(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135897
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240927BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046799
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 一志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】軸部材のガタツキを抑制する。
【解決手段】車両用シート10は、着座乗員を支持するシートクッション12と、軸部材24と、ライザ22と、を備えている。軸部材24は、回転可能に支持されると共に周方向に分割されることで径方向に撓み変形可能となっている被支持部24Aを有している。この軸部材24がその軸まわりに回転することでシートクッション12が変位する。ライザ22は、挿入孔22A及び挿入孔22Aの縁に形成された円筒状のバーリング部22Bを有している。径方向内側に撓んだ状態の被支持部24Aがバーリング部22Bの内周面に当接した状態で、ライザ22が軸部材24を回転可能に支持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員を支持する乗員支持部と、
回転可能に支持されると共に周方向に分割されることで径方向に撓み変形可能となっている被支持部を有し、その軸まわりに回転することで前記乗員支持部が変位する軸部材と、
挿入孔及び前記挿入孔の縁に形成された円筒状のバーリング部を有し、径方向内側に撓んだ状態の前記被支持部が前記バーリング部の内周面に当接した状態で前記軸部材を回転可能に支持する軸受部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
着座乗員を支持する乗員支持部と、
回転可能に支持される被支持部を有し、その軸まわりに回転することで前記乗員支持部が変位する軸部材と、
挿入孔及び前記挿入孔の縁に形成されかつ周方向に分割されることで径方向に撓み変形可能となっている円筒状のバーリング部を有し、前記被支持部が前記バーリング部の内周面に当接した状態かつ前記バーリング部が径方向外側に撓んだ状態で前記軸部材を回転可能に支持する軸受部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項3】
前記乗員支持部は、着座乗員の臀部を支持するシートクッションとされ、
前記軸受部材は、前記シートクッションのシート下方側においてシート幅方向に間隔をあけて配置された一対のライザとされ、
シート幅方向の両端部が前記被支持部となっている前記軸部材が、一対の前記ライザに支持されていると共に、前記軸部材と前記シートクッションとがリンクを介して連結され、
前記軸部材が回転することで前記シートクッションがシート上下方向に変位する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートを昇降させる車両用シート位置調整装置が開示されている。この文献に記載された車両用シート位置調整装置では、軸受部に回転自在に架設される軸部材の回転によりリンクを介してシートが昇降するようになっている。軸部材の所定位置には、外周溝が周方向に亘って形成されており、軸受部は少なくとも2分割された部分を組み合わせその少なくとも1分割部分が軸部材の外周溝に嵌合している支持孔を構成している。これにより、軸部材の組付性に優れ高い部品精度を要求されずに軸方向のガタツキを抑えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、軸部材のガタツキを抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様の車両用シートは、着座乗員を支持する乗員支持部と、回転可能に支持されると共に周方向に分割されることで径方向に撓み変形可能となっている被支持部を有し、その軸まわりに回転することで前記乗員支持部が変位する軸部材と、挿入孔及び前記挿入孔の縁に形成された円筒状のバーリング部を有し、径方向内側に撓んだ状態の前記被支持部が前記バーリング部の内周面に当接した状態で前記軸部材を回転可能に支持する軸受部材と、を備えている。
【0006】
第1の態様の車両用シートによれば、軸受部材に支持された軸部材が回転すると、乗員支持部が変位する。ここで、軸部材の被支持部が軸受部材のバーリング部の内周面に当接している状態では、被支持部が径方向内側に撓んだ状態となっている。これにより、軸部材の被支持部が径方向外側へ向けて復元する力により、軸部材の被支持部が軸受部材のバーリング部の内周面に押し付けられた状態となる。その結果、軸部材の軸受部材に対するガタツキを抑制することができる。
【0007】
