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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135900
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】作業機及び作業機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F15B11/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046803
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大原 慎司
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA22
3H089AA27
3H089AA83
3H089BB17
3H089CC01
3H089CC06
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DA14
3H089DB37
3H089DB43
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】油圧ポンプの吐出圧以下で油圧アクチュエータを適切に制御する。
【解決手段】作業機は、動力を発生させる原動機と、原動機が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、油圧ポンプが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを動作させる作動油を調整する制御弁と、制御弁を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、原動機の実回転数に基づいて、制御弁を制御して当該制御弁から油圧アクチュエータに供給される作動油の最大流量を制限流量で制限し、原動機の回転数に対する制限流量は、当該回転数に対して油圧ポンプが吐出可能な最大吐出量以下である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を発生させる原動機と、
前記原動機が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを動作させる作動油を調整する制御弁と、
前記制御弁を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記原動機の実回転数に基づいて、前記制御弁を制御して当該制御弁から前記油圧アクチュエータに供給される作動油の最大流量を制限流量で制限し、
前記原動機の回転数に対する前記制限流量は、当該回転数に対して前記油圧ポンプが吐出可能な最大吐出量以下である作業機。
【請求項2】
前記制限流量は、それぞれ前記原動機の回転数に対応する前記最大吐出量よりも低い請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制限流量は、所定の前記制御弁である標準制御弁に出力する制御電流の電流値と当該標準制御弁からの作動油の流量との関係を示す標準流量特性、及び前記標準流量特性に比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁の上限流量特性に基づいて、前記最大吐出量を変換することで演算される請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記制限流量は、前記原動機の回転数と前記最大吐出量との関係を示す吐出量特性における、それぞれの前記原動機の回転数ごとの前記最大吐出量を前記上限流量特性で参照した結果と前記標準流量特性とに基づいて、前記最大吐出量を前記標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算される請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記制限流量は、前記吐出量特性におけるそれぞれの前記原動機の回転数ごとの前記最大吐出量を前記上限流量特性で参照し、当該最大吐出量に対応する前記電流値を取得し、当該電流値及び前記標準流量特性に基づいて、前記最大吐出量を当該電流値の前記制御電流が出力された前記標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算される請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記油圧ポンプの吐出圧から前記油圧アクチュエータの負荷圧を引いた差圧を一定圧にするように前記油圧ポンプを制御するロードセンシングシステムを備えている請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記油圧アクチュエータを有する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータによって駆動される駆動部材を有し、
前記制御装置は、
前記駆動部材の実際の位置である実際位置と所定の目標値との偏差を算出し、
当該偏差と前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量との関係、及び予め定められた前記制御弁に出力する前記制御電流の前記電流値と当該制御弁からの作動油の流量との関係に基づいて、前記最大流量以下になるよう前記制御弁を制御する請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
予め定められた前記制御弁に出力する前記制御電流の前記電流値と当該制御弁からの作動油の流量との関係は、前記標準流量特性に基づいて定義される請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記制限流量は、それぞれ前記原動機の回転数に対応する前記最大吐出量に基づいて演算される請求項1に記載の作業機。
【請求項10】
前記制限流量の演算には、前記原動機の回転数と前記最大吐出量との関係を示す吐出量特性が用いられ、
前記吐出量特性は、前記原動機と前記油圧ポンプの組み合わせに応じて選択される請求項8又は9に記載の作業機。
【請求項11】
前記油圧アクチュエータを有する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータの駆動によって駆動される駆動部材を有し、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、
前記油圧アクチュエータは、リフトシリンダであり、
前記駆動部材は、前記リフトシリンダの駆動によって駆動されるリフトアームである請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
動力を発生させる原動機と、前記原動機が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油を調整する制御弁と、前記制御弁を制御する制御装置と、を備える作業機の制御方法であって、
前記制御装置が、前記原動機の実回転数に基づいて、前記制御弁を制御して当該制御弁から前記油圧アクチュエータに供給される作動油の最大流量を制限流量で制限するステップを含み、
前記原動機の回転数に対する前記制限流量は、当該回転数に対して前記油圧ポンプが吐出可能な最大吐出量以下である作業機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタ等の作業機及び作業機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された油圧システムは、可変容量型のポンプと、複数の油圧アクチュエータ用の複数の制御弁を含むバルブユニットと、前記ポンプの吐出圧と前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧との差圧が一定となるように前記ポンプの吐出流量を調整するレギュレータであって、最小吐出流量がゼロよりも大きな値に機械的に設定されたレギュレータと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-135926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の油圧システムでは、ロードセンシング方式の油圧システムが採用され、ポンプの吐出圧と複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧との差圧が一定となるように、可変容量型のポンプの吐出流量が調整される。
【0005】
