(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135891
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】異種材料の接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/20 20060101AFI20240927BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20240927BHJP
B23K 103/18 20060101ALN20240927BHJP
B23K 103/20 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B23K11/20
B23K11/11 540
B23K103:18
B23K103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046791
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平出 卓也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇公
(72)【発明者】
【氏名】木下 圭介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健二
【テーマコード(参考)】
4E165
【Fターム(参考)】
4E165AA01
4E165AA03
4E165AA12
4E165AA32
4E165AB02
4E165AC02
4E165AC03
4E165BB02
4E165BB12
4E165BB21
4E165BB25
4E165CA05
4E165CA06
4E165EA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安定した温度で材料同士を接合することができる異種材料の接合方法を提供する。
【解決手段】異種材料の接合方法は、第1材料からなる第1部材100と、第1材料と異なる第2材料からなる第2部材200と、を重ね合わせる第1工程と、第1部材100に第1電極10を当接させると共に第2部材200に第2電極20を当接させ、重ね合わせた第1部材100と第2部材200を第1電極10と第2電極20で挟み込んで加圧する第2工程と、第1電極10と第2電極20の間に通電することにより第1部材100と第2部材200とを抵抗スポット接合する第3工程と、を備える異種材料の接合方法であって、第3工程において、通電により第1部材100の内部を最も高温に発熱させることで第1部材100と第2部材200とを接合する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料からなる第1部材と、前記第1材料と異なる第2材料からなる第2部材と、を重ね合わせる第1工程と、
前記第1部材に第1電極を当接させると共に前記第2部材に第2電極を当接させ、前記重ね合わせた第1部材と第2部材を前記第1電極と前記第2電極で挟み込んで加圧する第2工程と、
前記第1電極と前記第2電極の間に通電することにより前記第1部材と前記第2部材とを抵抗スポット接合する第3工程と、を備える異種材料の接合方法であって、
前記第3工程において、通電により前記第1部材の内部を最も高温に発熱させることで前記第1部材と前記第2部材とを接合する異種材料の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の異種材料の接合方法において、
前記第1材料の電気抵抗は、前記第2材料の電気抵抗よりも高く、
前記第2材料の融点は、前記第1材料の融点よりも低く、
前記第3工程は、通電により前記第1部材の内部を最も高温に発熱させることで前記第2部材の表層を溶融させることを含む異種材料の接合方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の異種材料の接合方法において、
前記第1電極の直径を、前記第2電極の直径よりも小さくすることにより、前記第3工程において、前記第1部材の内部における電流密度を前記第2部材の内部における電流密度より高くする異種材料の接合方法。
【請求項4】
請求項3に記載の異種材料の接合方法において、