第2の態様の車両用シートは、着座乗員を支持する乗員支持部と、回転可能に支持される被支持部を有し、その軸まわりに回転することで前記乗員支持部が変位する軸部材と、挿入孔及び前記挿入孔の縁に形成されかつ周方向に分割されることで径方向に撓み変形可能となっている円筒状のバーリング部を有し、前記被支持部が前記バーリング部の内周面に当接した状態かつ前記バーリング部が径方向外側に撓んだ状態で前記軸部材を回転可能に支持する軸受部材と、を備えている。
【0008】
第2の態様の車両用シートによれば、軸受部材に支持された軸部材が回転すると、乗員支持部が変位する。ここで、軸部材の被支持部が軸受部材のバーリング部の内周面に当接している状態では、バーリング部が径方向外側に撓んだ状態となっている。これにより、軸受部材のバーリング部が径方向内側へ向けて復元する力により、軸受部材のバーリング部が軸部材の被支持部の外周面に押し付けられた状態となる。その結果、軸部材の軸受部材に対するガタツキを抑制することができる。
【0009】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様の車両用シートにおいて、前記乗員支持部は、着座乗員の臀部を支持するシートクッションとされ、前記軸受部材は、前記シートクッションのシート下方側においてシート幅方向に間隔をあけて配置された一対のライザとされ、シート幅方向の両端部が前記被支持部となっている前記軸部材が、一対の前記ライザに支持されていると共に、前記軸部材と前記シートクッションとがリンクを介して連結され、前記軸部材が回転することで前記シートクッションがシート上下方向に変位する。
【0010】
第3の態様の車両用シートによれば、軸受部材に支持された軸部材が回転すると、当該軸部材とリンクを介して連結されたシートクッションがシート上下方向に変位する。ここで、軸部材及び一対のライザには、第1の態様又は第2の態様の車両用シートの構成が適用されている。これにより、軸部材の一対のライザに対するガタツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両用シートは、軸部材のガタツキを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】左前側のライザの一部及び前方側の軸部材の一部等を上下方向及び左右方向に沿って切断した断面図である。
【
図3】
図2に対応する断面図であり、軸部材がライザに支持される前の状態を示している。
【
図4】Eリングが設けられていない構成を示す
図3に対応する断面図である。
【
図5】バーリング部が周方向に分割された例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図3を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0014】
図1に示されるように、車両用シート10は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。また、車両用シート10は、シートクッション12を上下方向に変位可能に支持するリフタ装置16を備えている。ここで、シートクッション12及びシートバック14は、それぞれ着座乗員の各部を支持する乗員支持部18を構成している。
【0015】
リフタ装置16は、左右一対のスライドレール20に固定された軸受部材としての4つのライザ22と、4つのライザ22に支持された2つの軸部材24と、軸部材24とシートクッション12とを連結する4つのリンク26と、を含んで構成されている。ここで、一方の軸部材24は、左右一対のスライドレール20の前側にそれぞれ固定された左右一対のライザ22によって左右方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、一方の軸部材24とシートクッション12の前方側の部位とは、左右一対のリンク26を介して連結されている。また、他方の軸部材24は、左右一対のスライドレール20の後側にそれぞれ固定された左右一対のライザ22によって左右方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、他方の軸部材24とシートクッション12の後方側の部位とは、左右一対のリンク26を介して連結されている。
【0016】
次に、本実施形態の要部の構成である軸部材24とライザ22との係合部の構成について説明する。なお、各軸部材24と各ライザ22との係合部の構成は互いに同様の構成となっている。そのため、以下においては、前側の軸部材24の左側の端部と左前側のライザ22との係合部の構成について説明し、その他の係合部の説明は省略する。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、軸部材24は、左右方向を軸方向とする円筒状に形成されている。なお、軸部材24は円柱状に形成されていてもよい。また、以下の説明において軸部材24の軸方向、周方向及び径方向を単に軸方向、周方向及び径方向と呼ぶ場合がある。