しかしながら、ポンプを駆動させる駆動源(原動機)の回転数が十分ではないと、ポンプの吐出量が、制御弁から油圧アクチュエータに供給できる作動油の供給量を下回り、実質的に原動機の回転数に応じて油圧アクチュエータを制御している状態になる虞がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、油圧ポンプの吐出圧以下で油圧アクチュエータを適切に制御できる作業機、及び作業機の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機は、動力を発生させる原動機と、前記原動機が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油を調整する制御弁と、前記制御弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記原動機の実回転数に基づいて、前記制御弁を制御して当該制御弁から前記油圧アクチュエータに供給される作動油の最大流量を制限流量で制限し、前記原動機の回転数に対する前記制限流量は、当該回転数に対して前記油圧ポンプが吐出可能な最大吐出量以下である。
【0008】
前記制限流量は、それぞれ前記原動機の回転数に対応する前記最大吐出量よりも低くてもよい。
【0009】
前記制限流量は、所定の前記制御弁である標準制御弁に出力する制御電流の電流値と当該標準制御弁からの作動油の流量との関係を示す標準流量特性、及び前記標準流量特性に比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁の上限流量特性に基づいて、前記最大吐出量を変換することで演算されてもよい。
【0010】
前記制限流量は、前記原動機の回転数と前記最大吐出量との関係を示す吐出量特性における、それぞれの前記原動機の回転数ごとの前記最大吐出量を前記上限流量特性で参照した結果と前記標準流量特性とに基づいて、前記最大吐出量を前記標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算されてもよい。
【0011】
前記制限流量は、前記吐出量特性におけるそれぞれの前記原動機の回転数ごとの前記最大吐出量を前記上限流量特性で参照し、当該最大吐出量に対応する前記電流値を取得し、当該電流値及び前記標準流量特性に基づいて、前記最大吐出量を当該電流値の前記制御電流が出力された前記標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算されてもよい。
【0012】
前記作業機は、前記油圧ポンプの吐出圧から前記油圧アクチュエータの負荷圧を引いた差圧を一定圧にするように前記油圧ポンプを制御するロードセンシングシステムを備えていてもよい。
【0013】
前記作業機は、前記油圧アクチュエータを有する駆動装置を備え、前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータによって駆動される駆動部材を有し、前記制御装置は、前記駆動部材の実際の位置である実際位置と所定の目標値との偏差を算出し、当該偏差と前記油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量との関係、及び予め定められた前記制御弁に出力する前記制御電流の前記電流値と当該制御弁からの作動油の流量との関係に基づいて、前記最大流量以下になるよう前記制御弁を制御してもよい。
【0014】
予め定められた前記制御弁に出力する前記制御電流の前記電流値と当該制御弁からの作動油の流量との関係は、前記標準流量特性に基づいて定義されてもよい。
【0015】
前記制限流量は、それぞれ前記原動機の回転数に対応する前記最大吐出量に基づいて演算されてもよい。
【0016】
前記制限流量の演算には、前記原動機の回転数と前記最大吐出量との関係を示す吐出量特性が用いられ、前記吐出量特性は、前記原動機と前記油圧ポンプの組み合わせに応じて選択されてもよい。
【0017】
前記作業機は、前記油圧アクチュエータを有する駆動装置を備え、前記駆動装置は、前記油圧アクチュエータの駆動によって駆動される駆動部材を有し、作業装置を昇降可能な昇降装置であり、前記油圧アクチュエータは、リフトシリンダであり、前記駆動部材は、前記リフトシリンダの駆動によって駆動されるリフトアームであってもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る作業機の制御方法は、動力を発生させる原動機と、前記原動機が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを動作させる作動油を調整する制御弁と、前記制御弁を制御する制御装置と、を備える作業機の制御方法であって、前記制御装置が、前記原動機の実回転数に基づいて、前記制御弁を制御して当該制御弁から前記油圧アクチュエータに供給される作動油の最大流量を制限流量で制限するステップを含み、前記原動機の回転数に対する前記制限流量は、当該回転数に対して前記油圧ポンプが吐出可能な最大吐出量以下である。
【発明の効果】
【0019】
上記作業機及び作業機の制御方法によれば、油圧ポンプの吐出圧以下で油圧アクチュエータを適切に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】作業機の側面図である。
図2】作業機の制御システムを示す図である。
図3】昇降装置を示す左後方斜視図である。
図4】昇降装置の昇降動作を示す左側面図である。
図5】第1マップの一例を示す図である。
図6】第2マップの一例を示す図である。
図7】吐出量特性及び供給量制限マップの一例を示す第1図である。
図8】吐出量特性及び供給量制限マップの一例を示す第2図である。
図9】標準流量特性と上限流量特性とを示す第1図である。
図10】標準流量特性と上限流量特性とを示す第2図である。
図11】補正後の第2マップの一例を示す図である。
図12】制御装置が最大流量を制限する一連の流れを示す図である。
図13】吐出量特性及び変形例における供給量制限マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、図1図2を用いて作業機1について説明する。図1は、本実施形態に係る作業機1の側面図を示している。図2は、作業機1が備えている制御システムを示す図である。図1に示すように、作業機1は、機体2と、作業装置3と、走行装置4と、原動機5と、保護機構6と、昇降装置(駆動装置)8と、を備えている。
【0023】
本発明の実施形態において、作業機1の運転席7に着座した運転者が向く方向(図1の矢印A1の方向)を前方といい、その反対方向(図1の矢印A2の方向)を後方という。運転者の右側(図3の矢印B2の方向)を右方といい、運転者の左側(図3の矢印B1の方向)を左方という。また、作業機1の前後方向(図1の矢印A3の方向)に直交する方向である水平方向(図3の矢印B3の方向)を車体幅方向(あるいは、幅方向)という。
【0024】
作業装置3は、例えばインプルメントであり、機体2の後部に連結され、様々な作業を行うことができる。作業装置3の種類は特に限定されず、例えば、芋や人参の掘り取りを行う掘り取り装置、肥料を散布する肥料散布装置(施肥装置)及び農薬を散布する農薬散布装置等の散布作業装置、圃場に種まきを行う播種装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置、並びに圃場に対する対地作業を行う対地作業装置等である。なお、図1では、作業装置3としてサブソイラを機体2の後部に連結した例を示している。
【0025】
走行装置4は、機体2に推進力を付与する装置である。図1に示す例において、走行装置4は、前輪4a及び後輪4bを有する車輪型の装置であるが、クローラ型の装置であってもよい。
【0026】
昇降装置8は、作業装置3を機体2に連結し、且つ機体2に対して当該作業装置3を昇降することができる。昇降装置8は、機体2の後部に設けられている。昇降装置8は、例えば、3点リンク機構等で構成されている。昇降装置8には、作業装置3が着脱可能である。作業装置3を昇降装置8に連結することで、機体2は、作業装置3を移動できる。
【0027】
原動機5は、動力を発生させる装置である。原動機5は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。原動機5の後部には、フライホイールハウジングが設けられている。また、原動機5が出力した動力は、機体2の下部に配置されたミッションケース9に伝達される。
【0028】
図1に示すように、作業機1は、機体2の上部に設けられた運転席7と、操作装置10とを備えている。運転席7は、保護機構(例えばキャビンやキャノピ等)6内に配置されている。操作装置10は、例えば運転席7の周囲に設置されており、運転席7に着座した作業者(オペレータ)が作業機1に装備された機械、装置、器具、部材等(例えば、作業装置3、走行装置4、原動機5等)の操作に関係する装置、部材等が集まった部位を含む。操作装置10は、少なくともステアリング等で構成された操舵装置を含む。