前記第3工程において、前記第1電極の前記第1部材との接触面積を、前記第2電極の前記第2部材との接触面積よりも小さくする異種材料の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種材料の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の材料と、この第1の材料とは種類の異なる第2の材料と、を重ね合わせて抵抗スポット溶接により接合する異種材料の接合方法が知られている(例えば、特許文献1)。この異種材料の接合方法では、第1の材料と第2の材料の接触面における抵抗発熱により、第1の材料と第2の材料とを溶融して接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接触面における抵抗は材料同士の接触状態によって変化するので、従来の接合方法では接触面における発熱量が不安定となってしまい、温度が安定しないことがあるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安定した温度で材料同士を接合することができる異種材料の接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、通電により第1部材の内部を最も高温に発熱させることで第1部材と第2部材とを接合することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通電により第1部材の内部を最も高温に発熱させることで安定した温度で第1部材と第2部材とを接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の異種材料の接合方法の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の異種材料及び電極の近傍を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る電源システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における異種材料の接合方法の一例を示す側面図である。
図2は、
図1の異種材料及び電極の近傍を示す拡大図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の異種材料の接合方法において使用される接合装置1は、第1材料からなる第1部材100と、第1材料と異なる第2材料からなる第2部材200と、を溶融により接合する接合装置である。第1部材100の一部と第2部材200の一部は互いに重ねられており、接合装置1は第1部材100と第2部材200の重ね合わせられた部分を溶融により接合する。
【0011】
第1材料としては、特に限定されないが、鋼等を例示することができ、この第1材料からなる第1部材100としては、鋼板を例示することができる。この鋼板としては、特に限定されないが、亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)、合金化亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)、及び、裸鋼板等を例示することができる。この第1部材100は、例えば、車両の骨格として使用される。
【0012】
一方で、第2材料としては、特に限定されないが、アルミニウム合金等を例示することができ、この第2材料からなる第2部材200としては、アルミニウム合金板等を例示することができる。この第2部材200は、例えば、車両のパネルとして使用される。
【0013】
また、本実施形態では、第1材料を第2材料よりも電気抵抗の高い材料とすることができる。例えば、第1材料を鋼とすると共に第2材料をアルミニウム合金とした場合、第1材料の電気抵抗は第2材料の電気抵抗よりも高くなる。
【0014】
また、本実施形態では、第2材料を第1材料よりも融点の低い材料とすることができる。例えば、第1材料を鋼とすると共に第2材料をアルミニウム合金とした場合、第2材料の融点は第1材料の融点よりも低くなる。
【0015】
本実施形態における接合装置1は、第1電極10と、第2電極20と、電源30と、を備えている。なお、特に図示していないが、第1電極10と第2電極20は、多関節ロボットの先端に設けられていてもよく、当該多関節ロボットにより移動可能に構成されていてもよい。
【0016】
第1電極10は、金属などの導電性を有する材料から構成された電極チップである。この第1電極10は、第2電極20と共に積層体300を挟み込むことにより、当該積層体300を第1部材100側から加圧する。
【0017】
本実施形態における第1電極10の形状は、特に限定されないが、ドームラジアス型(DR型)である。
図2に示すように、この第1電極10は、第1柱状部11と、第1先端部12と、を含んでいる。第1柱状部11は、円柱状の部分であり、円筒状側面11aを含んでいる。
【0018】
この第1柱状部11の下端に第1先端部12が接続している。第1電極10の第1先端部12は、ドーム部13と、ラジアス部14と、を含んでいる。ドーム部13は、第1柱状部11の下端に設けられており、本実施形態におけるドーム部13は下方に向かうに従って徐々に縮径するドーム形状を有している。このドーム部13は、側面としてドーム面13aを含んでいる。このドーム面13aの曲率は後述のラジアス部14のラジアス面14aの曲率よりも大きくなっている。このドーム面13aの曲率半径は、特に限定されないが、5mm~10mmであってもよい。
