半導体基板100の平坦度を計測することができる。この平坦度が設定した閾値を超えた場合、保持用治具20の内部空間の圧力を調整するようにして、例えば、平坦度を小さくすることができる。たわみ計測部416は、レーザLS照射により非接触で表面状態や平坦度を計測できる構成が好ましい。
【0114】
(カーボン除去処理装置)
本実施の形態では、カーボン除去処理装置43として、上記カーボン成膜処理装置41で用いたECR処理手段401(
図16)を用いることができる。カーボン除去処理は、例えば水素やアルゴンを供給ガスに用い、ガス流量を0.5~50sccm、マイクロ波パワーを100~1,500Wに設定して処理することができる。
【0115】
このように、半導体基板100の表面に形成されたカーボン膜に対してECRプラズマEPを照射することで、カーボン膜を除去することできる。本実施の形態においてはECRプラズマEPの照射処理であり、常温~400℃で実施が可能である。
【0116】
このカーボン除去処理装置においては、
図19に示したようにレーザ散乱検査部441やたわみ計測部416を設けることが好ましい。また、ここでも、半導体基板100を水平回転させながら処理を行うことが好ましく、この回転により半導体基板100表面における処理を均一にできる。
【0117】
このようにレーザ散乱検査部441を設けることにより、ここで半導体基板100の表面状態を検査し、その表面に形成されるカーボン膜が十分に除去されるまで、確認しながら処理を行うようにできる。また、たわみ計測部416を設けることにより、半導体基板100の平坦度を計測することができ、この平坦度が設定した閾値を超えた場合、保持用治具20の内部空間の圧力を調整するようにして、例えば、平坦度を小さくすることができる。たわみ計測部416は、レーザLS照射により非接触で厚さや平坦度を計測できる構成が好ましい。
【0118】
本実施の形態のように、一連の処理を真空または低圧条件下、常温~400℃で処理できるようにしたことで、処理装置間の圧力変動や高温加熱等によって半導体基板100のたわみ具体が変動することを抑制できる。そのため、半導体基板100を保持した保持用治具20を各処理装置に移動させながら処理する際、処理条件の違いによって、その都度圧力調整を行うことなく効率的に処理することができる。
【0119】
また、本実施の形態のように保持用治具を移動可能とすることで、チャンバを容易に清掃することができる。
【0120】
以上、本発明について、実施の形態および実施例により具体的に説明したが、本発明はこれら実施の形態および実施例に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
10 半導体基板の保持システム
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G 保持用治具
21 治具本体
21a 仕切り板
21b 微細バンプ
22 保持部
22a 弾性部材
22b 枠体
23 吸排気部
23a 吸気口
23b 排気口
24 開度調整バルブ
25 清浄化フィルタ
26 ロータリージョイント
27 隔壁
28 弁
29 電気配線
30 圧力調整装置
40 処理装置
41 カーボン膜成膜処理装置
42 アニール処理装置
43 カーボン除去処理装置
100 半導体基板
401 ECR処理手段
RC1,RC2 調整室
SP 支持板