【0029】
図2に示すように、作業機1に、搭載された複数の機器は、CAN、ISOBUS、LIN、FlexRayなどの車載ネットワークN1で接続されている。車載ネットワークN1に接続された機器は、原動機5、操作装置10、及び制御装置11等である。
【0030】
制御装置11は、ECU(電子制御装置)から構成され、CPU、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及びその他の電子部品と電気回路を含んでいる。制御装置11の不揮発性メモリには、CPUが各部を制御するためのソフトウェアプログラム及び各種データが記憶されている。即ち、制御装置11は、作業機1のコントローラである。
【0031】
制御装置11は、作業機1に関する様々な制御を行う。例えば、制御装置11は、操作装置10から入力された信号(操作信号)に基づいて、作業装置3、走行装置4、原動機5等の操作を行う。例えば、制御装置11は、原動機5の実際の回転数(実回転数)を検出する第1検出装置12が接続されており、当該第1検出装置12が検出した原動機5の実回転数と、操作装置10である回転数操作具(アクセルペダル、アクセルレバー等)41からの操作信号に基づいて、原動機5の回転数Rを制御する。第1検出装置12は、検出した回転数の信号(回転数信号)を制御装置11に出力する。
【0032】
図2に示すように、制御装置11は、記憶部11aを有している。記憶部11aは、不揮発性のメモリ等であって、様々な情報を記憶する記憶装置である。記憶部11aは、例えば、様々なアプリケーションソフト(Application software)を記憶している。なお、記憶部11aは、制御装置11の外部に設けられ、車載ネットワークN1に接続された記憶装置(ハードディスクドライブ:HDD、ソリッド・ステート・ドライブ:SSDなど)としてもよい。
【0033】
以下、昇降装置8について詳しく説明する。図3図4に示すように、昇降装置8は、ミッションケース9に接続されている。図3は、昇降装置8を示す左後方斜視図である。図4は、昇降装置8の昇降動作を示す左側面図である。図3図4に示すように、昇降装置8は、リフトアーム21と、トップリンク22と、ロアリンク23と、リフトロッド24と、リフトシリンダ26とを有している。
【0034】
図3に示すように、リフトアーム21は、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとを含む。第1リフトアーム21Lは、機体幅方向の一方(左方)に配置されている。第2リフトアーム21Rは、機体幅方向の他方(右方)に配置されている。第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rは、機体2に揺動自在に設けられている。具体的には、第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rは、前端部がミッションケース9の上部に枢支されており、後方に向けて延びている。
【0035】
トップリンク22は、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとの間に配置され、前端部がミッションケース9の上部に枢支されている。ロアリンク23は、第1ロアリンク23Lと第2ロアリンク23Rとを含む。第1ロアリンク23L及び第2ロアリンク23Rの前端部は、ミッションケース9の下部に枢支されている。リフトロッド24は、第1リフトロッド24Lと第2リフトロッド24Rとを含む。第1リフトロッド24Lは、上端部が第1リフトアーム21Lの後端部に接続されており、下端部が第1ロアリンク23Lの長さ方向の中途部に接続されている。第2リフトロッド24Rは、上端部が第2リフトアーム21Rの後端部に接続されており、下端部が第2ロアリンク23Rの長さ方向の中途部に接続されている。
【0036】
図3図4に示すように、トップリンク22の後端部とロアリンク23の後端部には、作業装置3を連結可能なジョイント25が設けられている。トップリンク22の後端部とロアリンク23の後端部に作業装置3を連結することにより、作業装置3は作業機1の後部に昇降可能に連結される。ゆえに、作業装置3は、リフトロッド24及びロアリンク23を介して、リフトアーム21に連結される。
【0037】
図3図4に示すように、リフトシリンダ26は、作動油によって動作する油圧アクチュエータ26(油圧シリンダ)である。図2に示すように、リフトシリンダ26は、単動型のシリンダであり、筒状のシリンダチューブ26aと、一端側がシリンダチューブ26aに対して摺動可能に挿入されたピストンロッド26bと有している。シリンダチューブ26a内は、該シリンダチューブ26aの軸心に沿う方向(軸心方向)に移動可能に収容されたピストンによって、ボトム側油室とロッド側油室とで仕切られている。このため、ボトム側油室に作動油が供給されると、リフトシリンダ26が伸長する。一方、ボトム側油室から作動油が排出されると、リフトシリンダ26が収縮する。
【0038】
リフトシリンダ26は、第1リフトシリンダ26Lと第2リフトシリンダ26Rとを含んでいる。第1リフトシリンダ26Lは、一端部が第1リフトアーム21Lに接続され、他端部がミッションケース9の左下部に接続されている。第2リフトシリンダ26Rは、一端部が第2リフトアーム21Rに接続され、他端部がミッションケース9の右下部に接続されている。リフトシリンダ26の駆動によって、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rは、上下方向に揺動する。
【0039】
図2に示すように、作業機1は、油圧ポンプPと、制御弁30と、油圧機器33と、切替弁34と、を備えている。油圧ポンプPは、原動機5が発生させた動力によって作動する。油圧ポンプPは、作業機1が備える駆動装置8等を動作させる作動油を吐出する。油圧ポンプPは、作動油タンクTに貯留された作動油を吐出する。油圧ポンプPは、可変容量型の油圧ポンプP(例えば斜板形可変容量アキシャルポンプ)である。
【0040】
駆動装置8は、油圧ポンプPが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータ26を有する装置である。駆動装置8は、油圧アクチュエータ26の駆動によって動作される駆動部材21を有している。駆動装置8は、例えば上述した昇降装置8である。即ち、駆動部材21は、リフトアーム21であり、油圧アクチュエータ26は、リフトシリンダ26である。
【0041】
制御弁30は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油を調整する。制御弁30は、制御装置11から出力される制御電流によって励磁して開度を任意に変更する。これにより、制御弁30は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油を調整することができる。制御弁30は、例えば、比例流量制御タイプの電磁制御弁であり、制御装置11から出力される制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、油圧アクチュエータ26に供給する作動油の流量が増加する。
【0042】
本実施形態において、制御弁30は、リフトシリンダ26の伸長を制御する第1制御弁(上昇用制御弁)30aと、リフトシリンダ26の収縮を制御する第2制御弁(下降用制御弁)30bと、を含んでいる。第1制御弁30a及び第2制御弁30bは、第1リフトアーム21Lと第2リフトアーム21Rとの両方に接続されており、当該第1リフトアーム21L及び第2リフトアーム21Rを同時に伸長、又は収縮させる。
【0043】
第1制御弁30aは、油圧ポンプPとボトム側油室とを接続する油路(第1油路)31に設けられており、開度を変更することで、当該油圧ポンプPが吐出した作動油をボトム側油室に供給することができる。
【0044】
第2制御弁30bは、ボトム側油室と作動油タンクTとを接続する油路(第2油路)32に設けられており、開度を変更することで、ボトム側油室の作動油を作動油タンクTに排出することができる。
【0045】
従って、制御装置11が第1制御弁30aに制御電流を出力し、第1制御弁30aの開度が変更されると、油圧ポンプPが吐出した作動油がボトム側油室に供給され、リフトシリンダ26が伸長することで、リフトアーム21は上昇する。一方、制御装置11が第2制御弁30bに制御電流を出力し、第2制御弁30bの開度が変更されると、ボトム側油室の作動油が作動油タンクTに排出され、リフトシリンダ26が収縮可能になる。このため、作業装置3及び/又はリフトアーム21の重さにより、リフトシリンダ26が収縮して、リフトアーム21は下降する。
【0046】