【0019】
このドーム部13の下端に第1ラジアス部14が配置されている。この第1ラジアス部14は、下方に向かって僅かに突出するラジアス形状を有している。本実施形態における第1ラジアス部14は、第1部材100に接触する部分であり、下端面として第1ラジアス面14aを含んでいる。この第1ラジアス面14aの曲率はドーム面13aの曲率よりも小さくなっている。この第1ラジアス面14aの曲率半径は、特に限定されないが、10mm~100mmであってもよい。
【0020】
また、この第1ラジアス部14の直径d1は、上記の第1柱状部11の直径D1よりも小さくなっている(d1<D1)。特に限定されないが、直径D1を8mm~16mmとすることができ、直径d1を6mm~8mmとすることができる。
【0021】
なお、特に限定されないが、接合時の加圧力によっては、第1ラジアス面14aのみならずドーム面13aの下部領域も第1部材100に接触してもよい。
【0022】
第2電極20は、金属などの導電性を有する材料から構成された電極チップである。この第2電極20は、第1電極10と共に積層体300を挟み込むことにより、当該積層体300を第2部材200側から加圧する。
【0023】
本実施形態における第2電極20の形状は、特に限定されないが、ラジアス型(R型)である。この第2電極20は、第2柱状部21と、第2先端部22と、を含んでいる。第2柱状部21は、円柱状の部分であり、円筒状側面21aを含んでいる。
【0024】
第2先端部22は、第2ラジアス部24を含んでいる。この第2ラジアス部24は、第2柱状部21の下端に配置されている。この第2ラジアス部24は、上方に向かって僅かに突出するラジアス形状を有している。本実施形態における第2ラジアス部24は、第2部材200に接触する部分であり、上端面として第2ラジアス面24aを含んでいる。この第2ラジアス面24aの曲率は、第1ラジアス面14aの曲率よりも小さくなっている。この第2ラジアス面24aの曲率半径は、特に限定されないが、20mm~300mmであってもよい。
【0025】
また、この第2ラジアス部24の直径d2は、上記の第2柱状部21の直径D2と同じとなっている(d2=D2)。そして、この第2ラジアス部24の直径d2は、上記の第1ラジアス部14の直径d1と第1柱状部11の直径D1よりも大きくなっている(d1<D1<d2)。直径D2,d2は、特に限定されないが、19mm以上であってもよい。
【0026】
本実施形態では、第1電極10をDR型の電極とすると共に、第2電極20をR型の電極とすることにより、第1部材100と第2部材200の接合部の中心に最も圧力をかけることができる。このため、後述する酸化膜やめっき層を接合時に接合界面から排出し易くなり、接合強度を向上できる。また、DR型の電極とR型の電極は、先端面に角部を含んでおらず、当該角部が繰り返しの使用により潰れて電極が変形することがないので、経時的な接合品質の劣化を抑制することもできる。
【0027】
電源30は、第1電極10及び第2電極30と電気的に接続されている。この電源30は、第1電極10及び第2電極20が第1部材100及び第2部材200を加圧している状態で、第1電極10及び第2電極20の間に電圧を印加して、第1電極10及び第2電極20の間に電流を流す。
図2に、第1電極10及び第2電極20の間に流れる電流cを破線矢印で示す。
図2に示すように、本実施形態における電源30は、特に限定されないが、第1電極10から第2電極20に向けて電流を流している。
【0028】
以上のような接合装置1を用いた異種材料の接合方法について説明する。まず、第1工程において、上述の第1部材100と第2部材200を重ね合わせる。この重ね合わせ作業には、特に図示しないが、第1部材100と第2部材200を重ね合わせた状態で保持することが可能な治具を用いることができる。
【0029】
次いで、
図1に示すように、第2工程において、第1部材100に第1電極10を当接させると共に第2部材200に第2電極20を当接させることで、重ね合わせた第1部材100と第2部材200を第1電極10と第2電極20で挟み込んで加圧する。この時の加圧力は、特に限定されないが、4kN~8kNとすることができる。また、スクイズタイムは、特に限定されないが、50msec~200msecとすることができる。
【0030】
次いで、第3工程において、電源30により、第1電極10と第2電極20の間に通電することにより第1部材100と第2部材200とを抵抗スポット接合する。このとき、通電により第1部材100の内部を最も高温に発熱させることにより第1部材100と第2部材200とを接合する。この時の通電時間は、特に限定されないが、150msec~300msecとすることができる。
【0031】
図2に示すように、本実施形態では、第1電極10の直径(第1柱状部11の直径D
1)を、第2電極20の直径(第2柱状部21の直径D
2)よりも小さく設定していると共に、第1ラジアス部14の直径d