【0018】
軸部材24の左右方向の両端部は、ライザ22によって回転可能に支持される被支持部24Aとなっている。また、被支持部24Aの先端部(
図2及び
図3における左側の端部)には、径方向外側が開放されたEリング係止溝24Bが周方向に沿って形成されている。また、被支持部24Aには、2箇所の切欠部24Cが形成されている。これにより、被支持部24Aが周方向に2分割されている。その結果、被支持部24Aが径方向に撓み変形することが可能となっている。
【0019】
ライザ22には、当該ライザ22を左右方向に貫通する円形の挿入孔22Aが形成されている。また、挿入孔22Aの縁には、円筒状のバーリング部22Bが形成されている。なお、バーリング部22Bの軸方向、周方向及び径方向は、軸部材24の軸方向、周方向及び径方向とそれぞれ一致している。
【0020】
ここで、バーリング部22Bの内径D1は、定められた内径に設定されている。これに対して、バーリング部22Bに挿入される前の状態の軸部材24の被支持部24Aの外径D2は、バーリング部22Bの内径D1に対して若干大きな外径に設定されている。
【0021】
そして、軸部材24の被支持部24Aがライザ22の挿入孔22A及びバーリング部22Bに挿入されると、軸部材24の被支持部24Aが径方向内側に撓み変形した状態で、軸部材24の被支持部24Aの外周面とライザ22のバーリング部22Bの内周面とが当接する。この状態で、軸部材24がライザ22によって回転可能に支持される。なお、Eリング28が軸部材24のEリング係止溝24Bに係止されることで、軸部材24の被支持部24Aがライザ22の挿入孔22A及びバーリング部22Bから抜け出すことが防止されている。
【0022】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10では、図示しないアクチュエータ等に作動に伴い各軸部材24が回転する。これにより、各リンク26が傾動して、シートクッション12が上下方向に変位する。
【0024】
ここで、本実施形態では、軸部材24の被支持部24Aの外周面がライザ22のバーリング部22Bの内周面に当接している状態では、被支持部24Aが径方向内側に撓んだ状態となっている。これにより、軸部材24の被支持部24Aが径方向外側へ向けて復元する力により、軸部材24の被支持部24Aの外周面がライザ22のバーリング部22Bの内周面に押し付けられた状態となる。その結果、軸部材24のライザ22に対するガタツキを抑制することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、軸部材24の被支持部24Aを周方向に2分割にした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸部材24の被支持部24Aを周方向に3分割以上に分割してもよい。
【0026】
また、本実施形態では、Eリング28をEリング係止溝24Bに係止させることで、軸部材24の被支持部24Aがライザ22の挿入孔22A及びバーリング部22Bから抜け出すことを防止した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図4に示されるように、軸部材24の被支持部24Aがライザ22の挿入孔22A及びバーリング部22Bから抜け出さないように各部寸法を設定することで、Eリング28及びEリング係止溝24Bを廃止してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、軸部材24の被支持部24Aを周方向に分割することで、軸部材24の被支持部24Aを径方向に撓み変形可能とした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5に示されるように、バーリング部22Bを切欠部22Cによって周方向に分割することで、当該バーリング部22Bを径方向に撓み変形可能にしてもよい。この構成では、軸部材24の被支持部24Aの外周面がバーリング部22Bの内周面に当接した状態で、バーリング部22Bが径方向外側に撓んだ状態となっている。これにより、ライザ22のバーリング部22Bが径方向内側へ向けて復元する力により、ライザ22のバーリング部22Bの内周面が軸部材24の被支持部24Aの外周面に押し付けられた状態となる。その結果、軸部材24のライザ22に対するガタツキを抑制することができる。
【0028】
また、以上説明した軸部材24とライザ22との係合部の構成は、シートバック14等の他の乗員支持部18を変位させる機構にも適用することができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
10 車両用シート
12 シートクッション
18 乗員支持部
22 ライザ(軸受部材)
22A 挿入孔
22B バーリング部
24 軸部材
24A 被支持部
26 リンク