なお、制御弁30は、油圧アクチュエータ26を制御することができればよく、その油圧システムは、上述した構成に限定されない。例えば、上述した一例では、ボトム側油室には、第1制御弁30a及び第2制御弁30bが接続されているが、第2制御弁30bを、油圧ポンプPとロッド側油室とを接続する油路に設け、開度を変更することで、当該油圧ポンプPが吐出した作動油をロッド側油室に供給するようにしてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態においては、第1制御弁30a及び第2制御弁30bのそれぞれの開度を変更して、リフトシリンダ26を制御しているが、制御弁30として、リフトシリンダ26を伸長させる第1位置、リフトシリンダ26の駆動を停止する第2位置、リフトシリンダ26を収縮させる第3位置に切替可能な3位置の電磁切換弁を採用してもよい。
【0048】
さらに、上述した実施形態においては、第1制御弁30a及び第2制御弁30bによって、リフトシリンダ26を動作させる作動油を直接調整しているが、第1制御弁30a及び第2制御弁30bは、リフトシリンダ26に接続された制御バルブにパイロット油を作用させ、当該制御バルブがリフトシリンダ26を動作させる作動油を調整してもよいし、油圧システムの構成は上述した構成に限定されない。
【0049】
油圧機器33は、油圧ポンプPが吐出した作動油により動作する機器である。例えば、油圧機器33は、機体2の前部に取り付けられるフロントローダ、作動油によって動作する作業装置3の作業部、パワーステアリング機構等である。
【0050】
切替弁34は、油圧機器33を動作させる作動油を調整する。切替弁34は、制御装置11から出力される制御電流によって励磁して開度を任意に変更する。これにより、切替弁34は、制御弁30は、例えば、比例流量制御タイプの電磁制御弁であり、制御装置11から出力される制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、油圧機器33に供給する作動油の流量が増加する。
【0051】
なお、駆動装置8は、油圧アクチュエータ26と、駆動部材21と、を有していればよく、昇降装置8に限定されず、油圧機器33(フロントローダ、作動油によって動作する作業装置3の作業部等)を採用してもよい。駆動装置8がフロントローダである場合、油圧アクチュエータ26は、フロントローダを動作させるブームシリンダ及び/又はバケットシリンダである。また、駆動装置8が作業装置3の作業部である場合、油圧アクチュエータ26は、作業部を動作させる油圧シリンダや油圧モータ等である。
【0052】
また、上述した実施形態においては、作業機1が油圧アクチュエータ26を有する駆動装置8を備える例を説明したが、作業機1は、必ずしも駆動装置8を備えていなくてもよく、少なくとも油圧ポンプPが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータ26を備えていればよい。
【0053】
また、図2に示すように、作業機1は、ロードセンシングシステム35を備えている。ロードセンシングシステム35は、油圧アクチュエータ26の作動時の負荷圧と油圧ポンプPの吐出圧との差圧が一定となるように油圧ポンプPを制御する(油圧ポンプPの吐出量VFを制御する)システムである。本実施形態において、ロードセンシングシステム35は、油圧アクチュエータ26の作動時及び油圧機器33の作動時の負荷圧と油圧ポンプPの吐出圧との差圧が一定となるように油圧ポンプPを制御する。ロードセンシングシステム35は、PLS油路36と、PPS油路37と、流量補償用ピストン38と、流量補償用バルブ39と、を有している。
【0054】
PLS油路36は、制御弁30及び切替弁34の負荷圧のうちの最高の負荷圧(最高負荷圧)をPLS信号圧として流量補償用バルブ39に伝達する油路である。PLS油路36は、制御弁30及び切替弁34が接続されている。特に、PLS油路36は、制御弁30及び切替弁34のうち、油圧ポンプPと接続され、当該油圧ポンプPが吐出した作動油の流量を調整する制御弁30及び切替弁34に接続されている。例えば、図2に示すように、リフトシリンダ26を動作させる制御弁30の第1制御弁30aがPLS油路36と接続されている。
【0055】
PLS油路36には、制御弁30及び切替弁34の負荷圧から最高負荷圧を検出するための高圧選択弁36aが設けられている。なお、高圧選択弁36aに代えて、PLS油路36には、逆止弁を設けてもよい。また、PLS油路36には、制御弁30及び切替弁34の圧力補償弁36bが設けられている。
【0056】
PPS油路37は、油圧ポンプPの吐出圧をPPS信号圧として流量補償用バルブ39に伝達する油路である。PPS油路37は、油圧ポンプPと流量補償用バルブ39を接続し、油圧ポンプPの作動油の吐出圧である「PPS信号圧」が作用する。油圧ポンプPの作動油の吐出圧は、流量補償用バルブ39に伝達される。
【0057】
流量補償用ピストン38は、油圧ポンプPの斜板を押圧するバネに作用し、斜板の角度を変更することで当該油圧ポンプPの吐出量VFを制御する。本実施形態において、油圧ポンプPは、バネを介して斜板が吐出量VFを増加する方向に押圧されるよう構成されている。また、流量補償用ピストン38は、バネの押圧力に対抗する力を斜板に作用させる。このため、流量補償用ピストン38に作用する圧力が抜けると、油圧ポンプPの斜板の角度は最大となり、吐出量VFが最大(最大吐出量)となる。
【0058】
流量補償用ピストン38は、流量補償用バルブ39に接続されており、流量補償用ピストン38に作用する圧力は、当該流量補償用バルブ39によって制御される。
【0059】
流量補償用バルブ39は、PLS信号圧及びPPS信号圧に基づいて流量補償用ピストン38を制御可能な弁である。流量補償用バルブ39は、PPS信号圧とPLS信号圧との圧力差(差圧)が予め定められた圧力となるように、流量補償用ピストン38に作用する圧力を制御する。即ち、流量補償用バルブ39は、PPS信号圧-PLS信号圧との差圧が一定となるように、流量補償用ピストン38に作用する圧力を制御する。
【0060】
以上のように、ロードセンシングシステム35では、差圧が一定となるように斜板の角度を変更するため、最高負荷圧に関わらず油圧ポンプPの吐出量VFを調整することができる。なお、本実施形態では、作業機1がロードセンシングシステム35を備えている場合を説明したが、作業機1は、必ずしもロードセンシングシステム35を備えていなくともよい。
【0061】
以下、駆動装置8の操作について詳しく説明する。操作装置10は、駆動装置8を操作するための操作具42を有している。操作具42は、駆動部材21の位置の目標値を操作することができる操作装置10である。制御装置11は、操作具42の操作に応じて、駆動部材21の実際の位置である実際位置と所定の目標値との偏差ΔDを算出し、制御弁30を制御する。本実施形態において、制御装置11は、偏差ΔDが零になるように制御弁30を制御する。以下の説明においては、昇降装置8を操作する操作具42を例に説明する。
【0062】
図2に示すように、作業機1は、リフトアーム21の実際の位置を検出するための第2検出装置13を備えている。第2検出装置13は、リフトシリンダ26の位置を演算するためのセンサである。第2検出装置13は、制御装置11と接続されており、検出した信号(検出信号)を制御装置11に出力する。
【0063】
本実施形態において、第2検出装置13は、リフトアーム21の角度を検出するセンサ(リフトアームセンサ)であって、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトアーム21の角度に基づいて、制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、実際位置(リフトアーム21の実際の角度)と、目標値(リフトアーム21の目標角度)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。リフトアームセンサ13は、例えば、ポテンショメータ等の回転変位形の可変抵抗器である。リフトアームセンサ13は、検出した角度の信号(角度信号)を制御装置11に出力する。
【0064】
なお、リフトアームセンサ13は、リフトアーム21の角度を検出できればよく、これに限定されない。また、第2検出装置13は、リフトアーム21の実際の位置を検出するためのパラメータを検出することができればよく、例えばリフトシリンダ26の伸長(ストローク)を検出するリフトシリンダセンサであってもよい。斯かる場合、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトシリンダ26の伸長量に基づいて、制御弁30を制御する。即ち、制御装置11は、実際位置(リフトシリンダ26の実際の伸長量)と、目標値(リフトシリンダ26の目標伸長量)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。
【0065】