1を第2ラジアス部24の直径d
2よりも小さく設定していることで、結果的に、第1電極10の第1部材100との接触面積を、第2電極20の第2部材200との接触面積よりも小さくできる。このため、
図2の破線矢印で示す電流cの密度は、第1電極10に当接している第1部材100において相対的に高くなり、第2電極20に当接している第2部材200において相対的に低くなる。
【0032】
このとき、第1部材100と第2部材200の接合界面における発熱量及び第2部材200の内部における発熱量よりも、第1部材100の内部における発熱量が大きくなる。よって、第1部材100と第2部材200の接合界面の温度及び第2部材200の内部の温度と比較して、第1部材100の内部の温度は最も高温となる。
【0033】
例えば、第1部材10を裸鋼板、第2部材20をアルミニウム合金板とする場合、
図2中の第1部材10における最高温度部101の温度は約1500℃となる。そして、この最高温度部101からの伝熱により、第1部材10と第2部材20との界面における温度は、例えば、約700℃となる。このとき、接合界面では、加圧及び温度上昇によって、鉄とアルミニウムの共晶溶融(或いは、拡散溶融)が生じ、表層の酸化膜が溶融されて接合界面の外に排出される。そして、鋼板の新生面とアルミニウム合金板の新生面とが接触して接合することによって、第1部材10と第2部材20が接合される。なお、第1部材10がめっき層を有するGA鋼板又はGI鋼板である場合には、めっき層も溶融して接合界面の外に排出される。
【0034】
通電を終了した後、第4工程において、溶接終了後の第1部材100と第2部材200を第1電極10と第2電極20によって所定時間保持し続ける。この時のホールドタイムは、特に限定されないが、200msec~400msecとすることができる。その後、第1部材100と第2部材200を、第1電極10と第2電極20とから解放する。
【0035】
以上のような本実施形態における異種材料の接合方法では、通電により第1部材10の内部を最も高温に発熱させることで第1部材100と第2部材200とを接合する。この第1部材100の内部は、異種材料同士が重なり合う第2部材200との接合界面とは異なり略均一な電気抵抗を有するので、安定した発熱量を得ることができ、接合界面の温度を安定化させることができる。これにより、接合界面から酸化膜やめっき層を効果的に排出できると共に、第1部材10と第2部材20を接合することができる。
【0036】
また、本実施形態では、相対的に高い電気抵抗を有する第1部材10の内部を最も高温に発熱させることによって、相対的に低い融点を有する第2部材20の発熱量を抑制していると共に第2部材20の極表層を溶融している。これにより、加圧下の発熱による第2部材20の厚さの減少を抑制することができ、接合後の第2部材200の強度の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、第1電極10の直径D1を、第2電極20の直径D2よりも小さくすることにより、第1電極10の第1部材100との接触面積を第2電極20の第2部材との接触面積よりも確実に小さくすることができる。これにより、第1部材100の内部における電流密度を、第2部材200の内部の電流密度よりも確実に高くすることができる。
【0038】
同時に、第2電極20の直径D2が相対的に大きいので、第2電極20の熱容量も相対的に大きくなっている。よって、この第2電極20が第2部材200に当接していることにより、第2電極20による第2部材200の冷却性能を向上させることができ、第2部材20の厚さの減少を抑制することができる。
【0039】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、第1電極10と第2電極20を上下方向において対向配置した状態で接合を行っているがこれに限定されない。第1電極10と第2電極20は、上下方向以外の方向において対向配置されていてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、電極としてDR型とR型の電極チップを使用しているがこれに限定されない。電極の種類は、第1部材100の内部を最も高温にすることができればどのような型式の電極チップを使用してもよい。第1電極10及び第2電極20としては、DR型とR型以外に、ドーム型(D型)、コーンラジアス型(CR型)、フラット型(F型)、コーンフラット型(CF型)、又は、オフセット型(E型)の電極チップを使用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…接合装置
10…第1電極
11…第1柱状部
11a…円筒状側面
12…第1先端部
13…ドーム部
13a…ドーム面
14…第1ラジアス部
14a…第1ラジアス面
20…第2電極
21…第2柱状部
21a…円筒状側面
22…第2先端部
24…第2ラジアス部
24a…第2ラジアス面
30…電源