また、制御装置11は、リフトアーム21の位置として、リフトアーム21の所定の位置(例えば後端部)の鉛直方向の高さに基づいて、制御弁30を制御してもよい。斯かる場合、制御装置11は、第2検出装置13が検出したパラメータ(リフトアーム21の実際の角度やリフトシリンダ26の実際の伸長量)と、所定の演算式に基づいて、リフトアーム21の後端部の鉛直方向の高さを演算する。また、制御装置11は、実際位置(例えばリフトアーム21の後端部の高さ)と、目標値(例えばリフトアーム21の後端部の目標高さ)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御し、リフトシリンダ26を動作させる。
【0066】
以下の説明においては、操作具42が、目標値としてリフトアーム21の角度を操作し、制御装置11が、実際位置(リフトアーム21の実際の角度)と、目標値(リフトアーム21の目標角度)と、の偏差ΔDが零になるように、制御弁30を制御する場合を例に説明する。
【0067】
操作具42は、例えばポジションレバー42aである。ポジションレバー42aは、作業装置3の昇降を操作するレバーであって、揺動操作を行うことができる。ポジションレバー42aには、当該ポジションレバー42aの操作量を検出するためのポテンショメータが設けられている。制御装置11は、当該ポテンショメータから出力された操作信号に基づいて、リフトアーム21の目標値(目標角度)を定義することができる。ポジションレバー42aの操作量が大きくなると、制御装置11は、当該操作量に応じて、目標値を高く定義する。一方、ポジションレバー42aの操作量が小さくなると、制御装置11は、当該操作量に応じて、目標値を小さく定義する。
【0068】
なお、操作具42は、ポジションレバー42aに限定されず、当該ポジションレバー42aとは別に、作業装置3の昇降を操作する昇降操作具42bであってもよい。昇降操作具42bは、タクタイルスイッチ等の押し釦スイッチや、シーソースイッチ等である。昇降操作具42bは、制御装置11と接続されており、当該制御装置11に操作信号を出力する。制御装置11は、昇降操作具42bの操作量(例えば操作時間又は操作回数)に応じて、目標値を定義する。
【0069】
図1に示すように、ポジションレバー42aは、保護機構6の内部に設けられており、昇降操作具42bは、保護機構6の外部(例えば昇降装置8の側方、リヤフェンダ)に設けられている。
【0070】
また、上述した例において、制御装置11が操作具42の操作量に応じて任意の目標値を定義する場合を例に説明したが、作業機1は、リフトアーム21の位置の上限値を操作する上限操作具43と、リフトアーム21の位置の下限値を操作する下限操作具44と、を備え、操作具42は、リフトアーム21の位置の上限値又は下限値までリフトアーム21を昇降させたりするポンパスイッチ45を含んでいてもよい。
【0071】
なお、作業機1が上限操作具43及び下限操作具44を備えている場合、制御装置11は、操作具42としてポジションレバー42aや昇降操作具42bの操作に応じて、制御弁30を制御する際にも、リフトアーム21の位置の上限値以下、下限値以上の範囲でリフトアーム21を動作させる。
【0072】
制御装置11は、偏差ΔDを算出し、当該偏差ΔDと油圧アクチュエータを動作させる作動油の目標流量TFとの関係、及び予め定められた制御弁30に出力する制御電流の電流値Iと当該制御弁30からの作動油の流量との関係に基づいて、最大流量MF以下になるよう制御弁30を制御する。ここで、最大流量MFとは、制御装置11の制御によって制御弁30が吐出することができる作動油の流量の最大値のことである。
【0073】
例えば、制御装置11は、偏差ΔDと、偏差ΔDと目標流量TFとの関係を示すマップ(第1マップ)M1と、予め定められた制御弁に出力する制御電流の電流値Iと当該制御弁30からの供給量DFとの関係を示すマップ(第2マップ)M2と、に基づいて制御弁30への制御電流の電流値Iを逐次に決定する。第1マップM1及び第2マップM2は、記憶部11aに予め記憶されている。
【0074】
なお、リフトアーム21を上昇させる場合、目標値のほうが実際位置よりも高くなるため、偏差ΔDは、正数となり、リフトシリンダ26を下降させる場合、目標値のほうが実際位置よりも低くなるため、偏差ΔDは、負数となるが、以下の説明においては、説明の都合上、偏差ΔDを目標値と実際位置との差の絶対値であるとして説明する。
【0075】
また、第1マップM1及び第2マップM2は、リフトアーム21を上昇させる場合とリフトアーム21を下降させる場合とで、それぞれ共通であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
図5は、第1マップM1の一例を示す図である。図5に示すグラフにおいて、横軸は、実際位置と目標値との偏差ΔDを示しており、縦軸は、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFを示している。図5に示す第1マップM1の例では、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、目標流量TFは、急激に増加してから徐々に増加するよう変化する。
【0077】
なお、図5に示す第1マップM1は一例であって、目標流量TFは、実際位置と目標値との偏差ΔDが大きくなるにつれて、徐々に増加してから急激に増加するように変化してもよいし、比例して増加して略直線を描くように変化してもよい。
【0078】
図6は、第2マップM2の一例を示す図である。第2マップM2は、予め定められた制御弁30として、標準制御弁に出力する制御電流の電流値Iと当該標準制御弁からの作動油の流量との関係を示し、標準流量特性SCに基づいて定義される。ここで、標準流量特性SCにおいて、標準制御弁からの作動油の流量(供給量DF)とは、電流値Iの制御電流が出力された標準制御弁が吐出可能な作動油の流量である。標準制御弁は、中央品の制御弁30である。つまり、第2マップM2は、標準制御弁の設計データ上又は理論データ上の流量特性SCに基づいて定義されている。標準流量特性SCは、標準制御弁の流量特性であり、例えば、設計データ上又は理論データ上の流量特性としている。このため、標準流量特性SCは、標準制御弁の設計上又は理論上の流量特性である。
【0079】
なお、標準流量特性SCは、複数の制御弁30について測定された各流量特性の測定データを平均化又は標準化などの演算処理を行うことで取得された流量特性としてもよい。つまり、標準流量特性SCは、複数の実測データに基づく流量特性としてもよい。また、標準流量特性SCとして、製造会社等が提示する制御弁30の標準的な製品スペックデータが示す流量特性としてもよい。
【0080】
図6に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。図6に示す第2マップM2の例では、制御電流の電流値Iが大きくなるにつれて、供給量DFは、徐々に増加してから急激に増加するよう変化する。
【0081】
なお、図6に示す第2マップM2は一例であって、所定の制御弁30の設計データ上又は理論データ上の流量特性に基づいて定義されていればよい。
【0082】
従って、制御装置11は、まず実際位置と目標値との偏差ΔDを演算すると、リフトアーム21の動作方向(上昇又は下降)に応じて、第1マップM1及び第2マップM2を取得する。制御装置11は、当該偏差ΔDと第1マップM1とに基づいて、目標流量TFを取得する。制御装置11は、目標流量TFを取得すると、当該目標流量TFと第2マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御する。
【0083】
ここで、制御装置11は、偏差ΔDが徐々に小さくなるに連れて電流値Iを徐々に小さくする。また、制御装置11は、偏差ΔDが零になると、制御弁30への制御電流の電流値Iを零にする。このように、制御装置11は、操作具42の操作に応じて、制御弁30を制御して、リフトシリンダ26を駆動させることができる。
【0084】
制御装置11は、原動機5の実回転数に基づいて、制御弁30を制御して当該制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の最大流量MFを制限流量LFで制限する。また、原動機5の回転数Rに対する制限流量LFは、当該回転数Rに対して油圧ポンプPが吐出可能な最大吐出量以下である。詳しくは、制限流量LFは、それぞれ原動機5の回転数Rに対応する最大吐出量よりも低い。
【0085】
本実施形態において、制御装置11は、図7図8に示すような原動機5の回転数Rと、制限流量LFと、の関係を示すマップ(供給量制限マップ)M3を取得し、当該原動機5の実回転数と供給量制限マップM3とに基づいて制御弁30を制御する。供給量制限マップM3は、予め記憶部11aに記憶されている。制御装置11は、記憶部11aに記憶された当該供給量制限マップM3を取得し、第1検出装置12が検出した原動機5の実回転数と、供給量制限マップM3と、に基づいて、制御弁30を制御して当該制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の最大流量MFを制限流量LFで制限する。
【0086】
供給量制限マップM3は、例えば、作業機メーカやディーラ等の情報処理端末50(例えばパーソナルコンピュータ)において演算され、当該情報処理端末50によって記憶部11aに記憶される。吐出量特性VCとは、原動機5の回転数Rに対して油圧ポンプPが吐出可能な最大吐出量を示す特性のことであり、供給量制限マップM3は、所定の吐出量特性VCよりも、原動機5の回転数Rに対する制限流量LFが低いマップである。吐出量特性VCは、原動機5の回転数Rに対して油圧ポンプPが吐出可能な最大吐出量を示す特性である。
【0087】
図7図8は、吐出量特性VC及び供給量制限マップM3の一例を示す図である。図7図8に示すグラフにおいて、横軸は、原動機5の回転数Rを示しており、縦軸は、油圧ポンプPから吐出される作動油の流量(吐出量)VFを示している。図7図8に示す例では、吐出量特性VCを一点鎖線で記載し、供給量制限マップM3を実線で記載している。
【0088】
吐出量特性VCは、原動機5の設計データ上又は理論データ上の特性、及び油圧ポンプPの設計データ上又は理論データ上の特性に基づいて定義されている。吐出量特性VCは、原動機5及び油圧ポンプPの複数の組み合わせにおいて測定された各流量特性の測定データを平均化又は標準化などの演算処理を行うことで取得された流量特性としてもよい。つまり、吐出量特性VCは、複数の実測データに基づく流量特性としてもよい。
【0089】
油圧ポンプPは、原動機5の特性に応じて選択されており、例えば回転数Rに対するトルクが比較的高い上限品の原動機5には、当該上限品の原動機5に対応する油圧ポンプPが選択される。一方、回転数Rに対するトルクが比較的低い下限品の原動機5には、当該下限品の原動機5に対応する油圧ポンプPが選択される。
【0090】
図7では、上限品の原動機5と当該上限品の原動機5に対応する油圧ポンプPの吐出量特性(上限吐出量特性)VC1を示している。また、図8では、下限品の原動機5と当該下限品の原動機5に対応する油圧ポンプPの吐出量特性(下限吐出量特性)VC2を示している。吐出量特性VCは、原動機5の回転数Rが大きくなるにつれて、最大吐出量が原動機5の回転数Rに比例して増加するよう変化する。また、上限吐出量特性VC1は、下限吐出量特性VC2に比べて、原動機5の回転数Rに対する最大吐出量が高くなっており、低い回転数Rで同じ最大吐出量に達することできる。
【0091】
なお、図7図8に示す例では、上限吐出量特性VC1と下限吐出量特性VC2とを例示したが、吐出量特性VCは、上限吐出量特性VC1と下限吐出量特性VC2との2つに限定されず、中央品の原動機5と当該中央品の原動機5に対応する油圧ポンプPの吐出量特性(中央吐出量特性)等の複数の吐出量特性VCを含んでいてもよい。
【0092】
制限流量LFは、吐出量特性VCの最大吐出量から演算される。供給量制限マップM3は、吐出量特性VCの最大吐出量を制限流量LFに変換することで演算される。制限流量LF(供給量制限マップM3)の演算には、吐出量特性VCが用いられ、当該吐出量特性VCは、原動機5と油圧ポンプPの組み合わせに応じて選択される。つまり、作業機1に搭載されている原動機5及び油圧ポンプPの組み合わせに応じて、吐出量特性VCが選択され、供給量制限マップM3が演算される。言い換えると、供給量制限マップM3は、原動機5及び油圧ポンプPの組み合わせに応じて定義されている。吐出量特性VCから供給量制限マップM3への変換は、いずれの吐出量特性VCにおいても共通である。
【0093】
以下、制限流量LF(供給量制限マップM3)の演算について詳しく説明する。制限流量LFは、標準流量特性SC及び標準流量特性SCに比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁30の上限流量特性UCに基づいて、最大吐出量を変換することで演算される。つまり、供給量制限マップM3は、標準流量特性SC及び上限流量特性UCに基づいて、吐出量特性VCの最大吐出量を制限流量LFに変換することで演算される。図9図10は、標準流量特性SCと上限流量特性UCとを示す図である。図9図10では、標準流量特性SCを実線で記載し、上限流量特性UCを一点鎖線で記載している。図9図10に示すグラフにおいて、横軸は、制御電流の電流値Iを示しており、縦軸は、供給量DFを示している。
【0094】
上限流量特性UCは、上限品の制御弁30の流量特性であり、例えば、設計データ上又は理論データ上の流量特性としている。つまり、上限流量特性UCは、上限品の制御弁30の設計上又は理論上の流量特性UCである。なお、上限流量特性UCは、複数の制御弁30について測定された各流量特性の測定データを平均化又は標準化などの演算処理を行うことで取得された流量特性としてもよい。つまり、上限流量特性UCは、複数の実測データに基づく流量特性としてもよい。
【0095】
供給量制限マップM3の制限流量LFは、吐出量特性VCにおける、それぞれの原動機5の回転数Rごとの最大吐出量を上限流量特性UCで参照した結果と標準流量特性SCとに基づいて、最大吐出量を標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算される。
【0096】
具体的には、供給量制限マップM3の制限流量LFは、吐出量特性VCにおけるそれぞれの原動機5の回転数Rごとの最大吐出量を上限流量特性UCで参照し、当該最大吐出量に対応する電流値Iを取得し、当該電流値I及び標準流量特性SCに基づいて、最大吐出量を当該電流値Iの制御電流が出力された標準制御弁からの作動油の流量(供給量DF)に変換することで演算される。
【0097】
以下、情報処理端末50が、それぞれの原動機5の回転数Rごとの最大吐出量を制限流量LFに変換する流れについて説明する。まず、吐出量特性VCから供給量制限マップM3への変換を説明する。情報処理端末50は、原動機5及び油圧ポンプPの組み合わせに応じて、吐出量特性VCを参照する。情報処理端末50は、所定の入力インタフェース(キーボード及びマウス等)を介して、作業者による原動機5及び油圧ポンプPの組み合わせの入力を受け付け、当該組み合わせに応じて、通信可能に接続されたSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶媒体や外部のサーバ等から吐出量特性VCを参照する。
【0098】
次に、情報処理端末50は、吐出量特性VCを参照して、当該吐出量特性VCの所定の回転数(以下、所定回転数という)における最大吐出量を取得する。情報処理端末50は、記憶媒体や外部のサーバ等から上限流量特性UCを参照し、最大吐出量に対応する電流値Iを参照する。即ち、情報処理端末50は、上限品の制御弁30が最大吐出量を供給できる開度になる場合に、当該上限品の制御弁30に出力すべき制限電流の電流値Iの最小値(以下、基準電流値という)を参照する。
【0099】
また、情報処理端末50は、記憶媒体や外部のサーバ等から標準流量特性SCを参照し、制限流量LFとして供給量DFを参照する。
【0100】
そして、情報処理端末50は、所定回転数と制限流量LFとを対応付け、上記の流れを繰り返すことで、吐出量特性VCにおけるそれぞれの原動機5の回転数Rごとの最大吐出量を供給量DFに変換することで、供給量制限マップM3を演算する。情報処理端末50は、演算した供給量制限マップM3を制御装置11の記憶部11aに記憶させる。
【0101】
以上のように、標準流量特性SCは、上限流量特性UCに比べて供給量DFが少ないため、図7図8に示すように、供給量制限マップM3は、吐出量特性VCの最大吐出量に比べて、いずれの回転数Rにおいても制限流量LFのほうが低くなる。また、上限吐出量特性VC1は、下限吐出量特性VC2に比べて、原動機5の回転数Rに対する最大吐出量が高いため、図7図8に示すように、上限吐出量特性VC1から変換した供給量制限マップM3(上限マップM31)は、下限吐出量特性VC2から変換した供給量制限マップM3(下限マップM32)に比べて、いずれの回転数Rにおいても制限流量LFが高くなる。
【0102】
以下、図7図9を用いて、上限品の原動機5と当該上限品の原動機5に対応する油圧ポンプPとの組み合わせにおいて、所定回転数が800rpm、1600rpm、及び2000rpmである場合を例に、最大吐出量から制限流量LFへの変換を説明する。図7に示す上限吐出量特性VC1を参照すると、原動機5の回転数Rが800rpmである場合の最大吐出量は、40L/minである。次に、上限流量特性UCを参照すると、供給量DFが40L/minである場合の基準電流値は、1950mAである。また、標準流量特性SCを参照すると、基準電流値が1950mAである制御電流が出力された標準制御弁の供給量DFは、30L/minである。これにより、情報処理端末50は、所定回転数(800rpm)と供給量DF(30L/min)とを対応付け、最大吐出量(40L/min)から供給量DF(30L/min)に変換する。
【0103】
原動機5の回転数Rが1600rpmである場合の最大吐出量は、80L/minである。次に、上限流量特性UCを参照すると、供給量DFが80L/minである場合の基準電流値は、2400mAである。また、標準流量特性SCを参照すると、基準電流値が2400mAである制御電流が出力された標準制御弁の供給量DFは、70L/minである。これにより、情報処理端末50は、所定回転数(1600rpm)と供給量DF(70L/min)とを対応付け、最大吐出量(80L/min)から供給量DF(70L/min)に変換する。
【0104】
そして、原動機5の回転数Rが2000rpmである場合の最大吐出量は、100L/minである。次に、上限流量特性UCを参照すると、供給量DFが100L/minである場合の基準電流値は、2800mAである。また、標準流量特性SCを参照すると、基準電流値が2800mAである制御電流が出力された標準制御弁の供給量DFは、90L/minである。これにより、情報処理端末50は、所定回転数(2000rpm)と供給量DF(90L/min)とを対応付け、最大吐出量(100L/min)から供給量DF(90L/min)に変換する。
【0105】
以下、図8図10を用いて、下限品の原動機5と当該下限品の原動機5に対応する油圧ポンプPとの組み合わせにおいて、所定回転数が800rpm、1600rpm、及び2000rpmである場合を例に、最大吐出量から制限流量LFへの変換を説明する。図8に示す下限吐出量特性VC2を参照すると、原動機5の回転数Rが800rpmである場合の最大吐出量は、35L/minである。次に、上限流量特性UCを参照すると、供給量DFが35L/minである場合の基準電流値は、1850mAである。また、標準流量特性SCを参照すると、基準電流値が1850mAである制御電流が出力された標準制御弁の供給量DFは、28L/minである。これにより、情報処理端末50は、所定回転数(800rpm)と供給量DF(28L/min)とを対応付け、最大吐出量(35L/min)から供給量DF(28L/min)に変換する。
【0106】
原動機5の回転数Rが1600rpmである場合の最大吐出量は、71L/minである。次に、上限流量特性UCを参照すると、供給量DFが71L/minである場合の基準電流値は、2250mAである。また、標準流量特性SCを参照すると、基準電流値が2250mAである制御電流が出力された標準制御弁の供給量DFは、60L/minである。これにより、情報処理端末50は、所定回転数(1600rpm)と供給量DF(60L/min)とを対応付け、最大吐出量(71L/min)から供給量DF(60L/min)に変換する。
【0107】
そして、原動機5の回転数Rが2000rpmである場合の最大吐出量は、87L/minである。次に、上限流量特性UCを参照すると、供給量DFが87L/minである場合の基準電流値は、2600mAである。また、標準流量特性SCを参照すると、基準電流値が2600mAである制御電流が出力された標準制御弁の供給量DFは、76L/minである。これにより、情報処理端末50は、所定回転数(2000rpm)と供給量DF(76L/min)とを対応付け、最大吐出量(87L/min)から供給量DF(76L/min)に変換する。
【0108】
なお、図7図8に示す例において、吐出量特性VCから供給量制限マップM3への変換では、7つの所定の回転数に対応する最大吐出量を供給量DFに変換しているが、少なくとも2以上の最大吐出量を供給量DFに変換し、これらの変換後の値に基づく関数を演算できればよい。即ち、図7図8に示す例において、供給量制限マップM3は、変換後の値に基づく折線関数であるが、少なくとも変換後の値に基づく関数であればよく、変換後の値に基づく回帰直線の関数であってもよいし、変換後の値を通る近似曲線であってもよい。なお、吐出量特性VCから供給量制限マップM3への変換では、変換する最大吐出量が多いほうが好ましい。
【0109】
本実施形態においては、制御装置11は、第1検出装置12が検出した原動機5の実回転数、及び供給量制限マップM3から、原動機5の回転数Rに対応する制限流量LFを取得して、当該制限流量LFに基づいて第2マップM2を補正する。これにより、制御装置11は、操作具42から出力された操作信号、第1マップM1、及び補正後の第2マップM2によって、制御弁30を制御して、当該制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の最大流量MFを制限する。
【0110】
制御装置11は、制限流量LFを取得すると、当該制限流量LFに基づいて、第2マップM2における最大流量MFを補正する。具体的には、制御装置11は、第2マップM2のうち、取得した制限流量LFよりも高い供給量DFである部分を制限流量LFと同値に補正することで最大流量MFを制限する。これにより、図11に示すように、原動機5の実回転数及び供給量制限マップM3に基づいて取得した制限流量LFに応じて、第2マップM2が補正される。図11に示す例においては、補正前の第2マップM2を実線で記載し、補正後の第2マップM2´を一点鎖線で記載している。
【0111】
なお、上述した実施形態においては、制御装置11が第2マップM2を補正する場合を例に説明したが、制御装置11は、最大流量MFを制限流量LF以下に制御すればよく、その方法は限定されない。例えば、制御装置11は、第2マップM2を補正せず、第1マップM1から取得した目標流量TFが制限流量LFを超過している場合に、当該目標流量TFを制限流量LFに補正するような構成であってもよい。
【0112】
以下、制御装置11が最大流量MFを制限する流れを説明する。図12は、制御装置11が最大流量MFを制限する一連の流れを示す図である。図12に示す一連の処理は、制御装置11の記憶部11aに予め記憶されたソフトウェアプログラムに基づいて、CPUにより実行される。制御装置11は、操作具42が操作されているか否かを判断する(S1)。制御装置11は、操作具42から出力された操作信号に基づいて、操作具42が操作されていると判断した場合(S1:Yes)、目標値を演算する(S2)。制御装置11は、実際位置と目標値とに基づいて、偏差ΔDを演算する(S3)。制御装置11は、偏差ΔDと第1マップM1に基づいて、目標流量TFを取得する(S4)。
【0113】
制御装置11は、記憶部11aに記憶されている供給量制限マップM3を取得する(S5)。制御装置11は、第1検出装置12が検出した原動機5の実回転数を取得する(S6)。制御装置11は、原動機5の実回転数を取得すると(S6)、供給量制限マップM3を参照し、取得した原動機5の実回転数に対応する制限流量LFを取得する(S7)。制御装置11は、取得した制限流量LFに応じて第2マップM2を補正する(S8)。
【0114】
制御装置11は、目標流量TFと補正後の第2マップM2とに基づいて制御電流の電流値Iを取得する(S9)。これにより、制御装置11は、取得した電流値Iを制御弁30に出力することで制御弁30を制御して、リフトアーム21を昇降させる(S10)。
【0115】
つまり、作業機1の制御方法は、制御装置11が制御弁30を制御して当該制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の最大流量MFを制限流量LFで制限する処理(S8~S9)を含んでいる。
【0116】
なお、上述した実施形態では、制限流量LFが吐出量特性VCの最大吐出量を変換することで演算される場合を例に説明したが、制限流量LFは、それぞれ原動機5の回転数Rに対応する最大吐出量に基づいて演算されてもよい。具体的には、制限流量LFは、それぞれ原動機5の回転数Rに対応する最大吐出量と同値であってもよい(第1の変形例)。また、制限流量LFは、それぞれ原動機5の回転数Rに対応する最大吐出量から所定値αだけ減算した値であってもよい(第2の変形例)。図13は、吐出量特性VC及び変形例における供給量制限マップM3A,M3Bの一例を示す図である。
【0117】
図13に示すグラフにおいて、横軸は、原動機5の回転数RRを示しており、縦軸は、油圧ポンプPから吐出される作動油の流量(吐出量)VFを示している。図13に示す例では、吐出量特性VCを一点鎖線で記載し、第1の変形例の供給量制限マップM3Aを実線で記載し、第2の変形例の供給量制限マップM3Bを二点鎖線で記載している。図13では、上限品の原動機5と当該上限品の原動機5に対応する油圧ポンプPの吐出量特性(上限吐出量特性)VC1を示している。
【0118】
図13に示すように、第1の変形例の供給量制限マップM3Aは、吐出量特性VCと一致しており、いずれの回転数RRの制限流量LFも吐出量特性VCの最大吐出量と同値である。一方、第2の変形例の供給量制限マップM3Bは、吐出量特性VCの最大吐出量に比べて、いずれの回転数RRにおいても制限流量LFのほうが所定値αだけ低くなる。なお、図13に示す第2の変形例において、所定値αは、いずれの回転数RRにおいても一定値であるが、回転数RRが増加するにつれて値の大きさが増加してもよい。
【0119】
本発明の一態様に係る作業機1は、動力を発生させる原動機5と、原動機5が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプPと、油圧ポンプPが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータ26と、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油を調整する制御弁30と、制御弁30を制御する制御装置11と、を備え、制御装置11は、原動機5の実回転数に基づいて、制御弁30を制御して当該制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の最大流量MFを制限流量LFで制限し、原動機5の回転数Rに対する制限流量LFは、当該回転数Rに対して油圧ポンプPが吐出可能な最大吐出量以下である。
【0120】
この構成によれば、制御弁30が供給できる作動油の流量は、油圧ポンプPが吐出することができる作動油の吐出量VF以下に制限されるため、実質的に原動機5の回転数Rに応じて油圧アクチュエータ26を制御している状態にならず、制御弁30で油圧アクチュエータ26を適切に制御できる。また、制御装置11は、原動機5の実回転数に応じて最大流量MFを制限するため、油圧ポンプPが十分に作動油を吐出している場合にまで、制御弁30から油圧アクチュエータ26へ供給する作動油の流量を制限することもない。
【0121】
また、制限流量LFは、それぞれ原動機5の回転数Rに対応する最大吐出量よりも低い。
【0122】
この構成によれば、制御装置11は、制御弁30で油圧アクチュエータ26をより適切に制御できる。
【0123】
また、制限流量LFは、所定の制御弁30である標準制御弁に出力する制御電流の電流値Iと当該標準制御弁からの作動油の流量との関係を示す標準流量特性SC、及び標準流量特性SCに比べて作動油の流量が多い上限品の制御弁30の上限流量特性UCに基づいて、最大吐出量を変換することで演算される。
【0124】
この構成によれば、標準流量特性SCと上限流量特性UCとで最大吐出量を変換するため、最大吐出量から制限流量LFへの変換を適切に行うことができる。
【0125】
また、制限流量LFは、原動機5の回転数Rと最大吐出量との関係を示す吐出量特性VCにおける、それぞれの原動機5の回転数Rごとの最大吐出量を上限流量特性UCで参照した結果と標準流量特性SCとに基づいて、最大吐出量を標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算される。
【0126】
この構成によれば、標準流量特性SCは上限流量特性UCよりも作動油の流量が少ないため、最大吐出量から制限流量LFへの変換を適切に行うことができる。
【0127】
また、制限流量LFは、吐出量特性VCにおけるそれぞれの原動機5の回転数Rごとの最大吐出量を上限流量特性UCで参照し、当該最大吐出量に対応する電流値Iを取得し、当該電流値I及び標準流量特性SCに基づいて、最大吐出量を当該電流値Iの制御電流が出力された標準制御弁からの作動油の流量に変換することで演算される。
【0128】
この構成によれば、標準流量特性SCは上限流量特性UCよりも同じ電流値Iに対する作動油の流量(供給量DF)が少ないため、原動機5の実回転数に応じて油圧アクチュエータ26に供給する作動油の最大流量MFをより確実に制限することができる。
【0129】
また、作業機1は、油圧ポンプPの吐出圧から油圧アクチュエータ26の負荷圧を引いた差圧を一定圧にするように油圧ポンプPを制御するロードセンシングシステム35を備えている。
【0130】
この構成によれば、制御弁30が供給できる作動油の流量は、油圧ポンプPが吐出することができる作動油の吐出量VFよりも少ない流量に制限され、ロードセンシングシステム35の制御によって、油圧アクチュエータ26に供給される作動油の流量が急激に変化して、油圧アクチュエータ26の動作に衝撃が生じることを抑制しつつも、駆動装置8を十分に動作させることができる。
【0131】
また、作業機1は、油圧アクチュエータ26を有する駆動装置8を備え、駆動装置8は、油圧アクチュエータ26によって駆動される駆動部材21を有し、制御装置11は、駆動部材21の実際の位置である実際位置と所定の目標値との偏差ΔDを算出し、当該偏差ΔDと油圧アクチュエータ26を動作させる作動油の目標流量TFとの関係、及び予め定められた制御弁30に出力する制御電流の電流値Iと当該制御弁30からの作動油の流量との関係に基づいて、最大流量MF以下になるよう制御弁30を制御する。
【0132】
この構成によれば、制御電流の電流値Iを制限することで、制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の流量を最大吐出量以下にできる。
【0133】
また、予め定められた制御弁30に出力する制御電流の電流値Iと当該制御弁30からの作動油の流量との関係は、標準流量特性SCに基づいて定義される。
【0134】
この構成によれば、制御弁30が上限品である場合であっても、確実に油圧アクチュエータ26の負荷圧が油圧ポンプPの吐出圧を上回ることを抑制できる。
【0135】
また、制限流量LFは、それぞれ原動機5の回転数Rに対応する最大吐出量に基づいて演算される。
【0136】
この構成によれば、制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の流量をより確実に最大吐出量以下にできる。
【0137】
また、制限流量LFの演算には、原動機5の回転数Rと最大吐出量との関係を示す吐出量特性VCが用いられ、吐出量特性VCは、原動機5と油圧ポンプPの組み合わせに応じて選択される。
【0138】
この構成によれば、原動機5と油圧ポンプPの組み合わせに応じて、制御装置11は、適切な制限流量LFで制御弁30を制御することができる。このため、より確実に油圧アクチュエータ26の最高負荷圧が油圧ポンプPの吐出圧を上回ることを抑制できる。
【0139】
また、作業機1は、油圧アクチュエータ26を有する駆動装置8を備え、駆動装置8は、油圧アクチュエータ26の駆動によって駆動される駆動部材21を有し、作業装置3を昇降可能な昇降装置8であり、油圧アクチュエータ26は、リフトシリンダ26であり、駆動部材21は、リフトシリンダ26の駆動によって駆動されるリフトアーム21である。
【0140】
この構成によれば、駆動部材21を駆動させるために比較的多くの作動油の流量を要する昇降装置8であっても、ロードセンシングシステム35の制御によって、油圧アクチュエータ26に供給される作動油の流量が急激に変化することを抑制でき、油圧アクチュエータ26の動作に衝撃が生じることを抑制できる。
【0141】
また、作業機1の制御方法は、動力を発生させる原動機5と、原動機5が発生させた動力によって作動し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプPと、油圧ポンプPが吐出した作動油によって動作する油圧アクチュエータ26と、油圧アクチュエータ26を動作させる作動油を調整する制御弁30と、制御弁30を制御する制御装置11と、を備える作業機1の制御方法であって、制御装置11が、原動機5の実回転数に基づいて、制御弁30を制御して当該制御弁30から油圧アクチュエータ26に供給される作動油の最大流量MFを制限流量LFで制限するステップを含み、原動機5の回転数Rに対する制限流量LFは、当該回転数Rに対して油圧ポンプPが吐出可能な最大吐出量以下である。
【0142】
この構成によれば、制御弁30が供給できる作動油の流量は、油圧ポンプPが吐出することができる作動油の吐出量VF以下に制限されるため、実質的に原動機5の回転数Rに応じて油圧アクチュエータ26を制御している状態にならず、制御弁30で油圧アクチュエータ26を適切に制御できる。また、制御装置11は、原動機5の実回転数に応じて最大流量MFを制限するため、油圧ポンプPが十分に作動油を吐出している場合にまで、制御弁30から油圧アクチュエータ26へ供給する作動油の流量を制限することもない。
【0143】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
1 :作業機
3 :作業装置
5 :原動機
8 :駆動装置(昇降装置)
11 :制御装置
21 :駆動部材(リフトアーム)
26 :油圧アクチュエータ(リフトシリンダ)
30 :制御弁
35 :ロードセンシングシステム
I :電流値
LF :制限流量
MF :最大流量
P :油圧ポンプ
R :回転数
SC :標準流量特性
TF :目標流量
UC :上限流量特性
VC :吐出量特性
ΔD :偏差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13